第8回記者会見要旨:平成27年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成27年6月1日(月曜日)19時36分~20時02分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
平成27年第8回経済財政諮問会議の概要を報告申し上げます。
まず、本日の議論の概要を、私が取りまとめた点を中心に御紹介します。
計画のフレームに関しては、政策効果が乏しい歳出は徹底削減、政策効果の高い歳出に転換が重要といった点で意見の一致がみられました。
地方行政サービスのオープン化・アウトソーシングの推進、KPIの具体化やIT等を活用した業務の簡素化・標準化といった点でも意見の一致がみられました。
地方交付税改革をいつまでに進めるのか、どの程度の規模の事業や、どのような自治体でPPP/PFIを優先的に行うかについて御検討をいただきたい。いろいろな課題はあるにせよ、前進させていきたいので、協力をいただきたい。
次に、本日の具体的な議論について御紹介いたします。
本日の議題の一つ目は、石破大臣、有村大臣に御参加をいただき、地方創生・女性活躍に向けてについて、議論を行いました。石破大臣、有村大臣、高市大臣から資料1、2、3の説明等があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見を御紹介いたします。
まず、地方創生について、麻生大臣から、「新型交付金は、既存の補助金の統廃合をするなど、しっかりとした制度設計が必要である。」
民間議員から、「公的サービスの産業化においては、自治体インフラの民間開放が重要であり、民間の投資が出てくるように高市大臣には具体化をお願いしたい。」
同じく民間議員から、「少子化については、今が最後のチャンスなので、少子化対策を前倒しして取り組んでほしい。」
続いて、2番目の議事として、経済再生と両立をする財政健全化計画の策定に向けた論点のうち、計画のフレームについて議論を行いました。
新浪議員、麻生大臣から資料4、5の説明等があり、その後、意見交換を行いました。
主なご意見を紹介します。
まず、計画フレームについて、高市大臣から、「地方財政について、リーマンショック後の危機対応モードから平時モードへの見直しを進めていく。救急業務の一部有料化については多くの課題があり、国民的なコンセンサスが必要である。」
麻生大臣から、「計画のポイントは、1.安倍内閣の3年間の歳出改革を継続・強化をすること、2.社会保障、社会保障以外、地方財政の3分野で大きな考え方を示すこと、3.2018年度の具体的な中間時点の目標を置くこと、この3点だと考える。一律的な抑制はこれまでもしていないし、これからもすべきではない。一方で、消費税率を10%に引上げる中で、歳出も増える姿としない規律が重要である。」
続いて、菅官房長官から、「経済再生なくして財政健全化なしが基本である。経済再生を実現し、それによる税収増の確保を前提とした計画でなければならない。」
続いて、民間議員から、「歳出・歳入改革について、次の4つを行うべきである。1.2020年度PB黒字化目標を明記、2.計画の実効性を確保するため、初年度から不退転の決意を持って歳出改革に取り組む、3.改革工程表、KPIを明らかにする、4.専門調査会でPDCAを回す。税収増は実質2%、名目3%成長が前提となっており、そのためには規制改革、法人税改革などが必要である。経済界もリスクをとって設備投資をしていく。」
民間議員から、「歳出改革と歳出抑制は同じではなく、歳出抑制のやり方を間違えると経済を下押しするおそれがある。歳出を一律抑制すると、中身の改革を止めてしまうこともある。実際、毎年度のシーリングでは、社会保障は自然増、義務的経費は前年度並みを事実上保障しており、財政を硬直化させていると思う。シーリングの在り方についても、今後議論させていただきたい。」
民間議員から、「PB黒字化という観点から、歳出歳入の両面をみる必要がある。歳入が上振れる可能性があるが、マクロ経済は不確実性があるので、2018年に進捗状況を評価すべき。社会保障の伸びを高齢化の範囲内にするにしても、高齢者への支出の中に改革すべきものもある。」
続いて、3番目の議事として、地方財政等について高橋議員、高市大臣、内閣府事務方から資料6、7、8の説明等があり、その後、意見交換を行いました。
主な意見です。
民間議員から、「地方財政の改革に当たっては、その時間軸が重要である。2018年度までの集中改革期間にマッチした改革を求めたい。地方交付税の算定に当たって、地域活性化等のパフォーマンス指標を積極的に導入し、併せて「見える化」をしっかり行うべきである。内閣府提出資料により、世代間、世代内の不公平の所在が明らかにされたが、この対応として税制のオーバーホールが不可欠である。」
民間議員から、「臨時財政対策債の償還のために措置された地方交付税が他の用途に使われているという話がある。チェックと防止策を考えることが必要である。PPP/PFIになじむかどうか、バリュー・フォー・マネーでペイしないなら、なぜペイしないのかも含め、徹底した検討をしてほしい。財政力指数がだめならば、それに代わる地方財政の改革目標となるKPI指標を考えてもらいたい。高齢化を前提としつつ、行政コストをいかに抑制するかという視点で改革を進めてもらいたい。国の制度が決まっているからではなく、その制度の下で頑張っている優良事例を拾い上げ、横展開するという姿勢で改革に臨むべきではないか。」
同じく民間議員から、「行政コストをどのように比較するかについては、十分かつ速やかな検討が必要である。」
同じく民間議員から、「地方財政について徹底的な抑制を行うことを骨太に明記すべきである。自治体でBPRを進めるという話があったが、国の政府機関のIT化、BPRも進めてほしい。」
ここで、総理から発言がありました。ポイントを御紹介します。
「地方創生、女性が輝く社会の実現は、安倍内閣の最重要課題である。関係大臣には、本日の議論も踏まえ、実効性のある施策を盛り込んだまち・ひと・しごと創生基本方針2015、女性活躍推進のための重点方針の策定を指示した。「経済・財政一体改革」を不退転の決意で断行し、2020年度の財政健全化目標を堅持する。具体的には、2020年度PB黒字化を実現することとし、そのため、PB赤字の対GDP比を縮小していく。また、計画の中間時点である2018年度で1%程度とすることを目安とし、経済再生や歳出改革などの改革の進展状況を評価する。計画のフレームに関するその他の論点については、早急に議論を集約していただきたい。高市大臣においては、2018年度までの集中改革期間に、自治体の行政コストやインフラの保有・維持管理情報などの「見える化」を徹底して進めてほしい。また、地方自治体においても、インセンティブ改革や産業化などの取組が推進されるよう、交付税制度の見直しをはじめ、メリハリのついた地方行財政上の支援の仕組みを考えてほしい。」
以上です。
2.質疑応答
<税収弾性値に関する議論>
(問)税収弾性値について、今回議論があったのであれば内容をお伺いできればと思います。
(答)税収弾性値について、民間議員から、経済が成長する段階においてとデフレ下においてでは、それぞれ全く異なるということで、それを踏まえて設定することが必要ではないか等の意見はありました。しかし、税収弾性値自体が議論になったということはありません。
<財政再建の前提>
(問)先程御紹介があったのですけれども、菅長官から、税収増を前提としたものでなければならないというのは、これは中長期試算の現在の数値よりも上振れるということを前提とすべきであるという理解でよろしいのか、その点教えてもらいたいと思います。
(答)官房長官のお話は、安倍内閣の基本方針であります、経済再生があって初めて財政再建ができる、つまりデフレ下では財政再建はできないということを具体的に申されたものであると思います。税収が上振れするような経済成長を、あるいは歳出カットをする場合にも産業化、見える化、横展開等々、まさに歳出カットが経済の下振れ要因にならないような施策が重要である。経済が成長することを犠牲にしないような対応が基本ではないかということの指摘だと思います。
(問)それに対して、麻生大臣などからの反論等々みたいなものはあったのでしょうか。
(答)発言後の反論はありません。
(問)それから、歳出についてですけれども、議論を聞いて大きく対立があるようにも思えませんが、一方で数値的なものとしてこの歳出、歳入のものを出すか出さないかについて、今日は議論があったのでしょうか。
(答)財務大臣からは、過去にもそしてこれからも一律カットをするつもりはない、したつもりもないということでありました。経済財政諮問会議の民間議員からは構造改革を促すようなカットの仕方をしないと、結局一律削減と同じことになる。つまり構造改革が行われないカットの仕方というのは、キャップと何ら変わらないという指摘があったと思います。どうやって構造改革を促していくか、そういう削減の仕方が鍵であるという話でした。
<地域経済好循環の拡大によるGDPの押上げ>
(問)地方税財政のことでお尋ねしたいのですが、高市大臣の資料のところで、地域経済の好循環の拡大によってGDPを0.3%から0.4%程度押上げるというのが初めて出た形ですけれども、これに関して民間議員などから評価する声があれば教えてください、というのが1点です。
もう1点は、交付税のところでトップランナー方式を一部採用して総務省の資料でも基準財政需要額を民間委託などの活用を前提に少し改めるという考えが出ましたが、これについて甘利大臣はどのように評価されているか教えてください。
(答)地域経済、ローカルアベノミクスをしっかり回していく、これは一次産業並びにサービス産業の生産性を上げていく等々いろいろな工夫があるわけであります。それについて積極的に取り組んでいくというお話だったと思います。
総務省は今回、総務大臣からいろいろな考え方を示していただきました。前回、なかなか後ろ向きな姿勢であったと感じたものでありますから、私から「できないための説明ではなくて、やるための説明にしてもらいたい」ということを強く要請しておきました。総務大臣の指導力で、民間議員いわく、完全に満足ということではないけれども、前回から比べると大きな前進ではないかというお話がありました。
<財政健全化計画のフレームについて>
(問)この計画のフレームのところでみると、18年度ぐらいまでは次の増税もあるので、歳出削減をあまりやらないで、18年度以降ぐらいに更に強化するとあるのですけれども、そのような認識でいいのかと、それについて何か財務省から意見などはあったでしょうか。
(答)2018年度、つまり中間地点には具体的な赤字幅が明示されています。3年間何もやらないでそういう厳しい目標が達成されるとは思いません。総理からは2018年度中間地点の目標をセットせよと。それから、そこに至るまでのいろいろな取組については、協議して一致点を見出してもらいたい。そこはまだ決まってないわけであります。恐らく財務省は毎年具体的な指標を、予算編成上、当然求めていくと思います。民間議員からは3年間のプランを、つまり構造改革プランをしっかり立てて、それを達成していく中で、中間地点の目標が成果として出てくるようにということであろうと思います。
つまり、民間議員は、まず、その経済再生の上に財政再建が乗っかっているということでありますし、官房長官の考え方も多分そうだと思います。
そこで、3年間の構造改革をどう設計するかが予算要求省庁に問われてくるわけでありますが、そこを1年ごとに具体的に詰めていきたいというのが、財務省であろうと思います。
その成長の上に再建ありということと、毎年の進捗管理をどうしていくかについては、これから詰めていきたいと思います。
<2017年の消費税率の引き上げ>
(問)2017年の消費税率引上げについては、どうでしょうか。資料では対応しなければいけないとあるので、その辺も踏まえて。
(答)2017年の10%への消費税増税については、それが確実に行い得るような経済環境をつくっていかなければならないわけであります。待ったなしですから。民間議員の側より、柔軟性のある対応をせず、消費税率を引上げるような環境に全くなっていないとした場合には、非常に厳しい状況に追い込まれるということも含めてのお話だと思います。
<経済成長時における税収弾性値について>
(問)改めて、税収弾性値についてお伺いします。民間議員からの、経済が成長しているタイミングでは、税収弾性値が上がりやすいという趣旨の話があったと思います。これについて、甘利大臣はどのようにお考えなのかということと、夏の中長期試算では、この税収弾性値の変更を考えられているのでしょうか。
(答)税収弾性値は、経済が成長していた段階では、1.2とか1.3とかいう数字になっていくわけであります。
我々の基本路線は、好ましい、あらまほしき経済成長を実現していくことを目標にしていくというか、それができないと財政再建はできないという設計になっているわけであります。目標としている、あらまほしき経済成長の姿に付随してくる税収弾性値はあるわけであります。
経済成長はあらまほしき姿を追い、税収弾性値はそうでないものをセットするということは、なかなか矛盾があるかと思いますから、経済成長の姿によって得られるであろう税収弾性値というのが、あっても良いのではないかと思います。
<デフレ脱却のタイミングについて>
(問)アベノミクスの最大の目的はデフレ脱却である。そうすると、デフレ脱却を少なくとも2020年までには達成した上でPBを黒字化したいとお考えになっていらっしゃると思うのですけれども、今の民間議員ペーパーのイメージ図の中で、どのあたりにデフレが脱却したという状況ができるのか、つくりたいのか。その辺のところというのは、何かイメージがあるのでしょうか。
(答)消費税率を引き上げるわけでありますが、次に消費税率を引き上げるときは、前回引上げをしたときの景気条項を外しているわけであります。外しているから、景気がどんな状態でも良いのだということではなく、デフレに戻ってしまわないような足腰の強化、経済環境ができているということが、極めて大事です。
ですから、消費税率を引き上げるときには、引き上げてもデフレに戻ることがないという環境をつくっていくことは重要だと思います。
<年金情報の流出問題>
(問)年金情報の流出問題ですけれども、マイナンバーも御担当なさっている大臣として受け止めをお願いします。
(答)今、調査中ですから一般論として申し上げれば、業務情報を取り扱うデータと、いわば名簿管理としてのマイナンバーは基本的にデータベース自身が別なところに管理されています。そしていわゆる業務情報のデータベースとは、ファイアーウォールが引かれていますから、今回の事件がそのまま名簿管理のベースに侵入されるということになるわけではありません。それぞれ業務機関が独立して情報管理をしていますし、通常の業務情報は、その業務情報の中の暗号コードでつながっていくということでありますし、その業務情報と名簿管理、マイナンバーについてはまた別のところでのデータベースになって、その間はファイアーウォールがしっかりと敷かれているということでありますから、今回の事件がそのままマイナンバーの流出につながるとは、考えない方が良いと思います。
ただ、もちろん今後ともセキュリティーについては更に万全を尽くしていくということであろうと思います。
<町村前衆議院議長逝去>
(問)町村前衆院議長の件ですけれども、当選御同期かとも思いますし、一言あればお願いいたします。
(答)いかにも早過ぎる亡くなり方だと思って、本当に残念で、第一報を聞いたときには大変なショックを受けました。2度目の脳梗塞が起きる前に、同期生4、5人で集まって、いろいろ昔話を含めて和気藹々と数時間を過ごしたのが、つい、それこそ2月かそこら前のことだったですから、そのときは非常に彼も元気でしたから、全く信じられないような思いです。やっぱり32年間一緒に歩んできた人間、政治家が突然いなくなるというのは、言いようのない衝撃と寂しさです。大変に官僚としても優秀でありましたし、政治家としても優秀な人でありましたから、国家的損失であろうと思います。
(以上)