第5回記者会見要旨:平成27年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成27年5月12日(火曜日)18時52分~19時15分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
第5回経済財政諮問会議の概要を報告いたします。
本日の議題の一つ目は、本年第2回目の金融政策、物価等に関する集中審議であります。
黒田日銀総裁から資料1について、そして、内閣府の事務方より資料2について説明がありまして、その後に意見交換を行いました。
主な意見を紹介申し上げます。
まず、民間議員から、「アベノミクスの進展により、企業の国際競争力の見通しも前年度に比べて改善しており、海外からの国内移転や国内への新規投資が増加するなど、企業の設備投資についての潮目は変わりつつある。電力の安定供給、電力コストの引下げに向けた取組など、企業の設備投資の制約を解消させる政府としての取組が引き続き必要である。」
続きまして二つ目の議題、経済再生と両立する財政健全化計画の策定に向けた論点整理・総論について議論を行いました。
高橋議員から資料3-1、3-2について、そして伊藤議員から資料4について、説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
主な意見を紹介申し上げます。
まず、高市総務大臣から、「地方は国と異なり、金融・経済・税制等の広範な権限を有していないので、国と地方の財政状況を単純に比較するのは不適当である。財政健全化は、国と地方の共通の課題であり、地方財政も国の取組と基調を合わせて、歳出の重点化・効率化を図っていく。インセンティブ改革は評価できることである。民間委託の推進など官民連携事業については、今後、各地方団体の推進状況を比較可能な形で公表するとともに、優良事業例を普及・展開することで、地方団体の取組を促したい。地方団体間の広域連携等による税徴収体制の強化は極めて有効・有用であり、総務省としても地方に要請を行い、その状況の把握に努めてきたところであり、引き続き推進していきたい。」
続いて財務大臣から、「財政健全化は、国民、市場、国際機関から注目されており、財政の持続性の信認を得るために、6月末頃までに計画をつくるべきである。歳出の削減が成長を阻害してはいけないのは当然である。しかし、安倍政権が3年間取り組んできた歳出改革を過小評価すべきではなく、同程度の改革を続けていけば、財政健全化目標を達成可能である。歳出の一律カットは考えていない。公的サービスの産業化、インセンティブ改革は極めて重要である。」
続いて民間議員から、「財政健全化は大事であるが、消費税の引上げが経済に悪影響を与えたことを考えるべきで、2017年までの経済財政運営は慎重に考えるべきである。消費税率の引上げの前にデフレ脱却を確実にすべきである。2018年以降、完全にデフレ脱却をした後、国民への痛みが和らいだ頃に大きく歳出抑制をするべきである。また、経済成長による歳入増加は確保すべきであり、それに合わせる形で歳出抑制をすべき。それには成長戦略が重要で、国の支出が民間の支出になっていく姿を描くべき。経済財政諮問会議に専門部会を設置し、PDCAを行っていくべきである。また、人口構造やライフサイクルの変化に対応して、税制を全面的に改革すべきである。」
同じく民間議員から、「公的分野の産業化、インセンティブ改革、公共サービスのイノベーションの三つの提案については、関係大臣からも賛意をいただいたと理解する。歳出抑制については、それに比例して歳入も減少することや、デフレを脱却した物価上昇局面では、実質値で評価する必要があるなど、慎重な検討が必要である。」
同じく民間議員から、「健全化目標については、2020年度のPB黒字化目標の堅持と、その後の債務残高対GDP比の安定的引下げの目標を揺るがせないことが重要である。歳出抑制は成長を阻害するものであってはならず、中身が重要である。社会保障分野では、給付の適正化などで思い切った抑制に取り組むべきである。」
同じく民間議員から、「2020年には名目GDPは600兆円まで成長する。歳出は抑える必要があるが、成長の伸び率との関係で歳出抑制の程度を考えるべきである。歳入はこの2年間で大きく伸びた。税収弾性値は上昇していると思う。そうした不確実性があるので、中間的な評価・検証が重要になる。」
続いて財務大臣から、「2012年から2015年まで税収は42兆円から54兆円に増えた。こうした見通しは難しい。信頼される計画を策定しなければならない。この不確実性をどう考えて計画を仕上げていくべきか、よく議論させていただきたい。」
民間議員から、「安倍政権で実現した税収の伸びを今後も維持することが重要である。経済構造が変わることで税収弾性値などが上がることも考えられるところであり、今後の税収見通しの在り方についても議論していきたい。これまで公共投資の予算額などを増やさないで済んだのは、デフレの影響も一因である。今後、コストカットだけで対応するのは無理。民間活力を導入し、歳出の質を変えていくことが重要である。」
私から、「現在の経済情勢を見れば、消費税率の8%から10%への引上げ時期を先に延ばしたのは適切であった。経済再生なくして財政健全化なし。デフレ脱却が財政健全化の大前提であることについては共通認識となっていると認識している。」
ここで総理から御発言がありました。ポイントを御紹介いたします。
「景気は、企業部門に改善が見られるなど、緩やかな回復基調が続いている。今後の先行きも、春闘の賃上げ率が昨年を上回る勢いとなるなど、雇用・所得環境の改善傾向が続く中で、原油価格下落の影響や各種政策の効果も期待されている。今後とも、経済の好循環の拡大に向け、努力してまいりたい。我が国の財政は、2015年度PB赤字半減目標を達成する見込みであるが、引き続き厳しい状況にある。経済再生と財政健全化をどう両立させていくのか。歳出改革の在り方、歳入改革の在り方等、詰めるべき論点は多々ある。今後、精力的に審議を進め、本年6月末頃までに取りまとめる「骨太方針2015」の中で、2020年度の財政健全化目標を達成するための計画を策定してほしい。その際、「経済再生なくして財政健全化なし」、これが安倍内閣の経済財政運営の基本哲学であり、「経済・財政一体改革」として検討を進めてほしい。」
最後に私から、以下のような発言であります。
「民間議員には、計画策定に向け、この3か月間で30回以上にわたり、関係各省や自治体、有識者からのヒアリングを重ねられ、その結果を論点として整理いただいた。感謝を申し上げる。今日の議論では、①社会保障と地方財政については、歳出改革の重点分野として取り組むこと。②公共サービスの質や水準を低下させることなく、また、経済を下押しすることなく公的支出の抑制を実現することが重要であり、このために公的分野の産業化やインセンティブ改革等を強力に推進していくこと。③計画の中間段階において目標に向けた進捗状況を評価すること。④改革の具体化や評価等を行うため、経済財政諮問会議にしっかりした体制を構築すべきこと、といった点で意見の一致が見られたと思う。次回、各論の論点整理を行い、「骨太方針2015」の策定に向け、審議を進めてまいりたいので、引き続きよろしくお願いしたい。」
以上です。
2.質疑応答
<歳出の削減目標について>
(問)いわゆる歳出の分野で、キャップ制のようなものが今回ないといいますか、歳出の削減目標金額のようなものがないかと思うのですけれども、この辺についてはどのような議論があったのでしょうか。
(答)この経済財政諮問会議の議論でもずっと言われてきたことでありますけれども、一律カット方式というのは過去に何度も取り組みましたけれども、その結末がどうなったかというと、一律カットというのは有無を言わさず抑えていきますから、単価を抑えるような形に、過去にはなっています。ということは、我慢がどこまでできるかということであって、我慢が限界に達したときに、その反動として一挙に暴発をすることになります。
今回、財政再建は失敗ができないわけであります。現在はデフレを脱却する中で歳出削減を行うということで、条件としては良いわけでありますが、それから先には、高齢化要因により社会保障需要が大きくなるということが待ち受けているわけでありますから、今回、財政再建はやり直しがきかないわけであります。我慢で抑えつけていて反動が来るということではなくて、いろいろな知恵を出して、構造を改革することを通じて、理に適った歳出改革をしていくということが重要であるということです。
そして、何よりその大前提として、経済の再生なくして財政健全化なしということです。仮に8%から10%への消費税率引上げを、無理を承知でやっていたとしたら、経済は完全に失速していたと思います。現在、失速していないがゆえに、税収が伸び、税収の上ぶれが生じていることを考えると、やみくもに経済を抑えつけるような選択をしなかったことは正解であったということは、今、振り返ってみれば、証明されているわけであります。
増税を慎重に行った上で、景気が回復し、デフレを脱却してくるということが大事でありますが、歳出カットも、経済を下押しするような、つまり、1兆円カットして5,000億円の税収が減るということになると、結局1兆円の効果は5,000億円の効果しかないということになるわけであります。ですから、歳出カットについても、一律カット方式によって副作用として経済が失速する、あるいは税収が上がってこないというようなことになると、歳出カットした意味がなくなるということであります。景気が失速してしまったら、もう全ては水泡に帰してしまうということになりますから、慎重に対処していかなければならないということは、共通認識であろうと思います。
過去には、一律カット方式を行うことで歳出削減の工夫が生じるということを期待したわけでありますけれども、それはなかなか期待できません。ですから、最初から工夫を行い、処方箋を描いておくということが必要ということだと思います。
<10%を超える消費税率引上げについて>
(問)一方の歳入面に関してですけれども、今回示された提言の中には、消費税率については10%より引き上げるという話は、今回は示されていませんが、消費税率の更なる引上げなしに、PBの黒字化の目標を達成することができると、大臣はお考えでしょうか。
(答)安倍内閣において、10%から先ということは想定してないということは、総理もおっしゃっているところであります。少なくとも2020年までのプランの中に、そういうシナリオはないと御理解いただきたいと思います。
そういう中で、経済成長と歳出のカットのやり方の工夫、公的サービスの産業化、インセンティブ改革の国民運動を起こしていくということ。それから、公的サービスのイノベーション、これらの手法を通じて、歳出カットから税収が生まれること、少なくとも歳出カットが新たな税収減を生まないという工夫が必要だと思っているわけであります。
<試算の実効性について>
(問)今回の資料で、内閣府が試算した9.4兆円という額がありましたけれども、ここでは名目成長率で3%を超える高い成長率というのが前提となっていますけれども、その実効性について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)民間議員からの提案は、まさにそこが大事で、最初からもう残りは9.4兆円と決め込むというのは危険であるということです。残り9.4兆円になることをしっかり担保できるような成長戦略にしっかり注力していくべきだという話がありました。
あわせて、残りの9.4兆円について、例えば歳出構造を変えることによって、景気を引き上げていくことによる税収増と、それから歳出構造の改革をしていくことによって、税収弾性値の変化もあるのではないかということです。税収弾性値1.0、つまり経済成長1%に対して伸びが1%という方程式で組んでいるわけでありますけれども、デフレ下ではなく、経済成長下にあるときには、税収弾性値はもっと高くなるわけであります。そのような状況をつくっていくという、歳出の質の改善、歳出カットのやり方の変更、公共サービスの産業化等々を通じて、成長力を引き上げることに加えて税収弾性値も引き上げるという手法があるのではないだろうかということです。そこは9.4兆円の中身を単にカットだけで構成するということではないということだと思います。
<中間目標の設定について>
(問)今回の民間議員の提案では、中間目標1%を設定するということになりましたけれども、今日の会議でその1%という中間目標を設定する是非については議論されたのでしょうか。
それから、中間目標を定めることについての大臣の御所見を伺えますでしょうか。
(答)今日の会議について、総理とも御相談したのでありますけれども、民間議員の提言と財政当局の考え方に、当然違いはあります。それが微妙か、幅があるかについては、見方によるのだと思いますけれども、それはそれで結構ではないかということです。一回目のスタートから全部一緒だったら議論する必要はなくなってしまうのであって、民間議員が考えていく財政健全化の知恵と、財政当局が考える具体的な予算編成を踏まえた取組というのは当然違いがあってしかるべきであります。その議論をしていく中で両者の良いところ取りができる可能性があり、そして最もコストパフォーマンスの良いやり方がとれるはずだというのが総理の考えであります。
3年目の中間目標について、そこで良い悪いの議論はありませんでしたけれども、当然民間議員側と財政当局との考え方の違いはあろうかと思います。ただ、民間議員側は、残り2年であとどれだけやればいいか、3.3%改善するわけであります。それに消費税が0.7%か0.8%ぐらいありますから、それ以外で流していくと0.5%になります。2年目だと0.5掛ける2イコール1%ということになりますけれども、これは単純な算数で置いただけの話でありまして、そんなに深く考えて設定したところでもないというお話がありました。
(以上)