第4回記者会見要旨:平成27年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成27年4月16日(木曜日)18時46分~19時04分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
第4回経済財政諮問会議につきまして、概要を申し上げます。
本日は、麻生大臣、高市大臣、黒田総裁、新浪議員が御欠席でありまして、菅原財務副大臣、西銘総務副大臣、中曽日本銀行副総裁が参加されました。
本日の議題の一つ目でありますが、塩崎厚生労働大臣に参加いただき、賃金や雇用を中心に「経済の好循環実現に向けて」についての議論を行いました。榊原議員から資料1について、塩崎大臣から資料2について、高橋議員から資料3について、説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。なお、榊原議員より、価格転嫁についても経済界として取り組んでいる旨御報告がありました。
主な意見を紹介いたします。
まず、民間議員から、「民間エコノミストは、今年は賃金が上昇し、物価が落ち着いているので消費は回復すると見ている。ただし、設備投資はやや心配で、昨年は、投資意欲はあったが、実際にはあまり出なかった。その理由として、企業が景気の先行きに慎重であるという見方と、人手不足なので生産が拡大できず投資を控えているという見方がある。要因を分析して対策を打つべきである。」
同じく民間議員から、「人手不足だからこそ省力化投資につながるという面もある。賃金の上昇と相まって設備投資が増えるということが大事である。」
同じく民間議員から、「企業の設備投資については、潮目が変わりつつあると認識している。これまでは景気回復への慎重な見方が残っていたことや、海外展開から国内回帰への転換のタイムラグがあったことにより設備投資が期待される水準で出てこなかったが、これからは期待できるのではないか。また、人手不足だからこそ老朽化施設の更新なども強く促されると考えられるので今後に期待したい。」
私から、「企業の設備投資をどう引っ張り出すか。今の経済情勢は絶好のチャンスであり、政府として企業の背中をどう後押しすべきか、しっかり考えなければいけない。」
続いて安倍総理から、「人手が不足する中で賃金を上げていかなければならない。こういった状況は、例えばロボット革命を推進する好機とも言える。そうした分野への投資を促すインセンティブなども考えていくべきである。」
民間議員から、「企業を後押しするインセンティブ措置を考えていただくことは効果的である。」 br>
続いて宮沢経済産業大臣から、「平成28年度までの時限措置である設備投資減税などは、むしろ今後2年で打ち切るということを明示して、この2年の間に設備投資をしっかりやってもらうという方向に持っていくべきではないか。」
続いて、2番目の議事として、塩崎厚生労働大臣に引き続き御参加をいただき、経済再生・財政健全化に向けたインセンティブ改革等について議論を行いました。伊藤議員から説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
主な御意見を紹介いたします。
まず財務副大臣から、「本年夏に策定をする財政健全化計画は、市場の信頼、国際社会から評価される具体的な計画である必要がある。」
続いて塩崎厚生労働大臣から、「今国会に提出している医療保険制度改革法案において、健康ポイント付与の促進、国保の保険者努力支援制度創設などインセンティブ強化に取り組む方針である。厚生労働省内で20年後を見据えた保健医療政策のビジョンを策定する懇談会を設け、議論をしている。」
民間議員から、「厚生労働大臣に2点お願いをしたい。一つ目は、PB黒字化目標は2020年であり、医療改革等においてできる限りの前倒しをお願いしたい。第2に、調剤医療費の問題。院外処方だと1回当たり1,000円高いのが現状である。医薬分業の名のもとに高コスト構造が見過ごされていないか検討が必要である。」
塩崎厚生労働大臣から、「医療改革は、2020年も念頭に置いて短期・中期・長期に分けて検討していく。医薬分業による課題についても認識しており、検討したい。」
民間議員から、「地域差の解消に向けては、県レベルに加え、市町村レベルできめ細かい取組が進むよう、データ整備を含めた対応が必要である。」
ここで総理から御発言がございました。私から発言のポイントを御紹介申し上げます。
「本日報告いただいたとおり、企業の資金繰りや利益が全国的に改善し、地方法人二税も全ての都道府県で増加するなど、まさに経済の好循環が地方でも起動し始めている。また、経団連調査では、今年の賃上げ率が2.59%と昨年を上回る勢いとなっており、雇用・所得環境も改善傾向が続いている。この好循環を二巡、三巡と回していくために、中小企業も含め、更なる投資や賃上げを後押ししていく。そして、地域経済を支える重要な柱であるサービス産業を活性化していく。このため、政労使会議や経済再生本部で決定した価格転嫁策とサービス産業の生産性向上策を、産業界と協力して政府を挙げて実行していきたい。また、財政健全化計画に向け、歳出効率化を促すインセンティブ改革という新たな視点から提案をいただいた。効率的で質の高い公共サービスを実現するよう、国民、企業、自治体等の意識や行動の変化を促す仕組みの構築に向けて、更に議論を進めていきたい。」
最後に私から、「本日、民間議員から御提言のあったインセンティブ改革等を含めた経済再生・財政健全化については、経済財政諮問会議において更に議論を深めてまいりたい。」と発言をいたしました。
以上です。
2.質疑応答
<インセンティブ改革における数値目標>
(問)インセンティブ改革のところですが、民間議員の資料で地方行財政の部分は数値も入っていたのですけれども、他のところはまだ考え方と取組の事例という形です。夏に向けて財政健全化計画をまとめる時にPBの9.4兆円の赤字を埋めていくということがあるので、社会保障等の分野でもどのぐらい削減していけるとか、もちろん成長もあるのですけれども、歳出カットしていけるかなど、そういう肉づけは今後の議論で進んでいくという理解でよろしいでしょうか。
(答)いくつかの事例を今日の資料でも掲げさせていただきました。医療費の都道府県構成を見ると、全体の医療支出が低く抑えられているところでも、実は公費負担については何のインセンティブも働いていないということが分かります。
インセンティブは、言ってみれば国民運動として広く、自治体だけでなく、個人も含めて起こしていかなければならないと思っております。どういう具体的なインセンティブ設計ができるか、そしてその効果がどれくらいか、今後更に議論を深めていきたいと思っています。
<インセンティブ改革の効果>
(問)インセンティブ改革について伺いたいのですけれども、今日提案あったものについての大臣の評価と、かつて2,200億円のキャップをはめてやるというような手法もありましたけれども、こういう手法と比べて今回提案のあったインセンティブ改革というのが効果的なのか、どう受けとめていますでしょうか。
(答)有無を言わさず無理やりカットしていくと、それをどの細目に無理に落とし込んでいくかということで相当な摩擦が起きます。それ自身が改革の推進力を減殺してしまうという過去の反省もあります。
理屈の上でも、実態の上でも無理なく行っていく。そして、その努力を喚起するような方法を採っていくというのが新たな知恵だと思っております。反対する方々にとって、反対するための理屈立て、論理立てがしづらい方が推進力にはなるかと思います。
<自治体間のばらつきに関する検証>
(問)今のインセンティブ改革ですけれども、反対する方々にとっても、何で他の自治体がうまくやれているのかというところは知りたいと思うのですが、今回、こんなにばらつきがあるというのはどういう要因があるのかとか、うまく減らしている自治体はどういうことをやっているのかとか、そういったことを諮問会議の場で議論、検証できているのでしょうか。
(答)これから検証していく部分もありますが、自治体の意欲の差も残念ながらあると思います。重篤化防止への取組は、自治体間でとても差があります。健康診断データ等々をもとに重篤化を防止していくアドバイスを保険者がやっている、あるいは自治体がやっているところについては、その医療費支出の絶対額がはるかに違うわけであります。これは意欲を持って前向きに取り組んでいくかどうかの差と、どういう手法があるのかということを把握していないという情報格差もあろうかと思います。
ベストプラクティスの横展開ということがこの分野でも大事になってくると思いますので、一番うまくやっている自治体の要因をしっかり分析して、それを横展開していくということをやっていきたいと思います。
<健康ポイント付与への反対論について>
(問)インセンティブ改革についてですけれども、特に医師会などは個人のインセンティブについて、例えば健康ポイントの付与などについては公的医療にはなじまないとして、非常に慎重に考えるべきだと言っております。こういった意見があることについて、大臣の御所見をお願いします。
(答)そういった考え方をされるのも自由かと思います。
<TPP交渉の進捗>
(問)TPP交渉について、今日も事務レベル協議をやっていますが、その後、報告等はあったのでしょうか。それから、閣僚協議が開ける環境が整ったということはありますでしょうか。
(答)現時点ではまだ整っておりません。今の状況をそのまま申し上げれば、今の時点で閣僚協議を開ける状況にはありません。
<インセンティブ改革におけるペナルティについて>
(問)インセンティブ改革に戻るのですけれども、民間議員のペーパーではペナルティがないので、なかなか自治体の努力が進まないという指摘がありましたが、自治体にペナルティを課すということについてどうお考えかお聞かせください。
(答)何をもってペナルティとするかという考え方の違いがあろうかと思いますが、インセンティブがつかないということもペナルティになるわけであります。努力しているところについては、インセンティブがつくけれども、してないところについては、何もないということは、それは広義のペナルティと言えるのではないでしょうか。
アメとムチという話がありますけれども、アメがもらえる人と何ももらえない人とでは、何ももらえない人はお腹がすいてしまいますね。
(以上)