第2回記者会見要旨:平成27年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成27年2月12日(木曜日)18時55分~19時22分
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室
1.発言要旨
第2回経済財政諮問会議について、概要を申し上げます。本日は、伊藤議員が、日本経済再生本部の案件で海外出張のため欠席されました。
本日の議題の一つ目は、中長期の経済財政の展望と財政健全化についてです。まず、内閣府事務方から資料1について、高橋議員から資料2-1、2-2について説明、問題提起があり、その後意見交換を行いました。議員の方々からいただいた主な意見を紹介いたします。
財務大臣から、「民間議員の御提案は、PBの黒字化と同じ意味だと理解する。目標を変更したと思われると、これまでとの整合性を問われることになるので、誤解を与えないよう注意が必要である。日本は財政事情が厳しいので、PBの黒字化を目標にしているが、本来は財政収支の改善が必要。PBの黒字化は中間的な位置付けと認識すべきもの。それよりも弱めるような誤解を与えるようなことがあってはならない。」
民間議員から、「PBの黒字化を変更するということではないが、黒字ありきで歳出と歳入を動かすということではない。GDP比3.3%改善するということで、経済成長と財政健全化の両立を重視する姿勢を明確にするべきだという提案である。」
財務大臣から、「ドイツは、財政均衡させたところ、景気が悪化した。それではいけない。経済再生と財政健全化の両立が重要ということはそのとおりである。」
民間議員から、「2015年度は消費税率引上げを見送ったにもかかわらず半減目標を達成できる見込みとなった。経済再生や歳出改革が進展しているからであり、この流れを強めていく取組が重要である。」
黒田日銀総裁から、「持続可能な財政構造の確立を図ることは、持続的な経済成長を実現する上で必須。したがって、2020年度の基礎的財政収支の黒字化に向けて具体的な財政健全化のための計画を策定することは重要であり、諮問会議でしっかり議論をしていただきたい。」
民間議員から、「20年間続いたデフレの恐ろしさを十分認識し、デフレから抜け出すことを、何をおいても第一の目標にすべきである。政府歳出の無駄に切り込むために、「見える化」、適時のデータの開示がなされることが重要である。医療費が増加すると社会保険料負担が上がり、賃上げ効果を低減させることになるので、医療費を削減することが重要であり、自治体間の競争を高めていくことなどが大事だ。また、民間の参入を高めて、創意工夫、効率化を図ることが不可欠である。地方財政についても「見える化」が必要であり、頑張った自治体へのインセンティブをもっと効かせるべきである。税制については、若い世代が共働きで子育てしやすくなるよう見直していくことが必要であり、その原資は、老年世代からの移転で賄うべきである。」
民間議員から、「財政健全化に向けた計画策定に際して、5点申し上げたい。1、過去の経験に学び、できるだけ具体的な政策目標、手段、工程を明らかにして適切に進捗管理すべきである。2、実質2%、名目3%を超える経済成長を目指す意気込みが大事である。公的サービス分野への民間参入は重要。3、改革の痛みを乗り越えるため、国民理解を得る取組が重要である。4、2020年度のPB黒字化は通過点である。2020年度以降を見据えた改革努力が必要である。5、消費喚起のためにも、医療費も適正化し、企業の保険料負担を抑制していくことが重要である。」
高市大臣から、「地方行政サービス改革においても、民間委託などを進めることは重要。都道府県では相当取組が進んでいる分野もあるが、市区町村も含め今後取組を推進したい。地方交付税の算定については、地域の元気創造事業費などにおいて、行革や地域活性化に向けた取組などを適切に算入するよう改善していきたい。」
民間議員から、「2020年度の要対応額はGDP比1.6%、9.4兆円に上る。ベースラインケースでは16.4兆円にもなる。何としても経済再生ケースに持っていかなければならない。その上で、5年間で約6兆円増加する社会保障費や約10兆円増加する地方交付税などの歳出をどうやって抑制していくか、夏までにしっかり検討していきたい。地方でもPPP/PFI、コンセッションを進めていくべき。」
次に二つ目の議事として、「経済の好循環の強化に向けて」について、新浪議員より資料3-1、3-2について説明、問題提起をいただいた後に意見交換を行いました。主な意見を紹介いたします。
民間議員から、「日本は世界的にみると平等社会。ただし、若年層のジニ係数が上昇していることを懸念する。この背景には非正規化ということがあるが、特に若年層の不本意非正規労働者に対して、政府は重点的に対策を講じていくべきである。」
同じく民間議員から、「ピケティの共同研究者が、『日本は格差を縮めることよりも成長することが大事』と書いていた。アベノミクスの最重要点は好循環を拡大することだが、若年層やひとり親世帯には、きめ細かな対応をとるべきである。格差は色々なデータがあるので、政府は多角的に検証することが必要である。」
ここで総理から発言がございました。ポイントを紹介いたします。
「本年夏までに策定する経済再生と財政健全化の実現を目指した計画に関し、基本的考え方や進め方について、民間議員より御提言や、財務大臣等から御意見をいただいた。2020年度の財政健全化目標については堅持する。
本日の議論を踏まえ、学識経験者や民間の提言等も参考にしながら、民間議員を中心に論点整理を進め、甘利大臣には、関係大臣と協力し、計画策定に向け、更に検討を進めていただきたい。
さらに、所得の状況について、地域活性化の観点を含めて議論を行った。アベノミクスにより、経済の好循環の拡大を図り、全体をしっかり底上げしていくよう、引き続き取り組んでまいりたい。」
最後に私から、「経済再生と両立する財政健全化計画については、本日の議論及び総理指示を踏まえ、まずは民間議員を中心に論点整理をお願いし、検討を進めていきたい。」
以上です。
2.質疑応答
<経済再生・財政健全化の基本的考え方の位置付けについて>
(問)本日、民間議員から提言があった3.3%程度のPB赤字の改善ですけれども、これは目標ではないと、目標を変更したと誤解されないようにという御意見もあったようですけれども、これが目標ではないとすると、この位置付けはどういったものだと理解したらよいでしょうか。
(答)現状で、中間点でマイナス3.3%ですから、具体的に言えばPBを均衡させるためにはあと3.3%縮めるということです。それをどういう作業で縮めていくかと、消費税分で1%弱だとすると、各年度0.5%ずつ縮めていかないとそこに達しません。ただし、毎年度一律ではなくて、消費税を引き上げたときにはダブルで重ならないようにすることが必要であるということを、より具体的に書くと、こういう形になってくるのではないでしょうか。
(問)目標ではなく指標のようなものだというふうに解釈したらよいのでしょうか。
(答)はい。黒字化を達成するということは、何ら従来と変わっていないわけです。そこに達していくためには、こういう改善努力をしていくということです。やみくもに歳出カットをするだけではなくて、アベノミクスが今回のマイナス3.3%までなぜ改善できたかといえば、歳出改革と税収を上げる経済成長は分子・分母の関係にありますけれども、その両方ができたので達成ができたわけですね。消費税を10月から上げるということを延期したにもかかわらずできたというのは、歳出改革と経済成長の両方が相まってできたということです。この路線をしっかり2020年度に向けてとっていくという意味合いも入っているということです。
<経済再生・財政健全化の基本的考え方の趣旨について>
(問)このマイナス3.3%を改善するために、1%ほどの消費増税の他に、2%分というのがあり、それを0.5%ずつ5年間かけてやるのだというのは分かるのですが、なぜ、パーセンテージの形で説明されたのか。しかも、このやり方を原形とするのが、夏にこの計画のフレームを出していくアイデアとして非常に良いと大臣は判断されているのか、教えていただけますか。
(答)先ほど紹介した中で財務大臣からもありましたけれども、歳出カットだけに全精力を投じて、つじつまは合ったが景気は失速しましたということになっては元も子もないわけで、発想としては経済を大きくしていくということを常に忘れてはいけないと。対GDP比も、GDPを大きくしていくという分母、そしてPBを削減していくという分子、その関係を常に念頭に置いておかないと、数字は達成できたが景気は失速して元の木阿弥ですということになりかねないという意味が込められている。ですから、常にアベノミクスの視点を忘れないで、分母の経済規模を大きくしていきながら、分子のPBを削減していく、両方があってはじめて経済再生と財政再建はできるのだというメッセージが込められているということです。
(問)そうすると、この各年度0.5%ずつ改善していくというやり方を基本に、この夏に考え方を示す、道筋を示すというイメージなのでしょうか。
(答)残っている赤字幅を削減するのに、経済を成長させ、もちろんPBの改善もしていく。経済を成長させていけば税収が増えていくわけですね。そして、結果として黒字化が達成できるというように持っていきたいということです。つまり、残りは全部歳出カットでやるということだけだと、税収を増やし、分母が大きくなるということを忘れがちになる。
それから、黒字化後については、従来の言い方だとPB改善後は若干のプラスにしていくという形だったと思います。
現状のケースのままでも金利と成長率の関係で比率が下がってしまいます。何もしないでも下がっていくということで、その間は、財政規律を緩めていいのかという発想が出たりしかねない。だからそこへの自戒も込めて、対GDP比がこのままでもそんなに下がるのだから、どんどん財政出動をしろというようなことにならないようにということも込めている意味合いです。
(問)そうすると、先ほどおっしゃいましたけれども、基本的にPBというのは分子をゼロにするというのが基本目標だと思うのですけれども、それは維持されるということですね。
(答)そうです。なおかつ、経済規模、GDPを大きくしていく。その作業自身が当然税収にはね返ってくるわけですから、そうするとやみくもなカット方式ではなくて、税収が増えていってPBがゼロになっていくということです。非常に分かりづらいかもしれませんけれども、歳出カットだけで無理やり達成しようとすると、かつてそういう試みもありましたけれども、あるときまで達成はできましたが、経済が倒れましたということになりかねない。歳出カットすると同時に税収を増やしていくと、ということはPB自身の構成要因とその外側に分母の部分に経済規模というのがありますから、これを伸ばしていくという発想を常に持っていかないと、税収が増えて、税収増と歳出カットで、合わせ技でいくという形にならないのです。そういう意味です。
<PB黒字化目標との整合性について>
(問)3.3%というのは黒字化と実質的に同じ意味だということですが、ただペーパーに一言も黒字化というものが入っていないと、いかにも緩めているという懸念が生まないでしょうか。
(答)緩めているというより確実にしていきたいということです。やみくもに黒字化ということになると、それ以降失速する危険性があります。要するに、結果として黒字化になるような手当をつくれば、それから先もその線で行ける。目標に向かってカットだけでやみくもにやっていくと、そこまでは達成できたけれども、そこで息絶えて、それ以降が終わりということになりかねない。結果としてそういうところを達成できるようにすれば、道がそのまま進んでいくから、より黒字化に向けて健全になっていく。それはPBをマイナスゼロにする際に、歳出カットだけでゼロにするのではなくて税収増でゼロにしていくという方法ですよと。それはすなわち経済規模を大きくしていくという分母の発想がないと、税収増は消費税率引上げだけで一時的に図れるかもしれないけれども、その後失速するということですから、無理に達成したが、それ以降はアウトですというのではなくて、そこに向かうような道筋をつくって、結果としてそれが達成できれば、その路線のままずっといけるということです。
(問)ただ細かいことを申し上げるようですが、黒字化と同じという意味であれば3.3%程度の改善ではなくて3.3%超と書かれるべきではないかという気もしますが、いかがですか。
(答)そこは、経済指標の変動がありますので3.3%とか、とにかく黒字になるような数字を達成するというふうに考えてください。3.3%程度と。3.3%で切ってしまうと、0.1%達成できない場合もあるということです。というのは、マイナス3.3%というのは、今日の時点でまだ予測値ですから、それをゼロにするには3.3%程度ということで表現していると。
(問)2020年に達成しないという意味ではないと。
(答)ではないです。2020年に達成すると。手綱が緩んでいるということを書いているところがありましたけれども、むしろ逆です。
そうではなくて、それをしっかりさせていくために、こういう表現になっています。カットだけでやれば、そこまではたどり着いたけれども、それから先が全てを使い果たして、体力も使い果たして倒れて、やたら強力な経済対策をまた打たなければ元に戻らないということにならないように、結果としてそこに来るように誘導していけば、そのまま、この力が更に拡大していくと。そのまま移行できるということです。
<2%を超える成長について>
(問)民間議員の発言の中で、要対応額として9.4兆円あるというような話がありました。つまり、恐らくアベノミクスが成功して2%以上の成長になっても、まだPBとして9.4兆円の赤字が残るということを考えますと、例えば今年の夏に向けて、歳出削減によって、なるほどこれで9.4兆円を5年間で圧縮できる、というような具体的な計画をこれからつくっていくということなのでしょうか。それとも、更に強い成長、つまり2%を超える成長も込みでやっていくということでしょうか。
(答)それも込みです。そっちもやっていくということです。再生ケースというのは最初から経済成長を織り込んでいます。それを更にエンカレッジしていく手だては何があるのか。例えばTPPによって経済規模が拡大して税収に貢献するとか、あるいはマイナンバーが入ってくると税の捕捉がよりできるようになり、税収に貢献するとかですね。それらを加算していくことがどこまでできるかということですね。それ以外に、成長戦略の強化ということもあるかもしれません。最後は民間議員に色々と検討してもらい、提示をしていただくことになっています。
<株価について>
(問)株価ですが、一時1万8,000円を回復し、結果的に7年7カ月ぶりに終値で高値更新ということになりましたが、御感想があれば。
(答)これは、アメリカの出口戦略が順調にいっている。あるいは、機械受注が2期連続、特に今回はかなりの伸びを示していることなどを好材料としていると思います。それから、景気動向指数や景気ウォッチャーもかなり改善してきています。全体が上向きに向かっているということを受け止めて、1万8,000円直前を付けたのだと思います。
(問)アメリカの出口戦略というのは、円安につながっているということでしょうか。
(答)そうです。ドル高すなわち円安です。
(以上)