第19回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年11月18日(火曜日)20時08分~20時44分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

諮問会議についての報告をさせていただきます。
今回が19回目であります。本日は、まず点検会合について御報告をいたしました。続けて、内閣府事務方から資料1、高橋議員から資料2について説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「企業収益は過去最高であるが、設備投資が弱く、雇用は完全雇用に近く、賃金は伸びているが、消費が弱いなど、経済のバランスが悪い。それに対応するために、次の3点が重要である。1.低所得者層に重点を置いた対応、2.成長戦略の加速、3.企業収益を賃金増につなげていく。そして経済の好循環をつくっていくべきである。」
同じく民間議員から、「7-9月期のGDP速報値は、在庫の取崩しでマイナス成長になったが、最終需要はプラスであり、企業業績を見ても景気の実態は悪くない。10-12月期は3期ぶりにプラスになるであろう。今がデフレ脱却の正念場であり、思い切った対策で好循環の2巡目をまわすべきである。経済界として、設備投資、研究開発、賃上げに取り組んでいきたい。そのために政府にも企業活動に資する法人税改革などをお願いしたい。」
同じく民間議員から、「消費者マインドが弱まっている。医療、介護、農業、観光などの分野でもっと思い切った規制改革を推進すべきである。子育て世帯に対するバウチャー支給なども検討課題である。これらにより成長によって歳入増を図る。歳出面では、社会保障の重点化、効率化に徹底して取り組むべきである。」
ここで総理から御発言がありました。発言ポイントを紹介申し上げます。
「最近の我が国経済については、雇用者数が増加し、名目雇用者報酬が高い伸びとなるなど前向きな動きが続いているものの、昨日公表された7-9月期のGDP一次速報においては、個人消費に足踏みがみられる。 本日は、有識者・専門家による「今後の経済財政動向等の点検会合」の報告も踏まえ、現下の経済状況や、その対応策について議論を行った。
「経済の好循環」を確かなものとし、地方にアベノミクスの成果が広く行き渡るようにするため、1.エネルギー価格の高止まりによって影響を受ける中小企業や地方の方々にしっかり目配りをしていくことや、2.しごとづくりなど地方の活性化を促していくことに重点を置いて、必要な対応についての準備を早急に進めていきたい。
議員の皆様方には、点検会合に精力的に参加いただいたことに感謝を申し上げる。」
以上であります。
次に、経済対策に関する総理指示について申し上げます。お手元にお配りしておりますが、本日、安倍総理から、経済対策の取りまとめに向けた準備を進めるよう御指示をいただきました。総理からは、経済対策においては、次の3点、すなわち、
1.エネルギー価格の高止まりなど物価動向や消費に関する地域の実情に配慮しつつ、地域の消費の喚起など景気の脆弱な部分に、スピード感を持って的を絞った対応をすること、
2.しごとづくりなど地方が直面する構造的な課題への実効ある取組を通じて地方の活性化を促すこと、
3.災害復旧等の緊急対応を講じ復興の加速化を進めるなど、災害・危機等への対応を図ること、
について重点を置くように、との御指示をいただいたところであります。
私からは以上です。

2.質疑応答

<経済対策について>

(問)総理からの経済対策の指示について2点お伺いします。これは、いつを目途にまとめて、規模などが出てくるのはいつになるのかというのが1点。それから、財政再建について、2015年度のPB目標について触れてありますが、「守る」とは書いてありません。先程の総理の官邸での会見でも、「2020年度の目標は堅持する」とおっしゃいましたけれども、2015年度については触れませんでした。2015年度目標は堅持されるのでしょうか。

(答)経済対策は年内できるだけ早い時期にまとめたいと思います。解散ということになりましたから、これはもちろん具体的な予算化をして提出をするのは年明け国会の冒頭であります。効果的にできるだけ迅速に成立をしていただいて執行できるようにしたいと思っております。
それから、2015年度のPB赤字半減目標についてであります。補正予算を組みます。その規模と財政健全化目標との整合性を付けつつ、最も両方に効率・効果がある対応をしたいと思っております。2015年度半減目標については、最大限努力をするということだと思います。

(問)今の時点で守る、堅持するとは断言できないということでしょうか。

(答)2020年堅持というお話は出ました。2015年について、半減目標、これは補正の規模との絡みがあります。総理のお考えは、財政再建の旗は決して降ろさないということであります。直前に迫っている半減目標でありますから、最大限この達成に向けて努力をするというところでありまして、補正予算の規模との絡みになってくるかと思います。


<2020年度のPB目標について>

(問)2020年の目標ですが、総理はこれの具体的な姿を描くということをおっしゃいました。現段階では、PBの黒字化には11兆円あまりの対応額がありまして、これを増税もしくは歳出削減で賄うのは、かなり難しいと思うのですが、これをどういう形で描かれるのか。それを描くときには、当然、更なる増税の可能性も含まないと達成は不可能ではないかと思われますが、その覚悟はお持ちなのか、その辺りのところを教えていただけますか。

(答)確かに、予定どおりに10%に上げていく道筋の中でも2020年度は11.0兆円、黒字化には届かないということになります。そこは一層の行革努力をする、あるいは成長戦略を加速させて税収増を図る。両方の面から対応していくプランをつくるということになっておりました。今回、1年半10%への引上げがずれるわけでありますけれども、それも加味して更に一層の成長戦略の加速、行財政改革の加速をしていかなければならないと思います。
総理は2020年に向けた道筋を来年の夏までに示したいということでありますから、選挙後に担当大臣にしかるべき指示が下りるかと思います。

(問)その姿、道筋というのは例えば法律で定めることもあれば、もしくは骨太の方針の中に盛り込んでいくという形もあると思うのですけれども、大臣はどういう形で示していこうとお考えですか。

(答)骨太で示していくというのが素直な政権としての約束の姿だと思います。


<経済対策について>

(問)経済対策について質問なのですけれども、今回は補正に盛り込む経済対策は総理指示で示されている分野にかなり絞り込んだものになると受け止めていいのでしょうか。
それと、政権交代直後の2012年度の補正では公共事業がかなり中心的なものでしたけれども、今回の補正では公共事業はかなり絞り込むというお考えなのでしょうか。

(答)災害復旧等の緊急対応があります。そこの部分以外では基本的に公共事業よりも消費の落ち込み、地方経済の疲弊にフォーカスを絞ってピンポイントの策を打て、という指示でありました。ですから、従来型とは少し違うと思います。


<消費税率の引上げについて>

(問)社会保障を担当する大臣ということで、消費税率10%の先送りの件でお尋ねします。安倍総理は1年半先送りすると先ほど会見でおっしゃられて、1年半後は景気条項も付けずに必ず上げるというふうにおっしゃいました。一方で、同じ会見の中で経済は生き物であるとも述べています。政府として、法改正もしないで必ず2017年4月に上げるというふうに保証、断言できるのでしょうか。

(答)この時点では、デフレの脱却自体が危うくなってしまったらアベノミクスが目指す基本が瓦解してしまうと。デフレ脱却をできないと名目経済が拡大していかないと。名目経済が拡大していかないと税収は増えていかないと。税率を上げました、税収は変わりませんあるいは税収は減りました、といってしまっては元も子もないということを総理は心配をされているわけであります。
そこで、消費税を18カ月先送りすると。そのときには毅然たる決意で景気条項、今度のような判断条項を外して必ず引き上げるという決意を示されました。ということは、そこまでの間にアベノミクスにとって必要な要件を揃えておくということになります。必要な要件は何かと言いますと、好循環が二巡、三巡して、人々の心からデフレマインドが払しょくされる。つまり賃金は実質賃金も上がってきて、これから先も堅調に、経済成長とともに上昇していくという信頼を国民の皆さんに持っていただくということが大事で、そのための時間を下さいということです。
ですから、それを確実に成し遂げるという決意の下に、1年半実施を延ばした消費税は、きちんとそのときには実施をしていく。それが財政に対する信頼、日本が発行する国債に対する信頼、そして社会保障の継続性に対する信頼を確保するということになるということでありますから、これは相当総理の重い決意だと思います。

(問)1年半後にマイナス成長だったとしても上げるということでよろしいのでしょうか。

(答)そうならないように今取り組んでいるわけであります。またはそうしていくという決意の下に弾力条項を外したのだと思います。


<民間議員の発言について>

(問)今お話いただいた中で子育て世帯へのバウチャーの支給という話も民間議員から出たようなのですけれども、これまで地域振興券などいろいろあったかと思うのですが、このバウチャーというのはどのぐらい検討する御予定なのでしょうか。

(答)今は総理からの御指示は3項目についてです。災害復興を除く2項目についてです。その総理の御指示に従ってこれから詳細を組み立てていきます。各省から上がってくること、それから与党から上がってくることを精査して、この趣旨に沿っているかどうかをチェックしながら具体的な予算に落とし込んでいきたいというふうに思っております。
まだその民間議員からの提案が具体的に形になるのかあるいは別の形をとるのかはこれからの検討であります。


<財政健全化の見通しについて>

(問)2015年度の件について確認なのですが、消費税先送りになるので厳しくなるのは当然だと思うのですけれども、最大限の努力をされるということで、それは基本的に目標と同じなのかなという感じがするのですけれども、あえて目標という言葉を使われたくないと、そういうことになるのでしょうか。

(答)来年度の予算編成をする際には目標値が達成されるよう最大限の努力をするわけであります。しかし、経済対策、景気対策をする場合は財政再建にとってはマイナスに働きます。その目標年度までの年数が複数年あるときには間違いなく、これは堅持しますと言い切れると思います。でも、来年です。来年に景気対策をやらない場合でも、ギリギリあるいはそれに近い水準でクリアできる見通しですという中に、経済対策が割り込んでくるわけであります。割り込んでくる以上は、当然、目標を来年達成できるかということについては、黄色信号が付きます。ただし、税収増がどこまで見込めるか、それから歳出削減をもう1回どう見直せるかと、そういう要素が入ってくるわけであります。でありますから、現時点で補正予算の規模を大きくすればするほど、目標達成は難しくなるわけです。
消費の落ち込み、地域経済へのてこ入れ、エネルギーの高止まり対策等々、総理の指示を具体的な補正予算にしていく中で、景気対策と財政再建、税収増、それから歳出削減努力、三つ四つを連立方程式で解いていかなければならないわけであります。でありますから、現時点では最大限努力をするという以上のことは言えないということです。


<社会保障財源について>

(問)今回、総理が消費税の引上げを1年半先送りしたということで、来年度予算とか再来年度の予算で社会保障の充実分に消費税を充てる分が多少あったと思うのですが、それについてはどのような形になるのか、現時点で大臣にお考えがあれば、お聞かせください。

(答)予定どおりに来年の10月に10%に引き上げた場合に、充実分がどう変わるかというと、現状の1兆3,500億円から1兆8,000億円に引き上がるわけであります。この差が4,500億円あります。それをどういうふうに、何としても確保していくということを考えるのかどうか、それは総理の具体的な来年度予算に向けた御指示があろうかというふうに思います。あるいは、もしそうであるならば、一部は補正で見るのか。大半は年度予算だと思いますけれども、そういう具体的な作業の御指示はこれからあるのではないかと思います。


<社会保障・税一体改革について>

(問)今の質問に関連してですけれども、2025年までの社会保障改革というのを政府は描いていると思うのですけれども、今回18カ月、消費税が先延ばしになりましたけれども、そのスケジュールですが、来年度予算もそうですけれども、この全体的なスケジュールというのが変わり得るのか。特に社会保障の充実、そこの部分がどうなるのかというところについて明確なお考えとか、財政再建のお話もございましたけれども、社会保障の充実というところも非常にこれから大きなテーマになってくると思うのですけれども、そこについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

(答)2025年を目途とする社会保障・税一体改革、これの本筋は外さないようにしたいと思っております。時間的余裕を頂いておりますから、ゴールは同じところに着地できるように最大限努力をしてまいります。基本的には、その最終着地点はぶれないようにしたいと思います。


<補正予算規模について>

(問)補正の関係ですけれども、先ほど大臣から、PB目標達成で連立方程式というようなお話があったと思うのですけれども、そういうことも踏まえた上で、補正の規模はどの程度が望ましいのか、何かお考えがあったら教えていただきたいのと、あと、この総理の指示は、紙として諮問会議で出されたもので、総理は読み上げていたわけではないということでよろしいのでしょうか。

(答)こういう内容でということで、諮問会議の後にこれに基づいて対応するようにという指示がありました。
これから具体的な詰めの作業です。党からの要望もこれから上がってくるということになるわけですから、そのすり合わせもやりながら、規模を詰めるときには、先ほど言いました2015年度半減目標に極力到達するような調整がどこまでできるかということもやらなければならないと思います。


<アベノミクスの評価について>

(問)資料から若干離れるのですが、今回の先送りにつきまして大臣に是非お伺いしたいことがありまして、国外のお話なのですけれども、例えばG20に出席されていたIMFのラガルド専務理事なのですけれども、例えば記者会見で、10%引上げにつきまして、実施されることを期待すると述べて、また、消費税率の引上げは第二の矢に当たる財政政策の重要な柱の一つだとも言われたと思います。こうした中で、今回の政府の決定なのですが、海外のこれまでの様々なアベノミクスに対する評価への影響について、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

(答)アベノミクスは、基本としてはうまくいっているのだと思います。現実に手順から言いますと、日本経済を元気にする環境を整えて、企業の収益を引き上げていく。それから、企業が行う投資のための環境を整える。そして企業収益が上がったものを、設備投資、下請代金の改善、賃金の上昇に向ける。そして賃金の上昇が、消費を刺激し、さらに企業収益の拡大、向上に貢献するというその循環を回していくということを申し上げました。それは全部同時には行えません。玉突きで動いていくことです。実際、その玉突きが起こっているのか、起こっていないのかと、あるいはどこかで止まってしまっていて、フリーズしてしまったのかという分析が大事です。企業収益は、過去最高です。あらゆるデータをとって、過去最高です。そして、雇用も極めて堅調です。総理が会見で申し上げましたけれども、大卒の内定率も高卒の内定率も、恐らく6年ぶりぐらい、あるいは17年ぶりぐらいに良い数字が出ています。全て良い数字が出ています。では、それから賃金の改善に向かっているのか。賃金も上がっております。7-9月期のGDP速報は厳しい数字でありましたけれども、そういった中でも、雇用者報酬というのは2.6%、前年同期比で上がっているわけであります。名目で、総額賃金も上がってきております。
ただ、課題は物価を超えてまで上がっていないと、実質賃金がマイナスであるという点です。ただし、これは申し上げていますように、物価を少しずつ、弱インフレにしていくという、デフレからの脱却政策ですね。それに加えて、ワンショットで消費税率引上げの分が乗っかりますから、1年でいきなりオーバーライドするということは、これは不可能です。だから、問題はそれが継続していくのかどうかということが大事なのです。実は経団連がまとめたこの冬のボーナスについても、5%以上のプラスになっています。それは去年もそうだし、今年もそうだし、2年連続冬のボーナスが5%超プラスということは20年ぶりのことです。ですから賃金が改善に向かいつつあるというのも事実であります。ただ、完全にオーバーライドしていない中で、もう一回、消費を下押しする力となってしまう消費税引上げをここでやるのかということなのです。好循環が回っていることは誰の目にも明らかです。数字が示しています。しかし、何巡かしないと、本来の姿、我々が目指す姿まで行きません。その前に消費税を引き上げてしまうと、そのモメンタム、勢いがぐっと下押しされてしまう。そうすると、余計時間がかかってしまうのではないかと。ですから、その1巡目ではなく、2巡目、3巡目がしっかり回って、確実に好循環は自動回転を始めましたと。そして、雇用者にとっても好循環を実感できると。デフレマインドを払拭できた、そういうときに消費税は引き上げると。それまで時間をくださいということだと思います。


<衆議院解散について>

(問)今日は正式にというか、総理から解散というお言葉がありましたけれども、受けとめをお願いします。

(答)総理は大きな税の変更を伴う決断をし、そして、その税の変更が、アベノミクスが頓挫したと誤解を受けないように具体的な説明をし、この道しかないと、この道しかないから、この道で行きますということを掲げて信を問いたいと。それは政権議席をいただけたら、これしかない道に邁進をして、きちんとアベノミクスの完成形をお示ししたいということで、解散を決意されたのだというふうに思っております。私は、総理の思いに全面的に賛成であります。


<議席の獲得目標について>

(問)今お話のあった議席のことなのですけれども、アベノミクスがうまくいきつつあるというか、かなりうまくいっているという状態の中で、自公で過半数が勝敗ラインだとおっしゃったのは、少し低い感じがするのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。

(答)総理の謙虚な姿勢だと思います。とにかく目いっぱいの数をいただいていますから、なかなかこれから議席を伸ばしていくというのは大変だなと思います。それで、総理に対しては党内からも、解散をすれば、どううまくいっていると説明しても、議席を減らすリスクの方が高いという、心配や批判があるのは総理も先刻ご承知です。しかし、議席のためにやるのではなくて、デフレを脱却して、安定成長軌道に日本を取り戻していくというためにやるわけです。私と総理との間の約束は、世界に冠たる経済大国のポジションを日本に取り戻して、それを為し得た内閣であるという歴史的評価をとりましょうということでやっているわけであります。


(以上)