第3回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年3月19日(水曜日)19時13分~19時48分
  • 場所:内閣府本府仮設庁舎講堂

1.発言要旨

第3回の経済財政諮問会議、そして第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議の合同会議が先程終了いたしました。概要を御報告申し上げます。
一つ目の議題、「日本の活力の発揮について」について、伊藤議員から資料1-1に基づき法人税収と景気との関係や付加価値生産性の向上を実現するメカニズムについて、茂木大臣から資料2に基づき高収益体質への転換について、麻生大臣から資料3に基づき法人課税について、それぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を御紹介いたします。
麻生副総理から、「税収が見積もりを超えたら、その分税率の引下げに回すとの民間議員の主張には、無理があるのではないか。エネルギーが経済活力のためにも最も重要である。電力コスト抑制のために、再生エネルギー買取価格の引下げ、電力システム改革による競争促進が重要である。」
民間議員から、「特許、ブランド、デザイン等の知的財産がどんどん外に漏れてしまうのが問題。国をあげて、知的財産マネジメントを考える必要がある。」
民間議員から、「税制のフォワード・ルッキングなガイダンスを示すことも重要である。国・地方とも、法人課税に頼り過ぎないトータルな税制を、財政再建とのバランスをとりながら構築し、将来の道筋を「骨太の方針」に反映していくことが大事。」
民間議員から、「デフレから脱却しつつある中で、GDPに対する法人税収のウェートが伸びてきているというのは、まさに構造的な税収の拡大と言える。将来的にあてにならないものではなく、アベノミクスの成果は構造的に残るもので、これを中期的な視点に立って法人実効税率の引下げに活用していくべき。」
麻生副総理から、「重要なことは、必要な財源を確保すること。これがないと、2020年の財政健全化目標の話が飛んでしまう。」
茂木経済産業大臣から、「企業秘密については、いかに早く、実効的に守れるか、検討してまいりたい。」
新藤総務大臣から、「地方交付税の原資も含め、法人関係税収の6割が地方分である。地方財政への影響も十分勘案した検討が必要。」
菅官房長官から、「総理は、法人税率を引き下げることを明言されている。来年から取り組んでほしい。何年の間で何%下げていくのか明らかにすることにより、企業が見通しを立てやすくすることが大事であり、しっかり議論をしてもらいたい。」
続いて、経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議を開催し、2020年に向けた戦略的課題の一つとして、女性の活躍促進について議論を行いました。本合同会議は、前回諮問会議での総理指示を受け、今回初めて開催をしたものであります。
まず、諮問会議の伊藤議員から、①労働参加率と生産性の向上に向けた取組、②少子化対策の目標と政策の優先順位の明確化について、御提案がありました。次に、競争力会議の長谷川議員から、学童保育の量的拡充と質の向上、働き方の選択に対して中立的な税制・社会保障制度、などについて御提案がありました。
その後、森大臣から資料5に基づき女性の活躍促進に向けた検討事項及び少子化対策について、田村大臣から資料6に基づき学童保育及び社会保障制度について、下村大臣から資料7に基づき学童保育について、そして麻生大臣から資料8に基づき税・社会保障制度等について、それぞれ説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見を御紹介いたします。
民間議員から、「次元の異なるレベルで女性の活躍を本格的に進めていくためには、これまで壁になっていた女性の働き方に関する価値観論争に終止符を打つに相応しいメッセージが必要である。」
民間議員から、「カギになるのは税・社会保障制度の見直しであり、意識の壁を破るためにも何かを変えていくことが必要。第3号被保険者制度を見直すべきである。社会保障制度改革国民会議の後継組織で検討されるべきである。」
民間議員から、「改革のドリルを握るのは、一義的には担当大臣だが、同時に、どこにドリルを当てるのかというセンターピンが必要であり、それは経済財政諮問会議と産業競争力会議でほとんど一致している。女性の活躍推進は、配偶者控除と第3号被保険者の問題を解決しないと進まない。」
民間議員から、「経団連は、女性活用の一環で、役員、管理職登用への目標設定、開示を進めており、積極的に取り組んでいく。これは、義務的なクオータは馴染まない。経団連では、各企業に自主行動計画を作成するよう働きかけていく。」
民間議員から、「在宅勤務を含む新しい多様な働き方の確立が重要である。裁量労働制にとどまらない検討が必要。3年以上かけて検討する話ではなく、迅速に全国で実現すべき。配偶者控除、配偶者特別控除制度、3号保険の最終的な撤廃も見据えて、社会保障全体の圧縮を前提に議論すべき。」
民間議員から、「日本の場合、出生率向上には、高齢化対策の支出との関係で、少子化対策と高齢化対策の支出の比率が出生率に関係しており、制度面が出生率そのものに影響する。」
最後に、総理から発言がございました。ポイントを御紹介いたします。
「春闘について、近年にはない賃上げが実現しつつあり、今後、この動きが中小企業等に更に広がっていくことを強く期待をしたい。我が国の成長力を引き上げる上での最大の潜在力である女性の活躍推進について、本日の議論を踏まえ、甘利大臣、森大臣の調整の下、関係大臣が連携して、次の方針で施策の具体化を進めていただきたい。森大臣においては、人口減少に歯止めをかけるための目標のあり方を含めた少子化対策の具体化について、様々なアイデアを集めながら検討を進めてほしい。下村大臣、田村大臣が協力して、両省の関連施策の一体運用、学校の校舎の徹底活用などを検討し、学童保育等を拡大するためのプランを策定してもらいたい。麻生大臣、田村大臣には、女性の就労拡大を抑制している現在の税・社会保障制度の見直し及び働き方に中立的な制度について検討を行ってもらいたい。役員、幹部、管理職などへの女性の登用促進のための施策を、関係大臣において幅広く検討してもらいたい。」
以上を踏まえ、私から、「次回は、外国人材、対日投資など、日本の成長にどう取り込んでいくのか、これまでの考え方にとらわれることなく、オープンな日本の将来を創造できるよう、合同会議の場でしっかり整理をしたい。また、骨太方針の策定や成長戦略改定に向けた今後の取組強化と併せて、アベノミクスを推進する中で実現された国民にとっての身近な成果、例えば、ビザの緩和等を通じた対日観光客の増大や賃金の引上げ状況などについて、節目節目で国民に分かりやすく情報提供していくことが重要である。私のところで、こうした成果をしっかりとまとめたい。」
以上です。

2.質疑応答

(問)民間議員から今日、提案がありましたが、総理の挨拶に入っていた文部科学省と厚生労働省の学童保育の事業の一元化について、現状の問題点と、この一元化する狙い、それからこれをどう成長戦略に結びつけていくか、お聞かせいただけますでしょうか。
(答)待機児童については、保育所の受入児童数を、アベノミクスのスタートから5年間で40万人、潜在需要も含めて拡充をするというプランは着々と実行されつつあります。併せて、「小1の壁」と言われていますけれども、学童保育の受け皿が、文部科学省と厚生労働省でばらばらであります。厚生労働省関係者が、学校の空き教室、空き時間を使うことについて文部科学省はネガティブであり、一方、文部科学省は毎日学童保育の受け皿を設定するというところまではいかないということであります。両省の壁を打ち破って、文部科学省、厚生労働省が連携をして空き教室を活用する。ところによっては、厚生労働省の対応でやっている、空き教室があるにもかかわらずプレハブ施設を作るなど、はたから見れば無駄が行われているわけであります。その連携をしっかり取ってやってほしい。
連携が取れない原因は、責任体制がどこにあるかということであります。これも、例えば国がガイドラインを示し、市町村がそれを受けて責任を持って一元化してやっていく等々、いろいろアイデアが出てくるかと思います。文部科学省、厚生労働省の障壁を越えて一元化して、成果を上げるようにという指示がありました。
(問)少子化対策について、民間議員の提案として数値目標が書いてあります。2020年から2030年にかけて出生率を人口置換水準、つまり2.07にするという目標を掲げていろいろやっていくべきだという意見ですけれども、少子化対策のポイントに数値目標を掲げることについては、これまでも賛成意見と反対意見の両方がありました。賛成意見は、目標を掲げないとしっかりした対策にならないという意見で、反対意見は、女性の出産を行政が押しつけることにつながりかねないのではないかという意見があって、ちょっとデリケートな話なのかなと思うのですが、政府として、こういった類の目標を今後掲げていくのかどうか、どのような見通しでしょうか。
(答)2.07という数字は、人口規模を維持するのに必要な数字であります。50年後には、今の出生率のままでいけば、人口が8,000万人台になってしまうということで、それから先は本当に急激に減っていってしまうわけであります。国家の一番の存亡の際になるわけであります。
一方で、御指摘のとおり、子供を産む、産まないというのは強制されるものではないし、目標として掲げるものではない、つまり女性の自由な意思であると、それはそのとおりであります。そのとおりである中で、人口の維持に必要な出生数になるような環境整備。産む、産まないという選択の中には、産みたいけど現実は難しいという事由があると思います。子供をつくりたい、増やしたい人が、自らの意思が発揮できるような環境整備をしていくことが、やはり政府の役目だと思います。その結果、人口維持に必要な2.07にまで達してくれれば、それは大変良いことだと思っております。
これから民間議員を中心に、強制ではなく、女性の意思を尊重しつつ、子供を欲しい、あるいは増やしたいという人が、その思いを達成できるような環境整備・制度整備をしっかりしていくということであろうと思っております。
(問)今日の民間議員の御意見の中で、130万円の壁、具体的には3号被保険者制度をやめるべきだというような意見が相次いだようですが、それに対する田村大臣や他の閣僚の皆さんから、意見のやりとりがあったら、もう少し具体的に御説明をお願いしたいです。
(答)本日は民間議員の指摘に対してお答えをいただく時間があまりありませんでしたが、健康保険の適用基準について、平成28年10月より、年収130万円以上から106万円以上に適用拡大する法律が既に成立している、という説明はありました。
(問)今日は時間がなくて、議論は深まらなかったようなので、甘利大臣の御見解で結構ですが、この3号被保険者制度の問題は長年の歴史の中でかなりいろいろ具体的な代案も含めた検討が政府内でされてきたけれども、なかなか難しい問題であり、結論が出なかったという問題でありますが、今後、安倍政権としてこのテーマについて、どれぐらいの時間軸でどのように検討していこうというお考えでしょうか。
(答)3号被保険者制度の問題も、130万円、103万円の壁についても全体的に、働き方により中立的な社会保障制度、税制ができるかが重要だと思います。「N分のN乗」についても議論はされていますけれども、実は女性の就労に対して抑制的で、共働きに不利な税制になるのではないかという指摘もあります。税制については、麻生副総理から、「様々な「壁」が存在しているとの指摘があるが、税制としては世帯の手取りの逆転現象、いわゆる「壁」は解消されている。むしろ「意識の壁」が根強く、また、二重の控除が生じているという指摘もある。また、伝統的家族観から配偶者控除の見直しには慎重な意見も根強い。さらに、この問題については所得税の根幹に関わることであり、中長期の視点から幅広く政府税制調査会で議論していくこととしたい。」という発言がありました。
いずれにしても、申し上げたように、働き方に中立的な社会保障、税制度についてこれからも検討を深めていくということになると思います。
(問)働き方に中立な税制について、民間議員がセンターピンだというようなおっしゃり方をされて、ここが中心的な課題になるという御発言もあったようですけれども、これは皆さんの間で、今日、共有されたという理解でよろしいでしょうか。
(答)民間議員の一人がおっしゃったのは規制緩和が大事だということ。総理自身がドリルの刃だとおっしゃっているわけですけれども、ドリルをどこに当てていくかというセンターピンが必要だという発言がありました。
(問)女性の働き方に中立な税制について、一丁目一番地的に皆さんが捉えているわけでは、今日段階では必ずしもないということでしょうか。
(答)女性の社会進出は、アベノミクスにとって極めて大事である。経済成長にとっても潜在成長力は女性が鍵だということは共通の認識です。
(問)その中で税・社会保障の制度というのはどう位置づけられて、優先順位としては高いでしょうか、低いでしょうか。
(答)女性が社会進出をしやすくする、そういう観点から税や社会保障をこの際、抜本的に考えていくということは基本認識だと思います。優先順位は高いと私は思っております。
(問)法人税の話ですが、民間議員から平成25年度の補正予算で、景気回復の税収増を盛り込んでおり、その税収が上振れた場合には、そのうちの構造的な増収の部分を減税の財源として使っていいと言っていると理解しておりますが、この議論に大臣は賛成なのか反対なのかということが1点目。その議論は経済成長によって表れた税収成果をいろいろな支出に使ってもいいという、上げ潮的な発想かと思うのですけれども、こういう議論はどうお考えでしょうか。社会保障と税の一体改革の関係で、こういう議論はあまりよろしくないというところが原点と理解していました。それからこの議論を裏返して言うと、仮に税収が下振れた場合に、増税をしても良いという議論にも、ロジックとしてなるのかなという理解をしていますが、実際にそういうロジックにもなり得るということでよろしいのかどうか、教えていただきたいです。
(答)民間議員から提案されている資料によれば、法人税収とは景気の回復局面とデフレ局面とでは全く働き方が違うということであります。結論から言えば、景気の回復、景気の好転状況の中で上手い設計をすると、最適な法人税率と最大の法人税収の関係がひも解かれてくるということだと思います。OECDのデータでも法人税が低ければ低いほど税収に良いわけでも、高ければ高いほど良いわけでもなくて、ある法人税率の帯の中で税収が一番上がってくるということもあります。それは景気回復ということがバックグラウンドであって初めて効能が出てくるわけであります。民間議員からの提案は、アベノミクスが単発的に一時だけ法人税収が上がって上振れしているということではなく、構造的にアベノミクスが進むことが、法人税収増加の構造要因になってくるはずで、それによって毎年のぶれがなくなってくるはずである。だとしたら、その上振れ分については、一定割合を法人税減税に回して、さらに法人の収益構造強化に資するのではないかという論理だと思います。
バックグラウンドがデフレ下ではないということが前提。それから、上振れが常に出てくるようなアベノミクスが進展していけば、それは好転の構造要因になってくるから単発的なものではない。そうするとそれが永続的に続いていくように、上振れ分の一部を減税に回していったらどうだというような話だと私は個人的に理解しました。
(問)そうするとこのロジックによると、条件としてデフレから脱却したという宣言が必要になるとも読めるのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
(答)少なくともデフレ下ではこのやり方は効かないということだと思います。
(問)法人実効税率の引下げについて、今日の合同会議ではテーマになってないようですけれども、関連して言及するような発言があった場合、教えてください。それと今後の議論ですけれども、合同会議でも法人税率の引下げをテーマにするお考えがあるのでしょうか。
(答)今日の合同会議では発言はありません。次回の合同会議のテーマはグローバル化ですから、そこで議論が出てくるかもしれません。総理は実効税率を下げていくことについては、その方向性について強い意思を持っておられますし、官房長官からはその総理の意を受けて、いつまでにどのくらいという見通しを早く出すべきだという発言がありました。
(問)明日で、日銀の黒田総裁が就任して1年になるのですが、それについて何かやり取りはございませんでしたか。
(答)特にありません。
(問)知的財産の話が突然出てきているのですが、こういうイレギュラーな議論が出るということは諮問会議ではありなのでしょうか。
(答)関連する枠内です。
(問)次回のテーマのグローバル化で、外国人材と対日投資の話についてですが、「選択する未来」委員会や、対日直接投資に関する有識者懇談会の中間報告みたいなものをもとに議論するという形でしょうか。
(答)まだ、中間報告には至っておりません。未来委員会は年内いっぱいでまとめるということで、骨太方針に中間報告を間に合わせるようにできるか議論していますから、次の合同会議には時間的に間に合わないと思います。
(問)官房長官の法人税の発言について、来年から取り組んでほしいとおっしゃったということですけれども、それは総理の意思として来年から法人税の引き下げに・・・。
(答)総理は来年からという発言をしておりません。ただ、官房長官の思いとしては、総理が法人税減税に強い意思を持っておられる。だから、もう来年からでも取り組んでほしいということだと思います。
(問)少なくとも引下げの方向で、骨太の方針の中では方向性を出すようにということを言われたということで理解してよろしいでしょうか。
(答)総理は今まで国内外、特にダボスでの会議で、法人税減税に取り組んでいくという表明をされているわけです。それを受けて官房長官はそれをしっかり受けて来年からでも、ここは官房長官の思いですね、来年からでも何年以内にどこまでというのはしっかり検討してほしいという発言でありました。

(以上)