第1回記者会見要旨:平成26年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成26年1月20日(月曜日)17時54分~18時42分
  • 場所:内閣府本府仮設庁舎講堂

1.発言要旨

本日は、11時20分より第15回産業競争力会議、14時半から第1回経済財政諮問会議を行いました。まずは、産業競争力会議について、その概要を申し上げます。
本日は、「産業競争力の強化に関する実行計画」(案)及び「成長戦略進化のための今後の検討方針」(案)について、事務方から概要を説明の上、議論を行いました。
まず、「実行計画」及び「検討方針」のそれぞれの内容について、私からポイントを御説明申し上げます。
まず、「産業競争力の強化に関する実行計画」は、産業競争力強化法に基づきまして、当面3年間に実施される規制・制度改革を中心とする施策について、実施期限や担当大臣を明示することで、着実な実行の担保を図るものであります。記載されている重要施策の中には、設備投資促進のための税制改正法案、いわゆる「日本版NIH」の設立法案、電力小売への参入自由化を実施するための電気事業法改正案など、次期通常国会に提出予定の、合計30本程度の成長戦略関連法案が含まれております。
なお、この「実行計画」につきましては、本日、明日の与党での議論を経て閣議決定する予定であります。
次に、「成長戦略進化のための今後の検討方針」は、昨年6月の「日本再興戦略」の策定以降、産業競争力会議の分科会を中心に議論を行った成果を取りまとめたものであり、年央の成長戦略改訂に向けた検討方針を示すものであります。具体的には、次の三つの視点から構成されております。
一つ目は、「働く人と企業にとって、世界でトップレベルの活動しやすい環境の実現」であります。具体的な課題といたしましては、学童保育の待機児童解消策など、女性の活躍推進策、「時間で測れない創造的な働き方」の実現に向けた労働時間規制改革、そして、外国人受入環境の整備など、日本社会の内なるグローバル化、さらに、法人実効税率の在り方の検討を含む事業環境の向上などが含まれています。
二つ目は、「これまで成長産業とみなされてこなかった分野の成長エンジンとしての育成」であります。具体的な課題といたしましては、医療・介護等の一体的サービス提供促進のための法人制度改革、そして、保険外併用療養制度、いわゆる混合診療の拡充、そして、農業の6次産業化の推進、農業生産法人に関する検討などが含まれております。
三つ目は、「成長の果実の地域・中小企業への波及と、持続可能性のある新たな地域構造の創出」であります。具体的な課題といたしましては、都市のコンパクト化を含む地域の成長中核圏の形成、中小・小規模事業者の連携の推進や新陳代謝の活発化などが含まれております。
以上のような説明を受けまして、民間議員からは次のような御発言がありました。
「2040年の少し先には、急激な人口減少で維持できない市町村が数多く出てくる。ヘルスケア分野の「非営利型ホールディングカンパニー」は、コンパクトシティ、健康まちづくりの中心となることができる。ばらまきではなく、拠点を中心にダイナミックにまちづくりを変えていき、同時に医療・介護分野を成長産業としていくといった、ポジティブなまちづくりの議論にすることが必要である。」
「農業改革について、企業参入をどう促進していくかが重要である。農業生産法人をもっと作って、よりフェアな競争をしていくための規制・制度設計が必要である。」
「国家戦略特区との関係では、農林水産物の輸出特区を作って、輸出のノウハウの蓄積をしていくことが必要。」
「農業は、地域経済の発展のコアとなり得るが、ビジネスセンスが必要。農業従事による健康増進という意義も含め、都市部の60代の人材のUターンの仕掛けを考えるべきである。」
「国家戦略特区はスピード感が重要。まず、この通常国会に規制改革項目の追加のための法案を提出すべきである。また、特区の中期の目標を明確化すべき。さらに、特区で農業を取り上げることが重要である。」
「国からのトップダウンの改革は具体化してきたが、自治体によるボトムアップの改革競争も重要である。全国の自治体で社会保障費などの実態を比較可能な形で見える化し、市民にわかるようにするのが先決である。」
「特にITについて技術革新のスピードが速く、世の中が変わっていっている。規制をオープンにして、世界の実験場となることが必要。また、世界の知能を集めることが重要であり、ITや知的財産のためには外国人労働者の活用が必要になる。」
「規制改革は進んでいるが、国民から分かりにくい。政府広報で進んでいることをもっと広めるべきである。」
その後、私から、「検討方針」については、本案をもって産業競争力会議として取りまとめさせていただくことを申し上げました。
最後に、安倍総理から次のような御発言がありました。
「成長戦略の推進は、これからがまさに正念場。来週からの「好循環実現国会」でも、臨時国会を超える30本程度の成長戦略関連法案を提出し、具体化の進展を世界に示したい。本日の議論を踏まえて、「産業競争力の強化に関する実行計画」を閣議決定し、成長戦略関連施策ごとに実施時期と担当大臣を明確にする。直ちに、内閣を挙げてその実行に着手していく。安倍政権の成長戦略に終わりはない。次の三つの視点で更なる構造改革に取り組みたい。1、働く人と企業にとって世界トップレベルの活動環境を実現したい。女性の力を最大限引き出し、日本人の働き方の改革を進める。世界のヒト、モノ、カネを惹きつけ、国内のグローバル化を進める。2、医療・介護、農業を新たな成長エンジンにすべく改革を進める。3、成長の果実を地域や中小・小規模事業者に波及させるとともに、少子高齢化時代に持続性のある、新たな地域経済構造を目指す。今後、中長期の日本の経済・社会の改革を考える視点から、産業競争力会議と経済財政諮問会議が、共通の戦略的課題を設定し、共同で具体的な政策立案を進めてもらいたい。」
以上であります。
続きまして、本年第1回目の経済財政諮問会議が先ほど終了いたしましたので、その概要を申し上げます。
一つ目の議題として、経済財政の1年の成果と今後の展望に関し、内閣府事務方から資料1及び2について、伊藤議員から資料3について、小林議員及び高橋議員から資料4について、それぞれ説明がありました。続いて私から、資料5に基づきまして、「選択する未来」委員会の設置について提案をいたしました。その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「中長期試算をみると、2015年度以降、成長と財政再建を同時達成し、2020年度に黒字化するための検討が重要である。また、少子化対策の加速により、生産年齢人口を増加させること、社会保障改革の実行を進めていくことが重要である。」
民間議員から、「外国人投資家は、アベノミクスはうまくいっているが、1、将来予想される労働力不足にどう対処するのか、2、2020年代後半に団塊の世代が後期高齢者となることによる負担の増大にどう対応するのかということに関心がある。この二つの問いに答えを出す必要がある。」
新藤総務大臣から、「政府の情報システム改革については、平成26年度から30年度までに、統廃合等により情報システム数を半減させるという目標を掲げて取り組んでいるが、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、この目標を更に上乗せしていきたい。また、地方自治体についても、マイ・ナンバー制度の稼働に合わせて、徹底的に改革を進めていくことが必要である。政府CIOとも良く連携して改革を進めていきたい。地域活性化については、プラットフォームを活用して、幾つかのカテゴリーを作って、各省連携でモデル的な取組ができないか検討中である。人口20万人以上、昼夜間人口比率1以上の「地方中枢拠点都市」を核に、ヨーロッパのシティ・リージョンのような取組を展開させたい。その際、既存の民間の取組をうまく活用して、地域活性化につなげる視点も重要である。」
民間議員から御提案のあった本年の諮問会議の取組については、本日いただいた御意見も踏まえて、私のもとで取りまとめ、公表いたします。また、意見交換の後に、「選択する未来」委員会の設置についてお諮りをし、議決いたしました。資料1及び2については、私から、明日の閣議で御報告をいたします。
続いて、二つ目の議題として、対日直接投資の促進に関し、西村内閣府副大臣から資料6について、佐々木議員から資料7について、麻生議員から資料8について、それぞれ説明がありました。その後、議員の方々からいただいた主な御意見を紹介いたします。
民間議員から、「米国オバマ政権では、セレクト・USA・サミットという国を挙げた誘致活動を行っており、こうした取組は有効である。」
松島経済産業副大臣から、「ジェトロでは、「対日投資相談ホットライン」という一括して相談を受け付ける取組を始めたが、実績が少ないのでもっとPRしていきたい。業種別の専門家を「産業スペシャリスト」として配置し、産業競争力強化法が本日施行された。こうした取組を外国企業に説明すると、薬事法や再生医療に対する関心を示してくる。イタリアでは、首相が世界的な100の多国籍企業に対し、「目的地イタリア」という呼びかけを行っており、参考にしてはどうか。また、外国企業から甘利大臣のもとに置かれた会議で御意見を伺い、英語表示の問題や家政婦の問題などに取り組んではどうか。」
民間議員から、「法人課税については、全体的に、かつ時間軸を入れた検討を行う必要がある。」
民間議員から、「先進国の多くは、出ていく資本と入ってくる資本とが同じ程度なのだが、日本ではバランスがとれていない。これは社会全体の在り方に関わってくる問題である。単にカネが外から中に入ってくるという話ではなく、異質なものが出会って競争する場がつくられていることである。法人税についても、小手先の手直しを言っているのではなく、10年、20年先を見る場合は、引下げは避けて通れない問題だと思う。」
民間議員から、「副総理の「法人課税は産業構造にかかわる問題」という指摘はその通りと思う。法人税収の25%は製造業なので、賃金の低い非製造業からたくさん取っているのが現状であり、法人税率を下げると非製造業の活性化が期待できる。我々の提案は、一遍に10%下げろと言っているわけではなく、何%ずつか段階的にやっていくことでもよい。法人税は、税収が景気によって振れが大きいので、そういう点も考慮してバランスよく進める必要がある。そもそも中国は7%台の成長率で法人税率は25%、日本はせいぜい2~3%の成長率で、法人税率は35%というと、そもそも日本に投資しようとは思わないのではないか。」
麻生財務大臣から、「私が言っているのは、代替財源が要るということである。それがないと少しずつやることになる。今回も少しやったが、評価する声が少ないのは残念。資料7-2の4ページにあるOECDの資料についてであるが、日本の外為法では、2005~2012年の間に2,700件超の事前届出の中で中止をさせた例は僅かに1件だけなので、どうして「日本はOECD諸国の中で最も制約が厳しい」という指摘となるのか、指標としていかがなものかと思う。」
民間議員から、「法人税の実効税率については、少しずつではなく大胆に引き下げていくことも考える必要があるのではないか。生産性が悪い非製造業の法人税収に占める割合が74%ということは、法人税の実効税率を引き下げれば、ビジネスコストが下がって、投資や雇用が拡大し、税収が拡大することにつながるということも考えられないか。法人実効税率1%が4,700億円に当たるとのことだが、従前は1%=4,000億円とされており、これは経済が良くなるにつれて税収が上がるようになってきたことを示しているとも言える。引下げにより経済が良くなれば税収が上がるということも考えていくことが必要である。」
麻生財務大臣から、「GDPと長期債務残高が1対2というバランスを縮めていく努力が今後とも必要である。法人税の実効税率の引下げについては、この観点から、どれくらいのスピード感で取り組んでいくのかということが一番の問題。」
民間議員から、「地域活性化が大きな政策課題としてクローズアップされる中で、法人税の実効税率の問題を議論するに当たっては、地方法人税の問題についても一緒に考えることが必要である。」
安倍総理大臣から、「税制の改革に当たっては、従来、レベニュー・ニュートラルという考え方が採られてきたが、経済のグローバル化が進む中で、この考え方で対応していくことがよいのかどうか。諸外国で、実際、法人税の実効税率の引下げを実行した国があるが、こうした国々で、その後のGDPがどうなったか、税収がダメージをそれによって受けたのか、経済の活性化にどう影響したのかなどについて分析ができるのであれば、今後の議論に一石を投ずることができるのではないか。」
私から、「ただ今の総理の御発言を踏まえて、法人実効税率に関しては、更に議論をしていきたい。また、IT化によって1兆円無駄が省けるという件については、総務大臣にしっかりと取り組んでいただきたいと思う。」
最後に総理から御発言がありました。詳細については、内閣府事務方にお問い合わせをいただきたいと思いますが、ポイントだけ御紹介をいたします。
「今年は、好循環実現の正念場。経済再生と財政健全化の両立を目指していく。産業競争力会議との連携も強化し、もう一歩踏み込んだ改革強化に向けて検討をお願いしたい。地域活性化に向けた政府横断的取組については、1月中に関係閣僚会合を開催し、民間議員の提案を含め、取組を大きく加速させたい。行政サービスの質の向上と、大幅なコストダウンの実現のため、行政のIT化と業務改革を、同時・一体的に進めなければならない。新藤大臣には、関係大臣等と連携して具体的な方策や進め方を取りまとめ、諮問会議に報告してほしい。「選択する未来」委員会においては、日本経済の中長期的な発展に向けて、マクロ的観点からの定量的な分析に基づき、大胆な政策提言をお願いしたい。随時、諮問会議にインプットしてほしい。対内直接投資については、その残高を倍増するという目標を達成するため、甘利大臣及び関係大臣において、連携して取組を進めてほしい。あわせて、甘利大臣のもとで、外国企業の意見も聞きつつ、対日投資促進に向けた課題を整理し、諮問会議に報告をしてほしい。」
以上を踏まえて、私から「今後とも、マクロの経済財政の姿を確認しながら、好循環実現に向け、個々の課題について議論していくことが重要である。民間議員から、岩盤を打ち破るような提言をいただくため、先週、内閣府に民間議員室を設置し、サポート強化をした。引き続きよろしくお願いをしたい。御決定いただいた「選択する未来」委員会の会長には、総理とも御相談の上、三村明夫新日鐵住金名誉会長にお願いすることとしたい。その他のメンバーも調整を進め、委員会を速やかに立ち上げたい。対日直接投資促進については、総理の御指示を受け、外国企業経営者から意見を聞き、課題を整理する場を設けるべく、速やかに検討したい。」

2.質疑応答

(問)諮問会議で民間議員から法人税の実効税率を25%に引き下げるよう提案があり、麻生財務大臣は反対されたわけですけれども、甘利大臣御自身のお考えを聞かせていただきたい。どちらに近いかというお考えを聞かせていただきたいのと、その結論を6月までに出す方向性なのかもお聞かせいただけますか。
(答)正確に申し上げますと、麻生大臣は、反対されたというよりも、財政を預る立場から財政再建という責任を負っていると。その減収との関係でどういうことが起きるのか、あるいはその減収に対して財源をどうするのか、そういう見通しとシミュレーションがないと、簡単に提案があって、はい、分かりました、というわけにはいきませんという話だったと思います。
そういうことがありますから、総理からは、レベニュー・ニュートラル、つまりこれだけ下げるにはそれだけ持ってこいという発想でなくて、それが経済の好循環に与える影響、税収に与える影響、いろいろ検討する必要があるのではないかと。その上で、いろいろ考え方を詰めていくということも大事ではないかと。そういう検討もしてほしいというお話でありまして、総理の御発言を踏まえて、諮問会議で今後検討を深めていきたいと思います。
いつまでにどれくらいという結論を出すのは、まだこの時点では申し上げることはできません。麻生財務大臣の御心配事、それから総理の検討提言を踏まえて議論を整理していきたいというふうに思っております。
(問)今日の2つの会議からは外れてしまうのですけれども、今日、中国のGDPが発表されまして、中国のGDPの規模が980兆円になりまして、日本のGDPの2倍になっていると。2010年に逆転してから僅か3年で大きな差が開いた形になったんですけれども、これについて受け止めがありましたらお願いしたいのと、日中の政治関係の冷え込みが経済にも影響を及ぼすことが懸念されておりますけれども、日中関係の改善に向けどう取り組んでおられるのかお聞かせいただけないでしょうか。
(答)片や、実質で1%、2%、名目でプラスになっているかどうか分からないという経済と比べ、二桁近い伸びですと複利で進んでいくみたいなものですから、並んだと思ったら、あっという間に2倍近くになるということなのだと思います。ここは、いわゆる新興国対成熟国の違いがあろうかと思います。つまり、1人当たりのGDPを少し上げるだけで、人口が10倍の国と10分の1の国との差が出てくるのだと思います。
我々は、成熟国の中においても、名目3%、実質2%の成長は可能だということを打ち出しているわけであります。人口減少、それから高齢化の中で、これを克服して、そこそこのレベルでの成長が可能だというモデルを構築していかなければならないと思っております。
日中関係に関しましては、お互い政治的には困難を抱えていますけれども、経済のつながりというのは切っても切れない関係にあります。そして、これから東アジアにおいては経済連携、RCEPを進めていく、日中韓を進めていく等々のプラスの課題があるわけであります。進められるところはしっかり進めていって、そこから政治の環境を整備する、というように取り組んでいくことも大事かと思います。政経一体ではなくて、経済が連携しているという事実は外すことはできないわけでありますから、お互いを必要としている部分はしっかりと進めていって、それがそれ以外の部分の環境整備になっていくように取り組んでいく必要があろうかと思っております。
(問)諮問会議について一つ質問させていただきます。2020年度のプライマリーバランスの黒字化は達成できないという見通しを改めて示されたのですけれども、資料2の大臣のペーパーでも、収支改善を求めると、更なる改革と具体的な道筋をどう描いていくのか、議論の場としては諮問会議で進めていくのか。また新たな財政計画とか、どういう形で議論を進め、それを目途としては、どういうふうにまとめていくのかをお聞かせください。
(答)まず、基本的な認識をしていただきたいのは、2015年度のプライマリーバランスの赤字半減が達成可能というバックボーンには、消費税率が2段階で上がっていくということと、成長戦略を進めていくことと、歳出削減努力が入っているわけであります。それで2015年度に半減の見通しが立つが、それ以降はそうしたものを織り込まない、つまり自然体で伸ばしていくと、そういうことになっていくと。そして歳出については、高齢化を加味した自然増をカウントし、それ以外は物価上昇で類推していくと、そういう数字になっていく。
ということは、2015年度の時点で、それ以降の5年間どういう努力が必要かということは、もう一度そこで考える必要があろうかと思います。つまり成長を更にドライブして税収を増やしていく。そして歳出削減、効率化。先ほど来、総務大臣に、国・地方で行政経費1兆円がITを使って効率化を図ることによって、政策に負担をかけずに削減できるという提言も総務大臣からありましたので、そこについては具体的な道筋を描いてほしいということも言っております。そういうことに加えて、更にどういう努力が必要かということは、2015年の時点でその先5年間を見通す絵図を描いていく必要があろうかと思っております。
(問)総理の法人税に関する発言の趣旨をもう一度確認したいのですが、レベニュー・ニュートラルではなくて、例えば自然増収というか、減税することによって経済成長をして、それによって税収が増えるのではないかとか、そういうことを想定して減税をしてほしいという指示を総理がされたと理解していいのか。それとも、総理は単に海外事情を調べてくださいとおっしゃったのにすぎないのか、発言の意味を教えていただきたいと思います。
(答)私が隣で聞いていた限りは、財務省から、法人税率を10%ポイント下げるには、5兆円近い財源が必要だと、それはどこかから持ってこなければならないでしょうと。例えば租特を縮小するとか、つまり課税対象を広げていくとか、いろんな努力が必要ではないですか、という問題提起、これも一つだと思います。
それについて総理からは、それも一つの考えだけれども、減税によって穴があいたままで、それを補填するのをどこかから見つけてくるという考え方以外に、そのことによって経済にいろいろなプラス影響が出てくるという考え方もあると。それによって、例えば、先行した国では、減税によって入りがどのくらいで、本当に足らない部分はどのくらいあったのかとか、あるいはなかったのかとか、そういう海外事例等々も検証して判断材料にしてほしいと。
ですから、10%下げるには10%分の財源調達をせよという従来の財務省的な回答だけではなくて、それ以外の余地も検証してほしいと。そうすると選択肢は増えていくわけですね。そういう問題提起が総理からなされたのだというふうに思っております。ですから、総理は全く頭から否定するのではなくて、財政再建との整合性をとりながらやっていく道もあるのではないかという問題提起をされたのかなと。これは正確には、総理に聞いていただきたいのですけれども、隣で聞いていた私はそんな感じがしました。
(問)諮問会議で税の議論をされて、総理が諮問会議で税について発言したのは、多分、今回が初めてかなという気がするのですけれども、最終的に6月にどういう形でこの議論をまとめられるのか。どういうことかというと、党税調の議論の材料を提供するという意味なのか、それともある程度、この諮問会議で、総理のいる場で方向感を決めていきたいというお考えなのか。
(答)これは内閣が一方的に決め打ちをするのではもちろんなくて、そういう問題提起をしながら、政府税調や党税調と連携を図りながら、こういう方法もあるのではないかということについて諮問会議は検証していって、諮問会議の民間メンバーは、いつということは決めていませんけれども、方向として政府はこういう意思があるのだというのを内外の投資家に向けて明確に打ち出してほしいということでありますから、頭から無理と言うのではなくて、いろんな余地を検証して、方向性を示していければいいのかな、と思っています。
(問)外国人労働者の実習制度の拡充の件で、国民的な議論も踏まえると書いてありますけれども、ここに書かれているということは、政府内もしくは国民的に慎重論もかなりあるということを配慮されているということなのでしょうか。その慎重論に対してはどういうふうに説得をしていかれるということなのか、甘利大臣としてはどちらのお立場なのか教えてください。
(答)日本は、高度技能・技術を持っている人については、受け入れる窓口ができているわけであります。それから、それ以外の労働者については、いろんな制約をかけながら、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの形で受け入れているわけであります。そこには、与党の中にも、受け入れた後、いろいろな外国にみられるような社会問題が発生することを懸念する、それを先回りして、そういうことがないようにどうしていくかということを考えながら、もっと門戸を開いていく余地があるんではないかという問題提起であります。最初から高度技能労働者だけと、それ以外はほとんど余地がないということではなくて、いろいろな懸念される問題に対して、どう対処できるかということを含めて、検討する余地があるのではないかということだと思っております。
私個人は、やはり過去の反省を踏まえると、送り出す機関と受け取る機関が、その国が相当オーソライズをして、一定期間働いたらきちんと国に帰れるような仕組み、確認がないといけない、というのが私のかねてからの思いでありますから、そこの双方の受け入れ窓口がどれくらいしっかりできるかということも検討課題かなというふうに個人的には思っていますけれども。
(問)法人税の減税に関連してなのですけれども、大臣は、以前の会見で、租特に関しても見直しを検討していくという御発言を諮問会議においてされたのですけれども、法人税の実効税率の引下げとセットで議論していくのか、それとも法人実効税率をどうするかという方向性を決めた上で、具体論としての租特について議論していくのか、その段取りとスケジュール感があれば教えてください。
(答)財務省的な考え方だと、極端に言えば、租特を全部なくしてしまって、その分だけ法人税率を下げるのがいい、ということになると思うのですけれども、それは私の考え方にはありません。法人税減税は、やれるにこしたことはないと思います。租特は、歯を食い縛っても競争力に関わるところはやるのだという姿勢ですね、私の考え方は。日本の産業競争力を強化すべき部分については、歯を食い縛っても、そこは強化をしていきたいということでありますし、法人税全体の水準を下げるというのは、その余力があればやるにこしたことはないということですから、片方のために片方を全部止めてしまうということではないと思うのですね。バランスのとり方だというふうに思っております。
研究開発減税は日本の生命線でありますし、それが本当に競争力に貢献しているのかは、しっかり検証する必要があると思います。設備投資減税もそれがどういうふうに競争力につながり、その後の税収につながっているか。つまり、1万円減税して10万円収入があったというようにするための見直しは常時必要だと思っていますが、競争力強化を止めて、全体の水準を下げるということについては、私は反対です。
(問)議論の段取りについて、今後6月までの間にどういう進め方をされるのか、教えてください。
(答)今日出た問題提起を諮問会議で少し深掘りしていきたいと思っております。そこで、骨太方針までにどういう粗々の姿が描けるか、今はまだ断定できないところです。
(問)成長戦略の実行計画で、党の方から国家戦略特区法案が入っていないのはどうしてかというのが持ち帰りになっていたのですけれども、これは修正がかかるということなのでしょうか。
(答)私もまだ粗々しか聞いてないのですけれども、国家戦略特区を指定すると、そこで新たな規制改革要望が上がってきます。それを直ちに、今国会に出すべきだという主張で、それは正しい主張だと私は思います。ただ、まだ出るか、出ないか分からないのに、法案を出すというわけにもいかないですから、それはそういうのが出てきたら検討するということはできますけれども、まだ何が出るか分からない、出ないかもしれないわけでありますから、それは指定後の動き、要望を見たいと思っています。
(問)今日出ているものを閣議決定前に修正をかけるということはないと考えてよいのでしょうか。
(答)検討をするというのを記載することはあると。ただ、決め打ちで何をするというのはまだわからないから、必要性について検討する、というところまでですね。
(問)別件ですが、これからTPPで米国USTRのフローマン代表と会談があるかと思うのですけれども、意気込みについて、お願いできますか。
(答)アメリカの関係者には申し上げているのですけれども、日米が妥結をしないと全体がまとまらないとの認識は日米で共有する必要があると思います。併せて、12月1日から、私は本当の交渉が、最後の詰めの交渉が始まったという認識をしていますけれども、それは何かというと、日本にも譲れない線はあって、それは政府としての議会に対しての責任があるのだと。衆参両院で委員会決議されていますから、我々にとってギリギリのラインというのがあるのだと。
つまり、要求する側からすると、詰めていけばいくほど、どんどん譲歩が引き出されるという感覚では困るわけでありまして、アメリカに引けない線があるように、日本にだってあるし、よその国だってあると。まずそれを認識することが大事で、12月1日はそれを両国が認識したのだと思うのですね。非常に厳しい交渉になりましたけれども。ですから、あそこから本当の最後の詰めの交渉が始まったというふうに私は理解しているんです。
その中で、交渉事というのは、やはり片方が片方に全部寄っていくのではない。アメリカが日本の主張に全部寄るわけでも、日本がアメリカの主張に全部寄るわけでもない。双方が譲れない線というのがあって、これを詰めなければならないとしたら、両方が寄っていくということになるのではないかと思います。アメリカの関係者には、常にそういうことを申し上げている、ということです。

(以上)