第22回記者会見要旨:平成25年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成25年11月15日(金曜日)18時52分~19時21分
- 場所:内閣府本府仮設庁舎講堂
1.発言要旨
第22回の経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。概要を御報告申し上げます。
本日は、社会保障に関しまして、まず伊藤議員から資料1について、田村臨時議員から資料2について、麻生議員から資料3について、それぞれ御説明がありました。
その後、議員の方々からいただいた主な御意見をご紹介申し上げます。
まず民間議員から、「ICTによるデータの利活用については社会保障制度改革国民会議で大きな方針が出ており、社会保険給付の抑制に有効である。その環境整備については、税番号大綱に明記されているが、対応が遅れており、加速してほしい。診療報酬については、過去2回のプラス改定もあって上昇している。消費税率引上げのタイミングも考えると本来引下げるべきであり、それが無理であるならば、少なくとも据え置くべきである。薬価引下げを診療報酬本体に流用するのは問題が多く、必要なものはきちんと要求すべきである。後期高齢者医療の負担金の総報酬割の議論については、まず給付そのものを抑制すべき。」
同じく民間議員から、「ジェネリックの普及促進のために、保険者機能の発揮と国民の意識の向上が重要である。保険者機能については、広島県呉市の例に倣って、できるところからどんどん取り組むべきである。国民の意識を高めるために、各大臣におかれては、足元の共済組合で取組を進めてほしい。医療機関は多額の収益を上げている一方で過剰設備を保有しており、設備をコントロールすべきではないか。米国では高額医療機器は州の許可制である。公立病院の経営の効率化を進めるためには、病院長が経営手腕を振るえるようにすべきだ。雇用保険には積立金がたまっており、国庫の繰入れの停止や保険料の引下げを行い、企業の賃上げの原資にしてはどうか。」
同じく民間議員から、「新薬開発は年々難しさを増しているが、日本の製薬会社の利益率は米国と比べ見劣りがする。新薬開発のインセンティブを高めることが必要である。地域でCHO、チーフ・ヘルスケア・オフィサーを置いて積極的に取組を進めるべきである。」
続いて菅官房長官から、「ICTの活用でコストが2~3割減ったという例がある。赤字の公立病院を民間に売却して黒字になった例がある。きちんとこれらを検証してほしい。」
田村厚生労働大臣から、「ICTの利活用については、マイ・ナンバーが動くまでに時間があるので、個人情報の問題をクリアし、インフラを整備してマイ・ナンバーを使って進めていきたい。社会的入院については、診療報酬で誘導をしながら病院の機能分化を進めていきたい。ジェネリックの普及については、フランス並みの60%を目指して呉市の例も横展開しながら進めていきたい。チーフ・ヘルスケア・オフィサーの提案はよい御提案であり、しっかり検討していきたい。雇用保険は国の負担が減ると労使の双方に不満が出る。育児休業給付の増額にも使いたい。」
民間議員から、「薬価の話は、答えはノーか。」
田村大臣から、「医療提供体制の充実・適正化を図りたい。」
総理から、「薬価を下げて医療提供体制の適正化に使いたいと言うが、どう適正化に使うのか。アメリカではジェネリックが9割を占めているが、新薬も多く出ている。どうしてそうなるのか、よく研究をすべきだ。」
民間議員から、「ジェネリックで薬価が低下すれば、競争が激しくなり、生産性も上がり、新薬も出てくるという分析がある。」
この点について別の民間議員から、「日米の新薬創出の差は研究開発の規模の差と、医薬系ベンチャーの差によるものであり、ジェネリックの関係とは独立した問題である。」
総務大臣から、「公立病院改革プランに基づく取組により、プラン策定前には黒字病院が3割にとどまっていたが、平成24年度には5割まで増加するなど、一定の成果が出ている。プランは今年度で切れるので、厚生労働省とも連携して新たなガイドラインを策定していきたい。」
財務大臣から、「公立病院の経営が厳しい要因の一つとしては、労働組合の問題があるという指摘がある。また、医薬品を各自治体が共同して、まとめて購入するというような取組も行うべきではないか。」
総理から、「公立病院の事務長は医療経営の専門家ではないことが多く、改革マインドが高まらないという問題が指摘され、こうした専門家を配置するという人事上の取組が重要ではないか。」
民間議員から、「後発医薬品の使用促進については、フランスは後発医薬品の価格分は保険対象、そしてそれを超えるものは患者の自己負担という思い切った対応が行われている。今回、後発医薬品の利用率が低い病院には診療報酬上のペナルティを与えるくらいのことを考えるべきとの提案をしており、ぜひ思い切った取組をお願いしたい。産科、小児科の充実など少子高齢化に向けた対応を薬価引下げで生まれた財源を流用して対応するというやり方自体が不適切である。必要なら独立をさせて要求を行うべきだ。」
厚生労働大臣から、「必要な要求の出し方をしっかりとやっていきたい。」
最後に、総理からの御発言であります。発言のポイントを御紹介いたします。
「26年度予算において講じる措置が、新たな国民負担につながることは、厳に、抑制していかなければならない。民間議員から指摘があったように、診療報酬の在り方をはじめとして、自然増を含む社会保障の歳出の合理化・効率化に最大限取り組む必要がある。その際、新薬創造へのイノベーションを喚起できるような方策を検討してもらいたい。また、ジェネリックについては、欧米並みの普及率の早期達成を目指してもらいたい。公立病院については、しっかりとした経営感覚をもって経営が行われるよう、そして患者のためになるよう、更なる改革を進めることが重要である。財務大臣、厚生労働大臣、総務大臣におかれては、本日の議論も踏まえ、年末の予算編成に向けて、更に議論を深めてほしい。」
以上を踏まえ、私の方から、「次回の諮問会議では、引き続き来年度の「予算編成の基本方針」の策定に向けて、主要な歳出分野の審議を進めてまいりたい。」
以上です。
2.質疑応答
- (問)民間議員から、社会保障費の効率化のための診療報酬の引下げと、ジェネリック医薬品の値下げが主に提言されたと思うのですけれども、これについて、なぜ重要かということと、どうすべきかという大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
- (答)経済財政担当大臣といたしましては、大事なことは財政の持続可能性、それから社会保障の持続可能性、これをしっかりと担保していかなければならないということであります。そうした中で、今日も指摘をされていましたICTの活用、マイ・ナンバーの活用等、言ってみれば、痛みを伴わずにできる改革もあるわけでありますし、当然、効率化、重点化を図っていくという中には痛みを伴う部分もあろうかと思います。
いずれにいたしましても、社会保障の持続可能性が国民にとって最も大事な点であります。財政の継続性とあわせて、きちんと両立していくように取り組んでいきたいと思っております。
具体的に個々の政策の予算への落とし込みは、予算編成に向けて図っていきたいと思っております。 - (問)関連ですが、今日、民間議員の方から提案された効率化の議論の中では、かなり反発を呼びそうな提案もあったと思います。例えば、薬価と本体部分を切り分けて要求すべきとか、ジェネリックのペナルティの話なども意見が分かれそうなところですが、この2点について甘利大臣はどうお考えなのかということが1点。もう1点は、田村大臣の医療提供体制の充実・適正化を図りたいという御発言に対して、総理から、薬価を下げて医療提供体制について、どう適正化に使うのかという、これは疑問を呈されたということだと思いますが、これについては会議の中で、総理の問いかけに対する返答というのはあったのでしょうか。
- (答)民間議員からかなり厳しい指摘がなされています。もともと諮問会議の民間議員ペーパーというのは、今の状況を国民目線で、より良い方に改善していく厳しい指摘をしていただくために作っているわけであります。民間議員から出てくる提案が、誰もが飲めるような提案であるならば、諮問会議はその使命を果たさないということでありますから、厳しい指摘はどんどんしていただく。その中で、必ずしも全部できるということではありませんが、改革にとって必要なものについては、精一杯取り組んでいくということが、諮問会議の使命だと思っております。
それから、総理の厚生労働大臣に対する指摘は、恐らく、薬価が下がったら、それは当然のごとくこちらにいただきますという議論ではなくて、本当に必要性を精査して詰めてもらいたいという、当然の御疑問だと思います。 - (問)民間議員ペーパーの中で、「診療報酬の本体部分を抑制すべき」とあります。この「抑制」という言葉は、診療報酬本体を下げるというふうにも読めますし、あるいは改定の必要財源は別途要求しろということですから、別途要求する部分の伸びを抑えるというふうにも読めます。この「抑制」というのはどう読むべきでしょうか。
- (答)真に意味するところは民間議員に聞いていただきたいと思いますが、社会保障制度改革国民会議の中でも、社会保障全体の費用について自動的に自然増があるということで、きちんと精査をし、そしてメリハリをきちんとつけるということが提案されているわけであります。それに沿った発言だというふうに思っております。
- (問)別件で、TPPに関してですが、来週からソルトレイクで首席交渉官会合が始まりますし、明日鶴岡首席交渉官が出国されるということで、今日も大臣は、総理のところで1時間ぐらいこもっていろいろお話なさっていたようなのですけれども、まず、総理とどういうお話をなさったか、差し支えない範囲で教えていただければということと、見通しというか今後の意気込みというか、その辺りをお願いいたします。
- (答)当然のことでありますけれども、交渉が大詰めになってくると、それぞれの国で譲れない問題が顕在化してくるわけでありますし、その譲れない問題にそれぞれ皆切り込んでいくわけであります。その現状についてつぶさにお話をさせていただきました。そして、最終的な詰めに臨んでいく決意を披瀝させていただいたということと、いろいろな場面で最終的には私が判断をする場面もあるでしょうし、あるいは場合によっては最終判断を総理に仰ぐこともあるかもしれません。12月上旬に行われる閣僚会議での妥結に向けた工程について報告をし、御相談をさせていただきました。
- (問)明日、鶴岡首席交渉官が出発することについて、励ましというか、頑張ってほしいといったようなことはあったのでしょうか。
- (答)国益を踏まえて、タフな交渉をして欲しいということであります。
- (問)今日の議論の中で、薬価が市場実勢に合わせて下がる部分を診療報酬本体に回すという考え方はおかしいのではないかと、別々に切り分けて要求すべきものはすべきだという議論に対する厚生労働省のスタンスがどうなっているのかという受け止めをお伺いしたいのですが、田村大臣が出されているペーパーを見ると、薬価改定で生じた財源を使わないと医療提供体制の変革はできないと書いてあって、反対しているのかなと素直に読むと読めるのですが、先ほど御紹介がありましたやりとりの中では、そのような民間議員の御意見に対して田村大臣の紹介された発言として、必要な要求の仕方をしっかりやっていきたいとありますが、これはそういった切り分けてそれぞれ必要なものはそれぞれやればいいではないかという考え方に理解を示したということでよろしいのかどうか。それとも、そういうところはやはりこの紙に書いてあるとおり、やはりそういった考え方に反対していると捉えてよろしいのか、そこはどのようにご覧になっていますか。
- (答)過去に薬価が下がった、それを診療報酬の改定に回すと、そうすると、言ってみれば、必要性の根拠が説得力を欠くわけです。薬価は薬価として下げる、それはいわゆる市場価格との差ということをきちんと精査をして詰めていく、根拠がきちんとあるわけであります。一方で、診療報酬については、その必要性と、あるいは削減努力について何がなされたかということは別立ての議論ではないですかと。下がった分だけ上げるという関連性は全くないと、これは全くないと思います。それぞれ別々に議論するべき問題ではないですか、という指摘だと思います。それについて、きちんと指摘を踏まえて必要性の精査をしますというのが厚生労働大臣の答えだと思っておりますが。
- (問)今日のやりとりから少し離れますが、社会保障の効率化の基本的な考え方をお尋ねします。民主党政権時代から始まった税と社会保障を一緒に改革するという流れの中で、もともと消費税を5%に上げたうちの1%分は社会保障の充実に使うというフレームは、自公政権でもまだ生きていると思うのですが、民主党政権時代に出発した時からは、その1%分だけではなくて、既存の社会保障を重点化・効率化して、捻出できた財源というのは、その1%分の充実にプラスアルファとして上乗せするという枠組みでやってきたと思います。その考え方は、現時点でも、自公政権は踏襲しているのかどうか、大臣のお考えをお尋ねしたいのです。つまり、今回、いろいろな提案が出ていますけれども、効率化して出てきた部分というのが借金返しに回るのか、それとも別途プラスアルファとして社会保障の充実に回ることになるのか、そのイメージをつかんでおきたいという趣旨です。よろしくお願いします。
- (答)増税分の1%は社会保障の充実に、という考え方は、自民党が野党時代から協議に参画をして組み立ててきたところであります。その基本的な考え方は踏襲していくということであろうと思います。ただ、予算編成の段階で細かな作業が進んでいくわけでありまして、その中で財政の健全化と合わせて本当に必要なものということをきちんと精査をしていく。つかみ金で政策を行うということではなくて、当然、個々の精査の作業は予算編成の中でありとあらゆる予算について行われることであろうと思っております。
- (問)つまり、効率化した分が自動的にそのまま充実分にオンされるというイメージではないという捉え方でよろしいのでしょうか。
- (答)考え方はしっかりと踏襲をしていく。その中で、そのときに提示された政策について、予算編成の段階で厚生労働省を含めて、厚生労働省を中心にしっかりと精査をしていくと、それが予算編成作業であります。
- (問)診療報酬について、来年度予算編成の焦点になると思うのですけれども、この会議で、先ほど御紹介いただいた議論では触れられていなかったと思いますが、菅官房長官や総務大臣の方からも、この診療報酬の上げ・下げについて何らかの言及はあったのでしょうか。
- (答)報告した内容だけです。
- (問)今日は個別分野として社会保障について議論されたと思うのですが、予算編成の基本方針を12月半ばにとりまとめると計算して、あと具体的には個別分野でどういった議論をするのかということと、今後の見通しをお聞かせいただけますでしょうか。
- (答)大どころ部分については、順次この議論の俎上に上げていきたいと思っております。具体的な項目は、今、事務方で詰めているところです。
(以上)