第16回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年7月30日(火曜日)18時03分~18時29分
  • 場所:合同庁舎4号館6階620会議室

1.発言要旨

第16回の経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。その概要の御報告を申し上げます。
本日は、議題の一つ目として、本年3回目の「金融政策、物価等に関する集中審議」、金融集中審議ですが、これを行いました。
まず、日銀の黒田総裁から資料を御説明いただきました。続きまして、内閣府事務方から、「デフレ脱却と経済再生に向けた進捗」について説明をさせました。
この中で、今後の経済動向につきましては、内閣府事務方から、次のような説明がありました。
「来年度予算編成の論点に資するため、内閣府において検討したところ、現時点では、平成25年度については、実質GDP成長率は、本年2月の政府経済見通しを幾分上回るものと見込まれる。平成26年度については、現行法に基づいて消費税率が引き上がることを前提とすると、駆け込み需要の反動等から一時的に落ち込むと予想されるが、その後持ち直すと見込まれる。」
以上が事務方からの説明でありました。
議論に移る前に、財政状況等についても密接に関連してきますので、「予算の全体像」、「24年度決算」につきましても先に説明をいただきました。
まず、高橋議員から有識者議員提出資料を御説明いただきました。次に、麻生副総理から資料を御説明いただきました。
その後、「金融政策、物価等に関する集中審議」について議論をいただきました。
その後に、「予算の全体像」について御意見等をいただきました。
主な御意見を御紹介申し上げます。
民間議員からであります。「消費税率引上げの影響について、過去の例を見ると、1989年4月の消費税導入のときは、前年の駆け込みは大きかったが、翌年は余り下がっていなくて、その後、バブル崩壊で大きく下がった。1997年4月に3%から5%に引き上げたときには、不良債権処理の最中で異常な環境であった。今の環境についてどう見ているのか。内閣府でしっかり見てほしい。そして、日銀の展望レポートではどうなのか。」
これに対して、黒田日銀総裁から、「1997年4月の消費税引上げ直後は大きく成長率が下がったが、回復の兆しがあったところに7月のアジア通貨危機、そして11月の金融機関の破綻が起きた。消費税率引上げの影響というよりも、他の要因が大きかった。展望レポートでも、消費税率引上げの影響を考慮しており、影響の計算は難しいが、2013年度については、GDP成長率+0.3%を視野に、2014年度は駆け込み反動減と消費抑制で0.7%引下げ、2015年度については若干のプラスと見ている。」
続いて民間議員から、「現在はデフレ脱却の重要なタイミングにあり、見るべき第一の指標はCPI。GDPデフレーターもあるが、輸入は一次産品中心で、為替が動くとすぐに動く。一方、輸出は為替レートの影響が出てくるのに時間がかかる。したがって、GDPデフレーターは為替に左右されやすい。金利もあるが、物価が上がって金利が上がるのなら良い金利上昇だが、財政要因で上がるのは悪い上昇である。目的は物価上昇であり、金利は手段にすぎない。」
同じく民間議員から、「海外要因をどう見るのか。中国景気は弱いのではないか。」
これに対して日銀総裁から、「展望レポートで示した見通しは、GDP成長率を4月の見通しから少し下方修正をしている。内需は、4月の見通しより強く見ているが、海外が弱くなっている。米国は強いが、欧州はマイナスが続き、新興国はブラジル、インド、ロシアも含めよく見ていく必要がある。中国については、従来の8%、9%成長は望めないとしても、足元で大きく落ちるリスクは少ないと考えている。むしろ中国は投資が増え過ぎたことのリバランスなど中長期的な課題が大きいと考えている。」
続いて民間議員から、「全体の留意点としては、経済再生と財政健全化の両立。健全化については、ハードクラッシュを避ける政策が必要である。賃金上昇が生じるまでにタイムラグがあるのであれば、有期の所得減税であるとか、あるいは低所得者への給付が考えられる。財政健全化については、様々なリスクを研究し、シミュレーションに基づいて消費税の引上げに備えるべきである。」
同じく民間議員から、「デフレの下での財政健全化は不可能である。税収増をどう使っていくかは検討に値する。デフレ脱却の成果を国民に実感してもらう意味でも重要である。」
続いて経済産業大臣から、「橋本内閣のときは十分な対応を打てなかったので、腰折れをした。民間議員の御提案の1ページ一番下の①~⑥が重要である。特に④の税収増を家計や企業に還元することによる好循環の形成が極めて重要だと思われる。」
次に、議題の三つ目といたしまして、「今後の経済財政諮問会議の取組について」御議論をいただきました。
まず、伊藤議員から有識者議員提出資料を御説明いただきました。その後に、議員の方々から御意見等をいただきました。
主な御意見を御紹介申し上げます。
民間議員から、「『日本再興戦略』を後押しするために設備投資減税だけではなく、法人税率の引下げをすべきだ。設備投資減税については、製造業だけではなくてサービス業も対象とすべきである。償却資産に対する固定資産税の有期の減税を特例的に検討すべきではないか。」
麻生副総理から、「政労使の取組を是非やるべきではないか。」
民間議員から、「政府としてアベノミクスの成果を活用し、インセンティブを与えるなどの議論を政労使でも行うべきではないか。」
私から、「非製造業の生産性という話が出たが、IT化の進んでいる非製造業では生産性が上がっているという分析を経済財政白書で行っている。それから、諮問会議と他の会議との連携」、例えば社会保障制度改革国民会議、それから産業競争力会議等との連携についての議論が出ましたけれども、「他の会議との連携にも今取り組んでいるところである。それから、政労使の会議については、総理と相談をして秋の陣で立ち上げていく予定である。」
最後に、総理から以下の御発言がございました。
「参議院選挙を通じて、安倍内閣が推進する経済政策に国民から力強い支持をいただくことができた。これからは、国民が景気回復の果実を強く実感できるよう、政策の具現化を加速していくことが重要である。本日は黒田総裁から、デフレ脱却に向けた取組を着実に進めていることをお示しいただいた。2%の物価安定目標の実現に向けて引き続き尽力をいただきたい。政府においては、甘利大臣を中心に『日本再興戦略』の大胆な実行、加速に取り組み、経済再生を強力に推進をしてほしい。また民間議員からは、『予算の全体像』をお示しいただいた。経済財政諮問会議においては、引き続き経済財政政策の司令塔として、今後、経済再生と財政健全化の両立に向けた取組の具体化を進めていただきたい。」
以上を踏まえまして、私の方から以下の発言をいたしました。
「本日の議論を踏まえ、次回の諮問会議では、『平成26年度予算の全体像』について諮問会議として取りまとめを行いたい。また、私から、中期財政計画の骨子をお示しし、財務大臣からは、概算要求基準の考え方についてお示しをいただき御審議をいただく予定である。今後の経済財政諮問会議の取組方針については、本日の御議論を踏まえ、私の方で取りまとめ、次回の諮問会議で配付をしたい。その方針に沿って年後半の諮問会議の議論を進めたい。アベノミクスの成果を拡大し、国民生活の隅々にその成果が行き渡っていくように私も尽力をしたい。引き続き関係閣僚の皆様にも御協力をお願いいたします。」

2.質疑応答

(問)民間議員のペーパーでも、消費税率の引上げに向けて環境整備を整えるべきだというお考えがありますけれども、大臣御自身、今のお考えとして具体的にどういう環境整備が必要とお考えか、現時点でのお考えを聞かせていただけますでしょうか。
(答)「骨太方針」で今後の経済財政上のリスク対象等々の検証は行っていくということがもう既に示されているところであります。それを受けて諮問会議でどういう形で今後のリスクの分析、対応をしていくかということは、先の会見でもお話をしましたとおり、総理から何がしかの時点で御指示があろうかと思います。それを受けて諮問会議の下でどんな編成でこの識者の聴取をしていくかということ、これは恐らく近いうちにも総理から御指示があろうかと思います。
今日の議論でも出ましたけれども、過去の消費税導入とその後の経緯、その際の政策投入の仕方、あるいは外的な要因等々でどう変化していったか、それらを今後しっかり予測をし、対処方針を立てていくということになると思っております。
(問)今日の議論の中で、民間議員の方から、好循環の形成に不可欠な雇用の拡大等で、「情報交換を率直に行い、連携する取組の推進」ということが提案されていらっしゃいます。それで、今の御説明ですと、麻生大臣や民間議員の方からも、その政労使のお話がいろいろ出たということなのですけれども、これまで甘利大臣は、この秋にもそういう場を立ち上げていきたいというお考えをお示しになっていらっしゃいますが、今日の議論を受けて、具体的にどのような場にしていきたいのか、あるいは何月頃立ち上げていきたいのかという、何か具体的なプランが固まっていることがあればお示しください。
(答)これも総理からの御指示を待つということになりますけれども、総理御自身、そういう場を設けるということはもう考えておられるところであります。従来の政労使にもう一味加えたいと考えておりまして、お互いが自分の主張だけするということではなくて、好循環にはいろいろな好循環があるということを今まで申し上げてきました。ミクロとマクロの好循環とか、あるいは財政の健全化と経済成長の好循環とか、あるいは企業収益の拡大と雇用者報酬の拡大の好循環とか、生産と消費の好循環とか、いろいろな好循環があります。これを回していくのに政労使、誰かがやればいいということではなくて、皆がそれぞれ若干フライングでもいいのでやっていくということだと思いますし、それぞれが相手に向かってこういう問題で対処してほしいという思いは抱えているでしょうから、自然の成り行きで好循環が回ってくるのを待つのではなくて、それを人為的に少し早く回していくという努力を要請する会になれば、あるいは取り組む会になればいいなと思っております。
(問)消費税の引上げの判断についてお尋ねしたいのですけれども、秋に御判断されるということですが、まだ、引き上げないという選択肢は残っているのでしょうか。
(答)それはないと思います、全く引き上げないという選択肢は。いろいろな設計が全体像としてありますから、社会保障と税の一体改革もそうであり、待機児童ゼロ作戦もそうであり、いろいろな政策と消費税とが組み合わさっている部分があります。全く上げないという選択肢があるとするならば、よほど外的な、リーマンショックのようなことが起きたとか、その種の外的要因でもない限り、それはないと思います。ただ、いろいろなシミュレーションの中で、日本経済にとって一番いいやり方はどうなんだろうかということを識者からいろいろと御意見を伺うということになるんだと思います。
(問)今の関連ですが、上げないという選択肢はないと思うという……
(答)いや、よほどのこと、つまり外的な大きなショックでもない限り、全く上げないという選択肢はですね、そうしたものでもない限りないと思います。
(問)ただ、上げ方について、今法律で決まっている、来年4月に8%、再来年10月に10%ということが法律では決まっているのですが、その上げ方について、まだ選択の余地はあるというふうにお考えでしょうか。
(答)それは私が言及することではありません。識者の方、専門家の方が日本経済、まずデフレの脱却、そして財政の再建にとってベストな道はどうであるということをいろいろお話をいただくのだと思います。私の今言えることは、法律に定めてあることが順調に行われるように最大限環境整備をしていくということに尽きます。
(問)今の関連でもう一度だけ確認をさせていただきたいのですけれども、消費税率を上げない選択肢はない、よほど変なケースでない限り、ということなのですけれども、幅はさておき、来年4月に上げない選択肢はないということでよろしいでしょうか。
(答)総理がいずれにしても判断されることです。これは私が判断することではありません。そして、法律では、来年4月から8%に上げ、その1年半後に10%に上げるという法律はもう成立しているわけであります。その法律の附則に、その判断を行う際に、経済がしっかり好転をしているということを総合的に判断できることが前提であると書いてあるわけです。もし引上げをしない場合には、新たな法律を出さなきゃならないわけであります。政府としては、成立している法律が、法律の目指すところに従って粛々と対応ができるように最大限の環境整備を行うというところでありまして、その時点で総理がどう判断されるかであって、私が予断を与えることはいかがなものかと思っております。
(問)また先ほどの点の関連なのですけれども、有識者との意見交換の中でいろいろなシミュレーションがあって、一番良いやり方は何かというところの意見を伺うということなんですけれども、これは法律上決められたところ以外ということも、その有識者の方から御提示がある可能性はあるということなのでしょうか。
(答)それは有識者のお話を聞いてみなければ何とも言えません。政府としては、法律に則って、それに沿ったやり方で対応ができる、そして、その対応が経済の再生と財政再建にとって一番いい効果を発揮できるように、今は全力で取り組んでいくということであります。

(以上)