第14回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年6月6日(木曜日)19時05分~19時36分
  • 場所:合同庁舎4号館2階220会議室

1.発言要旨

第14回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしました。概要を申し上げます。
本日は、まず会議の冒頭に私の方から、「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクション・プラン」につきまして御報告いたしました。
その後、議題の一つ目として、「目指すべき市場経済システムに関する専門調査会」の中間報告につきまして、原専門調査会会長代理をお呼びいたしまして議論いただきました。
まず、小林議員から資料を御説明いただき、その後、議員の方々から御意見をいただきました。
主な意見を御紹介申し上げます。
民間議員から、「新しい基幹産業の創成と途上国への進出に取り組むべきである。アフリカ等途上国に日本企業が進出しやすい仕組みを作ることが重要である。中長期の投資を可能とするための具体的な取組について議論して政策に落としていけば、欧米各国もまねをするはずである。」
同じく民間議員から、「公益性、社会貢献を個々の企業に任せると、期待した効果が出ると思う。各国の歴史、商慣行等を勘案した上で、オープンな市場の中でコンセンサスを得た上でルールづくりについて日本が積極的に寄与していき、リーダーシップを発揮することが重要である。コンセンサスを得ないで進めていくと、TPP等の分野でハレーションが起きると懸念する。まずは情報発信が重要である。」
同じく民間議員から、「成長における多様性と幅の観点が重要と考える。成長戦略も、こうした観点を意識しながら実行してほしい。」
ここで日銀総裁から、「途上国の成長に寄与することは、日本経済の成長にも不可欠である。ジェフリー・サックス教授も、日本企業はどんどんアフリカに進出してほしいと言っていた。途上国で日本企業、日本人の技術、資金が活動するのはウィン・ウィンの関係だと思う。大きな成長戦略の一つだと考える。」
麻生副総理から、「今回のTICAD Ⅴは、非常に良かった。援助してほしい、融資してほしいという関係から、初めてビジネスの話になってきたと思う。アフリカについては、日本における情報量が不足している。アフリカ首脳には積極的に情報を提供すべきだと言っておいた。アフリカに可能性が非常にあると思うので、新しいチャンスを広げてほしい。」
続いて茂木経済産業大臣から、「これまでの支援・援助から、ビジネスパートナーとしてアフリカを捉えるという新しいステージに立った。そのときに重要なのは、日本らしさだと思う。資源も重要だが、技術移転、人材育成、環境分野で貢献できるのではないか。」
安倍総理から、「今回のTICAD Ⅴでは、投資をテーマとして経済界に出会いの場を設けた。アフリカ各国からは、投資は日本からが良いという評価であった。なぜなら、日本は職場に倫理を初めて持ち込んでくれた。それがその後も残っているという話があった。現地にインパクトを与えていく話で、単に資源を持っていくだけではなく、現地に果実を残してくれると期待をされている。」
民間議員から、「瑞穂の国」の資本主義に関して、「バングラデシュで、企業がその利益の20%を現地に還元するという、そういう会社を設立する実例を自分は作った。こうしたことは、アメリカの資本家にはなかなかできないと思う。どんどんこうしたことをやっていき、日本はルールメーカーとなるべきである。」
議題の二つ目として、「骨太方針策定に向けて」ということで、「骨太方針」の素案を御議論いただきました。前回の会議では、目次案を提示させていただきましたが、今回はそれを肉付けした素案を御議論いただきました。
今回の「骨太方針」について、私からそのポイントを申し上げます。
第一は、停滞の20年を踏まえ、「再生の10年」に向けた処方箋を提示し、デフレから早期に脱却し、日本経済を再生させることを「コミット」したことであります。具体的には、相互に補強しあう関係にある「三本の矢」を一体として、これまでと次元の異なるレベルで強力かつ着実に長期にわたって実行すること。同時に、三つの好循環、これは「持続的経済成長の好循環」、それから「マクロ経済とミクロ面の好循環」、そして「経済再生と財政健全化の好循環」、この三つを指します。これを起動させ、「三本の矢」の効果を最大限に発揮することを明確化しています。
第二に、「再生の10年」を通じて目指すマクロ経済の姿を明らかにしたことです。具体的には、中長期的に2%以上の労働生産性向上、賃金の伸びは物価を上回ること。名目成長率3%程度、実質成長率2%程度、2010年代後半には、より高い成長の実現を目指すこと。その下で1人当たり名目国民総所得は、年3%を上回る伸びとなり、10年後には、1人当たり名目国民総所得が150万円以上拡大することが期待されることを掲げています。
第三は、産業競争力会議と連携し、成長戦略の基本設計を提示したことです。併せて、復興、教育再生、行政改革等の公的部門改革などの安倍政権の重要課題について、政策体系として明確化したことです。
第四は、安倍政権の目指す経済社会の在り方を提示したことです。具体的には、「開かれた市場における自由な競争と同時に、勤勉を尊び道義を守り、各国・各地域の伝統や文化を尊重する。日本人が、自らのアイデンティティを自覚しつつ、国際的にも誇ることのできる市場経済を追求をする。日本の文化や伝統に基礎を持ちつつ、課題先進国として、グローバル経済・社会に共有される新たなモデルを生み出していくことを目指す。」ということを記述しています。
第五は、経済再生と財政健全化の両立に向けた取組の下で、プライマリーバランスの2015年度の半減、2020年度の黒字化に加えて、その後の債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指すとしていることです。財政健全化の取組方針としては、リーマン・ショック後の緊急対応等で増加した歳出総額について、国・地方双方で徹底した取組を行うこと。社会保障以外の支出について、一層の重点化・効率化を進めること。また、社会保障支出についても聖域とはせず、見直しに取り組むこと。目標達成に向け、今夏に、次年度の経済財政の姿と予算に係る「予算の全体像」を経済財政諮問会議において取りまとめるとともに、中長期の経済財政試算を示し、「中期財政計画」及び「概算要求基準」を策定することなどを明記しています。
議員の方々から御意見をいただきました。主な意見を紹介します。
民間議員から、「目指すべき経済の姿について継続的に議論をしていくべきである。」
同じく民間議員から、「名目・実質のGDP、GNIの関係をわかりやすく示すべき。」
麻生副総理から、「設備投資が増えても、賃金はなかなか上がらない。デフレの下で実質金利も上がる。政労使がよく話合いをしないとうまくいかない。財政再建と成長の両立を書いたことは良いこと。社会保障におけるジェネリック医薬品の使用、インフラのメンテナンスの効率化など、ちょっとやればできることはある。財政も、非常時から平時の対応に戻していくことが必要である。平成26年度予算については、中期財政計画を踏まえて編成をしたい。」
日銀総裁から、「成長戦略については、民間の前向きの動きを引き出すことが大事だ。そのためにも、政府は着実に政策を進めてほしい。14ページに女性の力の発揮に係る記述があるが、就業率が日本ではM字型を示しているのに対し、他のOECD諸国は台形であることから、この問題は非常に大事である。日本銀行としては、量的・質的金融緩和を行うことで2%の物価上昇率をできるだけ早期に達成したい。」
民間議員から、「賃金や雇用については、仕組みや制度より経営者のマインドセットが重要である。政労使のざっくばらんな意見交換の場を作るべきだ。労働市場改革にもつながる。政治のリーダーシップで実現をしてほしい。」
私から、「政労使の意見交換の場については、総理と相談をして設定を考えていきたい。リーマン・ショック後から平時の対応に戻すのは重要な課題であり、取り組んでいきたい。」
最後に、総理から以下の御発言がございました。
「甘利大臣には、PPP/PFIの抜本改革に向けたアクション・プランを取りまとめていただいた。今後10年間で12兆円規模に及ぶPPP/PFI事業の推進に向けて、関係大臣と連携して強力に取り組んでほしい。
小林議員から、「目指すべき市場経済システムに関する専門調査会」の中間報告について御説明いただいた。私は、日本が「瑞穂の国」であることを誇りとしている。実体経済を成長させ、その果実を頑張った人たちが分かち合う、そうした資本主義の原点を再び「発見」し、立ち戻るべき。目指すべき市場経済システムのあり方については、引き続き検討いただくとともに、こうした考え方をサミットなどの場において世界に発信していきたい。
本日、「骨太方針」の素案について議論を行った。4年ぶりの「骨太方針」では、日本経済「再生の10年」のシナリオを描いていただいた。また、今後10年間の平均で名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の成長を実現し、その下で、10年後には1人当たり名目国民総所得が150万円以上拡大するという経済の姿を明確に描いていただいた。民間議員をはじめ議員の皆様に感謝申し上げる。
3つの矢が相互に補強しあって最大限の効果を発揮する鍵は、①賃金、雇用の増加につながる持続的成長の実現、②経済再生と財政再建の好循環に加え、③景気回復をしっかりしたものとし、企業の決断や挑戦を促すことにある。こうした課題にしっかり取り組んでいきたい。
甘利大臣には、本日の議論を踏まえ、また、与党とも議論を進め、来週の諮問会議で諮問答申し、閣議決定できるよう御尽力いただきたい。」
以上を踏まえまして、私の方から以下の発言をいたしました。
「本日の議論、今後の与党での議論を踏まえ、調整し、次回の諮問会議で諮問答申を行いたい。引き続き、関係大臣においては、協力をよろしくお願いいたします。」経済財政運営に関する基本方針、通称は「骨太方針」ですが、「この正式名称につきましては、次回の諮問答申の際に、総理に決定していただきたい。」
以上です。

2.質疑応答

(問)歳出の削減の具体策ですとか、どれぐらい削減するかというところが、そこまで明確になっていないとか、本格的な財政再建への道筋ということが先送りになっているのではないか、というような見方もありますけれども、この辺りはどのようにお考えでしょうか。
(答)私は、何度も申し上げてきましたけれども、「骨太方針」、そして中期財政計画に向けて、次第にフォーカスを絞り込んでいきます。いきなり骨太方針から何々予算は何%削減、何々予算は何千億円削減という書き方はしませんし、過去もやってきませんでした。そこで、粗々な方向性を示しました。これから中期財政計画に向けてフォーカスを絞り込んで予算編成ということになります。予算編成では具体的な数字になるわけです。定性的な予算方針、予算編成というのはありません。定量的にきちっと数字が書かれるわけであります。方向性を示して、それに向けて予算編成上の概算要求から、その方針に沿った努力を各関係省庁にしてもらいたいと思っております。
(問)昨日示された成長戦略の素案では、250項目ぐらい施策が上がっていまして、政府内からも、これはかなり、そこに歳出の増加する圧力がかかるのではないかと懸念する声もありますけれども、成長戦略に盛り込まれたものというのは、来年度予算編成でもかなり重点的に予算を配分していくという方針なのでしょうか。また、そうした懸念に対してはどのような考えをお持ちでしょうか。
(答)財政再建を行っていく中で、質を変えていきますというお話をいたしました。社会的要請に応えるようなものについてメリハリをつけていく。そういう中で、もちろん効率化を図っていく、IT化を進めていく中で、はじめからの削減ではなく、結果として削減になってくるところもありますし、経済効果の高いところ、つまり成長戦略の中で重点的に取り上げていくものについては、しっかりとメリハリをつけていきたいと考えております。
(問)そのメリハリをつけていく中で、成長戦略のことで歳出の増加につながるのではないかと懸念する声にはどのようにお応えになりますでしょうか。
(答)大枠が決まります。その枠内でメリハリをつけていくということになります。基本的には、新しい政策を出すときには、ペイ・アズ・ユー・ゴーのルール等、一方的に歳出が膨らまない方法をとっていきます。併せて、先ほど申し上げましたけれども、各省間の重複を排除していくということもあります。それから、例えば総合科学技術会議は、科学技術予算の要求段階から各省との整合性がうまくつくような司令塔機能を果たしていく等、いろいろなツールを入れていって、予算がより効果的、同じ予算でも効果が大きい、少ない予算でも同等の効果というところをしっかり狙っていきたいと思っております。
(問)財政健全化について、改めて教えていただきたいのですが、プライマリーバランスの部分でかなり高いハードルで、これ実現できるのかという指摘がある一方で、例えば自民党からは、歳出圧力と受け取れるような声も出ています。今回「目指す」という表現をされたのですが、この「目指す」という表現にされた理由について教えてください。
(答)前から「目指す」という表現でございまして、そのとおり書いてあるわけであります。与党内からは、与党に戻ったということで腕まくりをした要求もたくさんあると思います。明日も私は7時半から、この「骨太方針」素案の議論で党の会議に出ますけれども、この大方針を譲るつもりはございません。量的に増やすということの発想から、質を上げていくという発想にしていきたいと思っております。予算効果があがるような組み方、執行の仕方、いろいろと工夫をして、10の予算が20にも30にも活きるようにしたいと考えています。
(問)財政再建について、今回の素案では、消費税についてはほとんど言及がないと思います。財政健全化のためには消費税を引き上げるというのは、市場的にはもう織り込まれているような気もするのですけれども、この素案について、その辺りをあまり明確にしていないと私は思うのですけれども、その点について大臣の御見解をお願いします。
(答)消費税を上げるということは、法律がもう通っておりまして、これは決まっていることであります。やるべきは何かといいますと、附則で書いてある、環境が整っているかの判断をするということでありまして、更に申せば、その環境が整うようにこの成長戦略は作られていくわけであります。このアベノミクスの第2弾というのは、消費税を上げるときの判断する経済環境を良くするという効果もあるでしょうし、そこから成長戦略につないでいくというストーリーもあるわけであります。ですから、実際に財政出動となる補正予算、そして今年度予算、それから、先に向かっていく成長戦略で民間投資を最大限喚起したいと思っております。現に、一部の商社では、農業の海外展開戦略に向けて投資を相当規模でしていくという決定をされているところもあるようであります。魅力的な道筋をしっかりと示して、そして、何よりも政府は長期にわたってコミットするということが大事です。成長戦略が、実現可能性に関して過去の政策とは次元が違うということをしっかりと民間投資主体に認識してもらうことが重要だと思っております。
(問)財政健全化について更にお伺いしたいのですけれども、今回、ストックベースの目標として、「2020年度までに黒字化」の後に、「その後の債務残高の対GDP比の安定的な引下げを目指す」と。この表現の含意なのですが、「その後の」というところは、例えば、2021年度からという意味なのか、あるいはこの時期がまだまだ全く目処が立たないということなのか、その点について大臣はどう考えていますか。
(答)プライマリーバランスの赤字幅を半分にすること、そして黒字を達成することで終わっては、実は解決にはなっていないということであります。ストックベースで減らしていかないと、本当の意味での財政再建にはならないということをしっかりと認識してもらう必要があるわけです。そして政府は、プライマリーバランスが黒字になった時点で、財政再建努力をやめるのではなくて、そこからが第二フェーズに入っていくと、そういうことを可能にするような強い経済も創っていくという意味であります。
(問)その2020年度までに黒字化、その後にストックで引下げを目指すということなのですが、例えば、OECDが今年4月に出した対日審査報告では、まず、黒字化して、その後のストックを減らしていくには、例えば、PBの黒字が4%必要であり、それを消費税率で実現するためには22%まで引き上げなければいけないという厳しい指摘をしているわけです。その消費税率の今後の議論はまた避けられないと思うのですけれども、その点についての見通しはどうお考えでしょうか。
(答)我々も賛成しましたけれども、前政権が出した法律では10%までの話であります。それを確実に実施できる環境を作って、そして実施された後に経済の足腰を強くしていく作業、そこで税収増でどこまで健全化が担保されるのか、されないのか、それから先の姿だと思います。まずは消費税率の引上げの経済環境がきちっと整うように、しっかりとした政策、財政出動をしていきたいと考えています。
(問)今回の「骨太方針」の方に沖縄が明記されるというのは、これはこれまでで初めてだと思うのですけれども、各委員から沖縄の振興の内容についてどういう意見があったかということと、大臣の見解も聞いてみたいと思います。
(答)これは党の方からも御要請もいただきましたし、沖縄からも御要請をいただいております。安倍政権の思いを県知事以下、御理解いただければ幸いでございます。
(問)今回のプライマリーバランスの目標を達成するには相当な歳出カット等もやっていかなければいけないことになると思います。その割にはあまり具体的な歳出カットの項目がないという印象を受けております。ここに書いてあること以外は、近い将来、自民党として、政権としてやらないということを意味しているのか。この参院選を迎えるという非常に重要な場面の前の「骨太方針」という中では、今後の国民に対してどういったことをやっていくかという、痛みも含めたものを提示した上で審判を問うというのが本来の筋ではないかと思います。ここに書いていないことはやらないということでよろしいのでしょうか。
(答)かなり定性的な書き方をいたしました。社会保障についても、聖域ではないと書きました。それ以外についてもしっかりやっていくと書きました。ほぼ全てを網羅した定性的書き方、表現だと思っております。これが足りないとしたら、あとどういう書き方があるのか。あくまでも予算の歳出項目、政策項目ごとに、これこれを何%切るという書き方からスタートはしませんと、大きい網で考え方をかけて、それをだんだん手元に引いていってフォーカスを絞っていって、最終的には予算編成については具体的な数字になっていくわけであります。その最初の全体の網をかけた、と御理解をいただければと思います。

(以上)