第5回記者会見要旨:平成25年 会議結果

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成25年2月28日(木曜日)19時18分~19時54分
  • 場所:合同庁舎4号館2階220会議室

1.発言要旨

先ほど第5回の経済財政諮問会議が終了いたしました。概要を御報告申し上げます。
本日は、まず「TPPについて」ということで、まず加藤官房副長官から、先般行われました日米首脳会談について、簡単に御報告をいただきました。副長官の発言でありますが、「22日に日米首脳会談を行った。TPPに関しては、オバマ大統領との会談で、聖域なき関税撤廃は前提ではないということが明確になった。このほか環境・エネルギー分野での協力、宇宙・サイバー分野での協力等についても議論がなされた。安倍総理としては、今後ともオバマ大統領との信頼関係の上に、より強固な日米同盟を築いていかれる考えである」ということでありました。
その後、議員の方々から御意見をいただきました。議員からいただいた主な御意見を紹介いたしますと、民間議員から、「TPPについては、聖域なき関税撤廃が参加の前提ではないということが明らかになったことを含めて、非常な前進があった。日米関係の再構築が進むということで評価をしている。年内に決着をつけたいということで、これから3月、9月と交渉があると思うが、次のAPECなどでなるべく早く参加表明をすべく検討を進めてほしい」。
同じく民間議員から、「アメリカと交渉する上でのタスクフォースとして、関係省庁に横串を刺した形で総理を中心に交渉を進める体制を作ってほしい」。
同じく民間議員から、「TPPには幾つもの意味があるが、成長戦略の観点からすると、年間10兆円程度、10年で言えば100兆円程度の効果があると試算している人もいる。RCEPも進めれば10年間で更に大きな効果が見込まれる。10年間180兆円という試算もある」。
同じく民間議員から、「TPPに加え、攻めの経済外交を進めるべきである。TPPだけでなく日中韓FTA、RCEP、日EUのFTAも積極的に取り組んでほしい」。
総理から、「TPPに参加するかどうか、民主党の悪口を言うつもりはないが、2年間も民主党の下で空費をしてきた。我々は2カ月間で文書化まで進めた。今後、国内への影響、経済的な効果などを含め判断していきたい。2年経ってしまったが、仮に参加をするという選択肢を検討した場合には、GDPで世界第3位の大国である日本の力が生かせるよう強いチームを組み、しっかりと取り組んでいく。また、本日行った施政方針演説でも、ルールを待つのではなくルールづくりをする側になると申し上げた。日本の未来はここにあると考えている」。
茂木経産大臣から、「民主党政権の時にも同様の文書を作ったと言っているが、日米が同意したという点で民主党が作った文書とは180度異なるということを強調してきた。つまり同じような中味だとおっしゃるが、自分で勝手に作ったものと日米で合意して出来上がったものとは全く違うものである」という発言がありました。
議題の2つ目は、「短期・中期の経済財政運営の在り方について」であります。
まず、内閣府事務方から、経済財政の状況について説明をさせました。その後、高橋議員から、経済財政運営の基本的な考え方について御説明をいただきました。その後、議員の方々から御意見をいただきました。主な意見を紹介いたします。
まず、麻生副総理からの発言であります。「内閣府の試算はSNAベース(国民経済計算ベース)であるために、25年度プライマリーバランスには24年度補正予算の影響が含まれているものである。25年度は33兆円の赤字とされているが、このうち6兆円が補正予算によるものであって、これを除くと27兆円の赤字である、そう理解すべきである」という御発言であります。
民間議員から、「財政について高い信頼を得るためには、結果が重要である。PB目標(プライマリーバランス目標)を実現できれば、財政再建に向けた強い意思を示すことができる。是非達成すべきである」。
同じく民間議員から、「2015年度まであと2年間、みんなで頑張ろうというキャンペーンが必要である。いわゆる六重苦の中でどうにもならないのがエネルギー。2015年、2020年に向けてエネルギーミックスをしっかり考えてほしい」。
同じく民間議員から、「PDCAを回すことが必要である。米国のOMB(行政管理予算局)、CBO(議会予算局)などは1年間の評価をしてフォローしている。政策の効果が測定でき、既得権益化しない仕組が必要である。サンセット化も含め仕組を検討すべきである」。
続いて、麻生副総理から、「エネルギーの話が出ましたが、電力会社をどうするか、原発をどうするか、どういうシステムがいいか、検討することが必要である」。
茂木大臣から、「エネルギーについて、調達の多角化・多様化、流通の広域化・効率化、消費を抑制するデマンドレスポンスの料金体系等々、伊藤議員に委員長をしていただき、検討をいただいている。今国会に電事法の改正法案等をパッケージで出したい。エネルギーのベストミックスについては7年後の2020年に完成させたい」。
エネルギーに関して官房長官から、「円安もあって、他国に比べ高い値段で輸入している。各省が連携して戦略的に対応する必要がある。総括原価方式によって電力会社が安く買うインセンティブはなかった。総理の訪米でシェールガスが進展をした」。
麻生副総理から、「ガスを液化する技術が日本にあるので、バーゲニングパワーがある」。
それから、これはいろいろなところに話が飛んできましたけれども、もともとは「短期・中期の経済財政運営の在り方」の中での議論になってございますが、総務大臣から、「PDCAと電子政府について、行政改革では政策評価と行政事業レビューをマッチングさせる仕組みを始める。PDCAと連携させることで効果がアップし、歳出カットだけでなく増加も可能となる。電子政府については、電子自治体が一番有効である。被災者台帳システムやメディカルメガバンクなどが考えられる。共通プラットフォームにより紙が不要になり、大幅なコスト削減が可能となる」。
民間議員から、「原発は今2基稼働しているが、それ以外は止まっているので、火力はフル稼働状態だ。現在の低効率の火力を高効率に置き換えるのであればCO2が増えない。環境影響評価、環境調査をもっと簡単にやることを考えるべきだ」。
私から、「LNGの話が度々出ていますが、備蓄リスクがあるということも考えなければいけない」という発言をしました。
麻生副総理から、「石炭は大量にある。投機があっても値段が上がりにくいのがいい」。
民間議員から、「日本は国連の電子政府ランキングで、2008年の11位から2012年に18位に低下をし、後進国になってしまった。しかも、毎年1兆円以上の予算を使っている。検証が必要である。防衛についても」、調達規格のことだと思いますが、「規格の統一で調達コストが大きく低下すると期待をしている」。
最後に総理から、以下の発言であります。
「TPPに関しては、日米首脳会談の成果を踏まえ、本日の皆様からの御意見も参考にさせていただきながら、内閣総理大臣として国益にかなう最善の道をできるだけ早く決断をしたいと考えている。経済財政運営については、政権発足以降、『三本の矢』でロケットスタートを切った。最近では、デフレ予想が緩和される兆しも見られる。実体経済に好影響を及ぼしつつある。今後の政策運営に当たっては、以下の点に注力する。
1.引き続き国民や企業の信頼に応える成果を出すこと、
2.特に成長戦略の中でも喫緊の課題については直ちに実行に移させること、
3.経済再生と財政健全化との両立を実現するための道筋を具体化すること。特に、国・地方のプライマリーバランスについて、2015年度までに2010年度比で赤字の対GDP比を半減、2020年度までに黒字化との財政健全化目標の実現を目指す。甘利大臣をはじめ関係大臣はしっかり取り組んでほしい」。
以上を踏まえ、私のほうからの発言であります。
「安倍内閣が発足後この2カ月、『三本の矢』の取組を大胆に進めてきたところ、最近では、デフレ予想が緩和される兆しも見られ、実体経済も変わりつつある。こうした好ましい変化を適切な政策対応により確実な景気回復につなげていく。今後経済状況が改善するにつれ、国債に対する信認が重要になる。経済再生と財政健全化との両立を実現するための道筋の具体化に向けてしっかりと取り組む。本日議論いただいた歳出の質の改善も重要な課題。次回は行政改革の取組を含め、歳出の質の改善について御議論をいただく。行政改革については、稲田大臣に御出席いただくことを予定している」。
私からは以上です。

2.質疑応答

(問)プライマリーバランスについて聞かせていただきたいんですけれども、2015年度に赤字幅削減という目標を掲げながら、今日出された試算で2013年度マイナス6.9%と、逆に赤字幅が拡大しています。2015年度の目標は絶対に達成できるのか、達成するために経済成長を何%ぐらい伸ばして、歳出をどれぐらい削りたいというふうにお考えなのか、現時点での大臣のイメージを具体的に聞かせていただけますでしょうか。
(答)2013年度の予算ベースのプライマリーバランスは改善に向かっているにもかかわらず、このSNAベース(国民経済計算ベース)で言うと悪化をしている。これは麻生副総理が特にしっかり理解をしてほしいという意味で、SNAの場合は、企業で言えば連結の執行ベースであると。予算というのは単体、予算計上ベース。そうすると、12年度の補正予算で組んだもののうち、実は計上は12年度に計上されていますが、執行ベースだとそのかなりの部分が翌年度執行ですから、翌年度のプライマリーバランスを押し下げる要因になっていますと。ですから、ある種数字の上ではそう出ていますけれども、改善に向かっている。景気の底割れを防ぐための前年度の対応がPBを押し下げるという意味では後年度に影響してしまっている、そのことを理解してほしいという発言でありました。
PBがマイナス6.9%になっております。2年間でマイナス3.2%まで戻していく、大変な努力であります。具体的に経済成長がどのくらいで歳出削減が云々というのは、これからいろいろと成長戦略の仕上がり具合とか等々勘案をしていかなければなりませんので、一概に数字としてはお話はできません。ただ、政府としては、総理の施政方針にもありましたように、2015年に10年度比半減、20年に黒字化、この目標はしっかりと掲げてあらゆる努力を投入していきたいと思っております。
(問)今の点についてもう少しお聞かせください。
今、麻生副総理のSNAベースと会計ベースのお話もございましたが、これは別に今決まったわけでなくて、前からこのルールというのはSNAベースで公約はしているわけであって、事業規模10兆円の補正を組めばこういうことになるというのは、誰だって分かるはずなんですが。まず1点目は、民主党政権は去年の8月の試算で71兆円枠、44兆円枠を厳守することによって、ぎりぎり3.2%のルールに乗っかるという試算を出していましたが、今回これを台無しにしたわけですが、この補正予算は本当にこれだけPBを悪くしてまで必要だったのか。この試算を見ての御感想をお聞かせください。
(答)台無しにしたという表現はどうかと思いますけれども、民主党政権を振り返ってみれば御記憶にあると思います。民主党政権では、予備費を使って景気対策をするが、補正予算を視野に入れるという議論がされていました。
なぜそういう議論がされたかというと、7~9月期の数字が年率換算マイナス3.5%という数字が出て衝撃だったわけであります。つまり底割れをしてしまうのではないかと。そうすると、これは15年度、マイナス3.2%までの見通しというのは、正に机上の空論になってしまうということで緊張感が走り、予備費でやり、いわゆる補正で云々と。そのときに、政権交代をして、それを引き継ぎ、我々がやるということを自民党が言ったわけであります。
でありますから、仮に自民党がやらなかったとしても、そのまま放置しておれば、底割れの危険もあったということであります。どの政権がやろうとも、取り組まざるを得なかったというふうに理解をいたしております。
そこで、底割れを防ぐということが以降のPBを取り返しのつかない状態にさせてしまうということを防ぐという効果はあろうかと思っております。
(問)もう1点、確かに民主党政権もその後補正を組むというふうに言っていたので、その後どういうふうになったかというのは分かりませんが、一応形の上では15年度の3.2%をぎりぎり達成できる形になったんですが、今回ちょっとそこから遠ざかりました。
先ほど、甘利大臣は今後の成長戦略の仕上がり具合ということを言っておられましたが、やはりここは不確定な部分が非常に強かろうと思います。
実際にこの15年度の達成ができない可能性というのはありますでしょうか。
(答)可能性は、いろいろな可能性がありますけれども、これは政府の意志だと思います。政府が確固たる意志を持って、それに向かってあきらめないということが大事だと思っています。ここは強くアピールをしたいと思っております。
安倍総理は今日の御指示の中にも、目標を掲げてしっかりと進めていくと、そのために成長戦略も今までと違う大胆な取組、三位一体で取り組んでいくというところは、そこに思い入れがあるんだというふうに思っております。我々は目標を引き続きしっかり掲げて、それに向かって最大限の努力をすると。
財政の健全化目標に向けて、諮問会議で具体的に議論をしていただくわけであります。並行して成長戦略を身のあるものにすると。
あるいは規制改革もやり方一つで恐らく、兆円オーダーでいろいろ数字が動いてくるということも、過去の経験であるわけでありますから、規制改革会議では、岩盤となっている規制を打破するというつもりでやるということを岡議長もおっしゃっておられますから、まだまだ達成に向けての道筋は、従来型で言うと厳しいということは、そのまま受け取りますけれども、今までにない対応で取り組んでいって、その可能性を最大限追求していきたいと思っております。
(問)最後ですが、エネルギーの議論がすごい多かったように感じるんですが、プライマリーバランスの結構厳しい試算が出たこの日の会議で、社会保障費の削減とか、そういう歳出削減についての話が全然出ない諮問会議というのは、何か少し私にはかつての姿からすると、頼りなく映るんですが、そこら辺については。
(答)民間議員ペーパーで、相当踏み込んだ問題提起が出ております。
ただ、同じくそこで民間議員から出た議論は、とにかく成長戦略をしっかりやっていく大前提として、エネルギーの安定供給がなければ、成長戦略は絵に描いた餅に終わってしまうと。理想論も大事だけれども、目の前をどうするんだという議論が出たわけでありまして、そこから半分エネルギー、半分財政健全化が入り交じった議論になっていったわけであります。
(問)先ほどのエネルギーのところで、茂木大臣の発言で、2020年にベストミックスをというお話があったと思うんですが、たしか自民党の公約では10年以内にベストミックスを確立するというのがあったと思うんですけれども、それを少し前倒しするような認識になるんでしょうか。
(答)今日の大臣の発言は、エネルギーのベストミックスを7年後の2020年に完成させたいということですから、かなり意欲的に取り組んでいかれるということだと思います。
(問)それに対して、民間議員の方から、この現場にも責任あるエネルギー政策の明確化とありますけれども、どういった御意見があったのでしょうか。
(答)民間議員の方は、先ほども申し上げましたけれども、経済を民需主導の成長路線に持っていくために、いろいろなプランがあっても、その大前提として、安価で安定的なエネルギー供給が担保されないと、そこに向かって投資が進んでいかないという警鐘を鳴らされたわけであります。
特に原発再稼働については、政府がしっかりと責任を持ってやってほしいという発言であります。
そこで、茂木大臣からは、もちろん安全第一ということが前提ですと。安全な原発は再稼働させますという話、その中でエネルギーの調達から、流通から、消費に至る一連の最適プランを策定するということであります。
消費の分野で言えばデマンドレスポンス、つまり消費側が、エネルギー需給が逼迫してくる段階の価格をうんと上げた場合には、自発的にそこの部分の省エネが働くという意味だと思いますが、そういうことを使って、従来とは違うエネルギー消費のやり方も新しい手法として取り入れたいというようなお話がありました。
(問)PBの今回の試算を見ますと、14年度、15年度と、歳出面では相当な改善をしなければいけないということが改めて浮き彫りになったと思うんですが、そうした中で、消費増税が実現しますと、14年度の景気というのは相当反動減で落ち込みが予想される状況にあると思います。
そうした中で、アベノミクスの2本目の積極的な機動的な財政政策、財政支出というのがまだ14年度の政策オプションとして残り得るのか、それともこういうプライマリーバランスを踏まえて、今後は金融緩和と成長戦略でデフレ脱却を確実にしていこうとするのか、今回の試算を踏まえて、今、大臣はどのようにお感じになっていますでしょうか。
(答)基本的には、今回の財政出動というのは、言ってみれば種火でありますから、それ以降は本体の薪に火がつくと、この景気刺激策の数兆円、10兆円オーダーのお金は種火として、経済規模全体、あるいは動かないでいる金融資産を動かしていくと、そちらに行動が移っていかなければならないと思います。でありますから、ここで消費税の影響分も含めてしっかり持ち上げておいて、民需主導の経済に点火をしていくということを最重点に行っていきたいと思っております。
それから、消費税を上げる前の駆け込み需要、上げた後の反動と、これは平準化する措置は幾つか仕掛けてあります。
例えば、自動車、そして住宅、これは反動減を平準化していって、上がる前、上がった後の変動が極力来ないような装置も入れているわけであります。全体の勢いを引き上げるということと、反動を平準化するという装置、この二つを使って、本体予算で経済成長と財政再建の両立ができるように、是非していきたいと思っております。
(問)TPPの議論は、全体のうちのどれぐらいの時間を割いてされたのかということと、茂木大臣の御発言の中で、民主党政権の時の文書とは違う中身なんだという御発言があったということなのですが、これは民間議員の方から何か関連の質問があって、答えるような形でされた発言ということなのでしょうか。
(答)TPPにどのぐらいの時間を割いたかというのは、そんなに時間は多くなかったです。前半の方が後半の半分ぐらいの時間だったと思います。
茂木大臣の発言は、民間議員が日米会談の成果を極めて高く評価をされたわけであります。そのときに、茂木大臣が共同文書、日米の文書が発出されたけれども、民主党、菅政権のときに、同じような内容の文書は作ったんだと民主党の方が言われていると。
確かに、そのとき民主党が作った文書を見ると、今回の日米共同発出した文書と中身がかなり似ていますと。だけれども、片や自分で単独で発出した文書と片や日米で合意をして発出した文書では、意味合いが全く違うと、180度違うと。自分で出したのはどんな文書でも出せるのではないですかという意味で、茂木大臣が発言をしたわけであります。
(問)今日は日銀の白川さんからは発言はなかったのでしょうか。
(答)ありませんでした。終わった後、発言されませんでしたねと言いましたら、発言をしようと思ったけれども、途中からエネルギーの話になったので、というような遠慮をされていました。

(以上)