第2回記者会見要旨:平成25年 会議結果
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:平成25年1月22日(火曜日)19時15分~19時42分
- 場所:合同庁舎4号館2階220会議室
1.発言要旨
第2回経済財政諮問会議が先ほど終了いたしましたので、その概要を御報告申し上げます。
本日の会議では、まず、「金融政策決定会合報告について」が議題1でございました。「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」でありますが、これにつきまして、まず麻生副総理から以下の発言がありました。
麻生副総理の発言を御紹介申し上げます。
デフレからの早期脱却に向けた「政府・日銀の連携強化」については、日本銀行との間で共同文書を取りまとめるべく、甘利大臣と協力をし、総理にもお諮りをしながら、日本銀行と鋭意調整をしてきた。本日、その調整の成果を政府・日本銀行の「共同声明」として公表した。「共同声明」において、日本銀行は「2%」の「物価安定目標」を設定し、「できるだけ早期に実現することを目指す」という方針を明らかにしている。金融政策の枠組みの思い切った前進として、これを高く評価したい。政府としては、日本銀行が、この目標の下、強力な金融緩和を推進することを期待している。
また、「共同声明」においては、政府としても、機動的な財政政策と成長戦略の実施に取り組むこととしている。これにより、日本経済に「実需」を作り出し、企業活動の活性化等を通じて、雇用・所得の拡大につながる好循環を生み出していきたいと考えている。さらに、先日の経済財政諮問会議において、財政に対する信認確保の重要性が指摘されたことも踏まえ、「持続可能な財政構造の確立」を着実に推進することも明記している。今後、この「共同声明」に基づき、デフレ不況から一日も早く脱却すべく、政府・日本銀行が一丸となって取り組んでいきたい。
次に、私から以下の発言をいたしました。
最近、景気回復への期待を先取りする形で円高修正が進み、株価も回復し始めており、こうした改善の兆しを実体経済の回復につなげていくことが重要である。政府・日本銀行の共同声明は、両者ができるだけ早期にデフレから脱却をするという強い意思・明確なコミットメントを示す「レジーム・チェンジ」であると考えている。今後は、この文書の内容を着実に進めることで、市場参加者のコンフィデンスを高めていくことが肝要である。
現在、消費者物価の前年比上昇率はマイナスであり、「2%」の物価安定目標は野心的であるとの指摘もあるが、諸外国の物価目標の多くは「2%」である。したがって、我が国も「2%」の目標を設定しなければ、名目為替レートが円高に振れ、企業マインドが冷え込むことになる。また、再びデフレに陥らないよう、ゆとりも必要である。こうしたことも考慮して、大胆な金融緩和により、「2%」の物価安定目標をできるだけ早期に達成していくことが重要である。また、物価安定目標達成の道筋を着実なものとするため、この場で検証してまいりたい。
その後、日本銀行の白川総裁から以下の発言がありました。
日本銀行は、本日の金融政策決定会合において、金融緩和を思い切って前進させることとしました。お手元の共同声明にもございますように、2%の「物価安定の目標」を導入することとしたほか、資産買入れ等の基金について「期限を定めない買入れ方式」を導入することを決定しました。金融政策の理念について、日本銀行法では「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」と定めています。日本銀行としましては、こうした理念に沿って、政府との「共同声明」にありますように、「物価安定の目標」のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指します。
具体的には、この目標の実現を目指して、実質的なゼロ金利政策と資産の買入れを継続することを通じて、強力な金融緩和を推進します。資産買入等の基金については、本年中も大規模な買入れを行うこととしていますが、2014年初以降も毎月13兆円程度の金融資産の買入れを行っていきます。
「共同声明」にもありますように、政府におかれても、大胆な規制・制度改革など成長力の強化に向けた取組や、持続可能な財政構造を確立するための取組を進められることを表明されており、そうした取組を強く期待をしています。
日本銀行としましては、引き続き政府との十分な連携を図りつつ、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向けて、自らの使命をしっかり果たしてまいりたいと考えています、ということでありました。
その後、議員の方々から御意見をいただきました。主な御意見を御紹介申し上げます。
民間議員からであります。「短期間で政府と日銀の連携強化を取りまとめたことを高く評価をします。実のある形で進めてほしい。時間軸はどう考えているか」。
これに対して総理から答弁がありました。「できるだけ早期にとしておりまして、中期をできるだけ短くしていく形で実現することを期待しています。2%の目標達成については、日銀が責任を持ってやってもらう」。
麻生副総理からであります。「英語ではアーリエスト・ポッシブル・タイムとしており、海外から見られることを前提にした文書となっています」と、この「できるだけ早期に」という英訳ですね。
民間議員からであります。「文書を高く評価をしています。為替との関係もあり、海外の評価も重要なので、丁寧な説明が重要と思う。対ドル、対ユーロだけではなく、他通貨についても外交的努力をお願いしたい」。
同じく民間議員からであります。「デフレが続いた中で物価を上げるのは大変だが、為替にはすぐ効果がある。最近の経済学でも金融緩和の効果として為替を通じた効果が大きいという研究がなされている」。
総理からであります。「各国には意を尽くして説明をしていきたい」。
続いて民間議員から、「悪い物価上昇はよくない。消費者物価については、コアやコアコアを見るべきである。経済のリスク、悪い兆候が出ていないか見ていくことも重要である」。
麻生副総理から、「円安による利益の増加を、内部留保ではなく給与の引上げに回すという経営者もいる。ありがたいことだ。経営者のマインドがどう動くかが重要である。1カ月で株価は2割、円相場は1割動いた。企業のマインドが変わりつつある」。
白川総裁から、「日銀は大量の資金供給をしている。このお金が有効に使われるように成長力強化が重要である。持続可能性を意識した成長力強化をお願いをしたい」。
最後に安倍総理から以下の発言がありました。
本日取りまとめられた「共同声明」は、私が選挙期間中から申し上げてきた考えが反映された内容となっており、これにより今後、「3本の矢」の最重要課題である「大胆な金融政策」が現実に進んでいくことになる。取りまとめに当たられた関係者の御尽力に敬意を表したい。
続いて、議題の二つ目といたしまして、「平成25年度予算編成の基本方針について」ということで、内閣府事務方から平成25年度予算編成の基本方針(原案)について説明をした後、麻生副総理から、「平成25年度予算編成に向けた考え方」について以下の発言がありました。御紹介をします。
皆様のお手元には、財政制度等審議会の委員の方々から昨日いただいた報告書「平成25年度予算編成に向けた考え方」を配布しております。財政制度等審議会では、平成25年度予算編成に向けて今後の財政運営のあり方と各歳出分野における取組につき熱心に御議論をいただいたところ。この報告書においては、日本の厳しい財政状況を踏まえ、市場から信認を維持するため、今のうちに着実に財政健全化に取り組むべきである。財政健全化目標は、財政運営に関する国際的な信認の重要な礎となっており、必要な分野への重点配分をしっかりと行いつつ、目標達成に向けて毎年度の予算編成を行う必要がある。政府は当面、機動的な財政運営を行いつつも、中長期的には財政健全化の取組を継続して財政再建への道筋を明確化しなければならないといった提言が行われている。
こうした考え方は、本日示された「予算編成の基本方針」の原案にも既に随所に示されているものと理解しているが、今後の取りまとめに向けて本日私から申し上げた考え方も十分に念頭に置いていただきたい。副総理からの発言であります。
民間議員から、「基本方針と具体的な案件が本当に合致しているかいつも疑問に思う。安倍政権の最初の予算なので、従来と違うことを示すべきである。重点化を国民に分かりやすく説明できるような予算にしてほしい」。
議題の三つ目といたしまして、「経済財政諮問会議の今後の検討課題について」ということで、高橋議員から、「経済財政諮問会議の今後の検討課題」という資料を御説明いただきました。本日は時間が限られていたために、議員の方々からの御意見等については次回の会議でお伺いすることにいたしました。
本日の議論を踏まえまして、総理から以下のような御指示、御発言がありました。総理発言であります。
本日、政府・日本銀行の共同声明を取りまとめることができた。関係者の皆様の尽力に感謝する。今後、日本銀行においては、2%の物価安定目標をできるだけ早期に達成するため、大胆な金融緩和を進めることを強く期待する。この物価安定目標の達成には、日本銀行が責任を持って取り組んでもらいたい。また、説明責任をしっかり果たしてもらうため、諮問会議で四半期ごとに「金融政策、物価等に関する集中審議」を実施をしたい。早速次回の諮問会議で初回の集中審議を行う。また、来年度予算については、甘利大臣には本日の議論を踏まえ、「平成25年度予算編成の基本方針」を早急に取りまとめてほしい。次回諮問・答申を行いたい。更に、本日は有識者議員より、今後の検討課題について意欲的な御提案をいただき感謝する。引き続き重要な諸課題について積極的な提案をいただくことで議論を牽引し、諮問会議が明確な方針を示す司令塔の役割を発揮できるようお願いをしたい。
以上を踏まえまして、私のほうから以下の発言をいたしました。
先ほど総理から御指示がありましたとおり、次回の会合では第1回の「金融政策、物価等に関する集中審議」を行います。ここでは金融政策運営の物価安定目標に照らした物価の今後の見通しなどについて討議し、検証を行いたい。また、「平成25年度予算編成の基本方針」につきましては、本日の議論等も踏まえ、次回の会合において諮問・答申をさせていただきたい。本日、民間議員から御提案をいただいた「経済財政諮問会議の今後の検討課題」については、次回も引き続き御議論をいただきたい。
以上であります。
2.質疑応答
- (問)今日、平成25年度予算編成の基本方針について議論されたということですが、今、民間議員の方の意見は一つしかなかったですけれども、原案から変えなくてはいけないようなポイントというのは何かあったでしょうか。
あともう一点が、民間議員からペーパーでPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)サイクルの確立を求める意見が出ています。総理から「費用と効果の比較も見えるように」という指示も出ていると思いますけれども、今後具体的にどんな取組をされていくかというのを教えてください。 。 - (答)民間議員からは、とにかく予算のメリハリ、重点化、その効果等について、わかりやすいような予算編成をしてほしいと、この会議でも、そして会議の外でもお話をいただいております。プラン・ドゥ・チェック・アクション、PDCAサイクルをしっかり回していくことが、予算を効果的に執行していくことになるということであります。
私も、予算編成にかかわる関係当局に対しまして、予算のメリハリ、どこを減らし、どこを重点化する、その政策効果についてきちんと説明ができるような編成をしてもらいたいという要請は既にしているところでございます。どこに重点化を置き、どこにメリハリをつけたか、その予算の形が表れる中で、その説明ができるというふうに考えております。 - (問)次回、金融、物価について集中討議をまず始めるということですが、今日、共同文書も取りまとめたばかりですし、2%への取り組みというのはこれから始まるんでしょうけれども、どういったことが次回、明後日ですね、テーマになると思われているのかということと、もう一つは、やはり今回の文書でも、日銀の金融手段については独立性というのを守っていこうという思想は多分あると思うんですが、その集中討議の中で、日銀の金融政策の手段については、何というんでしょうか、踏み込まないで議論といったものがそもそもできるのかどうかという疑問があるんですが、そこら辺についてはどのようにお考えでしょうか。
- (答)現状は、物価はマイナスで動いていると。そして、日銀の物価の見通しについても、そう短期間に目標の2%が達成できるような、そんな簡単な状況ではないと思います。日銀がやるべきこと、そして政府がやるべきこと、時間軸でしっかり検証しながら、それを達成に向けてお互いやるべきことをやっていくということになりますが、それに向けて第1回目、どういう考え方でこの検証をしていくか等々ですね、始めて何日か後にすぐ改善するわけではありませんから、これから先に向けてどういう形で検証し、どういう形でそれを実効あらしめるものにしていくか、今後の方向づけ、方針等の議論になろうかと思います。
- (問)諮問会議というよりも、共同声明の中身について改めてお伺いしたいんですけれども、その達成時期、できるだけ早い時期というのは、どういった経緯でこの文言に着地したのか、御説明いただける範囲でお願いできますでしょうか。
- (答)前回の日銀と政府、民主党政権の時代の取り決めといいますか、交わした文言の中では、1つは主体が、誰が何をするかということが、やや漠としております。この中で、日本銀行は何をする、政府は何をする。それぞれがやるべきことを、主語、述語、明確になっているかと思います。
その中で、やるべき目標、日銀、2%を実現できるように取り組んでいくということでありますが、かつての表現は、「中長期」という表現であったと思います。あるいは外国の例を見ますと、これが達成できるまで金融緩和を続けるというような表現でありました。中長期の「長期」は、私どもの政権ではあり得ないということで、総理からは、少なくとも「長期」という表現は共同声明の中にはあり得ないという私どもの立場、総理の立場は早くから表明をされていたわけであります。中期よりも、できるだけ近いところに寄るような表現はないかということで協議をしてきた結果が、「できるだけ早期」という表現になりました。これを何年何か月ということに置き換えるということは、具体的に想定はしておりません。中期よりも意欲的な期間目標だというふうに考えております。 - (問)2点お伺いしたいんですけれども、1つは雇用の目標について、総理はかねてから日本銀行にもその責任を持ってもらいたいというふうにおっしゃっていたんですけれども、この文書を読むと、4の2行目に「雇用情勢を含む」とあるんですが、これは諮問会議のところでそれについて定期的に検証を行うとあるんですけれども、これは読むと、必ずしも日銀にかかっているというふうには読めないんですけれども、どういう解釈をしたらいいのか教えていただきたいというのが1点目なんですが、よろしくお願いします。
もう1つは、2の2段落目なんですけれども、幅広い主体の取組によって物価上昇が高まっていくことを認識しているの「主体」というのは、これは政府が入るという理解でいいのか。この認識に立って日銀は物価に責任を持つということなんですが、これは要するに日銀が基本的には物価に責任を持つということなのか、それともこの「幅広い主体」というのには政府が入るのでしょうかということが2点目です。 - (答)雇用が具体的に入っていないと。私の理解では、総理は、世界の中央銀行の中に、雇用という取り上げを通じて物価安定目標を達成すると、あるいはそれと関連をするというところもあるという引き合いとして出されているというふうに理解をいたしております。世界の中央銀行でFRBだけであります。ただし、日本銀行は、物価の安定を通じて国民生活の安定・向上を図ると。その中には当然、雇用も広義で入ってくると思います。
でありますから、間接話法としてそういうことが盛り込まれているのではないかというふうに理解をいたしております。
それから、「幅広い主体」、まさに幅広い主体であります。家計があり、企業があり、もちろん政府も全く無関係だとは思っておりません。ただし、2%に向けて努力する主体は日本銀行だと考えております。ただ、もちろん政府もやるべき仕事はありますから、それぞれが連携強化をして実を上げていくということになると思いますが、日銀がやるべきは何、政府がやるべきは何というふうに書いてあると承知しております。 - (問)今日決定された共同声明や追加緩和について、海外の受け止めについて大臣の御所感をお伺いしたいんですけれども、ECBの政策委員でもあるドイツ連銀のバイトマン総裁が、今回の決定を受けて、日銀の独立性について疑問視するとともに、こういった決定によって為替レートが政治問題化しかねないということで、通貨安競争についての懸念について表明しているんですが、ほかにもドイツのショイブレ財務相からもこういった意見が聞かれるようですけれども、こういった海外からの意見、見方について、大臣のお考えをお聞かせください。
- (答)政治的に為替を誘導するつもりは全くありません。誤解がないように一生懸命説明していきたいと思います。
(以上)