[目次]  [戻る]  [次へ]

第2章 デフレ脱却への動きと賃金をめぐる論点

物価は緩やかに上昇しているが、デフレからの脱却に向けて物価の上昇基調が定着し、デフレに後戻りする見込みがない状況を作っていかなければならない。また、現在、日本の労働供給は大きな転換点を迎えつつあり、一部の業種では供給制約に直面している。今後は、ライフステージに合わせて柔軟に雇用形態や労働時間を選択できる社会を目指さなければならない1。労働の成果を測るための指標としては、時間当たり生産性や時間当たり賃金が重要となる。デフレ脱却への動きとの関係では、物価の伸びを上回って時間当たり賃金が持続的に上昇し、その上昇が需要の増加につながることにより、物価が安定的に上昇するという好循環が確かなものとなることが期待される。また、柔軟な働き方を選択できる社会を構築し、女性や高齢者を中心に労働参加を拡大していかなければならない。

こうした問題意識から、本章ではデフレ脱却への動きと賃金をめぐる論点について考察する。第1節では物価の基調やその背景から物価上昇の持続性を検証する。第2節ではデフレ脱却にとって重要となる時間当たり賃金と物価の関係について分析する。第3節では実質賃金の上昇と労働参加拡大への課題について考察する。


(1)経済財政諮問会議・選択する未来委員会(2014年5月)「未来への選択-人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築-」では、「年齢、性別、時間、場所に関係なく働くことができ」る社会を構築していくことを提言している。
[目次]  [戻る]  [次へ]