平成26年度年次経済財政報告公表に当たって
日本経済が、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」の効果もあって着実に上向く中、2014年4月に消費税率が8%へと引き上げられました。景気は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動によりこのところ弱い動きもみられますが、緩やかな回復基調が続いています。今後については、駆け込み需要の反動の影響が次第に薄れ、各種政策の効果が発現する中で、緩やかに回復していくことが期待されます。ただし、海外景気の下振れなどのリスクを注視していく必要があります。日本経済は、デフレ脱却へ向けて着実に進んでおり、今後は適度の物価上昇が安定的に実現する正常な姿に戻っていくことを期待しています。
景気の回復に伴い、新たな課題が浮かび上がってきました。例えば、非製造業を中心に労働力不足が生じていますが、これは低成長下で隠されていた人口減少の問題が顕在化したものです。また、2013年秋以降、経常収支には一時的にせよ赤字が生じるようになりました。高齢化に伴う貯蓄の減少が改めて意識され、財政健全化への取組も一層重要となっています。さらに、日本の産業の比較優位が変化する中で、一部の業種では生産設備の制約にも直面しています。こうした課題について本報告では掘り下げて分析し解決の糸口を探っています。
今後の経済財政運営に当たっては、経済の好循環の拡大を図り、デフレ脱却と経済再生への道筋を確かなものとしていくことが必要です。名目GDPが実質GDPを超えて安定的に成長する本来の姿の実現は財政健全化にとっても不可欠です。このためには、需要面に加えて、供給面での取組も強化していく必要があります。成長戦略の推進を通じて、新たな雇用・投資・事業展開等の個人や企業のチャレンジを促し、日本経済が持つ潜在力を引き出すことにより、その可能性を広げていくことが重要です。本報告がこうした課題に関する幅広い議論の素材となれば幸いです。
平成26年7月
経済財政政策担当大臣