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平成24年度年次経済財政報告公表に当たって

日本経済は東日本大震災によって受けた大きな打撃から立ち直りつつありますが、欧州政府債務危機の再燃や電力の供給制約など、引き続きリスクの高い状況が続いています。こうした当面の景気動向への対応が重要であることは言うまでもありませんが、それと同時に、高齢化や人口減少に伴う労働人口の減少という構造的な経済の下押し圧力を克服するためには、社会のあらゆる場面でイノベーションを実現することにより、日本経済の成長力を高めていくことが必要です。日本には、高い倫理性を持ち、社会との共存を前提とし、持続的成長を可能とする企業文化が根付いています。こうした日本の良さをいかした「発展的創造」としてのイノベーションの実現が強く求められています。

そこで本報告書においては、「日本経済の復興から発展的創造へ」という観点から、日本経済の現状と課題について分析を行いました。

当面の景気動向については、雇用・所得・消費の好循環の形成を進め、リスクを乗り越えていくことがポイントです。そのためにも、「モノ」「人」「お金」を動かすための政策を強力に推進し、経済の好循環を実現して、長年の懸案であるデフレからの脱却を一日も早く実現しなければなりません。

被災地の生産等は大震災前の水準に戻りつつあり、復興は次の段階に入っています。この復興の過程で、日本が目指す新しい経済社会の姿を被災地で先行して実現することにより、被災地の復興を日本経済再生のモデルとすることが重要です。

もちろん、被災地の復興のためには日本経済全体が活力を取り戻すことが不可欠です。そのためには新たな経済の活力につながる起業を盛んにしていかなければなりません。我が国の起業活動は総じて低調ですが、起業に必要な知見を得る機会が拡大し、起業が社会的に評価されるようになれば、活発化することが期待されます。それに加えて、人的資本の蓄積及び産業集積の形成を推進することが必要です。

経済成長は、それ自体が目的ではなく、国民一人ひとりの幸福度の向上に資するものであるべきです。そのためには社会全体の幅広い人々が成長の恩恵を享受できるような包摂的な成長(インクルーシブな成長)を、単に量的な側面だけでなく、質をも重視した「新しい成長」という形で実現していくことが重要です。

本報告書が、こうした課題に関する幅広い論議の素材となれば幸いです。

平成24年7月

経済財政政策担当大臣

経済財政政策担当大臣 古川元久

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