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まえがき

 「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。

 2011年の夏以降、ギリシャに端を発する欧州の政府債務危機が再燃し、他の南欧諸国等や国際金融市場にもその影響が広がり、現在もなおその緊張や先行きに対する不透明感が高まっている状況にあります。こうした中、アメリカは雇用情勢の改善等から緩やかな回復をみせていますが、欧州全体の景気は足踏み状態にあり、中国をはじめとする新興国でも減速がみられるなど、世界経済は全体として弱い回復が続いています。

 第1章の「欧州政府債務危機を巡る緊張が続く世界経済」では、依然回復力が弱い世界経済の現状を概観するとともに、欧州政府債務危機が金融システムや貿易を通じて世界経済全体に及ぼした影響、こうした不安定な経済環境下で新興国も加えた世界的な金融緩和への動きについてもレビューしています。また、世界経済の今後の見通しについて想定されるシナリオを描くとともに、今後考えられる経済の下振れリスクについても整理しております。

 第2章の「各国・地域の動向」では、ヨーロッパ、アジア、アメリカの景気の現状と課題について、それぞれの国・地域の構造的な問題を含めて掘り下げ、分析を行っています。特にヨーロッパでは前述の政府債務危機からの脱却に向けた財政再建の可能性、アジアでは中国において高騰がみられてきた住宅価格の展望、アメリカについては今後の回復の持続可能性に向けた課題など、各国・地域が取り組むべき優先的な課題を対象としてとりあげております。併せて先行きについても、想定されるシナリオとそのリスクを提示しています。

 我が国の経済財政政策の適切な運営にあたっては、その前提としてこうした世界経済の現状や先行きを的確に把握することが極めて重要です。この「世界経済の潮流」はそのためのバックグラウンドとなる分析を提供することを企図しています。本報告書が、我が国を巡る世界経済の現状や今後の展望についての理解を深める一助となれば幸いです。

平成24年6月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

西崎 文平

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