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まえがき

 「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。世界経済は、2008年秋の世界経済・金融危機発生後に打ち出された各国の景気刺激策の効果もあって、現在、緩やかに回復しています。しかし、ヨーロッパを中心とした世界景気の下振れ懸念といった先行きのリスク要因も抱えています。我が国の経済財政政策の運営にあたっては、こうした世界経済の現状や先行きを的確に把握しておくことが極めて重要ですが、この「世界経済の潮流」は、そのためのバックグラウンドとなる分析を提供するものです。
 今回公表する「世界経済の潮流2010 I」では、現在、世界経済の回復をけん引しているアジアが、今後更に発展していくための条件を様々な面から検討することとしました。また、ヨーロッパを中心として影響が及びつつあるギリシャ財政危機について、その原因や現状だけでなく、ヨーロッパの他の国々や金融システム全体へのコンテイジョン(伝染)、あるいは今回の事態から得られる教訓についても分析しました。これを受けて、副題を「アジアがけん引する景気回復とギリシャ財政危機のコンテイジョン」とするとともに、全体を3章構成としました。
 第1章「世界経済の回復とギリシャ財政危機」では、アジア、アメリカ、ヨーロッパの景気の現状を明らかにするとともに、地域によって景気回復や、非常時の財政・金融政策からの出口戦略にばらつきが生じている世界経済の現状について分析をしています。ギリシャ財政危機についても、この章で扱っています。
 第2章「アジアの世紀へ:長期自律的発展の条件」では、少子高齢化という人口動態の変化を考慮した経済成長の長期展望を行うとともに、社会保障制度の整備、地域格差の是正、労働力の質の向上、インフラ整備、全要素生産性の引上げ、安定的なマクロ経済・金融環境の維持といった、アジアが長期的に発展を続けていく上で取り組むべき課題について分析をしています。
 第3章「世界経済の見通しとリスク」では、第1章と第2章の分析を踏まえ、世界経済の先行きについて、想定されるシナリオを提示するとともに、そのリスクについて検討をしています。
 本報告書が、世界経済の現状や今後の展望について、理解を深める一助となれば幸いです。

 平成22年5月


 内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
 齋藤  潤


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