31 アメリカの代表的な貯蓄金融機関である貯蓄貸付組合(S&L:Saving and Loan Associations)は、預金金利規制や税制面等の優遇措置の下で、70年代までは住宅金融の分野で安定的な収益を確保していた。80年代に入り金融自由化の流れが加速すると、リスクの高い新設企業向け貸出や企業買収関連融資、ジャンク・ボンドへの投資を積極的に行うようになったが、政府の手厚い預金保険制度を背景にモラルハザードが広がり、不十分な監督制度のもとで各S&Lの安易な経営が助長された結果、多くの機関が金融危機に陥った。また、特定地域の不動産不況(エネルギー不況によるテキサス州等南西部)による不良資産の増加も、大きく経営を悪化させることとなった。こうした要因から短期間に多数の機関が破たんした結果、S&Lの預金者保護のための機関であった連邦貯蓄貸付保険公社(FSLIC:Federal Savings and Loan Insurance Corporation)も破たんするなど、金融システム全体を揺るがす大きな問題となった(経済企画庁(1990))。