まえがき

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「世界経済の潮流」は、内閣府が公表している世界経済の動向に関する報告書です。

2022年後半の世界経済を取り巻く状況に目を向けると、経済社会活動の正常化、ウクライナ情勢の長期化等によって生じた世界的な物価上昇の克服に向けて急速に金融引締めが進みました。「世界経済の潮流2022年Ⅱ」では、こうした状況下での世界経済の動向と先行き、主なリスクを整理するほか、ASEANの貿易構造と特定国への依存リスク軽減の動きに関する分析を行っています。また、アメリカ、中国、ヨーロッパの3地域それぞれの経済動向についてもまとめています。

第1章では、2022年後半を中心に、世界の景気動向を整理しています。世界的な物価上昇を受け金融引締めが急速に進展しています。この下で、2022年後半にかけての世界経済は、旅行・飲食等のサービス消費や設備投資の増加、雇用の安定等により底堅い動きも見られます。また、中長期的な経済安全保障の観点から、エネルギー問題についてはエネルギー確保や価格高騰対策のみならず脱炭素に向けた取組、またサプライチェーン問題については半導体のサプライチェーン強化に向けた取組が進んでいます。一方、2023年にかけての世界の景気は欧米を中心に減速が見込まれています。物価上昇と金融引締めに伴う影響、中国の感染再拡大と不動産市況の悪化、ウクライナ情勢の長期化・深刻化に伴うエネルギー確保、その他の地政学的な要因による中国における経済活動の抑制等には今後も引き続き注視が必要です。

第2章では、ASEANの貿易構造と特定国への依存リスク軽減の動きについて分析しています。世界貿易の中でASEANの存在感が上昇しています。輸出品目は一次産品・軽工業から機械製品等に重点がシフトしており、「世界の工場」は中国からASEANにも拡大中です。米中貿易摩擦の本格化以降、ASEANの対米輸出は更に増加し、半導体関連品目の輸出も伸長しました。他方、ASEANは部品輸入を始めとして、輸入先が中国に集中している傾向があります。2022年春の中国の感染拡大期のサプライチェーン寸断リスクを受けて、在中米国企業の投資計画には「チャイナ・プラスワン」の動きもみられました。ただし、ASEANの対中貿易依存度は高く、サプライチェーンを通じたリスクには引き続き留意が必要と考えられます。

このほか本報告書では、アメリカの労働市場のミスマッチと失業率、中国の長期経済見通しと人口問題、ベトナムの対米貿易黒字急拡大を受けたアメリカの対応等、2022年後半の世界経済及び各地域の主なトピックについてもまとめています。

本報告書の分析が、世界経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考えるうえでの一助になれば幸いです。

令和5年2月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

村山 裕

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