まえがき

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「世界経済の潮流」は、内閣府が公表している世界経済の動向に関する報告書です。

今回の報告書「世界経済の潮流2021年II」では、中国の経済成長と貿易構造の変化をテーマとして取り上げています。また、感染症による影響から回復に向かう世界経済について、2021年以降の動向と今後の主なリスクを分析するとともに、アメリカ、中国、ヨーロッパの主要3地域それぞれの経済動向についてもまとめています。

第1章では、中国経済が質の高い成長の実現に向けて直面する課題や中国政府の対応について整理、分析するとともに、中国の成長モデルが変化する中でみられている諸外国との貿易構造の変化について分析しています。中国では、生産年齢人口が2012年以降減少に転じ、農村部からの出稼ぎ労働者数の伸びも頭打ちとなりました。こうした中、賃金水準が上昇しており、かつてのような豊富な労働供給の増加に依存した成長からの転換が進められています。2021年3月に発表された十四次五か年計画では、政策の方向性として「質の高い発展」が掲げられており、人材育成やR&D投資推進に向けた取組が進められています。これらの取組に沿う形で、例えば、電気自動車生産における新興企業のイノベーション等がみられています。中国の産業高度化の流れを受け、グローバルバリューチェーンでの中国の役割にも変化がみられます。中国から先進国への財の流れをみると、中国に輸入が集中する財が労働集約財から資本集約財へ移行しているなどの特徴がみられます。また、中国とASEAN諸国との間においては、両者の生産コストの違い等を背景に、相互の比較優位をいかす形での分業と貿易構造の変化がうかがえます。

第2章では、世界全体及び主要地域の経済動向を分析しています。2021年の世界経済は、各国で政策による下支えが行われる中で、感染拡大防止のための制限措置が緩和され、持ち直してきました。欧米を中心に景気が世界的に同時に持ち直す中で、需給のひっ迫が生じ、原材料や人手の不足が顕在化しました。こうした流れは、世界的な物価上昇へとつながっています。各国で景気が持ち直す中で、金融政策の正常化に向けた動きが広がり、政府による支援策も一部は終了となるなど、政策面でも転換がみられました。中国に目を向けると、政府による環境規制や不動産投資過熱抑制策、感染拡大防止のための制限措置等を背景に、回復のテンポが鈍化しています。世界経済は2022年も持ち直しが続くことが見込まれますが、需給ひっ迫の状況や中国経済の減速、感染の動向等には注視が必要です。本章では、これらマクロ経済動向の他、アメリカの住宅市場や、ドイツ新政権が直面する課題といった、各地域のトピックについても紹介しています。

本報告書の分析が、世界経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助になれば幸いです。

令和4年2月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

村山 裕

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