まえがき

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「世界経済の潮流」は、内閣府が年に2回公表する世界経済に関する報告書です。

本報告書の第1章では、中国経済の世界経済に対する影響力が強まってきていることを踏まえ、中国経済減速の世界経済に対するインパクトを概観した上で、過剰投資・過剰生産・過剰信用の調整、「中所得国の罠」の回避、人口減少・高齢化の進展といった中国経済が直面している課題について分析しています。

また、中国が持続的な成長を実現するためにはイノベーションを通じた生産性の向上が不可欠となる中、R&D投資等は増加しているものの、アウトプットの質の向上が課題であると指摘しています。

さらに、投資主導から消費主導経済への移行が進行中であり、都市化の進展や所得増に伴い急成長している観光等のサービス分野についても分析しています。

第2章では、アメリカの金融政策正常化(利上げ)の新興国経済への影響について、過去の新興国の通貨危機や混乱の経験と比較しながら分析しています。

利上げに伴い新興国では通貨下落や資金流出等が懸念されています。新興国のリスク耐性にはばらつきがみられますが、これらの新興国の中には財政赤字が拡大していたり物価がインフレーターゲット内に収まっていない国もあり、リスクが顕在化した場合には財政・金融面での政策余地が限られる可能性があります。一方、世界金融危機後、危機の伝播を抑制したり、危機を未然に防止する仕組みは強化されていると分析しています。

第3章では、ユーロ圏の経済情勢について概観した後、ユーロ圏経済の懸念事項であるギリシャ問題及びその背景にあるユーロ圏の構造問題を分析しています。ギリシャをめぐっては、債権団との債務問題の交渉が難航し、デフォルトやユーロ圏離脱リスクも懸念されましたが、第3次支援プログラムがまとまり、リスクは当面回避されました。しかし、ギリシャは依然として財政再建と経済成長の両立という困難な課題に直面していると分析しています。

第4章では、世界経済の見通しについて、緩やかな回復が続くというメインシナリオを掲げながら、リスクとして、アメリカの金融政策正常化の影響、中国経済を含む新興国経済の先行き、地政学的リスクを挙げています。

我が国の経済財政政策を適切に運営するためには、その前提となる世界経済の現状や先行きのリスク等についての的確な把握が極めて重要です。本報告書がその理解を深める一助となれば幸いです。

平成27年12月

内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)

田和 宏

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