まえがき
「世界経済の潮流」は、内閣府が年2回公表する世界経済に関する報告書です。世界経済は、各国の景気刺激策の効果もあって、緩やかに回復しています。しかし、2010年半ば頃から、景気回復のペースはそれまでの勢いをやや失い、更に緩やかなものになりつつあります。我が国の経済財政政策の運営にあたっては、こうした世界経済の現状や先行きを的確に把握しておくことが極めて重要ですが、この「世界経済の潮流」は、そのためのバックグラウンドとなる分析を提供するものです。
今回公表する「世界経済の潮流2010年II」では、世界金融危機後の景気後退や政策対応を背景に、先進国を中心に財政赤字が大きく拡大している中、財政再建を進めていく上での留意点について、諸外国の様々な事例を基にして分析することとしました。これを受けて、副題を「財政再建の成功と失敗:過去の教訓と未来への展望」とするとともに、全体を3章構成としました。
第1章「世界経済の回復の潮目の変化」では、世界経済全体の現状について鳥瞰するとともに、アジア、アメリカ、ヨーロッパの景気の現状と先行きをみる上でのポイントについて分析をしています。
第2章「財政再建と経済成長、金融システム」では、主要先進国における財政赤字拡大の現状をみた上で、1990年代から遡って先進各国の財政再建の経験を分析し、財政再建の失敗事例、成功事例から今後への教訓を導き出しています。
第3章「世界経済の見通しとリスク」では、第1章と第2章の分析を踏まえ、世界経済の先行きについて、想定されるシナリオを提示するとともに、そのリスクについて検討をしています。
本報告書が、世界経済の現状や今後の展望について、理解を深める一助となれば幸いです。
平成22年11月
内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
齋藤 潤