第3章 世界経済の見通しとリスク |
第3節 アジア経済の見通しとリスク
1.経済見通し(メインシナリオ)― 回復傾向が続く
中国では、2008年11月に発表されたインフラ投資を中心とする4兆元規模の対策や、自動車・家電を対象とする消費刺激策等の効果もあり、景気は内需を中心に回復している。先行きについても、欧米向けを中心に輸出は弱い動きを続けるものの、引き続き内需が堅調に推移すると見込まれることから、回復傾向が続くとみられる。今後、欧米経済の本格的な回復と併せて、更に成長率を高めていくことが見込まれる(第3-3-1図)。
韓国、台湾、ASEANをみると、景気刺激策の効果や中国向け輸出の増加もあり、総じて景気は持ち直している。先行きについては、引き続き中国向けの輸出が堅調に推移するとみられることなどから、回復に向かうと見込まれる。ただし、これらの国は、国内市場が小さく、輸出の名目GDPに占める割合が高く、また、欧米向け輸出の回復に依存している部分が大きいことから、本格的な回復は、欧米経済の回復と歩調を合わせたものになると見込まれる。
インドについては、景気は内需を中心に持ち直している。先行きについては、09年のモンスーン期における深刻な雨不足による農業生産の減少が個人所得にマイナスの影響を与えるとみられ、景気の回復スピードは過去の景気拡大局面に比べると緩やかなものになると見込まれる。
なお、国際機関の見通しをみると、中国は10年に9〜10%程度、インド、インドネシアは5〜7%程度と09年から成長率を高め、その他の国でも、09年のマイナス成長から2〜4%程度のプラスに転じる見込みとなっている。しかし、世界経済の回復が緩やかであることから、過去の景気拡大局面と比べると低めの成長率が見込まれている(第3-3-2表)。