33 OECD(2006b)も景気が良いときに拡張的な政策がとられる可能性等を指摘している。また、Annett (2006)も、ヨーロッパ各国の財政運営が景気循環増幅的な傾向がみられるとしている。また、92年のマーストリヒト協定締結以前は、選挙の年に財政収支が大きく悪化する効果がみられたが、協定締結以降はそうした傾向が弱まったとしており、同協定に基づく財政ルールが有効に機能したとしている。
 また、Taylor (2000)は、80〜90年代の米国の財政政策は景気循環相殺的にみえるが、それは、第一に、「80年代初頭のレーガン減税が、本来需要刺激を意図したものではないにもかかわらず減税が実施され始めたときには景気が後退期に入って」景気循環相殺的効果を持ったことと、第二に、「90年代の後半に景気が力強く拡大していたときに所得格差が拡大していたため」累進税率の結果「税収が増大して景気循環相殺的な効果を持ったこと」によるもので、偶然による面があり、裁量的な政策として意図された結果ではないことを指摘している。