25 ここでの分析はマクロデータによるものなので、どのような社会保障制度改革が歳出削減に貢献したかをここでの分析結果と直接リンクして示すことは困難であるが、例えば、Casey et al (2003)は、年金制度について、90年代以降に各国で行われた改革として、早期退職の抑制、高齢者雇用の促進、給付水準の抑制、私的年金に関する制度整備などを挙げている。財政の健全性を維持している国のうち、例えば、スウェーデンでは、賦課方式を維持しつつもそれまでの確定給付方式から概念上の拠出建ての方式に大きな転換を行い、平均余命や経済成長鈍化の場合には自動的に給付額を抑制できるようにした。また、フィンランドの場合には、給付年齢の引上げや、年金給付額の年々の引上げ率を賃金より物価により密接に連動するようにするなど、賦課方式確定給付建ての範囲内での各般の改革が実施されている。
また、雇用関係では、例えば、OECD(2006a)は、90年代半ば以降、各国で、失業給付の給付水準の削減や給付要 件の厳格化、失業者が再就職する場合のインセンティブの向上(社会保障負担・給付、税を合算したいわゆる「税のくさび」の引下げ)、積極的労働市場政策の有効性向上、その他の構造改革について、国毎の差異がかなりあるが、各国で改革が進んでいることを報告している。