コラム 各国の財政ルール
各国の財政ルールを概観する(表参照)とかなり多様であるが、ある程度共通する要素としては、以下が挙げられる。 第一に、財政赤字や歳出総額で中期的目標を定めて実効性を高めようとしている。例えば、アメリカの97年の財政調整法では02年度収支均衡を掲げた。また、ヨーロッパでは、通貨統合の参加条件として財政赤字をGDP比3%以下にするなどの基準を設け、さらに、安定成長協定において、各国ごとに中期目標(収支均衡等)の設定を求めている。 第二に、歳出削減や減税に対して歳出の上限を定めたり見合い財源を求めたりするなど、具体的な歳出抑制のメカニズムが設けられている(例えば、アメリカのキャップ制、Pay-as-you-go原則等。)。 第三に、財政ルールを確保するための権限・義務を、予算編成を行う組織とは別の組織に付与してルールの実効性を高めようとしているものがみられる。例えば、アメリカでは、予算関連法案の策定は議会が行うが、歳出がキャップ制の上限額を超過した場合には、大統領に一律削減を行う権限を与えている。また、ユーロ圏の場合は、欧州理事会・欧州委員会による過剰財政赤字手続が各国に対する監視機能を果たしている。 第四に、景気循環による収支の振れを考慮に入れて実効性を高める試みもなされている(3)。例えば、英国のコントロール・トータル制度やサステイナビリティ・ルール等では、景気循環の影響を除いて歳出や債務残高を管理することとしている。また、安定成長協定では、「著しい経済下降」の場合は3%基準の例外とされる。アメリカの財政収支目標もあくまで目標で、景気循環等による結果的な収支の振れを許容し得るものとなっている。 第五に、予算の単年度主義からくる無駄を排するため、複数年度にまたがった歳出管理も試みられている(例えば、英国の「包括的歳出見直し」や、予算編成の前提として4か年の支出額をベースラインとして固定するオーストラリアの方法等)。 以上に加え、上記の目標や手続を公表することなどにより透明性やアカウンタビリティが重視されていること、政策評価を活用して優先順位を明確化し予算の無駄を減らすなどの予算編成プロセスの改革も併わせて行われていることなども重要であろう。
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