まえがき
「世界経済の潮流」(以下「潮流」という。)は、内閣府が年2回公表する世界経済の動向に関する報告書です。今回で48回目となる潮流は「中東情勢の緊迫化と政策対応」との副題を付しています。
第1章では、2026年2月末以降の中東情勢の緊迫化が世界経済に与えている影響と、各国政府・中央銀行による対応について整理しています。世界のエネルギー貿易の要衝であるホルムズ海峡の大幅な通航制限を受けて、事態発生当初は、アジア諸国を中心に各国・地域経済に大きな影響を与えることが想定されました。しかし、石油備蓄の放出や代替調達先の開拓といった各国の政策対応もあり、エネルギー関連産業を除けば、これまでのところ主要国・地域の経済活動が供給面から大きく制約されるような事態には至っておらず、影響は主としてエネルギー価格の上昇に伴う世界的な物価上昇という形で表れています。各国政府は家計部門を中心としたエネルギー価格高騰の影響を緩和するため、減税や価格抑制措置等の様々な対応に取り組んでいますが、財政余力が限られる中、いかに効果的かつ効率的な支援とするかに苦心しています。物価上昇圧力が高まる中で各国・地域の中央銀行の対応も焦点となっており、主要中央銀行では徐々に金融政策の重心をインフレ対応へ移そうとする傾向がみられています。
第2章では、2026年前半の米国、アジア、欧州の経済動向と今後の見通し、主なリスクについて整理しています。米国では、AI関連投資を背景に景気の拡大基調は底堅く推移している一方、物価上昇により消費を取り巻く環境は悪化傾向にあり、今後消費の増勢が継続するか注視する必要があります。中国では、消費の弱含みや投資の減少にみられる内需の弱さを背景に、景気は緩やかに減速しています。世界的なAI関連需要を背景に、韓国の景気は緩やかに回復、台湾の景気は外需を中心に拡大しています。ユーロ圏では、スペイン、イタリアなどが成長をけん引する形で、景気は持ち直しの動きがみられます。英国では、物価上昇率の鈍化と実質賃金の改善を受けて内需が回復基調を維持しており、景気は持ち直しています。
中東情勢の先行きについてはなお予断を許さない状況にあり、その推移によって今後の世界経済動向が大きく左右されると見込まれます。さらに、金融資本市場の変動や米国の政策動向、重要物資に対する各国の輸出管理措置等にも留意が必要です。一方で、AI関連需要の拡大が世界経済を更に押し上げる可能性もあります。
本報告書の分析が、世界経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助になれば幸いです。
令和8年7月
内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
吉岡 秀弥