豊かで安心できるくらし部会報告 別添

21世紀のくらしのビジョン

 経済審議会豊かで安心できるくらし部会では、今後の経済社会の動向を踏まえつつ「豊かで安心できるくらし」を実現するための施策の方向性を検討した。
 本資料では、21世紀に実現しようとする望ましいくらしがどのようなものかについて分かりやすい「21世紀のくらしのビジョン」を、各世代ごと(子育て世代(20歳後半から30歳代)、壮年世代(40歳から50歳代)、高齢世代(60歳代以上))に提示する。また、各世代ごとの実際のくらしぶりのイメージも示してみた。
 もとより、ここで提示する「21世紀のくらしのビジョン」は、さまざまな施策の適切な組合わせによって実現されるものであり、そのためには、国民、企業、政府それぞれが相応の負担を分かち合うなど、最大限の努力と貢献が必要とされるものである。また、いうまでもなく、この「21世紀のくらしのビジョン」に描かれたくらしが実現されるためには、活力ある経済社会の構築が前提となるものであり、規制緩和などの構造改革を遂行していく必要がある。
 なお、くらしのイメージはあくまで施策が実行された場合のくらしぶりの参考例であり、実際には種々の生活イメージが描けることについて留意する必要があろう。

各世代のくらしのビジョン
1)子育て世代のくらしのビジョン
2)壮年世代のくらしのビジョン
3)高齢世代のくらしのビジョン

子育て世代のくらしのビジョン

(1)就業と子育て

  •  男性の意識改革や労働時間の短縮により、夫婦が共同して家事や子育てにあたるようになり、女性の負担が軽減される。
  •  裁量労働制、フレックスタイム制、情報通信システムを活用した在宅勤務等の導入により、労働時間の配分をある程度自分で管理し、子育ての時間を確保しながら効率的に働くことが可能になる。
  •  就業形態の多様化に加えて、保育時間や低年齢時の子どもの保育等への対応等が柔軟な保育サービスが多く提供されるようになるため、就業と子育ての両立が容易になる。
  •  また、民間サービスが参入しやすくなるため、利用料補助を活用し、延長保育等のサービスの内容や料金に応じて保育サービスを選択できるようになる。
  •  企業が従業員のために保育サービスを提供するようになり、子育て世代にとって働きやすい職場が増える。また、このような企業が優秀な人材を集めることができるようになる。
  •  育児休業の取得が女性のみならず、男性についても一般化し、休業後の職場復帰に備えた職場復帰プログラム(情報提供や講習等の措置)が充実する。そのため、育児のために退職する人が少なくなる。退職した場合も、再就職支援のための講習の受講等を経て再就職する人が増加する。
  •  在宅で、情報通信ネットワークを利用した育児支援情報、休業後の職場復帰のための職業訓練プログラムなどを活用することができる。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  結婚後も夫婦とも就業を継続したが、夫婦の育児・家事分担は全く平等で、夫は「洗濯」、「料理(食器洗い)」、「掃除」等手間の係る家事も積極的に行っており、妻の負担は軽減されている。
  •  夫はシステムエンジニアという職種柄、自己の都合で勤務時間等を管理できるので、家庭での時間配分も自分で管理できる。また、在宅でも通信機器を利用して仕事をすることができる。
  •  妻はフレックスタイム制をとっている職場に勤務しており、家庭内の用事を犠性にすることはない。
  •  子どもが乳幼児期には夫婦で交互に育児休業を取得し、育児に専念できた。
  •  夫は仕事柄スム-ズに職場復帰した。妻は職場復帰の前にパソコンネットワ-クで在宅で復帰プログラムを受けた。
  •  職場復帰後の育児は、契約型の保育園に入所させた。保育時間等について柔軟に対応してくれるので安心して就業できる。しかも利用料補助もあり費用負担は軽い。
  •  希望通りに三人目の子供を産むことにした。

(2)所得・消費・貯蓄・資産

  •  民間市場を通じたサービスの提供が増加し、競争原理が働くことにより、保育サービス等の価格が低下する。また、保育サービス利用者への利用料補助や幼稚園の入園料・保育料減免によって、子どもを持つことによる経済的負担が小さくなる。
  •  学歴社会の是正、人生の特定の時期に集中した教育投資意識の見直しなどにより子どもの教育費支出が少なくなる。
  •  内外価格差の是正・縮小により、安い商品が手に入るようになり、生活が一層楽になる。一方、消費者にも商品の善し悪しを判断する力が求められるようになる。
  •  夫婦2人で働くことで所得が増加し、税、社会保障負担等、社会を支える負担力が向上する。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  出産費用の補助があること、保育園の費用が受けるサ-ビスに応じて適正なものとなっていること、さらに利用者補助もあることから、その子育てに関する費用負担はあまり感じない。
  •  これまでは、アメリカの大型小売店から気に入った洋服などインタ-ネットを使って個人輸入していたが、内外価格差が縮まってきた今は、近くの大型小売店で同じ品物が安く購入できるようになった。
  •  夫婦2人で働いているので収入面での不満はそれほどない。

(3)住まい

  •  建設コストの低減、定期借地権付き物件の増加等により住宅の低価格化が進み、子育て世代でも住宅を取得することが容易になる。
  •  良質な賃貸住宅の増加、住宅価格の低下等により、子どもの数の増加、成長に従って、より広い住宅へ住み替えることが一般化する。
  •  都心部に周辺環境にも優れた良質な住宅が供給され、都心居住が進むことによって、通勤負担が軽減され、家族で過ごす時間も増え、都会のライフスタイルも満喫することができる。
  •  特に、賃貸住宅は、勤務地、教育、自然環境、医療、休暇、文化、住環境等の多様な欲求について能動的立場で、生活拠点の移動を図りうることが魅力である。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  子どもができても都心居住の利便性は捨てがたく、アパ-トから同じ区内の賃貸マンションに住み替えた。子ども部屋が必要になる頃にはまた引っ越さなければいけないが、最近は、無理のない負担で、環境に優れた郊外の通勤1時間程度の定期借地権住宅が購入できるので、今後の住み替えは、郊外の一戸建てか都心のより広いマンションにするか思案中である。

(4)健康・医療等

  •  自分の都合のよい時間に子どもを連れていけるかかりつけの診療所等が充実し、市町村保健センターと合わせ、身近に子どもの健康等を相談できる体制が充実する。
  •  仕事と家庭の両立のために、疲労の溜まりがちな女性のための健康診断体制、健康相談体制が充実する。
  •  労働時間短縮やフレックスタイム制の導入等により都合のよい時間帯にスポーツ施設を利用することができるようになり、スポーツをしたいけれどもできないという状況が解消される。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  子どもが病気になると最初は狼狽していたが、かかりつけの診療所や市町村保健センターにいろいろ相談にのってもらって最近では落ちついて対処できるようになった。
  •  子どもの病気が続いて疲労気味だったので、定期健康診断で異常なしとされて安心した。

(5)学習・教育(自己啓発)

  •  労働時間の短縮やフレックスタイム制の導入等に加えて、専門学校や大学で様々な講義科目を夜間、早朝、休日等に学んだり、自宅でインターネット等を通じて学習したりすることが可能になる等、受け皿整備も進み、生涯学習が盛んになる。
  •  技術の発展に対応して、自ら職業能力を維持し、また、キャリアアップを図るためのリフレッシュ教育も一般化していく。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  妻は大学の社会人コ-スに再入学して、大学時代からのテ-マである「日本-朝鮮半島文化交流史」の研究を続けることにした。インタ-ネットの利用により、海外の研究者とも直接意見交換ができるなど、大学時代よりも研究の幅が拡がった。
(6)余暇・社会参加
  •  長期休暇が普及し、レジャー、短期留学等、様々な過ごし方が選択されるようになる。
  •  交通機関の発達等により、さらに短時間でリゾート地等にアクセスすることができるようになる。
  •  ベビーシッターを雇うことが容易になったり、子連れでも気にせず外食できる場所が増加したりすることで、子どもがいることによる余暇活動や社会参加を行う上での制約が少なくなる。
  •  身近な自然から遠隔地のすぐれた自然まで、多様な自然とふれあうことのできる機会が確保される。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  今年の長期滞在型の休暇は就学前の子供とともに、家族全員で山間地の農家に泊まり、農作業を体験することとした。山間地への交通の便もよくなり、短時間で行くことができるようになった。
  •  夫婦とも介護の基本的な技術講習を受け、地域の特別養護老人ホ-ムで月2度ほど介助ボランティアをしている。なお、緊急時はいつでも介護要請に応じられるように地域のボランティアセンタ-に登録している。
  •  週末には子どもと一緒に近隣の緑地やせせらぎを訪ね、自然観察会に参加したり、昆虫採集、水遊びをしている。

(7)災害への備え

  •  住宅・社会資本等の耐震性の強化が進み、地震が発生した場合の被害の軽減が図られる。また、水害、がけ崩れ等への対策が進む。
  •  地震保険への加入率が高まる等、個人レベルでの地震への備えが進む。
  •  災害時に備えたボランティア団体の組織化、ネットワーク化が進み、これにより地域住民間の連携も深まる。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  現在住んでいる賃貸マンションは耐震性能も優れ、避難場所も隣接した公園が指定されており、安心してくらせる。近くの川は大雨のたびにあふれていたが、今はその心配もなくなった。
  •  災害時に備えた訓練は学校、地域、職場の連携をとった訓練を行っており、子どもとの緊急時の連絡等不安はない。
(8)環境と調和したライフスタイル
  •  市町村のきめの細かい分別収集に応じて、ごみの素材等の種類に従った分別排出が一般化する。また、こうして収集されたごみのうち容器包装廃棄物は事業者のリサイクル責任に基づき、再生利用されるようになる。
  •  ほとんどすべてのごみが再使用、再生利用、熱回収を伴う焼却処理のいずれかで処理される「ごみゼロ社会」が構築される。
  •  CO2 の排出量の抑制等のため、室温を適切に調整したり、公共交通機関をなるべく利用するなど、省エネに向けたライフスタイルが確立される。
  •  環境教育が学校や地域社会で実施される。
ある子育て世代のくらしのイメージ
  •  住んでいる市では7種類に分けた分別収集が行われている。分解、分別しやすい商品も増えてきている。また、再生品が多く流通しており、利用することが多くなった。
  •  ごみの従量によって処理手数料が課せられるようになってから、なるべく簡易包装等ごみにならない商品を購入するようにしている。このため排出するごみが減った。
  •  ごみ処理の費用のかかる製品については処理費用が価格に上乗せされているので、毎日の消費生活の中で、ごみ処理について関心が高まった。
  •  省エネのため、冷暖房の温度を1℃調整している。
  •  マンション居住者の電力消費のかなりの部分を屋上に設置した太陽光発電によって賄っている。

壮年世代のくらしのビジョン

(1)就業

  •  産業構造の変化等による労働移動の増加、年功序列賃金制度の変化、能力重視の待遇条件の設定などにより、個人の能力を高めることが問われるようになる。また、新規産業の開拓と相まって、自己の能力を高めた者の適職選択の幅が広がる。
  •  このように個人の能力や仕事への貢献度の評価の重視等によって、昇給したり、より良い労働条件を提示する企業への転職等ができるようになるため、夜間大学への入学等、壮年世代が早期からの自己啓発や能力開発に取り組むようになる。
  •  情報通信ネットワークを活用して、在宅勤務が可能となり、自分の裁量で働くことができるようになる。また、通勤負担が軽減される。
  •  就業形態の多様化、介護休業制度の普及、在宅ケアの充実等により、在宅介護をする場合でも介護と就業を両立できるようになる。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  夫は中間管理職から専門職に転換し、給与体系は年俸制となり基本給はやや低下したが、今年の仕事は高い評価を受けているので、来年の年俸は2割増となる。
  •  妻は、民間の研究機関の正規の職員として働いているが、デ-タ処理・分析が中心なので、実際の仕事はほとんど家庭内で情報通信ネットワ-クを利用して作業している。週1回のミ-ティングで都心に出勤するのが楽しみとなっている。
  •  夫の父親が脳梗塞で要介護状態となった。退院後のリハビリ等について地域の在宅介護支援センタ-で相談したところ毎日利用できる在宅サ-ビスを利用して在宅で介護することにした。当面、夫は3か月の介護休業を取得することにした。

(2)所得・消費・貯蓄・資産

  •  建設コストの低減、定期借地権付き物件の増加等により住宅の低価格化が進み、併せて、中古住宅流通市場も整備され、良質な中古住宅を適正な価格で入手可能となり、住宅関係費の負担が軽減される。
  •  個性ある能力の重視、学歴社会の是正、人生の特定の時期に集中した教育投資意識の見直しなどにより、子どもに過度な教育費をかけることがなくなる。また、高度な科学技術の研究などに対する研究助成や奨学金の充実により、家計の教育費負担が軽減する。
  •  これらの結果、所得を文化、スポーツ、観光、レクリエーション等を通じた自己実現や、高齢期に備えた貯蓄など、壮年世代の自己のために使うようになる。
  •  内外価格差の是正・縮小により、安い商品が手に入るようになり、生活が一層楽になる。一方、消費者にも商品の善し悪しを判断する力が求められるようになる。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  名目所得は大きく伸びることは期待できなくなった。しかし、基本的な生活用品は内外価格差がほとんどなくなり、生活に余裕がでた。
  •  住宅が定期借地権付きの住宅であることや、理工技術系の大学院に通っている長男は奨学金や研究助成を受けていることなどから、過重な住宅ロ-ンや教育費負担といった大口の家計支出はない。
  •  将来の貯蓄、資産をどのように運用したらよいか、金融機関にアドバイスを受けた。高齢期のくらしに備え、私的年金等に加入しているが、公的な年金や介護保険などと合わせて生活設計を考えているので不安はない。

(3)住まい

  •  周辺環境にも優れた良質な賃貸住宅の供給により都心居住が可能になり、通勤時間が短縮され、家族で過ごす時間が増える。また、時差通勤制、フレックスタイム制の導入等により通勤混雑も緩和される。
  •  高い耐久性を持ち、またライフステージに合わせて間仕切り等を変更することが可能な良質中古住宅の流通市場が整備され、子どもの成長に伴って部屋数の多い家へ住み替えることが容易になる。
  •  高齢期を控えて、住宅をバリアフリー化したり、バリアフリー化されている中古住宅を取得することが一般化する。
  •  交通網の整備により、どこに住んでも便利で豊かな生活が可能になる。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  子供が小さい時期は都心の賃貸マンションに住んでいたが、現在は老親の戸建て住宅の近隣に定期借地権付きの住宅を購入し、居住している。交通網が整備されて、都心などに行くのも便利になった。
  •  親の住居はバリアフリ-化するなど、高規格に建て直してある(低利の融資、公的な補助を受けた)。親の住居はリバ-スモ-ゲ-ジ制度を利用しているので、親の死亡後、売却することになっている。

(4)健康・医療・介護等

  •  情報通信ネットワークや医療機器等を活用して、健康カードによる予防医療・保健サービスを効率的に受けることができるようになり、成人病などの防止、高齢期の発症率の低下につながる。予防医療等を充実し、病院や市町村保健センターなどで気軽に健康診断や食事等の生活指導を受けられるようになる。
  •  労働時間の短縮などによる自由時間を活用して、スポーツクラブ等で体力づくりをする人が増える。
  •  家庭で介護を行う場合には、介護技術の研修に参加することが一般的になり、肉体的な負担の軽い介護ができるようになるとともに、要介護者の健康や快適さも向上する。
  •  在宅や施設の介護サービスに係る負担については、公的介護保険によって、高齢者も含めた社会全体で負担するようになり、家族の負担が軽減される。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  自分自身の健康管理は定期的にチェックすることにしている。パソコンネットワ-クで健康カ-ドのデ-タを渡し、在宅で医師の判断を仰ぐことができる。
  •  地域のスポ-ツクラブで体力づくりのデ-タも、この健康カ-ドと統一的に管理して、トレ-ニングメニューをインストラクタ-に相談している。
  •  軽い疾病については近隣の診療所をホ-ムドクタ-として利用しており、もし高度な医療技術を必要とすることになっても、医療機関間のネットワ-クを利用して効率的に大学病院などの診療を受けられる。
  •  近くに住んでいる老親が要介護状態になったが、従来から地域や職場での介護技術の講習を受けていたことや、住宅を既にバリアフリ-化していたので家庭内での介助は物理的には苦にならない。また、毎日在宅介護サ-ビスが受けられる。
  •  自家用車も介護仕様になっているワゴン車に買い換えた(特別仕様による超過費用は公的な補助が受けられた)。交通機関を利用した場合でも、交通タ-ミナルを含めバリアフリ-のまちづくりが進んでおり楽に動けるようになった。
(5)学習・教育(自己啓発)
  •  大学等における公開講座や社会人入学の枠が広がり、社会人学生が増加する。また、公共機関等や民間教育産業等の提供する講座も多くなる。これにより、高齢期を見据えた職業能力開発やその他社会参加のための生涯学習が盛んになり、就労のみならず様々な社会活動が可能になる。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  労働時間の短縮やフレックスタイム制によって、自由になる時間が増えた。週2回は大学の公開講座で日本の古代文学を研究することにしている。
  •  コンピュ-タ等情報機器を使用する際は、機械を意識しないで音声入出力、手書き入力等簡単に操作できるようになった。

(6)余暇・社会参加

  •  長期休暇が普及し、リゾート地への長期滞在、短期留学等、様々な過ごし方が選択されるようになる。
  •  地域活動やボランティア活動にも参加するようになり、地域とのつながりが保てるようになる。
  •  身近な自然から遠隔地のすぐれた自然まで、多様な自然とふれあうことのできる機会が確保される。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  夫は来年はチベット仏教を体験したいとして、3か月のリフレッシュ休暇を取る予定だ。
  •  ボランティア休暇を利用して、国立公園で自然保護ボランティアとして活躍したり、休暇に夫婦そろって、自然歩道を歩き、地域の自然にふれあい、心身のリフレッシュを図る。

(7)災害への備え

  •  住宅・社会資本等の耐震性の強化が進み、地震が発生した場合の被害の軽減が図られる。また、水害、がけ崩れ等への対策が進む。
  •  地震保険への加入率が高まる等、個人レベルでの地震への備えが進む。
  •  災害時に備えたボランティア団体の組織化、ネットワーク化が進み、これにより地域住民間の連携も深まる。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  住宅はバリアフリ-化と同時に耐震性能も高いものにした。一部の仕様については公的補助をうけたのであまり費用は掛からなかった。
  •  親の住宅は地震保険に加入した。保障限度額も引き上げられている。
  •  災害時に備えた訓練は学校での訓練と一緒に地域ぐるみで年2回行っている。

(8)環境と調和したライフスタイル

  •  市町村のきめの細かい分別収集に応じて、ごみの素材等の種類に従った分別排出が一般化する。また、こうして収集されたごみのうち容器包装廃棄物は事業者のリサイクル責任に基づき、再生利用されるようになる。
  •  ほとんどすべてのごみが再使用、再生利用、熱回収を伴う焼却処理のいずれかで処理される「ごみゼロ社会」が構築される。
  •  CO2 の排出量の抑制等のため、室温を適切に調整したり、公共交通機関をなるべく利用するなど、省エネに向けたライフスタイルが確立される。
  •  環境教育が学校や地域社会で実施される。
ある壮年世代のくらしのイメージ
  •  住んでいる市では7種類に分けた分別収集が行われている。分解、分別しやすい商品も増えてきており、きめの細かいごみ出しができる。また、再生品が多く流通しており、利用することが多くなった。
  •  ごみの従量によって処理手数料が課せられるようになってから、なるべく簡易包装等ごみにならない商品を購入するようにしている。このため排出するごみが減った 。
  •  ごみ処理の費用のかかる製品については処理費用が価格に上乗せされているので、毎日の消費生活の中で、ごみ処理について関心が高まった。
  •  省エネのため冷暖房の温度を1℃調整している。
  •  住宅の断熱化や太陽光発電を利用する者が増えてきており、価格も手頃になったので、住宅の改築に際して設置した。

高齢世代のくらしのビジョン

(1)就業

  •  65歳までの継続雇用が一般化し、希望する高齢者全員が継続雇用される。また、高齢世代の豊富な経験や人脈等のソフトな人的資産を活用して、他の企業への再就職が容易になる一方、高齢者自身がこれらの資産を活用して起業化することも増えてくる。
  •  また、短期間・短時間就業の就業形態も一般化し、高齢者の選択や裁量の効く形で働けるようになる。フレックスタイム制が普及し、通勤の困難も伴わずに働くことが可能となる。
  •  これらの多様な就業ニーズに対応するため、労働者派遣事業やシルバ-人材センタ-の活用が進み、自分の条件に合った仕事を見つけやすくなる。
  •  適度に働くことによって、生きがいが高まり、健康の維持増進につながる。また、自立した生活のための所得を得ることができる。
  •  コンピュータの知識など、最新の知識を習得するとともに、誰にでも使いやすい情報機器を活用して若年、中年層に劣らない生産性をあげることができる。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  夫は65歳までの継続雇用が可能なところを60歳で退職し、前職で培った人脈とノウハウを生かして、高齢者向きの旅行コーディネ-ト会社を興した。仕事には前職で覚えたコンピュータやネットワークをフルに活用している。コンピュ-タなどは高齢者にも使いやすいように改善が進んだものだと思う。また、コーディネートする旅行には同年代の添乗員を同行させている。
  •  妻は継続雇用を選択したものの、60歳以降は労働時間を短縮し、午後の早いうちに仕事を終え、夕方は身体の不自由な高齢者の話し相手になるボランティア活動に参加していた。現在は、ボランティア活動を主体に、時々夫の仕事を手伝っている。
  •  2人とも、職場での人付き合いや緊張感が生活の張りになるので、仕事は出来る限り続けたいと考えている。

(2)所得・消費・貯蓄・資産

  •  年金制度の成熟化や給付水準の適正化及び高齢者就業の増加によって、高齢者の基本的生活ニーズを満たす所得が確保される。また、子育て世代、壮年世代の負担軽減に伴い高齢期に備えた貯蓄を高める一方、当該貯蓄等の資産を高齢者自らのために活用して、所得を補完するようになる。
  •  介護サービスなどの生活支援サービス、高齢者向け商品等の開発が進み、高齢者市場が拡大する。また、公共サービスの提供に際しても、低所得者への配慮がなされる一方、適正な利用料負担を課すことにより、高齢者の資産や所得をサービスの購買力に結び付けるようになる。
  •  高齢者が所有する不動産等を生前の生活保障のために活用することによって、所得等を補完し、サービス提供を受けることができるようになる。
  •  内外価格差の是正・縮小により、安い商品が手に入るようになり、生活が一層楽になる。一方、消費者にも商品の善し悪しを判断する力が求められるようになる。
  •  内外価格差の是正・縮小により、物価が安定し、不安なく年金や貯蓄資産等を活用して生活することができる。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  年金と給与で生活には困らず、孫に玩具を買ってあげることも楽しみの一つになっている。また、年に数回2人で行く趣味の海外旅行にはこれまでの貯蓄を充てている。今後は、リバースモゲージ制度を利用して生活資金をまかなうことも考えている。
  •  家族は遠くに住んでいるので、疲れた時や、病気になった時には、家事サービスを利用するようにしている。頼めばすぐに人に来てもらえるということが安心感につながっている。
  •  内外価格差が縮まってきたため、生活必需品なども安く購入できるようになった。
  •  外国製の高齢者向け商品にはアイデアの豊かなものが多く、重宝している。
  •  物価が安定しているお陰で、年金と給与で安心して生活設計ができる。
  •  機能を少なくしたビデオ、表示やスイッチの大きな家電等、高齢者に使いやすい商品が増えており、買換えの時はこれらを選んでいる。

(3)住まい

  •  リフォーム市場が整備され、住み慣れた住宅においても生涯を送れるよう住宅内部のバリアフリー化が進められる。また、短時間でアクセスできる圏内(徒歩圏内等)に介護サービスなど、在宅生活サービス支援を受けることのできる公的又は民間の保健福祉関連施設が整備される。
  •  中古住宅の流通市場が整備され、高齢者向けの住宅への円滑な住み替えが可能になる。また、公共賃貸住宅においてもケア付き住宅等の整備が進められることにより、高齢者が適正な負担で安定的に賃貸居住を行うことができる。
  •  バリアフリ-のまちづくりの進展等により、高齢者も安全かつ円滑に日常生活を送ることができるようになる。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  子どもが独立してから移り住んだ今の住まいの環境が気に入っているので、今後も住み続けられるようにバリアフリー化してある。身体に不自由のない今でも、出入口のスロープ、段差のない室内、風呂場やお手洗いの手すり等には重宝しており、家庭内での事故防止にもなっている。

(4)健康・医療・介護等

  •  健康カードなどを活用した予防医療・保健サービスの推進により、痴呆症の防止など、身体機能の維持増進が図られる。
  •  情報通信ネットワークや情報通信機器を活用した遠隔医療によって、在宅で簡易な問診や健康相談等を受けることができるようになる。
  •  医療、福祉を連携させ、効率的なリハビリ等を実施することにより、身体機能の低下防止、回復が図られる。
  •  急性疾患、慢性疾患、介護対応型、終末期等それぞれの症状にきめ細かく対応した効率的・適正な医療が提供される。特に、慢性疾患、介護対応型において過剰な医療資源の投入を排除し、患者本人にとっても満足のいく医療が提供される。
  •  また、医療(関連)サービスのうち、生活的・介護的な要素の強い部分については、公的介護保険に基づき、従来の医療保険の枠組みとは別の適正な負担を負う。
  •  また、慢性疾患、終末期等については、住み慣れた在宅における医療を受けることができるようになる。
  •  介護を必要とする高齢者が希望に応じて、在宅や施設の介護サービスを受けられるようになる。この際、公的介護保険や公的補助等の下で、公的サービスと健全な民間サービスとの競争条件を整備し、希望に応じて、適正な負担でどちらのサービスも選択できるようになる
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  検診データや治療歴の入った健康カードを持っているので、かかりつけの診療所だけではなく、他の病院や健康増進施設等で容易に的確な診察やカウンセリングを受けることができる。病気の予防や早期発見にたいへん役立っている。
  •  パソコンを利用して糖尿病の妻の血糖値や二人の血圧、脈拍等を記録し、情報通信ネットワークを利用して医師の判断を仰いでいる。
  •  妻は交通事故のため、両足を骨折したことがある。糖尿病でもあるので心配されたが、病院でのリハビリと退院してからの訪問看護で歩行には不自由しなくなった。また、情報通信ネットワークで送られてくる食事指導に従った結果、糖尿病の病状も安定している。
  •  夫の兄は痴呆症のため自宅近くの介護施設に入っている。この施設はグループ介護を行っており、家庭的な雰囲気で知られている。費用は公的な介護保険で補填されている。
  •  夫の兄を二人で訪問する度に、どちらかに介護が必要になった場合にどうするのかを話し合っている。最近は公的介護保険もあり、公的施設、民間施設のどちらを利用しても同じようなサービスの水準であれば負担はそれほど変わらない。その上、それぞれの施設が特色を打ち出しているので選択に迷うほどである。また、在宅サービスも充実しているので、住み慣れた自宅も離れがたい気がしている。
  •  終末期については、丹精した庭の見える自宅の部屋で終末期医療サービスを受けていた妻の姉のようにありたいと考えている。

(5)学習・教育(自己啓発)

  •  大学等における公開講座や社会人入学の枠が広がり、高齢者学生が増加する。また、公共機関等や民間教育産業等の提供する講座も多くなる。これにより、職業能力開発やその他社会参加のための生涯学習が盛んになり、就労のみならず様々な社会活動が可能になる。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  海外旅行に備えて二人で大学の公開講座でスペイン語を習いはじめた。スペイン語の前は英語で、妻は英検1級を取得している。
  •  夫は、旅行で訪れた外国の文化について地域の講演会で何度か講演したことがあるが、これを学問的に研究するために、仕事から引退したら大学院で比較文化を専攻したいと考えている。
  •  妻は、夫の仕事を手伝うため市民講座でコンピュータ操作を学んでいる。

(6)余暇・社会参加

  •  余裕のある時間を活用して、様々な地域活動に参加するようになる。また、様々な生涯学習メニューを利用して、知識や技能を高め、ボランティア活動にも積極的に参加する高齢者が増加する。
  •  閑散期などの低廉な料金を利用して、旅行やレジャーを楽しむ高齢者が増える。
  •  情報通信ネットワ-クにより高齢者の社会参加の機会が増大する。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  余裕のある自由時間を利用して、夫は地域での講演会等の地域活動、妻は福祉ボランティア活動に参加している。
  •  混み合う時期を外して低廉な費用で旅行出来るようになったので、高齢期になっても、以前より気軽に旅行できるようになった。
  •  情報通信機器を用いた「遠隔お花教室」に参加するなど、必ずしも外出しなくても充実した余暇を送れるようになった。
  •  子ども会や小学校の野外体験学習に赴き、子ども達に昔の生活や自然の体験、遊び方などを伝えている。

(7)災害への備え

  •  行政と地域が協力して、災害時の高齢者避難マニュアルが地域ごとに策定され、高齢者の迅速な避難、救助への備えが講じられる。
  •  住宅・社会資本等の耐震性の強化が進み、地震が発生した場合の被害の軽減が図られる。また、水害、がけ崩れ等への対策が進む。
  •  地震保険への加入率が高まる等、個人レベルでの地震への備えが進む。
  •  災害時に備えたボランティア団体の組織化、ネットワーク化が進み、これにより地域住民間の連携も深まる。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  現在住んでいる住まいは、耐震性能も優れ、安心してくらしている。また、日頃から地域の人や市役所の職員と避難方法など話し合い、年に2回避難訓練を行っている。
  •  市役所から小型無線機器が配付されており、緊急時の連絡ができるようになっている。
  •  高齢者でも避難しやすいよう、避難場所としての公園などの整備が進んだ。

(8)環境と調和したライフスタイル

  •  市町村のきめの細かい分別収集に応じて、ごみの素材等の種類に従った分別排出が一般化する。また、こうして収集されたごみのうち容器包装廃棄物は事業者のリサイクル責任に基づき、再生利用されるようになる。
  •  市町村の分別活動には手間がかかるが、高齢者が地域ボランティアとして参加することによって、円滑に分別収集が進む。
  •  ほとんどすべてのごみが再使用、再生利用、熱回収を伴う焼却処理のいずれかで処理される「ごみゼロ社会」が構築される。
  •  CO2 の排出量の抑制等のため、室温を適切に調整したり、公共交通機関をなるべく利用するなど、省エネに向けたライフスタイルが確立される。
  •  環境教育が学校や地域社会で実施される。
ある高齢世代のくらしのイメージ
  •  住んでいる市では7種類に分けた分別収集が行われている。分解、分別しやすい商品も増えてきており、きめの細かいごみ出しができる。また、再生品が多く流通しており、利用することが多くなった。
  •  週に3回、市の分別収集の手伝いをしている。先日、リサイクルプラザで牛乳パックを再生利用した玩具を作り、子供たちに配ってあげた。
  •  ごみの従量によって処理手数料が課せられるようになってから、なるべく簡易包装等ごみにならない商品を購入するようにしている。このため排出するごみが減った。
  •  ごみ処理の費用のかかる製品については処理費用が価格に上乗せされているので、毎日の消費生活の中で、ごみ処理について関心が高まった。
  •  省エネのため冷暖房の温度を1℃調整している。
  •  住宅の断熱化や太陽光発電を利用する者が増えてきており、価格も手頃になったので、住宅の改築に際して設置した。