地球部会 要旨

地球社会と我が国の役割部会報告のポイント

I 我が国の対外経済政策の基本方針

・我が国としては、世界の望ましい在り方やその実現のための道筋(グランド・デザイン)について、自らの考え方を示しつつ、世界の国々と意見交換を行う。このような形で、地球社会に参画していく。
・世界の大多数の国が市場メカニズムを基本とするシステムを有しているが、日米欧や、アジアの経済システムには少しずつ差がある。市場メカニズムの貫徹と所得分配の平等性や社会の安定とのバランスのとり方については、国により少しずつ差。また、途上国では、開発主義と呼ばれる考え方の政策をとる国もある。冷戦の終結等に伴い、このような差異あることの問題が顕在化してきている。
・一方地球環境問題等の諸課題の解決も重要な課題となっている。
・先進国間では、市場メカニズムに基づく、より開かれた経済システムを目指しつつ、互いに競い合うべき。また、地球的規模の問題解決のため協力していく。この観点からも我が国の経済システムの改革が必要。また途上国については、システムの違いを許容しつつも、その発展を支援。
・さらに途上国の支援のあり方、貿易・投資ルール、地球的課題への対応等につき、我が国の考え方を示しつつ、世界の枠組み作りに積極的に参画。 ・対外経済政策の基本方向については国内のコンセンサスを得て、国際的協議に臨むことが重要。

II 国内外に開かれた経済システムを目指して

(1) 制度・仕組みの国際的調和の推進と市場アクセスの一層の改善

・国際的な要請に応えるとの視点のみならず、我が国経済の活性化、国民生活の向上の視点から、積極的に問題に取り組んでいく。

(2) 貿易・投資の拡大均衡と国際分業の進展

・分業関係の深化は我が国にとっても世界にとっても望ましいこと。我が国としては、原則として国内での構造改善措置を基本とすることで、経済の拡大均衡を目指す。
・国際的分業関係において、我が国のために確保されている産業分野があるわけではなく、市場メカニズムに従ったダイナミックな分業関係が進む中で、拡大均衡のメリットを享受すべきもの。

(3) 調和ある対外均衡の達成

・国際的な視点のみならず、我が国の経済構造の変革が、適切な対外均衡に結びついていくとの考えの下、各般の施策を講ずることにより、国際的にも調和ある対外均衡を目指す。

(4) 為替レートの変動と円の国際化への対応

・短期的・思惑的な為替変動に対しては適切に対応するとともに、我が国経済構造を円高メリットが顕在化しやすいものに変革していく。また市場アクセスの一層の改善により、同じ為替レートでも輸入が多くなるようにする。
・円の国際化が進むなかで、このような動きに備え、金融資本市場へのアクセスの改善を図る。

III 世界経済の枠組み作り等への積極的参画

(1) マクロ経済政策協調

・基本は、自国経済のインフレなき持続的成長を図ること。
・但し、経済の国際的相互依存関係が深まってきおり、政策当局者間の共通認識を得る等のため、サミット等の場を通じ、国際的政策協調を進める。
・米国の財政赤字是正等規律あるマクロ政策は、世界全体にとり重要との認識が共有されるよう努める。

(2) 貿易・投資の枠組み作り

・U.R.合意への過程で、多角的自由貿易体制の維持発展へのモメンタムが高まったが、一方では、偽装された保護主義等懸念材料もある。
・このため、我が国としては、ポストU.R.のテーマや各国の規制制度の改革に関し、我が国の考え方を明らかにしつつ、多国間協議の場での国際的論議に積極的に参画していく。

IV 地球社会への貢献

(1) 地球的規模の課題への貢献、国際的な協力の推進

・我が国としての望ましい地球社会のあり方についての考えを明らかにしつつ、地球環境問題、食料問題を始めとする諸課題の解決のため貢献していく。

(2) 我が国ODAの新時代の構築に向けて

・我が国は、既に世界で第一位の援助供与国となっているが、国民の理解と支持を得ながら、我が国ODAを、中長期的観点から、多面的に拡充する。
・我が国として、これにより、途上国の諸課題に機動的かつ包括的に対処しつつ、ODAの内容を拡充し、ODAにおいて、世界に対し指導力を発揮できる我が国ODAの新時代を構築していく。特に、日本、東アジアの経験について整理に努め、また、途上国への知的支援に当たっては、日本、東アジアの経験の活用の仕方についての助言に努める。また、NGOへの支援を含む国民参加型援助を促進する。

V アジア・太平洋協力

・アジア・太平洋協力においては、地域の課題の選定、解決のための枠組み、貿易
・投資のルール等について我が国から今後も積極的に提案していく。
・貿易・投資の自由化・円滑化については「大阪行動指針」に沿い、我が国としての「行動計画」を策定する。
・環境、エネルギー面の協力等、貿易・投資の自由化以外の様々な協力についても進める。

VI 国際的に開かれた社会の創造

・異なる価値観の人々に対し、より受容力の高い社会を構築する。
・公的サービス等において外国人にも住みやすい環境を整備するとともに、外国人との人と文化の交流を草の根レベル、地域レベル等で充実させる。

VII 自由化・国際化の下での金融システム

(1) 地球社会における我が国金融・資本市場の役割

・我が国金融・資本市場には、国内外の投資家や企業等に対して円滑に内外の資金を供給し、資金運用の場を提供することが期待されている。
・我が国金融・資本市場の健全な発展を図るためには、引き続き金融の自由化・国際化を推進し、金融・資本市場における競争を促進するとともに、資金調達・運用手段の多様化を進め、市場のより一層の効率化・活性化を図ることが必要。

(2) 金融システムの安定性確保のための方策

・金融機関等の経営の健全性確保のためには、金融機関等による不良債権の早期処理、個々の金融機関等のリスク管理能力の向上、ディスクロージャーの充実、市場を通じたチェック機能の活用等が基本。
・検査・モニタリング体制の強化を図るとともに、健全性諸比率基準の活用等を図るなどより透明なものとすることが必要。また、必要とされる場合には、監督当局が経営の健全性の確保のための所要の措置を早期に講じていくことが重要。
・金融の自由化・国際化が進展する中で、金融機関の商品・サービスに関する情報提供と預金者や投資家における自己責任の認識が重要。