経済審議会第2回経済社会展望部会議事概要
1.日時:
平成9年9月11日(木)14:30~16:00
2.場所:
合同庁舎第4号館12階 特別会議室(1230号室)
3.出席者:
小林陽太郎部会長、香西泰部会長代理、井堀利宏、岩田一政、角道謙一、川勝堅二、黒田晁生、佐々波楊子、清家篤、中井検裕、長岡實、奈良久彌、濱田康行、ロバート・アラン・フェルドマン、深海博明、福井俊彦、村田良平、八代尚宏、吉井毅、吉川洋の各委員。
糠谷事務次官、藤島日本銀行政策委員、中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、
大西計画課長、染川計画官、塚原計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官。
4.議題:
検討テーマとその相互の関連及びワーキンググループの設置について
5.審議内容:
- ワーキンググループの設置について
道上計画企画官より、資料2「検討テーマとワーキンググループの設置について(案)」 について説明。
委員からの意見は特になく、資料2のとおりワーキンググループが設置された。
【2】検討テーマとその相互の関連について
貞広審議官より、資料3「検討テーマと関連する既存研究」に基づき、今回検討分 野として取り上げたグローバリゼーション、産業構造、技術革新、雇用・労働の検討テーマと関連する既存研究について説明、続いて資料4に基づき、各テーマの相互の関連性等について説明。その後討議。
委員からの主な意見及びやりとりは、以下のとおり。
【各検討テーマ全般を通して】
- 足元の日本の潜在経済成長力をどうみるのかが重要である。例えば、潜在成長率に対して現在の成長率が達していないのであれば、失業率が問題となるであろうし、潜在成長率が屈折したものであれば労働力不足の問題が出てくる。また、タイムスパンによっても短期なら失業問題、長期なら労働力不足の問題が重要となる。経済の予測は、将来のことがわからないだけでなく、足元についても非常に意見が別れているところ。それぞれ違った前提で議論をしても効率が悪いので、はじめにその点を委員の間でもよく議論しておく必要がある。
これに対して部会長より、タイムスパンの問題については、概ね2010年頃を想定しているとの発言があった。
また、事務局より、現在の経済の潜在成長力をどうみるかについては、論点としては重要であ ると認識している旨の回答があった。
- 各WGの連携が必要である。例えば、経済学的に言えば雇用はあくまでも生産からの派生需要であり、グローバリゼーションや産業構造の変化、技術がどうなるかということが前提となって初めて雇用の将来の姿が見えてくるものである。
○2010年をターゲットにする場合でも、2010年時点でどうなるのかという展望とそれに至るまでの途中で何が生ずるのかという問題の2つがある。
- 図表や統計に基づきストーリーを組み立てる時は、図表や数値の持つ意味合いを吟味しなければならない。
- 数字が重要な要素となる定量的な議論をする場合は、各WGの検討結果の整合性を重視する必要がある。
- 個々のWGを取りまとめる際にマクロのフレームワークをどのように考えるのかが重要。また、雇用制度等のシステム又は価値といったものをどのように扱うか検討することが重要。
【グローバリゼーション関連】
- グローバリゼーションの影響を考えるに当たっては、グローバルな立場、日本の立場及び日本国内の生産者又は消費者の立場のいずれで評価するかによって、プラスマイナスが異なる。例えば、日本で空洞化が進んでマイナス面が出る場合でも途上国では逆にプラスであろうし、日本と途上国を合わせてみた場合でも、全体として効率性が高まりプラスかもしれない。これらを踏まえて、当部会としては総合的にどうまとめるかを考える必要があるのではないか。
- グローバリゼーションの意味合いをよく確認すべき。経済の国際化(インターナショナライゼーション)と区別がきちんとつけられているのか。つまり、経済のグローバリゼーションというのは、クロスボーダーの話であって、クロスカントリーで比較して日本がどうかということより次元が一つ先の話である。現在の課題は、日本の産業・企業がグローバルなマーケットに参入し、活躍していくインセンティブをどのように与えるのか、グルーバルマーケットと日本のローカルマーケットとがどのように相互作用するか、日本のマーケットそのものがグローバルマーケットにどのように参加するのかということ。こうした観点を踏まえ、今の政策があっているのか、また、企業も体制が整っているのか等議論していく必要がある。
- 国際化とグローバリゼーションの違いは、国際化はある国が中心となり他の国がその国とやりとりしている二国間の関係であるのに対し、グローバルというのはいろいろな国が互いに関係をもっている状態である。例えば、これまである国でショックが発生した時に、ショックを受けるところが集中していたのに対し、これからはショックを吸収する経路が複雑化する。こうした波及経路の複雑化がグローバル化の本質であると考える。
【産業構造関連】
- 空洞化をはじめとした産業構造の問題は地域の問題と密接に絡んでいる。また、財政、社会保障に関連した所得再配分という問題にしても地域間の所得再配分の側面をもっている。21世紀を展望する際には、地域の視点を入れて議論していく必要がある。
- 国内の地域に加えて、九州とアジアといった国を越えての地域という視点も入れて議論すべき。
- 中小企業と大企業の関係が21世紀にどうなっていくのかということも検討すべき。中小企業と大企業の関係で戦後の特徴とも言える下請け構造も変化している。これが今後どういう形になるのかも展望すべき。
- 産業構造については、産業内と産業間のネットワークについても考えるべき。
- 産業構造の展望については、第1次産業についても対象に入れるべき。第1次産業は地域の雇用にとって大きな意味があるので、全産業を同等に見たほうがいいのではないか。
- 新規産業の振興策に関連し、日本は企業は少死少産型でアメリカは多死多産型であることは間違いないが、果たして本当にこの2つの型しかないのだろうか。社会構造というのは国によって様々であり、グローバル化が進んでもすべての国にアメリカの様な社会構造が馴染むとは限らないのではないか。
- 規制緩和、技術力の将来展望、産業振興策等検討テーマに並べられた事項には、すべて雰囲気のいいことばかり書かれており、いわばアメの政策ばかり並んでいる感じがする。アメばかりで構造改革は進むはずはないので、ムチの政策も所々に入れる必要があるのではないか。
【技術革新関連】
○技術革新がどの程度進むかというのが展望の視点だと思うが、先端技術や平均値としての技術力の予測だけでなく、同時に技術革新が社会全体にどの程度普及するかという観点からの技術力についても議論すべき。
【雇用・労働関連】
○経営学的に言えば、雇用システムそのものをユニークな経営資源と捉え、良い雇用システムを持つとそれ自身が競争力の源泉となるような見方もできるが、そうした見方まで検討するのか。あるいは、純粋経済学的に環境が変わった時に、最適な賃金システム、雇用システムがどのように変わっていくかを検討するだけにとどめるのか。
これに対して事務局より、競争力と絡めて生産性を決定する時に雇用制度等のシステムそのものも重要な資源の一つとして認識している。可能であれば、そうしたシステムも資源の一つという方向で議論して頂きたいとの回答があった。
- 今後少子化が進むのは明確であり、シュミレーションにより労働力人口が今後どうなるかも既に判っている。その場合の基本的考え方として、日本は、引き続き生産や国民所得を維持するため労働力供給を量として確保していくのか、それとも生産や所得は一人当たりで増えていればよいと考えるのか。全体の量を確保するとなれば、不足分を高齢者や女子で補わなければならないが、その他に外国人労働者による労働力まで積極的に取り込んで行くことも視野に入れているのか。その点をどのように考えているのか。
これに対して事務局より、外国人労働者による労働力まで視野に入れて議論を広げていきたいと考えている旨の回答があった。
6.今後のスケジュール
WGについては、メンバーが決まり次第検討を開始することになった。また、年内は資料2の「今後の審議スケジュールについて」に沿って審議を進めていくことになった。