経済審議会第5回経済社会展望部会議事録

1.日時:

平成9年12月18日(木)10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3.出席者:

小林陽太郎部会長、香西泰部会長代理、井堀利宏、角道謙一、川勝堅二、小島明、佐々波楊子、下村満子、清家篤、鶴田俊正、長岡貞男、奈良久彌、成瀬健生、濱田康行、深海博明、村本孜の各委員。
中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、大森計画官、染川計画官、田坂計画官、赤井計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官、福島推進室長 他。


(部会長) おはようございます。
 まだ、何人かお見えになっておりませんけど、時間になりましたので、第5回の経済社会展望部会を開催させていただきます。 
委員の皆さんには大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 今日の議題でございますが、最初に、先日12月10日に開催されました経済審議会総会の審議の模様についてご報告をするということ。それからその後、前回に続きまして各ワーキンググループにおける審議経過報告をお願いをしたいと思います。いろいろなご意見等につきましては、ご報告、ご説明の後にまとめて伺いたいと思っております。
 土地・住宅ワーキンググループ座長の村本委員が、今日は早めにご退席ということになりますので、土地・住宅ワーキンググループの報告については、報告をいただいた後で、審議の時間を個別に設けさせていただきたいと思います。
 それでは、総会についてのご報告を、香西部会長代理からお願いをいたしたいと思います。
(部会長代理) 12月10日に経済審議会の総会が開かれまして、実は小林部会長がご欠席でありまして、私が代わりまして経済社会展望部会の審議経過等についてご報告をさせていただきました。
 当部会におきましては、6つの改革と諸般の構造改革の動きを踏まえた我が国経済社会の姿を展望するということが課題とされておりまして、7月25日の第1回会合以降、審議を行い、9つのワーキンググループを設けて審議作業を行っている旨をご報告したわけでございます。
 また、各ワーキンググループの審議状況につき、簡単にそれぞれご紹介をいたしました。また、経済の先行き不透明感、閉塞感があり、消費者や企業の活動活力を低下させつつあるという中で、国民に対しまして将来の経済社会の姿を明確に示し、展望を開くことが極めて重要であると。今年秋以降、各ワーキンググループにおける作業等踏まえて、また各ワーキンググループの議論の相互連関を十分念頭に置いて審議を行い、来年6月を目途に全体としての我が国経済社会の姿を明確に描いていきたいという旨の発言をいたしました。
 さらに経済審議会総会でありますので、事務的な各ワーキンググループの審議状況の報告だけではなくて、当部会の全体の取りまとめの方向性についても、あるいはご議論があるのではないかということも考え、またもしそうであればこの機会に総会のご意見も伺っておく方がいいだろうというふうにも考えましたので、実は当部会における委員の皆さん方とか、まだ相談は行われていないわけでございますけれども、とりあえず私の考えで、部会長に一応ご承認をいただきまして、お手元の資料2にあるようなことを今後の方向性ということで読み上げておきました。
 この点につきましては、今、読んでみますと、いかにも作文であって中身がどうかという気がいたしますが、それだけ私としましては、この部会を取りまとめていく上においては、相当大きな筋をはっきりさせていかなければいけないということを自覚させられたわけでございますので、できればこの部会におきまして、大きな方向性についても、ぜひご議論していただきたいということを、こういうことをやったお陰で痛感したというのが実際でございます。のちほど、それにつきましてもご議論いただければ私としては大変ありがたいというふうに思っております。
 また、最後に前回第4回の当部会におきましてご審議をいただきました経済計画のフォローアップ報告でございますけれども、部会長等のご意見をいただきまして、当部会でのご意見等踏まえて修正したものを経済審議会総会に報告し、了承されたということになっておりますので、その点についてもご報告いたします。これについては資料は配付されておりませんが、資料5が改められたものです。最近の経済状況に対する判断、対策等についてはかなり大幅な修正となっております。
 以上でございます。
(部会長) ありがとうございました。
 ワーキンググループについてでありますけれども、今まで主として各論のご審議をお願いをしてきたところであります。この部会では各論の議論を深めるとともに、今、部会として取りまとめの方向性、これについても大きなところについてご審議をいただく時期にきているのではないかと。
 今、部会長代理からお話がありまして、資料2にあるようなご発言を総会でいただいたわけです。事前に私もうかがっておりまして、この点については後ほどワーキンググループの方向についてのご意見含めてでありますけど、伺いたいと思います。
 では、先ほどちょっと申し上げたように、土地・住宅ワーキンググループについて、村本委員からご報告をいただいて、このワーキングについては、すぐにそれについて質疑をお願いをしたいと思います。
 それでは村本委員、お願いをいたします。
(村本委員) それでは土地・住宅ワーキングにつきましてご報告を申し上げたいと思います。
 土地・住宅ワーキングは資料の7枚目、メンバー5人で構成をいたしまして、10月8日から6回ほど集中的な討議をいたしました。その中間報告という形で本日、お話しするような内容でございますが、大雑把に申し上げますと4つの大きな問題について議論をいたしました。
 1つは同じく資料の8枚目にございますような土地・住宅ワーキングの検討テーマについてという1枚紙の表がございますが、ここで考えたようなことでございまして。1つは土地市場の問題。もう1つは住宅需要の問題。もう1つはそれのストックという意味でのストックとしての捉え方。そして住宅の金融をめぐる問題という4つのテーマでございます。
 6つの経済改革等いたしました後の姿と申しましても、やはりこの分野につきましては、やや足下に起きているさまざな問題がございますので、それもある程度議論しなければいけないということで、後でお話しいたしますように、2点ほどそれについての議論もしております。
 それで当面の問題としては、やはり不良資産の有効活用といったような問題がございますけれども、それを前提としても、まず土地市場というところからお話を申し上げますと、土地の需給に関してはどういう視点を持っておるかと申しますと、バブルの崩壊以降、土地市場におきましては、ややパラダイムシフトと思われるような構造変換が起きているのではないかというのが私どもの捉え方でございました。
 今後は中長期的に見ましても、やや経済の状況変化がございますので、従来のように土地に対する需要が大きく出るだろうということは、あまり見込めないのではないか。むしろ市街化区域内の農地の宅地化でありますとか、あるいは産業構造の転換に伴うような工場用地、あるいは臨海部用地の宅地化でありますとか、あるいは後でお話しするような不良資産が流動化する、あるいは定期借地権の普及等々の状況要因が大分変化することが予想されますので、需給に関して言えばかなり緩和された方向で動いていくのではなかろうかということです。
 そのプロセスでおそらく土地神話というような状況ではなくなるわけでございますので、保有をすることによって得られる収益であるキャピタルゲインといったものが評価されるということよりも、むしろ土地のいわゆる利用価値、収益還元価値と呼んでおりますが、そういった方向に基づいた価格形成といった形の市場形成になるのではないだろうかというような判断をしております。
 現在、一部の大都市の商業地においては、地価の二極化現象が起きておりますが、そういう面では収益性ということがかなり意識されてきた1つのきっかけではなかろうかという評価をしておるわけでございます。
 それの担い手である不動産事業といったものは、どういう考え方になるであろうかということですが、現在の不動産事業は金融的な側面で申せば、いわゆる事業金融、コーポレートファイナンスの世界でありますけれども、おそらくこちらの分野は土地の収益性に依存したようなファイナンシングである、いわゆるプロジェクトファイナンスの方向に動いていく可能性が大いに強いわけでありますし、事業自体も一体型の事業から、いわゆるアンバンドリングという言い方をいたしますが、専門化する、あるいは事業を開発する、管理する、保有するといった各段階ごとにアンバンドリングされていくのではなかろうかなということで理解をしておりまして、事業それ自体もやや変化をしていくのではなかろうかなという考え方でございます。
 それでレジュメの1ページ目の最後のところに書きましたのが、1つの足下の問題として、どうしてもこういうことに注意しておかなければいけないのではないかという議論をいたしました点でございまして、いわゆる不良債権問題というのはさまざま形で実は議論されておる問題でございますけれども、実はその大もとにあるのは不良資産である土地不動産、あるいはノンパフォーミング、未稼働ないしは不稼働の土地があるのではないか。こういう金融機関が持っている担保不動産という不良在庫でございますが、これを実は証券化等の手法を用いましたところでも、帳簿上のつけかえになってしまうのではないかという危惧を持っておりまして、やはりそこに一定の手立てをすることが必要ではなかろうかというのが基本的な認識でございます。おそらく証券化、あるいはさまざまな流動化施策をしても、実際に動き出す土地というのは、優良資産の方でございまして、おそらく不良資産はそのままになってしまうのではないか、という危惧があるからでございます。
 それで2ページ目のところで、我々のところで1つ議論したアイデアだけご紹介いたしたいと思いますが、市場メカニズムだけでこれをおそらく解決するのは無理ではないかというふうに考えまして、当面のいわゆる危機管理的な発想をして、20年ないし30年かけてこの部分を流動化していくことができないだろうかということを考えました。
 具体的には不良資産の実態をまず正確につかまえること。金額ベースでは出ておりますが、どこのどういう土地がどういうふうになっているかという地理上の、あるいは物的なプレイシングというのは必ずも十分ではありませんので、その辺の情報をきちっと明らかにする。それに基づいて、それをある部分では公的セクターによって買い取りをしようではないかと。これには公開入札等の手法でリーズナブルな価格形成をすることが必要になるわけですが。金融機関がそういう意味では代物弁済をした後で、公的部門にこれを売却する。売却代金をどうするか、最近話題になっておりますが、これはいわゆる交付公債でよかろうということで考えております。金融機関側に無税償却を認めました上で、公的セクターがかなり長い期間、オーダーでこれを整序、あるいは有効活用するという手法を用いまして、いわゆる権利関係等で錯綜しております部分をかなり整理する必要があるのではないでしょうか。最終的には、私見ですが、こういう土地を利用して、例えば高齢化対応の住宅等に整備していくといったような方向に持っていけないだろうか。こういった不良資産それ自体を動かす手法を用いませんと、そのあとにくるさまざまな施策がなかなかうまくいかないのではないかという認識をしたわけでございます。これは最初の土地に関する問題点でございます。
 2番目に住宅に関してでございますけれども、住宅に関しては、これは将来、人口構成、あるいは世帯構成がどうなるかによって大きく変わってまいりますし、おそらくライフスタイルの問題がかなり大きく関わりますので、ほかのワーキングとの整合性が非常に重要ではないかと思っておりますが。
 足もとで申せば、第2次ベビーブーマーの世代が、今、大学を出た世代のところでございますから、今後しばらくはそういう世代のいわゆる世帯形成の過程で住宅需要というのが出てくる可能性がございますけれども、実際には例えば相続の問題がございまして、いわゆる新規1次需要という形ではなく、2次需要ないし建て替えといったような形で問題が出てくる可能性が強いと考えております。
 むしろ短期間に家をどんどん、どんどん買い換える、あるは建て替えるということは、これは環境問題にも関わるわけですが、環境に対して大きな負荷が出てまいりますので、その辺が非常に重要な視点になってくるのではないでしょうか。今後は住宅のいわゆる質的向上というのが言われて久しいわけですが、それと同時にアフォーダビリティという問題も重視するべきではないかというふうに考えております。
 それでライフスタイルの問題ですけれども、これは今後どうなるかはワーキングの結論を待たなければいけないわけですけれども、それにいたしましても3ページに書きましたように、いわゆる働く女性のファミリー形成、あるいは今後の生き方というのは随分変わってくるだろうということを考えますと、女性の視点から見たライフスタイル、ないしは家の問題というのが今後重要な問題になってくるのかなということも1つ考えております。
 あるいは今後、団塊の世代等が高齢化していくわけですが、その人たちが、いわゆるアクティブシニアと我々呼びましたけれども、ある年齢層以降でかなり積極的に社会に参画するというようなことが出てくる。そういう形での住宅取得行動もかなり重要な視点になってくるかなと。あるいはそれと関連したところで申せば、セカンドハウスに対するような需要というのも、現在のような状況の中ではなかなかむずかしいのかもしれませんが、いわゆる普通のサラリーマンが取得をするような形、あるいはマルチハビテーションのような問題、そういったものもここには出てくる可能性があるだろうと考えております。
 特に住みかえといった要素を考えますと、今後はコミュニティを重視するような階層、それからアメニティ、環境を重視するという層と、二極分化する可能性も出てまいりまして、住宅に求められるものというのは単に単体としての住宅ではなくて、総合的な住環境、あるいは町並み、利便性、安全性、教育等ですけれども、そういったさまざまなライフステージ、あるいはライフスタイルに対応した住宅の評価といったことになってくるのではなかろうかという整理をしておるわけでございます。
 レジュメの3ページの最後(3)に地方都市の課題と書きましたが、私どもの問題意識は、住宅土地に関してすべてネイションワイドで一本で切ってしまおうというようなことではなくて、やはり全国レベルの話と大都市圏の話、そして地方圏という話というのはやはり区々にあるだろうという視点でございます。ここでは大都市以外のところの地方都市の問題という形で1つ問題提起をしてございますが、いわゆる中核地方都市で起きている問題というのは、商業地あるいは公共施設等が中心市街地から郊外にどんどんシフトしていくと。それがモータリゼーリョンの過程で拍車がかけられまして、中心市街地が空洞化する、あるいは高齢化が浸透するといった問題が出てまいります。
 そういったことに対してやはり都市の再構築ということで、中核都市が、今後、地方分権の中、地方住民のイニシアティブの中で、十分に立ち直っていって欲しい、あるいは発展していって欲しいというのがここに書いたメッセージでございます。
 それから3番目の柱で考えましたストックという問題でございますけれども、住宅ストックというのは膨大なストックが実はあるわけですけれども、将来にわたりまして先ほど申し上げたようにどんどん建て替えが進むといったようなことを考えるのは、あまりいいことはなかろうと。むしろストックを活用するという手法がとられてよいであろうということから、従来日本のいわゆる既存住宅市場というのは中古住宅という呼び方、これ自体ネーミングが悪いのではないかという議論は相当ございましたけれども、やはりそのストックをいかに活用するかというところにポイントがあろうということでございます。
 これは住宅に対する、あるいは不動産に対する評価手法の問題というのもございまして、日本では更地でないと評価されない、諸外国では上物が乗っかったものでないと評価されないという評価手法の問題もあるわけですが、この辺の整備も必要な議論であろうというふうに考えましたけれども、ぜひとも既存住宅市場というのにまずポイントを当てたい。
 そしてそのときに1つ問題になりますのが、いわゆる分譲マンションの問題で、建て替え問題というのが阪神大震災以来、大分問題になってきているわけですけれども、今後このいわゆるストックがかなり老朽化してくるということがございます。その問題に対して、現在の法制では5分の2の同意が必要だというようなことがございますけど、なかなかこれが得にくくなっている状況があるということがございますので、やはり分譲マンションの維持管理につきましては、ある種の方策を講ずる必要があるだろうと。ここで1つのアイデアとして出しましたのが、住宅建替公社といったような公的なセクターによる整備だろうというふうに考えております。やはりある程度の政策的な対応がなければいけない部分ではないかと考えているわけでございます。
 それから高齢社会を展望した場合に、どうしてもやはり必要な方策というのが、4ページの下に書きましたリバース・モーゲージの問題でございまして、これは既にさまざまな形で議論されておるわけでございますけれども、なかなか実現のプロセスに至っておらないところでございます。今後の国民負担率の増大、貯蓄率の低下といったことを考えたときには、高齢者の生活を支えるという意味で、保有している住宅を資産として活用するというときに、例えばアメリカではHVD-HECMと呼ばれているような制度が導入されて、公的な機関がカウンセリングであるとか、あるいは信用保証であるとか、債権買取、こういったことをしておりますが、そういったような対応策を今後講じていく必要があるだろうというふうに考えているところでございます。
 5ページ目の(4)のところに、個人の抱える含み損の問題、これも実は先ほども申し上げた2番目の足下の問題と考えていただければよろしかろうと思うんですけれども、個人はあるライフサイクルで住宅を取得するわけですが、たまたまそれがバブルにぶち当たってしまったというケースがございまして、その方たちがライフステージに伴って買い換えをしようとしても、なかなかこれがうまくいかない、いわゆる含み損が出てしまうというケースでございます。この問題はイギリスなどでもネガティブ・エクイティの問題というふうに議論されておりますけれども、これに対しては2~3日前に出てまいりましたが、税制上の優遇を考えるとか、あるいは残債継承ローンといった形の新たな仕組みを考えるといったようなことで、個人資産の流動化に対しても一定の対応策が必要ではなかろうかというのが、このメッセージでございます。
 それから5番目には賃貸住宅の問題を書いておきましたが、これは分譲だけではなくて賃貸という市場におきましても、やはり一定の対応が必要ではないかということで、特に都心居住といった今度の展開を考えてまいりますと、賃貸市場も一定の役割を果たすことが必要ではないだろうかと。ただ、賃貸におきましてはいわゆる節税対策でこれを利用しているというような側面もないわけではございませんので、市場メカニズムにそれが乗るような形で整備されていくことがやはり必要ではないだろうかなと。その前提としては賃貸管理業のようなニュートラルな業があって、いわゆる貸借関係をうまく整備していくことが、やはり重要な役割になっていくのではないかということを書いてございます。最後にいわゆる定期借家権の導入がかなり重要であろうというふうに指摘をしております。
 5ページ目の(6)でございますが、新たな住宅供給スタイルの展望と課題ということでは、地上過密・空中過疎の問題がやはり都心等ではございますので、これを整備するためには容積率の問題等が実は重要な課題ではないかということを示しております。なおかつ、その定借に伴うさまざまな問題が実はまだございますので、それに対する解決策も6ページの頭の辺に必要ではないかという指摘もしてございます。
 供給サイドの方でも従来型の供給方式ではなくて、スケルトン方式でありますとか、コーポラティブ方式、つくば方式等、新たな供給スタイルが出てきております。こういったものの活用によります展開も出てくるのではないか、ということが指摘されたところでございます。
 そしてもう1つ、これは果たして可能かどうかということで大分議論になったわけですけれども、賃貸の場合には生涯賃貸制度といった形で1つの契約を結びますと、生涯賃貸の物件に次々に移ることができるというシステムが今やできつつあるわけですが、これをいわゆる持ち家という形の方に置きかえられないだろうかと。つまり住宅の買い換えというのは頭金でありますとか、ローンの組み換えでありますとか、登記等々さまざまな煩雑な手間がかかるわけですけれども、これを生涯居住するある種の会員制度のような形で、ずっと持ち家ができると。こういったようなシステムができれば、大変住み替え、あるいは買い換えに伴う煩瑣な部分が削除できるのではないかという提案もあったわけでございます。
 最後に4番目、住宅金融の分野でございますが、金融分野はいわゆるビッグバンという形でかなり新たな転換が見られておりますが、住宅の金融市場というのは主に居住用不動産であれば個人ということが相手でございますので、かなり限定的でございましたが、おそらくこの分野もかなり今後はビッグバン的な側面が強くなるだろうというふうに考えております。特に住宅金融に伴うリスク分散という手法が新たにどんどん開発されてきておりますので、こういう形での対応が、例えばアメリカの手法などに伴って出てきていいのではないかと。特にアメリカにおけるモーゲージ・バックセキュリティのようなシステムが日本にも導入されることが予想されますので、そういったことができますと、住宅金融資産というのは、いわゆるミドルリスク、ミドルリターンの魅力的な金融商品にもなり得るという意味では、高齢化社会の中で重要な金融商品にもなっていくのかなという整理でございます。
 最後に公的な住宅金融の役割というところに書いてございますが、これは従来型の長期固定・低利融資という直接融資が行われておりますが、今後は民間に対する補完という形にシフトしていく可能も大きくあるわけでございます。それで公の関わりというのは日本では、現在では直接融資でも非常に高いと言われておりますけれども、諸外国でも公が何らかの形で係わるというのはあるわけでございますので、最終的に日本でもいわゆる民間の融資に対する保証、ないし買い取りといった第2次市場と呼んでおりますが、流通市場の整備といった方向に行く可能性が非常に強いのではないかと考えております。
 民間の商品につきましては、今後ビッグバンの形でリファインされていくのは望ましいわけでございますが、それは一定の限界がやはり多分あるのかなと。例えばスワップレートを使って長期固定のレートを出しておりますが、スワップをとっていないような事例があったりもしまして、なかなかこれは価格にオンされていない問題がございますので、この辺の限界に対応するためにも、公の役割を全く否定するというのも、これはいかがかなという感じを持っております。住宅というある種の価値財に対する支援ということを、公共の方でもしていくことがやはり必要ではないかと。そういう意味では一定の役割のプロであろうというような評価をしておるわけでございます。
 なおかつ私どもとしては、住宅というのは価値財である、あるいは長期の資産であるというふうに考えておりますので、その情報の質が非常に担保されなければいけないだろうというふうに考えておりますから、公が行う仕事としては、その質の担保に係わる部分であろうと考えておりまして、その質の担保を情報として民間に提供する、こういったような仕組みがやはり必要なのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
 以上4つの分野につきまして、それぞれ議論したポイントを、中間段階ではございますがまとめたのが以上のご報告でございます。以上でございます。
(部会長) 土地・住宅ワーキンググループについては、引き続き皆さんから今のご報告に絡んでご質問なりご意見をいただきたいと思います。
(部会長代理) 今の段階で感想というか、その程度のことですので、特に論争するということではないんですけれども、3点ばかり。
 1つは土地の価格形成の基本が収益還元法になるだろうということについては私も非常にそういう印象を強く持っておりますが。問題はそれが何を意味しているかということだと思います。つまり、もし収益還元レベルへ戻るのであれば、バブルが罪だということでは済まないわけで、バブルの前も収益還元では決して説明できなかったはずですから、地価はまだまだ下がるということなのかどうか。例えば土地が下がっているのが一番諸悪の根源で、あれさえ上げれば株も上がる、不良資産もなくなるとよく言うんですけれども、まだまだ下がると思っている以上は土地流動化政策というのは、ほとんど効果がないということになるわけですね。そういったことについて、本当にこれでいってどのぐらいになるのかということ。もちろんそれは二極分化があって、あるところは下がらないんですけれど、あるところはまだまだ下がるのかどうか。その辺のインプリケーションをやはりはっきり出すということが非常に大事なことではないかというのが第1点であります。
 それから第2点は不良資産の処理ですけれども、これはこういう考え方もあると思いますが、私は土地の生産性を上げるということは非常に大事なことで、地価がどこまで下がるか、生産性自体が上がってくれば下がらなくて済むわけですから非常に大事なことですが。今、不良資産になっているから、そこを何とかということでいいのかどうか。例えば都市計画上、土地有効利用上、ここが大事な土地だからそこに公的資金をつぎ込むというのなら理解できますけど、今、銀行が持っている不良資産になっているところだから、何か公的資産をつぎ込んでというのはどうなのか。それだったらむしろ市場による解決、デフォルトをやった方がはっきりするわけですね。ですからこれは不良資産対策としてすべきことなのか、土地で潜在的に価値のあるものの価値を引き出すためにやるというのが、2ページで、そういうことであるべきではないかという、そういう議論もあるのではないかと思いますので、その点もご検討いただければと思います。
 最後に評価について公的な評価が必要だと言うんですけれども、公的な評価をすると、その評価が間違っていたときは損害賠償をしろと。要するに公的資金で買ってくれということになると思うんですが。そうではなくてリクルートが評価してなぜ悪いのかとか、不動産研究所だってあるじゃないかとか、やはりリスクはあるわけですから、土地がほしければ鑑定士をこれからは雇って、その上で買うということになる方がむしろ健全ではないかとか、そういう議論もあってもいいのではないかと。
 単なる感想ですので、後で十分議論していただければ結構だと思います。
(A委員) 今、部会長代理がおっしゃった第1点と関係がありますけれども、幾つかの分野で公的、政府の役割というものが書かれていますけれども、私が印象に思いましたのは、第1点の収益還元、キャピタルゲインよりも土地の利用価値に基づいた方向で土地の価格が決まるというところですけれども、ここの分野だけは市場の期待に全部依存していると思うんですね。このいわゆるキャピタルゲイン期待から、土地の利用価値に基づいた土地利用というものに転換するのに、政策の役割は何もなくてもいいのかと。つまり土地税制も含めてですね。ここのところだけがマーケットメカニズムに依存する形になっているのが非常に印象的でございました。感想です。
(B委員) 質問ですが、よろしいでしょうか。
 4ページのストック時代の住宅市場を支える新たな供給・流通システムのところの(2)の分譲マンションの建替えのところの下に、ちょっと私、きちんと聞いていなかったのかもしれませんが、住宅建替公社のような公的セクターというふうに出ておりますが、私はすぐ公社なんていうと、また住宅公団みたいな結果になるのを非常に恐れるものですから。これはどういう、特に公社というふうな発想はどういうところから出てきたのか。それから具体的にどういうことを想定して、こういうものをお考えになったのか、ちょっと教えていただきたい。
(村本委員) ご意見たくさんいただきまして、ありがとうございました。詰めきれていない部分はございますが・・・
 最後のご質問は、私どもが考えておりますのは、住宅建替公社というイメージをつくる上で1つ検討したのは、例えば地方にあります住宅供給公社のようなものが活用できないかということでございます。住都公団を活用するということはあまり頭にはなかったんですが、元のやはりニーズに合致したところで評価すべきではないかという形で、念頭にはそれを一応置いておりましたが、ここに書きますときにはやはりもう少しリファインしたものもあり得るだろうという形で、こんな形で書きましたんですけど。
(B委員) 私のポイントは公社というか、つまりプライベートセクションでそういうことが何か工夫できないのかと。それがどうしてもできないから公社ということになったのかという部分がポイントでございますけどね。
(村本委員) もちろん民間でこれに対応するのが望ましいわけでございますけれども、議論の過程でございましたのは、やはり権利関係等がなかなか複雑になるということがございますので、ある程度のパブリックの介入ということを意識した方がいいのかなというので、こういう書き方になったということでございます。
(部会長) 何かその前のご指摘にもしもコメントありましたら、村本委員どうぞ。
(村本委員) 収益還元価格についてぼんと書いてあるけれども、それでうまくいくのかねというご質問であったかなと思いますが。何分この分野についてきちっとした実証がまだできていないわけでございますから、そう簡単に言えるかどうか。これはかなり期待が込められているというふうに考えておりますが。
 最初に部会長代理がおっしゃいましたように、バブル前も収益還元ではなかったから、もっと下がるのではないのかというご指摘は、理論的にはそうなる可能性が非常に私も強いと思っております。ただ、一部商業地でというふうに申したのは、やはりそれが反映されてきた過程ではないかと思いますが、その評価をどうするか、おっしゃられましたようにもう少し詰めてみたいというふうに考えておりますので、そういう受け取りでよろしゅうございましょうか。
(部会長) まだ、ご意見あるかと思いますけど、ちょっと時間もございますので、この土地・住宅ワーキンググループの経過報告については、ここまでにさせていただいて、さらにいただけるご意見につきましては、事務局までご連絡をいただきたいと思います。
 それでは続いて、次のワーキンググループの地球環境ワーキンググループ、座長の深海委員にお願いをいたします。
(深海委員) それでは、村本委員に引き続きまして、この地球環境ワーキンググループの報告をさせていただきたいと思います。
 私どものグループも、ちょっと私どもの資料が長めで恐縮でございますが、20ページのところをまず見ていただきますと、私のほかに槌屋委員、中上委員、伴委員の4人でグループを構成いたしまして、10月9日からやはり前のワーキングと同じように6回開催をいたしまして、一応その審議経過報告をさせていただいているわでございます。
 それで地球環境ワーキンググループの検討につきましてご説明をいたします前に、1つ、2つお断りをさせていただきたいと思うのですが、この地球環境の問題というのは、もうあらゆるところでいろいろ議論されておりまして、ある種、議論が堂々巡りをしている、あるいは重複している等々ということがあると思うのですが、ある意味では論議が尽くされていると。それで私どものワーキンググループとして、何か新しいものとか、あるいは落ちているところというような意味で議論をしたらどうかという、こういうことでございまして、大きな検討のフレーム枠を設定すると同時に、その中でできるだけ限定された問題について、具体的な検討をしていこうというような形でこのワーキンググループの経過報告がまとめられているということでございます。
 それでは9ページ目から。一応資料が配られておりますので、その線に沿ってご説明をさせていただきます。
 まず、第1でございますけれども、このワーキンググループの報告は3つの点に一応絞られているわけでございまして、最初の1というのが9ページから10ページにかけてあるわけでございますが、これがどういう出発点というか基本認識で論議をしていくのか。そして10ページ目から2のCO2削減ポテンシャルのさらなる探求ということでございまして、そのCOP3等々の展開を見ますと、一層そういう強化が必要であろうと。そういう意味で全体的な検討と。
 それから14ページでございますが、ここが各論的、具体的な検討と。先ほど私が申し上げさせていただいたものでございまして、CO2削減を実現していくための動的なメカニズムというような形で、新エネルギーとしての太陽光発電設備、あるいはハイブリッドカーというのもやったんですが、ここには書いてございませんけれども。それからいわゆる省エネ、省資源に資する新しい社会システム的な具体的事例を検討したわけでございます。
 それで9ページを見ていただきますとわかりますように、まず議論の出発点としては、COP3による、日本としてはCO2を中心とする温室効果ガス6%削減、この中身についてはいろいろ論議があるわけですが、予定したよりも厳しい目標設定になったと。
 それからもう1つは、当部会からも小林部会長が出席されていたわけでございますけれども、地球温暖化問題に関する国内対策に関する関係審議会合同会議という報告書がございまして、ここで一応対応政策についての方向が出されていると。この2つを前提として私どもは考えてきたということでございます。
 そこで私どものキーワーズと言いますか、そういうものとしては、1つはCO2を中心とする、本当は温室効果ガス全部をやらなくちゃいけないのですが、ここではCO2に限定してCO2の排出をできるだけ少なくしていく、低排出型社会へ向けた見取り図を書いていこうということでございました。
 それで9ページ目の(2)というところをご覧いただくといたしますと、その具体的にやったことは何かと言うと、CO2排出ポテンシャルのさらなる探求例をレビューし、2番、またCO2排出要因の簡単な分析によりマクロ的に見た今後のエネルギー効率向上のめどについてまず考察をしたと。その上でこうしたCO2削減を実現していくためのダイナミックなメカニズムと言うか、動的メカニズムとして、その3番として省エネ、省CO2に資する鍵となる技術の大量普及を支えると考えられるような習熟効果メカニズムと。それから4番目としてこの3と4に重点を置いてあとで具体的にご説明いたしますが、市場や社会全体を省エネルギー、省CO2の方向へ動機づけていくことが期待される新しい社会システムについてと。ただし、社会システムは非常に大きな社会システムと言いますよりは、あとでご説明いたしますような意味で、ESCOとかディマンド・サイド・マネージメントとかラベリングとか、あるいはテクノロジー・プロキュアメントというような、そういったいわばインフラ整備、あるいは制度整備というようなことを検討させていただいたわけでございます。
 それでちょっと飛んで申しわけございませんが、最後の21ページというところに、私どもの基本的な検討の内容と、それから全体的なアプローチ、あるいはそのフレーム枠が出されておりますので、まずそれをご覧いただきたいということでございます。
 1番上にございます低排出型社会へいくために、いろいろな側面が考えられる。ここでは4つの側面を考えたわけでございまして、編み目がかかっております技術、この部分については検討した。それから社会システム・インフラの中でもDSM、ESCO、ラベリング、テクノロジー・プロキュアメントという、そこは検討したわけですが、社会システム・インフラ全体についてとてもできない。
 それから他のワーキンググループとの関連もございますが、非常に低排出型社会に向けての取り組みにおいて重要なのは、産業構造の変化等々、あるいは企業行動、それからライフスタイル、社会意識の変化でございますけれども、これについては全く今の段階では検討せずに、この4つの側面の技術と社会システム、インフラの一部をやったと。もちろん一番下にございますような政策制度等の具体的な措置等々というのと実は関連してとらえなければならないわけでございますが、そこの検討も他のワーキンググループ等々との関連がございますので、ここではまだ中間報告と言うか、審議経過の報告ではむしろ今、編み目のかかった部分について私どもが主として検討を行ったということでございます。
 そこで10ページ目に戻っていただきまして、大きな2、CO2削減ポテンシャルのさらなる探求というところをご覧いただきたいというふうに思うわけでございます。時間がございませんので(1)のところにつきましては、皆様ご存じのように、日本として温室効果ガス、特にCO2排出についてどういう方向を目指しているのかということでございまして、供給サイドとして原子力と新エネルギー、そしていわゆる省エネ有効利用、需要面における、その2つが中心として議論されていると。
 しかし、先ほどらい申し上げましたように、その合同会議の方向づけを達成するにしても、例えば供給サイドで十分原子力発電等々の立地ができるのか。もし、できないとしたら、それはさらに別の部面で補足しなければならないというようなことになりますし、あるいはCOP3でのいわゆる決定事項を見てみますと、その合同会議で決められた消費削減、CO2削減方策を超えていく必要性があろうということでございまして、11ページの(2)のところで、私どもの委員会で槌屋委員、あるいは中上委員等々、具体的にこういう問題を検討されている方々の参加を得ておりましたので、そういう具体的な事例研究を受けた上で、実際に先ほど申しましたような意味で、具体的な削減方策の検討、そういうものを行ったということでございます。
 それで12ページのところに書いてございますように、実は私どもが検討したものは、ある一部でございまして、ほかの意味でのいろいろな問題もございまして、その社会システム、インフラ面、あるいはライフスタイル、そうすると運輸面での共同運送とか、モーダルシフトだとか多々あるわけでございますが、ここでは限られたものについて具体的に検討をしてみたというのが私どもの主要な点でございます。
 ただし、そういうミクロ的、積み上げ的な分析というだけではなくて、13ページのところの(3)のところをご覧いただきたいと思うわけでございますが、いわゆるちょうど中段辺りにございます、茅陽一先生の茅の式と言われておりますものを使いまして、その要因別に、しかも産業、民生、それから運輸という部門に分けまして、今回、その前提として与えられております2010年までの経済成長率、それからいわゆる原子力、あるいは新エネルギーの供給の目標というようなことを前提とした上で、各部門ごとに一体どれぐらいの省エネの積み増しがいるのかという計算を、ここでは数値は紹介いたしませんけれども、それによれば過去第1、第2次石油危機の経緯を経た過去の状況を、産業部門は別でございますけれども、運輸、民生部門では、それを上回るような、そういうCO2の削減が要請されているということでございます。そういった部門についてのある程度具体的な、できる限りの事例を取り上げて検討をしたのが14ページの3の部分でございます。
 ただし、私どもの検討がミクロ的なそういう問題の積み上げだけであっては当然ならないわけでございますので、14ページのところの3の前の1つのパラグラフをご覧いただきたいというふうに思うのですが。そういう形でどれだけのCO2の削減が必要かというような意味での削減率を計算したわけでございます。もし、そういうことが要請されるとしましたら、それは前提といたしました経済成長自体にも当然影響を及ぼすことになるわけでございますし、あるいは他のワーキンググループと係わるわけでございますが、産業構造面、あるいはライフスタイルの変化だとかいろいろなものと当然関連することになるわけでございます。
 そこでマクロな計量モデルによって、一体そういうCO2制約を課した場合に、経済成長に対する影響はどうなのか、そういう産業構造への影響、あるいは変化の要請はどうなってくるのか等々というようなことの、いわゆるシミュレーションの結果を一応検討したわけでございますが、まだ最終的にここでご報告できる形にはなっておりませんので、この点、総合計画局の事務局にお願いをいたしまして、その検討作業もしているところでございまして、今日ご報告いたしますものは、むしろ個別的、ミクロ的な対応策の検討をしているということで、2正面作戦と申しますか、そういう形での大きな検討もやっているわけでございます。
 それで14ページから、実はこれが一番具体的に検討したものでございますので、詳細にご説明させていただきたいと思うのですが。与えられた時間があと数分になっておりますので、ごく簡単にどんなところに注目して検討したのかということだけを説明させていただきたいと思うわけでございます。
 それで新技術を導入した、そういった例えば太陽光の発電システムであるとか、あるいはハイブリッドカーが将来どれくらいコストが下がり、あるいはどれだけ普及していくのか。そのためにどういう施策が要るのであろうかという、そういう検討をいたしたのが(1)でございます。
 ここで主として出されておりますのは、いわば供給面のコストがどういうふうになっていくかということでございまして、詳しい説明は避けますけれども、そういう新技術を導入した製品はラーニングカーブを描いて、それで習熟曲線で大幅に下がっていくというのが一般的に言われていることでございまして、この点のイメージあるいは具体的な太陽電池のモジュールについての検討につきましては、16ページのところの図表1、2で一応示されているわけですが、そういうような形に沿って、これから一体どれくらい下がっていくのか。それで自立できる場合には、どれくらいの生産量が要るのか。そのために補助金その他、どうやったらいいのかというようなことを検討した結果が(1)で出されているわけでございまして、詳しい具体的なことは避けさせていただきますけれども、 850万キロワットというようなものがいわゆる自立可能な生産量であり、それを達成するために一体どれくらい年々生産増加ができればいいのか、そうだったらいつになるのか。それからまたコストは、そこに普及をさせるためにどれぐらいの補助金等々をやったらいいのかというようなことまで計算してあるわけでございます。
 それからこの点につきましては、実はそのあと、今度は習熟曲線による供給サイドではなくて、普及曲線というようなものを考えまして、需要側の要素も入れて総合的な分析を考えているわけでございまして、その試みも一応はやってみましたけれども、今回はいわゆる供給サイドの問題についてだけ説明をさせていただいたわけでございます。
 ただし、今日は評価がされていないわけですが、例えば 850万キロワットの設備が導入されたとして、では全エネルギー消費に占める2010年でどうなるだろうかということでございますと、全エネルギー供給全体からすると 0.5%程度のシェアで、これをどんどんその線に沿って促進させていくとすれば、数%レベルということになろうかと思うのですが、もちろんこれ自体で問題が解決するわけではございません。
 それからまたもう1つの問題としてハイブリッドカー、これは今、実際に市販され始めたわけでございますが、あのハイブリッドカーによる燃費は2分の1に減るというようなことでございまして、これによる効果は非常に大きいわけでございますが、この点につきましても一応私どもの検討はしてございますけれども、きょうは中間報告としては省かせていただいているわけです。
 それから17ページの(2)の省エネ・省CO2に資する新しい社会システムということでございまして、これにつきましてはまず1つといたしまして、ESCOという組織のことがございまして、ESCOにつきましては実は13ページのところの上から3行目に(注)がついているわけでございまして、エナジー・サービス・カンパニーというような形で、いわゆる総合的にビルの省エネを中心に診断をし、それからそれに対する資金の供給等々含めて総合的に対応していくというような、そういうシステムでございまして、これがアメリカ、あるいはEUの一部で行われていると。
 それでこれは非常に投資回収年限が長い等というような、いろいろな問題があって実行がむずかしいという点もあるのですが、いわゆるプロジェクト・ファイナンス、パフォーマンス契約というようなことがもしできていくといたしますと、特に政府その他公共ビル、あるいはいわゆる業務用ビルというようなところで、産業部門についてはこれはかなり進んでいるわけでございますが、そういったものを導入することによって、例えば 380万キロリットルぐらいの、かたく見て省エネ効果がありそうだというようなことでございます。
 それから第2が18ページのディマンド・サイド・マネジメントでございまして、これも電力業界が、詳しい説明につきましては、やはりそれぞれ(注)がつき、ケースが行われているわけでございますが、10ページのところに(注1)で上から6行目ぐらいのところに、ディマンド・サイド・マネジメントの内容の説明がございまして、これはアメリカその他中心として電気事業者と需要者サイドが手を結ぶような形で省エネ、それからピークカットの努力をしていて、これもある程度の効果があるわけでございますが。これは今、経済改革が進行中でございまして、送配電あるいは発電の自由化が行われるといたしますと、アメリカではむしろその結果としてディマンド・サイド・マネジメントが中止されているような問題もなきにしもありませんので、そういうことも考慮して考えてみる必要性がある。
 それから第3は消費者に対する、いわゆるラベリングの問題でございまして、電気製品その他、どれだけ絶対的な効率、あるいは相対的な効率の機器によって違うのかという、そういうラベリングをやっているわけでございまして。これに対してもかなり実はアメリカ、EU、それから韓国、そしてオーストラリア等々で行われておりまして、これは具体的な計測はむずかしいわけでございますが、数%程度の省エネ効果があったのではないかというようなことで、これも日本でももっと行われていったとしたらいいのではないかという形で検討をさせていただいているわけです。
 それから最後に、そういう新製品の導入、あるいは新しい技術を体化したものとして、今、日本ではいわゆるトップランナー方式という、政府が規制をして効率的なものしか使わせないということになっているわけですが、スウェーデンとかアメリカでは、むしろそういう新しい技術を体化した新製品が出されるという段階で、政府が積極的にそういう特定の技術スペックを使用した製品の購買者をあらかじめ募集をして、それによってある種の需要を確保して、それで自立させていくというような意味での動きがあり、これも一部具体化して、スウェーデン等々では成功しているというようなことがございますので、そういうものを取り上げて、これについても検討してみてはどうかということでございます。
 結びといたしまして、19ページから20ページに、おわりにというところが書かれているわけでございまして、今、具体的なケースについて非常に十分な説明ができなくて申しわけなかったのでございますけれども、結局、我々は今のCOP3、その他を考えてみても、さらにCO2削減のポテンシャルを探求し、実行していくということを積み増していかなければならない。
 それから第2には、実際にそういう省エネ、CO2技術開発の普及のための戦略的支援策をやり、新技術を普及させていくという、そういう工夫が要るのではないかということでございまして。それで需要者、消費者へのアナウンスメント効果等々も考慮して、先ほど説明いたしました4つの事例を申し上げたのですが、そんなものも含めて検討していく必要性があるのではないかと。
 それで私どもの検討は非常に限られた部分についてのみ検討をしたわけでございまして、1つは既に2の(3)で説明をいたしましたマクロ的なモデルを使っての、そういう全体の影響その他についての検討を確立するということと同時に、今の個別ケースをさらに一層展開していくということ。
 それで20ページをお開けいただきますと、3つの黒丸があるわけでございまして、ほかの点、COP3でも検討その他が決まりました排出権取引、ジョイト・インプリメンテーション、あるいは途上国への協力等々、どう評価し、どう位置づけていくのかという、そういう問題と。それから2010年というのは過渡期というか短中期の問題でございますので、2100年という超長期を念頭として、今のような検討にさらに積み増しをしていく必要性があるのではないかと。
 それから私がこの部会でも発言させていただいたわけですが、いわゆる6つの構造改革や高コスト構造是正等々という経済構造改革を推進した場合に、その地球環境問題に関して、ある種のトレードオフの関係が存在すると。そうするとどういう政策を積み増すことによるのか、あるいはさらに一層どうしていったらいいのかというような問題を含めて、両方の両立、調和をどう図っていくかというようなことを検討してみたいと考えているところでございます。
(小林部会長) ありがとうございました。ご質問その他、あとでいただくことにして、続きましてグローバリゼーションワーキンググループの座長である佐々波委員に報告をお願いたします。
(佐々波委員) グローバリゼーションワーキンググループでの作業の進行状況と、どういうことを考えているかということを、手短にご説明申し上げたいというふうに思います。
 27ページのところに論点整理図というのがございますので、それに即して説明したいというふうに思います。基本的な認識といたしましては、グローバリゼーションの進展というものが、日本の市場システムというのを活性化する推進力になるのではないかと。ただ、問題としてはその際に発生する社会的なコストというものを、どのように考えたらいいのかということが基本的な認識でございます。
 論点整理の一番左側のところが、グローバリゼーションの進展というのを、どのようにとらえたかというのが図になっておりまして、それは貿易と要素移動と書いてありますけど、より具体的に言えば労働でありますとか、企業の移動というものがいわゆる国際間で拡大するんだと。真ん中のところは2つ考えておりまして、グローバリゼーションの国民経済への影響というものを4点に分けております。下半分の方が、そういうグローバリゼーションが起こったもとでの、どういった制度上の問題というものが起きてくるかと。つまり上の方がどういうことが起きるかということの議論でございまして、下の方がむしろ制度、政策の問題でございます。
 さらに右の方にいきますと、先ほどの香西部会長代理の資料2との関連で申し上げますと、今後、どういうような展望が行われ、我が国の対応としてどういうようなものを考えたらいいのかというので、もしこの資料2の、例えばという以下で(1)(2)(3)と分けていらっしゃいますけど、そこのコンテクストの関連で言えば、我が国が構造改革というようなものをしたときに、経済社会制度というのを、もし国際的な社会制度というものまで含めて考えるといたしますと、我が国としてどういった対応が国際制度として望ましいかということでございまして。私どもの作業内容、いっぱい(P)というのがついておりますのは、まだ検討中の案件が非常に多いものですから、結論として出ているところと、検討中、委員の中でも非常に議論が分かれまして、私がここで断定的なことを申し上げるのは大変越権行為かと思いますので、それと分けて申し上げたいと思います。
 また、ご議論いただく点といたしましては、一番右側のところはそれこそ方向性という、この部会としてのご議論がございますのでしたら、ぜひこういうことを考えてほしいというようなことを言っていただく、もしくはここでオープンスペースにしておりますので、検討いただくというふうにしたいと思います。
 じゃ、手短にいたしますと、その上の方でどういうことを考えたかと言いますと、まず貿易というものは非常に国内だけでは到達できないような国民所得及び消費水準というものを実現するというメリットはあるんですけれど、それが雇用であるとか、労働者の賃金というものにどういう影響を及ぼすのだろうかと。それが一番のむずかしい点だろうというふうに思っております。そこではかなりコンセンサスが得られたんですけれども、摩擦的な失業というものは増加させるかもしれないけれども、マクロ的にはこういった雇用の問題を発生させるけれども、それほど大きなコストがかかるものではないのではないかと。むしろ施策としては、労働市場政策、つまり国内及び海外から入ってくる労働者に対する調整機能というものを高めて、こういった摩擦的なフリクションというもののコストを下げることが必要なのではないかということでございます。
 それからそれと関連しますけれども、外国人労働者の流入でありますとか、外国企業、ご承知のように日本には非常に外資系企業が少ないというのが、ほかの先進国に比べての特徴でございますけれど、その労働者につきましては、ここでは前のとちょっと違いまして、一体その国際間の労働移動というものが、一般政府の社会福祉の費用にどういったような影響を及ぼすのかというような議論をいたしました。それから企業の参入につきましては、それとも係わるのですけれど、むしろサービス産業の活性化というような点から言えば、こういった多国籍企業の参入というのは、日本が今、取り組んでいる改革というものを促進するような効果を持つのではないと。これはかなり結論としてコンセンサスが得られた点だというふうに思います。
 それから次が貿易と集積の話でして、先進国での集積、いわゆる産業政策としての企業集積の話というのは、先端産業にどれだけ政府が介入して、新しいものをつくっていくかという議論で、いわゆる戦略的貿易政策と称する分野で、一度かなり議論されたものでございますけれど。私どものワーキンググループとしては、その貿易政策をとって、そういったような産業政策をした場合に、望ましい結果というのを必ずしも得られるとか限らないんじゃないかとか。それからほかの産業に対する影響というものも考慮しなければいけないんじゃないかという点から、日本の取るべき政策としては否定的な結論というものを得ております。
 それから次に地域での話というのがございまして、地域につきましてはいわゆる地域経済圏構想というのが、いわゆる日本の一部を含む形で議論をしているわけなんですけれど、これが一体資源の活性化というものにつながるのか、それとも日本に元々ある地域というものにどういう影響を及ぼすかという点については、ここはかなりまだ議論が詰まっておりませんので、(P)印がついているように、今後もう少し時間をいただきたいというふうに思っております。
 下段になりまして、グローバリゼーションと制度調和なんですけれど、ご承知のように国境措置というものの重要性が少なくなってきているということから、各国の制度的な枠組みというものを調和させて共通的なものにした方がいいのではないかという議論があることはご承知だと思うんですけれど。その中で殊に企業活動に影響のあります競争政策について取り上げました。その国内の制度自体が、それぞれよって立つところが各国あるために、むしろ形式的な制度調和ということではなくて、私どもの立場としては、その実効上の措置というものが、どういうふうに機能しているかということをまず検討する必要があるのではないかというような視点で現在議論を進めておりまして、各国の制度上の差異というものはある程度仕方がなくて、それを調整していくという際に、機能性というものも重視していこうというところまで進んでおります。
 それから国内制度の話でございますけれど、これも検討中で非常にむずかしい問題と言いますか、いろいろな議論が出ているのですけれども、制度化されている各国の労働保護というようなもののコストというものが、どういうふうに労働が移動し、貿易が行われるというもとで変化するかと。それから税制の話で、いわゆる国家間の差異というようなものがどういった影響を及ぼすのかというのも、今、検討中という案件でございます。
 それから最後に制度調和と言うと、そのグローバリゼーションと同時に非常に地域経済統合というものに対する評価というものも議論の分かれるところでして、その地域化というのがブロック化なのか、それともグローバルにいく前のその一里塚なのかという点があろうかというふうに思います。以上が影響と制度調和なんですけれど。
 今後の予定といたしましては、その右側の端の政策対応のところで、できればいわゆる2010年辺りの国別のGDPシェアでありますとか、成長率というようなものを、その目安にいたしまして、政策対応の効果の分析でありますとか、そういったものを踏まえて日本が今後、自由貿易体制、この下には具体的にはWTOとか書いてありますけれども、そういったものにどういうふうにアプローチしていくのが望ましいかとか。それから地域経済統合というので、APECを中心に考えるのか、また違った経済圏というものへのアプローチがあるのかというようなことを今後の政策検討課題というふうにしたいと思っております。
 以上でございます。
(小林部会長) ありがとうございました。
 それでは技術革新ワーキンググループの座長の長岡委員、ご報告をお願いいたします。
(長岡委員) 28ページから報告が記載されております。メンバーは32ページにございまして、企業の方を中心に全体で6名で検討をしてきております。
 技術革新は今後の経済成長にとって非常に重要ですが、ワーキンググループでは1つは研究開発の促進、すなわち新しい技術を生み出す研究開発の促進という面と、それから技術の活用と言いますか、特に日本の場合は製造業は非常に生産性が高いわけですが、非製造業は非常に低いというところがあって、技術革新の成果を経済全体として利用するためにはどういうことが必要かと、その2つの観点から検討を進めてきております。
 最初に製造業部門を中心とした技術動向の展望。それから研究開発促進のための課題の検討。それから技術の利用の促進についての課題の検討と、この3つに分けて報告をまとめさせていただいております。
 まず、研究開発についての全般的な動向でございますが、33ページにGDPに対する研究開発費の割合がG7の国について、81年、90年、95年ということで示されております。日本は現時点ではGDPに対する研究開発費の割合で世界でも最高水準にあるということで、非常に高い研究開発をやっている国ということになっております。
 ただ、80年代までは非常に研究開発は伸びてきてわけですが、90年代になりまして経済の不調もありまして、かなり伸び率が低下しておりますし、製造業の中には研究開発費を絶対額で削減してきている産業も出てきております。また、日本は製造業のウエートが米国等よりも高いということも、GDPに対する研究開発費率が高い1つの原因になっております。製造業だけで見ますと、製造業の付加価値に対する研究開発支出で、まだアメリカの方が先んじているという状況であります。
 今後の展望なのでございますが、研究開発の9割を、現状では製造業がやっております。今後も製造業は重要だと思いますが、米国では最近、非製造業と言いますか、ソフトウェアとか通信とかこういった産業でも非常に研究開発が盛んに行われるようになってきておりまして。日本でも非製造業が研究開発に積極的に取り組むような環境づくりというのは1つ重要じゃないかと考えています。
 それから2番目は日本は研究開発費の8割を民間がやっておりまして、研究開発を高い水準でやったところは非常に生産性の伸びも高いという、そういう結果になっておりまして。今後も民間企業が研究開発に積極的に取り組むような施策というのをやっていくことが重要だということであります。
 基礎研究が従来、日本では非常に弱いというふうに言われておりますけれども、最近では分野によってはかなり国際的に見ても高い評価を得ているような業績も出てきております。しかし、いろいろな専門家の技術評価によりますと、やはり米国との比較のみならず欧州と比べても非常に水準が低い分野というのが多いという状況になっております。産業、技術革新という観点からでも、基礎研究の重要性というのは増してきておりますので、基礎研究強化、それから基礎研究の効率化というのが今後の重要な課題ではないかという議論になっております。
 次に、個別に製造業を中心としまして技術水準の国際的評価をしておりまして、電気電子通信産業、それから機械産業、素材産業、化学産業、それから宇宙・航空・エネルギーと、こういった5つの業種に分けまして検討を進めております。70年代、80年代はほとんどの産業でかなり急進に米国にキャッチアップをしてきているというのが日本の技術力の評価だったわけですが。90年代に入りまして、ほとんどキャッチアップをしていないか、あるいは逆にアメリカの方が進んできていると、こういった分野もかなり増えてきていると、そういう評価を得ております。
 それから研究開発の促進というのが今後重要で、科学技術基本法等が制定されて、さまざまな改革が実施されているわけですが。研究会では幾つかの重要な分野について、残った課題は何かという観点から検討をしております。1つは産業の技術革新を進める中でも基礎研究の果たす役割が非常に重要になってきていると。そういう産業が増加しているという観点から、基礎研究、それから産学官の連携の強化ということで、特に人材の交流等を中心に検討をしております。
 それから2番目が人材の育成とか確保の問題。3番目が知的財産権の問題。それから3番目が先ほどグローバリゼーションの話がありましたが、開放的な市場の確保ということです。研究開発の集約度が高い産業は、非常に輸出比率も非常に高いということで、グローバルに貿易の自由化、あるいは国際標準の採用というのが重要になってきておりまして、こういった分野でも検討をしております。
 それから最後にリスク資金の確保ということで、製造業の大企業では、特に現時点は資金の制約で研究開発ができないというふうにおっしゃっている企業は余りないわけですが、特にベンチャー、中小企業を中心に、米国に見られるようなリスク資本が集まるような制度づくりというのが、いろいろな面で今、進んでおりますけれども、さらに一段とこういった面の施策の強化が必要ではないかということで検討をしております。
 3番目が技術の利用の促進であります。冒頭に申し上げましたけれども、日本の非製造業というのは米国と比べて例えば生産性の水準が5割とか6割しかない。あるいは4割とか、そういった計測結果もあります。こういった産業が革新をしていくというのが経済全体のパフォーマンスを高まる上では非常に重要だということで、内外の技術を活用して技術革新をやっていくような環境づくりというのが非常に重要なのではないかという結論になっております。
 この観点から注目しないといけないのが情報通信技術なんですが、33ページに95年時点なんですけども、インターネットがどのぐらい普及をしているか。あるいはパソコンがどの程度普及をしているかというのが、イタリアを除くG7の国で比較をしてあります。どちらの指標をみても、日本は一番低い、最下位の水準になっております。特にインターネットに接続されたパソコンの普及率というのは米国と比べて現時点でも日本は著しく低いと、そういう状況になっております。
 日本のシステムが新技術の導入に不得意かと言うと全くそうではなくて、製造業ではメカトロニクス産業、あるいは流通の分野では宅配便とかコンビニエンスストアとか、情報通信技術を非常にうまく活用して新しいサービスとか製品を提供している産業はたくさんあるわけです。むしろ制約要因があるところがうまくいっていないという結論になっております。規制の問題、それからコーディネーションの問題、この2つが重要ではないかという議論になっております。
 先ず行動規制、参入規制等の規制が非常に多い業種が非製造業には多いわけで、これはやはり技術革新という観点からも、規則の緩和を徹底的に進める必要がある。特に業態が違うほかの産業からの参入、あるいは外国企業の参入という形で今後革新が進んでいく産業もかなりあるのではないかと、そういう展望を持っております。
 第2に、単に規制を緩和すればいいだけではなくて、新技術を活用できるような制度の枠組みというのをつくっていく必要があるのではないだろうかと。金融グループでも指摘されておりますが、例えば情報通信技術で電子マネーを利用するとしましても、ディジタル署名の認証に対する法的な枠組みがないとか、あるいはエレクトロニクスコマンスについては書類保存義務をどうするかとか。政府のサービスを電子化するにしても、やはり書類の問題をどうする、認証の問題をどうすると、こういった問題を解決しないと、情報技術が十分活用できないという状況になっております。
 それから税制等につきましても、やはり陳腐化がコンピュータ等、非常い早くなってきているわけですから、そういった税制等も技術革新に合わせて変えていくということが必要ではないかということになっております。
 それからコーディネーションという観点からは新しい社会インフラ整備というのも非常に重要になってきております。情報通信技術についてはやはり高速ディジタル通信網、それから教育の高度化ということで、新技術を活用できるような人材の育成というのをコーディネートする形でやっていくということが重要ではないだろうかという議論になっております。
 以上です。
(小林部会長) ありがとうございました。続きまして財政・社会保障ワーキンググループの報告をお願いいたします。
(井堀委員) 財政・社会保障のところは34ページからですけれども。メンバーは37ページにありますけれども、私を含めて5人で検討中です。
 それで今までの検討の大まかな視点については、次の38ページのところに図式化してありますけれども、問題意識としては、現時点での少子高齢化と、それから国民負担率の問題、それから社会保障制度における給付と負担のバランスの変化の問題を意識して、今後予想される財政構造改革、あるいは社会保障構造改革が行われたときに将来どうなるかという話と、それからどういった形でより望ましい財政なり社会保障制度を考えていったらいいかということを2010年を踏まえて検討してみようということです。
 その視点としては、その下に2つほど大きく書いてありますけれども、公平性と効率性の視点で考えるという、経済学の標準的な視点を使っています。特に今回の検討では、公平性の観点は主に世代間の受益・負担を通じた、世代という観点からの公平性を考えてみようということです。効率性に関しては経済全体のパフォーマンスと、それから財政・社会保障をどのくらい両立可能かという観点から考えてみようということです。
 それで今までの内容に関しては34ページ以降、簡単に紹介してあります。まず問題意識のところは先ほど図でも紹介しましたように、大きく分けて2つの検討テーマを考えています。1つが公平性のところと絡んでくるんですけれども、世代間の受益・負担構造が財政社会保障制度の結果として、これからどういう具合に変化していくかということ。これに関しては今後の高齢化・少子化社会の中でも財政構造改革、あるいは社会保障構造改革を前提にした場合に、そうでない場合に比べて、各世代別の受益・負担構造がどうなるかということに関しての実証的といいますか、定量的な分析をして、結果としてこうなるというある程度、具体的な予想に関する数字を出そうということです。
 それから2番目の長期的な経済パフォーマンスを阻害しない社会保障制度はどういうものかということに関しては、これは2010年を踏まえて長期的な経済的なパフォーマンスと、両立可能な社会保障制度というのは、どういうものが望ましいかということに関して、ある程度規範的な分析をしてみようということなんですけれども、ここに関してはいろいろな制約もありますので、定性的な分析にとどめて、いろいろな改革のいろいろな選択肢があり得ますけれども、それに関してもメリット、デメリットを整理して、こういった観点からの社会保障制度の考え方が望ましいのではないかということに関しての検討をしてみようということです。
 具体的にそれぞれもう少し紹介しておきますと、最初の世代会計による世代間の受益と負担に関しては、ここでは世代会計の手法によって、ある程度、世代間の受益・負担構造に関しての定量的な分析を行ってみようということをやっています。世代会計というのは34ページの下の方に少し書いてありますけれども、個人の生涯にわたる税とか社会保険料等を通じた政府への拠出と、それから社会保障給付等を通じた政府からの受け取りを世代別に測定して、その世代が生涯を通じて得たネットの受益・負担と受給の関係を世代別に比較してみようということです。
 これに関しては、今回は、この前、社会保障に関しては特に年金が中心ですけれども、世代会計に関しては経済企画庁の分析も含めて幾つかの定量的な議論、研究結果があるんですけれども。ワーキンググループでの新しい視点というのは、いわゆる構造改革への取り組みを前提としたときに、そうでない場合に比べて世代間でどのぐらいネットの受益・負担が違ってくるのかというのを、世代別に定量的に検討してみようということです。
 ただ、これがどのような政策的な意味を持つのかに関しては、委員の間でも必ずしも意見は一致しなくて、多少議論がまだ続いているところなんですけども。ここでは定量的な今までの中間的な試算に関しては報告していないんですけれども、大まかに言いますと、若い世代ほど受益構造がきつくなって、現在の高齢者の世代の人は、受益構造というのはどちらかと言うとプラスに出ているという感じになるわけです。 それが要するに世代間の不公平だという形で議論することに関しては、要するに時代によって、その人の世代に置かれている環境が違うので、要するに違う世代にとっての損得をそのまま不公平だという形で議論していいのかという議論もありますし、世代間を助け合いという観点からどういうふうに評価するかというのは、いろいろな議論があります。しかしながら、世代別に、その世代がどのぐらい政府からネットで負担なり受益を負っているかというのは、そういった不公平感の議論を別にしても、例えばその世代の人が生涯通じた消費行動に与える効果という観点でも、かなりマクロ的には大きな影響を与え得るわけですし、要するに若い世代と年とった世代の消費構造は違っていますので、そういう意味では世代に注目した形で、財政なり社会保障の与える効果というのを定量的に分析するというのは、不公平感以外の観点からも、ある程度有益な情報になるのではないかと思います。それでが1つの大きな検討テーマです。
 もう1つは35ページの(2)のところに書いてありますけれども、経済パフォーマンスを阻害しない社会保障制度のあり方についてということですが、ここのところは議論の途中で、これに関しても委員の中でどういった社会保障制度が経済的な、特にマクロなパフォーマンスを阻害しない制度なのかということに関しては、必ずしも意見はまだ収束していませんが、1つの大きな論点というのは、最初に書いてありますけど、いわゆる国民負担率という概念が、社会保障なり財政の1つの政府の大きさを示す指標として使われているわけですけれども、その国民負担率が大きくなるということが、マクロ的な経済パフォーマンスにどういう影響を与えるのかに関して、今までの立証、あるいは理論的ないろいろな研究を整理してみると、必ずしもはっきりした明確な因果関係は明らかになっていません。これはある意味では大雑把に社会保障なり財政の負担をくくって、それがマクロの経済パフォーマンスに与える影響という形で見ても、それほど有益な情報になりにくいのだろうという、そういう感じが議論の中で出てきました。
 例えば、そこでも少し書いてありますけれども、企業の投資計画とか、あるいは家計の労働供給に与える効果というのを見ても、社会保障給付あるいは負担が増えたからといって、それによって抑制されるかどうかに関しては、いわゆる代替効果、取得効果が相殺するというような議論もありまして、必ずしも実証的にも明確ではないわけです。その辺りはもう少し国民負担率という概念よりも、もう少し社会保障なり財政のマクロに与える効果を見る指標として、より望ましいものを少し考えてみて、そういった社会保障、あるいは給付あるいは負担が長期的な経済成長に与える影響について個別的、例えば労働供給とか資本蓄積に与える影響を分解して考えてみれば、ある程度のことは言えるのではないかという、そういうような議論になっています。
 ここのところに関しては、できればある程度の社会保障なり財政の量的な大きさが今後変化するわけですけれども、それが長期的なマクロの経済パフォーマンスに与える影響について、ある程度の定量的な分析もできれば行いたいと考えています。
 それから36ページのところで、もう少し各論に入りまして、社会保障制度で各論で議論したのは、【2】の公的年金制度と【3】の医療保険制度のこの2つなんですけれども、公的年金制度に関しては、現在の公的年金の制度を前提にすると、厚生省の試算でも将来の保険料率が2025年に34%に上がる、あるいは国民年金の保険料は、現在の2倍の2万 4,000円になるという、そういうような試算もあるわけです。これが長期的にかなりマクロの経済行動にも大きな影響を与えるだろうというのは当然予想するわけです。そうしますと給付と負担に関しては、ある程度の根本的な改革を行わざるを得ないということになると思います。
 そのときに給付と負担をどういった形で見直していくのかということに関して、1つは世代間の公平の視点というのは大きな視点になりますし、もう1つは経済全体が与えるパフォーマンスの観点からどういったものが望ましいかという、そういう視点が議論になると思います。
 ここでは賦課方式と積立方式の比較の話を、かなり時間をかけて検討してみたんですが、委員の中で必ずしも意見の一致はなくて、いわゆる賦課方式から積立方式へ移行する場合に出てくる二重の負担の問題に関して、これをどういう具合に、どのくらいコストとして考え、認識すべきかどうかに関しては意見はまだ収束していません。ここも含めて公的年金の将来のあるべき姿に関しては、いろいろな改革の案というのは出ていますけれども、それぞれのメリット、デメリットをもう少し整理してみたいと思います。
 それから医療保障制度についても、公的年金と同じように高齢化とともに、特に老人医療費の増大が見込まれているわけですけれども、これをどういう具合に考えるかに関しては、かなりむずかしいところもあるんですが、まわりから見ると中では効率化をして無駄を排除するというのは確かに重要な視点なんだけれども、それをどういう形でやるのかに関しては、なかなかただちにある改革をすることによって、効率的な医療制度が実現するというような単純な関係ではないだろうと考えられます。37ページのところに少し書いてありますけれども、供給サイドのコントロールというのが、いわゆるここでは公定価格や病床規制と書いていますけれども、医療のサービスの供給サイドをコントロールする方が需要サイドをコントロールするよりは、ここで言う需要サイドのコントロールというのは、その負担率を上げる、すなわち患者が病院に行く場合のコストを上げるという形でコントロールであり、それよりは医療を供給する方をコントロールした方が有効なのではないかという、そういうような意見が出ています。
 それで最後ですけれども、そういったところを踏まえて社会保障全体の、特に医療、年金、多少時間の関係でほとんど議論する機会がなかったんですけれども介護等も含めて、社会保障全体の各制度間での相互の調整、特に給付と負担との間の調整を十分にしていく必要もあるし、それから社会保障制度とほかの税制とか、あるいは住宅政策等との連携も図る必要があり、ここのところも今後どういった形でより効率的で公平な社会保障制度間での連携が可能かということに関してもワーキンググループの中で少し検討していただいております。
 最後に今後の課題のところで、簡単に書いてありますけど、以上のような問題認識で、基本的には社会保障給付と負担の構造、これは先程紹介しましたけれど、世代会計を念頭においてますが、それと経済パフォーマンスという、これはマクロの大きな長期的な数字と財政あるいは社会保障との関係ということですけれども、それについてできるところまで定量的、それ以外のところのについては定性的に検討していきたいと、そういう具合に考えています。
(小林部会長) ありがとうございました。
 これで各ワーキンググループの審議経過報告が終わったわけですが、事務局から各テーマの相互関連等について、ちょっと簡単にご説明をいただきたいと思います。
(事務局) それではただ今の38ページの次に資料ナンバー4ということで、各テーマの相互の関連等についてということで、ただいまの審議経過報告、前回の8つのワーキンググループの審議経過報告を踏まえて、相互関連の大きなマトリックスをとりあえずまとめたものです。実はこれは似たような紙を第2回の展望部会で、ワーキンググループの審議が始まっていない段階で一応ご提示をさせていただきましたけれども、この審議経過8つを踏まえて、もう一度up to dateしました。
 表のつくり方は線の中の各対角線のところは、ただいまの各ワーキンググループのご報告の主要な検討の柱を並べております。地球環境のところですと、3つプラス今後の検討課題ということで2つ並んでおります。以下、グローバリゼーション等からずっと全く同じでございます。この中に、他のワーキンググループとの関連ということで、その中から幾つかの主要な項目ということで取り出しております。地球環境でございますと、地球環境とグローバリゼーションということで国際協調、産業構造ですとまさに産業構造、技術というふうに右の方でご覧いただきたいと思います。例えばグローバリゼーションですと右の方の財政・社会保障というところに、先ほどの佐々波座長のお話にもありましたグローバリゼーションと社会保障・税制の関係というところに項目を立てております。
 それからもう1つこの表で、前回のこの似たようなマトリックスのときには、前に幾つかの星印とかありまして、動機づけという視点とか、異時点間、同時点間のトレードオフという視点が大変重要であるという幾人かの委員のご発言もあり、そういう視点で眺めてみたものですけれども、今後そういう視点ももちろん検討を続けると同時に、先ほどお話に出ました資料ナンバー2のこの仮の3つの方向性ということで、とりあえずこの表の中に、この3つの印をつけてみるとどういうふうになるのかなということをとりあえずつけさせていただいております。後ほどのご議論の中で3つの方向性、あるいは3つの視点という中で、またご意見を賜れればと思います。以上でございます。
(部会長) それでは、ちょっと時間が押しておりますけど、今、ご報告をいただいた各ワーキンググループの審議経過報告についてのご質問、ご意見、それから最初の方にこれからの取りまとめ方、この部会の方向性のたたき台、資料2でありますけれども、そういうことを含めてご意見をひとついただきたいと思います。とりまとめの方向については、必ずしも資料2に書いてあるところだけにとどまらないで、ご自由にご意見をいただきたいと思います。
(A委員) 産業構造のワーキンググループを担当している者として、地球環境問題についてご質問と印象を述べさせていただきたい。
 地球環境問題というのは、この産業構造を考える上で非常に悩ましいテーマであって、環境との整合性を保つことが大事だよというだけではマーケットが反応しないわけで、私たちが考える場合にはマーケットにどういう政策が入った場合に、どういうふうに反応するのかということを考えるべきだと思うんです。つまり、産業構造から考えますと地球環境問題というのはやはり外政変数が決まって、そこで内政変数が動くというふうな関係になるんだと思うんです。
 そういう意味でこのペーパーの10ページのところで、ディマンドサイド・マネジメントがこれから非常に重要だというふうにご指摘があったのは、まさにそのとおりであって。その場合にどういうふうな政策を導入することによって、このディマンドが反応するかということを考えていかざるを得ないと思うのですが。
 そこで1つ具体的に炭素税のことをどう考えたらいいのか。これは悩ましいテーマだと思います。導入するのかしないのか、するとしたらどの程度のことを考えればいいのか。これは私たちのワーキンググループで議論する場合に、その点の目安がないと困るなというのが1つあります。
 それから電力料金についていろいろ書かれていますけれど、確かにロード・マネジメントによって負荷率を平準化することは非常に重要だと思うのですが。その場合のポイントというのはピークロードプライシングを導入するかどうかだと思うんですね。日本の場合、負荷率というのは先進国の中でもっとも低いですし、特にイタリアと並んで高温多湿でございますから、非常に低いところにきています。それはいろいろな電力が今まで地域独占のシステムでございましたから、効率性でいろいろ問題がある点でございます。しかしながら、ピークロードプライシングというのは、いわゆるアカデミックなレベルではもう十分議論はされているんですけど、そこは現実になかなか導入できなかったんだと思うんです。それはおそらくピークロードプライシングを導入すれば、昼夜間で言えば昼間の料金は高くなるし、また季節でおいても夏の料金は高くなると、そういう意味で国の公共料金政策と密接に関連しているところがあり、そういう意味で、ディマンドサイド・マネジメントが重要だということは確かにそうなんですけど、むしろこういう地球環境問題との関係で、ピークロードプライシングがいかに重要かということを広く国民に理解を求めなければいけないと思うんですね。その精神がやや薄いなという感じが私にはしています。
 それから3番目でございますけれども、この地球環境問題を考える場合、ディマンドサイド・マネジメントは確かに重要でございますけれも、そこにとどまらずにおそらくサプライサイドのことも考えていかざるを得ないんだろうと思うんですね。
 今、日本の電力を考えた場合に、卸しの自由化が進みましたけれども、世界の大勢は小売り市場の自由化に移っていると思います。大口、小口がこざいますけれども、差し当たって日本だったら、大口電力の小売りの自由化ぐらいまでを展望しつつあるんだろうと思うのですが。それはどういう意味があるかと言いますと、結局、小売り市場の自由化まで進めば、電力料金は大口の業務用ぐらいまで含めて考えていいと思います。マーケットの中で価格が決まってくることになると思うんですね。それはある意味でピークロードプライシングをサポートすることになっていくんじゃないかと思います。ここでサプライサイドについて原子力のことに触れられていますけれども、それだけじゃなくて、やはり電力の供給システムをどういうふうに変えていったら、地球環境問題と整合的になるのだろうかということ。現在は日本の高コスト構造との関連で議論されていますけれども、やはりこの地球環境問題から見てもディマンドサイドだけじゃなくて、サプライサイドがどうあったらいいのかということも考えるべきじゃないかなというのが、若干の印象であります。以上です。
(部会長) ありがとうございました。先にご質問、ご意見いただいきたいと思います。
(C委員) この財政と社会保障の報告は、すごく手堅くてバランスがとれていると思うんですけれども、若干バランスがとれすぎているんじゃないかという感じがするところがあるので、3つぐらいコメントしたいと思います。
 1つは、主にこの経済パフォーマンスを阻害しない社会保障制度のあり方についてのところなんですが、社会保障が例えば労働供給というような家計の行動に影響を与える部分についてですけれども、これは社会保障が家計行動に影響を与える場合には多分、その給付が所得効果を持って、それから保険料の方が実行税率を変えるということで、所得効果と代替効果を両方持つと思うんですが、ここについて何とも言えないというような書き方になっていますけれども、多分、レイバーサプライについてはかなりスタイライズファクトがあって、いわゆる青年層の男性については所得効果も代替効果も非常に小さいからあまり税制も含めて影響を与えない。しかし、女性とか高齢者については、これは賃金効果もあるし、それから所得効果も非常に大きいので、ここのところにはかなりシグニフィニキャントな影響を与えるということは、少なくとも労働経済学者の間ではあまりもう論争の余地のないファクトになっていると思います。ただ、確かにここに書かれているような女性とか高齢者は、労働力としてはウエイトが低いので影響が少ないということであれば、そういう言い方は正しいかと思いますが、しかし、そういった種類の労働力のウエイトがこれから高まってくるということを考えると、高齢者や女性の一部を除き労働供給にも影響がなくというふうに書くのは、ちょっと書きすぎかなという感じがしました。それが1点です。
 それから2つ目は、積立方式と賦課方式、これは確かに議論が分かれているところですから非常にバランスをとって書かなければいけないんだろうと思うんですが、例えば積立方式にした場合の二重負担が2階部分に限ってみても 350兆円に達するというふうな記述があるわけですが、これはそのとおりだと思いますが、しかし、これはある面では上限というふうに考えた方がいいんじゃないかと思うんですね。つまり基礎年金の部分をどう考えるかですが、基礎年金をもう少し上げて、そこのところを賦課方式ないし税でやるという形にすれば、最大限 350兆円の二重負担は生じるけれども、この二重負担の部分はもう少し少なくすることもできるというようなニュアンスの方が、私は正しいのではないかと思います。
 もう1つは積立方式は、資本の蓄積に関してプラスであるということが書かれていて、これは全くそのとおりですが、それのみならず、やはり人口構造の変化に社会のシステムがあまり影響されないというところが、私は非常に重要ではないかと思いますので、そういうようなところも評価できるのではないかなと思います。ただ、ここはバランスが確かにむずかしいところだと思います。
 それから最後のところですけれども、年金と医療と介護の給付と負担の調整を十分にする、あるいはこういうものを総合的に見直すということは非常に大切だとは思いますが、総論的にはこういうふうに総合的に見直すとか調整を行うというのは、非常に説得的ですけれども、しかし、よく考えてみると、例えば年金と医療というのはそれぞれ別個の保険システムがあって、それは別々のリスクに対応しているわけです。例えば年金でしたら長寿のリスク、医療でしたら疾病が生じた場合のリスクに対応しているわけです。したがって調整とか総合的に考えることはすごく大切なんですけれども、元々違うリスクに対して違う制度があるわけですから、その調整とか総合化というのには限度があって、あるいは逆に言うと、これ無理に調整したり総合化したりすると、何だかわけがわからなくなってしまうという、逆に言うとリスクが生じるんじゃないかというふうに思います。以上です。
(D委員) 3点。第1点は冒頭、部会長代理が提起された3つの点、あれは非常に共感を覚えますので、ぜひともしっかりと点検してみてくださいという希望です。
 第2点は、地球環境の問題ですが、その報告にも2100年ぐらいまでの視点でということを指摘されましたが、極めてそういう長い視点というのは重要だと思います。2010年とか12年というのは、それで問題の終着点ではなくて、地球環境問題というのは21世紀以降ずっと続く問題でありまして、むしろ2010年とか12年というのは、これから何世紀にもわたって出てくる重要な問題に対して、どのくらい我々の社会が準備できるかという助走期間だと思います。
 それからその関連で、日本の産業にとって、先ほど炭素税の話も指摘がありましたが、地球環境問題というのは長期的に見た場合は、日本の産業にとって成長制約と言うよりも、新しい産業フロンティア、技術フロンティアのチャンスであるという感じがします。振り返ってみて公害問題が発生したときに、公害防止投資を強制された場合には資本係数が上がって、既存の産業にとっては大変コスト高になって競争力が落ちるという議論がありましたが、それは新しい公害関連の産業と技術というものが広がって、新しく追加された産業とか技術を全部加えた経済全体で言うと、やはり効率が上がって成長の光が生まれたということですか、そういう長い視点から点検してみていただきたいなと思います。
 最後の3点ですが、グローバル化に関してですが、制度調和のことをおっしゃいましたが、どの制度を、どの程度、どの分野で、どういう形で調整したらいいのかということなんだと思います。おそらくグローバル化の1つの基本的なところの現象、実態として、グローバルな市場経済化ということであって、市場経済における共通の、あるいはミニマムな条件とは何なのかということが1つのポイントかもしれません。
 その場合、この報告では、書いてあるかもしれませんが、先ほどの説明では伺えなかった情報の公開、これがある程度のミニマムスタンダードに対応していないと、市場の機能というものが問題になる。それはおそらく情報というのは市場における信号だと思うんですね。信号が正確な点滅をしない限り、経済主体の行動というものが狂ってしまう。最近の金融の問題ですが、インターバンクで機能が低下しているわけですね。それは相手の情報をプロである金融機関が信用しないわけです。なぜ、信用しないかというと、自分が出している情報が自分が信用しないということがあるんじゃないかと思います。マーケットに本当の情報というのがないと、要するに信号がともらないというのが問題であって、多少、要するにバブルのときには酔っぱらい運転の経済主体がいたかもしれませんが、信号も正確ではなかったということだと思います。情報というものが、いかに市場の機能という、グローバルな市場経済化ということを考えますと重要であって、日本における問題というのは、おそらくごく最近の金融の問題に端的に表れていると思います。それで開示する情報が少ない、少ない開示情報がグローバルにも信用されないというところが、ジャパンプレミアムの根本原因ではないかと思いますし、その情報の問題というものと、グローバル化というものを少し重ねて議論していただけたらなという感じいたします。以上です。
(部会長) ワーキンググループにご質問がありましたの、それぞれちょっとポイントだけご返事をいただきたい思います。その前にE委員どうぞ。
(E委員) 簡単にさせていただきます。一つはグローバリゼーションの関係なんですけれども、企画庁の経済白書を分析してましたように、生産性格差、重層構造というあの問題と技術革新のところで分析された問題は非常に関係があると思うのですが、特に非製造業の技術水準が低く、今、実はそこで大変な事態が起こっているわけでありますが、要するに一国全体というよりも、部門別の調整がどうなるのかというイメージがひとつぜひほしいなという感じがします。そして調整した場合に、その全体の結果が、グローバリゼーションの場合、国内の価格で調整するのか、それとも為替レートで調整するのか、それから生産性が上昇した場合、どういう形でもってそれが結果として表れてくるかで、雇用とか賃金に非常に大きな影響があるわけですね。その辺のイメージをいただけるというか、何かその方向、今、為替レートは円高にした方がいいとう方向で動いているようですけれども、何が本当にいいのかというのをちょっとわからないという点が1つあります。
 それからついでにその生産性との関係で申し上げさせていただきますと、先ほど国民負担率の報告にありましたけれども、政府部門が生産性が高ければ国民負担率が高い方が一国としては生産性がよくなるんじゃないか、又、政府部門、生産性が低いと、国民負担率高くなると一国の生産性低くなると、こういうことじゃないかなというふうに思うわけでありまして。今、民営化した方が大体生産性が高いという意見の方が多いわけなので、この辺パブリックセクターの生産性測定という、いろいろ測定の方法があるかと思いますが、この点が1つ重要な鍵かなと。生産性に係わる問題と、グローバリゼーションに係わる問題です。
 もう1つは後代負担の問題、世代間負担、年金も絡んでの問題でありますが、今まで後代につけを残すなということで土光さん以来、ずっとやってまいったわけですけれども、残さざるを得ない状況であります。最近、我々の年代の方と話をしますと、「いや、俺たちは何もないところからこれだけの日本をつくってきたんだ。それなのにもっといじめるのか。」というふうな話がよくあるわけです。それに乗かってしまうというのは非常に安易なんですけれども、いわばおやじが家をつくって子供にローンが幾らか残ったと、こういうことになるだろうと思うんです。それがおやじが勝手に、住みにくい自分の好きな家をつくって子供にローンを残したのか、それとももう少しいい子供が喜ぶような家をつくって残したのか、一体 3,000万がローンで、そのうち幾らが残っているのかと。こういう問題が世代間の納得性というと、非常に重要じゃないかなという感じがするんですね。こういう例えて申し上げたので、単純な形になりましたけれど、そうした一番基本的なところの国民にわかりやすい論議がどこか必要かなという感じがしますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
(部会長) 一応、ちょっとご質問その他ここで切らせていただいて。深海委員、それから佐々波委員、それから井堀委員のところで、一応ご質問に対するご回答をお願いいたします。
(深海委員) 大変ありがたいコメントをいただきまして、おっしゃるとおりだというふうに思うのですが、実は1つの問題は一体各ワーキンググループで、何を検討すべきなのかというこの点が1つの大きなポイントです。非常に総括的、全体的にやれればそれはいいわけですが ・・・
 それでは、具体的にお返事した方がいいと思います。21ページのところに私どものワーキンググループの考え方全体を取り上げたフローチャートと申しますか、相互関連の図がございます。それで私ども、まさにA委員がおっしゃったとおり、まず一番ベースにあります制度的推進手段ということで経済的措置、税と書いてございますように、まずそれが基本だと認識しております。しかし、それはそうなんだけど、2010年までのタイムフレームの中で、ここの経済社会展望ということで考えてみると、一応例えば合同会議その他である種の方向が出されており、これに積み増したり、あるいはこれを促進するというような意味で、そこに取り上げました技術的な意味でどれぐらい習熟し、あるいは普及で伸びていくのか、あるいはそのための補助手段とか、それでどれくらい具体化できるのか、それから社会システムインフラで、まさにおっしゃったとおり、本当にあるべきことは、そういう下にございます私どもが検討したものじゃなくて、エネルギー供給システムのことで、おっしゃったとおり、電力の発電だけではなく、送配電あるいは小売りの自由化等々ということは大変重要、あるいはロードプライシングも重要だということはそのとおりだと思います。それで私どもやりましたのは、そういう全体のフレーム枠の中でピックアップ方式により、できそうで、かつそういう合同委員や具体的な提案でない部分で、若干そういうことが積み増すとしたらどうなるのか。それからもう1つD委員から話がございましたように、実はマクロモデルで、そういうCO2制約を課したときに、2010年だけでなくて2021年という、企画庁のモデルだとそうなんですが、それでどうかというその一応試算をした結果もあるのですが、それによれば確かに調整ができて、むしろ2010年以降は非常に、調整後のプラス効果というようなことも確認されているわけでございまして。
 従いまして、今、言われたことについて私どもでお答えするとすると、ワーキンググループの性格がどうなのか、それから先ほど言いました電力料金の体系とかその他いろいろ炭素税も含めて、これはまたよそのいろいろな審議会でも議論されている問題でありまして、どの辺りを、どういうふうにやるべきなのかというところが、あまりよく理解できていないで、私どもが集中したのが2010年を展望するということ。その際に少しでも具体的にそういうCO2削減等々という意味でつけ加えられるべきものがあれば、それを具体的に検討してみようという趣旨であったわけでございます。
 もし、ワーキンググループがもっと違った意味で総合的、かつそういう主要な問題について、個人的には炭素税絶対必要と思っているわけですが、そういう検討をここでやって、ワーキンググループとしてどれだけの結論を出すべきかということについては、ぜひこの親委員会でご示唆いただければ、それに応じてやっていきたいと思っております。
 今、言われたような点について、私どもは無視しているわけではなくて、それは大変重要だということで、ここのフローチャートの中でも重要な問題としてやっていると。その中で網をかけたものだけを部分的に今まで検討し、その結果を報告させていただいたということでございます。
(小林部会長) 佐々波委員、どうぞ。
(佐々波委員) どうもありがとうございました、いろいろなコメントをいただいて。
 ただいま各テーマの相互関連についてという表をいただいたので、かねがねいわゆる為替レート、いわゆる価格というのをグローバリゼーションの中でどういうふうに考えるのか。それからそれは金融の問題、どいうふうに取り扱っていいのかという議論もしたので、ぜひこういった側面はつけ加えさせていただきたいというふうに思っております。というのは為替レートの話は情報の話とも噛むんですけれども、その為替レートが変わったときに、先ほど部門間にどういう影響があるのかとご質問がありましたが、通常、貿易財については影響を受けるんですけれども、非貿易財については、いわゆる内外価格差の調整が行われないというのは通常教科書的な言い方なんですけれど。ただ、今度の分析では、企業の移動も含めておりますので、企業の移動も含めるということは、従来、非貿易財というふうに言われていたサービスも含めての、いわゆる調整が行われるだろうというふうに考えることもできるかと思いますので、そういった側面を入れて、今後進めたいというふうに思います。以上でございます。
(部会長) ありがとうございました。井堀さん、どうぞ。
(井堀委員) どうもありがとうございました。バランスがとれすぎているというのは確かに問題ですが、多くのところは、特に公平性に関するところというのは委員の間の価値判断がかなり違っていまして。委員間でのバランスがとれすぎているのが、結果としては反映されているんだろうと思うんですが。もちろん今後の課題として、もう少しわかりやすい形で将来を展望する必要があるということも重要ですので、なるべく議論を、強引にまとめることはむずかしいと思いますけれども、ある程度の方向性を持つような形で議論を進展させていければと思います。
(部会長) ありがとうございました。
 皆さんのご意見を伺う時間は短くなりましたので、まだまだご意見を伺いたいと思のですが、今日はちょっと時間のこともありまして、ここで打ち切りさせていただいきます。
 1つは最初に資料2で部会長代理の方からお話のあった、この3つの視点というのは、基本的には先ほど深海さんがおっしゃったワーキンググループとして結果的に何を目指すかということ絡んでの1つのガイドラインと言っては変だけど、この部会としての方向をこういう形で考えて、さらにもう少し加えることがあれば、これもまたぜひご意見をいただきたいと思います。
 それからこれは私の個人的な意見ですけど、実はA委員がおっしゃった例えば環境の問題に絡んで、環境とまさに持続的成長とのバランスどうするかとか、財政・社会保障と、このバランスの問題も、何か1つはかなり割り切れば、経済成長が 3.5なのか3.25なのか 3.0なのか 2.5なのかという話よりも、例えばここに出ているかなりこういう定性的なところをきちんともう押さえるんだということが、何と言っても優先的に大切な訳でありまして、極論を言えば、これはちょっと手を抜けば 3.5だけれども、がっちりやったら 3.0といったら、価値判断としては後者の方が高いんだというふうに、むしろそういう態度をとるかとらないかという辺りがどうもこれからの展望ということでは少し問われているんじゃないかという気がする。これはむしろ今日結論を出すということでなく、その辺もひとつご議論いただいて、この部会としての方向はきちんとしなければいけないではないかと思います。
 特に今の経済審議会としてのこの展望部会として、やはり問われているかなり大きな姿勢と言っては変ですが、アウトプットの質的なところというのは、その辺を少し議論しないといけないのかなと思います。ぜひ、そういうことを踏まえてご意見をいただきたい。また、さらにワーキンググループに注文出すみたいで恐縮ですが、当然そういう議論していらっしゃるわけですが、委員の中で少し意見が分かれることに加えて、個々の実は議論していただいているテーマについては、例えばこれは2010年までの間でも、かなりその中でも早めに仕上げなければいけないこととか、環境のようにこれを超えて2100年等、この辺のやはり長短というか時間軸の関係についてもできればある程度のところを見当をつけていただくと、かなり動きが出てくるというか、アクセントが出てくるんじゃないかという気もしますので、この辺に加えてこれからの検討に反映させていただきたいと思います。
 それじゃ少し大急ぎになりますが、次回以降の日程についてひとつ事務局からご説明をお願いします。
(事務局) お手元の資料の最後に1枚紙でつけてございます資料6でございますけれども、当部会の今後のスケジュールといたしまして、年明け後、2月になりますけれども、2月10日午前10時から12時まで、この部屋で第6回の部会の開催を予定しています。それから第7回目は2月26日に同じく午前10時から12時まで、この部屋でというふうに予定しております。3月以降の日程につきましては事務的に調整させていただきたいと思います。
 それから先ほど部会長からのお話にもございましたけれども、各ワーキンググループの審議経過報告につきましても、それから資料でお配りしております取りまとめの方向性、両方につきましてご意見等があれば後日メモで事務局までお提出いただきたいというふうに考えております。
 また、特に取りまとめの方向性の部分につきましては、必要に応じ、事務局がおうかがいしてご意見を賜るということも考えてございますので、よろしくお願いしたいと思います。以上でございます。
(部会長) ありがとうございました。
それではちょっとオーバーをいたしましたけれども、第5回の部会をこれで終わらせていただきます。長時間、本当にありがとうございました。

―以上―