経済審議会第2回経済社会展望部会議事概要

1.日時:

平成9年12月18日(木)10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3.出席者:

小林陽太郎部会長、香西泰部会長代理、井堀利宏、角道謙一、川勝堅二、小島明、佐々波楊子、下村満子、清家篤、鶴田俊正、長岡貞男、奈良久彌、成瀬健生、濱田康行、深海博明、村本孜の各委員。
中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、大森計画官、染川計画官、田坂計画官、赤井計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官、福島推進室長 他。

4.議題:

  1. 経済審議会総会について
  2. 各ワーキンググループ(土地・住宅、地球環境、グローバリゼーション、技術革新、財政・社会保障)の審議経過報告

5.審議内容:

【1】香西部会長代理より、今月10日に開催された経済審議会総会について報告。報告の中で、香西部会長代理が経済社会展望部会報告の取りまとめの方向性について資料2で掲げた考え方を個人的な意見として述べたとの発言があった。また、かかる考え方が今後の当部会におけるたたき台になるかどうかも含めて、今後ご審議いいただきたいとの発言があった。

【2】各ワーキンググループ(土地・住宅、地球環境、グローバリゼーション、技術革新、財政・社会保障)の座長より、審議経過の報告。

【3】貞広審議官より、資料4について説明。その後討議。

 各ワーキンググループの審議経過報告案に対する委員からの主な意見は以下のとおり。

【全般について】

〇経済社会展望部会報告の取りまとめの方向性に係る3つの視点については賛成。

【土地・住宅】

〇 土地の価格形成の基本が収益還元法に戻るだろうということはわかるが、問題はそれが何を意味しているかということ。つまり、今の土地の価格はほぼバブル前の水準まで下落しているが、バブルの前でも収益還元では説明できなかったわけだから、地価はまだまだ下がるということなのか。そうであれば、土地流動化政策というのは景気対策としてはほとんど効果がないということになってしまうのか。地価がどのくらいの水準に落ち着くのかインプリケーションをだすことも重要。

〇 不良資産の処理について、都市計画上ここが有用な土地だからということで公的資金を注ぎ込むというのであれば理解できるが、今その土地を銀行が持っていて不良資産になっているところだから公的資金を注ぎ込むというのはどうか。それは、不良資産対策としてすべきことなのか。それだったら、むしろ、デフォルト(破産手続)にして、民間の市場メカニズムを使って、土地の潜在的価値を引き出した方がすっきりするがどうか。そうした議論も必要。

〇 地価を公的な第三者委員会で評価するとしているが、どうして民間が評価したり、不動産鑑定士を雇って鑑定したりするのでは不都合なのか。

〇 今後の土地利用が、キャピタルゲイン期待から土地の利用価値に基づくものに転換していくということだが、この際土地税制も含めた政策の役割というものを何も考えなくてもいいのか。

【地球環境】

〇 資料3中10pに書かれているDSMが重要という指摘はまさにその通りだが、その場合、どのような政策が導入されれば、ディマンドが反応するかを考えねばならない。例えば、炭素税のことをどう考えればいいのか。導入するのかしないのか、するとすれば、どの程度のことを考えればいいのか。その点の目安が欲しい。

〇 電力料金について、ロードマネジメントによって負荷率を平準化する場合のポイントは、ピークロードプライシングを導入するかどうかということ。ピークロードプライシングは、アカデミックなレベルで議論はされているが、現実ではなかな導入できないでいる。ピークロードプライシングが重要ということをもっと国民に知らせるべきではないか。

〇 地球環境問題を考えるに当たっては長期間に及ぶ視点で検討することが重要。2010年とか2020年は、今後生じるであろう問題に対して我が社会がどれくらい準備できるかという助走期間。日本の産業にとって、地球環境問題というのは長期的にみれば、成長制約というよりむしろ新しい産業フロンティア、技術フロンティアのチャンスになりうる。

【財政・社会保障】

〇 積立方式と賦課方式というのは議論がわかれているところであり、バランスをとって書かれなければならないが、本審議経過報告はバランスがとれすぎている感じする。例えば、積立方式にした場合の二重負担が二階部分に限ってみても350兆円に達するというような記述(資料3 36p)があるが、この値は上限と考えた方がいい。すなわち、基礎年金をもう少し上げて、そこのところを賦課方式乃至税でやるということにすれば二重負担は生じるけれど、350兆円という額は少なくすることもできるのではないか。

 また、積み立て方式は資本の蓄積に対してプラスであると書かれているが、それのみならず人口構造の変化の影響を受けないというところが非常に重要なところであり、評価されるべきと思われる。

〇 年金、医療及び介護を総合的に見直すことが大切と書いているが、年金と医療はそれぞれ別個の保険システムがあってそれぞれ別々のリスクに対応しているもの。調整等総合的に考えるのは大事だが、本来違うリスクに対して違う制度があるのだから、これを調整、総合するには無理があるのではないか。

【グローバリゼーション】

〇 グローバル化の基本的現象は、グローバルな市場経済化ということであって、市場経済における共通の条件、ミニマムスタンダードは何かということがポイント。そこで審議経過報告では触れていなかったが、情報の公開がミニマムスタンダードに対応しているということが重要。情報は市場における一つの信号であり、信号が正常な点滅をしない限り経済主体の市場における行動に問題が生じる。そうしたことは日本の金融問題に端的に現れており、開示情報が少ない、あるいは少ない開示情報がグローバルに信用されないというのがジャパンプレミアムの原因となっている。情報の問題とグローバル化を重ねて議論すべき。

〇 経済白書で分析していた生産性格差(いわゆる重層構造)について、一国全体というより部門別の調整がどうなるのかというイメージが欲しい。調整する場合、国内の価格で調整するのか、それとも為替レートで調整するのか。また、生産性が上昇した場合どういう形でそれが結果としてあらわれてくるのか、雇用とか賃金に影響があるのか。その辺のイメージを示すべき。

6.今後のスケジュール

次回第6回経済社会展望部会は来年2月10日の午前10時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。

(連絡先)経済企画庁総合計画局計画企画官付
(担当)道上、丹野
TEL 03-3581-0977(直通)