経済審議会経済社会展望部会(第3回)

議事録

日時:平成9年10月8日(水)10:00~12:00
場所:共用第一特別会議室(1212号室)


議事次第

  1. 開会
  2. 経済企画庁長官挨拶
  3. 経済企画政務次官挨拶
  4. 検討テーマと関連する既存研究について
  5. 閉会

(配布資料)

  1. 資料1 経済社会展望部会委員名簿
  2. 資料2 ワーキンググループ構成員名簿
  3. 資料3 検討テーマと関連する既存研究

経済審議会経済社会展望部会委員名簿

  部会長 小林 陽太郎     富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理 香西 泰 (社)日本経済研究センター会長
委員 稲葉 興作       日本商工会議所会頭
                  石川島播磨重工業(株)代表取締役会長
      井堀 利宏     東京大学大学院経済研究科・経済学部教授
      岩田 一政     東京大学教養学部教授
      角道 謙一     農林中央金庫理事長
      川勝 堅二 (株)三和銀行相談役
      黒田 晁生     明治大学政治経済学部教授
                 日本経済研究センター主任研究員
      小島 明     (株)日本経済新聞社論説主幹
      小長 啓一     アラビア石油(株)取締役社長
      小林 佳子    (株)博報堂キャプコ取締役
      佐々波 楊 子     慶応義塾大学経済学部教授
      下村 満 子     (財)東京顕微鏡院理事長
      清家  篤     慶応義塾大学商学部教授
      中井 検 裕     東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授
      長岡  實     東京証券取引所正会員協会顧問
                  日本たばこ産業(株)顧問
      奈良 久 彌     (株)三菱総合研究所取締役会長
      成瀬 健 生   日本経営者団体連盟常務理事
      濱田 康 行     北海道大学経済学部教授
      原 五 月     日本労働組合総連合会副会長
      ロバート・アラン・フェルドマン ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社東京支店マネジング・ディレクター
      深海 博明     慶応義塾大学経済学部教授
      福井 俊彦     日本銀行副総裁
      村田 良平     (株)三和銀行特別顧問
      八代 尚宏     上智大学外国語学部国際関係研究所教授
      吉井  毅     新日本製鐵(株)代表取締役副社長
      吉川  洋     東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
      鷲尾 悦也     日本労働組合総連合会会長
                  ( 一部委員予定者を含む)


〔 香西部会長代理 〕 おはようございます。
 ただいまから第3回の経済社会展望部会を開催させていただきたいと存じます。
 本日は、委員の皆様方にはご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日、小林部会長が所用のためご欠席でございますので、私が代わりまして進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 議題に入ります前に、尾身大臣、栗本政務次官よりご挨拶をいただきたいと存じます。


〔 尾身経済企画庁長官 〕 この度、経済企画庁長官を拝命いたしました尾身幸次でございます。
 今日は、実は予算委員会の予定でございましたが、予算委員会が流れましたので、ここに出席させていただいてご挨拶をさせていただきたいと思いまして参上いたしました。 現在の我が国の景気動向は極めて微妙な状況にございまして、そういう中で、ご存じのとおり財政が非常に厳しい状況でありますので、いわゆる財政出動を伴う景気対策が非常に難しい状況にございます。
 そこで私どもとしては、日本経済をしっかりとした成長軌道に乗せていくために、規制緩和とか、あるいは土地流動化対策とか、税制の問題とか、そういういろいろな手を打って立体的、総合的にやっていかなければならないと考えております。
 そういう中で、私自身、経済企画庁の果たすべき役割が大変大事なものだと思っておりまして、どういう対策をもって現在の日本経済の状態を正常化していくかということについて、日夜考えたり、皆様のご意見を伺ったりしているところでございます。
 経済企画庁もつい10日ほど前からインターネットとファックスで、規制緩和についての意見を求めておりまして、いろいろな事業の現場におられる方々、あるいは生活をしておられる国民の皆様の規制緩和についてのご要望を承りまして、これからの対策の中に入れ込んでいきたいと考えている次第でございます。
今日は、経済社会展望部会ということでございまして、やや長期的な展望についての皆様方のご意見を伺う会というふうに承知しておりますけれども、しかし、現在の日本経済の状況が大変難しい状況にございますので、私自身といたしましては、そういう長期展望も踏まえながら、現在、私どもが何をすべきか、政府が何をすべきかということにつきましてもご意見を承らせていただきながら、長期展望についてのお考えをいただければ大変ありがたいと思う次第でございます。
私、今日、他のスケジュールも入っておりますので全部の時間を出席できませんが、時間がきましたらちょっと中座させていただきますが、また参りまして皆様のご意見を伺わせていただいて、近々私どもが考えております「まとめ」の中に、できるだけ皆様のご意見も踏まえた上でしっかりとした「まとめ」を作っていきたいと考えている次第でございますので、どうぞひとつよろしくお願い申し上げる次第でございます。
一言ご挨拶をさせていただいた次第でございますが、今後とも、経済企画庁の施策につきましていろいろなご協力をいただきますよう心からお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
それでは、政務次官よりお願いいたします。


〔 栗本政務次官 〕 この度、経済企画政務次官を拝命いたしました栗本慎一郎でございます。
 現在、行政改革及び構造改革の推進が本当に焦眉の課題になってきていると思っております。活力に満ちた日本経済を築くために、尾身大臣は専門家でございますが、私も補佐申し上げて頑張っていきたいと思っております。
 さて、本部会の皆様方は、新しいすばらしい船の計画、あるいは設計をされているというふうになると思います。私が非常に心配しておりますのは、その船が宇宙戦艦であると格好がいいのですけれども、実際にはフェリーボートのように、多くのまだ艀で港に着いていない人たちをも含めて乗せていかなければならない、そういう船であるべきだ。そのところの設計も非常に必要なのだというふうに思っております。その辺りををもう少しお示しいただけるといいのではないか。何しろ、昨日、あの程度の月例報告、本当に微妙な後退といいますか保留をしただけで、それだけで直結しておりませんけれども株価が 300円下がりました。今、実際に、学者としてではなく、ドブ板を踏んで商店街、工業の方々のところを直接歩いておりますと、その厳しさが身にしみます。まだら模様と私どもは表現しておりますけれども、まだらは見かけでありまして切込みがどうなるのか、白と黒だけではないということで、それの評価は頑張ればいいじゃないかということになりますが、次の船に乗れなければいけない、誰が乗って行くのだ、どういう形で乗れるかということを含めてのご設計を是非とも賜りますようにお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
大臣及び政務次官から大変核心を突いたお話を承ることができまして、この部会としても頑張っていきたいと思っております。
それでは、議題に入ります前に、前回の部会で部会長にご一任いただきましたワーキンググループのメンバーの件でございますけれども、お手元の資料2に「ワーキンググループ構成員メモ」が入っておりますが、資料2のように小林部会長よりご指名がございましたので、その点をご報告させていただきます。どうぞよろしくご了承をお願いいたします。
 また、各ワーキンググループの座長につきましては、もともとこの部会の委員でいらっしゃいます先生方も入っておりますが、新しくワーキンググループの座長になられた方につきましては、今後、展望部会の部会委員としてご出席をいただくということにお願いしたいと存じておりますので、この点もよろしくお願いいたします。
 それでは、各ワーキンググループのメンバーの紹介、引き続きまして本日の議題について事務局よりご説明をお願いいたします。


〔 事務局 〕 それでは、今、ご覧いただいております資料2で簡単に9つのワーキンググループの委員の先生方をご紹介させていただきます。
 まず、地球環境ワーキンググループは座長を深海先生にお願いいたしまして、他3名の方にご参加を賜っております。
 グローバリゼーションは、佐々波座長他5名でございます。
 産業構造ワーキンググループは、鶴田座長他5名でございます。
 技術革新ワーキンググループは、長岡座長本当5名でございます。
 それから、経済主体役割部会とジョイントで行います雇用・労働ワーキンググループに関しましては、樋口座長他6名の先生方にお願いいたしております。
 財政・社会保障につきましては、井堀座長他4名ということでお願いいたしております。
 3ページにまいりまして、金融ワーキンググループにつきましては、岩田座長他4名でございます。
 土地・住宅ワーキンググループは、村本座長他4名でございます。
 ライフスタイル・ワーキンググループは、井原座長他4名でございます。
 以上、9つのワーキンググループの座長を順次ご紹介させていただきました。
 引き続きまして資料3ー1、3ー2で、前回の部会で積み残しました地球環境を含む5つの項目について簡単に検討テーマ、既存のデータ等をご紹介させていただきます。
 資料3ー1が文章編でございまして、それに付随したデータ、資料等が資料3ー2でございます。
 まず最初に文章編の1ページをお開きいただきますと、1.地球環境、(問題の所在)というのが1ページから2ページに書いてございますけれども、これに関しては、前回の部会、あるいは前々回の部会で既にお諮りしました主要な項目を書いております。特段目新しいところはございませんので省略させていただきます。
 2ページにまいりまして、これらの問題意識を踏まえて(各テーマ及び既存研究)でございますが、1.は、地球温暖化問題への対応の必要性ということで、小さな項目が5つありますけれども、これはべつに深堀りをするということではございませんで、一応確認事項ということが1 から5 まで書いてございます。
 2.温室効果ガス排出の現状と見通しということで、現在のトレンドが続けばどうなるのかというようなポイントでございます。これに関してましては3ページで2つほどデータをご紹介させていただいております。【我が国】というところで中央環境審議会のデータと通商産業省のデータがございます。
 資料編の1ページをお開きいただきたいと思います。図表1ー1は中央環境審議会のデータでございます。95年からスタートして一番高いというもので23.5% というのが「新技術の普及が進まないケース」ということでございまして、この場合には90年比23.5%まで上昇するということです。ちなみにこの試算は成長率は2 %強、 2.3%を想定したものでございます。
その下に 5.6% というのがございますけれども、これは「経済主体が最も安い技術を選択するケース」ということでございます。具体的な技術の中身は後ほど図表で紹介させていただきます。経済主体が最も安い技術を選択するケースということで 5.6%まで落ちてくる。それでも90年より6%増えるというのがトレンドケースということであります。
 それに比して図表1ー2、通商産業省のデータでございますけれども、95年実績が 388、3 億8,800 万klという数字がございますけれども、ここから試算1、試算2、これは成長率によって少し変わりますけれども、高い方が 463、4億 6,300万kl、低い方の 453、4 億5,300 万klこれは成長率 1.9%ということで2%前後の成長率でございますと4億 5,000万klから4億 6,000万klというような数字になっているということであります。
ちなみに90年1人当たりのレベルで安定化させた場合。これは人口等の関係で2010年、 4億1,300 万klとか 4億2,300 万klということになっております。
ちなみに、先般、政府案として提示いたしました基準削減率5%、これに90年のパフォーマンス、GDP当たりの排出量とか1人当たりの排出量を考慮すると、この5%という基準削減率が 2.5%になるという案が提示されております。この 2.5%からさらにCO2 以外のメタンなどが 0.5%ぐらい削減できるだろうということを勘案しますと2%減というような計算になります。さらに柔軟枠というのを考慮しますと90年レベルで横這い、0%、プラスマイナスゼロという数字になりますけれども、通商産業省の下の表でご覧いただきますと大体総量が3億 9,000万ぐらいで横這いということでございますので、単純トレンドから比べて約 5,000から 6,000万klの省エネをする必要があるというインプリケーションでございます。
文章編にお戻りいただきまして3ページの3つ目のサブテーマ3.地球温暖化問題への対応策を考えるための枠組みということももう1回確認してみたいということでここに書いております。
 4ページにまいりまして、最も重要なポイントの1つは、4.地球温暖化問題に係る対策技術の展望でございます。こういう技術のフィージビリティーをどう見るかということで意見がずいぶん分かれているようでございますけれども、ここでもいくつか既存のリサーチをご紹介したいと思います。
 1つ目は(参考)既存研究の概要の2つ目、中央環境審議会第43回発表資料ということでございますけれども、図表編の1ページに返っていただきまして、図表1ー1、先ほど、トレンドケースですと23.5、あるいは経済主体が最も安い技術を選択する場合には 5.6% というふう申し上げましたけれども、さらにいろいろな対策をとった場合にはー 1.5% 、あるいは強い対策をとった場合にはー 7.6% というような数字になるという展望が出ております。なお、技術に関しては図表編の3ページで、今の削減の率に対応した技術のマトリックスが載っておりまして、図表1ー4 図表1ー1に関する技術的前提ということで、一番左が現在導入されている技術を用いた場合、これがCO2 の伸び率にして23.5%ということです。最後から2つ目、この技術か導入されるとCO2 の減少率がー 1.5% 、一番右が 7.6% という率でございます。
3ページの図表1ー5はWWFによる試算の結果と技術的前提ということで、ここでは上の技術の想定の2つ目に加えてさらにアデッショナルな技術、待機電力等々の技術が導入されるという前提の下で試算をしますと、一番右のー14.8というところまで落ちるという試算もございます。
文章編に返りまして、4ページの5.政策措置のオプションということで、炭素税等の評価。これにら関してもさらにご議論を賜りたいと考えております。
 文章編の5ページの6.CO2 削減政策の経済的評価ということでいくつかのポイントがあろうかと思います。1つは、既存研究において示されるCO2 排出安定化に必要な炭素税率がどのぐらいになるのかとか、経済の影響はどのようなものかということをさらにワーキンググループでご検討を賜るとか、エネルギー価格上昇による我が国の各部門における省エネ効果をどう見るかこと等に関してもさらにご検討を賜りたいと思います。
 その関係で図表編の4ページ以降、これまでのいくつかの数量モデルによる試算をご紹介させていただきたいと思います。
 我が国でもいくつかの研究がございますけれども、図表1ー6 95年時点で炭素税を導入した場合どうなるか。横軸が炭素税の税率、縦軸が成長率の低下ということで、けっこう開きがございまして、ほとんど成長率に影響がないというところから、成長率 0.5、これは実は90年レベルで一定という前提ではじいておりますけれども、 0.5%ぐらいまでというふうにかなり開きがございます。
図表編の5ページにまいりまして、これは外国の研究でございますけれども、データ・リソース・インスティチュートの研究によりますと、短期的、中期的には経済成長にネガティブにインパクト、しかしながらその後はむしろプラスの影響が出てくる、というような試算等もあるようでございます。
 文章編の7ページにまいりまして、以上の各検討項目に加えること、第1回の展望部会でB委員からもお話がありましたように、経済構造改革と環境問題のトレード・オフをどのように考えるかということ等も視野に入れて8.ワーキンググループの主要論点ということで、以上の点を踏まえて若干くり返しになりますけれども、経済へのマイナスの影響の度合いをどう考えるか。マクロ的に見るとそれほど大きくないというご意見がある一方、産業面、あるいはミクロ的に見ると非常に大きいという、このギャップをどう見るかという話と、経済的インセンティブの有効性、省エネ、省CO2 技術開発の実行可能性、国際協力のあり方等に関して、さらにワーキンググループでご検討賜ればと思っております。
 文章編の8ページにまいりまして、2.財政・社会保障でございます。
 前回と前々回で提示させていただきましたように、これに関しては大きく2つのテーマに関してアプローチしてみたい。1つは構造改革後の世代会計。世代間の負担と給付のバランスがどのようになるか、あるいはインバランスがどうなるのかという問題と、経済のシステム、このシステムというのは福祉社会、あるいは社会保障制度の在り方というような切り口でワーキンググループでご検討を賜ればと思っております。
 8ページから9ページに関しては、世代会計に関してのいくつかの研究をご紹介させていただいておりますけれども、文章編10ページまでまいりまして、これまでのいろいろな研究、この研究は現在の制度を前提にすればというのが主な前提であったように理解しておりますけれども、これに対して今回は財政構造改革後、あるいは経済構造改革後の世代間の給付と負担のバランスがどうなるのかということをご検討賜ればと思っております。
 併せて文章編の10ページの真ん中あたりにございますけれども、財政とは直接関係ありませんけれども、私的移転、遺産、扶養、教育、住宅等の世代間の私的移転ということを少し掘り下げていただいたらありがたいと思っております。
文章編の11ページにまいりまして、このワーキンググループでの2つ目の大きな検討項目ということで、福祉社会と経済との関係ということでございます。ここはいくつかのサブテーマがありますけれども、1つは少子・高齢化が経済社会に与える影響ということで3つの切り口。扶養負担、経済成長に絡む生産性、貯蓄率の話、財政ということに関してどのように影響を与えるのかということをさらにご検討賜ればと思っております。
 扶養負担につきましては、資料編の最近のご研究、現在のトレンドが続けば37%ぐらいまで厚生年金の保険料率が上がるというご研究がございます。
平成7年度の年次経済報告によりますと、高齢化に対する悲観論、楽観論を分けるのは労働生産性の上昇をどう見るのかということが1つのポイントになるのではないかというような研究があるようでございます。
 文章編12ページにまいりまして、成長率に関連したポイントの貯蓄率に関してはさまざまなご研究がありますけれども、後ほど金融のところで若干データがございます。
財政については、既に経済審議会でもいくつかご報告をさせていただきましたけれども、まだご検討いただく面もいくつかあるのではないかと言っております。
12ページの2つ目のポイント、国民負担あるいは政府の大きさと経済パフォーマンスの関係ということに関しても、いくつかの積み残しのテーマがあるというふうに理解しております。大きな政府は成長を阻害するのかどうか。あるいは大きな政府になったとときにあるいは社会保障の規模と労働供給、投資・貯蓄への影響をどう捉えるかというようなこともあると理解しております。
 13ページにまいりまして、真ん中以降、経済システムと整合的な社会保障の在り方ということに関しては、さらに3つのサブテーマをここではとりあえず考えております。1つは競争原理、効率性という観点から見た場合の社会保障制度の効率性の評価、費用効率化の関係ということで、ここでは資料としては、医療に関して情報の非対称性があるため市場システムが十分に機能しない分野において、いかなる方法によって競争原理に立った効率的な制度を設計することができるかというような問題意識を投げかけております。これに関しては経済研究所でやられました鴇田先生の医療費の研究、文章編の14ページにまいりまして、9年度の日本経済の現況というところで、いくつかの簡単な試算を図表編16ページの図表2ー8、これは医療の超過需要によってどのぐらい経済構成が失われているかという試算でございますけれども、現在のような制度を前提にすると、超過需要は医療費全体の約18%、2割弱ということになります。9年度の日本経済の現況では、どちらかというと市場メカニズムを導入すべきだという立場で主張がなされております。
 2つ目の大きな論点として、経済システムと社会保障制度の制度補完性による社会保障制度の評価という大きな問題をここでは投げかけております。これに関しては文章編14ページのところで既存研究の概要、最近の奥野教授のご研究を紹介させていただいております。図表編では18ページでございますけれども、上のところにスウェーデンの例ということでアメリカの学者等が主張しているようですけれども、スウェーデンにおいては所得の平等化と完全雇用という2つのターゲットが、少なくとも1980年頃までは続いていた。これはなぜかというのが大きな論点であるように理解しておりますけれども、これをワーク・シェアリング、ワーク・フェア等々のキーワードを使って説明していると理解しております。
ところが、こういうシステム間の制度補完性があるところまできますとうまくワークしなくなって、むしろネガティブなフィードバックということで大きな政府、小さなタックスベース等々で経済がうまく回らなくなってくるということで、制度設計をもう1回やり直すという状況になっていると理解しております。
 果たして我が国の場合はどのようになっているのか、あるいは今後、どのような制度設計を行えばいいのかというような問題意識が背景にございます。
 文章編の15ページにまいりまして、年金制度の主要論点ということで、長い間議論されております賦課方式と積立方式の比較分析等々の議論をもう一度整理してみたいということでございます。
ずっととばしていただきまして、以上等々踏まえまして最終的に17ページのあたりで、経済システムと整合的な福祉社会の条件ということでまとめていただければと思っております。
 18ページにまいりまして3.金融ということで、アフター・ビッグバンの金融ということでございます。これに関してはいくつかのテーマは既に前回、前々回で提示させていただいております。1.金融システムの将来展望というところでいくつかの潮流の変化を踏まえた後、金融諸側面の展望ということで東京マーケットはどうなるのか、そこでのプレイヤーの話、金融商品の話、経済システムの話等々をさらにご検討賜った後、19ページ2.資金の流れの将来展望ということで、これらを踏まえて、主体間のマネーフローがどのようになるのかということを、企業、金融機関、財政等も踏まえた上で展望していただきたい。さらには、これらを踏まえて金融システムの改革が経済、特にマクロにどういう影響を与えるのかということをいくつかの窓から検討していただけたらと思っております。 19ページ以降は、それらに関してのいくつかのご研究、貯蓄率のは話が19ページから20ページにかけて並べられております。
20ページの3 金融機関の業務・機能がどうなのか、アンバンドリング、スペシャリスト、特化等のキーワードでご研究なさっているいくつかの研究を書いてございます。
21ページは、2.資金の流れの将来展望ということで、いくつかのご研究がございますけれども、時間の関係で省略させていただきまして、22ページにまいりまして、最も包括的なご研究5 資金の流れの総括的展望ということで、日本経済研究センターでやられました黒田委員の「2020年の日本の金融」の内容を簡単にご紹介させていただいております。
23ページ3.金融システムの改革が経済に与える影響の展望ということに関して、こういうところは私どもの勉強不足であまり知識がございませんけれども、最近目にしました1つとしましては、Kennth.S.Courtis氏の論文の「Japan Big Bang or Wee Whisper 」というのがございまして、この論点は、過去の日本の家計資産に対する収益率は大変低い、15年間で 2.3%と非常に低くなっているということでございます。これが続けば日本の国民はますます貯蓄するようになって、消費が減って経済成長を低めて経常黒字、貯蓄投資バランスがむしろ貯蓄が大きくなるということで経常黒字というふうに破局のシナリオが書けるということでビッグバンの戦略的意味合いということは家計資産を高める。その背景にある金融部門の収益率を高めるということで、貯蓄を下げて消費主導の安定成長を持続させることである、というご研究を紹介させていただいております。
 24ページにまいりまして4.土地・住宅でございます。
土地・住宅に関しましては、前回の部会でも既に大きな検討テーマは提示させていただいております。大きく分けて3つほどございます。1つは住宅需要の展望ということでございますけれども、このワーキンググループではこれまでの伝統的なアプローチであります量的な変化、特に世帯の変化ということもさることながら、いくつかの質的変化ということを十分念頭に置いて、もちろん量的変化と質的変化というのは相互に絡んでおりますけれども、質的変化ということを十分念頭に置いて住宅のデマンドをプロジェクションしていただきたいということであります。
 2つ目は、我が国の住宅問題、主に大都市に集中しているわけでありますけれども、それをさらに掘り下げると住宅価格、地価というところに行き着くわけで、今後の中期的なあるいは中長期的な視点に立った地価の潮流をどう見ればいいのか。それから、逆に中長期的な潮流から見て現在をどのように評価すればいいかということを、もう一ぺんここでご議論賜ればと思っております。
 3つ目は、成熟した住宅市場を支える住宅金融システムというタイトルがついておりますけれども、我が国もヨーロッパと同じような状況に2010年ぐらいには入っていくのではないか。すなわち住宅をフローとして見るのではなく、むしろストックしようとして見る。そこから出てくる検討テーマとして中古賃貸流通市場をどのような考えるのか。 1,200兆円の個人金融資産をどのように住宅ストック市場で使っていけるのか。こういう視点からさらに住宅をめぐるさまざまな環境整備をどう行っていくのかということを、ストック、流通等の視点から、あるいは金融戦略上等の観点から深堀りをしていただきたいと考えております。
 そういう観点で25ページ以降、さらにサブテーマをずっと書いておきましたけれども時間の関係で省略させていただきます。
29ページにまいりまして、最後になりましたけれども、ライフスタイルということで、これも大きな検討テーマは3つほどでございます。現在のライフスタイルの変化の方向をまず整理する。さまざまな潮流の変化、あるいは構造改革を踏まえて21世紀初頭におけるライフスタイルがどのようなものかを展望する。これらを踏まえて逆に現在投げかけられる課題、あるいはそこから生じる問題ということを検討していきたいと思っております。
 もちろん、このライフスタイルは他の8つのワーキンググループとも相互に関連しておりますので、8つのワーキンググループからの検討成果等も踏まえてやっていただきたいと思っております。特にまだ、ここのところは方向の全体が決まっておりませんけれども、視点をどういうところに置くのか、変化の方向ですとかいくつかの切り口がそこに書いてございます。それからどういうアプローチをとって、どういう対象に焦点を絞っていくのか、文章編の29ページでございますけれども、どちらかというと伝統的な時間のスケール、ライフサイクルプラス世代の違いということにウエイトを置いてやるのか、あるいは30ページにまいりまして、経済力の違い、所得という窓口から主に見ていくのか、あるいは今後ますます多様化すると言われております女性に着目したライフスタイルという絵を描くのか、あるいは後期高齢者というところに焦点を絞っていくのかということに関して、実は第1回ワーキンググループがスタートしておりますけれども、さらに今検討しているところでございます。
 切り口としてはいくつかの切り口、生活のフロー化、あるいは選択社会の構造変化、31ページにまいりまして、生活時間の配分からライフスタイルの変化をみるという1つの有益な方向があると理解しておりますけれども、こういう切り口。それから消費の担い手ということで高齢者、団塊の世代、団塊ジュニア、働く女性等々での視点でのアプローチが書いてございます。
33ページにまいりまして、生活の変化の3つの潮流ということで、図表編の54ページ図5ー17、博報堂のご研究で「21世紀への生活大局観」、平坦化、直接化、断続化、その変化の要因ということ等々この表にあります。キーワードとして凹の決断、凸の決断、生活自決主義等々とのキーワードがございます。こういういくつかのキーワードを使いながらライフスタイルワーキンググループではご検討をしていただくということになろうかと思います。
以上、大変はしょりましたけれども、説明を終わらせていただきます。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
 盛りだくさんの内容になっておりますけれども、先ほどの大臣、政務次官からもご意見がございましたが、どなたからでもご自由にご発言をお願いしたいと思います。


〔 A委員 〕 今、部会長代理がおっしゃったように盛りだくさんの内容だったのですが、1つ私が大切だと思った点についてコメントさせていただきます。
 それは、事務局が社会保障のところでもお話になったわけですが、社会保障に限らず、これから21世紀の日本の経済活力を維持できるかどうかというのは、基本的には生産性がどのぐらい高まるかということに依存しているわけです。そのときに、もちろん生産性を高めるためのいろいろな方策はあるわけですが、1つの重要な柱がいわゆる人的資本といいますか個人の仕事能力をどうやって高めていくかという点であることは言うまでもないわけであります。
 そういう意味から言いますと、おそらく社会保障制度も将来というものを考えるという点だけからではなくて、あらゆる観点から人的資本投資をどのように活性化していくかということが非常に重要な課題になっていると思います。
 そういう観点から見ますと、政策的にみたときに人的資本投資をエンカレッジする、あるいは少なくともディスカレッジしないということが大切だと思います。例えば、公的年金制度の中を見ましても、特に報酬比例部分等については、能力の力の高い人から強制的にたくさん保険料を徴収して、年を取ってから逆に言うと能力の高い人ほどたくさん年金をもらって引退しやすくなってしまうというような問題もあります。あるいは公的年金だけではなくてさまざまな労働に対して課せられる賦課、所得税が典型でしょうが、これはすべて人的資本投資の収益に対する課税でありますから、そういう観点から言うと、今日、事務局が後でご説明になった金融とか土地、これらすべて人的資本と同じようにストックなわけですが、今、土地税制の問題、これは短期的な問題としても、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、規制緩和等の中で土地税制の問題とか、あるいは金融資産に関連する課税の問題等が議論されていると思いますが、その中で是非考えるべきなのは、そういう資産に対する例えば課税というものと、いわゆる人的資本というストックに対する投資、収益に対する課税というのがどのぐらい、少なくとも均衡しているかどうかというような観点。具体的に言うと金融収益に対する課税と、土地というようなモノに対する投資に対する課税と、あるいは人的資本投資に対する課税である所得税、あるいは社会保険料というものの間にどのぐらい均衡が保たれているか、あるいは先ほど申しましたこれから非常に重要になる人的資本投資というものを少なくともディカレッジしないという観点から見てどんなものなのかということを是非検討していただきたいと思います。


〔 B委員 〕 これからワーキンググループで検討が行われて、それの相互関連性を経済社会展望部会で論議するということなのですが、明日から、今日ご説明していただきました地球環境のワーキンググループを立ち上げて検討していくという立場で、これは他とも関連する問題なのですが、3つぐらい気になる点を問題提起として申し上げておきたいと思います。
 第1の点は、ワーキンググループを開き、相互関連性を議論するという話なのですが、地球環境という問題は、今、ご説明いただいたような意味で言いますと、経済社会展望部会が最終的に前提とする例えば経済成長率であるとか、あるいは産業構造とか技術革新とか財政とかライフスタイル、ものすごく相互関連性を持っているわけです。私は、相互関連性があるということを指摘したいのではなくて、その扱い方の問題として、例えば地球環境うやる場合に、いろいろなシナリオを描いて、その効果を分析するような形でいいのか、あるいは作業の過程で、他のワーキンググループとの関連で産業構造とか技術革新とかライフスタイルがこういう方向だというのをある程度取り込む必要性があるのかどうかという作業過程の問題が1つ大変気になる部分であります。
 第2点は、シナリオを描くということで、ここで考えてみますと、資料の1ページを取り上げて私が申し上げたい論点を説明した方がいいと思うのですが、1ページの(問題所在)ということで、3.地球温暖化問題の対応策を考えるための枠組み、5.政策措置オプション、こういうことでその相互関連性はどうかということを同時に、これを考える枠組みとしてどの程度、2010年という想定があるのである程度想定できる幅が制限されていることは事実ですが、曖昧模糊とした概念、例えば省エネなんていうのを進めるという1つの考え方としては、ライフスタイルの変化がどの程度行われるかによって基本的に変わるとか、あるいは5.政策措置のオプションという場合に炭素税とか環境税とかいう導入が本当にどのぐらいできるのかということが、ここにものすごく決定的に効いてくるところなのです。
 そういう場合にあらゆるシナリオを描いていいのか、あるいは財政とかその他とも関連すると思うのですが、例えば炭素税とか環境税を一般税とするのか目的税とするのかということによって、例えばこの中に書いてある佐和さんのモデルですと、非常に安い炭素税でも目的税として省エネだとか新技術の導入というようなことでは効いてくるとか、そういう実際に具体的な政策オプションを考える場合に、かなり多様に論議、あるいはポリシー・オプションのメニューをどの程度ワーキンググループで自由に設定できるのか。2010年という枠がありますのでその限度はあろうかとは思いますが、それについてかなり恣意的にそういうシナリオをセッティングしてもいいのか。
第3点は、事務局からご説明がございました技術導入のシナリオというのがあるわけでありまして、これも参考資料の1ページをご覧いただければいいと思うのですが、これだと23.5%から3割ぐらいの上下の幅がある。その場合にやはり問題は、第2点と関係があるのですが、オプションがいろいろあって、オプションによってこうなるということだけを提示するのか、あるいはこういうオプションを実現するとか現実的に2010年に実行するためにはどういうポリシー・パッケージとかサポートする具体的な施策がいるのかとか、そういう検討をしないと、ただ提示しただけでは意味がないのではないか。そういった議論をし始めますとこれまたとても大変なのですが、ですから、私の感じでは、シナリオを提示してこうなります、こうなりますと言うのではなくて、もし可能であればある程度実現のメカニズムとか、こういうものを実現するためのポリシー・パッケージとか、それのコストベネフィットとか、フィージビリティーとか、そういうところまで本来やらなければ意味がないと思うのですが、そういうことまでやりだすと、ワーキンググループの範囲を超えてしまうというようなこともあろうかと思うのですが、何となく効果をたどったり相互関連性を設定するだけではなくて、第3のポイントまである程度やる必要性があるとは思うのですが、そういうところをどの程度実際に考えるべきなのかという点について、今、問題提起で、明日スタートして検討していくわけでございますが、何か皆様方の意見、あるいはこう考えたらどうかということがございましたら、是非お出しいただきたいということでございます。
 ですから、問題提起というか、これからスタートするに当たってどう考えていくかという3つの主要な点をちょっと指摘させていただいたわけで、各ワーキンググループに委ねるということであれば、それなりの考え方をしたいと思いますが、何か統一的にこうしたらいいのではないかということがございますれば、皆様のご意見をいただきたいということでございます。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
 今のはワーキンググループの進め方についてのご意見だと思うのですが、他のワーキンググループをお引き受けになっていただいている座長の方々からも、似たような点について何かご意見ございますでしょうか。


〔 C委員 〕 金融のワーキンググループの方を仰せつかったのですが、お話を伺いまして、少し皆様にご意見を伺ったらいいかなと感じている点があるのですが、それは先ほどのご説明で、日本の金融資産の収益率が非常に低い、2%ぐらいだという話がありまして、収益率が低いので貯蓄をもっと高めないといけないというインセンティブが働くのではないかというお話があったわけですが、金融のグローバリゼーションの方の観点からすれば、日本の国内の金融資産の収益率が低ければ、もう少し高いところの、つまり外国の資産をもっと持ってもいいはずだということになると思うのです。
 経済額の方でホーム・バイヤス・パズルというのがありまして、今年の経済白書なんかでも国際的な投資分散が行われればポートフォリオのフロンティアが外に拡大して経済攻勢も高まるはずだということが一般的には言えるわけですが、現実には理論で想定されるほどには分散投資というものが実はあまり行われていないわけです。もちろんリスクの問題ですとか情報の非対称性の問題ですとかいろいろな理由によってそういうことだろうと思うのですが、1つは、今、議論が政治的には大変な問題ですが、公的金融、あるいは財政投融資、これはおそらく別の部会でご検討されているのだと思うのですが、 370兆円とか 380兆円というような資金残高が、つまり公的金融というのは基本的には国内で資金を運用することになっていますから、個人資産が 1,200兆円あると言ってもそのうちの3分の1とかそのぐらいはある意味で強制的に国内で運用するという、多分ホーム・バイヤスを強めるような役割を果たしているのではないかと思います。
 そういうような観点から考えて、果たして公的金融とか何かという問題はどの程度扱うべきなのかという点についていかくらかサジェッスションをいただければと思っております。


〔 部会長代理 〕 ありがとうございました。
 他にワーキンググループの進め方等について何かご発言がございましたら。


〔 D委員 〕 財政・社会保障の観点から2つテーマが与えられているのですけれども、最初の世代会計に関する推計のところはかなり自己完結的な作業と思いますので、他との関係はないと思うのですが、2番目の経済システムと整合的な福祉社会の在り方について、両方がおそらく経済の内生変数ですので、経済全体が変わったとき社会保障制度がどうなるのかということと、社会保障制度が変わったときに経済全体がどうなるのかという両方の因果関係が同時に起きますので、ここをどういう具合に切っていくのかということに関して、他との関わり方が重要になってきますので、この2番目の所をどう考えるのかがこれからの課題だと思います。


〔 E委員 〕 土地・住宅の問題に関しましても、例えば将来の住宅需要をどう見るかということにつきましては、例えば人々のライフスタイルの変化が致命的に効いてくるだろうと思います。従来はこういう推計をする場合にあまりそれが変わらないという前提で世帯数だけ推計していくわけですが、その辺でライフスタイルの問題をどのようにするかな。それはどういうシナリオにするのかなということで、B委員が言われたのと同じような問題がここちは存在しているのではないかと考えておりまして、他ワーキンググループとの関連性、あるいはキャッチボールがどの程度可能なのかということが1つ気になっているところでございます。
 もう一つは、土地問題は現在喫緊の課題でもございますけれども、これを捉える場合には、おそらく大都市集中問題の裏返しをどういうふうにとらえていくのか、場合によっては首都移転問題みたいな問題に絡むのかもしれませんが、その辺は多分ギブンにしていかざるを得ないのかなということで、ここも少し悩ましいところでございます。
 もう1点は、流動化に絡んでまいりますと、例えば住宅に対する資金供給の問題が出てくるわけですが、その場合には、C委員も言われた話になるわけですけれども、金融の世界との関連が非常に強い。住宅金融というのは実は金融システムの一部分であるわけですから、その関連で住宅金融、ビッグバンとの関連、あるいは個人金融資産の国内での一定の問題というのがどういうふうに関わるのかなという意味では、金融グループと実は大変関係があるのかなと。
 もう一つは強いて申せば社会保障とも関連があるわけですが、社会保障と住宅資産の活用というのは実は裏返しの問題でもあるわけでありまして、個人のストック活用というのは実は金融資産だけではないという問題で、その辺の関連も実はあるかなという形で、整理はしておりますけれども、他との関連をどのように整理していこうかというのを今課題としてとらえております。


〔 部会長代理 〕 ワーキンググループ関係のことでございまして、先ほどB委員から大変微妙な問題が提起されていたわけでございますけれども、1つは相互関係の話、これについてはワーキンググループはそれぞれやっていただきながら、時々この部会を開いて、そこでまた議論していただくということが1つと、それから事務局が1つですから、その中でいろいろやっていただということ、それからそれぞれのワーキンググループの中で関係があるということであれば相互にお話しいただくといういろいろなやり方でネットワークをうまく作っていただくように、これは事務局にもお願いしておきたいということだと思います。
 それから、アウトプットとしてどれだけのものができるかということは、1つは2010年という枠がはまっていることと、我々の作業時間という枠もあって。


〔 B委員 〕 それで私が3番目に申し上げた前提というのは非常に重要だと思いますし、あるいはそういうものがないと、今後の方向づけができないということがあるとは思うのですが、それを実際にやろうと思うと、なかなか難しいという気がします。そこの矛盾が起こりそうだ。そういう感じがしたものですから、ちょっと定義をさせてください。


〔 部会長代理 〕 おそらく望ましくてかつ実現可能な解がお求めできれば一番いいわけでございますけれども、なかなかそこにいかないだろうということはよくわかりますが、ワーキンググループとしてはなるべく自由にご議論いただいて、まだ若干時間もあるわけですから、その間にだんだん望ましくかつフィージブルなものはどれかと見当づけていくというようなことで、とりあえず進めていただき、また随時進行に応じてお話をいただければいかがかと思いますが、いかがでしょうか。


〔 B委員 〕 事前にこうこうと絞らないで、確かにフレキシブルに、しかし、そういう方向を考えながらやっていく。それでいいというのであればそれで結構でございます。


〔 部会長代理 〕 本当は部会長が言うべきことなのですが、そういうことで、とりあえずワーキンググループのことについていままでのご議論についてはそういうことです。


〔 F委員 〕 私も実はワーキンググループ相互間で重複している部分と抜けている部分があるのではないかと思います。重複しているのはべつにかまわないと思うのですが、抜けている中で公的金融というのは非常に重要な柱で、これは是非どこかでカバーしていただきたいと思います。
 それから、個別の点でございますけれども、例えば社会保障・財政のところを拝見いたしますと、やや伝統的な分析の仕方がある。つまり年金なら年金問題、医療なら医療問題というふうに、これは厚生省のいわば各部局ごとに分析しているのと同じスタイルなのですが、やはりそれでは厚生省と比べた経済企画庁の比較優位というのは必ずしも得られないのではないか。今、大事なのは、特に今国会でも介護保険というのが例えば実現しますと、それが切り口になって介護と医療、あるいは年金と医療という三巴といいますか、そういう従来別々にやられていた年金・医療・介護、あるいは福祉というものを総合的にとらえることによってどのぐらい社会保障が効率化できるか。これは重要だと言われながら厚生省自身ではなかなかできない問題であって、そういうことを是非切り込むということ経済企画庁としての比較優位ではないかと思っております。
 それから、細かい点ですが15ページに賦課方式と積立方式の優劣というテーマがありますが、これも古典的な課題ですけれども、一般論としてこういうことをしても仕方がないのではないか。やはり今後の日本経済、日本社会というのは急速に少子化が進むという特殊な状況てある。そうした中で賦課方式、積立方式がどうかというか、それは当然そういうふうに議論されると思うのですが、あくまでも一般的な理論ではなくて今後の2010年までの状況を踏まえたような形での論議を是非お願いしたいと思っております。
 それから、7ページの地球環境のところでございますが、先ほどの事務局のご説明とワーキンググループがどの程度一体になんているかわかりませんが、一番最後にある国際協力の部分ではしょられた点なのですが、私は、実はここが一番重要なのではないかと思います。つまり、今、地球環境問題は例えばどの程度までCO2 を抑制するかというときに先進国だけが抑制したって、それは地球全体でみればかえってマイナスの影響がある、国際競争力が低下する。ですから、どのようにして発展途上国と先進国が共同してできるかというと一番最後の国際協力の中でも、例えば排出権の問題というのが実は国内実施の問題と不可分ではないか。ですから、そういう形で是非、大変な問題だと思いますけれども、国際協力というのが後の付け足しではなくてまさにこういう点も中心に議論が必要ではないかと思います。
 最後にライフスタイル、これ、実はご説明を聞いて全く理解できなくて、何をどうやろうとしているのか、単に何となくお話というのではもったいないわけですから、例えば少子化であるとか、そういう1つのテーマの中でのライフスタイルを考えるとか、何かそういう切り口をもう少しご説明いただければありがたいと思います。


〔 G委員 〕 実は私も最後のライフスタイルの部分に大変関心があると同時に、私はこの部分が、漠然としているようですが実際はその他のものを決定する大変重要なファクターではないかと思います。ここをどういうふうに見るかによって他のテーマの方向性というものがずいぶん結論が変わってくるのではないかと思いまして、今、漠然としているというご意見もあって、確かに漠然としているかもしれませんが、しかし、ライフスタイル自体は非常に多様な分野にわたって変化しておりますし、何か1つの部分に絞ってしまうとそれは違うのではないか。ここの部分を私は非常に期待しているわけですけれども、もちろんもう少し詰めて整理をなさった方がよろしいと思いますが、私、全体のあれを見て感じましたのは、今、日本の女性、世界中そうですけれども、女性の意識の変化が非常にドラスティックに起こっているような気がするのです。もちろん男性の意識の変化もあるのですが、私はどちらかというと女性の意識の変化が非常に大きく、そして特に日本では、これが諸外国に比べて表にあまり噴出せずに非常に深く静かに水面下で進行している意識の変化なので、あまりラディカルな形では出ていませんが、しかし大変大きな変化である。その部分が、その辺の重要さというものが全体を見てあまり感じられない。29ページに女性の社会進出、30ページには女性に着目したライフスタイルというのが出ているのですが、例えばここでも専業主婦、夫婦の所得が同程度の対等型、夫に扶養されるパート型、夫より収入が低いがパート型よりは多く、家事もこなす中間型。これを見ただけで、これは多分男性が考えたのかなと思うのは、女は夫がいるということが前提で、結婚するものであり家事をやるものだという、それ以外の女性のことが出ていないのですが、私に言わせると、最近はシングルの一人暮らしの女性が圧倒的に増えてきて、結婚しない女たちが非常に増えてきて、しかも仮に結婚しても結婚年令が非常に高齢化していて、経済的に自立して自分で暮らさなければならない女性、それから逆に離婚率が大変高くなって結婚しても離婚して一人暮らしになっている女性、あるいはシングル・ファミリー、片親家庭、それから夫を先に亡くしてまさに一人残された女性の人暮らしとか、そういう一人の女性の生活というものが大変大きなくなってきているのではないか。そういう人たちは非常に経済的自立が必要であって、夫の扶養とかそういうことの前提には考えられないという部分もありますし、それから、女性自身の意識の変化、価値観、行動様式、それから何がより重要かというプライオリティー、生活の中におけるプライオリティーの順序が、多分男性よりも大変違うとか、仕事に対する考え方、あるいは金銭感覚、生きがい、そうしたものが相当程度違ってきている。これは良くも悪くもであって、これはポジティブなことだけを申し上げているわけではないのです。ポジティブにもネガティブにも日本社会に非常に大きなインパクトを与えているような、あるいはいこうとしている。その部分を是非とも配慮した検討をしていただいた方がいいのではないかとちょっと感じました。ちょうどワーキンググループにお隣りにいらっしゃる小林委員が入っていらっしゃるので、その辺はご発言していただけるかなと思いますが、特にそのことを感じたし、希望というかお願い申し上げておきたいと思います。


〔 A委員 〕 発言が2回目で申し訳ないのですが、今のF委員とG委員の意見に関連して私も1つ感じているのは、ライフスタイルの問題というのを仮に経済学で言う消費者行動とか、家計行動というふうに考えるとすると、ライフスタイルを変える要因の1つは所得制約です。将来年金が少なくなるとか、賃金が高くなるとか低くなるとか、つまり個人個人の好みというのが仮に一定であっても所得の制約が変わるとライフスタイルは変わってきます、働かなければいけないとか何しなければいけないとか。
 もう一つ、所得制約は個人個人にとってそんなに変わらなくて、個人個人の好みも変わらないのだけれども人口の構造が変わる。つまり、個人個人の好みが例えば女性と男性で違うとか、若い人と高齢者で違うということになくと、若い人に比べて高齢者が増えることによって一人一人の好みは変わらなくても社会全体のライフスタイルの構造が変わってくるということがあると思うのです。
 そして3つ目に、初めて個人個人の好みの違い、経済学で言えば選好場の違いというものが選好場自体が変化することによってライフスタイルが変化するということがあると思うのです。したがって、ライフスタイルの問題を整理する場合には、多分、個人の現在の好み、あるいは価値観、そういうものが変わらなくても将来所得制約が変わることによってどのぐらいライフスタイルが変わるのかどうかということと、個人の価値観とか好みが変わらなくても人口の構造というようなものが変わることによって、マクロでのライフスタイルがどう変わってくるのかということと、そしてもう一つ、今、G委員が言われたように、個人個人の価値観とか好みが変化することによってどういうふうにライフスタイルの像が変わってくるかということをきちっと整理して分析した方が、多分わかりやすいし議論も整理されやすいと思うのです。
 もう一つコメントは、それではそのときに一体どうやって個人個人の好みといいますか、あるいは価値観の違いを経済的に分析するかどうか。伝統的にはいわゆる習慣形成とかそういうようなもので個人の選好場がシフトするとか、そういうような研究はあるわけですけれども、今、G委員が言われたようなかなりドラスティックな個人の選好場のシフトと言っていいのか変容というのか、それをどのようにはらえることができるのか。私自身としてはそれをとらえられる方法を今は思いつかないわけですけれども、前半はコメントですが、これは質問なのですが、仮に所得制約だとかコンポジションの変化というのは一定の前提を置けばかなり明快に将来像が描けると思いますが、選好場の変化というのを、将来どのように変化するかというのはどのような方法でとらえられようとしているのか、それは非常にチャレンジングな仕事だと思いますけれども、もし何か今既にアイディアがあったらおしえていただきたいと思います。


〔 部会長代理 〕 いかがですか、H委員、何かコメントございますでしょうか、ライフスタイルの問題が次々出ていますが。


〔 H委員 〕 順々にやっていきたいと思います。


〔 I委員 〕 問題が広範なものでこなしきれて意見を申し上げられるか自分でもわからない点がありますけれども、2つほど、経済の基本に関わるというので、私自身個人的に気になっている点がございます。
 1つは国民負担率の問題なのですが、片方には、政府しかできないことだけやればいいというご意見があるわけでありますが、それ以外のところというのは、民間がやった場合の生産性と政府がやった場合の生産性の比較が基本ではないかなという感じがするのですが、アメリカなどではよく政府部門の生産性の実証研究などございますね。日本の場合、その辺がないままに議論をしている面が大変多いような感じがしまして、そうすると、もう力関係だとか、政治的なものだとかでもって決まってくるというふうなことがあるのではないか。もし、こういうところで貢献できるとすれば、きちんと民間でやればこうなる、政府がやればこうなる、ないしは政府が生産性を向上すればいいという問題もあるかもしれないわけでございまして、そういう点で単に政府が大きければまずいというのは、政府は効率が悪いということをアプリオリに前提にしているわけでございまして、その辺の中身の検討が必要ではないかという感じが1ついたしたわけであります。
 もう一つは金融と土地・住宅に絡んだところでございますが、日本の過去の成長のプロセスでインカムの世界とキャピタルの世界ということで考えてみますと、インカムの世界が順調なときはキャピタルの世界もどんどん大きくなるのですけれども、キャピタルの世界の大きくなり方の方がずっと大きい、つまり資産インフレが起こるわけでありまして、意図的には土地価格などを上げてきたという面もあるかと思うのですけれども、それによってしかしキャピタルの世界があまり大きくなるとアンバランスになって危険になってくるので、経済が自律的に調整するというのがバブル崩壊ということなのでしょうか、いつまでも大きくなったままでいるというわけにはいかない。
 今のプロセスというのは、まさに最後にバブルをやって、それが崩壊して、インカムの世界とキャピタルの世界のバランスが回復したのだろうかという点があるわけでございまして、今、アジアに起こっている問題も基本的には同じような問題だと思うのですけれども、収益還元価値などで計算するというのが1つの理論的な方法かもしれませんが、もし、まだバランスが回復していないとすると、まだバランスを回復させる可能性があるわけで、今の超低金利なんていうのはそういう意味で資本に対する需要が全然ない、こういうことなのかなという感じも、私、素人でわかりませんが何となくそんな感じがしているわけです。この辺をきちんと詰めて、きちんと詰められるのかどうかわかりませんけれども、ある程度分析していかないと、このままの状況で経済が軌道に乗れるのかどうかという問題があるような感じがいたしまして、この2つは何とか皆様のお知恵で解明していただけれは、国民も安心するのではないかという感じがしたのですが。


〔 J委員 〕 先ほどG委員がおっしゃったことと趣旨は全く同じなのですけれども、全体のご説明を伺っていて思いましたのは、例えば新しい施策の方向として国で決定している、そういうものはある意味ではここの中に入るものもありますけれども、分野によってはそういうことが触れられることなく検討が進められていくという側面があるような気がいたします。
 例えば、私の関心事から申し上げますと、「男女共同参画ビジョン」というのが決定されました。特に日本社会の今の在り方から言いますと非常に難しいテーマではあることははっきりしているわけでありますけれども、そういったもの。
 もう一つは、子どもの権利条約とか、ILOの 156条の家庭責任における男女労働者の在り方とか、いままでになかった新しい方向性を示すもの等があります。そういったものを、ライフスタイルのこのテーマの中でやはり視野としてはきちんと入れた段階で、21世紀のライフスタイルなり社会像になっていくのかみたいな、そういうものを織り込んでいただくということを是非お願いしたいということをちょっと申し上げたかったのです。


〔 K委員 〕 尾身長官と政務次官もいらっしゃいますので、問題提起をされました当面の景気対策の問題につきまして一言言及させていただきたいと思うわけでございますけれども、一部のマスコミの議論の中に、景気が悪くなったから景気対策が必要だ、構造政策の方は延ばしてもいいのではないかと言わんばかりの議論が出ていると思うのでございますけれども、それはやはり本末転倒だと思うわけでございまして、6つの構想改革というのは勇断を持って進めていく。しかし、それに伴って経済の実体が景気対策を必要とするというのであれば、構造対策の枠の中で景気対策を進めていくというのが基本的なスタンスではないかと思うわけでございます。
 そういう中で、先ほど長官もご指摘になりました規制緩和などについて前倒しをやって、事業創出効果の高いものを前倒ししてやれるようなことを具体的にやっていくとか、あるいは公共事業の大枠は7%カットということになっているわけでございますけれども、例えば来年度予算編成の中において、波及効果の大きいものについて優先的に予算の配分をするといったようなことが具体的に目に見えてくれば、これは景気対策としてもかなり有効に働くのではないかと思います。
 それから、法人税の実質的引下げというのがかなり議論されているわけでございますけれども、これも単年度ベースのレベルニュートラルというような感じではなくて、中期的な観点に立ったレベルニュートラルというようなことで思い切った引下げ措置を、地方事業税も含めて法人事業税も含めてやっていただくというのが大変重要なポイントではないかと思います。
 それから、土地の流動化政策ということにもお触れになりましたけれども、土地税制の問題も含めてこの問題に前向きに取り組んでいただくというのは大変重要なポイントではないかと思いますが、それに加えまして、もういろいろ議論されたのかもしれませんけれども、いわゆるコンピュータ2000年問題というのがあるわけでございます。これは大企業においてはかなり対応が進んでいると聞いておりますけれども、中小企業を含めた日本全体の対応としてはかなり遅れていると言われております。したがって、この分野に政策的なバックアップ措置を講じていただくことによって2000年がスムーズに越せる体制を準備していただくというのは、景気対策としても経済的には大変重要な意味を持つ対策になってくるのではないかという感じがいたします。
それから、ベンチャー企業に対していろいろな優遇政策というのはいろいろな分野で既に取り上げられているわけでございますけれども、ベンチャー企業がより創出しやすくなるような環境整備にもう1回政策全体としての整合性を担保しながらチェックしていただくということも重要ではないかと思いますし、特に事業効果の大きい分野として情報通信の分野があるわけでございまして、携帯電話が爆発的に伸びて、今、大変大きな事業効果を発揮しているというのは周知の事実でございますが、その他の情報通信の分野においてもまだいろいろ規制緩和等を通じまして開拓できる分野というのがあると思いますので、そういう分野にも手を入れていただく。これは構造改革にもつながりかつ景気対策でもあるということではないかと思うわけでございまして、その辺につきまして少し検討を加えていただければ大変幸いではないかと思います。
 以上が前段についての私の意見でございますが、先ほどのワーキンググループ関連を1つだけ言わせていただきたいと思うのでございますが、ライフスタイルのご説明は確かにあまり要領を得ないといいますかよくわからない点があったのでございますが、環境のところでご説明になった炭素の発生率を抑えていくということの中で、家庭なり個人が省エネルギーという格好で果たなければいけない役割というのは相当大きい。これは具体的な数字にも出ていたわけでございますけれども、それはライフスタイルの中における省エネルギーという形で具体的にどうやっていくのか。いつでも冷蔵庫が自動的に動いているなというような非常に便利なライフスタイルをそのまま21世紀も続けていいのかどうかということも含めて、省エネルギー対策というのを具体的に検討していただく必要があるのではないか。同時に、例えば家庭のごみ処理問題1つ取り上げてみましても、リサイクル型に変えていくという、これは従来から言われている話でございますけれども、それをさらに21世紀展望でより組織的にかつ包括的に取り上げていくということも必要なのではないかと思いました。これもライフスタイルの中でご検討いただければ大変よろしいのではないかと思います。


〔 L委員 〕 金融のワーキンググループ関係のお願いのようなものですけれども、一言発言させていただきます。
 今日の問題提起にありましたように、金融の資金の流れをとらえるということで、これは具体的に言えば日銀が作っている資金循環統計をベースに作業していくということだろうと思いますけれども、日銀の資金循環統計はいわゆる金融システムについての最も基礎的なかつ体系的な統計でありまして、それを正面から取り上げて単なるお話ではなくて具体的な数字として置いていくというような作業を是非お願いしたいと思っております。
 今日、ご報告の中で取り上げていただきました2020年の日本の金融、私、日経センターの方で加わりまして作業したものですけれども、基本的には同じような作業をやっているのですが、2020年というものを考える場合に、相当大胆な仮定を置いているということを申し上げておきたいと思います。今回は2010年ですから必ずしも私どもがやった作業と同じような前提になるとは全く思わないのですけれども、しかし、先ほど取り上げられました公的金融の問題、あるいは金融税制の問題、あるいは会計制度の問題を考えた場合に、基本的な枠組みをどこまで変えていくかという、非常に大きな問題があると思います。
 それで、2020年においてどうなるかということで、私どもが大前提として何を置いたかといいますと、第1に金融サービス産業は1つであるということでありまして、これは何を意味しているかと言いますと、民間の銀行、証券、保険等の業態別の区分はほとんど意味を持たなくなるということであります。
 もう1点は、公的な金融と民間金融の区分はやはり同様に意味を持たなくなるという、そういう前提を置いて考えているということでありますから、公的金融に関して言えばほぼ民営化に近い姿を前提に置いて数字を置いているということであります。
 第2の税制に関しては、これもビッグバンが行われまして、現在、いろいろ問題にされております有価証券取引税でありますとか、あるいは利子の源泉徴収課税の問題、そういうものはすべて解決された世界であるということでありまして、金融税制に関してはいわゆる中立性というものが完全に達成された状況を前提にしてこの問題を考えている、そういうような置き方になっております。
 3番目は、会計制度に関しましては、今、国際会計基準という形で話が進んできているわけですが、原則としてすべての金融商品は時価主義会計に移行するということを前提にして置いているということであります。
 その他にもいろいろ枠組みがどうかという問題があるかと思いますが、2010年というところを展望しまして、今、申し上げたような大きな問題についてどこまで現状が変わるのかというのをきちんと整理してから、2010年の数字を具体的に考えていく必要があろうということであります。
 最後は、それに関係した問題なのですが、金融に関しては今ビッグバンということでいろいろ騒がれているわけですけれども、ビッグバン後の世界においてはおそらく家計のポートフォリオ選択行動、あるいは企業の資金調達行動というのは根本的な変化を生じるだろうということでありまして、これまでいろいろ実証分析の累積はあると思うわけですが、残念ながらほとんどの実証分析は過去のデータに基づいた分析であるということであります。しかし、今、考えているのは、おそらくビッグバン後において基本的な家計あるいは企業の行動自体が変わる。つまり構造方程式が変わるという社会を追求していかなければならないということでありますから、これは一生懸命データを拾って丹念な実証分析をしてもとうてい意味ある結論は出てこない世界だということを申し上げておきたいと思います。


〔 M委員 〕 金融のお話が出ましたものですから、その点に関しまして若干私見を申し述べさせていただきたいと思いますが、前回のこの会合で金融に限らず申し上げたのですけれども、特に金融ないし金融資本市場の場合には、グローバリゼーションということとインターナショナライゼーションの違いというのはしっかり認識しておかないと、問題のインプリケーションの取り上げ方とか着手の仕方のタイミングが違ってくるということを重ねて申し上げたいと思うわけでございます。
 今日、拝聴しました事務局からのご説明でも、私の誤解かもしれませんが、どちらかというと、日本の金融システムの改革はこれからどういうふうに進み、つれて日本の金融の姿あるいは資金フローがこういうふうに変わるだろう、そこを展望しっかり見極めながら、またいろいろな手当も必要になるかもしれないと、何となくそんなふうに受け取っているわけなのですけれども、しかし、実態は、我が国の金融システムのこれからの変革が進む、それに先行する形でグローバライズド・マーケットというのは既に存在し、かつそれが拡大している。そこから認識をスタートしなければいけないのではないかということでございます。
 今後、我が国の企業が対抗していく相手方、つまり、世界の有力企業というのは既にそういう初めからクロスボーダーを前提としたグローバライズド・マーケット、その金融仲介機能というものをフルに活用して、自らの生産性の向上と競争力の向上にこれを使っていって、競争力を培養していきているということです。
 したがいまして、日本経済の今後のことを考えましても、まず日本経済の先頭に立って世界の経済に伍していくような企業の立場ということになりますと、日本の金融システムの改革がこれからどういうふうに進むかということにもっと先駆けてグローバライズド・マーケットをいかに活用するか。日本の企業の意識変革というのはそこまで進んでいるかどうか。進んでいるとして、そうしたグローバライズド・マーケットへのアクセスが十分保障されるだけの条件が既に日本に整っているかどうかということの点検が、出発点として私は非常に大事だと思っているわけであります。
 先ほどから、企業会計の話とか、金融税制の話等出ておりますけれども、まさにそうした点が具体的には非常に優先して検討されるべきことであって、日本では企業会計と税務会計との区分が十分確立していないし、かつ不明確である。これはグローバルスタンダードに全く合っていないということでありますし、金融税制の改革につきましても、議論は起こっても結論はどうしても先延ばしになるというのがこれまでの経過でございますが、そこは少し順序を逆にした発想が必ず必要だと思います。
 さらにその上に、今日のペーパーに示されているようなことがあるわけでございまして、日本のマーケットがそれじゃあそうしたグローバライズド・マーケットの一環に入っていく必然性、あるいは必要性がどのぐらいあるか、そしてそのための要件がきちんと設定されているかどうか、この点が必要でありまして、既に政府においてあるいは、諸々の制度調査会で出ている結論というのは、大きくはこの方向に沿っていると思いますが、やはり経済審議会というふうにオーバーオールに検討する場で、そうした要件が十分整っているかどうかという点をやはり総合的に見るべきではないかと思います。
 ディスクロージャーの問題にしましても、マーケットをコントロールする場合に行政的な介入からマーケット・ディシプリンを尊重する方向に変えるというようなことを言いましても、各制度調査会から出てくる結論はややタテ割の社会の中から出てくるわけでして、全体をサーベイする立場から経済審議会が広い意味で要件設定のことをきちんと考えていかなければいけないと思いますし、それから、そういう場合でもマーケットへの行政介入というのは最小限残ると思いますけれども、行政介入の透明性というようなことで、ただ口先だけで言っていてはだめなので、制度的保障がいるわけです。例えばアメリカの例などによりますと、マーケットに行政が介入する場合には、行政手続法という非常に厳格な手続が決まっているわけでして、透明性にはそういった制度的裏付けというものがあって初めて出てくる部分があります。そういったことをインプリケーションとして金融のワーキンググループの中から出てくるとすれば、非常に有益ではないかという気がしているわけであります。
 そして最後に、日本の金融機関の競争力をどう考えるかという問題になってくるわけで、グローバライズド・マーケットの中での競争力とか、あるいはその接点でどういう競争力を保持することが必要であるか、期待されているかというのはその次に出てくる問題、これはおそらくは金融機関自身の問題が大部分ですけれども、あるいは金融制度の問題として残るかもしれません。もし、制度の問題として残るのなら大まかな条件設定の話にもこのワーキンググループで及んでもそれは意味のあることだろう。
 発想の順序が、既に先行して事実としてあるところからスタートすべきであるというのが、私の基本的な主張でございます。


〔 N委員 〕 私は産業構造ワーキンググループの方に所属しているのですが、実は先週1回行われまして、今日は、鶴田座長がお見えだと思っていたのですけれども、お見えでないので、ちょっとそのお話をして、それから、今日のテーマに関する私の意見を述べたいと思います。 1回目のワーキンググループでは、この会議の冒頭でご指摘のありましたけれども、9つのワーキンググループの関連がわからない、どういうふうに議論していいかわからないという意見が出ました。特に、地球環境のところで、このぐらいというような線を引いていただかないと、このぐらいの産業構造になるだろうということも言えないのではないかということが出ましたので、先ほどの部会長代理のおまとめでは、個々自由に議論するという話でしたが、要望としましては、環境ワーキンググループの方でこのぐらいというところが、要するに人間が生きられないような状況が21世紀の終わりに出ると、これはおしまいなわけですから、2010年には大体このぐらいの用意をしておかなければいけないというような線をお示しいただいて、それを枠にして議論したいというのが1回目の部会の大体の意向だったと思います。
それで、今日のテーマに関して意見を申し上げたいのですが、グローバリゼーションとかインターナショナリゼーションとかというのが今日の報告にもいろいろ出ているのですけれども、私は、グローバリゼーションを進めながらいかにローカルを残すかということが1つのテーマだろうと思っています。それで、地方という縦糸を委員の方々の頭のどこかに入れておいてほしいというふうに要望したいのです。
 地球環境ということを言いますけれども、日本の中に豊かな農村が残せるかどうかというのは、日本の手でできる環境対策だと思います。金融について言えば、小さな金融機関がいっぱいあるわけで、グローバリゼーションが進む中でそういうものをどういうふうに残すべきなのか、いらないのか。いらないということは決してなくて、ここにおられる方も2015年ぐらいには田舎に住むことになられる方もおられると思いますけれども、そのときに産業がなくて金融機関がなかったら困るわけですから、それをどう残すか。先ほど公的金融の話がございましたけれども、公的金融との絡みで是非そこのところはお考えいただきたいと思います。
住宅、ライフスタイルについても、もちろん地方という問題と切り離せないと思いますので、そこら辺を是非、一言でも一行でもよろしいですからお考えいただければと思っております。


〔 O委員 〕 今日の議論にいくつかポイントがあったと思いますけれども、見事にライフスタイルの問題が、今の景気、あるいは構造改革と関連しているような気がしますけれども、先ほど、G委員がおっしゃったようなライフスタイルの問題が、そういう言葉は使っていないのですけれども、ペンシルバニア大学の安藤先生がモデルを組んでちょっと勉強したことがあるのですが、どういうことかといいますと、貯蓄率の話ですけれども、高齢化だけではなくて家計構造がどう変わるかということによって貯蓄率がどうなるかという研究をなさったわけです。例えば、離婚率が上がった場合にはもちろん家計の数が多くなります。そうすると炊飯器とかそういうものが売れて自動車が売れなくなるとか、そういうことがありますけれども、彼のモデルでは貯蓄率が逆に、いままでのトレンドが続くということを前提にしておきますと、これから貯蓄率が上がるという非常におもしろい結果になりました。それが大体2010年ぐらいかと思いますけれども、たまたまですけれども、続いてその後また下がってきますけれども、今の水準まで下がりますがそれ以下には下がらない。
そうしますと経常黒字がその分残るという意味ですから、ある意味で円の強さを支えるといういいところもあるかと思いますけれども、このモデルの中では政府の役割、あるいは福祉の制度が入っていませんから、それでどうなるかはちょっとわからないのですけれども、まさにライフスタイルの部分が貯蓄率に大きな影響を与えるということが言えると思います。
ライフスタイルのことですけれども、昭和45年頃の日本と今の日本はどう違うかと言いますと、あのときは、頑張れば将来が明るくなるという考え方をみんなが持っていた。今の社会保障ワーキンググループなどの推計を見ると、頑張っても明るくないということにもう既になっています。ですから、例えば国民年金に参加しない人の数が多くなっているとか、そういうことになっているかと思います。ですから、今の景気の問題は、基本的にどうやって将来に関する展望を国民に伝えるか、これが基本的な問題だと思います。ですから、A委員もおっしゃいましたけれども、人的資本にできるだけ課税をしないということが非常に大きなポイントだと思います。 それでは、将来性をどうやって作るかということですけれども、非常に難しい複雑な問題ですけれども、今日の資料に入っていない米国の年金問題に関する研究を最近ちょっと読んでみましておもしろかったのですけれども、民営化するだけでは何も解決にならないという結論が1つあります。なぜかといいますと、もう既に負担になっている分があるわけですから、民営化するだけではその負債がなくなるわけではない。ですから、今の制度の中でも例えば引退年令を上げる、あるいは給付水準を上げる、そういうやり方で解決することはできます。ただし抜けている点が1つありまして、これは日本のビッグバンにもつながりますけれども、民営化した場合に、やはり金融資産を運用しているところは借入側に対して規律をつけるという制度をとります。たまたま今日の新聞にもありましたけれども、今度、企業年金連合会が生保に対してもっと情報を開示しろということを言っているらしいのです。これはまさにビッグバンが効いてきているということを意味すると思いますけれども、こういうビッグバンによって資本の使い方の効率がよくなるということが非常に大きなポイントだと思いますので、やはり規律が厳しい社会は将来が明るくなる、もちろん厳しい面もあって気持ちよくない面もあるのですけれども、将来にとって人的資本を作るためのポイントになると思います。
 いろいろな方の意見を聞いて、問題の知的な認識が足りないということはまずないと思います。いろいろなすばらしい研究があるわけですから、問題はむしろどうやってそれを政策の面に持っていくか。それは性悪説にってしまいますけれども、何か危機がないと動かないということがあるのではないかと思います。そうしますとむしろ野党に頑張ってほしい部分もあるかと思います(笑)。申し訳ないのですけれどもやはり健全野党があって与党が動くという政府がいままで何回もありましたし、それもけっこう大事なポイントではないかと思います。
 そうならないとどうなるかということを考えますと、また、1992年8月に戻るわけです。株価がドンと下がって、じゃあ、動きましょうという時代になりました。そういう結果を避けたいならまさに、長官がおっしゃったように頑張って早く政策を打つということが必要ではないかと思います。


〔 部会長代理 〕 ありがとうございました。
 まだご発言のない方もいらっしゃいますからお願いしたいと思いますが、いままでのお話をいろいろ聞いていますと、1つは、ワーキンググループ同士の関係ということで、例えば環境問題を先に決めてくれれば産業構造がやりやすいと、N委員がおっしゃいましたが、全くそのとおりなのですが、何しろ同時発進しているものですから、さきに行けよと言われても困るという点もございます。同時決定でお願いしたいということで、走りながら考えて、お互いに時々は情報を交換しながらやっていくという形でやらざるを得ない制約にあるという点だけお願いしたい。その代わり、一般均衡化になるだろうということを期待したいと思います。
 実は同じことが、私たちの部会の仕事と、先ほど大臣が言われたような問題との間にありまして、この部会は今スタートしたばかりで、しかも長期的な事を考えているわけで、結論が出ているわけではないのですけれども、K委員やO委員が言われたように、実はここでやっていることというのは、今の足下の話に非常に大きな関係があるということは、私も確かだろうと思います。やはり社会保障、どうも負担が増えるという話ばかり来ると、やはり景気に対しては、当面はマイナスの動きがある。しかし、ほおっておけばどうなるかというと、今度はパンクするだろうという不安がどんどん大きくなっていくわけですから、先に行けばどうにもならないし、あるいはそのことがみんなにわかれば、また不安になるということで、そういったことをどうやって突破していくかということは実は非常に大きな問題だろうという気がいたします。
 それで、K委員からもお話がありましたように、長期的な方向と矛盾しない形で短期的な乗り切り策を是非考えていただきたいということが最大公約数的なお願いになるわけでございますが、せっかく大臣もいらっしゃっていますので、多少部会の仕事から離れて個人的な意見でも結構ですが、何か政策等についてご意見があればこの機会に。
 〔 P委員 〕 最初に大臣がおっしゃった景気の問題ですけれども、これについては、先ほどK委員が言われたことに尽きると思います。今の経済の実態をよく見極めて、一時的な陰りその他ですぐに何か発動するというようなことでは、いままでと同じことになってしまうので、やはりその辺はよく見極めていただきたい。ただ、どんな政策手段が考え得るかということをいろいろご議論いただくことは大事なことだと思いますけれども、例えば財政構造改革その他の構造改革が鳴物入りで言われながら、結局、だんだん消えていくということになりますと、私は、国際社会の中における日本の評価というものにまで関係するように気がしておりますので、その辺はひとつしっかりと見極めてご判断いただきたいという感じがいたします。
 それから、検討テーマの問題では、皆様からいろいろお話が出ましたけれども、私、ライフスタイルのところを読むと、何となく2010年まで見て楽しくないなという感じがするのです(笑)。先ほど、O委員が言われたように、1970年頃にはまだみんな夢があったけれども、これからどうなるのだろうかというときに、ハッキリ言って豊かさの追求には限界がないかもしれないけれども、豊かだったのです。豊かになった以上、ある程度豊かになった我々が21世紀にどんな生活を、どんな人生を歩んでいくのか、どんな生活をしていくのかということが中心に考えられていかなければいけないと思うのです。
その場合に、私は古い人間だからかもしれませんけれども、ファミリーという単位が1つの意味を持ってくる時代がまた復古調でくるのではないか。アメリカの社会ですら、そういうことが言われる時期がくるのではないかという感じがしております。それがないと経済的に豊かになっても社会不安が多いと犯罪が多発する、子どもたちは麻薬に走るとか、望ましい21世紀、2010年まででも、2020年でもよろしいのですけれども、望ましい日本の社会の在り方というのは、ある程度経済的にも豊かさは達成したけれども、しかし、社会不安のない住みよい安全な社会ということが1つの目的になるべきなので、そのときにそれを維持していく最低の単位がファミリーだと思うのです。これは少子化とどう関係してくるかという点はもちろん1つあるのですけれども、私は、決して一昔前のように、私もそうかもしれませんが、女性の犠牲の下に1つの家庭が構築されてくるということを言っているわけではないので、女性の犠牲の下でなくて健全な家庭というものがどうしたら維持できていくかという角度からの議論を、このライフスタイルの中に織り込んでいただきますと、何か1つ将来に対する明るさに結びついていくのではないかという感じがいたしておりますので、大変個人的な見解で恐縮でございますが。
 もう1点だけ大臣に申し上げたいのは、来年度予算を見ましても、橋本総理のお考えも、21世紀に日本が生き延びていくためには、一種の科学技術をしっかりしなければいけない、いわば科学技術立国という覚悟で、厳しい予算編成の中でもそこにはある程度の例外的な措置をおとりになるというふうに聞いておりますけれども、私は、そのこと自体は間違っていないと思うのですが、21世紀の日本というのが単に科学技術、科学技術だけでいきますと、これまた国際社会の中で気味の悪い国だと言われないか。私は、だから21世紀にはどうあるべきだというときには、経済外的な問題ですけれども、科学技術立国と文化立国のようなものが2本の柱で進んでいって初めて国際的にも、日本という国はこういう国なのだなという評価が得られるのではないかという気がいたしておりますので、生意気なことを申し上げましたけれども、それだけ発言させていただきます。


〔 Q委員 〕 今日の検討テーマのことでは、私は、既にN委員がおっしゃられたことに非常に近いのですが、今、地方が大変な窮乏にあって、検討テーマで地方の問題にまで踏み込まないと政策的に間違ったところを打ち出してしまうようなテーマがいくつかありそうだと感じています。
 私、土地・住宅というところに入っているのですが、土地・住宅はもちろんそういう分野でして、例えば土地の値段が下がっているということに対して、大都市と地方では全然問題の認識からして違うというところがありまして、例えば東京みたいなところですと、下がったとは言え、まだバブルの前よりは上のレベルにあるわけですから、かなり需要は減っております。それなりの付加価値をつけてあげればそこそこの開発ができて採算が取れるというような段階にあるわけですが、地方都市に行くと、採算が取れないので全くそういうことが起きる状況にないというところがもうほとんどで、特に中心市街地ではそういう状況になっています。
 ですから、地方と大都市あるいは中心・中核都市、それから東京以外の大都市圏と東京というのはまた全然違うという、その辺もかなり考慮した議論をしないと、オールジャパンの議論ですむような問題では多分ないだろう。
 ライフスタイルなんかも、かなりそれと相互の影響もあって、これはA委員が言われたように、人口構造そのものが大都市と地方都市ではかなり違うということもあって、必要だろうと思っています。
 地球環境もそういう意味では、同時に地方の問題であるわけで、特に土地・住宅と地球環境というのは、今、進められている分権というのが進んでくると、具体的な政策を打ち出していく税のような手段を別とすると、例えば計画的な土地利用規制であったり、そういうものを打ち出していくのは、これから地方自治体に権限が落ちていくだろうということを考えていくと、地方レベルでどういうことが行われるかというところまで見ていかないと、オールジャパンの姿もけっこう見誤ってしまうのではないかと考えています。
 とりわけ地球環境は、僣越ですけれども、環境問題はどちらかというと国よりも地方自治体の方が地球環境問題も含めていままで頑張ってやってきた。そういう経緯も含めますと、N委員はずいぶん控えめにおっしゃいましたけれども、地方という視点をテーマによってはかなり突っ込んでとらえていないと全体をも見誤ってしまうのではないかと考えております。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
 今の地方の問題も、短期の問題でも非常に重要で、おそらく従来公共投資でごまかしていたというか、支えていたのを外すとたちまち問題が噴出してくる。本当に自力的な地方からの経済の発展力をどうやって作り出すかというのが問われているのではないかという感じを持っております。


〔 R委員 〕 お話はいままでで尽きると思いますので、若干、感想みたいになりますが申し上げます。
 各部会のテーマなり方向というのは大いに関連しております。本当にどこが出発点かというのはなかなか難しいと思いますけれども、少なくとも各部会長の方同士でも時々お集まりになって進捗状況なり、連携なり、今後の方向等のすり合わせをやっていただくのが一番いいのではないかという感じがいたしております。
 そこで、一言だけ申し上げたいのは、今、ローカルの問題が出ましたが、私も基本的にはN委員、Q委員のおっしゃるような方向でローカルの問題を重視することが必要だと思っております。
 1点、環境問題として申し上げたいのですが、環境問題の基本というのは生態系をどう維持していくかということだろうと思います。今の議論というのは緊急避難だと思いますけれども、このままほおっておけばどんどんCO2 なり、メタンなり、フロンが増えてくる。それを緊急にどう抑えるか、いろいろ環境保全税とか炭素税とか抑える方向の話が出ておりますけれども、本当は生態系をどのように維持していくのか、例えば毎年 1,000万ha以上の熱帯雨林等が消滅しているとか、こういうのが基本的に環境を悪くしているということだと思います。そういう意味では基本的にもう少し環境問題というのは考える必要があるのではないか。
例えば今度の京都会議でも、排出量の抑制の水準は1990年ということになっておりますが、本当に1990年の水準で将来的にいいのかどうかというような問題もあろうかと思いますし、また、この中に排出権取引の実現性とか書いてありますが、排出権取引についても先程から出ているマクロの立場とローカルな立場で非常に違ってくると思うのです。先進国に発展途上国から圧力がかかってきて、そこだけ延ばしてもいいというのが本当にいいのかどうか、これについてももう少し大事な議論があっていいのではないかというような感じがしております。金銭のやり取りだったら、これは貸借の取引というのはあると思うのですけれども、環境問題というのは決して取引になじむようなものではないという感じがしております。
 このテーマは全体としまして、やはり国民一人一人が豊かで生きよい生活を過ごしていく、こういう社会を作るためにどうしたらいいかというのが基本的テーマだと思いますし、それに、先ほどP委員が言われた文化立国というのは基本的に一番大事な問題でしょうし、技術その他は手段の問題だというふうに思いますので、その辺についてもう少し抜本的な検討をお願いできればと思っております。


〔 部会長代理 〕 ありがとうございました。
いろいろご議論もございまして、この部会自身大きな幅広の問題を抱えていますので、どうやってこれから集約していくかということも大変難しい問題だと思います。
そろそろ時間でございますので、ご発言のなかった委員もいらっしゃいますが終わりにしたいと思いますが、ここまでご議論を聞いていただきましたので、大臣から一言ご感想でもお伺いできればと思います。


〔 尾見経済企画庁長官 〕 今日は飛び入りで参加させていただきまして、ご意見を伺わせていただきまして大変ありがとうございます。
 私の方は、15年先もさることながら、とにかくここのところ景気をしっかりしなければならないし、また、そういう中で、先ほど来のお話のとおり中長期的な観点も踏まえながらやっていかなければならないというふうに感じておりまして、大変に参考になるご意見をいただきまして、また、そのご意見を踏まえてやらせていただきたいと思います。
言えば、がまんのしどころでもございまして、中長期的な観点から日本経済の体質を強化して活性化をして体力を回復して、自然の治癒力で病気を治すというような感じの考え方をしておりまして、とりあえずの熱さましのカンフル注射を打って凌ぐということがなかなかしにくいし、中長期的に見て適切でもないというふうに考えているものですから、非常に大変なことなのでありますけれども、そういう方向でしていきたい。そして、そういうことをしっかりやることによって、先ほど申し上げませんでしたが、いわゆる国民一般、消費者といいますか、そういう方々も、それから企業も実はお金はかなり持って懐が豊かであるという感じもいたしておりまして、問題はむしろ将来に対するコンフィデンスといいますか、そういうものが実を言うと投資とか消費とかに響いてきているのではないかという感じもありますので、そういうコンフィデンスをしっかりしていただくような対策を出して、そして、先ほど来のお話のように地方も中央も含めまして、将来展望が持てるような、そういうことを国として方向づけていくことが大事なのではないかというふうにも思っております。
今、お伺いしましたご意見を、また一生懸命検討させていただきまして、対応させていただきます。
それからまた、展望の部会の方は中長期的な、むしろ長期的な課題でございますので、そういう課題もまたいろいろ折りに触れましてご意見も伺いますが、是非、皆様のお考えを聞かせていただき、日本の国の長期的な在り方といいますか、そういうものをまたいろいろと方向づけてまいりたいと思っております。
今日は大変いい機会をいただきましてありがとうございました。


〔 部会長代理 〕 どうもありがとうございました。
それでは、先ほどお話のありました各グループ等の連絡等については事務局の方でやり方その他さらに詰めていただくようにお願いしたいと思います。
また、大きな会議を開くというのは大変でございますので、各委員、おそれいりますがファックスなりメモなりで事務局の方に出していただければありがたいと思います。お願いいたします。
今後の会議の日程等について事務局からお願いします。


〔 事務局 〕 次回の会合でございますけれども、11月20日(木)午後2時から4時まででお願いしております。よろしくお願いいたします。
 次々回は12月18日(木)午前10時から12時までお願いしております。よろしくお願いいたします。後ほどまた正式に文書でご連絡申し上げます。


〔 部会長代理 〕 それでは、第3回経済社会展望部会の審議は以上で終わりたいと思います。 どうも長時間ご熱心にご討論いただきましてありがとうございました。

--以上--