経済審議会経済主体役割部会 (第3回)

議事録

平成9年10月15日(火)14:00~16:00

共用第一特別会議室 (1212号室)


議事次第

  1. 開会
  2. 「6分野の経済構造改革」のフォローアップと拡大・深化
  3. 官民の役割分担
  4. 企業部門の課題
  5. その他
  6. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1.経済審議会経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2.ワーキンググループ構成員名簿
  3. 資料3.「6分野の経済構造改革」のフォローアップと拡大・深化について
  4. 資料4.社会資本整備の課題(官民の役割分担の視点から)
  5. 資料5.「企業部門の課題」に関する参考資料
  6. (参考資料)「経済審議会建議 6分野の経済構造改革」

経済審議会経済主体役割部会委員名簿

 

 部会長   水口  弘一    (株)野村総合研究所顧問
 部会長代理 金井   務    (株)日立製作所取締役社長
       潮田  道夫    毎日新聞経済部副部長
       浦田  秀次郎    早稲田大学社会科学部教授
       奥野  正寛    東京大学大学院経済学研究科教授
       川勝  平太    早稲田大学政治経済学部教授
       河村  幹夫    多摩大学経営情報学部教授
       神田  秀樹    東京大学大学院法学研究科教授
       公文  俊平    国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長
       ポール・シェアード   ベアリング投信株式会社ストラテジスト
       末松  謙一    (株)さくら銀行相談役
       竹内  佐和子    長銀総合研究所主席研究員
       鶴田  卓彦    (株)日本経済新聞社代表取締役社長
       得本  輝人    日本労働組合総連合会副会長
       豊島   格    日本貿易振興会理事長
       那須   翔    東京電力(株)取締役会長
       西村  清彦    東京大学大学院経済学研究科教授
       樋口  美雄    慶応義塾大学商学部教授
       グレン・S・フクシマ  在日米国商工会議所(ACCJ) 副会頭
       星野  進保   総合研究開発機構理事長
       星野  昌子   日本国際ボランティアセンター特別顧問
       森地   茂    東京大学大学院工学系研究科教授
       諸井   虔    秩父小野田(株)取締役相談役
       山内  弘隆    一橋大学商学部助教授
       山口  光秀    東京証券取引所理事長
       吉野  直行    慶応義塾大学経済学部教授
       米倉  誠一郎    一橋大学イノベーション研究センター教授
       和田  正江    主婦連合会副会長


〔 部 会 長 〕 定刻になりましたので、ただいまから、第3回の経済主体役割部会 を開催させていただきます。まだ、二、三遅れられる委員もございますけれども、定刻で ございますので、開催させていただきます。  本日は委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがと うございます。  本日の議題に入ります前に、前回私にご一任いただきました各ワーキンググループのメ ンバーについてでございますが、お手元の資料2のようにさせていただきたいと存じます。 また、各ワーキンググループの座長につきましては、本日の会合以降、部会委員として当 部会にご出席いただくようお願いいたしたく存じます。私の方からワーキンググループの 座長をご紹介させていただきます。  民民規制ワーキンググループは、荒木襄委員です。  NPOワーキンググループは、本間正明委員です。  雇用・労働ワーキンググループは、樋口美雄委員です。  本日は、荒木委員にご出席をいただいておりますのでご紹介を申し上げます。  どうぞよろしくお願いいたします。  さて、本日は議題が3つございます。  第1は、「6分野の経済構造改革」のフォローアップとその拡大・深化についてでござ います。  第2が、「官民の役割分担」についてでございます。  第3が、「企業部門の課題」についてでございます。  まず第1の議題であります「『6分野の経済構造改革』のフォローアップとその拡大・ 深化」についてでございます。  今月1日に尾身大臣より、「財政事情の厳しい中、経済の活性化を図るために、早急に 経済構造改革等の行動方針を示し、国民のコンフィデンスを高めることとしたい。ついて はその一環として、『6分野の経済構造改革』について、その拡大・深化を含めてフォロ ーアップしてほしい。」という旨のご依頼をいただきました。  私からは、「景気の先行きが不透明な中で、6分野に限らず分野を広くとって短期的に 効果のあるもの、中長期的な視点で行うものの両面で議論をさせていただきたい。」と発 言いたしまして、お引き受けした次第であります。昨年の6分野の各座長にも再度ご協力 をお願いいたしまして、進めてまいりたいと思います。  それでは、具体的な進め方につきまして、事務局より説明をお願いいたします。どうぞ お願いします。

〔 事 務 局 〕お手元に資料3という一枚の紙がございますのでご覧いただきたいと 思います。「『6分野の経済構造改革』のフォローアップと拡大・深化について」とござ います。10月3日の閣僚懇談会におきまして、橋本総理から、規制緩和をはじめとする経 済構造改革の可能な限りの前倒しと新たな施策の追加へ内閣を挙げて取り組む必要があり、 関係閣僚は緊密に連携し取り組むようにとの指示がございました。また、その際、尾身経 済企画庁長官からは、「6分野の経済構造改革」のフォローアップ及びその内容を拡大・ 深化させる形で、今後進めるべき有効な施策を早急に検討すること、そのために各省庁の ご協力をお願いするという発言がございました。  これを受けまして経済審議会としては、6分野を中心とします経済構造改革のフォロー アップ作業と位置づけて作業を行うこととしたいと考えております。  先ほど、部会長からもお話がありましたように、10月1日に部会長及び6分野の旧座長 と、尾身大臣の懇談会が開かれておりまして、ここに書かれていますような趣旨をお願い し、いわば事実上の第1回目の作業的なものがあったわけでございます。  私どもの方では、それ以降、事務局といたしまして、経団連などをはじめとした関係団 体、あるいは6人の座長からのヒアリングを、これは個別でございますが、いろいろ鋭意 進めているところでございます。  その下にございますように、「『経済構造改革ワーキンググループ』の設置」でありま すが、繰り返しになりますけれども、経済主体役割部会の下に「経済構造改革ワーキング グループ」を設置しまして、昨年12月の経済審議会建議「6分野の経済構造改革」に掲げ られました諸施策の着実なフォローアップ、それから同建議の内容の拡大・深化を図るか たちで今後、進めるべき重要な規制緩和策等を盛り込んだ提言を早急に取りまとめるとい うことでございます。  メンバーは、9名お願いをいたしたいと思っておりまして、水口部会長に座長をお願い し、香西・展望部会部会長代理に座長代理をお願いしたいと思っております。  それから、民民規制のワーキンググループの座長をお願いしております荒木専務理事、 池尾教授、岩田教授、島田教授、滝上社長、中条教授、南部教授、旧6分野の座長の方々 でありますが、以上9名でメンバーをお願いするというふうに考えております。  一番下の「スケジュール」でございますが、本日この役割部会にて、ワーキンググルー プの設置をお認めいただきますれば、来週の水曜日の22日に第1回のワーキンググループ を開催しまして、フォローアップとその拡大・深化の取りまとめの作業に着手して、早急 に結論を得るべく検討を進めたいと考えております。  スケジュールはこれだけしか書いてないのでありますが、前回・第2回の役割部会でご 説明をしておりますが、経済計画などのフォローアップを12月、できれば早めに経審の総 会を開いてというふうに仮置きをしております。これは仮置きですが、こういうスケジュ ールを考えますと、このワーキンググループの作業も急ぐ必要があると考えているところ でございます。いずれにいたしましても、スケジュールのとり進め方については、これか ら検討をしてまいりたいと考えております。 以上、事務局からご説明申し上げました。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。 ただいまご説明のありました具体的なとり進め方及びフォローアップの内容につきまし て、何かご意見がございますでしょうか。 特段ご異議がないようでございましたら、そのようにとり進めさせていただきます。何 分にも時間も限られておりますし、また責任も重大でありますので、何とぞ今後ともご支 援、ご協力をお願い申し上げます。 それでは、次に、第2の議題であります「官民の役割分担」について、事務局より説明 をお願いいたします。

〔 事 務 局 〕 それでは、資料4に基づきまして、事務局から説明をさせていただ きます。  「官民の役割分担」につきましては、先般のこの部会におきまして、社会資本を1つの 題材として「社会資本整備における民間活力の活用」という観点からご議論をいただけな いだろうか。あわせて、社会資本整備につきましては、地域における社会資本の整備を今 後の財政構造改革の下でより着実に進めるためにどんなことを考えていったらいいか、と いうことでご議論いただくように言われておりました。  本日の資料でございますが、ちょっと違った切り口といいますか、社会資本整備につき ましては、個々に各分野ごとの施設の整備量でありますとか、いろいろなことを今まで説 明していたわけですが、本日につきましては、社会資本のフローとストックという観点か らご説明をまずさせていただきたいと思います。それから、社会資本整備における官民の 役割分担と民間活力の活用ということで、資料を説明させていただきます。  資料の1ページをお開きいただきたいと思います。社会資本を考えますときに、現在の 投資の状況がどうなっているかということでございますが、この1ページの上の表ですけ れども、大都市圏と地方圏とに分けまして、この区分につきましては下に書いてあります ような関東、東海、近畿を一応、大都市圏として整理をしております。全体で14ブロック ということで、自治省の出しております「行政投資実績」の中からピックアップをしてお りますが、この上のグラフにありますように、地方圏と大都市圏の投資のシェアの比率と いうのは過去、かなり典型的な変化をしております。まず、現在の状況ですと、枠の中に 書いてありますように、1980年度(昭和55年度)以降、大都市圏への投資比重が再び増加 しているという状況ですが、ずっと見てみますと、昭和43年から47年ぐらい、地方圏のシ ェアで見ますと緩やかに上昇してきているものが、その後の5年間ぐらい、昭和54年ぐら いまでに急激に増えてきて、大都市圏のシェアに近づいている。その後数年間、大体コン スタントなのですが、地方圏についてはわずかずつ減少していて、さらに61年度以降、か くんと落ちている、平成3年まで落ちている。また最近、盛り返しているという状況でご ざいます。  2ページをご覧いただきます。全体の大きな枠組みはそのようなことでございますが、 今後、社会資本を考えるときに、1人当たり今、どれぐらいの投資をしているか、あるい は1人当たりどのようなストックを使っているかという観点で、フローですが、右の表が 1975年度以降、1人当たりの大都市圏・地方圏の整備額の格差でございます。大都市圏と 地方圏の格差は、地方圏の方が1人当たりの投資額が多かったのですけれども、最近ちょ っと縮まって、また少し開き始めている。さらに、このもっと前、昔を見てみますと、昭 和40年、左の方にありますが、大都市圏の投資の方が1人当たりで見ても高い時代がござ いました。現在、1994年のデータが一番最新ですが、下の枠囲いに書いてありますような、 各分野ごとの生活基盤ですとか、産業基盤ですとか、そういう投資分野ごとの比率で見て みますと、大都市圏が生活基盤が56.6%に対して、地方圏が40.4%というような感じにな っております。 これを地域ブロックで見ますとどうなるかというのが、3ページ以降でございまして、 それぞれ円グラフで書いております。投資額に合わせて円の大きさを変えればよかったの ですが、ちょっとそこら辺まで作業ができておりません。これは大都市圏を3ページに載 せておりますが、基本的に、関東臨海それから近畿臨海というのが、ある意味で投資パタ ーンがよく似ているということでございます。いずれも生活関連の投資のシェアが62%、 56%。さらに、近畿 (内陸) が次に続くような、54%という投資のシェアになっておりま す。  4ページ、5ページが、各地方圏と言われるところの投資のシェアでございますが、大 都市圏と比べて、当然のことながら、生活基盤に投資するのは相対的に低くなっておりま す。そのかわり、産業とか、農林水産とか、国土保全のシェアが高くなっております。  こういう分類で、例えば中国、山陽というので見てみますと、生活分野のシェアが地方 圏は高いわけですが、これは前のページの3ページ目の関東(内陸)部の投資のパターン に非常によく似ているということ、これは大きな地方圏の括りですけれども、そういうこ とがわかると思います。  6ページですが、社会資本ストックの過去の推移というのをグラフにしております。ご 承知のように、社会資本のストックというのは着実に増加しておりまして、その額につき ましては、93年度末に、90年暦年価格で私どもは統計をとっておりますが、約 617兆円に 達しております。約30年ほど前の1965年に比べると、そのストック額は10倍ぐらいに達し たことになっております。最近、65年度から79年度までは、その対前年伸び率が、下のグ ラフにありますように、非常に高い伸び率を示しております。この間でストックが5倍に なっているということを書いてございます。 こういうストックを各分野ごとに見てみますと、これは7ページ以降です。ちょっとお 断りをしないといけないのですが、地域の区分については、先ほどの区分と同じ14ブロッ クにしております。ただし、投資の分野というのが過去、私どもにおいて統計をとってお りますのが、先ほどの行政投資実績と一部違っているのがございますが、基本的にはほぼ 同じところをカバーしているということで、一応比べられるように書いております。これ を見てみますと、各ブロックごとの現在の社会資本のストックというのが書いてあります が、当然のことながら、関東臨海、近畿臨海といった人口の多いブロックで非常に高く積 み上がっております。 さらに、分野ごとに見てみますと、このグラフではちょっと見にくいので、次の8ペー ジで分野ごとに一応分けておりますが、人口の多いブロックで、交通ですとか生活環境と いうのが高く積み上がっている。あるいは、面積の多いブロックでは、農業・漁業という 分野のストックが積み上がっているということでございます。  9ページですが、これを1人当たりで見たらどうだろうか、面積当たりで見たらどうだ ろうかということで、それぞれ分析をしているものでございます。1人当たりで見てみま すと、北海道のストックが一番高くなっております。1人当たり 600万の社会資本をもっ て現在、北海道の皆さん方は生活をしているというふうに読んでもいいかもしれません。 それから、地方圏での中国山陰とか北陸とかいったところのストックの多さが目立ってお ります。 生活環境分野につきましては、次の10ページをご覧いただきますと、関東臨海、近畿臨 海、あるいは近畿内陸もそうですが、かなり同じような1人当たりのストック額というこ とで積み上がっております。交通分野につきましては、その上ですが、北海道、関東臨海 とか、近畿内陸とかいったようなところもあります。 とびますが15ページをご覧いただけますでしょうか、人口とそれぞれの部門のストック 額との相関がどうなっているかというのを念のためにとってみました。1人当たりで見ま すと、相関が一番高いのは環境部門でございまして、環境部門の1人当たりはこういう形 になりまして、相関計数も0.97と非常に高いものがございます。これを今度はどういうふ うに評価するかという問題がありますが、この線に近いものであれば、例えば、1人当た りで見て、地域間格差というのはあまりないというふうに見るのか、あるいはちょっとで も外れていれば、そこまで戻すような、そこに到達するようなことがこれから必要なのか、 というようなことが読み取れるかと思います。 次に11ページですが、面積当たりで同じように見てみました。同じような分析をしてみ ますと、16ページですが、この部分は、面積との相関が高いのが農業・漁業のストックと いうことになっております。 もう一つ、13ページには√APという、面積と人口の積のルートという、これは地域計画 を立てるときに「単位面積当たりの施設量が人口密度の平方根に比例する」といった仮定 などで指標を作っているのがありますので、これで見てみますと、13ページに示していま すように、関東臨海、近畿臨海が高いのですけれども、同じように相関をとりますと、17 ページですが、今度は国土保全という分野のストックというのがこの「面積と人口」とい うのに大体合っているようで、相関が強いものであります。交通部門でも、多少そういう のが見られるかなと思ったのですが、3ブロックほど、この直線から外れているのがあり まして、これも分析をしてみてもおもしろいと思います。  以上が現在、各ブロックでの投資のフロー、それから、それによってできたストックと いうものの実態でございます。  18ページ以降が、社会資本整備における官民の役割分担と民間活力の活用ということで ございます。これはくどくどご説明しない方がいいかと思いますけれども、現在、世界で 見ますと、欧米諸国やアジア諸国でいろいろな社会資本に民間活力を導入するという、BO T (Build- Operate-Transfer) 方式ということが言われております。これを私どもはちょ っと分析をしております。BOT の各手法につきましては、18ページの表にちょっと載せて おりますが、便宜的にその3種類ほどに分けております。民間が建設して、一定期間所有 して運営をした後で、施設を公共主体に譲渡するという、BOT (Build- Operate- Transfe r)方式。あるいは民間活力がそのまま持っているという、BOO (Build Own Operate)方式。 あるいは昨今、東京湾横断道路で使われましたが、民間が建設をし、その後で施設を公共 主体に譲渡するという、BT(Build- Transfer) 方式。この3つがあります。  19ページですが、(参考)としてPFI (Privat Finance Initiative) 、これはイギリス あたりで広く行われていることでございますが、これは社会資本だけでなくて、公的部門 全体が提供しているサービスなどを民間主体に委ねるという観点で進められているもので ございます。これにつきましてはまた別途、その議論の場がこの役割部会で設けられると 思いますので省略をさせていただきます。 それから、BOT の実績、ちょっと見にくくて恐縮ですが、19ページの下に載せておりま す。 20ページは、東京湾横断道路の事業方式というのを簡単な図に示しております。 代表的な事例としてどの事例を挙げたらいいか悩んだのですが、21ページに、カナダの ノースアンバーランド海峡を横断するプリンス・エドワード連絡橋というのがあります。 これが今年5月にオープンしております。ここは従来は、国営フェリーが運航していたの ですけれども、国営フェリーの赤字が物価上昇を上回る勢いで増加しているということで、 BOT 事業でコンペを行いまして、政府が提示する条件、すなわち、フェリー赤字額に物価 指数を連動させた金額を毎年補助金として交付する、というのを下回る補助額をもって事 業を推進されるものを案として選んで、この橋の建設をすることになったわけです。その 結果、フェリーと橋の料金比較ということで、フェリー料金がこのままいくとどんどん上 がっていくのに対して、橋の料金というのは下がるということで、既にオープンしてから 4、5カ月が過ぎておりますが、交通量が3割ぐらい増えたというような情報もございま す。こういう方式でやっているものであります。  もう一つ、失敗例として挙げられているかどうかわかりませんが、22ページにユーロト ンネルの例というのが1つ、外国でいろいろ問題となった例ということでご紹介しておい た方がいいかなと思って、書いてございます。英仏海峡に1994年にオープンしたこのトン ネルにつきましては、当初、48億ポンドでできるだろうということで建設したのですけれ ども、その後、オープンまでにいろいろな安全対策の経費等がございまして、 103億ポン ドということで、2倍半近い経費がかかった。その後の営業収入ではとても金利負担が賄 えないということでございます。  23ページは、経済審議会で、ちょっと古いのですが1992年に、同じようなテーマで議論 がされましたときに、官と民の役割というのをこういうふうなグラフで整理してみたらど うだろうか。1つは、シビルミニマムという観点で切る。それから、受益者負担の可能性 ということで、「排除困難、受益者・原因者の特定困難」というところで切ると、いくつ かの次元が出てくる。この中で、特に一番右下のブロックですが、これが官と民の分担が 非常に流動的に動くところであって、これについて非常に前向きに議論しましょう、とい うのがこのときの状況でございました。今回も、こういう議論をこの場でさせていただけ たらと思います。  時間がございませんので、恐縮ですが、24ページ、25ページは、総理府が行いました「 社会資本の整備に関する世論調査」でございます。ずいぶん昔から調査をしておりますが、 最近、特に「ある程度民間の力を導入して社会資本整備を行うべきだ」、あるいは「積極 的に導入すべきだ」、そういう声が大きくなっている。これは当然、地方部と都市部、特 に東京との間では若干差があるわけですけれども、そういう傾向が見られる。 25ページは、その中でも、どんな施設に導入するべきかというので、やはり身近な施設、 福利厚生・医療関係施設とか、公園とか、地域の道路とか、文化施設とか、こういったと ころに一般の方々の民間活力の導入の関心が高いということでございます。 26ページですが、前回の役割部会で、第三セクターはどんな問題があってうまくいって いないのだろうかという話がございましたので、ある本から紹介させていただきますが、 基本的に、1980年代の臨時行政調査会での検討以降、かなり広範囲にわたって第三セクタ ーが各地域でつくられたわけですけれども、言えることは、特に事業の収益性が低い、こ れは当然、最初からそういうふうに考えていたのですが、その収益性の低さをもたらして いるものが、当初の事業費の見込みが甘かったとか、あるいは事業見込みが過大すぎたと か、あるいはその後の経営に当たっての企業意識の不足ですとか、責任が不明確というこ とで、運営とかが非効率というのが指摘されているのが現状でございます。 27ページ以降、地域経済と社会資本整備ということで見ております。地域間経済の格差 というのは総じて縮小傾向にあるというのが、28ページのグラフでございますが、これは 人口1人当たり県民所得の格差指数、それと三大東京圏への流入人口数というのを経年的 に追いかけているのですけれども、ちょうどその格差が急激に縮まった70年以降、79年ぐ らいまでというのは、先ほどの1ページにございましたが、ある意味で地方圏での投資が 相対的に大都市圏に比べて増えた時代が、こういうような傾向になっております。  今後、地域経済の課題として、28ページにありますような、産業の誘致、高度情報社会 の構築、広域的なネットワークの形成、地方分権、それから社会資本整備の充実、いろい ろな課題がございます。  こうしたものに対して、29ページで、例えば情報化という切り口で地域を考えている例 として、高知と岡山、それから既に動いていますが、大分の「豊の国情報ネットワーク」 というのをご紹介させていただいております。  もう一つ、情報と同じように、環境という切り口で地域の活性化を図ろうとしている例 がございます。これは32ページに、ちょっと特殊な例になるかもしれませんが、屋久島の 事例をご紹介させていただいております。屋久島の場合は、縄文杉とか、そういうすばら しい世界自然遺産というのがあります。こういったものを、あの閉ざされた島の中で資源 循環型「ゼロエミッション」という地域づくりをするということで、いろいろな試みがな されております。1つは、新しいエネルギーシステム、それから廃棄物をゼロにするシス テム、その中で地域資源をどのように活用していったらいいか。かなり具体的にその活用 とか設備、運動が展開されている事例でございます。  33ページ以降、全国総合開発計画あるいは経済計画での諸目標というのをご紹介させて いただいております。全国総合開発計画につきましては、昨年の12月に中間報告が「国土 審議会計画部会調査検討報告」ということで、35ページにありますようなものが、途中で 出されておりまして、これに基づいて現在、再び検討が開始された状況でございます。 37ページですが、「地方分権の推進等」ということで、これは公共投資基本計画におい てどのように位置づけられているかというのをご紹介しております。1つは、住民に身近 な社会資本の整備は地方が、利益が広域に及ぶ社会資本の整備は国が主体になって行うと いうことでございます。その地域の整備に当たりましても、地方の判断に委ねることによ り、地域のニーズを踏まえて、効率的な整備が進められるようにしていくということでご ざいます。  それから、37ページの下の方は、先般の財政構造改革の閣議決定がされましたものを受 けまして、公共投資基本計画についての扱いというのが、従来の計画を3年間延長すると いうことで、実質的な縮減を図るということを言っております。  それから、38ページにつきましては、この期間中でも、集中改革期間において、毎年そ の水準の引下げを図る。さらに、10年度の公共投資予算については9年度比7%マイナス、 というようなことを書いてございます。  39ページ、40ページは、地方と大都市で、公的な固定資本形成でありますとか、あるい は建設業に従事している人の割合というのが、かなり大都市に比べて高いというのを紹介 しております。 41ページですが、「欧州における社会資本整備のあり方」ということで、前回の役割部 会におきまして、竹内委員の方から、上に書いてございますような、国や県や市がそれぞ れいろいろな計画を策定しており、地域が何をどの程度整備する必要があるかというのを チェックできる仕組みになっていないということで、そういう仕組みを考えるべきではな いかというご発言がございました。これにつきまして、竹内委員が雑誌に載せられていま すレポートがございましたので、申しわけございませんが、載せさせていただきました。 ポイントはいくつかあろうかと思いますが、例えば、フランスの地域計画基本構想とい うのを作るときの例が書いてございますけれども、1つの基本は、地域ごとに、5年間と いう、経済計画とリンクするような形の中で、政府と地方との財源配分をテーマごとに定 めた資金分担計画を作るということでございます。各分野ごとの施設をどれぐらいつくる か、それをどんな分担で、どんな金額の分担でやるか。これを作るのは、国の出先機関が 作るようでありますが、これまたちゃんと法律として位置づけて、全国でまとめるという ようなことでございます。  それから、同じくドイツの事例でございますけれども、Fプランという、これは日本で 言えば都市計画的なものの少し広い範囲のものになるかもしれません。これは15年ぐらい のオーダーで全体のマスタープランを作る。その中でBプランという、地区の詳細計画と 言われていますが、5年間ぐらいで実行可能な計画を作る。そういうような、実際にある 地域で個々の施設がうまく全体として整備されるような、しかも、優先順位といいますか、 実行可能な投資計画に基づいてやられているということでございます。  43ページですが、本日の論点として、1つは、「社会資本整備における民間活力の活用」 として、まず1点目に、「政府開発援助等において普及しているBOT 等の方式は、我が国 社会資本整備にも本格的に導入できないか。」ということでございますが、1つのこうい う方式が導入可能な社会資本の分野は何か、それから、大都市圏と地方圏といった地域に よる導入の可能性の違いについてどう考えるか、それから、我が国に導入するに当たって の課題は具体的に何か、また、そのときに官のサイドで行うべき条件整備はどのようなも のがあるか、ということでございます。2点目に、民活が本格的に取り組まれるようにな った1980年代以降、三セクの設立が急増したわけですけれども、その三セクというのをど う考えるかということでございます。  それから、44ページには、「地域経済と社会資本整備等」ということでございますが、 ただ漠然と問いかけをしているわけですけれども、財政構造改革の下で公共投資の縮減が 地方経済にマイナスを与えるおそれがあるが、地方でも民間主導の経済成長が基本であり、 それを支援する社会資本整備とは何だろうか。民間活力設備投資や住民の定着に必要な社 会資本は何かということでございます。それから、地方において生活関連社会資本整備は まだまだ不足しているという声がございます。これを長期的に着実に進めていくために、 どのような工夫を行っていく必要があるか、という論点でございます。  ちょっとはしょりまして、わかりにくいところがあったかと思います、お詫びいたしま す。以上でございます。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまご説明のありました議題であります「官民の役割分担」について、 どうぞご意見、ご議論をお願いしたいと思います。

〔 B 委 員 〕 43ページの「論点」のところに関係をして少し意見を申し述べたい と思います。 まず、論点として挙げられている中の社会資本の民活の問題で、これはこれでいいので すけれども、その前段として、恐らく、社会資本はどれだけ必要か、そういう議論がある のだろうなと思いますが、それは置いておきまして、もしそうだとして、何らかの社会資 本が必要であるというような合意があると、民活をした方がといいますか、民間活力を利 用した方が適切であるというのは、先ほどの世論調査等からも明らかであるように思いま す。 そのときに何が問題かということをいくつか挙げたいのですが、1つは、80年代に、三 セクの話が43ページの下の方に出ていますが、それ以外に民活としてかなりの事業が行わ れて、それがどういう問題点を持っていたのか、そういう総括をする必要があるだろうな というふうに思っています。ですから、ここでの議論もそういう総括に基づいて、その上 でどうするべきだという議論であるべきだと思います。 それから、具体的なこの「論点」のことで言いますと、基本的に、民活をどういう分野 でやるべきかということを先見的に議論するのがいいのか、あるいは結果的にそれが民活 としてできるかどうかという形になるのがいいのか、その辺のことがあると思います。  先ほど、参考のところでPFI のことをちょっと触れられまして、これについてはまた議 論する機会があるというようなお話があったわけですけれども、イギリスのPFI の場合に はいくつか多様な方式がありますけれども、ある意味では、このPFI というのは、何か事 業があったときに、それを効率的にやるにはどうしたらいいかというのを、公でやるか民 間でやるかを比較しながら、そこでその答えを出していく。私のさっきの言い方で言いま すと、結果的に民間ができるものというのが決まってくるようなものだと思います。PFI の方式がすべて万能であるとは思いません。しかし、そういった意味で結果的に民活の分 野として出てくるものがあるということ、そういう事実も認めるべきだと思います。  確かに、財の性質として、公共財の概念から官民の分担というのも、もちろん、演繹的 議論としてあり得ると思いますし、基本的方針としてはいいかと思いますが、具体的な策 というのは、恐らく、何ができるかということで切っていった方がいいのではないかとい うふうに思います。  それで、PFI の件ですけれども、ここで社会資本ということでBOT の議論が中心になっ ていますけれども、PFI の概念を使えば、ある意味ではBOT の概念もそれに含まれてくる というようなことだと思います。例えば、PFI の場には、自立的にやる事業とか、あるい は公共サービスを何か提供するのに民間にやらせるアウトソーシングみたいなやり方とか、 あるいは公と民が一緒になってジョイントベンチャーを組むとか、大体そのようなやり方 に分けられると思いますけれども、技術的にやればBOT の形になりますし、それからジョ イントベンチャータイプというのは、形式的には日本で言うと三セクみたいな形になるの かもわかりませんが、それから、先ほど言いましたように、サービス提供ということでは アウトソーシングということになる。そんなふうに非常にフレキシブルですので、BOT と いうことでこだわらずに、いろいろな議論をして、何の条件を緩めたら、あるいはどうい う制度を作ったら民間が入ってこれるか、というようなことを詰めていくべきだと思いま す。  大体、社会資本のケースで言うと、先進国で、BOT でスクラップで何か大きな施設をつ くるというのはリスクが大きすぎてなかなかできないという気がするのですが、その場合 でも、例えば、イギリスの有名なクイーンエリザベス二世橋のように、橋をつくるときに トンネルと同じ事業体にして、独占権を付与してリスクを下げているとか、いろいろなや り方でできる道はあるのかなと思います。ですから、BOT も1つの方法として考えますし、 それからジョイントベンチャータイプも、三セクとの対比で見てみるとおもしろいのでは ないかと思います。  以上が私の意見でございます。

〔 C 委 員 〕 私は、B先生ほど専門ではないのですが、まず1つは、全体の流れ の中で公共投資の乗数効果が下がってきているということが言われていると思いまして、 私などが今調べていますと、その中で民間投資の所得弾力性というのが公共投資の限界に 一番響いているのではないなというのがあります。あと、輸入性向が増えている。その2 つぐらいがありまして、いかに社会資本が民間の投資あるいは民間の活力を促すように使 われるかどうかということが1つ問題ではないかと思います。  特に、先ほどのいろいろな地域の説明の中で、人口と面積で切っていただいたのですが、 その切り口だけで本当にいいかどうかということだと思います。 社会資本の生産力効果というのをいろいろ経済白書がやっておりまして、それを見ます と、社会資本の1人当たりの生産力効果が高いのは、東海、近畿、関東地方というところ でありまして、四国とか北海道というのは社会資本の生産力効果は非常に低いわけです。 そうしますと、地方にやるのか、それとも景気を引き上げるためにやるのかという意味で、 社会資本の効果を考えることも必要だと思います。  それから、B先生のお話はBOT のところですが、18ページにBOT 、BOO 、BTの3つご説 明があるのですが、これはすべてBuild は民間企業が建設をしまして、それを公的部門に 渡す、こういうことですけれども、逆に、官がそれを設立しまして、運営とか何かオペレ ーションを民に任せる、こういうことも可能ではないかと思います。 例えば、空港ですと、建てるためには用地の買収とか、なかなか民間ではできませんの で、公的機関が空港の建設を援助し、その後、オペレーションの方はすべて民間に任せる。 そういう方法も、BOT とちょっと逆になると思いますが、Build は官がやりまして、オペ レートは民にトランスファーする。 それから、同じようなことですけれども、現在、よく保育施設とか老人ホームのことで、 家賃が高いというふうに言われるわけです。女性の社会進出が盛んでありますと、子供さ んの保育施設とかアフタースクールというところで、本当にやると十何万かかってしまう。 その大きな理由は、そこで民間でやっている場合の家賃の支払いが高い。そうであれば、 官が、例えば区役所とかいろいろな施設の上を提供するとか、そのオペレーションは民間 に任せてあげるという方法があるのではないかと思います。 それから、最後の43ページのところで、社会資本の整備でどのような工夫があるかとい うことですが、私、これは全然専門ではないですが、生活環境整備関連資本で多いのは上 下水道であると思うのです。例えば今、地方でも下水道の線をずっと長く引くということ が言われておりまして、それは人口密度が高いところではそういうふうに下水道を長く引 くというのはいいと思うのですけれども、例えば、技術進歩があれば、コンパートメント 方式で、それで下水道を処理する。そういう技術進歩にお金を出して、それで、むしろ下 水の長い道路をやめるとか、そういう工夫というのはいくらでもあるのではないかと思い ます。  最後は、37ページの地方への社会資本のやり方ですが、ご承知のように、アメリカでは レベニューボンドというのが使われておりまして、免税債を発行して、それぞれの事業を やるために、そこでお金を民間から集める。そうしますと、少しぐらい収益率が悪くても、 やはり我々はこういう橋がほしい、あるいはこういう道路がほしい、そういうところで住 民の方たちがそのレベニューボンドを購入されて、それで事業ができるというようなこと があります。ですから、日本でもぜひそういうふうに、地方の自立をうまく促すような方 法も考えていただければと思います。 以上です。

〔 A 委 員 〕 前半はどちらかというと、社会資本をより全国的な規模で検討して、 後半はちょっとBOT の話がきたのですが、この2つの関係をどういうふうに考えるかとい うところにポイントがあるのではないかと思うのです。つまり、BOT が導入可能な社会資 本というのは、基本的に投資額と利用効率が見合っているという前提になりますので、今 までの社会資本というのが、どちらかというと不便な部分と便利な部分を照らし合わせて いるだけで、これだけやればこれだけ便利になりますという考え方で、マイナスは今こう むっている不便さというようなものだったのですが、BOT になりますと、まず投資額がい くらになるかということをきちんと大きな前提に置いて、何年で回収できるかということ になりますと、BOT に即したものと即さないものがどうしても出てくると思うのです。  恐らく、BOT というのは、どちらかというとミニマム以上のサービスで、なおかつ非常 にニーズが高くて、なおかつ人口がある程度密集していて、利用者の数が確定できるよう なものということになりますと、今、ヨーロッパでは一番なじみやすいのは上下水道、水 道サービス・プラス排水に関するウォーターカンパニーのような形が一番いいと思うので すが、これで考えると、例えば、今の地方の水道局の扱いをどういうふうにやるかという のが1つ大きなテーマになりまして、こことの接点、例えば、治水との関係とか、衛生と か、環境条件ないしは排水処理に対してどのような、いわゆる料金の徴収方法をとるかと いうことを明確に定めてやっていく必要があると思います。ただ、これもBOT 独自だけで は、恐らく成り立たないので、その地域のいわゆる水全体の計画とうまく整合させないと、 いいところだけがBOT になって、そういった公的インフラはまた別の税金を使うとかとい う形になるので、そこが本当に公的な部分と、料金で回収できる部分との水準の差という か、そういうものをはっきりさせるというのが、この【2】のところにも関係が出るのではな いかと思うのです。  日本の場合には、むしろ、BOT でできる部分ができなくなっているのは、非常に大規模 なプール制のような形が導入されていて、採算がとれていても、そのお金はどこかほかの プロジェクトに回ってしまうとか、高速道路では、ある利益収入があると北海道に行っち ゃうとか。だから、BOT になるのだけれども、してしまわないで、非常に隠れた再分配の ような形のものがある。だから、これを一回きれいに、何とか公団はその中で収支がとれ るかどうかをきちっとして、そうすれば、東名などはすぐに株式会社に変えてもいいので はないかと思うのです。  ただ、問題は、今申し上げたように、前半の過疎地とか地域に対する配分というのは、 私の印象では、ほとんど過保護状態ではないかと。つまり、社会資本をストックとして見 た場合に、必要な社会資本なのか、あるいはこれは所得再配分というか、一種の計画に基 づくいろいろな形の再配分みたいなものが入り込んでしまっているのではないか。そうい う場合には、どうやったらそれを最適水準に持っていけるのかということについては、BO T ではどうにもならないので、例えば、人口・地域・面積の話も出ましたけれども、やは り地域の財源とのバランスを明確にする。ある財源がないところにこそたくさん投資して いるというケースがたくさんありまして、地域の財源とのパラレルな関係というものをも う一回取り戻す時期なのではないかなと。  本当に過疎地で何もなくて道が必要だという時代もあったでしょうけれども、利用効率 が上がらないところにどんどん投資をする時代ではなくなったと思いますので、その場合 のスリム化の手法としてどんなものがあるかなというような方法で。ヨーロッパなどは、 そういう段階に20年ぐらい前に直面してしまって、財政も赤字だという状況になって初め て、地域のいわゆる最適配分、つまり、どれをとりますか。下水道設備がいいのですか、 道路がいいのですか、病院がいいのですか、それを自分たちの財源の範囲で、「投資額が これだけかかります、よろしいですね。」というような形で、すべて地域の財源に落とし ていく。できないもののみ、国がある程度バックアップしていくというふうな、そういう 形に変えていかないと、チェック機構が働かないのではないかと思います。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。実は、私も、ナショナルミニマム は全部充足されたから余計な公共投資はやめるべきだと言って、地方からいろいろな反論 を受けて迷惑しているのです。 今の論点の2の問題は、今のA委員のご指摘、その他を含めて、どうぞまだ時間もござ いますので自由なご意見をお願いします。

〔 D 委 員 〕 私は門外漢なのであれですが、これを読んだ印象では、非常にハー ド指向でありまして、先ほどC委員が言われたように、乗数効果の点からいっても、こう いうハードの問題をまだここで話しているというのが非常に残念な気がするのです。  例えば、高速道路がなくても、しっかりしたT1ラインが引けていればそれでいいとい う自治体も出てきているのであって、もう少し、今本当に必要なものがこういうハードな 社会資本だけなのかということを考える必要があると思います。  去年ぐらいのデータですと、T1ラインを通すのが、アメリカで月借りるのが8万円で、 日本だと 200万円だそうです。そうすると、それだけインフラのコストに差があるところ で、要するに、道路がないのに自動車を走らせろと言っているのと同じで、これから日本 はナレッジインテンシブにならざるを得ないという、これは世の中の常識なのですけれど も、ナレッジインテンシブになるために必要なインフラというのは何なのか、そこら辺を もう少し考える視点があってもいいのではないか。どうも、これを見て喜ぶのは土建屋さ んだなという印象を1つ持ちました。 もう一つはプライオリティーの話ですけれども、これは非常に難しいと思うのです。ナ ショナルミニマムがあるから、もう公共投資はやめるという考え方もありますし、日本は 一体どういうふうになるのかという考え方もあると思うのです。それが1つなのですが、 アジア的な状況で、一極集中が起こっているというのは、ヨーロッパとの対比で考えると きに、日本の方がかなり激しくて、これをいかに分散させるかというのがプライオリティ ーだとすれば、全く違った発想にもなるはずです。 僕は、関西空港民活などというのは非常に失敗だったと思うわけです。あるいは新幹線 をやめるというのも、失敗だと思うのです。今、分散がプライオリティーだとすれば、 全く違う形でお金を投ずるべきですし、コストとベネフィットだけで考えるという前提以 外にも、日本のグランドデザインとして、アジア的な状況を抜け出して、少し分散化した 社会の中で新たなナレッジベースの国のつくるのだ、知識立国をするのだということだと、 こういう議論とは全く違った議論も成り立つような気がするのです。  だから、その辺を含めて、最先端の皆さんがお集まりのところで社会資本整備を説かれ る場合は、ハードからもう少し違った視点を導入された方が新鮮のような気がいたします。

〔 E 委 員 〕 ちょっと見方が違ってくるかもしれませんけれども、私は、こうい うことはかなり議論されていることであって、これから 1,200兆円と言われる民間金融資 産を活用したいとか、そういうことがあるのですが、しかし、一方においてモチベーショ ンが非常に足りない。要するに、何にその 1,200兆円を誘導するのかということができて いない。その意味では、こういうBOT 方式などはおもしろいと思うのですが、方法論的に は、私は、何もそう枠組みをきちんと決めて、さあこの範囲内でやるということは、むし ろ必要ないので、アズ・ウィ・ゴー、要するに走りながら考えるということでもいいので はないかと思います。 具体的には、もう枠を初めから決めないで、民間の活力、民間の知恵というものを、招 くといいますか、インバイトする。要するに、民間にできることは何か、何がしたいのだ。 そのときに利益性はどうなるのかということも一緒にして、民間の方にどんどんと積極的 に大型事業を考えさせる、むしろ提案させる。それを一々吟味しながらやっていくという ことにした方が、時間的な要素も含めれば、非常に現実的ではないかと思います。 決して、議論が必要ないという意味ではなくて、議論をやりながらで、もちろん結構な のですけれども、現下の経済情勢及び近いうちに起こる超高齢社会への対応ということを 考えますと、私は、議論をしながら、何か民間から提案をさせるというような積極的な動 きが、こちらからあってもいいのではないかと考えております。 以上です。

〔 F 委 員 〕 この報告はなかなかおもしろかったのですけれども、大都市圏と地 方圏で固定的にとらえられているのですけれども、これから地方圏の時代になるという流 れを踏まえるなら、大都市圏に住んでいる人間にとって地方圏が大都市圏よりもより魅力 的になるような、そういう考え方が必要だ、方向性が必要だ。これはDさんのおっしゃっ たことと結びつくのですけれども。 それは、他方、効率性を考えた場合は、過疎地帯に大きな投資をするというのは非効率 的であって、利用効率は非常に悪い、ベネフィットは非常に少ないということなのですが、 そういういわば積分的というか、漸増的な形ではなくて、それを破る。むしろ、過疎地帯 は非常に不便だから、より大都市よりも便利なそういうものが必要である、そういう発想 がたぶん必要であると思います。 そして、それは、ここで地方圏に分類されている、例えば大分県とか高知県、ここで情 報立県をやりたいということを言われているわけですけれども、情報立県は、それ自体い わば手段ですので、ナレッジインテンシブな社会がこれからでき上がっていくだろう。そ れを差し当たって整備してもらいたいということなのでしょうけれども、それ自体は 目 的ではきっとないと思います。 それで、さっき下水道のことが二、三の委員から問題にされていましたけれども、社会 資本という意味では、下水道の整備が地方ではされていない、不十分である。それは何か 遅れているみたいですけれども、これはC委員が言われましたけれども、都市では下水道 がないと、これは非常にきたないです。しかし、地方に行くと、ある一定の土地を最低限、 ミニマムの土地で住まないといけないとすると、コンパートメント方式の方がいいわけで す。その土地の中で全部処理できる。したがって、下水道をつなげる必要がないわけです。  そういうような方式を考えますと、社会資本の下水道における整備率みたいなものが基 準には必ずしもならない。ですから、もう少し違う生活スタイルというのが求められてい る。その生活スタイルについての競争がこれから起こるのだ、と。  ここで参考資料に挙げられている4つの全国総合開発計画、これはそれぞれ第1回の昭 和37年のときには拠点開発、第2回のときも大規模プロジェクト、第3回・第4回はこれ を何とか是正しようとして失敗したわけですけれども、ともかく第1次、第2次的なそう いう生産拠点を、日本人の、日本人による、日本経済のための、あるいは日本だけのため の計画だったわけですけれども、それはちょっと具合が悪くて、これはDさんの言われる ように、アジアをにらまなければいけない、あるいはヨーロッパとの対比を考えなければ いけないということです。 日本の、日本人による、言ってみれば「地球をにらんだ」国土計画を作らなければいけ ないということになりますと、利用効率という形でのものではなくて、ちょうど明治時代 に官民一体となって、どこに投資をするかと。投資という意味では、輸出産業があるから、 そこに投資をすると一番効率がいいわけですけれども、全く効率が上がるかどうかわから ない、利益率が非常に少ないかもしれないところに産業をつくり上げていく。例えば、紡 績をつくる、鉄道をつくる、煉瓦工場をつくる、何をつくる、これは日本にとって必要で あるからということで、非常にリスクの多い、ある意味で損害を入れ込んだ上での投資と いうのがなされたわけですけれども、それはどういう国をつくるかというビジョンがあっ たからです。  ですから、今ここでどういう社会資本をやっていくかというときに、地方圏に大都市圏 がより魅力を感じるように。このままだと、地方圏を大都市圏みたいにすればよいという ことですけれども、そうではなくて、全く違う生活スタイルをそこでつくれる、それはど うしたらいいか。その場合、当然、大都市圏の便利さというものがここになくちゃいけな いので、情報網のみならず、鉄道網も、つまり新幹線網、それから高速道路網、それから 歩道網、公園網、さらに生活スタイルとして本当に豊かなものがないと、大都市圏の人は そちらに行きません。 そういう意味では、過疎地帯における利益率みたいなところを、質のところから考え直 す必要があるだろうというふうに思います。

〔 G 委 員 〕 社会資本に関連した官民の役割のあり方を考える前提の考えが、や はりあるべきなのです。先ほどから二、三の先生からご指摘がありますように、例えば、 よく言われているのは、日本の港湾設備の問題でありますとか、あるいは空港の設備の問 題などが、いろいろな意味で国際競争力との関係でしばしば問題になるわけですけれども、 そういう社会資本整備の対象、重点の置き方をまずちゃんと議論をした上で、それぞれの 社会資本の整備について具体的に官と民のあり方、役割のあり方を議論しないと、目的を ちょっと抽象的にしたままで議論すると非常に曖昧な議論になるのではないかという心配 がございます。

〔 部 会 長 〕 もうちょっと具体的におっしゃると、どういうことになりますか。

〔 G 委 員 〕 先ほどから、地方と中央の役割の問題があるわけですが、例えば、 たしか首都高速の料金の改定のときにそういう議論があったのでありますが、東京に住ん でいる人は、もう首都高の自動車の交通料金は下げていいではないか、あるいはゼロにし ていいではないかという議論があるのですが、現在の考え方は、いわば既に償却のすんだ ような高速道路の料金をファンドにして地方の新しい高速道路を整備していこうという考 え方があるように私は理解いたしましたが、そういう構造との関係で、地方の人は、首都 高の料金を下げるとか、やめるとかいうことは反対するわけです。そこに、言ってみれば 官と民の役割のあり方が中央と地方では全く逆の考え方になってしまっているというとこ ろが出ているような気がするわけです。  だから、今もちょっとお話が出ましたが、道路をこれから地方にどんどんつくっていこ うとするのか、しないのかということが一番重要なところであって、そういうことについ て、一体そのコストを誰が負担するのかということが具体的な問題になるのではないかと いう気がいたします。  この点は、ただ、議論していきますと、地方の財政の問題に非常に関連がありまして、 その辺の財政の構造をどうするかということにも、重大な影響があるのだろうという気が いたします。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。  ほかにいかがでございましょうか。

〔 H 委 員 〕 私も、この問題は専門ではございませんので、いろいろむしろ教え ていただきたいということでありますが、どうも官民の役割の議論をここで聞いています と、例えば、2番の社会資本整備の課題というところに書かれている問題というのは、実 は、国なり行政の方が計画を作ってしまって、その後、誰が担うのかと。例えば、資金調 達は民間からするのか、それとも国の方がやるのかとかというようなこと、あるいは建設 というのを民間の方がやるのか、国の方がやるのかというような、計画ができた後の議論 をほとんどやっているように思われるわけです。  ところが、どなたかがおっしゃっているように、計画自身を国が負っていくのか、ある いは民間の方が作っていくのかというようなところ。どうも基本的に、民間の活力といっ た場合にはそれが違うのではないか。ただ単に計画を誰が実施するのかという問題ではな いのではないだろうかということを感じているのですが、その点はどういうふうに皆さん は考えていらっしゃるのか、少しご意見を聞きたいというふうに思います。

〔 部 会 長 〕 何か意見がありますか、事務局の方で。

〔 事 務 局 〕 今ほどの話ですけれども、実はまだ具体的に提案をしていないので あれですが、これからの地域の社会資本を効率的に使い必要なものをつくるという計画作 りの段階で、当然、情報公開というのもありますし、これは1つのストックというものを 今回なぜ出したかといいますと、それぞれの地域の人たちが自分たちがどんなものを使っ ているのかというのを知ってから議論に参加していただく時代になったのかなということ で、これをあえて、多少誤差もあるかもしれませんが、ここのところで今まで投資してき たものを、今まで投資してきてでき上がったものを議論する。それは一人ひとりの市民の 方なり、あるいは将来的にそういう施設なりシステムを維持していく地域コミュニティー であったり、という方々との意見交換といいますか、その方々の参画があって初めてでき るものだと私は個人的には考えております。  今の日本の計画作りというのは、そういう芯が入るところが最後の段階になっているの です。それを最初の段階から、あるいは市民の提案を受け止めるような、あるいは民間の 「こういうことをやったらどうだろうか、こうやったらこの町がもっとこういうふうにな るよ」という提案を受け止めるような、やさしいといいますか、そういう思考が必要にな るのではないかと思いますが、残念ながら、今はまだそこには至っていない。そういうこ とを今後の課題として考えてみたいと思っております。

〔 B 委 員 〕 今のお話ですが、社会資本整備の、例えば地域間の配分問題とか、 あるいはプロジェクト採択問題というのは、まさに今大変大きな議論になっています。今 出された意見の中には何かグランドデザインを考えながら、それに従った施設配置とか社 会資本整備というのが必要であるというご意見が非常に強かったように思います。この問 題は、今の地域間の社会資本の投資の配分問題にも絡むのですが、一方では、その意思決 定プロセスに非常に関係していて、まさにH先生がおっしゃったように、意思決定をどう するのかということがあるわけですが、私は、それについてあるところで戦略的な施設整 備とか戦略的な社会資本整備という言葉を使って、非常に大きな言葉で逃げたといいます か、包括したのですが、ただ1点非常に難しいのは、グランドデザインはどう決めるのだ という、そのプロセスがなかなか手段がないということだと思います。  一方では、今の社会資本に限らず、投資の効率化ということで透明性を求めるので、費 用便益分析、費用効果分析を非常にやっているわけですけれども、これは先ほど議論が出 ているので言えば、便益対費用ですから、極めて効率性を重視している。それで透明性を 出そうというのが今の行政の流れですが、それに対して別の価値観が出てきたときに、そ れをどういうふうに透明な形で配分していくのかという、非常に難しいプロセスではある と思います。もちろん、それをやらなければならないことは事実なのですが、そういった 問題点も指摘しながら、やはり大きな意思決定プロセスを模索すべきだというような気は いたします。  以上です。

〔 A 委 員 〕 今、お話を伺っていて、2点だけ非常に重要な引っかかる問題があ りまして、例えば、北海道などの地域は非常にすばらしいインフラがあるのですけれども、 北海道に行くと、北海道の経済は大変だ、大変だ、今にも引っ繰り返るというような民間 の人たちの意見がありまして、アジアの中で北海道を例えば取り上げると、ものすごくす ばらしいインフラと、いいものがたくさんあるのですけれども、今ちょっとご意見があり ましたけれども、ソフトの計画というものについての認識不足というのが非常に大きいと 思うのです。道路がないと地域が栄えないのか、そうじゃないですね。 それだけの新しい知的な産業をつくるなり、観光産業をつくるなりということについて のソフトの計画論というものについては、どういうものが本当にあるのか。BOTとかそ ういうことは、非常にプロジェクトファイナンスとしてはいいのですけれども、そういう ところを国の計画論の中でもう少し検討していただきたい。  過疎地にすばらしい新幹線をというF先生のお話もあったのですけれども、本当に今の 仙台とか、名古屋とか、うまく育ってきた中核都市のインフラというのはすばらしいもの がありますし、そういう地域を中心とした、いわゆる利用効率を上げるような形、反対す るわけではないのですけれども、そういう方法は、つくった新幹線はたくさんありますの で、そちらの利用効率を上げる形の計画論というのも、新たに過疎地につくるというより は、むしろ森林地帯は森林地帯で、せっかくだから残していただいた、環境破壊はこれ以 上しない、というようなくらいでもいいのではないかなと。ちょっと反論です。

〔 部 会 長 〕 ありがとうございました。  まだいろいろご意見があろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、第 2の議題につきましては、ここまでとさせていただきます。  次に、第3の議題であります「企業部門の課題」について、こちらに移りたいと思いま すので、事務局より説明をお願いいたします。

〔 事 務 局 〕 それでは、ご説明させていただきます。  資料5に「『企業部門の課題』に関する参考資料」というものをご用意させていただい ておりまして、本日は、いくつかのトピックの中からグローバルスタンダードという問題 とコーポレートガバナンスにつきまして、それぞれ3点ずつ論点を提示させていただきま して、関連する参考資料を付けさせていただきました。  1枚おめくりいただきますと、「論点メモ」というのがございます。まず第1、グロー バルスタンダードにつきましては、1点は、我が国として考慮すべきローバルスタンダー ド、世界標準としては、どのようなものがあるか。2点は、日本型のスタンダード、規範 とされているもので、どのようなものが国際的に通用してきているか。第3点は、日本型 のスタンダードを国際的に通用するものとしていくためには、どのようなプロセスが考え られるか、といった点が論点として考えられるのではないかということでございます。  2つ目の大きな括りでございます、コーポレートガバナンスにつきましては、1点は、 これまで我が国のコーポレートガバナンスを支えてきたのはメインバンクであるという考 え方がありますが、現時点の状況ないしは今後を考えたときに、コーポレートガバナンス の観点から金融機関の機能をどう考えていくか。2点は、米国では機関投資家がコーポレ ートガバナンスの機能を大きく担っていると評価されているが、コーポレートガバナンス の観点からみて我が国の機関投資家の機能をどのように拡充・発展させていけばよいか。 3点は、少し制度的な側面ではございますが、現在のコーポレートガバナンスの議論の過 程で、社外監査役制度等の導入が検討されているが、こうした制度を補完する人材確保等 の環境整備をいかに進めていくか。こういったような点を本日、論点として提示させてい ただきまして、以下に資料をいくつか用意させていただいております。  1枚おめくりいただきまして、グローバルスタンダードにつきましては、事例として必 ずしも十分であるかどうかは別といたしまして、5点ほど事例を挙げさせていただいてお ります。第1の事例は金融でございます。これは改めてご説明するまでもなく、欧米の金 融改革そのものが先行しておりまして、我が国は、それに向かって今進みつつあるという ことでございます。  3ページには、我が国の金融市場の空洞化と言われるようなものの指標を幾つか並べさ せていただいております。  4ページは、英米独仏と比べまして、金融改革が各分野でどのようなプロセスで行われ ているかというのを1枚に整理させていただいております。  5ページは、都銀と欧米有力銀行の自己資本比率の比較ということのグラフでございま す。  第2の事例は、6ページ目ですが、規格でございまして、ISOの幹事引き受け等に対 する我が国の取組みがまだまだ不十分というか、相対的に少ないというような資料でござ います。  1ページおめくりいただきますと、具体的にどんな分野で我が国が幹事を引き受けてお り、欧米がどの程度取り組んでいるかということを整理させていただいております。  8ページ目は、その観点との関連ということでございますが、ISO等のいわゆる公的 な規格と、デファクトスタンダード、市場による標準というものを、どのような違いがあ るかということを整理したもの。(参考3)は、ちょっと異質ではございますが、そうい った意味で、市場において勝負がついたと言われているものをいくつか例示として挙げさ せていただいております。  第3の事例は、情報通信でございます。情報通信分野は、国際的な標準化が特に強く求 められている分野でございます。最初の9ページのグラフが、アメリカ等に比べて日本の 産業の情報化の程度がまだまだ十分ではないということでございます。  10ページは、アメリカ側におきましては、市場を基点にしたデファクトスタンダード化 ということでの標準化活動が進められているということ。 11ページは、一方、欧州においては、むしろ官民一体となって、公的規格をスタート台 とした標準化活動がこの分野で進んでいる、というようなことを示させていただいておりま す。 第4の事例は、会計でございます。これも既に議論がなされておりますが、国際会計基 準の中で連結決算主体の情報開示、あるいは金融商品に関する時価評価の問題等の動きが 進みつつあります。12ページは、そのあたりの動きと日米の状況等を整理させていただい ております。 13ページは、現在、企業会計審議会でどのような動きがあるかということを簡単に整理 させていただいております。 第5の事例、言語でございます。これは分野と称するにはちょっと異質かと思いますが、 企業活動のグローバル化、ビジネスチャンスの国際化ということで、英語という言語がグ ローバルスタンダードとして重要ではないかという指摘をさせていただいております。資 料として必ずしも十分ではございませんが、例えば、アジア各国のTOEFLにおける成 績の比較ということで、日本が相対的に低いところにあるといったようなことをお示しし てございます。  1枚おめくりいただきまして、15ページはコーポレートガバナンスの話題でございます が、1つは、効率性の観点ということでいくつかの資料をお付けしております。まず、15 ページは、企業の資金調達方法の推移ということで、これも既に各先生方がご承知のよう に、借入金の比率の著しい低下が見られているというようなことでございます。  16ページは、本日はご欠席でございますが、ポール・シェアード委員ほか何人かの方々 のご指摘の中から、これまでメインバンクのモニタリング機能がある程度有効であったと いうことを示唆していただいている箇所の抜き書きということで、抜粋させていただいて おります。 17ページの図は、我が国の金融機関の持株比率を経年的に拾い上げまして、投信を除い た銀行・信託銀行の持株比率はほぼ横這いになっているというようなことで、グラフを1 枚付けさせていただいております。 18ページは、株式持ち合いの現状についてのアンケート調査の結果でございます。 19ページは、6大企業集団を取り出しまして、6大企業集団のいわゆる株式持ち合い比 率の推移。明示的ではございませんが、総じて見れば、その比率を低下させてきていると いうことでございます。  20ページは、それを合体してマクロ的にとらえまして、6大企業集団が、全上場企業の 株式所有比率ということで見ますと、92年をピークに低下してきており、その反面で融資 の比率は、少しではありますが上がってきているというグラフでございます。 21ページは、ROEということで、株主資本利益率の動向を日米で比較しております。 既に巷間流布さているとおり、アメリカの2割程度ということで、かなり低いところにあ るということでございます。  それから、機関投資家の議論に入る材料の1つでございますが、約 1,200兆円と言われ る我が国の個人金融資産、これを日米で現在の比較をしたもの。それから、この春に日経 センターが発表いたしました個人金融資産のシェアの将来予測ということで、2020年まで の表を付けさせていただいております。 23ページは、機関投資家の議論に入ります前提として、我が国と米国の機関投資家の持 株比率、米国が40%台後半に対しまして、日本では20%台ということでございます。差は ございますが、それなりの比率がございまして、今後こういったものをどのように活用し ていくかというような議論が必要ではないかというわけでございます。 24ページは、年金基金につきまして、その運用状況、我が国に比べて米国は株式の割合 か相対的に高いというのが、上の図表の範囲でございまして、下は運用成果ということで、 総じて米国の利回りが日本のそれを上回っているというようなグラフになっております。 25ページは、若干異質でございますが、外国人の持株状況。今後、国際化する中で、外 国人のプレゼンスがどうあるべきかと考えなければいけないとは思いますが、現時点にお いて、ストックとフローの両面において、株式市場における外国人のプレゼンスがどうな っているかということを図示させていただいたものでございます。 26ページ以下は、もう一つの側面でございます、制度面からみたコーポレートガバナン スということで、日米英独につきまして、経営機構の比較を簡単に図示したものを、深尾、 森田両先生の本の中から引用させていただいております。 27ページは、コーポレートガバナンスに対する提言ということで、英国のキャドベリー 委員会の提言、アメリカ法律協会の勧告、2つの概要を付けさせていただいております。 両方とも、企業の不祥事が相次ぐ中で、それに対する打開策ということで提言がなされて きているというものでございます。  28ページ、最後の資料は、今、自民党ないし経団連等でも議論されております、社外監 査役制度についての1つの資料でございまして、取締役の20%、監査役の37%が社外出身 者。さらに社外出身者の内訳を見ますと、銀行出身者が2割から2割5分を占めていると いうような図でございます。  最後の29ページの下の方のコラムで、私どものヒアリングでいくつか問題提起をしてい ただいた中で、外部重役の候補者の人材不足という声が聞かれるわけでございますが、そ ういった経営者層、経営ミドルの人材の流動化を図ることが必要ではないかといったよう なご意見もあったことを付けさせていただいております。 簡単でございますが、以上でございます。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。 それでは、ただいま説明のございました「企業部門の課題」ということに関して、どう ぞご意見をお願いいたします。

〔 A 委 員 〕 1番のグローバルスタンダードと2番のコーポレートガバナンスの 話、少し性質の違うテーマだと思うのですけれども、1番のグローバルスタンダードにつ いて、この規格というような側面からいくと、どのようなものがあるかと言われて、ぱっ と思い浮かばないというのは、やはりないのかなと思うのですけれども。  私は、2番の方に非常に興味がありまして、15ページに、資金調達の構成比の推移とい うのが書かれていて、これを見ますと、日本とドイツとイギリスがやや似通った形。つま り、内部資金が非常に上昇していて、外部資金が減っている形。アメリカが逆で、内部資 金が減っていて、外部資金が増えているパターン。なおかつ借入金と有価証券で見ると、 ドイツだけは借入金が安定的なのですけれども、アメリカは借入金が増えて有価証券が下 がっている。イギリスは、借入金は下がったけれども、また上がってきて、有価証券は上 がっている。日本は、借入金も有価証券も下がっている、ということでいろいろな国によ ってパターンがあるかなと思ったのです。 この状況を見ながら、今の金融機関の機能と機関投資家の役割と、これからの社外監査 役というようなことを考えますと、まず1番の金融機関の機能というのは、もともとモニ タリング的なものを持っていたかもしれませんけれども、むしろ、倒産とか財務状況の悪 化の場合の救済策というところに非常に大きなウェイトがあって、もともと経営を細かく チェックする気持ちはなかったのではないかなという感じがいたしますし、今後も、お金 を貸している金融機関が何らかの形でチェックをするという機能は、そのウェイトからい ってももうないだろうというふうに考えます。  2番で、では機関投資家が日本で出てくるかどうかということなのですけれども、今、 日本の企業というのは、これを見ると内部資金のウェイトが非常に高いので、外部資金を 提供している金融機関が介入するというよりは、日本の企業にとっては、むしろ内部資金 のチェックもできるようなシステムの方がもっと重要で、お金を貸しているから口を出す というような状況ではないのではないか。これを見ると、もっと機関投資家の多いイギリ スですとか、アメリカも少なくなっているものの年金基金などは株主として活躍している ような国とは事情が異なっており、すぐに機関投資家がいろいろものを言うという状況で はないのではないかと。  例えば、この中の生保というものを見てみても、恐らく、安定株主として動いているの で、相当長い期間株を持っていたいという気持ちの安定株主というものが多い場合は、な かなか、業績が下がったら株を売りますよというような形でものを言うように考えられな い。私は、むしろ3番の、社外監査役の中のいわゆる変形パターンというか、社外監査役 でなくてもいいのですけれども、日本の企業の中の内部資金がどういう形で、どのように 投資されたり、従業員のために使われたり、あるいは株主の配当に使われるのかとか、そ ういう利益配分のポリシーに関して、もう少しオープンな情報開示をできるようなシステ ムを日本的に作れないものかなと。今、社外監査役というのは私はよくわからないのです けれども、いろいろ外部に情報開示するようなシステムではない。  もう一つ、私が欧米の企業などに行くと、よく企業でチーフエコノミストなどという形 で非常に優秀なブレーンを雇っている企業があります。日本の場合は、企画室とかいうと ころに、社長等の直属のところがブレーンでやっているところがあるのですけれども、意 外と急ぎ仕事ばかりやっていて、ボードのメンバーに十分ないろいろな研究を直接助言す るような機能までは与えられていないようです。そういう意味で、外部的な情報の伝達と いうものが日本の企業はできないものだから、どうしても内部的な情報だけでいろいろな ものを判断する。そういうことで、社外監査役だけでない、いろいろな方法もここに盛り 込めないか。  社外重役というのも、これはイギリス型の方式でいいかもしれませんが、どうもイギリ ス型は、社外重役のウェイトも少々下がってきているみたいです。なぜかというと、キャ ドベリーコードもやりましたし、グリーンベリーコードもやりまして、情報開示が相当進 んでしまったので、いよいよ社外重役のウェイトというものは、むしろ少し下がってきた のではないかと。さんざんそういう努力をした結果、次の面に移ってしまったというよう なことで、社外重役を入れればいいかどうかということについても、もうちょっと日本型 の方式があるか検討したらどうかと思います。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。  尾身大臣が今戻られましたので、途中でございますけれども、一言ご挨拶をお願いした いと思います。

〔 尾身大臣 〕 この度、経済企画庁長官を拝命いたしました尾身幸次でございます。  最近の我が国の景気動向は、諸先生方がご存じのとおりでございまして、大変に難しい 状況になっております。そういう中で、私ども、財政厳しい折りでございますので、財政 出動という形でなしに景気対策をやらなければいけないというようなことでございまして、 今、私自身、分けますと3つになるのかなというふうに思っております。その1つは、こ のグローバルな経済活動の中で、企業が国を選ぶ時代になりました。そういう時代に日本 という国が、日本あるいは外国の企業から選ばれるような国にならなければならない。そ して、空洞化を防いで雇用を増大させるということが必要であるというふうに考えており まして、このためには、例えば、法人課税の外国並み水準に向かっての第一歩を踏み出す とか、有価証券取引税につきましても見直しをして外国並みにして、東京マーケットをロ ンドンとかニューヨーク並みにするという方法をとる、そういうことが1つでございます。  2つ目は、いわゆるバブルの後遺症の不良債権がしこりとなっておりまして、これが経 済の足を引っ張っているという実情もございますので、そういう点で、土地流動化をする、 土地の有効利用を図るということで、地価抑制の政策を転換して、土地有効利用という方 向になったわけですが、まだそれが現実の具体的な個々の政策に必ずしも全部行き渡って いるということでもございません。規制緩和の問題も含め、税制の問題も含めて、土地有 効利用を図っていかなければいけないというふうに考えております。  もう一つは、規制緩和でありまして、全体の各分野における規制緩和を促進して、企業 の新しいビジネスのチャンスを生み出して、民間活力を活用して経済を活性化する、体質 を強化する、こういうふうにしていくことが必要かと考えている次第でございます。  そういうこともございまして、規制緩和というのは大変大事な課題に今なっているわけ でございますが、私どもも、できるだけ早期に景気対策といいますか、そういうものをし っかりと立てて、将来の展望がすっきりするような形で、経済の先行きに対するコンフィ デンスをしっかりとさせて、その中から、設備投資とか、消費とか、住宅建設とか、そう いうものを拡大をし、経済を順調な回復軌道に乗せたい。同時に、また21世紀を展望した 新しい日本の活力ある経済をつくり上げていきたい、そういうふうに考えている次第でご ざいまして、私、今日、遅れて申しわけございませんでしたが、諸先生方のご意見をしっ かり承りまして、そういうものを参考にさせていただいて、施策を進めてまいりたいと考 えている次第でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  今日、私が来る前のお話につきましては、また議事録等で拝見をさせていただいて、い ろいろな皆様のご意見を政策に反映させてまいりたい、このように思っている次第でござ います。  本当に本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。

〔 部 会 長 〕 大臣、どうもありがとうございました。  それでは、審議を続けていきたいと思います。

〔 C 委 員 〕 企業部門の課題というところで、今日は、グローバルスタンダード とコーポレートガバナンスのご説明があったのですが、もうちょっと広げて考えてさせて いただけるとしますと、1つは、中小企業に今、お金がものすごく流れていないという問 題があるのではないかと思います。  それで、今日のご説明は大体、株の持ち合いとか、株式市場から資金を調達できるとこ ろだったと思うのですが、中小企業の人に聞いてみますと、早期是正措置とか、BIS規 制が敷かれまして、それでリスクキャピタルをなるべく減らそうというふうに中小企業金 融機関も考えておられるようで、そういう中で、産業の空洞化を防ぐためには、中小企業 にいかに資金を流したらいいかということも、もし、もう一つぐらい入れていただけたら いいのではないかと思います。  それから、関連する問題としましては、よく言われていることですが、リスクマネーの 提供というのをどういう形でやったらいいか。今日のお話に、日本の預貯金が多すぎるの で、投信とかいろいろな直接金融のものをやれば、リスクマネーに行くのではないかとい うふうに言われるのですが、リスクマネーに行ったとしましても、そこでの企業の評価を きちんとできなければ、一度限りに終わってしまうわけですから。しかも、リスクマネー でもう一つ言われますのは、キャピタルマーケットができればいいと。しかし、現実には、 キャピタルマーケットから資金を調達できない本当の起業家、そういう人たちにお金をい かに流したらいいかという点、資金調達、それからこの中でのいろいろな個人の金融資産 の選択とあわせて考えていただきたいと思います。  もう一つ、これは私もよくわからないのですが、1990年ぐらいのアメリカの論文を見て みますと、今と全く逆の議論がアメリカで出ていまして、アメリカ人は短期指向すぎると。 ちょうど日本のバブルのときですから、長期的に考える日本はいいと。こういうのも平気 でアメリカの論文にいっぱい出ているのです。そのときに言われていましたのは、アメリ カの株主が短期の収益を出すことにあまりにも専念しすぎて、それによって長期の投資が できないのではないか、こういう当時のアメリカに対する批判なのです。 それが今では、長期で持つということは悪いことのようにいわれているわけですが、そ の長期と短期のバランスを本当は考えなければいけないと思いまして、その論文の中で書 いてあるのは、あまりにも短期にやりすぎますと資源のむだ遣いをしていることになる。 特に、例えば金融市場で1分1秒争いながらお金を動かして、儲かった・儲からないとや るわけです。それは本当に長期的な投資を考えてやっているのか。それが必ずしも長期と 結びついていないのだとすれば、人材とかいろいろな資源のむだ遣いではないか、そうい うふうに言われていますので、ぜひここの中で長期保有と短期保有のあり方を考えていき たい。  現在、少しアメリカ的にみんなが考えていますけれども、5年前の論文をたくさん見ま すと、日本がいいと言われていたものですから、ちょっと感想を述べさせていただきまし た。

〔 H 委 員 〕 グローバルスタンダードについてちょっと考えてみたいと思うので すが、ここに5点ほどグローバルスタンダードの事例というのが挙げられているわけです。 金融、規格、情報通信、会計、言語、なぜこれが選ばれたのだろうかというような基準、 それこそスタンダードがありましたら教えていただきたい。いろいろバラエティに富んで いるテーマでもありますし、どこがどういうふうに関連してこの5つが出てきたのだろう かというようなことであります。  恐らく、経済審議会の中でグローバルスタンダードといった問題を考えなければいけな いというような認識は、日本の制度あるいは法律というものが、グローバルスタンダード からずれている、そのずれているというようなことが、日本にとってディスアドバンテー ジになっているのではないかというような意識があるのだろうと思うのです。そういった 視点から考えてこれが出てきたのかなというのが、私の予想するところなのですが、もし そうであるとするならば、これ以外のディスアドバンテージを生み出しているものという のもあるのではないだろうか。逆に、グローバルスタンダードになっていない、国によっ て大いに違っているところがあるわけでありますが、それがディスアドバンテージになっ ていない、あるいは場合によってはアドバンテージになっているというようなこともある わけでありまして、そういったところについて少し議論する必要があるのではないかとい うふうに思います。  もう一つの論点、グローバルスタンダードにつきましては、日本型の規範という言葉が 使われているわけでありまして、日本対レスト・オブ・ザ・ワールドというような基準で 考えられている。ところが、例えば、私は労働問題をやっているわけでありますが、労働 の転職率の議論であるとか、あるいは長期雇用の議論につきましても、どうも従来から、 日本的雇用慣行という言葉でずっと言われてきたわけですが、実際のデータに基づいてい ろいろ調べてみると、どうも日本的ではなかった。日本だけの問題ではなくて、各国それ ぞれが違ったような雇用システムを持っているというようなこともわかってきていますし、 あるいは今の転職率の議論であれば、むしろアメリカ、アングロサクソン系の国とそれ以 外の国、ヨーロッパでも大陸系の国と日本、こういったような図式に別れてくるというよ うなことがあるわけでありますから、そう簡単に「日本型」という言葉を使っていかがな ものか、というような問題を提起したいというふうに思います。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございます。私も同感でありまして、この例示は 事務局でやられたので、グローバルスタンダードということ、もう一つはデファクトスタ ンダードということ、両方言われておりますので、それらの中で日本的なものはデファク トスタンダードで、グローバルスタンダードになっているものもあるというようなことで、 例示としてこの5つを挙げてきた、こういうことだろうと思います。今のご議論、更に深 めていく必要があると思います。

〔 E 委 員 〕 グローバルスタンダードの問題は、事例ですからいろいろと出して いただいたのだと思いますけれども、私は、意外に見過ごされているのが価格形成力だと 思っております。  例えば、これだけの石油の輸入国でありながら、価格の形成は日本で行われていない。 穀物についても、全く日本では価格形成権がない。こういった、戦後ずっと価格形成権を 持っていないまま経済が運営されてきたということは、これからも日本経済の運営につい て、非常に私は障害になっていくだろうと。したがって、我々自身がこれだけの経済大国 と言われるならば、どんな形で価格形成力を、または価格形成権を持とうとするか。この 価格形成権を持たないことの不利ということを、私は、テイクノートしておくべきだと考 えております。  それから、コーポレートガバナンスの問題は、私も企業に永くおりましたので、頭が非 常に痛い点があるわけですけれども、私が現状としては悲観的なのは、株主からのチェッ クは全く今はあり得ない状態だというのが現実だからです。したがって、いくら社外重役 とか社外監査役といったところで、結局、誰がそれを任命するのだと言えば、それは社内 にいる経営者のトップが決めて、形式的に株主総会に諮って決めるだけのことであります。 結局、そういった意味では、今のパターンではなかなか、そういったコーポレートガバナ ンスはうまくいかないだろうと思うのです。ただ、何が今コーポレートガバナンスの問題 なのかということを言えば、企業の倫理性、または合法的な行動といいますか、そういっ たことが契機となってこのコーポレートガバナンスの問題がある、こういう面もあるわけ です。  そうしますと、私は、一番大事なことは、企業経営者というものが倫理というものをも う一度きちんと具体的に、それこそディスクロージャーすべきである。ただ単に社会性が どうとかいうことでなくて、倫理、企業倫理という問題について具体的に、社内だけでな くて、社外にもそれを明示的に言うべきである。それから、まずその前提は、合法的な行 動に徹することであります。こういうことをまず徹底すれば、コーポレートガバナンスの 問題というのは、ある程度は解決できるのではないか。私は、あまり制度的な問題にとら われるよりは、そういった、もっと精神構造の方をきちんと打ち出すべきではないか、こ れが出発点だろう、こう考えております。  以上です。

〔 U 委 員 〕 グローバルスタンダードとコーポレートガバナンスの両方に関わる ような話ですが、あまりまとまった話ではありませんが、アメリカあたりの経営者と日本 の経営者を見ていて非常に違う点の1つが、株価にセンシティブであるかどうかという面 だろうというふうに思います。日本の経営者も、もちろん株価に気を使うわけですけれど も、それはライバル企業より低くてはおもしろくない、証券会社、何とかしてくれという たぐいのことだったように思います。  それで、株価にそうセンシティブでないというのは、株価が下がってもそれほど責任が 問われないということがあるでしょうし、ストックオプションなどもなくて、自分の懐に も響かなかったということもあると思うのですが、いま一つは、株価に対する、企業なり あるいは広く社会の信頼感といいますか、それが少し十分でなかったということがあるの ではないかと思います。コーポレートガバナンスとかグローバルスタンダードということ を考える場合に、証券市場ないしは株式市場の流通の問題というのは、やはり考える必要 があるのではないかというふうに思います。

〔 G 委 員 〕 質問でよろしゅうございますでしょうか。

〔 部 会 長 〕 どうぞ。

〔 G 委 員 〕 5ページに自己資本比率の表が出ておりますが、これはいつの時点 の自己資本比率かということについては、出典が5月26日の日経金融新聞と書いてありま すから、たぶん3月末ぐらいかなという気がいたしますが、そう理解してよろしゅうござ いますか。

〔 事 務 局 〕 一応確認をいたしましたら、その時点での最新での自己資本比率と いうことでございました。

〔 部 会 長 〕 最新時点ということは、日本の銀行は3月期であることは間違いな いと思います。ただ、アメリカの銀行、海外は、私もよくわかりません。

〔 A 委 員 〕 グローバルスタンダードとコーポレートガバナンスと2つを比べま すと、むしろ私の感じでは、日本もコーポレートガバナンスの方が汎用性が高い側面なの ではないかという感じがしていまして、まさに、ここはちょっとH委員的な質問の提起を しますと、どうしてこういう言い方になっているのでしょうか。  今まで外部があったからうまくいったのだけれども、これからまた、こういう外部のチ ェックをどうやったらいいか、そういう底流があるような感じがするのですが、日本のコ ーポレートガバナンスというのは、従業員と経営者と、株主が黙っていても比較的うまく いっている。つまり、不況に強いシステムの側面がありまして、人をあまり解雇しないと いう側面というのは、監査役会のような形で従業員が非常に大きな力を有しているドイツ とまではいわなくても、それがある程度内部的なコントロールとして効いてきたシステム 自体は世界的にみても非常にうまくいっていて、なにもこれを捨て去る必要はないわけでし て、これこそ1つの日本的なコーポレートガバナンスの基準なのではないかと思うのです。  もちろん、柔軟性とか雇用の流動性みたいなものは必要だと思いますけれども、そこを これからどうなってしまうのかと考えるよりは、今までのシステムの改善が必要な部分は あるくらいのニュアンスでいいのではないか。今まで金融機関や株主が黙っていてもうま くいったのは、やはり日本の経営陣のレベルが高かったという側面もあったと思うのです。 それが、どうしてそのようになったのかという部分も、もう少しどこかに入っているとい いなと思います。  恐らく、その点が、イギリスから見ても、アメリカから見ても、非常にうらやましい点 で、どうしてこんなうまくいっているのかというのは、知りたいと思っている人もいるく らいなので、そのようにお願いしたいのですが、強いて言えば、この1番のグローバルス タンダードの点だけを改善するというようなことが必要だと思います。つまり、会計制度、 あるいは情報開示のルール、それから品質保証のシステム等の面で、これから日本が新し く作るということが難しければ、そういう点だけはきちっとやれば、かなりのレベルまで いくのではないかという、ちょっと強気の発言ですが、そのようなニュアンスを持ってい ます。

〔 部 会 長 〕 ほかにいかがでございましょうか。  私は、部会長ですけれども、コーポレートガバナンスの問題は一番早くから言っている 立場で、私見を申し上げますと、恐らく、ここでグローバルスタンダードを出された意味 は、金融であるとか、情報通信、会計というように、グローバルなマーケットが形成され ている、あるいはグローバルな競争社会になっているというようなところにおいては、当 然、デファクトスタンダードがグローバルスタンダードになってくるだろう。その場合に、 現在の日本の状況からいってどうなのだ、という問題提起であろうと思います。そういう 意味では、意味があるのではないかと。  それから、コーポレートガバナンスについては、今、A委員のおっしゃいますように、 よく言われるのは、ステーク・ホルダーズ・キャピタリズムとシェア・ホルダーズ・キャ ピタリズム、これはまた両極端な話だろうと僕は思うのです。例えば、アメリカの法律協 会の「コーポレートガバナンスの原理:分析と勧告」というところでもはっきりと、会社 の目的は、株式会社というのは株主の利益のためだ、ただ、長期的にそれに合うというた めには、シェア・ホルダーズだけではなくて、ステーク・ホルダーズの利益と、地域社会 であるとか、従業員であるとかということも十分に考えていくべきだということははっき り書いてあるわけですし、アメリカのキャドベリーにしろ、あるいは近々まとまるハンペ ル委員会にしても、大体同じような方向だろうと思います。  ただ、日本の場合は、私自身も、金融・証券の不祥事件ということを契機にして、あま りにも取締役会、監査役会のあり方といった法律制度面に関心が強く行き過ぎているので、 もうちょっと本質的な問題をここでご議論いただきたい。こういうような問題提起で、例 示で出ておりますので、C先生のおっしゃるとおり、日本の企業部門の課題というところ ですから、もちろん、中小企業の金融をどうするかとかいろいろな問題がこれから出でく ると思いますが、そういう問題を全部入れて、これからまたご議論していただきたいと思 います。  ほかに、これに関連していかがでございましょうか。

〔 F 委 員 〕 コーポレートガバナンスにつきましては、E委員が言われたとおり だと思うのですけれども、やはり、ここではグローバルスタンダードというのは、アメリ カないしアングロサクソン型のスタンダードですね。それに対して、日本が遅れている、 あるいは自信を失っているということで、こういうアメリカないしアングロサクソンの経 済文化というものをスタンダードにするということだと思うのですけれども、それはコー ポレートガバナンスについても同じように言えるかと存じますが、すなわち、株主重視を する。しかし、これは歴史がありまして、イギリスの場合は、ご承知のようにパートナー シップからいってますので、初めから、自分の会社は自分で経営している。だから、所有 者イコール経営者なので、株主が重視されるというのは初めから前提にされている。日本 では、こ承知のように、後進国ですから、株主は会社のためにやるわけでありまして、会 社は日本のためにやっているというふうなことがありましたので、経営それ自体の倫理性 というのが非常に強かったと思います。そういうものが戦後に崩れたというのが非常にま ずいと思うのですが、にもかかわらず、日本の企業の場合、法人の自立性、経営者からの 法人の自立性といいますか、法人格というものの自立性が非常に高いということがあると 思うのですが、法人格それ自体がグローバルな競争の中で、単なる利益追求主体になって きたということがきっと問題で、目標を失っているということがあるのではないかと思い ます。そして、それは結局、日本型経済文化のスタンダードというものが出せないという ことだと思うのですけれども。  結論的に言うと、企業も何かに奉仕するものであって、それは差し当たっては株主かも しれない、あるいは取引先かもしれない、あるいは雇用者かもしれないし、お客かもしれ ないのですけれども、もう少し一般的なところで言うと、日本社会全体に対して奉仕する ということがありまして、日本社会全体に奉仕するということは日本文化に奉仕するとい うこと。この辺のところは、フランスなどはとても強いと思いますけれども、フランス文 化に寄与するものとして企業がある。そういうところは、アメリカにもあるかと思います が、日本の文化に寄与するという、そのところがなかなか入ってこない。なぜかというと、 文化と経済というのは全く水と油みたいで、文化は非合理的、経済は合理的だというふう なことで、むしろ、文化というのは金食い虫的な見方があるわけです。最終的には、前半 の議論でもありましたように、生産から消費へ、つまり生活重視に変わっている。社会資 本重視に変わっている。それは、地方の生活をどう活性化するかということに変わってい るということになっておりますので、ここで日本をどう美しく、どう豊かにしていくかと いうことのイメージが国から出れば、民間もそれに呼応するという、その用意はあるに違 いなくて、その何か出口を失っているところがある。  私は、日本がこういう5つの事例について、これを手段としてやっていこうということ については、意思は非常に強く持っていると思います。そしてまた、コーポレートガバナ ンスについて、アメリカみたいにやれば、コーポレートガバナンスがうまくいくと誰も思 っていないと思います。そういう意味では、出口を与えていく、それが出せていないのが、 隔靴掻痒のところがある、そういう印象を受けました。

〔 部 会 長 〕 どうもありがとうございました。  ほかに何かご意見がございますでしょうか。  もしご意見がなければ、一応、第3の議題もここまでとさせていただきます。  最後に次回の日程につきまして、事務局からお願いいたします。

〔 事 務 局 〕 次回第4回の部会につきましては、来月11月7日金曜日の10時から ということにさせていただきたいと思います。その次の第5回の部会でございますが、こ れも同じ11月25日火曜日の14時からということで予定させていただいておりますので、ど うぞよろしくお願いいたします。

〔 部 会 長 〕 今のご説明のとおりでございますので、ご多忙中と思いますけれど も、ご出席、活発なご議論をお願いしたいと思います。 それでは、本日の第3回の経済主体役割部会の審議は以上にいたしたいと存じます。本 日は長時間のご審議、誠にありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします。

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