財政・社会保障問題についての参考資料

平成8年12月
経済企画庁総合計画局


目次

I 財政・社会保障問題ワーキング・グループの報告

はじめに

1.国民負担率の考え方について

  1. 日本の国民負担率の推移と現状
  2. 国民負担率は何を意味しているのか
  3. 国民負担率と経済成長率

2.国民負担率の将来展望

  1. 2025年度までの国民負担率
  2. 国民負担率に影響する要因

3.いくつかの代替的シミュレーション

  1. 社会保障制度改革シミュレーション
  2. 政府支出抑制シミュレーション

II 財政・社会保障問題ワーキング・グループの報告における シミュレーション結果について

1.現行ケースのシミュレーション結果について

2.代替的シミュレーションについて

(付)将来展望に使用した長期計量モデルの概要

I 財政・社会保障問題ワーキンググループの報告

財政・社会保障問題ワーキング・グループ
座長 宮 島 洋(東京大学大学院経済学研究科教授)
大沢 真知子(日本女子大学人間社会学部教授)
橘木 俊詔(京都大学経済研究所教授)
八代 尚宏(上智大学国際関係研究所教授)
吉川 洋(東京大学経済学部教授)

(五十音順)


はじめに

今後、急速な高齢化を迎えるなかで、「国民負担率」をめぐる問題はますます重要性を 増している。
本報告では、今後の国民負担率をめぐる議論に資するため、「国民負担率は何を示して いるのか」「国民負担率の上昇は、長期的な経済パフォーマンスにどのような影響を及ぼ すのか」「現状のまま推移すれば、今後の国民負担率はどのような推移をたどるのか」 「国民負担率の主要な変動要因は何か」といった問題について検討を行った。
これら諸点についての議論を通じて、本ワーキング・グループでは、1)今後の公的部門 の政策運営に際しては、従来にも増してコスト意識を強く持つ必要があること、2)行財政 の無駄を省き、諸制度間の重複や矛盾が生じないよう合理化を図ること、3)後述するよう なモラルハザード、レントシーキング行動などの問題を引き起こさないように制度設計を 見直していくことが国民負担率の問題を考えていく上での大前提であることについては意 見の一致を見た。
しかし、国民負担率の経済的な意味、その政策的な位置づけについては、多くの意見が 出され、結局のところ意見は完全には一致しなかった。そもそも、公的部門の支出は、国 防・外交・司法などの「純粋公共財」のほか、教育、社会保障などの「準公共財」を供給 するという役割があり、こうした広範な「準公共財」のうちのどれだけを公的部門が供給 するかによって、国民負担率の水準は変わってくる。したがって、国民負担率は、「準公 共財供給上の効率性」「分配上の平等」「選択の自由」といった諸点についての社会的合 意、すなわち、国民がどのような経済社会を望むかについての選択の結果として決まって くるものである。
そこで、本報告では、意見の一致がみられなかった点については、それぞれの論点を明 らかにし、議論の素材として提供することとした。


1.国民負担率の考え方について

  1. 日本の国民負担率の推移と現状

    一般に、国民負担率とは、国民の租税・社会保障負担が国民所得に占める比率として 示されることが多い。
    日本の国民負担率について、租税負担と社会保障負担とに分けてこれまでの推移をみよ う(第1表:国民負担率の推移)。まず租税負担については、最近では景気低迷に伴う税 収の鈍化を反映して、対国民所得比では下降しているものの、長期的な趨勢としては上昇 してきている。また社会保障負担については、老齢人口の増加に伴い、年金、医療、介護 などの社会保障給付が増大してきており、これに伴う負担も増大していることから、対国 民所得比では上昇する傾向にある。
    これを国際的に比較すると、これまでは老齢人口比率が相対的に低かったこと、また経 済成長率が相対的に高かったこともあって、日本の国民負担率は西欧諸国と比較して低い 水準にあった(第1図:租税および社会保障の各国民負担率の国際比較)。しかし、近年 では老齢人口比率が急速に西欧諸国なみに近づいてきており、また長期的には経済成長率 が鈍化することが考えられ、国民負担率についてもさらに上昇が見込まれている。

  2. 国民負担率は何を意味しているのか

    「国民負担率」が経済的に何を意味しているか、また、それをどう評価するかについて は、多くの考え方がある。それは、概ね次の三つに分けることができよう。

    (国民の負担の指標としての国民負担率)
    第1は、「国民が強制的に徴収される経済的な負担の大きさを示す」という考え方 である。結局のところ、「国民負担率」が示す「負担」は「強制性」に特徴があり、こう した意味での国民負担率が高まれば国民が自由に処分できる所得の割合はその分低下する こととなる。それだけに、国民負担率が過度に上昇すれば国民からの批判を浴びることと なりやすい。また、強制的な負担が増大するとその負担をできるだけ回避しようとするた めに、企業、人材が海外に流出したり、非生産的な節税行為が行われるようになるという 指摘もある。
    ただし、こうして一方的に負担面だけをみるのはバランスを欠いているという考え方も ある。租税・社会保障負担は決して一方的に負担のみを強いられるのではなく、その反面 では公的サービス、社会保障の提供を受けていることも事実であるからである。
    (政府活動の大きさを示す指標としての国民負担率)
    第2は、「政府活動分野の大きさを示す指標」としての意味である。国民負担率は、 公的部門の活動を支出面ではなく、収入面からみた指標といえる。こうした観点から公的 部門の相対的な大きさを監視していくことは、財政規律を維持するという点で重要な役割 を果たしている。すなわち、国民負担率に注意を払うことが、政府支出の増加への歯止め となり、無駄を省いて公的部門の効率化を促すこととなるからである。また、こうした観 点からは、1)一般に公的サービスの提供においては競争原理が作用しにくいため、民間部 門に比較して生産性が低くなりがちであると考えると、経済全体に占める政府活動の大き さが過度に高まることは経済の効率を損なうこと、2)公的部門の活動を営むためのコスト も増えていくことなどにより、国民負担率の上昇は望ましくないという指摘がある。
    ただし、無駄を省いて公的部門の効率化を促すことは当然であるとしても、その上でも なお国民が公的サービスの提供、所得移転を望むのであれば、一概に国民負担率の上昇を 問題とはみなせないとする考え方もある。
    (所得再分配の大きさを示す指標としての国民負担率)
    第3は、「所得再分配の大きさを示す指標」としての意味である。強制的に徴収さ れ公的部門によって支出されるものの多くは、所得再分配としての役割を強く果たしてい る。社会保障における移転はいうまでもなく、地方交付税、公共事業などの地域間移転、 また農業などの業種間移転などの所得再分配機能を持っているものが多いからである。 
    こうした所得再分配機能については、いくつかの経済的なロスが伴うためその必要性を 慎重に吟味すべきとする考え方がある。そうしたロスとしては、1)いわゆる経済的弱者( 特定の所得階層、地域、業種など)への所得移転を手厚くすると、できるだけ多くの移転 所得を受けようとすることが自立へのマイナスのインセンティブとして作用してしまうこ と(モラルハザード)、2)一旦所得再分配のための制度ができてしまうと、既得権から得 られる利益を守るためその廃止を阻止しようとする行動が生じやすくなること(レントシ ーキング行動)、などが指摘されている。
    一方、こうしたモラルハザード、レントシーキング行動などの問題に対しては、所得再 分配自体ではなく制度設計を工夫することによって防止すべきであるという指摘がある。 
    また、公的な所得再分配は、民間部門では果たしえないものであり、単なる経済的な観 点からは測りえない社会的公正の観点から重要な役割を果たしている。したがって、これ にどの程度の役割を期待するかについては国民の選択によるものであり、一概に所得再分 配に伴う問題のみを強調するのは適当でないとする考え方もある。
    (国民負担率の政策的取り扱いについて)
    国民負担率という指標を政策的にどう位置づけるかという点についても、いくつか の考え方がある。
    第1は、国民負担率という指標は実質的にも重要な意味を持つものであり、政策的にも 高い優先度をもってこれを位置づけ、これを適切にコントロールするような政策を打ち出 していくべきとする考え方である。
    第2は、国民負担率自体は必ずしも重要な経済的な意味を持っているわけではないが、 これを一つの分かりやすい象徴的な指標として位置づけ、国民負担率の議論をきっかけと して、行財政改革、社会保障制度の見直しを行っていくべきとする考え方である。
    第3は、国民負担率という指標は経済パフォーマンス、あるいは国民の福祉を示す指標 としては限界があり、政策的にも必ずしも重要であるとはいえないとする考え方である。
    (指標としての留意点)
    なお、指標としての国民負担率をみる際には、次のような点に留意する必要がある。 
    第1に、国民負担率には財政赤字が考慮されていないという限界がある。公債発行に よって公的部門から財・サービスが提供されたり所得移転が行われたりすれば、その分は 現時点での負担とみなされないので、政府活動の大きさを過小評価してしまうこととなる 。例えば、1994年度の場合、通常用いられている国民負担率は35.8%であったが 、公的部門による財・サービスの支出の国民所得に対する比率は44.2%であった。 
    第2に、国民負担率の変化を考える際は、それがどういった状況のもとで生じてい るかを注意する必要がある。例えば、それまで公的部門が負担していた医療などの財・サ ービスの提供を受益側の自己負担に置き換えれば、「国民負担率」は見かけ上は下降する が、それは負担の形態が変わっただけであり国民全体の負担が軽減するわけではない。逆 に、それまで家計で負担されていた介護などの負担を公的部門が負担するようになれば、 「国民負担率」は見かけ上は上昇するが、家計の負担が軽減していることを考えれば、国 民全体の負担が増大するとはいえない。
    第3に、やや技術的ではあるが、国民負担率の分母として何を使うかという点にも注意 が必要である。通常用いられている国民負担率として、分母に「要素費用表示の国民所得 」が使われることが多い。これは、負担が家計、企業、政府の各経済主体の稼ぐ総所得か ら支出されるという直観的な発想によるものと考えられる。しかし、この「要素費用表示 の国民所得」には、国際比較する場合、各国の税制の違いによってその大きさに違いが生 ずるという問題がある。例えば、間接税が主体である国では、総税額が同じであっても間 接税が控除される分だけ国民所得は小さくなり、その結果として国民負担率は大きくなる 。こうした問題が生ずるのを避け国際比較を容易にするためには、分母として名目GDP を使うべきという考え方もある。
    事実、GDP比で国際比較した場合、日本の国民負担率が西欧諸国より低いという点に は変わりはないが、国民所得比でみた場合と比べると、両者の差は縮小している(第2図 :分母の違いによる国民負担率の国際比較)。このことは、西欧諸国は間接税率の高い国 が多いことから国民負担率が高めに出ているためと考えられる。
    ただし、以下では、従来から国民所得比の国民負担率をみることが一般的であることを 考慮して、GDP比ではなく、国民所得比でみた国民負担率によって議論を行うこととし ている。
  3. 国民負担率と経済成長率

    国民負担率が経済成長率にどのような影響を及ぼすかという点についても、次のような 二つの考え方がある。

    (国民負担率の上昇は経済成長にマイナスであるとする考え方)
    まず、国民負担率の上昇は、経済成長にマイナスの影響を及ぼすとする考え方があ る。そのメカニズムとしては、次のような点が指摘されている。 
    第1は、雇用への影響である。特に、家計に対する負担およびその裏側としての受 益の程度によっては、労働力供給行動に影響を及ぼす可能性がある。これは、国民負担率  が上昇すると、限界的な可処分所得が減少し、所得と余暇の代替効果が大きいとすれば、 余暇、すなわち非就業を選択するためである。 
    これをやや詳しくみると、生産年齢・男子を中心とする基幹労働力については、代 替効果は小さいと考えられるので、その影響はほとんどないものと考えられる。しかし、 高齢者や既婚女子が就業あるいは非就業を選択する際には、負担と受益の程度が限界的な 労働力供給に大きな影響を及ぼすものと考えられる。今後の高齢社会、労働力減少社会で は、これら高齢者、既婚女子層の労働市場における行動が労働力の推移に大きく影響する ことを考えると、こうしてもたらされる経済的な影響は今後次第に大きくなるものと考え られる。 
    こうした点については、制度設計いかんによって労働力供給への影響がより大きく なる場合があることに注意する必要がある。例えば、60~64歳層を対象とする在職老齢年 金は、従来よりは改善されたものの賃金増加分の半分の年金給付が削減されることとなっ ている。これは、事実上、賃金と年金給付額の合計に50%の限界税率を課しているのと同 じこととなり、労働力供給を抑制する効果を持っている。また、サラリーマンの無業の妻 (3号被保険者)は、就業から得られる所得の水準によっては、それまで得られていた扶 養手当、配偶者控除、配偶者特別控除を家計全体として失ったり、遺族年金と本人の年金 との調整を迫られるという「負担」が生じることとなり、これも労働力供給を抑制する効果 を持っている。 
    第2は、資本蓄積への影響である。これには二つの経路が考えられる。 
    一つは、社会保障を通じた経路である。まず、積立方式での社会保障制度において は、国民負担率が上昇すれば公的貯蓄(社会保障基金)は増加するものの民間貯蓄は減少 すると考えられる。その際に、一般に競争原理が作用しにくい公的部門の資金運用は民間 部門に比較して効率が低下しがちであること、また公的部門の活動を営むためのコストも 増えていくことなどを考慮すると、この貯蓄がよほど効率よく活用されない限り資本蓄積 を停滞させる恐れがある。一方、賦課方式での社会保障制度においても、社会保障と貯蓄 の代替効果が大きいと仮定すると、高齢化による社会保障給付の増大に伴い国民負担率が 上昇すれば、貯蓄が低減し投資が制約されて資本蓄積が停滞することとなる。 
    もう一つは、就業にかかる高齢者の行動を通じた影響である。高齢者が労働市場に 参入しなくなれば、現役世代(貯蓄を行う世代)は減少し、引退世代(貯蓄を取り崩す世 代)は増加することにより、マクロ経済的な貯蓄率が低下し、これが国内の生産的な投資 を制約することが考えられる。 
    第3は、企業行動や人的資源への影響である。 
    企業においては、福利厚生のためのコストに加えて、さらに租税負担、社会保険負 担が増大すると、これが企業収益を圧迫し設備投資を減少させる恐れがある。特に、企業 の社会保険負担が増大し実質的な賃金が上昇すると、世界経済の一体化(グローバリゼー ション)が進展し、「企業が国を選ぶ」時代においては、企業自体が海外に移転せざるを 得ない状況さえ発生する可能性がある。こうした企業行動の変化は日本の経済の活力を低 下させる恐れがある。 
    また、個人においても、企業がコストを削減するため常用雇用者から社会保障負担 の軽い非常用雇用者への代替を進めると、キャリア・パスを通じた高度な人材資源の形成 が阻害される恐れがある。さらに、所得に対する負担があまりに重くなると、より負担の 軽い国に活動の場を移すようにな可能性がある。こうした行動は、高い能力を備えた人材 において生じやすい傾向があることを考えると、これが国内の人的資源にマイナスに作用 する恐れがある。
    (国民負担率の上昇は必ずしも経済成長を大きく左右するわけではないとする考え方)
    一方、国民負担率の上昇は、必ずしも経済成長の姿を大きく左右するわけではない とする考え方もある。 
    第1に、長期的な経済成長を左右するのは、基本的には、労働、資本蓄積、技術進 歩などの量と質である。国民負担率がこれらの基本的な各要因に及ぼす影響は、税制や社 会保障制度の設計いかんによるものであり、国民負担率が将来の経済成長の姿を大きく左 右する決定的な要因であるとはいえない。 
    第2に、限界的な可処分所得が減少しても、労働と余暇については従来からの所得 を維持するために引き続き就業を選択することが考えられ、また、消費と貯蓄については 従来からの利子所得を維持するためにむしろ貯蓄率を引き上げようとすることが考えられ 、雇用、貯蓄への影響については明瞭ではない。 
    また、社会保障給付が増大しても、遺産動機により高齢者が次世代へ貯蓄移転させ るため貯蓄を増やす場合には、資本蓄積への影響についてはやはり明瞭ではない。 
    第3に、公的部門の社会保障プログラムを削減して国民負担率の上昇を抑制すると しても、必然的な負担については民間部門が肩代わりすることとなる。したがって、負担 自体が軽減するわけではないので、経済成長にプラスであるとは明確にはいえない。 
    第4に、国際比較の観点からも、国民負担率と経済成長率との間にはそれ程明瞭な 関係があるわけではない。例えば、アトキンソン(注参照)は、多くの実証研究を再調査 した結果、重い負担が経済成長を妨げているかどうかについては、統計的に有意な結論を 得ることができなかったとしている。

    (注) Atkinson A.B.(1995): Income and the Welfare State, Cambridge, Cambridge University Press.

     2.国民負担率の将来展望

    本ワーキング・グループでは、今後の国民負担率に関する議論の素材として、計量モ デルにより「現状のまま推移すれば、国民負担率はどの程度上昇するか」「それに影響す る要因は何か」といった点についてシミュレーション分析を行った。

    (計量モデルによる展望の意義と限界)
    経済を構成する各変数は、相互に複雑に関連し合いながら変化している。負担を構成 する租税・社会保障負担も同様である。したがって、国民負担率の展望に際しては、経済 成長率などの重要な変数を外生的に与えるのではなく、同時決定的に展望する必要がある 。計量モデルはそのためにこそ有用な分析道具である。 
    ただし、こうした試算は計量モデルの定式化などによって変わりうるものであり、あ る程度の幅をもって理解すべきであることに留意する必要がある。 
    なお、今回の試算に使用された長期モデルの概要については巻末に示した。
    1. 2025年度までの国民負担率
      (将来展望の前提)
      まず、現状のまま推移した場合、国民負担率がどのように推移するかについて、2 025年度まで展望する(以下、「現行ケース」とする)。 
      その場合の主な前提は次の通りである。 
      1) 人口は、厚生省人口問題研究所の低位推計を使用している。これは、推計発表 (平成4年)以降、出生率の実績が中位推計より低位推計に近い水準で推移していること による。 
      2) 医療、年金、福祉をめぐる各制度は、現状をそのまま維持するものと想定してい る。ただし、年金の支給開始年齢の引き上げ、年金保険料率の引き上げについては現行ス ケジュールに基づいて行われることを想定している。すなわち、年金の支給開始年齢につ いては、現行の60歳支給体制から、基礎年金部分についてのみ65歳支給体制に段階的 に移行することとなっている(男子は2001年度開始-2013年度完了、女子は20 06年度開始-2018年度完了)。また、年金保険料率については、1995年度以降 5年ごとに、2.5%ずつ保険料率を引き上げることとなっている。なお、医療費の患者 による自己負担分については、1993年度の実績(11.8%)で一定としている。 
      3) 税制については、1997年4月からの消費税率の引き上げ(3%から5%へ) を織り込み、その後は横這いと想定している。なお、国税・地方税の区分、直接税・間接 税の区分などについては、国民経済計算(SNA)上での概念を採用している。 
      4) 公的部門の支出については、実質政府固定資本形成(公共投資)を公共投資基本 計画に基づき年3%増、実質政府最終消費支出を1985年度以降の趨勢である年2%増 と想定している。 
      5) 長期的な経済成長率を決定する要因の一つとしての全要素生産性(技術進歩)の 伸びについては、1995年度にはこれまでの趨勢である1.5%として、今後2025 年度までには先進諸国へのキャッチアップが終了したことを受けて米国の水準である0. 5%まで低下すると想定している。
      (国民負担率と経済の姿)
      現行ケースのシミュレーションを行った結果をみると、国民負担率(国民所得比) は1996年度見込みの37.2%から2025年度には52%程度に上昇する。その内 訳をみると、租税負担率は23.1%から33%程度に、社会保障負担率は14.1%から 18%程度に上昇するとの結果になっている。 
      一方、国・地方・社会保障基金をあわせた一般政府赤字(対GDP比)は、199 4年度の2.6%から2025年度には15%程度に上昇する。その結果として、一般政 府債務残高(対GDP比)は、7.5%から153%程度となり、維持できる状況ではな い。また、そのうちの社会保障基金(フローの収支、対GDP比)は2.9%の黒字から 、2025年には6%程度の赤字となっている。これは、社会保障給付率が社会保障負担 率を上回って増加する(国民所得比でみて14.1%から34%程度へ上昇する)ためで ある。その結果として、社会保障基金(ストック、対GDP比)は、42.5%の黒字か ら10%程度の赤字となり、基金制度としての機能が果たせない。 
      また、経済の姿をみると、2011~2025年度の平均経済成長率は、1.1% 程度にまで低下する結果となっている。これは、1)労働力人口が減少していること、2)社 会保障給付の増大などに伴う財政赤字の増加により、金利が上昇し、資本蓄積の伸びが低 い水準となっていること、などによって経済成長率が低下しているからである。 
      なお、財政赤字の増加および、高齢化の進展に伴う国内貯蓄の減少により、経常収 支は赤字化し、21世紀には日本は債務国となる。このため、対外利払いが急増しており 、名目GDPに比較して国民所得の伸びは低くなっている(2011~2025年度の平 均伸び率について、名目GDPは3.4%、国民所得は2.5%となっている)。
    2. 国民負担率に影響する要因

      このシミュレーションにおいては、今後の国民負担率の推移に影響する要因として、次の 点が指摘できる。 
      第1に、高齢化・少子化の進展に伴う社会保障制度の変更が影響を及ぼしている。 すなわち、前述の年金保険料率の引き上げにより、社会保障負担率が上昇する。なお、医療 面からは、高齢化に伴い給付は増大するものの、保険料率を一定と想定しているため、国 民負担率をほとんど変化させない。 
      第2に、高齢化・少子化の進展に伴う経済成長率の低下が間接的に影響を及ぼして いる。特に、国民負担率の分母である国民所得の伸びは前述のように一層低下し、これが 結果として国民負担率を高めることとなっている。 
      第3に、モデルの推計期間(1970年度~1993年度)の総税収が経済成長以 上に伸びていることから、その趨勢を反映して予測期間の租税負担率が上昇している。 
      なお、参考として、出生率の想定については、中位推計と低位推計のいずれにしても 、2025年度までの人口構造をそれほど大きく左右することにはならないので、国民負 担率への影響はほとんどないものと考えられる(ただし、2025年度以降の国民負担率 については、大きな影響を及ぼす)。 
      また、全要素生産性(技術進歩)の想定を変えることによって経済成長率が変わる 場合については、国民負担率自体にはそれほど大きな変化は生じない。これは、例えば、  全要素生産性の伸びが上昇した場合は、国民所得も増加するが、同時に賃金の増加などに 伴い、租税・社会保障負担も増加するからである。

    3.いくつかの代替的シミュレーション

    現行ケースにおける国民負担率の上昇を容認するかどうか、また容認できないとした 際にはそのためにどのような政策を講ずるかについては、広く国民的な議論を通じて決定 されるべき問題である。ここでは、そうした国民的な議論に資するための一つの素材とし て、いくつかの代替的なシミュレーションを試みた。

    1. 社会保障制度改革シミュレーション

      現行ケースをベースに、今後とも社会保障制度の果たすべき機能を維持していくため、 年金、医療、介護、育児、雇用の各分野において制度変更を行う場合を想定し、それらが 国民負担率および関連する経済指標に与える効果についてシミュレーション分析を行った 。 
      想定したケースについては、次の二つである。

      (社会保障制度改革ケース1)
      1) 年金については、年金財政の強化を図るため、65歳支給体制への移行を現行ス ケジュールから5年繰り上げて実行する(男子は1996年度開始-2008年度完了、 女子は2001年度開始-2013年度完了)。さらに、5年ごとの保険料率の引き上げ 幅を3.0%にする。
      2) 医療については、医療財政の強化および医療の効率化を図るため、2001年度 以降、患者の自己負担分を現行ケースにくらべて10%ポイント上げ、21.8%にする 。
      3) 介護については、高齢社会において増加する介護費用の負担を分散化するために、 1999年度から介護保険を導入する。すなわち、介護費用の10%を自己負担とし、介 護費用の残りの50%を保険で賄うことを想定する。ただし、介護保険の導入とともに、 介護施策の充実を図ることにより、いわゆる社会的入院が減少し、介護費用の30%相当 が医療費から削減されると想定する。
      4) 育児については、厚生省の福祉ビジョンに沿って、育児対策の拡充を図る。
      5) 雇用については、高齢者および女子の雇用が促進されるものと想定する。1)の年 金の65歳支給体制への移行が完了すると(男子2008年度、女子2013年度)、高 齢者の雇用促進策の効果もあり、高齢者の労働参加率が10%ポイント上昇すると想定す る。また、3)の介護施策の充実や4)の育児対策の拡充が行われることもあり、2001年 度以降、30~34歳の女子の労働参加率が70%になると想定する。 
      「社会保障制度改革ケース1」のシミュレーション結果をみると、国民負担率は2 025年度で51%程度となり、現行ケースより1%ポイント程度低下する。その内訳を みると租税負担率は32%程度、社会保障負担率は19%程度となっている。 
      一方、一般政府赤字(対GDP比)のGDP比率は12%程度となり、現行ケース より3%ポイント程度低下する。その結果として、一般政府債務残高(対GDP比)は、 121%程度となりやはりサステナブルではない。また、そのうちの社会保障基金(フロ ーの収支、対GDP比)は3%程度の赤字であり、現行ケースより3%ポイント程度改善 している。これは、社会保障負担率が現行ケースより若干程度高くなるとともに、社会保 障給付率が現行ケースより2%ポイント程度低くなるからである。その結果として、社会 保障基金(ストック、対GDP比)は、21%程度の黒字となっている。 
      また、経済成長率は2011~2025年度の平均で1.3%程度となり、現行 ケースより0.2%ポイント程度高くなる。
      (社会保障制度改革ケース2)
      1) 年金については、65歳支給体制への移行を、基礎年金部分だけでなく、報酬比 例部分についても行う(男子は2001年度開始-2013年度完了、女子は2006年 度開始-2018年度完了)。
      2)~5)は(ケース1)と同様。ただし、5)の高齢者の労働参加率は、男子は2013 年度、女子は2018年度から上昇すると想定する。

      「社会保障制度改革ケース2」のシミュレーション結果をみると、国民負担率は2 025年度で49%程度となり、現行ケースより3%ポイント程度低下する。その内訳を みると租税負担率は31%程度、社会保障負担率は17%程度となっている。
      一方、一般政府赤字(対GDP比)は8%程度となり、現行ケースより6%ポイン ト程度低下する。その結果として、一般政府債務残高(対GDP比)は、97%程度とな っている。また、そのうちの社会保障基金(フローの収支、対GDP比)は1%程度の赤 字となり、現行ケースより5%ポイント程度改善している。これは、社会保障負担率が現 行ケースより1%ポイント程度低くなるものの、社会保障給付率が現行ケースより7%ポ イント程度低くなるからである。その結果として、社会保障基金 
      (ストック、対GDP比)は、42%程度の黒字となっている。 
      また、経済成長率は2011~2025年度の平均で1.4%程度となり、現行 ケースより0.3%ポイント程度高くなる。
    2. 政府支出抑制シミュレーション

      現行ケースをベースに、財政構造の健全化に向けて政府支出を抑制する場合を想定 し、それらが国民負担率および関連する経済指標に与える効果についてシミュレーション 分析を行った。 
      想定したケースについては、次の二つである。

      (政府支出抑制ケースa)
      実質の政府固定資本形成を公共投資基本計画終了(2004年度)以降一定とする とともに、実質の政府最終消費支出を1996年度以降一定と想定した。 
      「政府支出抑制ケースa」のシミュレーション結果をみると、現行ケースと比較し て国民負担率はほとんど変化していない。しかしながら、一般政府赤字(対GDP比)は 6%程度となり、現行ケースより8%ポイント程度改善する。その結果として、一般政府債 務残高(対GDP比)は59%程度となる。また、そのうちの社会保障基金(フローの収 支、対GDP比)は8%程度の赤字となり、現行ケースより2%ポイント程度悪化してい る。これは、社会保障負担率が現行ケースより若干低くなるとともに、社会保障給付率が 現行ケースより1%ポイント程度高くなるからである。その結果として、社会保障基金( ストック、対GDP比)は、18%程度の赤字となっている。 
      なお、経済成長率は2011~2025年度の平均で0.9%程度となり、現行ケ ースより0.2%ポイント程度低くなる。
      (政府支出抑制ケースb)
      「政府支出抑制ケースa」の想定をベースに、実質の政府最終消費支出を2025 年度に1996年度の90%となるように1996年度以降削減していくと変更して想定 した。 
      「政府支出抑制ケースb」のシミュレーション結果をみると、「政府支出抑制ケー スa」とほぼ同様の結果が得られている。ただし、一般政府債務残高(対GDP比)は5 0%程度となり、「政府支出抑制ケースa」よりさらに8%ポイント程度改善している。

    II 財政・社会保障問題ワーキンググループ の報告におけるシミュレーション結果について

    1.現行ケースのシミュレーション結果について

    1. 現行ケースのシミュレーションでは、次のような結果が示されている。
      1) 国民負担率(対国民所得比)は、1994年度実績の35.8%から2025年度には52%程度に 上昇する。 
      2) 社会保障基金(フローの収支、対GDP比)は、1994年度実績の 2.9%の黒字か ら2025年度には6%程度の赤字となっている。 
      3) 一般政府赤字(対GDP比)は、1994年度実績の 2.6%から2025年度には15%程 度に上昇する。

      なお、国民負担率には財政赤字の分が考慮されていない。そこで、財政赤字の分は将 来の国民の負担によってカバーされると考え、国民負担率に一般政府財政赤字比率(対国 民所得比) を加えたものを「潜在的な国民負担率」と考えると、この比率は1994年度実績 の39.2%から2025年度には73%程度に上昇している(注)。 
      また、付属表にあるように、経常収支(経常海外余剰)は、2000年代半ば以降赤字 となり、その後赤字幅は拡大し、2025年度には対GDP比で14%程度に達する。これは、 高齢化の進展により経済全体の貯蓄率が低下する一方、財政赤字が拡大するためである。 すなわち、80年代のアメリカと同じ道をたどることによって、「双子の赤字」が発生する こととなる。

      (注)「潜在的な国民負担率」をみる際には、次の点に注意する必要がある。
      1) この数値は財政収支の均衡を仮定しているが、実際にはEUのような考え方(対 GDP比で中央政府の財政赤字3%以内、累積債務60%以内を目標)もありうる。
      2) 2025年度のみの財政収支の均衡を仮定しており、シミュレーション期間全期にわ たり均衡を考慮する場合には当然この数値は変化する。
    2. こうした経済の姿は、現実に生じうる姿の予測というよりは、現状を放置した場合、 経済が行き着く先の姿がいかに維持不可能な姿となるかを示したものだと解される。その 意味で、この「現行ケース」はいわば「破局ケース」だと言える。 
      経済が破綻状態となっているのは、次のような点である。

      1) 社会保障制度については、給付と負担が極端に乖離しており、社会保障基金は2025 年度以前に底をつくという姿になっている(実際の運営には最低限一年分のストックが必 要とされる)。 
      2) 財政については、一般政府純債務残高(対GDP比)が2025年度には 153%程度 となり、とうていファイナンス可能ではない状態となっている。 
      3) 国際収支面では、経常赤字が持続する結果、対外債権は次第に減少して、2010年 代には債務国に転落し、以降債務は雪だるま式に累増していく。2025年度には対外純債務 は対GDP比で 109%程度となり、そのための利子支払い(海外への純要素所得)は対G DP比10%にものぼる。このため、GDPと国民所得の乖離が広がり、いわば「働いても 、自分の懐には入らない」部分がかなりの割合にのぼることとなる。

    3. 以上のようなシミュレーション結果は、次のようなことを示しているものと考えら れる。 
      1) 財政・社会保障の現状は、潜在的には既に「維持不可能」なものとなっている シミュレーションは、現状を延長して考えた場合、経済は破綻するという結果となってお り、財政・社会保障についての大幅な見直しが必要であることを示している。 
      2) 負担率の議論は財政赤字と合わせて議論されるべきである 
      シミュレーションでは、財政事情が悪化する状況が示されている。国民負担率に は財政赤字が考慮されていないという限界があり、将来を展望する際には、負担率と財政 赤字の状況を合わせ展望する必要がある。 
      3) 財政・社会保障の将来は、単に財政・社会保障分野における問題ではなく、国民 経済全体にとっての問題である 
      シミュレーションでは、国際収支面で維持不可能な状況が描きだされており、国 民経済的な課題であることが示されている。 
      4) 現状を放置すれば、国民負担率はかなり上昇する 
      シミュレーションでは負担率が上昇する姿が描きだされており、これが経済の活 力を損なう可能性がある。

    2.代替的シミュレーションについて

    1. 社会保障制度改革についてのシミュレーションでは、社会保障制度における給付と 負担のバランスが改善される結果が示されている。

      1) 社会保障制度改革ケース1(現行年金改革プランの5年前倒し実施等)においては 、社会保障給付が減少するため、2025年度においても社会保障基金残高が対GDP比で21 %程度の黒字であり、社会保障基金制度は維持可能である。 
      2) 社会保障制度改革ケース2(年金の報酬比例部分も含めた完全65歳支給への移行 等)においては、社会保障給付がさらに減少するため、2025年度においても社会保障基金 残高が対GDP比で42%程度と黒字であり、社会保障基金制度は維持可能である。ただし 、フローの収支は1%程度の赤字となっている。また、労働参加率が上昇することから経 済成長率は改善するとともに、国民負担率は49%程度まで低下する。 
      3) いずれのケースにおいても、一般政府財政赤字は大きく、一般政府純債務残高も 高水準であり、深刻な状況にあるといえる。

    2. 財政支出削減についてのシミュレーションでは、政府部門におけるバランスが改善 される結果が示されている。

      1) 財政支出削減ケースa(実質の政府支出の伸びをゼロと想定)においては、2025年度 において、一般政府財政赤字は対GDP比で6%程度まで改善し、一般政府純債務残高は 対GDP比で59%程度となる。 
      2) 財政支出削減ケースb(ケースaに加えて政府最終消費支出の削減を想定)にお いては、ケースaと比べて政府支出の削減が大きい分だけ財政赤字はより改善する。 
      3) いずれのケースにおいても、社会保障基金制度における給付と負担の乖離が依然 として大きいことから、2025年度において社会保障基金制度は機能を果たせなくなる。

    3. 社会保障制度改革および財政支出削減を同時に実施したシミュレーションでは、各 々のケースを合成した結果が示されている。そのうち、社会保障制度改革ケース2と財政 支出削減ケースbを組み合わせた結果をみると、2025年度において、国民負担率は48%程 度まで低下するとともに、一般政府財政収支は対GDP比で2%程度の黒字となっている 。

    ( 附 属 資 料 ) 

    (付)将来展望に使用した長期計量モデルの概要

    1.特徴
    このモデルは、人口構造の変化がマクロ経済や財政・社会保障会計に与える影響を分 析するための長期計量モデルである。特徴としては、1)社会保障制度(年金、医療、介護 、雇用)の改革シミュレーションが可能であること、2)人口構造が陽表的にモデルに組み 込まれているため、高齢化の消費等への影響や年齢階級・性別の労働参加率の変化を取り 扱うことできることが挙げられる。
    2.モデルの概要
    このモデルは経済の動向を長期的に分析する計量モデルであるため、産出水準(実質 GDP)は資本ストック、労働供給、全要素生産性といった供給サイドの要因で決定され る。制度部門としては、民間(家計・企業)、政府(中央・地方)、社会保障基金、海外 の4部門から構成されている。各方程式は1970~93年度の年次データ(年度)を用 いて推計しており、2025年度までシミュレーションを行っている。(モデルの構造に ついては、フローチャート参照)。 
    家計については、ライフサイクル仮説に基づき、高齢化の進展等により消費性向が増 大し、貯蓄率が低下するといった定式化を行っている。住宅投資は金利、高齢化率が上昇 すると減少するようになっている。また、労働力化率は高校・大学の進学率や年金の給付 水準等から影響を受けるといった形になっている。 
    企業については、資本ストックを最適水準に向かって調整していくように設備投資を 行うと仮定しており、具体的には、現在の資本ストック、資本コスト等の関数となってい る。 
    政府部門については、税収は、直接税、消費税、その他の間接税の3項目ごとに推計 している。直接税は国民所得、消費税は税率と課税対象金額、その他の間接税は名目民間 消費に基づき計算されている。なお、政府から社会保障基金への移転は社会保障給付総額 の関数であり、社会扶助金は高齢化率、未成年比率等の関数となっている。 
    社会保障基金部門については、1)年金、2)医療、3)介護、4)雇用に関してモデル化を 行っている。

    1) 年金
    負担については、まず、人口構成から年金加入者の総人数を予測し、これから、(a ) 厚生年金(2号) 、(b) 国民年金(1号)、(c) 国民年金(3号)、(d) その他(共済 等)の4項目の加入者数をわり出す。この各加入者数と各料率及び賃金から、負担総額を 計算する。 
    給付については、新旧制度につき、(a) 厚生年金+共済(報酬比例部分を含む老齢 年金)、(b) 基礎年金+通老年金+厚生年金基金(その他の老齢年金)、(c) 遺族年金、 (d) 障害年金の4項目に分割、計8項目を考える。各項目ごとに、受給者数を人口構成等 から予測し、また、一人当たり給付額を料率、賃金等から計算する。これらから、各項目 の給付額及び給付総額を計算する。

    2) 医療 
    負担総額を賃金、保険料率(政府管掌健康保険)、生産年齢人口から予測する。 
    給付については、年齢階層別に、一人あたり一般診療費を所得水準(=国民所得/ 就業者数) 、患者負担率等から予測。これに、年齢階層別人口を掛け合わせて一般診療費  総額を計算。これに基づき、国民医療費、医療給付総額を計算する。

    3) 介護保険 
    給付については、要介護者数を(a) 在宅、(b) 施設の別に人口構成等から予測し、 また、両項目につき、一人あたり介護費用を消費者物価の伸び率で外挿して算出する。これ らから総介護費用を計算し、さらに、総介護費用から、自己負担分を控除して給付総額を 計算する。負担総額は給付総額から公費負担分(一定割合と想定)を控除して算出する。

    4) 雇用保険 
    失業保険の負担総額、給付総額を、所得水準、雇用者数及び失業者数から計算する。