はじめに
我が国の人口移動については、これまで長きにわたり、若年層を中心として、地方から大都市への移動という流れが続いている。
こうした中、東京圏への一極集中については、2020年頃から始まったコロナ禍により、一時的に減速の動きがみられ、テレワークの普及、働き方やライフスタイルの多様化などもあり、変化の兆候があると捉える向きもあった。しかし、感染症が収束し経済社会の正常化が進む中で、人口移動の状況は、再びコロナ禍前の姿に戻りつつあるようにみえる。こうした動きも含め、我が国における人口移動の背景には、人々のどのような考え方や行動パターンが影響しているのか、各種の統計やアンケート調査等を中心にみていくこととする。
第1章では、人口移動に関する統計データを基に、東京圏を含む三大都市圏について、他地域からの人口流入の状況やその変化を確認するとともに、20代の若者を中心として、進学や就職など、どのようなタイミングで変化が発生しているのかを確認する。
第2章では、若年層が東京圏に集中する要因として、進学時と就職時における地域選択の理由についてアンケート調査を基に分析するとともに、進学や就職による人口移動の状況や、経済構造や雇用情勢と人口移動との関係などについても確認する。
第3章では、地方において、進学や就職で若年層を引き寄せることに成功している事例を確認するとともに、若者に選ばれる地方を目指して、地域が取り組むべき課題を整理する。