第4章 第4節
4-2.所得環境
これまで述べたのとおり、雇用環境が改善している中で、所得環境についても、都市部から地方へと改善の動きが広がりをみせている。
(雇用環境の改善を受けて、賃上げ企業数は増加)
財務省「財務局調査による『賃金の動向』について」をみると、ベースアップを実施した企業は、2013年度は全国で12.7%であったが、2014年度には全ての地域で増加し、41.8%となった。2015年度はベースアップを行う(予定を含む)企業の割合は全国で47.1%となり、多くの地域で2014年度を上回っている。また、2015年度の引上げ率を前年度と比較すると、「上回る(予定を含む)」とする企業が50.0%、「同程度(予定を含む)」とする企業が35.6%となっており、賃金の更なる上昇が見込まれている(第4-2-1図)。
また、 経済産業省「中小企業の雇用状況に関する調査集計結果概要」(2015年8月)により、一人当たり平均賃金の引上げ(定期昇給分含む)状況をみると、「引き上げる/引き上げた」とする企業の割合は、2015年度は、前年度に比べて全ての地域で増加しており、賃金の引上げの動きは、雇用環境の改善を背景に、大企業のみならず地方の中小企業へも波及していることが分かる(第4-2-2図)。
(賃金も就業者も底堅く増加)
「毎月勤労統計調査」において、地域別に一人当たり賃金(現金給与総額)の動きをみると、他地域に比べ東京都が先行して改善してきたが、2013年以降、地方でも一人当たり賃金が増加に転じ、就業者数も増加している。所得の改善の動きは、東京から都市部、そして地方へと緩やかに波及しているといえる(第4-2-3図)。
また、パート、アルバイト募集時の平均時給について、2012年の1-12月期と2015年1-12月期を比較すると、全ての地域で上昇している。その上昇幅をみると、南関東、東海、近畿など大都市を含む地域以外でも大きくなっている(第4-2-4図)。
時給賃金の高まりについては、人件費高騰による利益の圧迫を指摘する声等が報告されている点に留意が必要である(第4-1-8表)。