第2回経済審議会構造改革推進部会議事概要
1.日時
平成8年9月18日(水)10:00~12:00
2.場所
経済企画庁特別会議室(1230号室) 第4合同庁舎12階
3.出席者
(部会)
小林部会長、香西部会長代理、井堀委員、角道委員、岸委員、小長委員、橘木委員、月尾委員、長岡委員、奈良委員、南部委員、深海委員、藤原委員、堀委員、吉川委員、鷲尾委員、和田委員
(事務局)
清水政務次官、糠谷事務次官、水谷日銀政策委員、鹿島企画課長、坂本総合計画局長、小峰審議官、五十嵐審議官、志賀計画課長、太田計画官、道上計画企画官、服部計画官、大前計画官、田中計画官
4.議題
- (1)構造改革推進部会の今後の運営について
- (2)経済情勢の展開について
- (3)新規産業展開・雇用創出について
5.審議内容
- (1)構造改革推進部会の今後の運営について
今後の日程等につき事務局より説明し、了承された。 - (2)経済情勢の展開について
計画策定後の経済情勢の展開について、事務局より説明。
(当議題に対する委員からの主な意見は以下の通り)
- 現在の経済情勢により、マイナスの影響や、しわ寄せがきている面(例えば低金利の金利生活者への影響等)についても言及すべきである。
- しわ寄せが出てきているところについては、何らかの手当が必要。
- 経済情勢のとらえ方に受け身の印象がある。例えば金融の問題に関しては、「不良債権問題に目処がつきつつある」といったことだけでなく、空洞化しつつある日本の金融・資本市場の現状に鑑み、国際金融センターの構築への前向きな取り組みなどにも触れるべき。
- 財政バランスについて「財政改革を一層強力に推進する」とあるが、他の分野についても、これまでの動きだけでなく今後の方向性を盛り込むべきである。
- 構造改革を進める上では、構造改革で伸びる分野と落ち込んでしまう分野に分けて考える必要がある。全てを支えても仕方ない。
- 経済の回復基調にはいろいろな要因があるが、その中での構造改革の効果を明確にするような分析が必要ではないか。
- (3)新規産業展開・雇用創出について
最近の産業展開の動向、成長期待7分野の動向、7分野以外の成長産業例、雇用創出に向けての今後の課題等について、事務局より説明。
(当議題に対する委員からの主な意見は以下の通り)
- 新規産業展開が雇用創出にどう結びついているのか、きめ細かくみていく必要がある。生産額が増加しても生産性の向上により雇用は増加していないケースもある。
- 産業の成長には、雇用量の増加と生産性の向上の2つの要因があり、就業者数が増加している産業だけが成長産業とは言えないのではないか。
- 成長期待産業とその他の産業における就業者数の増減を議論する際には、同時に職種転換を伴う産業間労働移動にも注目すべきである。(職種転換に伴う移動は、同一職種内の移動に比べ手厚い対応が必要である。)
- 成長期待分野を考える際に、コンピューターのプログラムのケアや道路・鉄道・港湾の補修や整備等、日本の産業基盤を維持するために今後必要となる分野にも追加的な成長期待分野として留意すべきである。同時に、環境に対する国民意識が長期的に高まっていることにも留意が必要である。
- 現在、日本経済の高コスト構造の是正が課題となっているが、成長期待7分野のうち環境分野や医療保健・福祉関連分野等で雇用を増やすことは、むしろ日本経済全体としてのコストを上昇させることでもある。考え方の整理が必要である。
- 医療保健・福祉関連分野で就業者数等が伸びているといっても、公的部門の寄与が大きく、今後は、民間事業者の参入が容易になるように、事業開始時の資金供給の円滑化に向けた制度的な手当が必要であろう。
- 環境関連分野については、ゴミをどう処理するかということ以前にゴミを出さない社会システムを築いていくことが重要である、といった視点が必要。
- 成長期待7分野の具体例として、幼児教育等を付加したベビーシッター、テーマパーク等が挙がっているが、こうしたものが発達した社会が本当に我々の目指すものなのか疑問である。
- 賃金や所得の格差については、米英ほどではないが、企業規模間などでは、日本でも拡大傾向にあり、きめ細かく検討する必要がある。ただ、能力主義の浸透が格差を拡大させるというポジィティブな面もあり、格差の拡大をどう考えるかは議論が分かれるところであろう。
- 格差の問題については、同一労働に対する企業規模間格差は厳存しており、その解決が必要。その上で、能力に応じた合理的な格差を認めつつ、個人主導の能力開発を広めていく方策については、企業の枠を超えた社会的な合意形成の在り方という面から考える必要がある。
- 格差については、むしろ90年代の日本では所得分配は不平等化していないのではないか。また、規制緩和が格差を拡大させるかという点については、日本の場合、金融業等の規制産業分野で賃金が高いこともあり、規制緩和は必ずしも格差を拡大させないのではないか。
- 現下の日本の賃金格差は比較的小さいので望ましいという議論は行うべきではない。アメリカでは成功すれば4倍の賃金が貰えるのに、日本では2倍強しか貰えない分、労働者のインセンティブがディスカレッジされており、よりダイナミックな形でインセンティブを付与していくことが課題であるという視点が必要である。
- 格差については、日本では平準化が進み過ぎたという面はあると思う。そうした中で、労働の質の向上が十分図られるのだろうか(考えてみる必要がある)。
- ベンチャーについては、個人の創業によるものの外、企業内ベンチャーも広がりをみせている。こうしたものを突っ込んで分析してみても良いのではないか。
- 企業内ベンチャーと分社化のどちらが望ましいのかという点は一つの論点である。
- 雇用問題を考える上で、完全失業率という数値に拘泥しすぎているのではないか。もっとエンプロイアビリティー、労働力の質という観点を大切にすべきだ。労働力に求められる質に関する議論が第一にあるべきであり、如何なる産業で就業者数が増加しているかなどというのは二義的な問題である。
- 地域における雇用創出を目指すには、地域レベルでの社会的な合意形成の図り方が課題である。
- 地域における雇用機会の創出について、製造業等における地域での集積技能を発展的に継承していくことは重要な政策課題である。
(以上)