第8回経済審議会グローバリゼーション部会議事概要

1.日時:

平成11年6月18日(金) 16:30~18:00

2.場所:

経済企画庁官房特別会議室(436号室)

3.出席者:

(部会)八城政基部会長、糸瀬茂、國谷史朗、篠原興、下村泰民、松本大、若林之矩の各委員

(事務局)堺屋経済企画庁長官、中名生総合計画局長、川本調整局審議官、高橋総合計画局審議官、牛嶋総合計画局審議官、宮崎経済協力第二課長、大西計画課長、塚原計画官、青木計画官、渡辺電源開発官、涌野計画企画官、岩瀬計画企画官

4.議題:

  • ○グローバリゼーション部会報告(案)について
  • ○経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(素案)序章について

5.議事内容:

  • ○グローバリゼーション部会報告(案)について

     事務局より前回の審議を踏まえた「グローバリゼーション部会報告(素案)」の修文のポイントについて説明。各委員からの主な意見は以下の通り。

  • ○バランスよくまとまっているが、グローバリゼーションの進展が引き起こす歪みについて日本が何をするべきかという指摘が不十分。
  • ○グローバリゼーションについて貿易や直接投資に関しては、日本もアジアの国々も受益者であり、今後も原則として肯定すべき。しかし、金融の分野では今後とも主流を占めるかどうかは疑問。アジアの国々(OECDの参加国の中では日本と韓国だけ)は地域的な経済統合の枠組みの中にない。そういう意味では、グローバリゼーションを考えるにあたっては、それが所与で対応をしなければならないものとしてではなく、その長所や短所をよく判断し、主体的に取捨選択していくべき。アメリカもそういう姿勢を取っている。また、グローバリゼーションの悪影響に対する対処策も検討しておくべき。それは個々の記述の中に読み取れる。以上が感想である。
  • ○気付きの点としては、アジアだけでなく、国連やWTOの場でもっと積極的に日本が主体的な役割を担うということまで踏み込んでいきたい。しかし、国防・軍事等のかなり政治的な色彩が濃いところまで関わってくるためやむを得ない面があり、その範囲内ではよく出来ている。
  • ○グローバリゼーションのマイナスの影響に対する弱者救済についての各論的な記述がないとの指摘があるが、この部会の主眼はグローバリゼーションを前向きに捉えてそれにどう対応していくかということであり、その限りにおいて内容に不足はない。
  • ○審議会の進め方について、議題や議論の方向性について事務局から提示されるだけでなく、複数の選択肢の中から議論を発展させるようなやり方も検討するべき。
  • ○部会報告はホームページに掲載するのか、また、英語版も同様に掲載するのか。

    議論の終了後、部会報告最終とりまとめについては、部会長一任ということで各委員とも了承。なお、欠席の委員については、事務局が個別に本報告について説明を行い、了承を得るものとする。

  • ○経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(素案)序章について

     事務局より資料について説明。各委員からの主な意見は以下の通り。

  • ○内容については高く評価する。私の考え方とも整合的。しかし、読者に対してあまりにショックが強いのではないかと懸念。例えば、「自立した個人」とあるが、40~50代の方はかなり不安感を覚える。従って、序章の段階でセーフティ・ネットをもう少し強調した方が安心して読める。
  • ○21世紀の世界で日本はどういう役割と位置付けにあるべきなのかということについて記述がない。
  • ○次の3点の記述について少し具体的に説明して欲しい。①「競争によって生じる経済的格差を是正し、みんなが生きられる仕組みを形成することである。」はこれまでの社会福祉とか社会保障を強化すべきということなのか、②「平和の維持と良好な治安は今後も守らなければならない。」は軍事的なプレゼンスを高めるのか、または今まで通りに行くのか、③「多源的な補完を認めた上で、平和と治安を維持する考え方と方法」は外国人の大量な受入れを含意しているのだろうが、記述の内容の具体的な方法はあるのか。なお、「多源的な補完」は分かりにくい表現であるので、他の易しい表現に変えて欲しい。
  • ○本稿をまとめると「戦後の日本の歩んで来た道、それに基づく我々の知識も経験もその集積も全て改めなければならない、その先にあるのは自由である」と読めるが、日本は不自由なのか。こんなに自由な国はないのではないか。
  • ○現状認識の1つの重要なポイントは、日本は今世界で最大の債権国であるということ。この債権を、軍備、他国を強制する力なしに、どう保全していくかということが、2010年、2020年をターゲットにした時のポイント。そのためには、我々社会全体のモラルを高く保つ、あるいは債権保全のためのコストの負担、その覚悟を国民全体が持つことが必要。
  • ○競争と機会の均等が慣行として出来あがっていることも、日本が他国に誇れる社会現象であり、そういうことを大切にしていくことも必要。
  • ○自由は結構だが、その裏打ちがないと、自由が約束できない。今の日本の社会構成員のあり方からみると、何をやってもいい、権利だけを主張するという、そういう人たちを生まないだろうか。自己責任だけでなく、負担の覚悟も必要。
  • ○国民総背番号制と、全ての資産に対する実名制の導入は今後、社会の公正を担保していく上で必要。日本は、不動産の実名制はできているので、動産に実名制を導入し、税制から始まってありとあらゆる取扱いが極めて透明な中で、平等が担保されることが必要。これはプライバシーの大侵害になると思うが、これがないと、社会の次の発展の基礎を作っていくために、柱が欠ける。
  • ○アジアで巨大な人口を抱える国が、これから日本の戦後のある部分の歴史をもう一遍彼らの足で歩みはじめる時に、我々が過去作ってきた知識や経験は役に立たないだろうか。
  • ○明るい感じで読めた。
  • ○官の役割については基本的な理解に異議はないが、ルール作りの明確化とその最小限化というところを、もう少し強調したい。
  • ○官では、民間ではどうしてもできない資源分配や投資を集中的にやるべき。
  • ○この10年間において、現在の状況、将来の状況等その時々の状況に応じて柔軟に対応できるようなシステムを作るべき。
  • ○日本が今後10年間で競争力を維持できるのは製造業であり、金融業では競争はできない。日本が世界最大の債権国であるのはメーカーが一生懸命お金を稼いでいるからである。
  • ○「きらびやかな文化」は、日本は10年間では目指すことはできても主役にはなれないのではないか。日本は「地道な文化」を目指す方がいい。
  • ○21世紀は人材の社会であり、人口が減り、皆がモラル高く生活し、達成感の持てる社会、人間が持っている能力を出し切れる社会を目指すべき。
  • ○「多源的補充性のある経済社会」で、一国の経済、人口、労働力の問題を多様な外国人を受け入れて解決していくことについては、相当慎重に対応すべき。日本国民の選択肢の1つであることは確かであるが、「秩序ある外国人の流入をも視野に入れた多様多源な補充を想定すべき」という、方向性の強い表現にするのは適当でない。この問題は長期的な視点で議論していくことが重要。
  • ○少子高齢化を外国人労働力の受け入れや移民で解決していくことは困難。
  • ○相当の人数を多くの国から受け入れることは、受け入れ国でコントロールできる問題ではない。いろいろな問題があり、社会的・経済的に極めて影響の大きい問題。
  • ○自由が前面に出ているが、それと「あるべき姿」のマッチングが悪い。
  • ○グローバリゼーションという流れは既に起きており、それは止められないものであり、その時に間違った壁を立てない、ということが大切。
  • ○方向性を官で立てるというのは、いかがなものか。「成長拡大傾向を維持する経済」の中で成長拡大傾向を維持する、と言い切っているが、逆に無理に拡大するというスローガンが出てくる方がかえって負担がある。流れに任せるしかないのではないか。
  • ○「自立した「個」を基盤とした経済社会」の中で、個人相互も企業も政府も、「縦」でなく「横」の関係にする、とあるが、これも無理やり実現させることは不可能であって、なるようにしかならないものである。官の役割は、民間で組織が変わっていくためのきっかけとして、まず官の側で組織が変わっていく、小さくなっていくということ。それが官でできることのうち大きなことである。
  • ○素案については、政策を実現するうえでデリケートな問題をはらんでいるものが多くある。
  • ○「軍事小国でありながら、平和を維持していく」、「多源的な補完を行いながら、治安を維持する」、「地球環境の美化と保護を正義の一部に加えるべき」など、ここまで言うのであれば、例えば地球環境の美化と保護について、よほどドラスティックで新しい、野心的な政策手段が展開されていないとここまで言えない。素案で書かれていることは、これまで言われていることと変わらない。正義の一部に加えるほど地球環境の美化に取り組むのであれば、よほど日本がグランドデザインを出して、世界に環境技術の移転について積極的な役割を果たすという情熱が出てこないと書けないのではないか。そういう点で、以上の3点を含め、もっと具体化のための政策手段と構想との連結についてご努力いただきたい。
  • ○少子高齢化社会において、日本のGDPが落ちると一般的に言われているが、産業構造の変革と、高齢者や女性の寄与する分野は非常に大きい。年をとったら生産力がなくなるというのではなく、知恵を出し、付加価値を高めたことができるのではないか。

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局国際経済班

Tel  03-3581-0464