経済審議会 第8回構造改革推進部会議事録

時:平成11年5月25日

所:共用第二特別会議室(407号室)

経済企画庁

経済審議会構造改革推進部会(第8回)議事次第

日時 平成11年5月25日(火)10:00~12:00

場所 共用第二特別会議室(407号室)

  1. 開会
  2. 構造改革推進部会報告書(素案)について
  3. 閉会

経済審議会構造改革推進部会委員名簿

部会長

水口 弘一
(株)野村総合研究所顧問

部会長代理

江口 克彦
(株)PHP総合研究所取締役副社長

五十嵐 三津雄
簡易保険福祉事業団理事長

岩田 一政
東京大学大学院総合文化研究科教授

加藤 秀樹
構想日本代表

リチャード・クー
(株)野村総合研究所主席研究員

草野 厚
慶応義塾大学総合政策学部教授

草野 忠義
日本労働組合総連合会副会長

清水 秀雄
(株)セブンーイレブン・ジャパン取締役副会長

中条 潮
慶応義塾大学商学部教授

中村 靖彦
NHK解説委員

野中 郁次郎
北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科長

長谷川 公敏
(株)第一生命経済研究所専務取締役

濱田 康行
北海道大学経済学部教授

村井 勝
コンパックコンピュータ(株)顧問


〔部会長〕

おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、第8回の構造改革推進部会を開催させていただきます。

 委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の議題は、前回に引き続きまして「構造改革推進部会報告書(素案)」についてでございます。

 議事は、前回の議論に基づいて修文されました主な点を最初にご説明いただきまして、「構造改革推進部会報告書(素案)」に関し質疑の時間を取るという形で進めたいと思います。

 なお、前回同様、本日お諮りする報告書案に関します資料につきましては、最終的な報告書の取りまとめと同時に公開することとさせていただきます。

 それでは、「構造改革推進部会報告書(素案)」の前回の議論を踏まえた修文のポイントにつきまして、事務局からご説明をお願いします。

〔事務局〕

それでは、資料2「構造改革推進部会報告書(素案)」に基づいてご説明をしたいと思います。

 前回、各委員からいただきました意見で修正した主要なところは下線を引いてございます。それから、「はじめに」のところを大幅に修正しております。委員から、構造改革と雇用の関係をここできちんと触れておくべきである、というご意見がございましたので、それを書き込んでございます。

 さらに、この報告書の素案の全体の文章がよくない、読みにくい、という厳しいご指摘もございまして、不十分かと思いますが、できるだけ読みやすく、わかりやすくするということで修正をしたところでございます。まだまだ不十分だと思いますので、お気づきの点があればご指摘いただきたいと思います。

 それから、後ほどご説明をいたしますが、別紙で「ビッグバンアプローチについて」で、物流におけるビッグバンアプローチ、情報通信・放送ビッグバンアプローチということでまとめてございます。前回のご議論も踏まえながら、これは事務局で議論の案としてまとめたものでございます。これも忌憚のないご意見をいただければと存じます。

 それでは、修正箇所を中心に簡単にご説明をいたしたいと思います。

 1ページ目を開けていただいて、「はじめに」ですが、前回ご覧いただいたものと比べて大分書き直してありまして、グローバリゼーションに対応した経済社会と、ここで扱っている3つのテーマを取り上げた趣旨等について書いてございます。

 第1パラグラフで、経済社会システムが適合しなくなってきた、第2パラグラフで、構造変革の取組みが90年代の半ば頃から本格的に我が国でも行われるようになった、第3パラグラフでは、しかし、未だに不十分であるということで、21世紀の新しい時代に適合したものに変えていくためにはなすべき課題が多く残っている、と書いてございます。

 それで、本部会ではこうした認識に立って、これまでの構造改革への取り組みが十分な成果をあげてこなかったことへの反省を踏まえた上で、政策提言を以下の3つについて行うこととしたということを述べてございます。

 それから、環境と調和した経済社会で地球環境問題等について取り上げていないということは、最初に述べておくべきであるということで、これはずっと前のご指摘ですけれども、その点についても触れてございます。

 <構造改革と雇用>につきましては、趣旨としては、「構造改革に伴う雇用へのマイナスの影響を懸念する声が上がっている。こうした状況に鑑み、構造改革への提言を行うに当たって、構造改革と雇用との関係について本部会の見解を明らかにしておく必要がある」という認識で書いてございます。

 構造改革はプラスとマイナスの両面の影響があるけれども、構造改革自体は経済の構造を状況変化により適合したものにすることから、最終的な影響は必ずプラスになるという認識が書いてございます。

 「プラスの影響」、「マイナスの影響」、それぞれについて主要な影響を3つほどにまとめて書いてございます。

 短期的にはマイナスの影響が出やすいが、長期的にはプラスの影響がはっきりしてくる、そのような認識も書いてございます。「マイナスの影響のみを懸念して構造改革を先延ばしすることは、長期的には一層の雇用情勢の悪化」につながるという認識が書いてございまして、最後のパラグラフで、我が国の経済を早期に「新たな成長軌道に復帰させていくためにも」、構造改革が必要なのだ。その際には、「マイナスの影響については労働市場の機能強化や財政金融政策の機動的な運営により対応しつつ、必要な構造改革を迅速に実施する」、そういう趣旨で書いてございます。

 それぞれのセクション毎に入りたいと思います。3ページ、1の「『グローバリゼーションに対応した経済社会』を実現させるための構造改革」ですけれども、3ページの真ん中ごろの「第三に」というところに線が引いてございまして、メリットについてはそういうメリットを追加してございます。

 4ページ目にわたりますが、「日本の制度・慣行をグローバリゼーションに対応したものとする」ということで、この構造改革がキャッチアップにとどまってはだめである、さらに、より進んだ世界の最先端を行くものとするということでやるべきである、そういう委員からのご指摘を受けまして、「第一に、日本の市場システムを世界の最先端を行く透明性と公正さを有するものとするための規制撤廃とより良い規制体系の構築」ということで、いわば心構えを書いてございます。

 (1)「規制改革の推進」ですが、①「基本的な考え方」のところは、考え方自身は変えておりませんけれども、わかりやすくするという趣旨で修文をいくつかしてございます。

 5ページ目に入りまして、②「政策方針」ですが、ア)「原則」は変えてございません。

 イ)「推進手法」のところで、1)ビッグバンアプローチ、これは別紙のところでかなり書き込んでご議論の材料を提供したいと考えておりますので、後ほど担当の者からご説明いたします。

 2)で、以前は、「規制改革を重点的に進めるべき分野を抽出」ということだけを書いてございましたけれども、その視点として、「日本のシステムを世界の最先端を行く」ものにするという視点を入れてございます。

 6ページ、3)も、趣旨は同じですが、わかりやすくということで少し修文はしてございます。

 ウ)「推進体制」で、1)「政治主導の規制改革」は、「当面については、規制改革委員会の審議等を経て」云々ということで、当面の話をまず書いてございます。それから、2001年以降のことは、前回と同様に書いてございます。

 2)「政策評価体制と規制改革」は、総務省に設置されることになっています政策評価委員会(仮称)が何をするのか、少しわかりにくいというご指摘がございまして、完全に具体的になったというところまで行っていないわけですが、「具体的には、安全の確保等規制の政策目的を明確にした上で、政策目的を最も効率的かつ効果的に達成することのできる規制のあり方について検討する。」と、内容を少しわかりやすくということで付け加えてございます。

 3)「事後チェック型規制の実施体制」は、以前は「残された規制の実施体制」というタイトルでしたけれども、「残された規制の実施」というのは表現がわからないということでしたので、ここは事後チェック型の規制の実施体制ということですので、そういうタイトルにしてございます。

 中身としては、監視体制を強化するには大幅な人員がいるということだから、それは明確に書くべきであるということで、「監視体制強化には大幅な人員増が不可欠であり、公務員総数を削減する中で重点的な人員配置を進める」という一文を付け加えてございます。

 4)「民民規制への対応」ですけれども、昨年まとめた成果がございますので、それも活かしながらもう少し具体的にということでございましたので、民民規制については、そういう趣旨で書き込んでございます。民民規制については、苦情・要望への対応においてOTOを活用できる仕組みは作っておりますので、できる限り活用する。公正取引委員会において独占禁止法の厳正な適用を行う。私人が差し止め訴訟を行うことができるような制度の創設についても検討を行う。関係省庁においては、行政指導の必要がある場合は可能な限り法律に明確に位置づける。また、行政が何も関与していない民民規制については、関与していないということを明確にして責任の所在を明らかにする。それから、エッセンシャルファシリティの利用の問題等の新たなルールを策定する必要があるという場合、そのことに関連して競争制限的行為がある場合には、公正取引委員会が速やかにそれを排除する。そういう趣旨のことを書いてございます。

 (2)「魅力的な事業環境の構築」ですけれども、8ページ、②「政策方針」で、ア)「制度基盤の整備」の1)「早急な実施が求められる制度改革」の「税制」のところ、これは法人税について触れていないというご指摘がございました。ただ、法人税自体の引下げというようなことではなくて、法人税で現在議論をされています欠損金とか減価償却制度の見直しというご指摘のある点を加えてございます。これは産業競争力会議で出されました経団連の提言等を踏まえて、ここのところは少し書き直してございます。それから、「知的所有権」のところは、著作権等の具体例を示すべきであるという指摘をいただきまして、「特許権、著作権等」を入れてございます。

 2)「改革に必要な制度見直し」で「競争政策」ですが、以前は独占禁止法の見直しということも入れていたのですが、公正取引委員会の方とよく話しました結果、この観点からは、国際間の協力体制の整備ということが非常に大きな問題で、これから進めるのも大変だけれどもそういうことが必要だということで、そういう趣旨で書いてございます。

 (3)「国際的なルールや規格基準の形成活動への積極的な参画」は、10ページ、②「政策方針」で、ア)「戦略的対応」のところで、国際的なルールとかを決める会議あるいは交渉等で、日本は次々に人が代わる、それは問題だということでご指摘もございまして、「担当者をある程度長期継続的に交渉に当たらせるなどにより」という一文を加えてございます。

 11ページで、2「『企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会』を実現させるための構造改革」ですが、1)「創業・起業の促進」の①「基本的な考え方」のところで、創業・起業というのは別にハイテク産業だけではない、もっと住民向けのサービスとか、介護とか、あるいはNPOが担っている広範な分野、そういうところも重要なのだというご指摘もございまして、私もそれを排除したわけではございませんけれども、それが明確にわかるように下線のところでそのことを付け加えてございます。

 12ページ、②「政策方針」のア)「起業家やその支援者にとっての動機付け」ですけれども、「創業・起業が新たな需要展開や雇用の創出という観点から重要なことであるという社会的評価を行うことも必要」ということ、これは委員からの指摘でここに加えてございます。

 それから、<具体的施策>で、「マーケットメイク制度の効率的運用」で「効率的運用」という言葉も、あわせて委員からの指摘で加えてございます。

 13ページ、ウ)「起業家精神の涵養と規制改革の推進」ですけれども、「個性や能力を尊重した教育への転換等の教育改革を踏まえ」、これは教育の問題は重要だというご指摘を踏まえて、この文を書き加えてございます。

 2)「新技術・新業態の開発・普及とビジネス仲介機能の強化」の①「基本的な考え方」で、情報通信基盤の整備が非常に重要だというご指摘がございまして、「情報通信基盤の整備とともに」を加えてございます。

 14ページ、②「政策方針」のところは少し加えてございます。企業間あるいは起業家間の協力関係形成ということが重要である、その際には、自治体等も重要な役割を持つのだという趣旨のご意見がございまして、その旨を入れてございます。

 それから、(2)「個人の面からの改革」の①「基本的な考え方」で、「なお、その他の課題については、国民生活文化部会において検討を行っており、報告が取りまとめられる予定である。」と書いてございますが、前回、個人の面からの改革で個人の市場価値を高めるための能力開発のほかにも、転職の円滑化、勤務形態の多様化という問題が指摘してあるけれども、それの受皿がないではないかというご指摘があったわけですが、私どもは前回、申し述べませんでしたけれども、最初にそれぞれの部会でどういうことを扱うかという、ある意味でのデマケをやったときに、この部会では、個人の評価、市場価値を高めるための政策、可処分時間の増加という点を扱って、その他の問題は国民生活文化部会で扱うということでやっておりまして、その点を明確にしてございます。

 ここのセクションの最後の16ページで、ウ)「能力開発に必要な時間等への支援」ですが、これは個人がいろいろ教育を受けて知識を身につけても、特に大学院卒業生については企業でなかなか受け入れてもらえない、評価してもらえないというご指摘もございまして、下線部のように、「企業の側も大学院等で知識・能力を身につけた人材を積極的に評価する」という一文を入れてございます。

 3「『環境と調和した循環型経済社会』を実現させるための構造改革」ですが、この修文は主として、わかりにくいという指摘を受けて、できるだけわかりやすく修文をしてございます。1点だけ、委員からのご指摘を受けて、20ページの一番下で、部品をきちんと利用可能な状態に保って製品の寿命を長くすることが重要であるというご指摘がございまして、そのことを入れて修文を行っております。

 以上が素案についての主な修文箇所でございます。

 昨日、私どもの大臣の方から、この素案についてコメントがございまして、この素案自体はそれなりにいいけれども、少し各論だけになり過ぎているのではなかろうか。構造改革というのは、国の経済のあり方とか、産業構造とか、ひいては雇用構造ということに影響を与えているので、総体の姿がどうなるのかということを示していく必要があるのではなかろうか。産業構造あるいは雇用構造に関して、10年後がどういうものになっていくのか、あるいは失業の問題はどうなるのかというようなこともあわせて示して、議論してほしいということでございまして、次の回の部会ではぜひ検討をしてほしい。自分も、今回は出られないけれども、次の回にはぜひ出たいので、そのことを各委員に伝えておいてほしいということでございましたので、ご趣旨も踏まえて、次回には、総体としての姿がどうなるのかというのを準備してご議論いただきたいと考えております。

 それでは、先ほどちょっと触れました別紙について、準備をしてございますので、担当の方からご説明いたします。

〔事務局〕

それでは、別紙の「ビッグバンアプローチについて」ご説明いたします。

 まず、答申も含めた全体の中での位置づけですが、1つは、大臣のご意見でもあるのですが、ビッグバンアプローチの位置づけについて、政策方針本体で決め切るというようなものではなくて、この政策方針が作られることを契機にして、政府の各方面でいろいろ検討が行われていく、そういった性質のものとして「ビッグバンアプローチ」というものを位置づけて考えてはどうかと思っておりますので、そのあたりも踏まえて整理をいたしております。

 まず、「物流におけるビッグバンアプローチ」でございますが、物流の分野については、総合物流施策大綱というものがございますけれども、これが2001年までというものでございます。社会資本整備ですとか、進んできているわけでございますが、これからのグローバリゼーションに対応していくためには、世界で一番進んだ国や地域にひけをとらない、そういう意味では非常に魅力的な環境を整備するというのが基本的な考え方になっております。

 そういう考え方の下に、21世紀初頭におきます状況、これに対応した規制体系や制度へ転換するための検討を進めて、2002年ぐらいまでに結論を得て、実施に移していくというような整理で考えております。

 その際の検討の方向でございますけれども、まず1つは、国際総合物流という視点というのがございます。これに対応して結節点を効率化していくとか、あるいは輸送サービスを多様化・高度化していくところがねらい目になると思います。

 まず、国際物流の結節点ですけれども、うまく使えるもの、質の高いものということになるわけですが、国際ハブになるような港湾・空港を重点的に整備していく。特にその際、利用コストを下げるとかいうこと、そのための維持管理や運営を民間に任せることを考えるというのが方向ではないかと思われます。

 また、輸送サービスについては、総合物流というのが前提になると思います。そのために、今は必ずしも一貫していない体系を見直すとか、運送業に対して安全面からのいろいろな規制が必要ということがあるわけですけれども、そういった社会的規制のあり方について、参入規制などを外していくといった考え方、あるいはその厳正な執行体制ということもあるのではないか。さらには、国際物流、総合物流ということですから、外資が入ってくることになりますが、このための外資規制のあり方について考える必要もあるのではないか。

 さらに、情報通信をうまく使っていくというのがこの分野で非常に重要ではないかということで、環境整備として標準化といったような問題があるのではないか。

 具体的にここで検討を進めていく必要のある分野として具体的に申し上げれば、1つは、空港や港湾などにおける維持管理・運営というものについて、民営化あるいはPFIということが考えらるのではないか。実際、英米系ということになると思いますが、かなりこういった面での民営化がこの10年間ほどで出てきておりますし、我が国においても、この民営化というのを考えるということがあるのではないか。あるいは、公共関与が必要な場合でもPFIというものでやっていくということも考えられるのではないということでございます。

 また、空港、港湾を含めて民間中心でやっていくといったような場合に、ここの分野でも、電気通信と同じようなエッセンシャル・ファシリティの問題があって、その利用ルールをうまく作っていくという問題があるのではないか。

 さらに、総合物流企業、総合物流といったようなものを前提とした規制、一貫した規制と言っていいかと思いますが、そういったものが必要ではないかということで、1つは、物の取扱いを、いわばサービスの組合せ・調整といったようなものを業としております貨物運送取扱事業、今は物流二法のうちの貨物運送取扱事業法というもので相互の調整というものについて個別に、例えば、トラックと海運、トラックと鉄道、トラックと空港というものにそれぞれ種類を追加する毎に変更するための認可を受けることになっておりますが、これを包括的に考えるということがあるのではないかということでございます。全面的に自由化してしまえという考え方も他方ではあるかと思いますが、このあたりについては、我々としては、当面の整理として、一貫したものということで考えてはどうかということでございます。

 それから、トラックや鉄道を利用して物を実際に運ぶという実運送業というものについての問題でございますが、これは輸送モード毎に技術の違いというものがございますが、そういった意味では、全面的に統一化するところについてはなかなか難しい面があって、それぞれのモード毎にある安全規制というものが行われるということにならざるを得ないのではないかと思われますが、その際に、安全の確保等の社会規制に純化をするということで、免許・許可というものを要していたものはすべて届出で、なおかつ反面といいますか、同時に、安全確保のための検査体制というのを強化するということが考えられるのではないかと思われます。

 それから、外資の問題でございますが、実際にあるものといたしましては、内航海運、沿岸でもって日本国内で物を運ぶというもの、あるいは国内航空というものにつきましては、条約等におきまして、行き先についての留保、カボタージュの留保といわれるようなもの、あるいは外資規制といったものが、世界で今は共通のスタンダードということになるわけでございますが、今後、国際物流が進展すること、あるいはアジア太平洋地域において日本が相応の物流拠点の位置を占めるといったことを考えますと、これからアジアで経済統合を進めていったようなことが言われている状況を考えに入れて、こうした措置を撤廃をしていく。相互に外資規制を撤廃するといったようなやり方で、順次にネットワークを広げていくというようなことがあるのではないかと思います。また、WTOなどにおきましてこういった取組を広げていくといったような形で、相互に浸透するといったようにしてはどうかという提案でございます。

 それから、最後に、情報技術の利用についてでございますが、今、輸入などについての手続の一体化を図るための情報ネットワーク、これに乗せてやるということを物流大綱などでも議論がされているところでありますが、こういったEDIシステムをうまく開発・普及していくということですとか、交通面でのITSの利用といったような問題、これも実用化に向けての努力が求められるのではないかと思います。

 それから、「情報通信・放送におけるビッグバンアプローチ」でございますが、今後の知恵の時代といったような中で新しい産業を創出するのに、情報通信・放送分野が果たす役割は極めて大きいということでございますが、中でも、21世紀の初頭でございますが、日本を世界の中でも最先端のデジタルネットワーク社会とするということで情報通信基盤の整備や放送のデジタル化を進める。そして、そういう状況に対応した規制体系、制度へ転換していくといったようなところで、これもデジタル化の進展を踏まえて早急に結論を得るといったようなことでございます。その上で、実施に移していくということになると思います。

 検討の方向でございますが、前提が供給面と利用面と2つあるのではないかという整理でございます。

 供給面におきましては、通信市場におきまして徹底した競争環境を整備するということで、多様なサービスが低いコストで提供される。こういう状況の下におきまして、ユニバーサルサービスの提供義務、これが今は通信分野ではNTTに課されているわけでございますが、これと他の民間事業者が同じ条件で競争できるような環境というものが必要になってくると思います。また、放送分野におきましては、多チャネル時代というものがやって来るということで、個人が自分の好みに応じて見たい番組を様々な選択肢の中から選ぶという環境、これが重要であろうかと思います。そのために、厚みのあるコンテンツ市場を作っていく。今は、中央集中ということも言われておりますが、中央・地方を通じて多様なコンテンツが提供される。それから、世界市場というものも踏まえて、日本からそういうものが出ていくといったようなことも考える必要があるのではないかと思われます。

 利用面では、経済社会面で情報通信技術をできる限りいろいろ使っていくということでございますが、重要な面としては、電子商取引、医療・福祉といったような分野で制度的枠組みを作っていくとか、情報技術の普及といったものがあるかと思います。

 具体的に検討すべき内容ということになりますが、1つは、情報通信基盤の整備ということになると思います。これはグローバリゼーションに対応して日本の環境を整えるということになるかと思いますが、情報通信基盤整備、例えば次世代インターネットでありますとか、光ファイバー網、グローバルな移動通信といったようなもの、これを一つ一つばらばらではなくて、うまく結び付けるということ、それから、放送もデジタル化していく、こういったような全体としてトータルなデジタルネットワークを構築するというように考えてみてはどうかということでございます。

 今度は、日本の事業者が世界へ出て行くということを考えると、まさしくグローバルなサービスというものがこの分野の1つの特徴になってくるかと思われます。そういった中で、国内外におきまして国境を越えた事業者間の競争というものにこれから当然になってくるということでございますが、それに向けての環境整備が必要だということで、日本の国内市場の調整だけではなくて、海外におきます参入障壁の解消でありますとか、様々なな国際間の調整といいますか、標準化、相互認証といったような環境をつくっていく必要があるのではないかということでございます。

 それから、現在の通信の競争状況ということについて申し上げますと、地域通信網で課題が残っているということがございます。これについては、例えば、移動体通信というのは華々しい成果をあげておりますし、国際通信や長距離では相当料金も下がっているというようなことで成果があがっているわけですけれども、今後の高度情報化につきまして非常に大きな影響を与えるというのが地域通信の分野あるいはデータ通信の分野ということだと思いますので、この分野での競争を活発化させるといったようなことを考えるということで、3点考えてはどうかということでございます。

 1つは、ネットワークが地域のレベルで相当の施設保有のアンバランスというもの、これは避けられない部分があるわけでありますが、こういったものが相互に接続されて、はじめて全体としての使いやすさ、競争というものも出てくるわけでございますので、そういったような条件を整備するということから、接続条件において、長期増分費用方式といったものを考えて提供していく。あるいは、地域網でサービスを転換しても、例えば、従来NTTの電話網に加入していた方がCATV電話を使うといったときに番号が変わってしまう。それでは使いにくいということで、番号のポータビリティといったようなものを考えてはどうか。要するに、特定の事業者にその番号は依存していない。いわば利用者の番号があるというようなことですとか、事業者の間でもって選択性、有線接続の考え方というものを導入して、相互接続の基本的なルールを決めていったらどうかといったようなことでいろいろ議論が出てきております。こうした措置を早急に実施するといったようなことが、まず第1に求められるのではないかと思います。

 その際、こういったエッセンシャル・ファシリティのあるような分野で特に利用ルールを作るといったようなこと、そのルールを重視するということでもって独禁法の適用といったようなものも重要な論点だと思われます。

 それから、現在、日本国内あまねく電話通信といったものが使えるわけでありますが、それを支えるために、NTTがサービスの提供義務というのを負わされているわけです。これも現在、NTTがある意味で独占的な地位にあるが故に、そこに供給義務を課しているという関係にございますので、今後、ネットワークの相互接続がうまく進んで、競争環境が整うというようなことになっていきますと、競争が活発化していく。ひいてはNTTの独占的地位も解消するということになっていきますと、ひとりNTTにそれを依存するのかといった問題が出てまいりますので、このユニバーサルサービスを確保していくというために、今までのようなやり方でないやり方、例えば、そういったユニバーサルサービスのためのコストを事業者間である程度分担するといったようなやり方、例えば、基金をつくるといったものも含めて検討の課題になるのではないかと思われます。

 それから、こうやって競争状況になりユニバーサルサービスの提供も新しいやり方で行われていくということになってまいりますと、今のように、NTTの株を政府が一部保有する、あるいはユニバーサルサービスの提供義務を課すといったような、今のNTTのやり方というのも見直すことが必要になってくるだろうと考えております。

 それから、放送面中心でございますが、コンテンツの問題がございます。6ページからでございます。これについては非常にチャネルが増えてくるということで、今までに比べて非常に多様なコンテンツが求められるというところでございます。これがうまく出てこないと、せっかくのデジタル化というものの意味といいますか、生活の豊かさにつながらないということでございますので、この厚みを高めていくというか、そういう市場の発展というものの条件を作っていくのにどうしたらいいかという問題がございます。

 これについては、現在の番組作成と放送との関係をいろいろと見てまいりますと、権利の問題、その反対に義務の問題がございますが、こういった権利・義務関係をうまくつくっていくというようなことに、いま一つのところがあるのではないか。あるいは、映画や番組などを複数のメディア間でうまく統一的に扱うルールというものもできていないということでありますので、こういったものをうまくつくれば市場環境が整うということになると思われます。この面では、アメリカなどの状況はかなり参考になるのではないかと思われます。

 それから、公共放送、NHKの問題というのが前回ご指摘がございました。民営化といったようなご意見もあったわけですが、この点についての議論の論点を整理させていただきますと、以上4点述べましたような状況が整えばコンテンツ市場も発達してくる。それから、多チャネルということで有料での番組放送といったものも出てくる。こういったようなことになってきますと、国民が個人でいろいろ提供されている番組の中から選ぶということが基本になってくるのではないかと思われます。こうした中で現在、受信料といったもので運営されていますNHKの運営スタイルというようなものが、そういった状況に適合するかどうかということも検討の対象になってくるのではないかと考えられます。ただ、これまでNHKにつきましては、広告主の意向というものに左右されず、独立しているといったこととか、視聴率が低いからといって番組を打ち切らないという、要するに質の面での問題、あるいはごく少ない人のための番組といったようなものもあります。それから、ユニバーサルサービス、要するに全国津々浦々まで電波が飛んでいるというような問題もございます。こういった高い公共性を有し、提供され、国民からも一定の評価を得ているというところ、それと今後の新しい市場の条件、こういうものを踏まえて十分に論点、議論を尽くしていただく必要があるのではないかということでございます。

 最後が、利用面での制度の問題。ここは項目だけを簡単に並べてございますが、これまでにも、政府の高度情報化社会へ向けての様々な検討で、大分論点が整理されてまとまっております。例えば、行政の電子化を進めるという意味での電子政府といったようなもの、それから商取引に電子手段を使うためには、個人情報の保護ですとかプライバシー保護、あるいは電子認証といったようなものについての法制度が求められる。医療・福祉の分野などでも、例えば遠隔医療というものについては医療法との関係があります。あるいは教育の分野で遠隔教育、従来の通信教育のより高度なもの。スモールオフィス、ホームオフィスと言われるような新しい勤務形態といった問題に環境を整備するというようなことが挙げられております。このあたりも既にいろいろとありますので、このような方向について具体化のための検討を進めるというようなことがあるのではないかと思われます。以上でございます。

〔部会長〕

どうもありがとうございました。

 大臣の要望、素案、ビッグバンアプローチと3つの問題がございますけれども、A委員は時間のご都合があるようですから、特にNHKの問題も出ておりますので、ご意見がございましたらお先にどうぞ。

〔A委員〕

先約がありまして、早めに退出するものですから。

 素案の方は、大分いろいろ手を入れていただいて、時間がなくて全部を通して読んでおりませんが、かなり整っているものになったと思います。

 今、座長からちょっとご指摘がありましたように、ビッグバンアプローチの中で特に放送に関する部分に、私自身の時間の制約もあるものですから、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

 特に「コンテンツ市場発展のための環境整備」、「NHKのあり方」ですけれども、コンテンツ市場の環境整備というのは、当然大賛成でありまして、厚みのある市場をつくるということは絶対に必要なことだと思います。常識的に考えても、これから先の多チャンネル時代になって一体何を放送するのかというのが、私どもでさえ日常的に心配になることであって、それを一体どういうふうにして供給していくのかということは、大変大事な課題だと思います。こういった著作権的なことのルールもそうだし、それから、ソフトをつくるというのは人間ですから、機械がつくれるわけはないので、人間がつくるということを大前提にして、そういったことをみんながサポートする文化的な環境みたいなことを私は考えていくべきだと思います。

 それから、(5)の「NHKのあり方」ですが、前提のところがよくわからない部分がありまして、3行目に「衛星放送やCATVでは多種多様な有料番組の中から」と書いてありますが、衛星放送などが全部有料番組になるとは全く限らないわけでありまして、民放のキー局などが広告を取って、そして無料で放送するというような形は、これからむしろ増えてくるのではないか。NHK・BSのスクランブル化でさえ、これは将来の検討課題だということで、まだどうなるかわからないというような状況の中で、この分野でも、NHK・民放の共存といいますか、そういうことがむしろ前提となるのではないかと私は思うのです。そうすると、これは1つの前提で、「こうした状況変化の中で」というふうにつながっていくところ、そこがちょっとよくわからないところがあって、実は受信料とNHKの現行のあり方というのは、まさに経営形態そのものの検討ということですから、衛星放送、CATVでもNHK・BSとの共存体制ということが恐らく前提という中で、NHKだけの経営形態のあり方について検討の必要性が生じるという文脈が、私にはよくわからないところです。

 もちろん、現行のあり方を検討することがいけないというわけではないし、その次の3行でNHKの位置づけというものを書いているわけですから、そこのところを全く検討する必要はないということではないのですけれども、しかし、これから先の21世紀の放送の形とかを考えるときに、この両者の共存体制というのが、私は、何ら障害にはならないのではないかという気がしておりまして、そこのところを、もし放送のあり方を考えるのであれば、何か上手に表現する方がいいのではないかという気がしております。

 それから、ずっと市場原理、競争原理ということでほかの分野についても記述が行われているわけですけれども、放送というのは、競争はほかの分野と同じで必要なことですけれども、文化でありますから、文化というのは市場原理を考える場合でも、その根底にあるものだということが、私は、これから先の世の中においても強調して何ら遜色はない、そういう感じがしております。

 特に放送とNHKの問題についてだけ、一言感想を申し上げておきたいと思います。

〔部会長〕

どうもありがとうございました。

 それでは、ご自由にご意見をいただきたいと思いますが、冒頭に事務局から、昨日の大臣の意見、私のところにメモも来ていますが、この部会報告書(素案)は10年先を見通すにしては、虫の目線で、鳥瞰図、鳥の目線になっていないという、極めて堺屋さんらしい表現であります。

 私は個人としたら、総論ばかりやっているのもいかがなものかと。今まで、ずいぶんいろいろなことをやってきていますので、整理は必要だと思います。特に雇用の問題は、先ほども説明がありましたように、付け加えてある。では、10年後に産業構造がどうなっているかという問題を、例えば今製造業が2割ちょっとだったが、その場合はこれがどうなっているのか、そこまで本当に自信をもってできるのかという問題もございます。

 この辺の総論部分をもっと充実して、次回には大臣自ら出席して自分の意見を述べたいということで、えらい張り切っておられるようですので、まずその辺について何かご意見がございましたら。

〔B委員〕

総論部分をまとめる、総論部分を作るということがあると思うのですけれども、図表を書いてもらったらどうかと思うのです。今はこうだけれども、この考え方に基づくと10年後はこうなるよ、というような。NHKなり、テレビがよく画面でやっていますけれども、多少漫画的になるかもしれませんけれども、何かもう少し図表で書けば、堺屋長官もイメージがわくのではないか。

 これを1ページから最後まで、堺屋長官が読まれたということではたぶんないと思います。ご説明を受けて感覚を言われたと思うのですけれども、今、部会長がおっしゃったように、あまり総論ばかりでも1という気がします。ですので、逆に、そういうふうな1つのまとめを付けて、そして具体的に視覚で訴えるということをやれば、今と違った10年後の状態が浮かび上がってくるというか、そういうイメージをつくり上げることができるのではないだろうかということで、一ぺんそんな角度で工夫していただいてもいいのではないか。

 私は、今回の報告案の文章も、展開の仕方も、正直言うと非常に満足しているということです。後で細かいことはまた別に言いますけれども、今はそういうことです。

〔部会長〕

以前にも、ワーストケースとベストケースの2つのシナリオを書いてやったことがあるのですけれども、あまり説得力はなかったような気もします。事実とかなり違って、ワーストケースよりもっと悪い方向に行きましたので。

 これは事務局の方でも今、従来の作業を参考にしながら検討をやっていらっしゃるわけですね。

〔事務局〕

はい。次回、何らかの形でお示ししたいと思います。

〔部会長〕

総論は、総論としての位置づけということで、今、B委員も言われましたけれども……。

〔C委員〕

私の理解では、企画部会ですか、そちらの方で総論はやるというふうに。そういうデマケーションになっているというふうに考えていたのですが、違うのですか。

〔部会長〕

私も、そういう理解でおりますけれども、ただ、長官自身はこの報告書を見て、これは各論ばかりではないかという意見です。

 虫の目線と言われると、委員としても若干、これだけ一生懸命やっているのにというところもございますので。

〔事務局〕

おっしゃるように、総論といいますか、計画本体の取りまとめ、当然にこれは総論も含むわけですし、将来の姿というものを含むわけですが、企画部会が中心になってまとめているということでありますけれども、各部会のところで、別にそれをやってはいかんということはございませんので、もしそれを入れた方がより説得力のあるものになるということであれば、それはそれなりの入れ方をしたらいいのではないかと考えております。

〔B委員〕

これでも十分総論のところはあるわけですから。だから、いいと思いますよ。これをベースにしながら、大臣の言われる総論の方向でまとめ変えられたら、よろしいのじゃないですか、見直してみたら。

〔D委員〕

今の意見と同じことになるかもしれませんが、日頃お願いしておりますように、こういうものを書きますと、すべてを網羅しようという傾向があります。そうしますと、方向性が見えにくくなるきらいがあるのではないか。

 ですから、いわゆる鳥瞰図的な形のまとめといいますか、表現ということで、逆に今度は取捨選択するということが、たぶん、このレポートに付け加われば、もうちょっと将来の方向性というのがはっきり出てくるのではないかと思うわけです。

〔E委員〕

私は、企画部会のことはよく存じ上げないのですが、要するに、リンケージの問題ではないでしょうか。

 堺屋長官が前に、『ボイス』の4月号かに、題は忘れてしまいましたけれども、要するに将来日本は、生まれ変われば、再生すればこういうことが実現する。例えば、可処分生活時間が倍増するとか、空間が倍増するとか、4つか5つか書いておられたと思うのですが、今回の構造改革をやることによってそういうことがどのぐらい実現できるかという、そのリンケージが必ずしもないのではないかということで、そういう反応があったのかなというふうな印象を持ちました。

〔F委員〕

私も、総論というのは、ここではあまりやらないという前提で、そういうことは最初にちょっと申し上げただけで、特に申し上げなかったのですけれども、最も基本的な話として所得が増えたり経済的に豊かになるというのはごく一部の話で、それでは全部ではないでのはないか。これは、私は、当然の前提なのだろうと思います。

 さっき、A委員が、違う脈略ではありますけれども、「文化」と言った。ここでは、経済の話に限っていろいろ規制緩和とか何とか言っているわけですけれども、その大前提のところはどこかにあるはずなのだろうと思います。ですから、長官がもし総論を--長官のニュアンスがどういうものかわかりませんけれども、私は、ほかの部会でそれを検討するにしても、一等最初のところで、最もベーシックなところといいますか、ちょこちょこ散見はされるのですけれども、経済だけではないでしょう、あるいはグローバルといったって、基本的な文化というのでしょうか、日本の固有のものがしっかりわかっていないとグローバルもインターナショナルもないでしょう、そういったものは大いにあってもと思います。

〔G委員〕

長官がどういうふうにおっしゃったかよくわかりませんけれども、たぶん、いくつかの部会があって、いろいろな提案がなされて、それが全体としてどういう言葉になるのだ、と。最初の方に来られたときにおっしゃったと思うのですが、とにかく日本のスローガンというのは、例えば、所得倍増とか、経済大国とか、活字四文字で示されてきて、一応それが10年ぐらいの日本を引っ張ってきたという時代があるわけですから、2010年を見たときに、短いスローガンが必要で、それを何か求めておられるのかなというふうに私は思っているのです。

 そういう方向で話をまとめるということになると、B委員もおっしゃいましたけれども、各部会があっていろいろなことを言っているのですけれども、その提言がどういうふうにお互いに絡まっているのかという、そういうマトリックスというか、鳥瞰図的なものを、我々にも示していただいたらと思います。企画部会等でそういうことをお考えでしたら、それをちょっと教えていただければと思います。

 我々の報告ですけれども、前回に比べて非常に文章が読みやすくなって、修正が施されて格段によくなったと思っています。委員が褒めるのも変な話ですけれども、そういう印象を持ちました。

 「はじめに」のところも雇用の問題が入って、構成上の受皿が付いて非常によくなったというふうに私は思っています。

 欲を言えばという話なのですが、3つの視点を示すわけですけれども、なぜ3つなのか。この3つがどうして示されたのかということが、もうちょっと書かれたらいいのかなと。

 私、昨夜、暫定版の方を見たのですけれども、1ページの「はじめに」のちょうど真ん中で「本部会では」というところの1行下ですが、「次の三つの視点から、本格的な構造改革の課題を取りまとめ」となっていますけれども、暫定版では、「残された構造改革の課題を取りまとめ」となっているのです。構造改革というのは、ここに書いてありますように、95年、古くは90年ぐらいから言われていた問題で、いくつか手がついているものは既にあるわけです。その中でこれとこれが、どうも今後を考えるとまだ十分ではないよ、という形で3つが提示されたのかな、と。そういう意味では、暫定版にあった「残された」という方がわかりやすかったような気がして、私は、そこのところにマークしてきたら、そこがなくなっていましたので。

 「本格的な」という言葉と並列させてもいいと思うのですけれども、趣旨は、いろいろ構造改革しなければいけないことはあるけれども、2010年を考えると次の3つが残っていて、それは極めて重大なのだ。こういう書き方で収めていただけたらと思います。

〔部会長〕

総論・各論の総論の方はこれでやめにしまして……。

 やはり、1つの鳥瞰図を作るということ、それから、今日の午後に企画部会もございますので、私も、出席いたしますので、そういう意見は十分に述べて、企画部会できっちりするように、と。4つの部会は全て企画部会でまとめるという格好にはなっているわけです。ただ、総論部分に各論の展開ということで1つのメドをつけるということ、これは必要かと思います。

〔B委員〕

構造改革部会は構造改革部会で、鳥瞰図をそれなりに作ってみたらどうでしょうか。

〔部会長〕

その辺は、事務局の方で次回に提示していただきたいと思います。

 それでは、全般の問題、ビッグバンアプローチの問題につきまして、どうぞご意見を自由にお願いしたいと思います。

 H委員、いかがでございますか、ビッグバンアプローチ。

〔H委員〕

せっかくご指名をいただきましたので申し上げます。ビッグバンアプローチの現状認識や整理というのはずいぶん改善されたのではないか、まずそう思っております。

 物流の関係につきましては、細かい具体的な内容は別として、物流ハブと情報といいますか、テレコムモビリティというような思想が盛り込まれたというのは、これは世界的な動きの中で現実的なものではないかと思っております。

 情報通信のところも非常によく書かれていたと思っておりますが、表現ぶりで、現状認識とか政策の流れから気になることをちょっと申し上げさせていただきたいと思います。それは4ページの(検討の方向)の供給サイドのところで、「このため、ユニバーサルサービスの提供義務を課されたNTTが他の民間事業者と真に競争できるような環境整備が必要」となっていますが、競争環境をつくるということについて、これは逆の書き方をしてしまったのではないかと思うのです。日本というのは 120年ほど、国家独占の通信体制があって、そこに競争政策を入れて新規事業者が入れるようにしてきたということであって、主語がNTTになって、NTTが他と競争するのではない。NTTの独占市場に新規事業者がどんどん入って競争するというので、これは主語が逆転してしまったのではないかということで、現状認識としてこの辺は整理された方がいいのではないかと思います。

 あと、情報通信基盤整備というのは、とりわけアジアの中でのハブというような意味で、ここに書き込まれてきているというのは大変結構なことだと思います。アメリカのゴア流に言うと、その国の情報通信基盤の高度化を図るというのは、その国の領土が広がっていくようなものだ、という演説がありますけれども、取り上げられたことは大変結構だと思っております。

 もう一つ、5ページにまいりまして、②「ユニバーサルサービスの新しいあり方」というところで、ちょっと留意をした方がいいのではないかと思いますのは、「ひいてはNTTの独占的地位の解消が進むことも予想されることから、ユニバーサルサービスの新たな確保のあり方について早急に検討を進めていく必要がある」。ユニバーサルサービスにどういうものが入っていくのかというのは、世界的にどこでも検討課題になっているわけです。電話だけでなくて、次のステップということが検討されている。そういう意味でのご理解はひとつ必要かと思うのですが、NTTのローカル網についての独占の解消というのが早急に進む、というのはどういう考え方に基づいているのかということでちょっと注意しなければいけませんのは、「基金の創設」のところです。簡単に言いますと、地域網に入るところは、どうしてもNTTの独占地域網に乗らざるを得ないということですから、新規事業者の人から、その分のお金を取るということです、基金をつくるということを簡単に言いますと。そういう意味では、今、やっと 180社ほど入りだして競争が始まった。その新規事業者に「金を出せ」と言っているのと同じことなのです。同じようなことが、つい去年取り上げられて大検討になって、話は将来の検討事項になりました。そういう意味で、せっかく競争が入って、今のステージは、そこに新規事業者がどんどん入って競争を進めるというステージです。それを将来、NTTだけがそこを負担するので新規事業者から「皆、金出しなさい」というような基金の創設ということを今から掲げるのは、よほど検討した上でやりませんと議論に耐えられないのではないか。

 今、そうでなくも、新規の事業者は独占のNTT網、地域網を使うものですから、売上げの40数%をNTTに払っているのですから、そういうことも踏まえて検討していただいた方がいいのではないかと思います。

 もう一つ、細かいことで、その上の行に①「ネットワークの相互接続のあり方」のところで、独禁法の適用というのが物流のところでも出てまいりましたが、独禁法をダイレクトに適用しますと、90%以上の独占的な地位を占めているNTTというのは分割しなければならない。そういう意味では、そもそもこんなストレートな表現にならなくて、これは有効な競争条件を整備するということが大事で、独禁法を適用するならば、直ちに分割ということにならざるを得ないと思うのです。日本の国では、商法上もまだ分割の規定が整備されていないという中で、そういう意味では、ここの表現も好学的に詰められると、なかなか耐えられないのではないかと思っていまして、検討していただいた方がいいと思います。

 総じての流れは、非常によく改善されたと思っております。

〔部会長〕

非常に妥当なご指摘が多かったと思います。

〔E委員〕

まさに申し上げようと思ったことを、そのままH委員に言っていただいきました。

 私の理解は、おしまいの方から言いますと、報告書の方は、NTTの今の体制は分割すべきだということを言っているのだというふうに思います。

 拝見して、OECDが対日審査で4月に発表したのですが、そこで、今のNTTのあり方は問題で分割を考えるべきではないかということをおっしゃっていたと思うのです。

 その流れに乗って、恐らくこのビッグバンアプローチが書かれてているのかなと思います。

 もちろん、そういうことは非常に大きい問題なので、決着したばかりなのをもう一回果たしてどこまで引っ繰り返せるのかというのは大問題だとは思いますが、そういう問題提起をしているのだというふうに私は読みました。

 もう一つは、ファンドです。ユニバーサルサービスについてはいろいろな議論が、今おっしゃったようにあって、それはテレコミュニケーションもありますし、郵便サービスというのもありますし、NHKの問題もありまして、かなり多くの分野で共通の問題なわけです。基金の創設というのも、OECDのレポートが検討してはどうかというふうに、たしか言っていたと思うのです。

 それで、このルーツはどこにあるかというと、もともとは対日審査を書いた、スコットというイギリスの若い工学者ではないかと思いますが、ハイエクが1979年に出した本があるのですが、その中でユニバーサルサービスについて触れていて、企業間の基金でユニバーサルサービスというのは賄うべきだという記述がありまして、たぶん、そういう流れでこの話がOECDからは出ているのではないかと思います。

 そのときの基金というのは、ハイエックが考えていたのは、NTTに独占体にお金をやるということではなくて、企業がある意味では自発的というか、場合によっては、税ということもあるというふうに書いてあったと思うのですが、負担してファンドをつくって、そのファンドを利用して収益性の合わないところにユニバーサルサービスを供給するという趣旨であったというふうに思います。

 ですから、NTTの話と基金の話というのは、ある意味では、NTT自身が分割してほかの競争者と同じようになって、それで協同して基金をつくるという趣旨だというふうに、私は理解しております。

 もう一つは、物流の方です。これは独占禁止法、例えばエッセンシャル・ファシリティの利用ルールのこと、これは2ページに書いてありますが、そのとおりだと思うのですが、問題は、それでは国内の独占禁止法だけ適用すればいいのかどうか。もちろん、国内のをきちっと適用すべきだと思います。関連サービスに関して、トランスポーテーション、これは空港もそうたし、ほかの海運なども皆そうですけれども、国際的なものというのは外国の事業者が自国のいろいろな関連サービスを利用する。ところが、関連サービスが情報通信は非常に非競争的な形になっている。場合によると、海外からの事業者から見るとそれが非常に障害になる、というのがWTOなどで行われている議論であります。サービスのところのいろいろ非競争的な条件を改めるということが大事ですが、そのときに一国だけがやって、だけど、ほかの国は依然として独占的にやっているというと、言ってみると、きちっとやったところだけが損してしまう。まだ保護している国はそれで得しちゃうという問題がありますので、言ってみると、これは独占禁止法を各国がそれぞれきちっとやってもらわないと困る、と。つまり、国際的な次元の話です。

 これは本文の方に独占禁止法について2行ほど足してありますが、国内の独占禁止法をきちっと適用するということ、もう一つは、そういう国際的な調整といいますか、マルチラテラルに独占禁止法の適用を考えるというような視点が、こういうときには必要なのではないかと思います。

 3点目は、NHKのことについてご発言があったのですが、要するに、ここでの問題というのはテレコミュニケーションとブロードキャスティングとインターネットといいますか、新しい媒体がいろいろ出てきてフュージョンといいますか、融合が起こっていて、そのときに規制をどうしたらいいかという、ここでの書き方は統一したルールでやったらどうかという書き方になっております。

 これを一番強くやったのはオーストラリアです。規制当局は、こういういろいろな種類の通信ですとか、放送ですとか、インターネットですとか、そういうすべてのもののインフォメーションに関連したようなことについて、競争の状態がきちっといっているかどうかを見てさえいればいい。競争のルールさえはっきりしていれば、あと個別の規制はいらないというのは、オーストラリアがたぶん一番突出していると思います。

 ほかの国は皆そうではなくて、規制当局がそれぞれ、通信なら日本は郵政省とか、みんな分割してやって、個別の規制をやっているということだろうと思います。

 もしそっちの方向に動くのだとすると、これもかなりドラスティックな改革で、規制というのはそもそもどういう意味を持っているのかという問題があります。

 私は、80年代後半から90年代初めにかけて、特にアングロサクソンといいますか、コモンローの伝統のある国で一種の思想革命といいますか、哲学的な転換があるかというふうに思いますけれども、それは主としてこの法体系とか規制体系に関する考え方と、それから民主主義の間の関係をどう考えるかという転換があって、いろいろ起こっているのだと思います。この報告書でも、もしそういうところまで進むのであれば非常に結構だと私は思います。

 OECDの報告書で、日本の規制改革には首尾一貫した哲学とかアイデアはないので、いろいろ不十分なところがぼろぼろとあるのだという指摘をしていたと思いますけれども、このところも小さい問題ですけれども、虫のような視線かもしれませんが、非常に深いところに関係する問題だと思っております。

〔C委員〕

小さな点を2つと、それから物流に関して申し上げたいのです。

 全体として、G委員もおっしゃいましたように、非常に読みやすくなったという感じがいたしました。

 1つ目は、7ページ、この前に私も申し上げた民民規制のところですけれども、「私人が差し止め訴訟を行うことができるような制度の創設については引き続き検討を行う」というのは、ちょっと腰が引けているのではないかなという印象です。ほかのところで、「検討する」とか「検討を行う」というのはあまりないです。ここがちょっと気にかかったのです。

 もう一つは、先ほどから話題になっています、他の部会との関係ですが、14ページの雇用の関係で、受皿については国民生活部会の方で議論しているので、ここでは触れない、そういうお話でしたけれども、どのような議論になっているのかを簡単に教えていただきたいと思うのです。

 それから、物流です。これもまず最初に確認をさせていただきたいのですけれども、報告書とは別に、別紙という形で最終的にも発表されるのですか、物流と情報通信に関しては。

〔事務局〕

この報告書全体のトーンから、これを中に織り込みますと全然異質のものが入っているということになるので、別紙という形でやりたいと思っております。

〔C委員〕

であるなら、なおさらのことですが、一応こういう議論をするときには、現状認識と、問題点と、処方箋という順序をたどると思うのですけれども、今日の別紙の流れは、現状と処方箋しか書いてなくて、問題点というのが書かれていない。問題点は、本文の方の4ページの4つにまとめられている、集約されているということだろうと思います。これは経済審議会の性格からして、問題点についてはあまり大きく突っ込まない、こういうコンセンサスはあるだろうと思うのですけれども、それにしても、では問題点の欠陥、何か日本の経済にとって大きなマイナスの影響があるのかということは書いておいた方がいいと思うのです。

 というのは、物流に関してはもう20年ぐらい前から、ハブ空港の問題だとかが議論されてきて、新千歳だとか福岡、ここら辺をハブ空港の1つにするとかいう議論もありました。しかし、現状は、金浦に取られたりということがあるわけです。

 いろいろ処方箋を書いてきたのだけれども、それがなぜうまくいかなかったのかというのは、1行とか2行ぐらい書いておいた方がパンチがあるのではないか。

 これを読みますと、いかにもよその国と対等な関係にあって、日本がこれから頑張れば立派になるよ、こういう話に聞こえるのです。いろいろやってきたのだけれどもあまりうまくいかなかった、だから構造改革が必要だ、今回の報告書の性格というのはそういうものだろうと思うので、この各論においても、物流に関してもそういう流れで議論された方がいいのではないかと思うのです。

〔部会長〕

事務局から説明がありましたら、どうぞ。

〔事務局〕

雇用については、もし必要があれば後ほど詳しくご報告をしたいと思いますが、国民生活文化部会の方でも雇用の問題を1つの中心テーマにして検討しております。

〔事務局〕

国民生活文化部会の方では、個人の働き方というので、キャッチフレーズ的に言いますと「脱会社人間」ということで、今までの働き方がもう少し流動化してくるというような観点で検討しております。したがいまして、労働市場の流動化を進めるというような観点から、転職がしやすいような制度的な措置とか、あるいは年金等についてはポータビリティを持ったような年金制度にしたらどうかというような点を検討しております。

〔D委員〕

私も、この素案については基本的に問題ないといいますか、大変よくなったという印象でございます。

 ビッグバンアプローチの件につきまして、物流の部分、これはこの視点が非常に明確になったという点でも、私は大分改善されたと思いますが、情報通信のことに関してちょっと気になる点が2、3ありますので申し上げたいと思います。

 先ほどC委員もおっしゃったように、遅れている部分が日本の現状としてあるわけで、4ページの(検討の方向)の最後のパラグラフですが、「電子商取引、医療・福祉の分野において必要な制度的枠組を」云々とあるのですが、これはさらっと流しているような気がするのです。

 私たちからみますと、明らかに現状として電子商取引において、欧米あるいは場合によってはアジア諸国と比較しても、今後の成長線カーブを描いて考えましても遅れているという認識に立っているのです。そうしますと、むしろ電子商取引、医療・福祉等の促進という言葉は前の方に入ってくるべきではないか。促進するために云々ということであって、情報技術の普及を促進するというのは、問題の視点として少し弱いのではないかという気がいたします。

 2点目は、ユニバーサルサービスという言葉に関係すると思うのですが、NTTさんの場合も、NHKさんの場合も、基本的に私の認識は、どうもコストプラスの考えが非常に強い。コストプラスという、先ほどどなたかがおっしゃいましたように、競争原理が働いていないわけですから、その中ではコスト低減ということに関する努力をするプレッシャーが十分にかかっていないような気がするのです。こういう公共的なものに関するコストプラスのコストの分野について、受益者が取捨選択できるような仕組みみたいなものがない限り、自由な競争社会というようなものが必要になってくるのではなかろうかという気がするのです。

 ですから、その辺をしっかり検討する必要があると思います。じゃあ答えはどうなのだということになるのですが、答えはよくわかりませんが、私も、「基金創設」という考え方には賛成しかねるのです。もうちょっと、今実際に技術開発も含めたいろいろな形で投資もされていますけれども、果たして全部、受益者が納得した上で支払っているのかどうかということに関しては大いに疑問があるのではないか。だから、そういったものが選択できるような仕掛けができないとすれば、もっともっと自由な競争社会というのが情報の中に必要になってくるのではないかという気がするのです。

 3点目は、最後の(6)「利用面の制度整備」で一応触れられているし、かつそれぞれの整備に関する案が出ておりますけれども、特に物流、それから情報通信の世界を考えましたときに、教育の問題というのは避けて通れないと思うのですけれども、現状の教育情報化についての案というのは、あまりにもゆったりし過ぎているのではないか。

 例えば、ご案内のとおり、米国は2000年に、すべての教室でインターネットが使えて、すべての子供が教育を受けられるような環境をつくろうとしているのに、私どもの調べでは、1年前の状況ですけれども、学校単位で3台ぐらいしか入っていない。なんと5割か6割ぐらいの学校でそういう状態です。あまりにも日米格差がひどすぎるので、そういった点で、ただ単に教育の情報化と制度整備だけに頼るのではなくて、教育の問題というのはこういったものを進める上で非常に重要な要素だと思いますので、何か一言触れることができないかという考えを持っております。

〔I委員〕

ずいぶん読みやすい、というのは大変失礼な言い方ですが、いろいろな意見が反映されて、よくなっているという印象がございます。ただ、いくつかあるのです。

 最初に、「はじめに」のところで、先ほどの視点とは若干違う視点のお話で恐縮ですけれども、「はじめに」のところを拝見しますと、政府は一生懸命頑張ったのだけれども、民間がまだ頑張り足りないのだという印象が何となくございます。

 例えば、2つ目のパラグラフの「1990年代半ば頃から構造改革のための政策努力が本格化すれば」、これは確かに政府当局もいろいろ頑張ったわけですが、一方、民間でもそれに乗って様々な提言が出ていたというふうに私も記憶しております。したがいまして、政府ばかりが頑張ったのではないよ、という印象が私などにはございます。

 それから、先ほどG委員からお話がございましたが、本格的な構造改革、残された構造改革ということですが、なぜ残ったのか、そこがちょっとはっきりしない。つまり、提言したのだけれども、今までいろいろやろうとしたのだけれども、できなかったのか。それとも、最初からここは言ってなかったのかということになると、たぶん前者の方だと思うのですけれども、そこの要因をもうちょっと考えた方がいいかなという感じがいたしました。

 細かいことで大変恐縮でございますが、例えば、11ページに企業のあり方といいますか、そういうお話の中で、日本の企業のよい面というのもたくさんあるだろうと私は思います。ここでは、問題点についてたくさん出されているわけですけれども、日本のよい点である、例えば生産技術みたいなもの、これはこれでおしまいということではないわけですから、その辺ももう少し活かす、そういった記述もあっていいのかなという感じがいたします。

 また細かい面で恐縮ですけれども、例えば、ベンチャー話が次のページぐらいから出ているのですが、日本の場合は、ベンチャーが大変少ないと言われているわけですけれども、前にちょっと話があったような気もするのですが、企業内ベンチャーはかなり成功している面があります。それは、私は、単にスピンアウトしてベンチャーを起こす、あるいは学生が起こすということだけではなくて、企業が別の会社あるいは別の組織を作ってベンチャーをやらせる。その結果として、いろいろな企業が今日本でも、親を飛び越して大きくなっているところもたくさんあるわけです。そういう面も重要かなという気が若干いたしております。

 それから、つまらないことで恐縮ですが、表彰制度というのがありますが、いらないような気がいたします。表彰しなくたっていいのではないか。表彰されたいためにやるということではないと思います。

 それから、起業のところの記述ですが、16ページで線を引いていただいている部分ですが、「また、企業の側も大学院等で知識・能力を身につけた人材を積極的に評価することが重要である」、全くそのとおりだと思います。それに加えて、企業としてのあり方といいますか、私どもの会社でも実はそうなのですけれども、どうも新しく会社に入ってきた人間を1つの鋳型にはめて、金太郎飴にしちゃおう、そういう企業の性質というか、性癖がございます。そうではなくて、多様な人間が企業を伸ばしていくのだ、多様な人間こそが企業の成長の原動力になるのだ、そういう認識が必要なのですよ、と。言わなくてもわかっているかとも思いますけれども、ひとつそういうことも書かれていいかなという感じがいたします。

 別紙でございますが、これもイメージの問題で大変恐縮ですけれども、金融機関側からいたしますと、ビッグバンというものの評価、もちろん成功したという評価もございましょうし、成功している、あるいはちょっとうまくいかなかったという面もあるかと思いますが、ビッグバンアプローチという表題がありながら、中にビッグバンの話が一個も、つまりビッグバンアプローチというのはどういうことなのかということが一つも出ていないわけですので、マイナスのイメージを払拭をするためにも、こういうことがビッグバンアプローチなのだという、例えば、物流におけるビッグバンアプローチというのはこうですよというような、もうちょっとわかりやすい面があってもいいかなという感じがいたしました。

〔部会長〕

I委員が言われた表彰制度は、初めは勲章などという言葉だったのを、それをやめようと。スポーツでも国民栄誉賞というのがあるのだから、国民で褒め讃えるというようなことはちょっと入れておいてもいいかということで、こんな表現になったと思うのです。これはまたいろいろご検討いただきたいと思います。

 さっきE委員が言われたOECDの見方というのは非常に重要な点で、例えば、96年の「6分野の構造改革の建議」のときはそれぞれ、金融ビッグバンについてはビッグバン方式を採用するということをはっきり断言してやった。その評価についてはいろいろありますけれども。ただ、これは遅かれ早かれこういうことになってくるというのは自然の勢いだったと思うのですが。今回の場合は「ビッグバンアプローチ」という言葉になっているので、かなり現実妥協的な印象を受けるかなという感じがしないでもないので、言葉の中にビッグバンが入っていないというご指摘もありましたけれども、この辺の問題については、スタンスとしてはっきりとする。あるいは、曖昧で行くという1つのやり方もありますけれども、重要な点ではないかと考えております。

 その辺、J委員はいかがでございますか。

〔J委員〕

物流の方から先に、今ご下問がありましたので話をしたいと思うのです。

 ビッグバン方式ということは別として、内容的には、私はよくここまで書けたなと思っています。特に民営化の話などは、前回でもなかなか書けなくて苦労したところで、この後またどっかの省庁から巻き返しがあるかもしれませんけれども、かなり苦労したところ、結局書けなかったのが今回書けたということで、私はかなり評価をしております。

 ですから、アプローチというのとビッグバン方式とどう違うのかというふうに言われると私はちょっと困って、同じような形で勢いをつけてやってほしいなと思います。

 それから、物流の中で、さっきE委員がおっしゃった話ですけれども、そこのところはすごく大事な話で、つまり報告書全体のトーンがグローバルスタンダードということを考えているわけですから、当然、物流の場合にも、物流だけでなくて通信もそうですけれども、グローバルスタンダードで物事を考える。そのために現在、二国間の協定になっている様々な協定についても、そういった点で見直していく。そして、それを競争的な方向で見直していく、そういうことが書かれている必要があると思うのです。その中の1つとして、外資規制とか撤廃という話が出てくる。外資規制とか撤廃だけではなくて、その他いろいろな国際的な物流のシステムを阻害しているような、そういったものについて、独禁法を含めて対応を多国間で図るということが必要ではないかと思います。

 それから、I委員がおっしゃった「郵便の話がないですね」という話、私も言おうと思ったのですが、これは郵便の話を直接に正面から取り上げてやるのは大変かもしれませんけれども、物流の中に郵便の話というのは当然関わってくる話であります。物流事業者が郵便に参入したってかまわないであろう、という話であります。その辺のところは、気になるな、と言っておきます。

 それから、物流と通信だけなのでしょうか、ビッグバンは。今日、各委員は、なかなかよく書けていると言っていらっしゃる。私も、そうは思うのですけれども、だんだんよくなってくればなるほど、だんだんまたいろいろ注文をつけたくなる。ビッグバンは物流と情報通信だけですか、それが引っ掛かるところであります。

 それから、情報通信の方についてですけれども、ユニバーサルサービスの議論、かなり否定的な議論がされているのですが、私は、括弧の中にいわゆるユニバーサルサービスファンドだけが対応策として挙げてある、私は、これはもっと検討するべきだと思います。といいますのは、本来は、社会的に必要だけれども、不採算サービスですから一般財源でやるべき話。一般財源でできないから、アメリカはユニバーサルサービスファンドでやったわけです。結局、通信の利用者間の内部補助にしかすぎないユニバーサルサービスファンドである。本来はこうあるべきである、しかし、それに対して次善の策として、国がなかなか一般財源がそんなものは用意できないということになると、ユニバーサルサービスファンドという話になっていく。ですから、あまり簡単にユニバーサルサービスファンドと言ってほしくないというのが、ほかの委員とは違う視点から私はそういうふうに思うということです。

 ただし、このユニバーサルサービスをどうやって維持するかという議論をちゃんとしておかないと、競争をどんどん進めていこうという議論が、必ず頓挫してしまう。不採算サービスがだめになってしまうから、競争はだめではないかという議論を必ずする人がいますので、ここは、ユニバーサルサービスがどう対応するかということはきっちり議論しておくべきだと私は思います。今まだ、ユニバーサルサービスファンドという形で全事業者に負担させるというやり方でなくても、NTTの独占がかなり強ければ、NTTに対してユニバーサルサービスの供給義務を与えておくということも、今の間は必要だということになるかもしれません。競争を進めていこうとするのなら、将来としては、そういう方向を明確にしておかないと、NTTも、それから新規の事業者もやる気がなくなってきますし、ユニバーサルサービスを受けている人たち、そういう人たちから必ず反対が出てくるということになると思います。

 それから、独禁法の適用の話です。5ページの情報通信と、2ページの物流と、両方とも「独禁法を適用する」と書いてあって、これはエッセンシャル・ファシリティの利用ルールの策定の話です。ですから、NTTを分割しろという話でのコンテクストはたぶん書いておられないのだと思うのですが、確かに読むことはそのように読めます。ですから、大事な話は、エッセンシャル・ファシリティの利用のルールが公正になるような観点から独禁法の適用の見直し、そういう観点からの独禁法の適用について検討する必要がある、そういう形に限定をしておく必要が私はあるかと思います。

 もう一点、本文の方ですけれども、8ページ。さっき、文化の話をA委員がちょっとおっしゃったのですが、私は、文化と呼ばれるような分野であっても、当然、競争が必要な分野というのはあるのだと思うのです。表彰制度という話が出ましたけれども、市場メカニズムが表彰してくれない人に対して用意するのが表彰制度だと私は思っています。もちろん、ベンチャーの人たちを表彰する必要は全然ないと思います。スポーツも、必要が全然ないと思っています。

 文化の分野であっても競争が必要なわけで、知的所有権の問題はここに書いてあるとおりですが、「法制度及び適切な執行体制」という中に、著作権の仲介業務、これが今は完全な独占の状態になっている。これは文化人と呼ばれる人たちからも、もっと多様にできないかと、競争を入れるべきではないかという議論もあります。もう少し具体的にそのことも含めて書いていただくとありがたいと思います。

 最後に、E委員がさっき、法体系と規制体系の問題とおっしゃって、それは虫の目のような話かもしれませんがとおっしゃったのですが、私は、総論のところで一番重要なのはここだと思っているのです。これを今から書くのはちょっときつい話です。もう少し具体的に言いますと、法体系・規制体系の話というのは官僚主義の問題と関わってくる話です。長官は、たぶんそのあたりの問題が書いてないという点がご不満なのではないかという気もしますけれども、結局、なぜ今まで構造改革ができなかったのかという一番の理由のところは、法体系・規制体系の問題だと私は思っています。あるいは、政治のシステムの問題だと。

 ですから、本当はそこのところが総論で一番必要なので、その中で経済構造改革を行うに当たってはこういうことをやらなければいけないよ、という話になっていくのだと思います。それを今からやるのはちょっときつい話なので、そこは座長にお任せをしたいと思いますけれども、一番重要な部分だと思っているということだけ申し上げます。

〔部会長〕

私も、ビッグバンアプローチか方式かは、問題は内容の問題ですから、表題は一切こだわりません。

 表彰制度については、おっしゃるとおり、委員の皆さんがこれはやめておこうというのだったら、外した方がいいだろうと思います。経済団体でも、経済同友会では叙勲制度はやめろと、あるいは、もうやっても受けないという方針でやってはいるのです。

 それから、ビッグバンアプローチを別紙ということで出しますと、これだけ取り上げて相当の議論になることは間違いないと思うのです。そうすると、今おっしゃいましたように、ビッグバンアプローチが今、福祉ビッグバンとも言われ、労働ビッグバンとも言われ、雇用ビッグバンと、あらゆる部門でそう言われている。そちらを全く触れないでおいて、この2分野だけでいいのかという議論が必ず出ますので、その辺の問題をどう処理するかということが残された重要な問題だろう。そうしないと鳥瞰図はできません。

〔事務局〕

J委員からお褒めがあった部分もあるのですが、ビッグバンアプローチのところで書いてある中身は、J委員などのご意見も参考にしながら事務方がまとめたものでして、またこれから最終案文にするに当たっては詰めなければいけないところがまだ大分残っているという状況でございます。

 それから、表彰制度のところは、アメリカ等でもあるようですし、創業・起業のマインドが非常に低いという状況の中で、別にいつまでもということではないと思いますけれども、あってもよろしいのではないかということもございまして、できれば今のような形を残したいと考えております。

 あとご指摘の点は、またいろいろと考えたいと思います。

〔F委員〕

中身の話ではなくて、前に申し上げたことの繰り返しになってしまうのですが、一般論として、これは私の経験からしてもそうですが、こういう報告書というのは、いくら中身が立派なものであっても、それを受け取る側が当事者意識をなかなか持たないです。それは総理をはじめ閣僚、関係担当者に至るまでわりあいそういうもので、そうなってしまうと、いくら詳細な各論を述べても、各論の総論になってしまう。こういう報告書が今まで必ずしも有効に働かなかったのは、私はそういうところにあるのだろうと思います。

 これを当事者意識を持たせてちゃんとやらせるようにというのは、この紙の上でどう書いてもなかなか難しい話ではあるのですけれども、例えば、最初のところに宛て名を、これが総理の諮問機関であるならば、総理大臣殿、それがいいのかどうかわかりませんが。それと、総理だけではないと思うのです、関係閣僚はいっぱいいますし、各役所の担当者もいますし、俺たちに向けて突きつけられたのだ、というのが「はじめに」のところかどこかにぜひ出てほしいなぁと、このように思います。6ページかどこかに、総理のリーダーシップなどの話がありますけれども、そういう真ん中の各論のところでなく、何なら一番表紙の、めくらなくても最初のところに何か書いておくとか。あまりそういう例はないのかもわからないですけれども、ぜひそういう工夫をしていただければと思います。

 あとはちょっと細かい話ですが、民民規制というのは一般的に使われている言葉なのかどうなのか私はよくわからないですが、あまり聞き心地のいい言葉ではないな、と。しかし、これを長々と言うと不当な取引規制とか取引慣行とか、独禁法で出てくるような長い言葉になるのだと思いますから、これは意外と良い言葉なのかもわかりませんが、あまり耳ざわりのいい言葉ではないなという感じがします。これは感想として聞いていただければと思います。

 10ページの上の方のアンダーラインを引いたところに、「担当者をある程度長期継続的に交渉に当たらせるなど」、これを入れていただいたのは大変結構だと思いますが、担当者だけではないです。最初に申し上げたことと同じで、大臣からしてそうではないか、私はそう思いまして、担当閣僚から担当者に至るまでそうである。それと、努めるのはそうですけれども、これは人事システムをそういうふうにしないと、なかなか個人が努めようと思ってもそうできないわけで、もう少し工夫していただければと思います。

 それから、余談ですけれども、表彰というのは、さっきJ委員がおっしゃられたとおりだと思いますけれども、表彰をやるのなら、表彰を受けた人は早く引退する。むしろ、今からやろうしている人は、表彰を受けなくたっていいわけです。今からどんどん出てきそうな人の妨げになっているような人も世の中には間々いるわけですから、勲章でも、そういうものを差し上げて、どちらを取るかと。これは冗談半分に聞いていただければと思います。

〔G委員〕

表彰の話が出ていますけれども、起業家に社会的評価というものを与えるべきだという一文を入れていただいたことは、私は大変よかったというふうに評価しております。

 最近のアンケートでは、何であなたは企業を始めたのですかということを聞きますと、10年前には、いわゆる経済的利益というのが1番だったのですが、最近は自己実現というのが必ず出てきます。そういうことになっているわけですから、それに対応した社会の側の評価というものがなければならない。

 勲章云々という話がありますけれども、私は、地方の起業家が一番気の毒だなと思うのは、その地域に埋没してしまう。だから、何らかの形でそれを社会的に評価する形というものがあっていいのではないかと思います。もちろん、これから出てくる人を妨げるような表彰であってはならないと思います。だから、ほかにいい方法があればそれを書いた方がいいのですけれども、それがなければ、こういう書き方でもいいのではないかというふうに思いました。

 それから、J委員がおっしゃいました著作権の話を入れていただいたというのも大変よかったと思っています。著作権の仲介の自由化というようなことが今言われていますので、それはぜひここにちらっと書いていただきましたけれども、よかったなと思っています。

  それと、あちこちに教育に対する言及がございます。初等中等教育云々、産学協同云々、それから社会人のリカレント教育云々、というところが散りばめられているのですけれども、概ね通して読んでみますと、文部省が特に反対するようなことはないだろうというふうに私は思いました。

 ただ、1箇所だけ、15ページあたりから社会人の話、16ページに、さっきI委員もちょっと言及されましたけれども、1行付け加わっているのですが、前提として、どうしても文科系の大学院がイメージされているような気がするのです。特に16ページの下線が入って新たに追加していただいたのですけれども、「企業の側も大学院等で知識・能力を身につけた人材を積極的に評価することが重要である」。現在、理系の方というのは修士過程の進学率8割ぐらいになっていて、ほとんど、むしろ逆に大学院を出てこないと企業は受け入れないという形になっているのですが、問題は文系の方だと思います。

 先日、ある政府系の金融機関に卒業生を入れようと思って、大学院生と学生、見事に断られまして、「前例がない」というような話でした。

 今でもそういうことになっいる。だから、ここの付け加えていただいたところに、特に文系では、というような形を入れた方がわかりやすいかなと思いました。

〔K委員〕

雇用問題等についてかなり書き加えて修文していただきましたことにお礼を申し上げたいと思います。

 総論の話については、先ほど部会長はもう締められましたが、取扱いはお任せしますけれども、雇用問題だけではなくて、市場主義を強めていきますと、アメリカで言われていますような、所得の極めて大きな格差、あるいは光の陰の部分ではないですけれども、犯罪・治安の問題等々陰の部分も出てくると思いますので、もし総論を書くようであれば、そういうところは日本のいいところを伸ばしていくというようなことをぜひ記述をしていただきたいというのが1つです。

 それから、先ほどI委員から言われました、生産技術、日本の強さというのがございました。私も全く賛成でありますが、同時に、技能的なものを伸ばしていくというようなところも重要だと思います。ほとんどがホワイトカラーに関する部分が多いと思いますが、ぜひそういうものもどこかで触れていただければ大変ありがたいと思います。

 最後に1つ質問ですが、別紙の方の1ページの4行目、「国が企業を選ぶ傾向をますます強める」というのは、これでよろしいのですか。これは逆ですね。

〔H委員〕

時間がないので、簡単に。民民規制という言葉の書きっぷりのことですが、かなり人口に膾炙してきているのではないかというのと、耳ざわりだとおっしゃるとすれば、むしろ耳ざわりなことをちょっと書いておく意味があるのではないかというふうに私は思います。

 というのは、私の少ない体験で、既存事業体があって新規参入が入ってくるというときに、いくつかの規制があります。例えば、ある1つの大きなキャリアが外販許諾権というのを与えないと、メーカーはほかに売ることもできないとか、そういうのが電気通信の中ではあったりする。また、通信に限りませんが、A技研という小さな会社がある技術をこしらえた。すると、大きなメーカーがなぜちいさな技研しかできないのだというので、つぶれていった技術などもあるわけです。それが育つのならいいのですけれども。

 あるいは、経団連ということで、ここでも意見の陳述がありましたが、一定の規模にならないとなかなか入れてもらえなかった。新規事業者は、結局、声が出てきにくい。

 抽象的なことでありますけれども、最近でこそ百数十社できて、いくつかの企業が入れていますけれども、なかなか入れない。最近いろいろな言葉がある中で、経団連レベルの意見というのがよくあります。新規事業者の方がよく裏で言っていることです。そういう意味では、ちょっと聞きにくい言葉かもしれませんが、この際、我々の社会を考えるという意味でも、こういう言葉を入れておかれるのはいかがかなと思っています。

〔B委員〕

一言だけ。一番最初に申し上げましたように、文章は、私は非常に改善されてよくなったという感じがしているわけです。ですから、前の文章に戻ってもらうのはまた困るわけですけれども、非常によくなっただけに、まろやかになってしまっているという感じ、またまろやかにするという意図をはっきりお持ちになっていたのかもしれませんけれども、もう少し用語とか言葉にメリハリを付けるなり、また思い切った言葉を使われたらどうかと思うのです。規制改革という言葉をしきりに使われておられますけれども、こんなものは規制撤廃でいいのではないかというふうに思うのです。規制撤廃の推進ということで問題提起をしてみる、あるいは官から民へというような、そういう姿勢というものをもっと強く打ち出していく、これこそ構造改革だというふうに思うのです。官から民へというような方向をもっと強く出していく、当然、民営化ということでしょうけれども。それと、改革の主体というものがもう官ではなくて民なのだということ、そして、民で構造改革というものを進めていくのだというようなことも含めまして、何か強い表現方法というか、用語というものが、私はあるのではないだろうかと。

 2つ目は、これは総理に答申するというか、提出するということもあるのでしょうけれども、情報公開しているわけですから、国民が見るわけです。ですから、国民を感動させるような、国民が理解できるような、国民がなるほどこういう方向に持っていかなければいけない持っていきたいと思える、そういうふうな方向に私はすべきではないだろうかと思います。

 もう一つは、これは前回にも申し上げましたけれども、それぞれいつまでにやるのかということです。いつまでにやるのかということで、10年後ということになるかもしれませんけれども、10年後ということについて、はっきりした期間的なもの、時間的なものをおっしゃりたくないのかもしれません。というのは、委員の方々のところもそうでしょうけれども、私のところに昨日来たペーパーでは、例えば5ページに、包括的な規制改革を3年程度の間に実行するという言葉が書いてあったのです。ところが、今日見たら、それが削られて、明確なスケジュールとプログラムの下に実行するということで、3年間が抜けている、変わっているのです。

 これも1つの例ですけれども、要するに、いつまでにやるというということが、官僚の方々はおっしゃりたくないのかもしれませんけれども、これがないと、ただやるやる、検討します、考えます、やってみようと思っていますということだけでは、実際の企業の経営においてはこういうふうなペーパーはペーパーではないです。このようなものは計画でも何でもない。このような答申を仮に部下から社長が受け取ったって、役に立たないのです。

 ですから、この構造部会として、これは首相が最終決定されればいいわけです、3年先か、5年先か、10年先かというのは、それはそこで決定されたらいいのですから、ここでは我々としては、いつまで一つ一つをやるのだという、そのメドを考えていかなければならないのではないか。それぞれに書いていくべきではないだろうか。個々には、もう時間がありませんので申し上げません。

 それから、法人税のことについてもそうです。法人税については、制度改革も含めて、私の方は欠損金や減価償却制度の見直しというようなことも含めてですけれども、もっと具体的にいえば、税金というか、とりわけ法人税の弾力的活用ということを考えたらいいのではないか。

 私は、一昨日、台湾から帰って来たのですけれども、新竹というところがあります。行かれた方はおわかりだと思いますけれども、ハイテクタウンです。今は 130社か 150社、研究機関ばかりが集まっているわけです。何をやったかといったら、最初5年間は無税です。その次は、あそこは25%法人税ですけれども、12.5%にしているわけです。そうなれば、一斉に台湾のハイテク産業、ハイテク研究所が集まってくる。

 これは1つの例ですけれども、要するに法人税の弾力的な活用というようなこともこれからやっていかないと、新規の起業がなかなか起こってこないと考えてもいいのではないかということです。

 最後に、これも一言ですけれども、規制ということが官僚の皆さん方はお好きなのですね。システムとか、制度とかというようなことでよさそうなことなのですけれども、規制という言葉を、例えば、6ページあたりでもお使いになる。また、5ページあたりでも、その質を高めるという規制緩和に取り組む。これは規制を規制する、規制をまた作り上げるというような感覚に取れるわけです。規制というものと、あるいは制度・システムというものとは違うのだという、我々一般庶民の感覚レベルに立って、官僚の立場から離れて一度国民の側に立って物事を考えていただきたい、また言葉も含めて用語を使っていただきたい、そうすれば、国民も政府の提案に対して大いに力を出していくというか、協力していくことになるのではないだろうかということを申し上げて終わらせていただきます。

〔C委員〕

今のB委員との関係がある議論なのですけれども、6ページの規制緩和の推進体制で修文していただいた点、これはちょっと曖昧だなという感じがするのです。スケジュールを入れていただきたいということ。

 それとの関連で、現行既に、日本政府が規制緩和推進3カ年計画、この間、前倒しが決まりましたけれども、現在どういうプログラムが進行中なのかというのが1つ、2つ入っていると比較ができるのではないかというふうに思います。

〔事務局〕

今、B委員の方から、規制緩和という言葉を規制撤廃ということで直したらどうかと。ここは、前の原案と比べる規制撤廃という方向は、読んでいただければ大分出しております。ただ、規制改革という考え方は、従来の規制のあり方の発想を転換して、新たな仕組みにしていくという用語として使いたいと思いますので、この「改革」という言葉は残したいと考えています。

〔B委員〕

できれば、タイトルとしても撤廃という言葉を使っていくという方向で考えられた方が、先ほどどなたかがおっしゃったインパクトという観点からするならば、そういう意味ではあるのではないかという私の考え方です。

〔部会長〕

その点は、私の意見は、規制撤廃・廃止論というのは、J委員もご存じですけれども、私は常に規制撤廃だということを言ってきて、事実、我々経済同友会で出したものでも規制撤廃ということをはっきり出たのですけれども、その後のいろいろな進化からいって、規制改革という方がはるかに幅広くあるという意味で、今、規制改革と。別にOECDにならったわけではありませんけれども、そういう言葉を使っているということであります。

 最後におっしゃいましたように、このレポートは、企画庁の官僚の皆さんが作るレポートではなくて、この委員会で作るレポートでありますので、文章がよくなると同時に、これは必然的にメリハリがなくなって、棘が取れちゃうという、ご指摘のとおりの点もありますので、メリハリは更に効かせながらやっていきたいと考えております。特に、タイムスケジュールの点は、ビッグバンアプローチの場合はタイムスケジュールがなかったら全く意味がないと思いますので、その辺もこれからの問題であろうと思います。

 本日はいろいろご意見をいただきましてありがとうございます。

 それでは、時間の関係もございますので、本日の審議はこれまでとさせていただきまして、いろいろなご意見はさらに事務局の方にどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、次回以降の日程につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

〔事務局〕

次回第9回は、6月中旬を予定しております。日程調整させていただきまして、またご連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

〔部会長〕

それでは、第8回の構造改革推進部会の審議は以上にいたしたいと存じます。

 本日は、長時間のご審議、誠にありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

以上