経済審議会 第7回構造改革推進部会議事録

時:平成11年5月14日

所:共用第一特別会議室(404号室)

経済企画庁

経済審議会構造改革推進部会(第7回)議事次第

日時 平成11年5月14日(火)10:00~12:00

場所 共用第1特別会議室(404号室)

  1. 開会
  2. 構造改革推進部会報告書(素案)について

経済審議会構造改革推進部会委員名簿

部会長

水口 弘一
(株)野村総合研究所顧問

部会長代理

江口 克彦
(株)PHP総合研究所取締役副社長

五十嵐 三津雄
簡易保険福祉事業団理事長

岩田 一政
東京大学大学院総合文化研究科教授

加藤 秀樹
構想日本代表

リチャード・クー
(株)野村総合研究所主席研究員

草野 厚
慶応義塾大学総合政策学部教授

草野 忠義
日本労働組合総連合会副会長

清水 秀雄
(株)セブンーイレブン・ジャパン取締役副会長

中条 潮
慶応義塾大学商学部教授

中村 靖彦
NHK解説委員

野中 郁次郎
北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科長

長谷川 公敏
(株)第一生命経済研究所専務取締役

濱田 康行
北海道大学経済学部教授

村井 勝
コンパックコンピュータ(株)顧問


〔部会長〕

おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、第7回の構造改革推進部会を開催させていただきます。

 本日は委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の議題は、「構造改革推進部会報告書(素案)」についてでございます。

 なお、第1回目の部会でご了承いただきましたように、本部会の資料は「原則として議事要旨と併せて公開する」こととしておりますが、本日お諮りする報告書素案につきましては、最終的な報告書のとりまとめと同時に公開することとさせていただきたいと考えております。この点につき事前に委員の皆さんのご了承をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

〔部会長〕

では、そのようにさせていただきたいと存じます。

 それでは、事務局から、素案の説明をお願いいたします。

〔事務局〕

それでは、お手元にお配りしました資料2でございますが、当部会の報告書素案についてご説明させていただきたいと思います。

 前回、スケルトンという形でお示しをして、委員の皆様方からいろいろなご意見をいただいたところでございます。今回、素案を準備するにあたりましては、いただいた意見はできるだけ反映させるという形で文章化をしてございます。スケルトンとの関係で、特に追加した部分あるいは修正した部分を中心にご説明させていただきたいと思います。

 報告書素案をおめくりいただきますと、1ページ~2ページに目次が書いてございまして、大体の構成がわかるようにしてございます。

 3ページ、「はじめに」のところは、とりあえず、前回お示ししたままで、変えてございません。全体のものがまとまって、「はじめに」をもう少し充実させた方がいいという感じになれば、ここは再度手を加えたいと思っております。

 4ページ、第1のテーマの「『グローバリゼーションに対応した経済社会』を実現させるための構造改革」でございます。この部分は、グローバリゼーションの進展に伴うメリット、あるいは負の側面をより明確にしておくべきだというご意見がございました。それを受けまして、第1パラグラフの最後の数行で、グローバリゼーションを受けて「このような変化は、世界中から最も質が高く安価な財・サービスが提供され、多様な文化の交流が行われることで豊かな国民生活を送ることが可能となること、第2に、外国企業とのパートナーシップ等を通じ、新たな技術やノウハウが形成されることにより活発な経済活動が行われ、巨大な世界市場の下でこれまでにない速さと規模で企業の成長が期待できる、というメリットをもたらすと期待される」というメリットの部分を書き込んでございます。

 あわせて、5ページの一番上のところですが、グローバリゼーションのいわゆる負の側面ということで、「グローバリゼーションへの対応にはメリットばかりではないことに留意する必要がある。構造改革を進めると、摩擦的な失業の発生にとどまらず、これまで社会的安定性の基礎をなしてきた長期雇用の慣行やもっぱら企業に依存してきた労働者福祉等を維持することが困難となる可能性がある。これに代わるものとして、外部労働市場の整備や再チャレンジできる仕組みの構築等の新たなセーフティネットを構築する必要がある。」という趣旨を書き込んでございます。

 (1)「構造改革の推進」でございます。①「基本的な考え方」ですが、これも委員の方から、特にアメリカ、イギリス等の国では、規制改革について、大胆な発想の転換を行った上で体制を整備し、改革を行っているという指摘がございまして、「基本的な考え方」の最初のパラグラフの2行目から、「特に、アングロサクソン系の国々では、大胆な発想転換の下に規制の撤廃・緩和が徹底的に進められた。当該分野における個別企業の経営安定を通じて、安定供給、安全、雇用安定などの社会的要請を満たすという考え方を廃し、透明性の高いルールとその厳正な執行、競争政策、破綻企業の事業の迅速な移転といった方向に規制体系を転換した。この結果、経済社会の変化にすばやく反応する規制へと改編された。」ということを、日本との比較で書いてございます。

 これに対し、日本の取組について、次のパラグラフですが、「日本の取組が主として米国をはじめとする外圧により進められてきたという側面が強かったために、上述したような規制に関する発想の転換が主体的に行われてこなかった。個別の既得権益を擁護する要求に対し、全体の利益を優先させるという点で政治の機能が十分ではなかった側面も否定できない。このため、従来の推進策には次のような限界がみられる。」ということで、委員のご意見も踏まえて、これまでの状況を記述してございます。

 4つの限界を挙げてございますが、これについても、もう少しわかるようにかみ砕いて記述すべきというご指摘もございまして、趣旨としては同じですが、少しわかりやすいようにということで書き込んでございます。例えば、最初の○で、「規制により保護されてきた企業やその雇用への急激な影響を緩和するための措置が必要であるとの理由で実質的な措置がとられない,あるいは繰り延べられる。」という状況。2つ目の○で、「安全の確保等社会的要請に応えるとの理由で維持されている社会的規制が、実態的には参入を規制したり、価格競争を阻害している。」という記述。4つ目の○で、「参入や価格形成に関する公的規制が廃止されたにもかかわらず、公的規制と同様の競争制限的効果をもつ民民規制が存在する。」ということで、少しわかりやすいようにという趣旨で書き加えてございます。

 それから、先ほどの「発想転換」のところを受けて、このパラグラフの一番最後ですが、「日本においても早急に規制の発想の転換を行った上で、規制改革の推進体制を抜本的に強化し、より良い規制体系の構築に向けた取組を進めていく必要がある。」ということを述べて次のところにつなげてございます。

 6ページ、②「政策方針」ですが、ア)「原則」のところは、OECDが提唱する規制改革を原則とすべきということで、特に変えてございません。

 イ)「推進手法」のところは、1)では、ビッグバンアプローチということを述べております。

 2)は、基本的には変えてございません。

 3)で、「規制改革の原則に則った政策評価に基づき」云々と書いてございますが、これは中央省庁再編における体制もにらんだ書き方にしてございます。「よりよい規制体系構築に向けた見直しを実施する。政策評価は」、最終的には「行政目的を明確にした上で複数の政策手法間の比較を盛り込む。」、「費用対効果分析や規制インパクト分析の手法の統一化を推進する」ということを書いてございます。規制インパクト分析については、この言葉は初めて使いますけれども、既に使われている言葉でして、注のところで、英国、米国、カナダを中心に実施されているものでして、そういうものも導入してやるということを書いてございます。

 ウ)「推進体制」ですが、前回、第三者機関ということで触れさせていただいたわけですが、これも現在、準備されています中央省庁再編の中で、この推進体制をどうしていくかということを念頭に置いて書いてございます。ここのところで、政治主導、あるいは総理のリーダーシップというご意見もございましたので、それを踏まえた形で、1)「政治主導の規制改革」ということで書いてございます。「中央省庁再編において強化される内閣総理大臣のリーダーシップの下に、早急な対応が必要とされる重要分野等の包括的な規制改革を実施する。その際、内閣府(内閣府は、当経済企画庁が移行する先になっております。)は社会的規制に係る数量分析等を通じ、重要分野の選定作業等を担い、現行の規制改革委員会ないしそれに代わる第三者機関が、内閣府及び総務省と連携しつつ、個別分野における規制改革」を推進する、という記述にしてございます。

 2)「政策評価体制と規制改革」においては、「新たな中央省庁体制において総務省に設置される政策評価委員会(仮称)及び各省に設置される政策評価の担当部署は、規制改革の視点も踏まえて政策評価を推進するものとし、必要な体制整備を行う。」と書いてございます。

 3)「残される規制の実施体制」のところも、「新たな中央省庁等の体制の下で政府に置かれる政策評価部門は、安全の確保等規制の政策目的を明確にした上で、政策目的を最も効率的かつ効果的に達成することのできる規制のあり方について検討する。」という趣旨を書いてございます。

 (2)「魅力的な事業環境の構築」。①「基本的な考え方」は、特に変えてございません。若干、委員のコメントをいただいて加筆修正したところはありますが、基本的には同様でございます。

 ②「政策方針」は、少し書き加えてございます。趣旨としては、既に政府等で検討がかなり進んでいるもの、あるいはこれからもっと本格的に検討しなければいけないものという仕分けを行い、検討が進んでいるものについては早急に実施するという仕分けで書いてございます。それから、抜本的な検討が必要なものについては、その趣旨がわかるように書いてございます。1)「早急な実施が求められる制度改革」として、税制、企業法制、知的所有権を挙げてございます。2)「改革に必要な制度見直し」、抜本的な改革に必要な制度見直しが必要であるということで、これから本格的に見直しの検討をしていく分野として、競争政策、司法制度を挙げてございます。

 イ)「ビジネス人材の育成」ですが、内容を若干詳しめに書いたということで、1)「専門家の育成」で、「不足する必要な人材を諸外国より受け入れるため、外国法事務弁護士の受入体制の整備について引き続き検討を進めるとともに、WTOの協議の進捗状況を踏まえ公認会計士の国際認証制度のための枠組みについて検討」ということを盛り込んでございます。2)「国際的な情報共有を可能とする人材の育成」では、教育が非常に重要というご指摘を踏まえまして、あるいはこれまであまり効果を上げてこなかったという反省も踏まえて、「国際関連学部の創設等これまでの大学等における取組が必ずしも期待された成果を上げていないことにかんがみ、外国人教員の大幅増、国際的な人的ネットワークの形成、留学生の受入増大など学習環境を真に国際的なものとするための措置が必要である。」という記述を加えてございます。

 (3)「国際的なルールや基準の形成への積極的な参画」ですが、①「基本的な考え方」について、これも若干補足的に加筆していまして、1行目で、「グローバリゼーションと制度やルール、規格・基準との関わりをみると、一方では国際金融や情報技術の分野にみられるように、もっとも使いやすいものが他を圧倒していくというもの(いわば統一的なものとして整備されていくというもの)があるが、他方では、法体系など社会制度の違いや言語・文化の多様性を受け入れることで国際的な調和が図られているものがある。」ということで、統一化とその下での多様性というものについての認識をここで書いてございます。

 10ページ、②「政策方針」ですが、ア) 「戦略的対応」は、若干加筆をした部分がございますが、趣旨としては同じでございます。

 イ)「重点分野」で、まず、先ほどの多様性等の認識とつながってくるわけですが、1)「アジアにおける制度調和の推進」を書いてございます。2010年頃における日本の経済規模は、アジアでまだ非常に大きいという認識を示した上で、「アジア地域での中核的な役割を担う必要がある。このような中で、日本は将来における市場統合の可能性を念頭に置いてアジア域内において積極的に制度調和を進め、それを国際ルールの枠組みに反映させることにより、日本や他のアジア諸国にとって受け入れやすいものとする。このためには、日本がアジア諸国に対して参入しやすい輸出市場と使いやすい金融市場を提供することが重要である。」という趣旨で書いてございます。

 この問題につきましては、グローバリゼーション部会の方で、これからグローバリゼーションの中で日本としてどうあるべきかという議論をしてございます。その中にも同様の趣旨の認識が表明されていまして、またこの全体、グローバリゼーションに対応した経済社会という構造改革の部分のいろいろな考え方の背景もグローバリゼーション部会の方でいろいろな議論がなされております。

 11ページ、2番目のテーマ、「『企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会』を実現させるための構造改革」でございます。ここは、大筋としては変わってございませんが、委員から様々なご示唆をいただきまして、主として追加をするという形で対応させていただいております。

 例えば、1)「創業・起業の促進」の①「基本的な考え方」では、創業時の障害で資金調達ということだけを述べておりましたけれども、販路確保の問題が最近非常に大きくなっているということで加えさせていただいております。それから、次の12ページで、「基本的な考え方」を受けた②「政策方針」、ア)「起業家やその支援者にとっての動機付け」、<具体的施策>として、エンジェル税制の拡充、未公開株式市場及びM&A市場の活性化ということを付け加えておりますし、「表彰制度等を通じて、起業成功者の社会的評価を高めるような環境整備を進める」という方策を付け加えてございます。

 イ)「起業家の資金調達環境とセーフティネットの整備」ですが、銀行が中小企業、ベンチャー企業に融資するときに、経営者に連帯保証人になるように求めるということを書いてございましたが、「これは、資産が少ない、あるいは企業と個人が実質的に未分離であるような企業に対して、金融機関等が貸付を行う際の対応の一つである」という認識を書いてございます。ただし、このことは「一度失敗すると個人の再挑戦を困難にしてしまう点で問題」と、認識は変えてございませんが、その背景を少し書き加えてございます。

 <具体的施策>で、「資金調達環境の整備」としまして、株式の「公開前二年間の第三者割当増資規制の見直し」ということに続けて、13ページになりますが、「画一的な価格算定方式の廃止とそれに伴う増資前の監査と情報開示の徹底」、ベンチャー・キャピタル等の事業評価能力を強化するために、例えば、「専門的な知識を有する大学教官等の情報を一元化して検索できるようなシステムの構築を検討する」とか、「事業失敗の原因を客観的に評価して再挑戦の機会をアドバイスし、再スタートを支援する人材を育成する」といった方策を付け加えてございます。

  ウ)「起業家精神の涵養と規制改革の推進」は特に変えてございません。

 2)「新技術・新業態の開発・普及とビジネス仲介機能の強化」ですが、②「政策方針」のところで、委員からご示唆をいただきまして若干追加をしたところがございます。例えば、「新技術の普及については、技術移転機関」に加えて「リエゾンオフィスを一層整備する」、企業活動情報の仲介機能の支援については、「企業経営の経験者」を加えてございます。また、産業分類、統計的なことに関する指摘もございまして、「なお、新しい産業の実態等を的確に把握できるよう日本標準産業分類の見直し等を行う」ということも付け加えさせていただいております。

 (2)「個人の面からの改革」ですが、これも先ほどと同じようなことで、基本的には委員からのご意見の追加が主なもので、基本的なところは変わってございません。15ページで、ウ)「能力開発に必要な時間等への支援」ですが、前回のスケルトンでは「能力開発に必要な時間の支援」と「能力開発のインセンティブの付与」ということで分けて書いてございましたが、内容的にあわせて書いてもいいのではないかということで、そこをあわせて書いたということでございます。若干の加筆はしておりますが、中身としては、前回のスケルトンの段階と同じものでございます。

 17ページ、3番目のテーマ、「『環境と調和した循環型経済社会』を実現させるための構造改革」でございます。これにつきましても、各委員からいろいろな建設的なご意見をいただいたところでございます。

 まず、(1)「基本的な考え方」ですが、リサイクルについて若干定義が不明確ということもございましたので、リユースを含むリサイクルという用語の定義を少し明確にしてございます。それから、そこの最後のパラグラフで、改革目的を整理・補足してございまして、「社会を構成する全ての経済主体について健全な物質循環と社会の持続性の確保に係る責任を明確化するとともに、廃棄物の発生抑制とリサイクルを経済社会システムに内在化することにより、従来の『大量廃棄型経済社会』を永続的な『環境と調和した循環型経済社会』へと構造改革し、美しい環境と貴重な資源を次世代に引き継ぐとともに、持続的な経済成長を実現する。」ということで、改革の目的を少し明確に書いてございます。

 (2)「政策方針」ですが、①「システム基盤の構造改革」、これも若干補足的な記述を加えてございまして、「行政の基本スタンスを廃棄物の適正処理に重点を置いたものからリサイクルを促進するものへと一層変革し」と加えてございます。

 ア)「リサイクル原則の確立」ですが、前回は、リサイクル基本法という名前でお示ししていたと思いますが、それを「循環経済法」ということで、リサイクル絶対主義というのではなくて、循環性を重視して環境負荷の低減を図ることが目的であるということをより明確にするような、これも仮称ですが、法律の名前を使ってございます。それを受けて、17ページの最後のところで、「資源・エネルギーの利用効率の最大化に留意しつつリサイクル可能なあらゆる品目についてリサイクルを進める」ということで、趣旨も少し明確にしてございます。

 その次のパラグラフで、この問題を進めるにあたっても国際競争の視点、配慮が必要であるというご指摘もいただいておりまして、それを書き加えております。「グローバル化の進んだ現代経済社会においてリサイクルを促進するためには、国内制度の整備等を図るとともに、我が国産業の国際競争力を確保する観点にも配慮しつつ、『循環経済法』に基づく国内諸制度と整合的な国際的枠組みを構築する必要がある。このため我が国は、国際間の相互理解と協力の下に、廃棄物処理やリサイクルに係る制度の共通化、リサイクル財等に係る国際的基準・規格の充実等に積極的に参画する。」ということを書き加えてございます。

 ここの最後のパラグラフで、「なお」以下ですが、この問題については、社会教育も含めて教育が重要であるというご指摘がございまして、「このため、学校教育やNPO等の参画を得た社会教育等を通じて行政機関を含む国民各層のリサイクルに対する理解を深め」という記述を追加してございます。

 イ)「廃棄物処理・リサイクル体制の見直し」ですが、2つ目のパラグラフの最後のところに、その導入は、生産者や消費者に対して新しいコスト負担を求めることになるわけですが、「その導入に当たっては、環境コストを含めた経済社会全体としての費用や政策効果等の評価を説得的に示す」ということで、趣旨としては入っていたのですが、少しきめ細かな表現にしてございます。

 それから、先ほどの国際的な枠組みとの関係で、<具体的施策>の2行目以下のところですが、「国際的枠組みの整備と併せた廃棄物に対する環境税等の経済的手法の導入を検討し、環境コストの価格への適切な反映を推進する。」という表現を入れてございます。

 それから、PFI方式で施設整備等を行うという記述がありましたけれども、それには外国資本も入るという指摘もございまして、18ページの下のところに、「外国資本も含めてPFI方式により」という表現にしてございます。

 19ページ、ウ)「リサイクル財の需給安定方策の実施」、<具体的施策>ですが、企業の方で、リサイクルについても積極的に経営の中に取り組んでいく必要があるというご指摘もございまして、最初のところに加えてございます。「内外における廃棄物の発生抑制やリサイクルに対する関心の高まりを背景に、企業においても、リサイクル等に係る環境投資と企業収益をトレードオフとして捉えるのではなく、リサイクルへの積極的な取り組みを競争力として経営に取り込んでいくことが有効となる。」という認識ですとか、数行下で、「リサイクル等環境対策にかける費用と効果を定量的に明らかにした環境会計や環境に係る経営方針等を示す環境報告書の公表を基本的に義務づけ、リサイクル関連情報の公開を促進する。」という記述を加えてございます。

 その2つ下のパラグラフですが、データ整理公開ということで、「行政等は処理・リサイクル技術に関するデータを整理公表する」と入れてございます。

 ②「産業構造・技術基盤の構造改革」、ア)「産業構造の抜本的転換」ですが、<具体的施策>でライフサイクルアセスメントについて述べていたわけですが、それについて少し説明書きを加えておりまして、「ライフサイクルアセスメント手法を確立し、資源の採取から製造、使用・消費、廃棄、リサイクル、輸送等製品ライフサイクル全体の環境負荷の評価・把握を推進する。これに基づき製品ライフサイクル全体を考慮した最適化設計や開発を進める。」という記述を加えてございます。

 それから、土壌汚染に関連するご指摘もございまして、20ページの3番目のパラグラフ、ゼロ・エミッション等を目指すために「産業立地を見直し、産業等の集積とそのための基盤整備を進める。」という部分ですが、「その際、土壌の汚染防止と管理についてのルール化を推進しつつ工場跡地等の有効活用についても検討する。」ということで、土壌汚染との関連についても触れてございます。また、こういったことを円滑に推進するために必要な社会資本を整備するという記述も若干、その下の方に加えてございます。

 イ)「廃棄物処理・リサイクル産業の効率化」ですが、これについては、先ほどのPFI同様に外資の活用についても言及しておりますし、<具体的施策>の一番下のパラグラフで、「廃棄物処理事業者とリサイクル事業者の融合を促進するため、減免税や投融資等の財政的支援を検討する。」というくだりを付け加えてございます。

 ウ)「リサイクル対応型技術の開発」の<具体的施策>では、メンテナンスの問題が重要だということで、「適切なメンテナンスによる機能アップや自己修復を通じて製品の長寿命化」という記述ですとか、「メンテナンスを支えるための製品寿命や状態を管理する技術や、情報流通を促す情報化技術等のシステム化技術の開発」と、技術の面での重要性も述べさせていただいております。21ページの上の方で、「リサイクルベンチャーの育成」ということも付け加えさせていただいております。その下のパラグラフで、「大学等の人材、技術、施設を開放する等、産学官連携研究体制を整備する。」、最後のパラグラフで補足説明として、「動脈部門の製造事業者から静脈部門の廃棄物処理・リサイクル事業者に対して製品の素材、組成、設計等の技術情報の提供を可能な限り義務づけるとともに、廃棄物処理・リサイクル事業者からは素材生産・製品製造事業者に対して、廃棄物・リサイクルに係る情報をフィードバックする等の動脈部門と静脈部門で技術情報を共有」ということを少し書き込んでございます。

  以上、素案について、変更点を中心にご説明いたしました。

〔部会長〕

どうもありがとうございました。

 それでは、ただいま説明のありました「構造改革推進部会報告書(素案)」についてご意見をお伺いしたいと思います。どうぞご自由にお願いいたします。

〔A委員〕

素案は全体が非常によくまとまって、いろいろな意見が反映されていると思いますが、1つちょっと気になりますことは、全く基本的なことですが、構造改革推進部会ということですので、労働事情の問題というのは避けて通れないと思うのです。失業対策の問題が今盛んに騒がれておりますけれども、日本の識者は、その辺の問題はこれから更に大きく拡大していくという認識は持っているにもかかわらず、ここのところを避けて通っているような気がするのです。特に構造改革推進した場合に必ず起こる問題だと思うのです。

 私は、これは導入のスピードの問題と絡んでくると思うのです。したがいまして、私のご提案申し上げたいのは、「はじめに」の部分かどこかでその問題を正面から取り上げることが、この提言の推進がいかに重要であるか、しかも非常に速やかに行われなければいけないかと、その重要性を訴える意味で非常に大切ではないかというのが私の率直な考え方です。

 個別の案については、非常によくまとまっていろいろと提言されているような気が私はしております。

 それから、このような提言が出たときに、いつまでにどういうアクションがとられるかということが非常に漠然としております。たぶん、これが各省庁に提言されることになると思いますが、少なくとも、プラン・オブ・プランといいますか、いつごろまでにこれについてのフィードバックがあるのか、あるいは期待するのかというようなことは盛り込むことはできないのか、というのが2つ目の質問でございます。

 それから、2つの提言、物流ビッグバンの問題と情報通信の問題ですけれども、これについてちょっと所感を述べさせていただきますと、1つ考慮していいのではないかと思うのは、物流を考えたときに、もちろん国内の物流が一番大きな問題ですが、ご承知のとおり、アジア地域で、国際的なハブの問題が以前から議論されていますけれども、グローバルな視点に立った物流というものを考えますと、これはある意味で日本の地域振興の政策とも絡んでくるような気がいたします。こういった国内の物流システムと同時に、国際社会、グローバリゼーションというテーマで議論しているわけですから、グローバリゼーションの中における日本の物流の役目、ビッグバンが果たせる役目、こういったものが少しアクセスされるともう少し前向きな提言もできるような気がするのです。

 それと同時に、私がたまたま情報産業に関わっている観点から申し上げますと、物流の問題はもう一つ、情報システムの視点を欠くことはできないのではないかと。金融のビッグバンのときに、私は、結果において問題になったと思いますのは、金融ビッグバンは規制の問題はやられましたけれども、それと同時にいろいろな形でそれをバックアップする情報システムが大幅に変わってきたわけです。その分野の産業についての視点が、金融ビッグバンのときには完全に抜けていたのではないかという気がするので、できれば、情報産業が物流ビッグバンに果たす役割をどのようなことで考えていかなければいけないかという項目が追加されると、さらにこのテーマの視野がきちっと広がるのではないかという気がしております。

 それから、情報通信につきましては、私自身も今、インターネットの世界でいろいろと仕事をやっておりますけれども、はっきり申し上げまして、今、運用で郵政あるいは通産が拡大解釈して、これは認める認めないとかいうことをおっしゃっていますが、これで避けて通れないのは郵政と通産の職域とオーバーラップするような問題、コンピュータも産業もこの中では避けて通れないと思うのです、特にインターネットの世界が入ってまいりますので。ですから、電気通信事業云々だけではなくて、インターネットも含めた情報産業の絡みが少し評価されないといけないと思います。

 例えば、ケーブルテレビの場合、これは完全にインターネットのパイプラインとして米国では広く使われようとしているわけですけれども、そういった視点がアドレスされなければいけないのではないかと私は感じるわけでございます。

〔部会長〕

数点ご指摘いただきましたけれども、特に構造改革という場合には当然に失業問題という話。これは、5ページの一番上には、デメリットというところで総論的な問題は記述はしてあるわけですけれども、今のA委員のご意見としては、1項目どこかに出せ、こういうご意見ですか。

〔A委員〕

それをもう少し正面に捉えることによって、我々がここで議論した提言の推進がいかに重要であるか、それを速やかにやらなければいけないかという前向きなテーマとして取り上げられるのではないか、というのが私の提案でございます。

〔部会長〕

金融ビッグバンで、情報技術関係が全く抜けていたというのは、私も、1つのトレンドとしてのインフォメーションテクノロジーということは非常に大きく取り上げたはずですけれども、今になって、金融工学ということがこれだけ大きな問題になってきているという点では、おっしゃるとおりだと思いますので、物流の問題にもその問題は組み込む必要はあると思います。

 A委員のご意見に対して、事務局の方から意見がありますか。

〔事務局〕

ご意見を踏まえて、労働の話はどのように書くか、ちょっと工夫をしてみたいと思います。それから、ビッグバンの中身については、事務局もなかなか苦しんでいるところでもございまして、どんどん積極的なご意見をいただくと大変ありがたく思います。

〔部会長〕

続きまして、お願いいたします。

〔B委員〕

物流のハブと絡んで、国際的な意味でも通信のハブを意識したものの考え方とかを出されておいた方がいいのではないか。当然、裏腹に、アジア1つをみても、やれシンガポールだ、マレーシアだと言っている中で、明確なそういう意識をした取組をするという意味では、経済戦略会議の情報通信基盤整備ということでもいいですけれども、企業の発展とかニュー・ビジネスということを考えると、企業や個人の創造性と自由度の高い社会経済、13ページあたりでしょうか、そういったところに情報通信基盤の整備というのをぜひ入れるべきではないか。金融でも、物流でも一緒になって動いていく世界という意味で、ぜひそういう考え方を持った方がいいのではないか。また、産業の発展段階からも、脱工業化、知的情報社会という意味では、そういうことが盛られてしかるべしと思います。

〔C委員〕

物流について重点を置くべきところというのは、下部構造をどうするかという話です。例えば、許認可の緩和という話だけでいえばこれだけでいいのですけれども、規制改革という視点から考えれは、下部構造の整備をどうするか、その負担のシステムをどうするか、私は、全部を民営化してまえという話ですけれども。

 先ほどからいろいろハブの問題等々の議論がありますけれども、ハブの問題は、単にでかい施設をつくれば、そこに人が集まってくる、お客さんが集まってくるという話ではない。太平洋の真ん中にハブをつくったって誰も来ないわけです。いかにして需要のあるところに施設をつくっていくかということです。需要の集中しているところに施設をつくっていけるシステムにしていけるということは、言い換えれば、マーケットに任せるということであって、下部構造についても、民営化を推進していけば、自然とそういう形になっていくわけです。

 そういうことで、話があちこちとびますが、私は、PFIというのが大嫌いで、民営化すればいいのに、なぜPFIというのをやらなければいけないのか。環境の問題のところでもPFIという言葉が出てきますけれども、どうしてそういう効率の悪い制度をわざわざ使わなければいけないのかというのは大変疑問であります。

 申し上げたいことは、要するに、下部構造についてのあり方ということが1つ重要な要素になってくるということです。

 第2点は、これは物流も情報通信も同じですが、規制改革というときの包括的な規制改革をやっていくわけですから、社会的なコストについての負担の方法についても包括的に考えていくことを考えなければいけない。つまり、今のようにモーダルシフトという形で、道路からほかの交通機関へということをやるのではなくて、環境上の理由から炭素税のような包括的な施策、そういったものでやっていくのかどうか、そういう社会的なコストについて包括的に負担をさせる方法、これを考えていかなければいけない。環境の場合で言うと、今申し上げたようなことです。

 それから、安全の問題で言うならば、物流の問題だけではなくて、人流の問題を含めて、例えば、交通関係の安全についての考え方を1つまとめてやれるような官庁をつくるという、その規制のシステムをどうやっていくかというところまで考えていかなければいけないだろうと思います。

 もう一つは、エッセンシャル・ファシリティの話ですけれども、これは物流の分野だけではなくて、これからの規制の問題については、それを考えていく上で非常に重要な要因であることは確かで、エッセンシャル・ファシリティについての配分ルールの規制を誰がやるか、規制を誰がやるかということについての議論は、かなり重要な問題になってくると思います。

 もう少し具体的に言えば、伝統的な規制官庁に規制の権限を与えるべきではない、というのが私の考えであります。これは、先ほど申しました、安全についての包括的な規制を行う場合でも、あるいは環境についての包括的な規制を行う場合でも、事業規制を担当している伝統的な規制官庁がそれを行うべきではない。なぜかというと、それが競争抑制的な規制の手段として使われる可能性があるからです。需給調整に興味を持たない官庁にやらせるべきだということが私の考えです。

 そういう点で、包括的な規制改革という視点からみますと、もう少し大きな視点から考えていくべきではないかということです。

 最後に1点だけ、インターンシップ制度のことが、創業家意識を向上させるというところの話で出ています。私の大学の学部は、今年からインターンシップ制度を始めました。学生からは大変人気がありましていいのですけれども、ものすごいコストがかかります、教員の方は。それで、教員の方はあまりやりたくないわけです、そのための準備に非常に時間とコストがかかります。それを導入するときに説得をしたのは、これをあえてやらないと、他の所でやられてしまうぞ、ということです。つまり、競争ということは、結局のところ、こういった新しいシステムを何とか入れていこうという活力になっていく。起業家精神を一生懸命教えようとしても、それは学校で教えたって、私は、とても無理だと思います。以上です。

〔D委員〕

報告書素案を読ませていただきまして、どなたかがおっしゃったいましたけれども、ずいぶん改善されたような気がするのですけれども、しかし、なお1点、ぜひさらに書き加えていただければというところがございます。

 それは、民民規制に関わるところです。民民規制が重要だということは、5ページの1)「規制改革の推進」の①「基本的な考え方」のところで4つ挙げているうちの最後の○に書いてあります。これとの関係で、9ページに、具体的に何をしなければいけないかというところで、9ページの一番上に「競争政策」ということで3行書いてあります。これは、他の項目との関係でこの程度というか、非常に字数が少ないということなのかもしれませんけれども、具体的にもう少し何をやるのかというのが入っていた方がいいのではないか。「民民規制への対応等公正な競争を確保する観点から執行体制の強化を図る。」というところは、ちょっと物足りないなと。

 と申しますのも、アメリカのUSTRが毎年出す「対日貿易障壁に関する報告書」というものがございます。これは今年は4月に出ていますけれども、これを見ますと、公正取引委員会のあり方について、これは毎年かなり詳しく書いてありますけれども、具体的に書いてあるわけです。民民規制が問題であるということはもちろん書いてある。うろ覚えなのですけれども、これはC委員に教えていただいた方がいいかなとは思うのですが、こんなことが書いてあったと思うのです。要するに、民民規制によって被害を受けたと考える個人が、法的手段に訴える整備が日本の場合にはなされていない。そういう法律を作りなさい、というようなことも具体的にその報告書の中で書かれているのです。もちろん、執行体制の人数が少ないというところは前から言われているわけで、その報告書の方では、行革をやって余った人をそちらに回しなさい、というようなことも書いてあったと思うのです。

 それがいいことかどうかは別にして、これではあまり説得力がないかなという感じがいたします。

 ついでに申し上げれば、民民規制がいかに重要、つまり克服すべき課題として重要かということで、規制に占める民民規制の割合という文言が数字で出てきているのであれば、何かちょっと入ったら説得力があるかなという感じがしました。

 それが報告書素案に関することです。

 もう一つ、物流の方ですけれども、これも先刻ご承知だろうとは思うのですけれども、物流を考える場合には、他法令というか、通関業務と検疫業務。私も10年ぐらい前に、関税業務の簡素化とか何とかいうことで、こういう形で勉強した機会があるのすけれども、その頃とはずいぶんん事情が変わっているとは思うのですけれども、引き続き業者の方などから聞くと、日本の通関業務がやはり1つの障壁になっているということも聞きます。ですから、物流二法だとか、荷捌きのところに入るのだろうと思うのですけれども、総合的にお考えになった方がいいかなという感じがいたします。

〔部会長〕

民民規制の問題については、この前の経済主体役割部会で一応レポートはしておりますけれども、その辺の内容も含めながら、もう一度よく検討させていただきたいと思います。

〔E委員〕

いろいろ意見を取り入れていただきましてありがとうございました。

 それで、全体の問題で議論したいのですけれども、事務局も、「はじめに」の部分をこれから膨らませるかどうかというお話をされていましたけれども、報告書を全部通して読みますと、3章からでき上がっている。グローバリゼーション、自由度の高い社会、それからリサイクル、この3つの章の関連というものがつけられているのかどうか。必ずしも、関連を書く必要はないという意見もあると思います。必要な構造改革の中から3つ選んだのであるということになるのか。それとも、3つというのは相互に関連があってということなのか。そこら辺を、「はじめに」のところでお書きになったらいいのではないかと思いました。それが1つ目です。

 2つ目ですが、最初のときに長官が出てこられて、要するにわかりやすい報告書を書いてくれ、スローガン的なものを提示してくれという話でした。そういう点からすると、結構分量がありますので、例えば、要約版を作るなどというときに、どのようにわかりやすくするかということを考えておかなければいけない。3つの章について言えば、すべての章の題が「何々のための構造改革」というふうについているわけです。ということは、現状が何かあって、そういう構造改革をやるとこうなるという話ですから、図式的にいえば、AがBになるというような要約の仕方ができるのだろうと思います。それで、以下は、私が読んで、こうなのかなと思ったことを申し上げますから、それでよろしいのかどうかということを検討していただきたいのです。

 1は、日本的経済社会から国際経済社会へ、ということ。社会といった場合には、企業とか、人とか、制度とかが含まれるということなのだろう、そういうふうに理解しました。

 2は、ちょっと俗な言い方ですけれども、会社人間から自由な個人へ、というふうになっているのかなということ。内容は、いわゆる創業・起業の話が中心ですけれども、創業・起業のためには、日本人的会社人間からの開放ということが全体として求められているということかなと思いました。

 3は、使い捨て経済からリサイクル経済へ、このような話になっているのだろう。

 そういうようにまとめてみたのですが、ではこの3の章がどのように関わっているのかというところが、「はじめに」の部分か何かで書かれると読む方はわかりやすくなると思います。

 あと、細かい点を2つ。12ページの創業のところは、いろいろ意見を取り入れて書いていただいているのですけれども、②「政策方針」のア)「起業家やその支援者にとっての動機付け」というところは、私は、起業家への動機付けと支援者の役割、というふうに書き分けた方がいいのではないかという気がしています。ではどうするのだということになるのですが、よろしかったら、私も考えてみて、こんなのでどうでしょうかというのを後で差し上げたいと思いますから、参考にしていただければと思います。

 もう一つ、戻って恐縮ですが、10ページで、アジアにおける制度調和の話が出てきます。私は、ここで、グローバリゼーション部会の方の素案をぱらぱらと見ましたけれども、書かれていなことが1つある。それは日本の通貨である円をどうするのだという話が、こういうことを言いだしたら普通は書かれるのではないかと思うのですが、書かれていない。例えば、円をアジアの基軸通貨化するのか、そういう方向で持っていくのかどうなのかという話があった方がいいし、そこを突かれそうな気がする。当部会には権威の筋もおられるわけですから、ぜひご意見を聞いて、そこら辺を書かれたらいいなと思いました。以上です。

〔部会長〕

円の国際化、これは4月20日に外為審がはっきり出して、またIMF蔵相委員会でも、宮澤蔵相が大きく言っております。私も、円の国際化というのを、グローバリゼーション部会で当然大きく取り上げられていると思ったら、なるほどぱらぱら見ていると、ないです。「金融市場を提供」ということに、もう含まれているということかもしれませんが、この問題は再検討する必要があると思います。

 F委員、何か意見がありますか。

〔F委員〕

為替以外にたくさん意見があるのですけれども。

〔部会長〕

どうぞ、為替以外のことでも。

〔F委員〕

ただ、為替で今ご指名がありましたので、一言だけ付け加えさせていただきますと、「日本がアジア諸国に対して参入しやすい輸出市場」、つまり日本が輸入するという、これは非常に重要な指摘だと思うのです。

 なぜ円の国際化が進んでいないかというと、結局、今アジアと日本との分業が進んでいるわけですけれども、日本から部品を買って、アジアで組み立てているもののかなりの部分は日本以外の国に行っちゃうわけです、ほとんどがアメリカに向かうわけですが。そうすると、最終的な収入はドルですから、どうしても、例えば台湾の輸入業者は、日本からモノを買うときに、円じゃなくてドルにしてくれ、と。そうすると、輸出もドルで輸入もドルですから、その企業は非常にやりやすくなるわけです。

 したがって、最終需要がドルであるときには、どうしても円の国際化というのは進みにくいことになるわけです。

 ここに書いてありますように、もしも、日本がアジア諸国に対して本当に参入しやすい輸入市場になったときには、日本からは高度な部品を買って、モノをつくってまた日本に売るわけです。そうなると、その台湾の業者は、またマレーシアの業者は、何も言わなくても、日本の部品メーカーに対して「円建てにしてくれ」と言ってくるはずです。それが最終的には円の国際化ということになるわけです。

 なぜドルがこれだけ国際化しているかというのは、軍事力だとかいろいろな議論はありますけれども、結局、あの市場があまりにも重要であって、その市場で生きていかなければいけない企業が、日本も含めて全世界にたくさんあるものすから、どうしても最終的にドルになってしまう。

 しかし、例えば、ヨーロッパでマルクがかなり使われているのは、今はユーロになっていますけれども、ドイツがヨーロッパ中からいろいろなものを買っていたということが背景にあるわけです。

 したがって、まさにここに書いてあるとおり、日本がアジア諸国に対して参入しやすい輸入市場になれば、私は、円の国際化はどんどん進むだろう、ほっといても進むだろうと思います。

 為替以外の話になりますけれども、起業家への支援ということがずいぶん労働問題に関して言われているわけです。そこで、金融をどうしたらいいか、販路をどうしたらいいかということが議論されたわけですけれども、もう一つあると思うのです。なぜ日本で起業家があまりにも少ない、こういう動きがアメリカに比べて少ないかといいますと、日本の場合は、規格の違うものを何かやろうとすると、ばか高くなってしまうのです。

 例えば、試作品をつくりたいというときに、どこに持っていけばこの部品をつくってくれるのか、また、ある製品からその部品だけがほしいと思っても、メーカーはまず売ってくれない。新品をぶっ壊して、その部品だけを取るというような方法はあるわけですけれども。私は、この辺が日本の1つ非常に大きな問題ではないかという気がします。

 つまり、先ほど、使い捨て経済からリサイクル経済へというところで、私も、前回の部会では、部品を7年ではなくて、もっと長くメーカーで持ってくれたら、それだけ産業廃棄物は減るのではないかという話をしたわけですが、新しいことを始めようという人たちにとっても、日本では、既存メーカーの力が強すぎるわけで、その部品だけを購入しようと思ってもほとんど不可能であります。

 日本の方は、大体そんなものだろうと思われているかもしれませんが、アメリカでは、同じ日本企業が全く違う行動をとるのです。例えば、私は、ある写真技術をものにしまして、この間、その技術をもとにして写真集まで出させていただいたのですが、その技術を確立するためにいろいろなものが必要だったわけですけれども、例えば、アメリカでは、ミノルタカメラのこの部品がほしいなと思ったら、そのまま手紙を書いて出すと1週間で送ってきます。それに請求書が付いている。値段は、まさに実費そのまま。だから、例えば、レンズだったら10ドルぐらいです、ちょっと前の話ですけれども。10ドルだっら、今だと 1,200円ですか、そのくらいの値段で何でも調達できちゃう。

 そうすると、試作品をつくるときのコストがもすごく安くできるわけで、つまり、日本に比べればものすごく安くできるわけです。それが例えばアップルコンピュータがガレージから始まったとか、こういう話がアメリカでたくさんあるのは、試作品、新しいものをつくろうという、そのコストが日本とアメリカでは桁が2つぐらい違うのではないかという気がします。

 実際、私も日本に15年も住んでいるものですから、いろいろなものを日本のメーカーなどに頼んでつくってもらおうとするのですが、小さな仕事は全然手をつけてくれない、やってくれない。言われた値段が、例えば50万だとかするわけです。同じものを、例えばサンフランシスコに頼んだら5万円でできたというような件がいくらでもあります。

 この辺、普通の人がいろいろなことをやりたいときに、例えば工房があって、その工房に持って行けば、旋盤を長い間やっていたおじさんが部品をつくってくれるとか、こういうところに、もう少し何か手だてはできないのかなという気がします。

 そういう意味では、私も実際にアメリカ経由で日本の製品の部品を買ったこともありますが、そういうことを日本でももっと自由にできるようにしたら、いろいろな可能性が出てくるのではないかなという気がします。

 あとは、産業廃棄物のポイントが今回、かなり大きく取り上げられているわけですけれども、このこと自体は、もしもこれを本当に表に出すということは、今までの日本の産業のあり方を根底から問うことになるわけです。先ほど、使い捨て経済からリサイクル経済へという指摘がありましたけれども、今までは、先ほどの部品の話も含めて、できるだけ古いものは早く捨ててもらって新しいものを買ってもらう、というのが日本の1つの制度の中に組み込まれていたような気がするのです。車検制度などというのもその典型で、あれがどのくらい環境破壊をもたらしたかと考えたら、想像を絶するものになると思うのです。これを変えていくということになると、産業全体をある意味で変えていくわけです。いいものを長い間使いましょう、という世界に持っていくわけですから、もしもそういう話にするのだったら、まずそれを最初にこの報告書の中に書いたらどうかという気がします。

 つまり、これは産業界の皆さんに対して大変なチャレンジになるわけです。今までは、どんどんつくって、部品の供給も途中でやめて、これはもう修理できません、新しいものを買ってください、という方向に需要創出していた。この大きな流れを変えてくれというわけですから、それは冒頭にそういう警告を発した方がいいのではないかという気がします。

 具体例として、ちょうど車検制度の逆で、古い車に乗っている人の自動車税は低くしましょう、例えばそういう税制を考えたら、これは産業廃棄物を減らすという目的としてはあるわけですけれども、そうすると、自動車産業全体ががらっと考え方を変えなくてはならなくなる。つまり、長く使えるいい車をつくらなければならなくなりますから、具体例まで話を持っていったら、これは大変大きなことになるのではないかという気がします。そうだとしたら、それはもっと強く書き出すべきではないかという気がします。

 あと2、3、細かな点ですけれども、海外から人材を入れるという意味で、公認会計士の話、弁護士の話もありますけれども、ぜひ銀行検査官もそれに加えていただきたいと思います。日本の方も一生懸命やっておられるようですけれども、最近の金融技術の進歩ということに関して、日本の場合は、まず人も少ないし足りないわけですし、最もアップデートな金融技術に対応できるだけの訓練が実際に行われているのかどうかという点も含めまして、ぜひここは加えていただきたいと思います。

 最後に、総理大臣のリーダーシップという言葉で、マスコミには「政治家のリーダーシップ」とすぐ書かれるわけですけれども、具体的にどういうことなのか。日本では、官僚が横になるという恐ろしい表現があるわけで、結局、そうなったときに総理大臣は何かできるのですか、という本当の意味でリーダーシップがとれるのかどうか、私はこれは総理大臣にかなりの人事権をもたせるぐらいの意味を含めてリーダーシップという形にしたらどうかというふうに思います。もちろん、これには大変な抵抗が官僚の皆さんから出てくるのだと思いますが。結局、政治家のリーダーシップとこれだけ言われていながら、なかなかできないのは、抵抗があるわけで、人事権も持っていない人にリーダーシップをとらせるというのは、私は基本的に不可能ではないかと思います。

〔G委員〕

全体としては、いろいろ適切な表現を加えられて、私は、よくまとまった文章だと思います。特に、ご意見申し上げた6ページ~7ページのところも、かなりぎりぎりの表現でされて、これはいいと思うのです。

 ただ、7ページのところで、細かいところですが、2ほどあります。ウ)の2)「政策評価体制と規制改革」で、政策評価委員会(仮称)、これが政策評価を推進するという。これは大変結構だと思いますけれども、例えば定期的に検証して、それを開示するとかいうようなことがないと、ただ必要な体制整備を行うというだけでは、要するに、書いただけということになりはしないかという気がちょっといたしました。

 次に、これは全く日本語だけの問題です。3)「残される規制の実施体制」というのは日本語としてどうなのでしょうか。規制を見直す上での体制整備、実施体制というのはわかりますけれども、「規制の実施体制」というのは日本語としてわかりにくいのではないかというのが私の印象です。

 もう一つは、E委員がおっしゃったと思いますけれども、「はじめに」のところで、3つの論点のつながりというものを、もう少しわかりやすくというか、それから格調高くというか、書かれた方がいいのではないかという気がするのです。

 格調高くというのは、「はじめに」ということの意味づけもありまして、1のグローバリゼーションと2の自由度の高い社会というのは、大体つながっていくわけです、気持ちとして。ところが、3のリサイクル、循環型社会というのは、ある意味では自由度を我慢する、そういう考え方に立たなければいけないわけです。要するに、その1と2の挙げた主張を適切にフォロー・アップするのが、言ってみれば循環型の社会かなという気がしておりまして、これは間違っているかもわかりませんけれども。何かそのような意味づけをやった方がいいのではないかという気がいたします。

〔H委員〕

皆様がいろいろおっしゃったこと、それから私の申し上げたことがかなり反映されていて、ずいぶん変わったなという印象がございます。

 1つ、もう少し整理した方がいいなと思う点がございますが、今回新しく、5ページの一番下の2行を拝見しますと、規制緩和というところから更に一歩進んで、その先というものを目指しているなという印象がございます。後ろの方で、デファクトスタンダードといいますか、日本が国際ルールをリードするようなやり方が必要なのだということも書かれているわけです。そうすると、最初にお話がございました、アメリカにキャッチアップするということが目的なのか、その先に何か待っているのだというところから、どうやらそうではなくて、キャッチアップではなくて、その先へ進むのだということがかなり明示的にここで出てきたなという印象がございます。

 とすると、もう少しそれを初めの方から出していくといいますか、最初を読んでいきますと、依然としてキャッチアップをするということに主眼があるというふうに読めてしまいますので、そうでない考え方、更に一歩進むのであれば、そこから書き始めた方がいいかなと。それが目的になっているのです、というふうに書いた方がいいかなという印象がいたします。

 細かいことはいくつかございますが、それは大筋にあまり関係がないと思いますので、ここでは省略をさせていただきます。

 それから、若干リサイクルのところで申し上げますと、19ページ、大変よくわかったのですが、企業に向けていろいろな要求をするといいますか、あれをしてください、これをしてくださいということを書かれているわけですけれども、いかがでしょうか。これはこうしないと企業としてどういうペナルティがあるかというふうに考えますと、そこは書かれていないわけですので、かなりこの辺は自主性に任せるのか、それともそれなりにペナルティがあるのかということがもうちょっとわかるような書き方の方がいいかと思います。つまり、守らないと大変なのですよ、罰則がありますよ、ということの方がいいような気がいたします。

〔I委員〕

全体については特に意見はないわけですが、10ページに、東南アジアその他に受け入れやすい状況をつくるという議論があるわけですが、それと関連しまして物流ビッグバンの具体的プログラムの中に、できたら、ハブの受入の問題を加えていただきたい。周辺整備が今非常に遅れているわけです。

 例としましては、東南アジアからものを運んでくるときに、徳島県は、それに徹底的に力を入れてリパックであるとか、次の第2次加工を周辺に全部配置して、トータルでは東南アジアから商品を受け入れやすい整備を非常に積極的にやっている。私も、明快にコストまではわかっていないですけれども、東京から青森へリパックして、例えば横浜へ着けて青森まで持って行くコストと、徳島に下ろして、徳島はリパックとか第2次加工の周辺整備ができているので、徳島から青森まで持っていくコストでは、徳島の方が安くつく。現象的には、我々から見ておかしいと思うのですが、実際には人件費が安いということと、周辺整備が非常にできているからリパックとか第2次加工がしやすいので、このようなことになっているのです。

 できたら、物流のビッグバンのところに、ハブとその周辺整備という言葉が入れば、なお経済的に動きやすいかな、そんな気がしますのでご提案だけ申し上げます。

〔J委員〕

いくつか順不同で申し上げます。1つは、先ほどF委員がおっしゃったことと重なるのですが、恐らく、10ページの②「政策方針」と書いてあるところの前の部分、この辺の関係かと思います。「世界におけるルールや基準の形成にリーダーシップを発揮する観点からは」ということに関してですが、この前後で、全体的に制度の話が強く出ているわけですけれども、これは制度と同時に、行動というのか、実行というのか、これがひょっとしたらそれ以上に大事かもわからないと思っております。

 例えば、日本の場合に、国際的なルールづくりに関して、役所の課長から大臣に至るまで毎年違う人が会議に出て行っていたのでは、いくら制度をどうこうしても、そういうルールづくりにリーダーシップを発揮できるわけがないと思います。ですから、どういう書き方がいいのかわかりませんけれども、政治家にしても、官僚にしても、対応体制なり能力、これが非常に大事だということがここでは非常に重要ではないかと思います。

 恐らく、先ほどF委員がおっしゃった検査官、これの能力というのも、ある意味では根っこは同じではないかと思います。7ページ以下の総理のリーダーシップというのも、これもある意味では同じことになってしまうのではないか。

 ちなみに、私は、ここで官僚システムを弁護するつもりはないのですけれども、仕組みの上では役所に権限があるのではなくて、権限はすべて法律上は大臣が持っているということですから、人事権も含めて、常にリーダーシップを発揮できる仕組みには今でもなっていると思っています。もともと役人は、定義からして保守的なものですから、それをどうするか、まさに政治家の問題である。これはここに書く話ではないかもわかりませんけれども、そのように思っています。それが1つです。

 それから、次の11ページから「創業・起業の促進」ということで、私はこれに異論はないのですが、ただ、全体の印象として、ハイテク大企業成長型というのか、例えばマイクロソフト、そういったタイプの企業を専ら念頭に置いているのではないか、そんなふうに私には読めてしまいます。むしろ、アメリカの例などを見ても、もっとローカルで、中小で、ある意味ではNPO型の企業というのがたくさん出てくるということが、経済全体の強さとか裾野の広がりには欠かせないだろうと思っています。ですから、そういうニュアンスをもうちょっと出してほしいと思います。

  それと、恐らくかかわってくるのだと思いますが、6ページのイ)の3)のところに、ここはちょっと別な話ではあるのでしょうが、「公共事業等による調達の透明性」云々と、「公共サービス提供における民間の役割拡大等の観点が特に重要である」、これ自体は私は全くそのとおりだと思いますが、そのときの「民間の役割」というのはここで何を意味するのかよくわかりませんが、私は、パブリックなサービス、あるいは半ばパブリックな事業というものを企業が行う。その場合の企業というのは、ひょっとしたら、ノンプロフィット的な色彩がかなり強い企業かもわからない。そういうものもひっくるめた意味でのベンチャー企業、そういうニュアンスが出てほしいと思います。それが2点目です。

 それから、情報通信ビッグバンについて、私はこの分野は全く音痴ですが、ただ、情報化というのか、いわゆる情報革命に伴って、日本にいながらにして金融取引から、モノの貿易から、様々なことができるようになってきているわけで、ある意味で民法とか商法とかいった基本的な制度が前提にしている世の中の仕組みが急速に変わりつつあるわけです。ですから、今の前提がほとんど変わってしまう可能性すらあるのではないか。ですから、個々の規制緩和も必要なわけですけれども、情報革命に伴って生じつつある、今までの社会制度を前提としたシステム総体の見直しというのが、こういうものは時間がかかりますから、かなり急いで対応しなければいけない。少なくとも、早く考えないといけないということではないかと思います。

 あと、細かい話ですけれども、7ページに「残される規制実施体制」として、「事前防止から事後チェック」というのがあります。これもそのとおりだと思いますけれども、ただ、事後チェックの「チェック体制の強化を計画的に進める」と書いてあるわけですけれども、事後チェック型というのは、コストにしても、人員にしても相当にかかる。それは、今の公務員の数を減らすというようなことに逆の動きにならざるを得ないわけですから、そういうことはどうなのか。それは現実問題としては念頭に置いておかないといけないことだろうと思います。

 もう一つだけ。大学院の話があったと思います。私の極めてわずかな経験からですけれども、大学院の充実と同時に、大学院を出た者を受け入れる社会なり企業の体制も必要ではないか。私も大学で少しばかり教えているわけですけれども、今ちょうど就職活動真っ盛りですが、大学院の学生も就職する学生の方が圧倒的に多いようですけれども、文系の大学院生はうちはいらないと最初から言うところがかなり大企業でも多いようです。以上です。

〔K委員〕

委員の先生方がそれぞれおっしゃったことで、C委員がPFIが効率が悪いと言われたことについて、私は、必ずしもそういうような考え方は持っていないので、何を根拠に言っておられるのか後で教えていただきたいと思います。

 それから、インターンシップ制を大学の場がやりたくないと言ったら、企業側は立つ瀬がないという感じがするので、このあたり、13ページのインターンシップ制で、大学がやりたくないということはどういう理由なのかを、またC委員、教えてください。

 それから、F委員が、いい物を長く使うということを言っておられましたけれども、私も大変賛成です。また、古い物に税金を安くするというのは非常にいいアイデアと思うのです。だけど、そこにリサイクルの方向というのがないと、長く使って、使ったその後がリサイクルできないということになってくると大変だなという感じがするわけで、そういうような観点はぜひ含んでおいていただければと思います。

 それから、全体的に言えば、今回のレポートというのは、正直に言いますと、今までの各メンバーの意見も取り入れられていて、全体的に以前よりも非常によくなっているという感じがします。特に規制が進まなかった理由なども指摘されていまして、私は非常に好感を持ったのでありますけれども、ただ、これは仮の文章なのでしょうね。誠に失礼な言い方かもしれませんけれども、はっきり言って文章になっていない文章という箇所はいっぱいあるのと、継ぎ接ぎをされたのではないかなというふうに思ったり、また、常識的にはとてもこういう文章は書かないのだけれどもという、そういう文章が散見されるわけです。極めて常識的なレベルで言っても、私にはちょっと納得のいかない文章があります。

 どこのページでも散見されるのですけれども、例えば、3ページなどでも、3の「環境と調和した循環型経済社会」の文を読んでいただいたら、「これから21世紀において環境と調和した経済社会の構築が重要な課題であることは論を待たない」、「これから」というのは不要ではないですかということです。「この観点からは、地球温暖化等の地球規模の問題から廃棄物処理等の国内レベルでの問題まで様々な課題が存在する。地球環境問題への対応については様々な課題が残されているものの」と、言ってみれば文章的に非常に、申しわけないですけれども、稚拙な展開がされているわけです。

 こういうのが随所に見られるから、結局、内容はいいものであっても、非常にわかりにくい、あるいは、訴求力がなくなってきているのではないかということで、これは仮の文章だというふうに私は理解していますので、最終的にもっとすっきりした、きっちりした文章にしていただけるのだろうと思っておりますので、この辺はこれ以上申し上げません。

 個別的に3点申し上げたいと思います。6ページの2)で、「公共関与の強さの程度を個別的及び総合的に示す数量的指標の枠組みを構築し、それに基づいて産業分野毎に主要先進国との国際比較を行い、規制改革を重点的に進めるべき分野を抽出する。」とあります。これはこれでいいのですけれども、どなたかの委員もおっしゃっていましたけれども、数値の比較をやって単に外国と合わせるといったやり方では不十分ではないか。外国より自由化を進めるといった戦略を取ることよって、9ページ以降に指摘されているような国際的なルールや基準を、いわゆる先頭を切って作っていくというような、そういう観点が必要ではないかということであります。

 8ページ、1)の税制のところで、法人税について触れられていないということは、意図的に触れられなかったのでしょうか。それとも、この文脈からこういうようなものは考える必要がないと思われて省かれているのか、その辺のことについて、私は入れた方がいいのではないかと思っているということであります。

 3番目ですけれども、これはC委員もおっしゃっておられた件で、13ページ、起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための教材の開発・普及、産業界と学校との人的交流の一層促進などを書かれているのですけれども、そういうことをやって、いわゆる起業家精神というものが育成できるのかというか、身に付けられるのか、教えられるのか。経営者というのは、そんなに教えられるのかという感じがするわけです。

 これは根本的に、教育問題というか、教育システムが問題だと思うのです。教育システムの問題。今の教育制度をどうするかというところを押さえておかないと、今の教育の流れに乗って教育を受けたきた人たちを、では起業家精神を植えつけましょうといっても、今の教育システム・教育環境の中ではなかなかこの精神を身に付けさせにくいのではないだろうかという感じがするということです。

 最後に1つ、できれば、こういうレポートというか、いろいろな政策とか、基本的な方針とか、実現したい項目というものがあるのですけれども、タイムスケジュール、いつまでどうなのだとか、あるいは5年以内にこうするとか、10年以内にこの問題はこうした方がいいとか、これは3年以内ですねというようなものが、一応のメドを立てていただくともっと迫力があるのではないだろうかと思います。

 E委員でしたか、わかりやすくというふうにキャッチフレーズ的なことをと、堺屋長官が言っておられたというようなことを言われましたけれども、いずれにしても、せっかくこういうようないい内容になってきて、この内容を外に訴えようというか、出していこうということであるとするならば、多くの人たちが読みやすく、そして、読んで感心してくれるような、「これはおもしろい、これはいいなぁ。こんなことを考えたらいいな」というような方向でまとめていただければ、我々も一生懸命部会に出席した甲斐があったというものではないだろうかと思います。

〔D委員〕

K委員がおっしゃったことを全面的にサポートするのですけれども、私、プリンストン大学におりましたときに、そこで短いペーパーを書いたときに、エディターに、単に英語を直してもらったのではなくて、いかに説得力のある、それで美しい文章を書くかということでものすごく勉強させてもらいました。エディターが全面的に書くわけです。日本は、そういうリライトの習慣はありませんけれども、せっかく最後のこういう大きな報告書ということになるのであれば、日本語の専門家にみてもらうということを、私は提案したいと思います。コストがかかるということで無理であれば、少なくともわかりやすい文章にする必要があります。

 これは先ほど申し上げませんでしたけれども、5ページに4つある○の文章も、日本語になっていないという感じがいたします。

 それと、こちらの方がより重要かもしれません。14ページ目、先ほどJ委員がおっしゃったことは全くそのとおりで、大学院は出たけれど、大学は出たけれど、さらに個人で職業訓練はしたけれど、その後どうなるの? というところでこういうふうに書いてあるわけです。「基本的な考え方」のところで、「主体的な能力開発」が必要です、「労働者の自発的な転職の円滑化のための環境整備」と書いてあるのですけれども、これに対応する具体策というのが、その後を見たのですけれども、書いてないような気がするのですけれども、これはどうなのでしょうか。つまり、この<具体的施策>のところを見ても、個人的にどういうことをやったらいいかということが書いてあるのです。ところが、雇用の流動化だとか、そういう話は出ていない。対応する部分がないような気がするのですが、いかがでしょうか。

〔事務局〕

労働者が自分の能力を高めるにどういう支援をするかということが書いてあるわけです。

〔D委員〕

最初の方で議論がありました経済戦略会議で出されたバウチャー制度で、いくら職業訓練してたとしても、50ぐらいの定年前の人がそういう職業訓練を受けても、その後どうするのというところの議論はありましたね。ですから、ぜひ環境整備を入れていただければと思います。

〔F委員〕

先ほどK委員から、教育の問題ではないかというご指摘があったわけですけれども、私、日本の初等教育とアメリカの中学以降の教育を受けていて、起業家精神に関して1つ教育の絡みであるとすれば、アメリカの教育というのはシステム全体を疑う教育なのです。したがって、このシステムは本当にいいのか、憲法を変えなければいけないのではないかというのを小学校からたたき込まれるわけであります。そうすると、そういう発想の人たちというのは、今の世界がすべての意味で一番いい世界だとは思わない人たちがたくさんいるわけですから、そういう人たちはビジネスチャンスを見つけてしまうのです。つまり、絶対にこういういいものがあるはずだという発想になってきますから、そういう人たちの中の何人かが起業家になっていく。

 日本の教育というのは、今のシステムが最高であって、とにかくそれに順応しなさいというシステムになっているものですから、これよりもっといい方法があるのではないのかという議論はなかなか出てこないわけです。そういう訓練はあまりされていない。それが、私は、開業率でこんなに差がついてしまった大きな部分ではないかという気がします。

 したがって、今のシステムが一番ではないのだ、もっといいものがあるはずだという議論を、教育の現場でできれば、また教育に限らず企業の中でもできれば、もっとおもしろいアイデアが出てくるのではないかという気がします。

 あと、物流に関しまして一言だけ付け加えさせていただきたいのですが、日本では輸入などをしてみますと、例えば、アメリカの内陸からサンフランシコスに物を持ってきて、そこから横浜港まで持っていく値段と、横浜から東京まで持ってくる値段がほとんど同じです。全世界で大体同じことになるのです。なぜ国内がそんなに高いのかというところは、もっと徹底的に議論していただいて、最低今の半分とか1/3に何とかならないか、どこがネックなのかという点はもっと議論ができないかなという気がします。

 例えば、日本は、USTRの交渉などでは、日本の関税は世界一低いのだということを盛んに言っているわけですけれども、実際、税関にはものすごい人がいて、例えば、成田空港を降りてもずらーっと待っている。大してチェックしないのですけれども、それでもそれだけの人がいる。実際の輸入の場合も同じで、関税率は低いのですけれども、この手続はものすごく高いです。結果として、それがドーンとオンされてしまって、物流コストを上げてしまっている。本当に、世界で一番低い関税率だということを強く打ち出すのであれば、そこももっと簡素化して、増やすのは検査官ではなくて、麻薬を取り締まる犬であるべきである、麻薬と武器さえ入ってこなければいいわけですから。これだけ関税率が低いということであれば、そういう発想の転換も必要ではないかという気がします。

〔C委員〕

まず、F委員がおっしゃったことは非常に重要なのですけれども、日本の産業構造が完全に抱え込みの状態になっているということです。全部自分のところで抱え込んでしまうという形なのです。雇用も当然、終身雇用制という形でそうなっている。

 スカイマークを立ち上げるときに一番困ったことは、すべての技術、すべてのノウハウ、それが全部3社に集中しているのです。しかし、それを壊していくことがベンチャーの役割だということも言えるわけです。

 そういう意味では、アメリカのベンチャーに比べて日本のベンチャーというのは、負っている役割がもっと厳しいのだと私は思います。そういう点で、ベンチャーというのはそれぐらいの意識でやってほしいというのが1つある。

 しかし、さはさりながら、その日本の構造というのは変えていくということも考えていかなければいけない。私は、必ずしも、抱え込みの構造が全部悪いとは思っていません。それはそれぞれの企業が、どちらがいいかを自分で選択する話だと思います。しかし、選択しようとしたときに、1つの方法しか選択できないような制度になっているのだったら、そこは改めるべきです。その1つしか選択できないような制度になっている原点のところに、公的規制が私はあると思います。同時に、その公的規制が、民民規制を作り出している。

 そういう点で、今のF委員の指摘されたことについての1つの解決策というのは、民民規制にもうちょっと力を入れて、せっかく民民規制の検討もやったことですので、取り上げて入れていただけないかということです。

〔部会長〕

どうもありがとうございました。

 まだいろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日の審議につきましては、ここまでとさせていただきます。ご意見は、事務局までどうぞご連絡をいただきたいと思います。

 最後に、部会長としての私見でございますけれども、K委員から文章の問題がございました。私も、ときどきはジェネレーションギャップかなと思うことが多いのですけれども、この場合も、複数の人たちが執筆しているということと、もう一つ基本的なのは、若い人の文章力という問題だろうと思います。

 私は、研究所におきましても、それから経済同友会におきましても、スタッフの出してくる文章は、初めは全部突き返すことにしているのですけれども、それで昨年から、岩波新書の「論文の書き方」とか、最近は大野晋さんの「日本語練習帳」、僕は自分の身銭でスタッフ全部に渡して、よく読んで勉強しておけというようなことをやっているのが実情でございます。これもジェネレーションギャップかなと思うのですけれども。

 文章につきましては、先ほど、「はじめに」というところは格調高くというお話がございましたけれども、これは「はじめに」ではなくて、全文をそういう方向で文章を練っていきたいと考えております。

 それでは、次回以降の日程につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。

〔事務局〕

お手元に資料3でお配りしておりますが、次回第8回は、5月25日(火)10時~12時、本日と同じ時間でございます。今日と違う部屋でございます、407号室でございます。

 大変恐縮でございますが、もう一回追加ということで、第9回、6月の中旬に、部会報告書の審議を予定しております。これはまた日程を調整させていただきます。よろしくお願いいたします。

〔部会長〕

それでは、第7回の構造改革推進部会の審議は以上にしたいと思います。

 本日は、長時間の真剣なご審議、誠にありがとうございました。次回以降もよろしくお願いいたします。

以上