経済審議会企画部会(第12回)議事録

時: 平成11年5月14 日

所: 共用第一特別会議室(404号室)

経済企画庁

経済審議会企画部会(第12回)議事次第

日時 平成11年5月14日(水) 16:00~18:00

場所: 共用第一特別会議室 (404号室)

  1. 開会
  2. 「中長期展望を行うに当たっての主要な論点」について
  3. 「地方シンポジウムの開催」について
  4. 「経済社会のあるべき姿を考えるにあたって」に関する国民及び海外からの意見について
  5. 閉会

(配布資料)

  1. 資料1   企画部会委員名簿
  2. 資料2   地方シンポジウムの開催
  3. 資料3-1  「経済社会のあるべき姿を考えるにあたって」に関する国民からの意見
  4. 資料3-2 「経済社会のあるべき姿を考えるにあたって」に関する海外からの意見

経済審議会企画部会委員名簿

部会長

小林 陽太郎
富士ゼロックス(株)代表取締役会長

部会長代理

香西 泰
(社)日本経済研究センター会長

委員

跡田 直澄
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

荒木 襄
日本損害保険協会専務理事

伊藤 進一郎
住友電気工業(株)代表取締役専務

角道 謙一
農林中央金庫理事長

小島 明
(株)日本経済新聞社論説主幹

小長 啓一
アラビア石油(株)取締役社長

佐々波 楊子
明海大学経済学部教授

ポール・シェアード
ベアリング投信(株)ステラテジスト

嶌 信彦
ジャーナリスト

高橋 進
(財)建設経済研究所理事長

長岡 實
東京証券取引所正会員協会顧問,日本たばこ産業(株)顧問

中西 真彦
ベンカン(株)会長

那須 翔
東京電力(株)取締役会長

樋口 美雄
慶応義塾大学商学部教授

星野 進保
総合研究開発機構理事長

堀 紘一
ボストン・コンサルティング・グループ社長

松井 孝典
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

水口 弘一
(株)野村総合研究所顧問

村田 良平
(株)三和銀行特別顧問,外務省顧問

八代 尚宏
上智大学国際関係研究所教授

吉井 毅
新日本製鐡(株)代表取締役副社長

吉川 洋
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

鷲尾 悦也
日本労働組合総連合会会長

特別委員

岩城 秀裕
(株)野村総合研究所経済構造研究室長

大野 直志
日本開発銀行国際部副長

大前 孝太郎
経済戦略会議事務局主幹

金光 隆志
ボストン・コンサルティング・グループ プロジェクトマネジャー

出席者

(部会)
  • 小林陽太郎部会長、

    荒木襄、角道謙一、佐々波楊子、ポール・シェアード、高橋進、長岡實、中西真彦、樋口美雄、水口弘一、村田良平、八代尚宏、の各委員、岩城秀裕、大野直志、大前孝太郎、金光隆志の各特別委員

(事務局)
  • 塩谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、荒井計画官、渡辺電源開発官、染川計画官、林部計画官、塚原計画官、青木計画官、安井計画官、佐々木計画官、佐久間計画官、涌野計画企画官、岩瀬計画企画官、福島経済構造調整推進室長他


〔部会長〕

ただいまから、第12回の企画部会を開催させていただきます。

本日は、委員の皆様にはご多忙中のところをお集まりいただきましてありがとうございます。

本日の議題は、「中長期展望を行うに当たっての主要な論点」につきまして、ご審議いただきたいと思います。なお、本議題に関する資料につきましては暫定的な試算が入っているところもありますので、委員限りということで、会議後回収させていただきます。

それでは、事務局お願いします。

〔事務局〕

「中長期展望を行うに当たっての主要な論点」について、事務局よりご説明いたします。

全体にこうなるということを主張するつもりは事務局として毛頭ございませんで、この部会の議論の1つのたたき台としてご説明させていただきました。

〔部会長〕

ありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からの説明について、ご意見をお伺いします。

〔A委員〕

少し全体的な議論ですが、スケルトンの方も、場合によれば基本的にもう少し組み替えていただきたいと思う点もあるのです。

今日の議論に大いに関係するのですけれども、僕は、今日本が置かれている状況の下で、マクロ経済を加重平均的に展望して、例えば、関東は豪雨になっている、関西は干ばつだ、ところがこれを加重平均を取ると適度な雨量で非常にいい状況だというようなことが出るわけです。そういうような統計の取り方がずっと書いてありますけれども、そこのところは、私はちょっと問題意識を持っています。

スケルトンの方も関係するのですが、「あるべき姿」論のところで、多様な知価社会への移行とか、夢を持てる社会とか、いろいろなことを文明論的なところが非常に多いですけれども、今、経済社会で起こっている最も劇的な事件は、第3次産業革命と言われて、いわゆるIT革命です、インフォメーションテクノロジー、情報技術の大きな改革が進んでいる。世界的な規模でこれが進んでいる。だから、ここのところを議論しなければいけないわけだから、私は、まず、日本の経済構造を論ずる場合のパラダイムを大きく、今までの20世紀の在来型の産業と、今後21世紀をにらんだ情報技術産業、電子情報通信産業、そういうものに代表されるような、ニューエコノミーの分野と、大きく2つに分けて分析もするし、またそれに対する統計もとるし、その対策も考えていくということにすべきではなかろうかと思っています。

民需の回復が果たしてどこまで進んでいるのか、起こっているのかどうかという設問があるのですが、紛れもなく、既に携帯電話とか、アニメーションとか、ゲームソフトとか、パソコンとか、情報技術関連のいわゆるニューエコノミー分野は、消費も、投資も外需もいずれも確実に動き出しています。ですが、在来型のオールドエコノミーの、鉄鋼で代表される装置産業分野は、今、競争力会議で議論されていますが、大変なことで、私は、おいそれと簡単に1年や2年では解決がつかないだろう、5年や6年のスパンがかかるのではないかと思います。これは設備投資の進捗度が全然違うということです。

私、ほかのところで、競争力会議の行き方に対して、この間、通産省の方にもそれを申し上げましたけれども、それはメディアの書き方が悪いのかもわからないけれども、設備の廃却、デフレギャップ、その調整の方に力点が置かれて、本来、雇用の受皿にもなるべき新しい産業分野の創出、そこのところに力点を置くべきではないかと。

そもそもレーガン政権で競争力会議をやったときは、ヒューレッド・パッカードですか、そこの社長か会長を持ってきて、これは新規分野の産業の代表です。決してそれはアメリカの鉄鋼会社の代表でもなければ、GEの代表でもなかったわけです。そこのところに力点を説いて、新規産業を創出するというところが第1の一枚看板であって、その下に諸々の商法を改正したり、税制を改正したり、そして設備の廃却や在来型の調整をやる、こうなっていたのです。

日本は今、鉄鋼に代表される設備廃却の方が前面に出て、この間、通産の人に聞いたら、これから徐々に後の方で新産業創出もやるとおっしゃっているけれども、私は、一歩譲っても、これはパラレルにやるべきだし、新規産業の創出の方が大事ではないかと思います。

今日いただいた紙を読んでいますと、3ページに、要するに資本ストックの調整をいかに長期化させないで、いかに早く処理するかということのポイントは、「必要な調整それ事態を早めることによって実現できるほか、新しい事業活動を促進することによっても可能である。すなわち、新しい事業活動が拡大し関連した設備需要の増加が従来分野での需要減少を上回るようになれば、設備需要の総額は回復に向かい、経済全体としてはみればストック調整の期間が短縮されることになる。」と書いておられるとおりです。

したがって、10年後の「あるべき姿」のスケルトンは、ぜひとも力点を情報技術革命、第三次産業革命というのがまさに世界経済の社会の中で起こっているのですから、これをキーワードとして中核に据えて議論していく。

それから、フレームの問題なども、前回の質問にありましたけれども、在来型の指標をやるのではなくて、マクロフレームに関しても、本来オールドエコノミーからニューエコノミーに対してどの程度の労働人口の移動があったとか、新規株式公開の数はニューエコノミーに関しては対前年比でこれだけ伸びている、オールドエコノミーの分野はこの程度しか公開されていないとか、在来型の製造業とか商業とかいうことよりも、こういう分け方で指標が括られてはいかがかと私は思っております。

そして、新起業を誘発するような制度改革の環境整備ということに数ページ費やしてもいいほどの重要な課題があると思っています。

〔部会長〕

ほかのご意見もあると思いますが、できれば関連でいただきたいと思います。

1つは、ここに出ている数字とか、あるいはその扱い方が、今、A委員がおっしゃった、中身が例えば二極化しているというか、それを平均的な数字で扱っている、そういう問題があるのかないのか。仮にそうだとして、特に二極化しているうちの、A委員がおっしゃった、IT産業であるか、トップの部分の現実というのは成長であったり、稼働率であったり、利益率であったり、あるいは雇用について、こういう現実が果たして出ているのか出てないのか。

これは、どこの段階で、こういうふうになっていますという数字は今既にあるのか、あるいは数字はないけれども、大体の状況について事務局からお話ができるのかどうか。

3番目、新市場の創出、これはA委員がおっしゃることに同意される方も非常に多いと思います。現実に競争力強化会議でその問題も出て、当面、供給サイドについての手を打つということについて経団連がまとめていますが、特に、サービス産業を中心に新しい市場をつくるという部分については、経団連と同友会で別に分業しているわけではないですが、牛尾治朗前代表幹事からも非常に強い発言もあって、6月のしかるべき時点までに、そこを中心にかなり具体的な法律の裏づけなども作った案を、同友会から牛尾さんを通じて、競争力強化会議に出そうではないかと、そこで議論していただこう、そういうふうに進んでいます。それをここでどのくらい扱うかということ、これはまた皆さんのご意見をいただきたいと思います。

最初のところはどうですか、加重かどうかは別にして、いいやつも悪いやつも、伸びているのもそうでないのも、一緒くたになって平均的な数字として扱っているという危険があるのではないかというお話だったと思いますが。

〔事務局〕

その点ですけれども、確かに、そういうご指摘は当たっていると思います。前回、95年に作りました計画のときは、マクロフレームと別に「7つの成長分野」というのを特定しまして、それぞれの分野においてどれだけ生産が伸びるか、あるいはどれだけ雇用が吸収されるかというのを別途示しております。

こういうマクロのフレームワークとしては、そういうものが全体のGDPなり就業者の中に埋没された形でビビットに現れないという問題がございまして、その点は、このマクロフレームの問題とは別に、今回の「あるべき姿」の中でどのように示したらいいかというのは検討をしていきたいと思っております。

それに関しまして、1点だけ補足をさせていただきますと、産業分類の問題といいましょうか、新しい分野というのが全く新しい分野で起こっていれば、それはそれで把握できるのですけれども、いろいろな分野で情報技術の活用というようなことが行われた場合に、そういうものをどのように特計して、古い・新しいというふうに分けるかという、これは技術的になりますけれども、そういう問題もあろうかと思っております。

〔部会長〕

ついでに、「7つの成長分野」については、その後、経企庁でフォローしているのですか、どうなっているか。それから、それぞれのトータルでGDPの中に占める、あるいはGDPの中のどこかのセクターに占めるウェイトは上がっているのか、下がっているのか、ニュートラルなのか。

〔事務局〕

担当ではないので、適切なお答えかどうかわかりませんけれども、その後、15分野の構造改革のアクションプログラムというのが閣議決定されまして、そちらの方に吸収される形でフォロー・アップが行われていると理解しております。

〔部会長〕

結果的に、その成長分野そのものが成長しているのか、ウェイトが上がっているのか、下がっているのか、変わっていないのかという答えはどこにあるわけですか。

〔事務局〕

私どもとして、「7つの成長分野」について直接的な数字をフォローするということはやっていないようでございます。

〔部会長〕

それは政府のどこでやっているわけですか。

〔事務局〕

私自身、承知をしておりません。申しわけありません。

〔部会長〕

これは正確にお願いします。「7つの成長分野」をやった意味がなくなくってしまうと思うので、どこかにあるはずだと思いますし。

〔B委員〕

今のご発言と関連するのですけれども、2010年度までのマクロ経済試案に関連して申し上げますと、自律的というので、恐らく日本国内でのいわゆる資本ストックの現状であるとか、過剰ということが主体になっているのだと思います。それはそれとしまして、整合性で気になりますのは、例えば、ここで不良債権の問題が非常に重要である。それはともかくとして、そういったものが処理された後(処理という言葉が適当なのかどうかよくわからないですけれども)、つまり、その後に言われている間接金融から直接金融へのシフトというものが出てきて、地価の重要性というのは、現在の体制では非常に重要ではあるけれども、本当にエマージングインダストリーというところに資金配分が行くような体制に移っていくのか。

もう一つ気になりますのは、今回の97年からの不況につきましては、アジアの通貨危機というのが日本経済の非常に大きな要因となっておりました。そこに対する考え方も、最近の株式市況その他はアジア経済の方が早くも回復軌道に乗ったというような側面があるようです。そうしますと、後ろの方の経常収支のところとの整合性ですけれども、これをGDPで依然としてプラスの経常収支黒字を続けていくということは、かなり外に重要な力点のかかった予測のように思われのですけれども、こういう形にした場合に、アジアの長期的な回復をどこに組み込んでいくのか。

それから、企業の多国籍化というのがこれだけ言われている中で、間接金融から直接金融へという動きが、こういうエマージングな国々との関連と、既にグローバリゼーションということでつながっていくということでないと、この経常収支のところのバランスが何かおかしいように思うのです。

もう一つ関連で申しますと、自律的な成長と言いながら、例えば労働力にしましても、何か新しい動きが出てきているのか。例えば、外国人労働力というようなことを言いましても、知識集約的な、知識それ自体もインディビジュアルだけでやっていくのは無理な時代になっているのではないかと私自身は思っておりますので、そういうものを受け入れた中での自律でないと、読んだ感じでは、ちまちまと国内でやっていくのだよというメッセージしか伝わらないのです。もう少し関連がないと、2010年に明るい展望が持てないという力点をお出しいただければと思います。

〔事務局〕

ごもっともなご指摘だと思いますが、1点、経常収支の黒字についてですが、私ども、経常収支の大幅な黒字が続くという点について、果たしてこういうことでいいのかどうか。あるいは推計上のテクニカルな点も含めて検討してみたわけですけれども、経常収支黒字の主体がだんだんと要素所得の受取ということで、過去に蓄積をした黒字、それから現在も米国の国債の利回りでそれが積み重なっていくということで、財収支の黒字が縮小していったとしても、経常収支の黒字が大幅なものが残るということになっております。これがもしそうでないとすると、財収支の黒字がむしろ赤字化するなり、もっと早く均衡に向こう、経常収支黒字の縮小というものは起こるだろうと思うのです。2010年という時点までにそういうことが起こるのか、あるいは日本が高齢化をして、貯蓄率が低下をするということはもう少し先まで続く現象として見られるのだとすると、2010年までには起こらないけれども、その後においては、今、B委員が指摘されたような方向に行くのか、2010年という時点でどうなのかということは、私どもはちょっと気になっております。

方向として、おっしゃっていることは非常によくわかるのですけれども。2010年までに経常収支が縮小していくということが描けるかどうか。

〔C委員〕

水を差すような話で恐縮です。僕は個人的には、ここで出されている大体の見通しは納得するところがあるわけですけれども、ただ、1つ、例えば新しい時代に向かって「知の時代である」とかいろいろなことが言われるわけですが、その場合に、かつての議論で成長率というもののウェイトをどのくらいに置くかという議論があったわけです。ところが、中期展望ということになると、全部成長率ということになってきて、21世紀へ入るとこの成長率でいきますよ、と。それが景気回復=成長率がプラスになることだという考え方は、従来的な発想と全く同じである。あるいは、もちろんいろいろなモデルを使ってやればそういうことになってしまう。ではおまえのところはどうかと言われると、私の方も、今日はG委員が来ておりますけれども、同じようなことをやっているわけです。

何かそこを乗り越えてやっていく、A委員からはニューエコノミー論とかいろいろありましたけれども、そうしないと一般に世界あるいは国民にもよく理解されるか。新しいものが始まったな、ということがなかなかできないのではないかという懸念を非常に持っているというのが1つです。

第2点は、民需中心の自律的回復へという場合、特に経済審議会のこの委員の中でも、全員が「経済見通しはこうなるよ」ということは、まずあり得ないと思うのです。幅が出てくる。そういう場合に、こういうような意見があるから、では政府としてはどういうことをやっていくということを相当中心にしてやっていく。そうすれば、民間もどんどん出てくる、というような格好が必要ではないかと考えますので、そういう問題提起だけをしておきたいと思います。

〔D委員〕

今のご発言と関連して、1つは、マクロ経済の姿を描く場合に、こういう1つだけ無条件予測みたいな形で出していいのだろうかどうかというところです。

例えば、2010年までの実質GDPのような1つの数字だけが出ているわけです。恐らく、いろいろな政策のとり方によって、これが高くなる場合もあれば、場合によってはゼロで終わってしまう場合もあるわけで、こういう数字を出すときの意義というのをもう少し考えた方がいいのではないだろうか。

こういう数字を出してくるからには、かなり外生変数をいろいろ条件を与えていると思うのです。その下においてこういう数字が出てきているわけで、その外生変数で、例えば財政支出をどういうふうに考えたのか、そういうものなしにこういう数字だけを出してもあまり意味がないのではないかと思うのです。

この審議会の最初の頃、前回の予測がなぜ外れたのかというような議論をしたと思うのです。そのときに、モデルのせいなのか、それとも外生変数セットのせいなのか、与え方を間違ったのかというような議論があったわけで、今回、それを活かした形でやるべきではないかと思うのです。

例えば、財政支出をこうしたら成長率にはこういう影響がありますとかいう形で、それぞれ大きな政策についていくつか考えた場合に、こういう政策がうまく実行できればこうなるのだ、そういう形での条件付きの予測といいますか、条件付きの形で提示するというようなこともぜひ必要であって、その場合に政府の役割とは一体何だろうかということを、むしろ国民に問いかけていくということでも、ぜひそれが必要になってくるのではないかと私は思っております。

〔E委員〕

今までのご発言に関しては、ほとんど同感です。付け加えますと、自律的回復という切り口がやや古いような感じがします。95年の9月、日銀が公定歩合を50ベーシスまで引き下げたときに、ではいつまでそういう政策をとるのか、事実的な回復が確認できるまで続けるというような話だったのですけれども、そこから3年半も経過して、自律的回復がいつできるかというような観点からの議論は、少しおかしいという気がします。

先ほど発言がありましたが、どういう政策をどういう組み合わせて出すのかによって、いつ回復できるのかというのがかなり変わってくるのです。ですから、自律的回復よりも、例えば、どうやってバブル後の処理をするのか、これが1つの課題です。それから、構造改革、これをどういうふうに図るのかというのも、もう一つの観点です。

ですから、今、その中で、例えば循環論的な考え方でそれを支えるという観点が重要かと思います。

今までは、日本の場合は、政策的なポリシーミックスで整合性がとれていなかったのですが、これからはそういう必要性が非常に高いという気がします。

ここでは要件が出されています。全然異議はないですが、全部お互いが補完的な関係であるわけですから、整合性のとれたアプローチが必要だと思います。

簡単に言いますと、バブル後の話をきちんとやらなければいけない。ただ、これをやるときに、将来のビッグバンとか構造改革につなげていくような形で図るべきだという気が私はします。例えば、不良債権問題という関連で考えますと、ここで不良債権処理と貸し渋りの解消という名目で出ていますが、ご存じのように、不良債権処理を図ると貸し渋りが悪化するという、必然的な関係にあるわけです。むしろ、貸し渋りは、ビッグバンを中心とする構造改革を図る以上は、一種の調整コストとして貸し渋り現象が出てくるというわけです。ですから、そういう貸し渋り現象が出てきたときに、慌てて、そういうふうにならないように政策的に頑張るということは、むしろ構造改革に関して待ったをかけるという矛盾だらけの話になってしまうのではないかという気がします。

ですから、とりとめのない話になってしまったのですが、自律的回復という観点よりも、構造改革、例えば、先ほどのA委員のご発言の中にあったように、規制緩和をやって新しい成長分野が成長できるような環境をつくる、これが1つの意図ですけれども、これをどうふうに構造改革、それから日本の将来が開けてくるような前向きな話がどういうふうに出てくるのか、という方に力点を置いた方がいいのではないかという気がいたします。

〔F委員〕

3点ほどコメントしたいと思います。

1つは、経済成長の予測をするときに一番大きな鍵になるのは、TFP、技術進歩ですが、ここでは技術進歩について、80年代プラス・アルファというかなり強めの前提を置いていますが、その根拠はというか、どういう条件のときにこういうことが実現できるのか。今、E委員がおっしゃったように、それはかなりの構造改革、規制緩和的なものを前提にしていると思いますけれども、仮にそうでなかったとしたらどうなるか。

D委員がおっしゃいましたけれども、外生変数を、少なくとも今何を想定しているのかということを明示してもらわないと、これが妥当かどうかというのはちょっと判断がつきかねるというのが1つです。

失業率についても、ここでは専ら供給源と需要だけを考えているのですが(需要というか、成長だけでみているのですが)、2010年までの長い期間をとれば、賃金調整ということも考えなければいけないので、これも労働市場の構造改革ですけれども、それが進むことによってその影響はかなりあるのではないか。計算できなければ、定性的な面でも結構ですけれども、少なくとも、全くこういう賃金構造に変化がない前提とすればこういうことになるよ、というような注釈をぜひ付けていただいて、仮にそれが進めばもっと早く需給は調整できる、そういうようなことが2番目です。

3番目は、これもD委員がおっしゃったことと同じですが、財政の姿が数字で、私の見る限りどこにもあらわれていない。どこにも数字がないのですが、本当にそれでいいのかどうか。今一番問題は、財政再建と景気の維持のトレードオフでありますから、その重要なトレードオフの一方を、後で回収する資料にすら書いてないということは、要するに今後全く出てこないということを意味するので、それでいいのかどうかということです。ぜひ事務局にお答えいただきたいと思います。

もう一つの大きな争点は、ここにわずか書いてあることについても、大幅な赤字はプライマリー・バランスで残るというところですが、それは収斂するということを意味するのかどうか。例え大幅な赤字でも、2010年までにGNPに対する財政赤字の比率が収斂するのならそれはそれで結構な話ですが、今の心配は、発散するのではないかということです。どういう条件の下に収斂するのか、どういう条件なら発散するのかということは、ある数字である程度まで計算できる話ですから、そこが鍵になるので、財政ということをできるだけオープンにしなければ客観的な議論はできない。過去もそれで失敗して、D委員もおっしゃいましたけれども、過去の政策で一番誤った外生変数は財政であるわけですから、そこをまた同じことを繰り返さないようにする必要があると思います。

〔G委員〕

まず、TFPについて、ここでも書いてございますが、前提の経済構造改革がどのくらい大胆に実施されるかということによってかなり左右されると考えております。実際、経済構造改革を大胆にやった方がTFPが上がるというふうには私も思っているのですが、そうしますと、どうしても失業と関係がありまして、失業率の方が高めになってしまうのではないか。そうしますと、ここで出ています失業率ですけれども、足元よりも低くなっていまして、その点、構造改革の大胆さと、失業の低下ということでうまくいくのかという感じを持っています。

もう一つは、投資ですけれども、資本ストックの伸び率が何%になったときに反転するとかいうのはあまり説得力がないのではないかと思います。といいますのは、最近、情報化投資が劇的に増えております。情報化投資の激増による資本係数の上昇というのはかなり見逃せないものですから、長期的に見て、この資本係数というのは情報バイアスをもってもう少し投資が出る、逆のリスクもあるかなというふうに思っておりまして、この寄与度で言いますと、TFPは若干楽観的のように感じますけれども、資本の寄与に関しては少し堅めではないか。トータルとしてはそんなに違和感はないのですが、ただし、前提条件、構造改革であるとか、ほかの世界・日本以外の国の様子とか、そういったところの前提がはっきりわからないので、それだけでぽっとこういうふうに出すのは、もう一つ説得性がほしいというふうに思っております。

〔部会長〕

いただいたコメントについて、事務局からお答えしますか。

〔事務局〕

1点だけ、「7分野」の話の事実関係だけをご説明させていただきます。

「7分野」の成長期待分野というのは、平成7年の12月に、当時の「自由で活力ある経済部会」という部会がございまして、そこで参考資料として試算をしたものであります。マクロの前提などは、前回の計画を踏まえて産業連関表等を使って、なかなかその統計データはないわけですけれども、かなり無理無理試算をして、参考資料という形でお示ししたものでございます。

その後、こういう分野が成長期待分野が重要だということで、政府全体としまして、2年後の平成9年に「15分野の行動計画」を作りましょうということで、もう一度施策をさらに盛り込んだ形で、2010年までの市場規模ですとか、それから労働力というものを計算して、これは政府全体で閣議決定したものを実は作っております。このフォロー・アップは毎年行っておりまして、3月にも第2回目のフォロー・アップを行ったというのが基礎となっております。

ちなみに「7分野」の過去にやった試算でございますが、あるところからコメントがありまして、医療・福祉などの数字はどうなのですかという話もあって、当時のやり方をできるだけ忠実にフォロー・アップしてみたのですが、前提になりますマクロの数字がかなり変わっておりますから、この当時の推計はかなり過大に現時点ではなっているというものでございます。

〔部会長〕

実際には、そのフォローをして今つかまえている数字では、もともと成長分野とみなした「7つの分野」とかその後の「15分野」とか、そういったものが本当に成長して、程度の問題は別にして、リソースがそちらに集中した結果、全体の経済の押し上げ効果もそっちの方がかなり顕著に出ている。平均的によくないのは、そのほかのところが極めて悪いからだ、そういう数字というのは非常にはっきり出ているのですか。

〔事務局〕

まだ「15分野」ができて2年目なものですから、2年目のフォロー・アップとしてのことは行っておりますけれども、数字的なフォローとしての形では特に行っておりません。

〔部会長〕

これは経企庁でやることになっているわけですか。それはどこでやるのですか。

〔事務局〕

通産省と、あと関係各省が集まりまして「15分野」それぞれに部会をつくっておりまして、そこでいろいろな計算等をやっております。

〔部会長〕

これはまた少しフォローして。非常に重要な問題で、成長分野だとみなした分野は本当に成長分野であったのかどうか、かなりきちんとリソースがそちらに集中して効果が上がっているのかどうか、これはきちんとある程度見通しを立てておかないと、これからやるものにもかなり影響がありますので。

引き続き皆さんからご意見をいただきますが、先ほどの後半の方で、C委員、D委員、E委員、F委員、G委員から、ご意見あるいはご質問が出た中でいくつか事務局の方でお答えいただけるものについては、最初のところでお答えください。

〔事務局〕

それぞれ重要な論点で、同意する点も多いのでちょっと答えにくいのですけれども、成長率重視でいいかどうか、C委員のご指摘ですが、今回の「あるべき姿」というものに何を求めるかという議論との関係で非常に本質的だと私は思っておりますけれども、私どもでこういう中長期展望を、マクロの伝統的なスタイルでやらせていただいたというのは、最初にもちょっと申し上げたのですけれども、「あるべき姿」あるいは「望ましい姿」という将来の姿から現実に戻ってくるという経路と同時に、現状の非常に大幅ないろいろな面での不均衡を抱えた中で将来をどう展望するか、という2つの方法があって、現実との接点というのを考えずに将来を描くということもまたできないだろうということで、1つの手法として、現実から出発してみるということがあるのではないか。その際に、成長率という言葉自身は非常に古めかしいといいましょうか、物質文明の権化みたいな言葉ではあるのですけれども、ある意味で、成長率という言葉は、それぞれの家計の所得というものとも非常に密接な関係がありますし、あるいは現在非常に社会的にも問題になっています失業、あるいは先ほど来ご議論いただいています対外的なバランスあるいは財政赤字というものとも非常に密接な関係があるわけです。そのほかにも、行政需要としまして、経済活動の姿というものがエネルギーの需給見通しですとか、地球温暖化防止計画ですとか、あるいは雇用計画、そういうものと非常に密接なリンクがあるということで、成長率を最も重視してということではないわけですけれども、非常に重要な1つの指標としてマクロの姿というものも議論しなければいけないかということで今回、あえて数字で示させていただいたわけでございます。

D委員の、前提条件付きで提示すべきということは、まさにそのとおりです。今回特に前提条件というのをお配りいたしませんでしたけれども、基本的な政策の想定としては、ある程度の財政再建といいましょうか、政府の投資なり政府の最終支出というものを景気回復が確実になってきた時点で抑制するということを前提に、今回の計算をしてございます。

それに関しましていろいろご議論があると思うのですけれども、なぜそういうものを明示的に前提条件として、例えば紙にして皆さんにお示ししていないかということですけれども、非常に不確定要因といいましょうか、財政にしましても今後の財政の(財政構造改革法が凍結になっているわけですけれども)どういう姿を仮定すべきなのか、それから公的年金制度の将来像についてはどういうものを仮定として取り入れるべきかという点について、まだ内部的にもどういう仮定が一番いいかということを想定しきれていないということでございます。そうはいっても、今回示した数字の背景には何らかの仮定はあるわけですけれども、それは先ほど申し上げましたような、景気回復が確実になって以降、抑制ぎみの支出政策を行うということで、税制については変更していないということでございます。

それに関連して、F委員のコメントを先に取り上げたいと思うのですけれども、財政についての数字でございますけれども、そういう非常に不確定な段階の数字なので、図表という形ではお示ししてございません。着実に低下していくという1つの理由は、景気回復を見込んでいるということ、もう一つは、景気回復が着実になった後、財政支出を抑制ぎみに仮定を置いているということでございます。これは、あくまでも機械的な計算でございまして、限定条件の置き方によって、かなり変わりうるということで、図表という形ではあえてお示しをしなかったわけでございます。

この点につきましては、どういう形でこのマクロのフレームというものを「あるべき姿」の中に入れていくかという最終的な議論ともあわせて、財政についてどういう示し方をするのかという点について、さらに検討させていただきたいと思っております。

それとの関係で非常に気にしておりますのは、公共投資基本計画のような閣議決定されているものが既にあるとか、そういうものをどの程度制約として我々は考えなければいけないのかということもございます。

それから、TFPの問題について、F委員、G委員にコメントをいただきましたけれども、TFPの見方は、私どもも、実は昨年6月の展望部会の報告書以降ずっと苦しんでいるところでございまして、将来のTFPというのは何か説得的な示し方ができるかということで、いろいろな技術でありますとか、R&D投資との関係というようなことで勉強させていただいたわけですが、これといって必ず人を説得できる材料というのがなかなかなくて、先ほど申し上げたような、80年代プラス・アルファというような説明、あるいは同じようなことというのは、諸外国の比較でも90年代のアメリカ、あるいはヨーロッパの主要先進国のTFPの計測からも大体1ぐらいということは、相場と言うと非常に語弊がありますけれども、かなりコンセンサスがあるのではないか。

F委員からはかなり強いというご批判をいただきましたけれども、日経センターの2025年までの予測ですと 1.5と置かれていますし、特に私どもが非常に強い見方を意図的に取っているということではないというふうに思います。

この点については、G委員の情報化投資との点も含めまして、何か分析的といいましょうか、教えていただければ、私どもでまた勉強してやりたいと思います。

情報化投資に関連して言うと、情報化投資というのは、資本ストック調整というものの対象外といいましょうか、そういう点があって、過去の蓄積と新規投資との関係がないということもわかりますし、情報化投資の償却率が非常に高いのではないかということも一般に言われているわけです。それが将来どの程度見込まれて、それが資本ストックなりTFPに影響を与えるかということも、これも予め決めるということがなかなかできなくて、先ほどのTFPをR&D投資で説明するというのも、それなりに説明力のある結果が得られているという、そういう研究例もあるわけで、それではR&D投資というのは何で決まってくるのかということになると、これがまた難しい面がありまして、説明としては、先ほど申し上げた非常に粗いといいましょうか、あたかも簡単に置いているような説明になってしまったということですが、そこはご了解いただきたいと思います。

それから、F委員の、財政が発散しているか収斂しているかということですけれども、どっちともつかない形に、債務残高のGDP比でみますとかなり上昇テンポが鈍ってきますが、2010年までは縮小するという傾向までは出てきておりません。これについても、今の段階で暫定的なことを申し上げるのを控えたわけですが、金利の想定あるいは将来の物価の想定にかなり依存しているところがございまして、今の想定でいきますと、先ほど申し上げたような、2010年までは増加を続けるけれども、発散傾向とも、収斂傾向ともとれない、やや安定化傾向が出ているかなというぐらいのことしか言えなくて、これはもう少し想定の差によってどのくらい変わるかということ、それから、先ほどの財政の前提の置き方も含めて、今後検討させていただきたいと思っております。

F委員の、失業が賃金調整に依存するということはまさにそのとおりで、これは一番最初に申し上げたことと非常に関連するのですが、将来の望ましい姿を描くということからいいますと、私どもは、今回使ったような手法とは別に、供給サイドを重視したようなモデルで、いずれは市場の力で不均衡が調整される、賃金が調整されて、需給要因による失業というのは遠い将来は考えなくていいということも1つ、将来の描き方としてあると思うのです。その場合のインプリケーションとしては、賃金格差が広がることは許容されるべきだとか、そのようなインプリケーションがあると思うのですけれども、今の2010年という足元の大幅な失業率ということを考えて、それが今後、賃金調整がどの程度見込まれるのか、過去から比べると賃金調整が行われる度合いというのは高まるのだろうと思います。それが失業率を低下させる方向に働くのだろうとは思いますけれども、そこのところが、過去の特に失業の上昇とか賃金の感応度が高くなっているということは、97年の末以降のかなり新しい現象なので、それがどの程度将来に向けてトレンドとして考えうるのかどうかということは、労働省の方でも雇用基本計画の策定作業に入っているようですので、もう少し作業を続けて考えたいと思っております。

簡単ですけれども、以上です。何か抜けている点がありましたら、またご指摘いただきたいと思います。

〔部会長〕

また、ご意見をお願いいたします。

〔H委員〕

初歩的な質問を2つさせていただきたいのです。1つは、最後のチャートの財貨・サービスの純輸出云々というところで、1998年から2003年ぐらいまでは、大体似たようなテンポでGNP比が下がっていく。2004年から2010年まではほぼ水平になっているわけですが、日本の輸出及び輸入が将来どれだけ増えるかというようなことを十分計算された上でこのようなことになっているのかどうか。特に2004年からの見通し、この辺の根拠を教えていただきたいということです。

それから、このペーパー全体について言えることでありますけれども、外的な要件といいますか、世界経済の動向がこれからどう動くかということが盛り込まれているかいないのか。盛り込まれているとすれば、アメリカ経済が今のような調子であることは絶対にあり得ないわけですし、お隣の中国を見ても、たぶん今の3年間の朱鎔基の政策は失敗すると思いますが、そういう非常に大きな不確定要因というのがあるので、その辺は一応査収した作業かどうかということを教えていただきたいと思います。

〔C委員〕

私は意見でなくて、追加コメントです。特に成長率の第2番目に、政府の役割ということを申し上げたときに、表現がやさしい言葉で言ったものですから理解がされなかったと思うといけませんので、あとでD委員とF委員がずいぶんときちっとやっていただきましたが、まさに同じことで、景気回復を確実にするための政策というところですが、これが当面は非常に重要な問題です。そこが、「必要があろう」、それから、「政策が必要になろう」、全部が「必要になろう」。これは政府自身の問題でありますので、もうちょっと力強くやってください。

また、このレポートが出る頃というのは、恐らく金融財政面でどうするかということが非常に重要な問題になっているときだと思いますので、そういう意味で、政府の役割、政策問題を中心にということを申し上げたいと思います。それだけ追加コメントしておきます。

〔部会長〕

今のC委員がおっしゃったことについて、事前にいろいろなお話をしたときに、この間、総理がアメリカにいらしたとき、その前に大蔵大臣がアメリカにいらしたときも、具体的には補正予算をやるのかやらないのかと。もちろん、宮澤大蔵大臣然は、当然立場上「ノー」とおっしゃる。少なくとも新聞報道によれば、僕はそこにいたわけではありませんが、堺屋大臣のお答えには少し含みがあった。総理は、何をとはおっしゃらないけれども、もちろん今の回復軌道がへたらないように、やるべきことはすべてやってくれというクリントンさんの前には、「もちろん」とおっしゃった。具体的には、そういう中に今のような問題が入っていて、ただ、今の段階で、非常に今日的な政治的な要素が入っている具体的なアクションについて、どこまで具体的に言えるかということについては、非常に賢明なC委員だからご存じなのですけれども、この辺はもちろんネガティブではいけないし、意図的にぼかしていると思われてもいけないけれども、明らかにそういうことはあるのだと思います。

ただ、ここは大事なことは、今までのままの軌道が、ノーエキストラアディショナルアクションでどこまでサスティンしそうなのか。民間の方は民間としてこれは考えなければいけないことですけれども。その辺の悩ましさを踏まえた上で、どういうふうに力強さを、しかも、なおかつ具体的に表現したらいいかというのは、かなり苦心を要するところだと思います。

また同時に、これからだんだん時間がたって、6月中にまとめるまでには、今のようなところに関してもう少し様相がはっきり、4~6の数字がそこでは出ていないから何ともわからないけれども、おっしゃるようなことは、今のままでいいかどうかは別にして、工夫をしなければいけないところだと思います。

〔C委員〕

今ここで、政府として、これはこうやるとはっきり言えということではなしに、今後の状況を見ながら、問題点は、この3つは非常にそのとおりだと思いますので、経済審議会としてどういうふうに出していくかということは慎重に考える必要があると思います。

ただ、その時点で「必要になろう」という他人事のみたいなことを言っていたらダメですよ、こういう意味です。

〔I委員〕

地価の問題を取り上げておられます。なぜ地価が問題かというのは、当然、銀行の不良債権問題、金融再生問題と関係があるからだと思います。一方において、その問題として金融機関の不良債権の処理を積極的に進めていく、バランスシート上の手当てだけではなくて、実体として処分を進めていくというお考えが出ています。私は、その辺の関係をもう少し突っ込んで考えますと、せっかく担保不動産の処分を進めていくいと、多少のいろいろなマイナスがあっても、やはりやるべきだということですから、仮にそれが進むとすれば、その後の融資の考え方は、必ずしも有担保主義といいますか、とりわけ不動産担保融資というものは必ず見直されていくべきだと思うのです。

もし仮に、不動産担保融資というものがウェイトがだんだん下がってくるとすれば、地価の問題というのは案外あまり問題ではないのかもしれないと思うのです。その辺は、情報通信は、金融機関が今後、融資について、有担保主義といいますか、とりわけ不動産担保融資というビヘイビアを続けるのか続けないのかというところが非常に大きいので、この辺はもうちょっと突っ込んだ記述があってもいいのではないかという気がいたします。

〔A委員〕

私も、土地の問題について、今のI委員と非常に似た意見でして、ぜひ一言申し上げておきたいと思うのです。

下落が続けば、不良債権処理が遅れて大変なリスクが生じる。当然の貸し渋りがまた発生する。経済が再生しない、ということは言われているとおりです。問題は、私は、さっき説明された方は、どうやらデフレスパイラルの危機は脱した、止まったとおっしゃいましたが、果たしてそうかなということです。

国土庁がこの3月に発表した対前年比の地価は、今までで前年比較で最も大幅に下がっています。だから、これは止まっていないのです。ですから、これをどう見るかです。

私は、デフレスパイラルの危機は脱したとは、到底まだ言えないのではないか、大いに問題があり、こう思っています。

したがって、言いたいことは、さっきI委員がおっしゃいましたけれども、土地の流動化を促すことが1つの大きなポイントです。それには、非常にしこっている土地の権利関係、この辺を調整する国家的な機関を設置して、これが債権と債務の権利関係の調整をエイヤッと、若干公の論理で整理することが必要だ。これは国会で一時議論されて、流れたのですね、野党の反対で。

私は、これはゼソコン共済とか何かいろいろ言われるけれども、モラルハザードの起こらないように、大幅な責任を取らせて、そしてこれを進めるべきだ。

それから、不動産関連の税制。税調が始まったのですが、私もこれを税調で大いに吠えていくつもりですけれども、一時凍結することをやって、土地の下落を止める政策を、少なくとも資産デフレをここで止めるという明確な意思を、政府がここで政策として打ち出す必要がある、これは非常に大事だ。この点はI委員と同じで、ここをもう少し明解に打ち出してもらわないと、これはえらいことになる。

そして現に、さっきから申し上げているように、土地は全体はそういうことになっていますが、ニューエコノミー、要するに情報技術産業が集積し始めた地区、例えば新宿とか初台地区とか品川地区とか、この辺は土地は上がっているのです。ですから、ニューエコルミーをどんどん活性化するような政策をとっていくことで、土地の平均的な値下がりも止められるということで、大きく経済全体にも影響すると思います。

〔J委員〕

ちょっと気になるといいますか、地価の下落を、ある意味で歯止めをかけるということは必要だと思いますが、今、住宅整備公団などでいろいろやっているのは、土地の流動化を図る、あるいは有効利用を図るという意味では効果が非常にあるのですけれども、公的化による土地の買い上げによって下落を図るとなると、相当大規模にやらないと。現実的なその手法なり、そういった財政なりがいろいろ問題があるのかな。むしろ、ここは感想と同時に質問みたいなところで、このように書かれたら、ある程度の具体的な施策も思い浮かべられてなのだろうかという点が、ちょっと疑問といいますか、あります。

〔部会長〕

今までのところについて、事務局からどうぞ。

〔事務局〕

今の最後の点ですが、実は内部で、こういう市場原理にある意味で逆行するようなことをさらにやるのかどうかという議論もあって、ここはちょっと落としたところで、残ってしまいまして申しわけありません。

それから、1点だけ、私の方からH委員のご質問に答えておきたいと思うのですけれども、財・サービスの収支が後半において横這いといいますか、減少が止まる原因というのは、2003年ぐらいまでは、景気回復直後の比較的高い日本の成長というのを考えておりまして、その後、2%弱の成長に落ち着いていくということで、内需のテンポが少し鈍化をするということが背景にございます。

基本的な問題点としまして、2%そこそこの成長が日本については期待できる。これも、皆さん、高いという感じをお持ちの方が多いのではないかと思うのですけれども、世界経済については、これまでほどではないにしろ順調な回復を期待する。例えば、私どもが依拠しておりますワールドバンクの世界予測ですと、世界工業品の輸出数量指数というのは今後6%で伸びるという想定がされておりまして、そういうものを一応念頭に置きますと、どうしても日本の内需がよほど目覚ましく伸びと、私どもは、それでもかなり目一杯日本の輸入が増えるということを想定しているつもりですけれども、内外の市場の拡大テンポの差というものが根底にございまして、なかなか目に見えて財・サービスの純輸出が減っていくという姿にならないということでございます。

一方、世界経済の見方につきましては、今申し上げましたように、現在流布されている一般的な国際機関なり民間の予測機関の見方というのを前提にしておりまして、そこでは、特段アメリカのバブルがはじけるとか、大幅に減速するとか、中国の経済が混乱するということは特段の想定にはなっておりませんけれども、こういうものは誰も想定しないことが起こるというのが過去の常でして、今後10年間リスクとして我々は十分に予測の前提を常にチェックするということは必要だろうと思っております。

〔部会長〕

いろいろご意見をいただいてありがとうございました。

あとご報告することがあるので、もちろんご意見はまだあろうかと思いますけれども、最初のはここで一ぺん打ち切らせていただいて、引き続き、「地方シンポジウムの開催」と、「経済社会のあるべき姿を考えるにあたって」に対する国民及び海外からの意見について、この2つを事務局から報告を願います。

〔事務局〕

資料2でございます。簡単にご説明いたします。

前回お話しをいたしました、地方経済審議会でございますが、当初5、6箇所と考えていたのでありますが、ここに書いてございますように、9箇所を現在考えております。

地方の声を審議の調査・審議に反映させるためということで、公開でパネルディスカッションなどを行ってみたいと考えております。

当部会の委員に個別に今お願いしております。私どもの経済企画庁の方からは、大臣、政務次官、事務次官などが同席させていただきたいと考えております。

ここにございますように、5月24日の週から6月4日まで、9箇所を予定しております。今週の火曜日に日経新聞に広告を出させていただいたところで、ご覧いただいた方もいるかと思います。

詳細につきましては現在詰めておりまして、お願いをいたしております委員の皆様には、詳細はまた別途ご連絡を申し上げますのでよろしくお願いいたします。

〔事務局〕

引き続きまして、「『経常収支のあるべき姿』を考えるにあたって」に関する国民からの意見、海外からの意見を説明させていただきます。資料3ー1、資料3ー2、その下にあります一枚紙でございます。

まず、国民からの意見につきましては、4月13日に公表しました「『経常収支のあるべき姿』を考えるにあたって」に対する意見ということで、67件の意見・提言が寄せられました。属性としましては、会社員の方が半分ぐらい、無職の方が1/4、団体役職員の方が1/8という感じでございます。年代でみますと、30代・40代が大体半数を占めております。次は70代が1/4程度。それから、男性・女性別で見ると、圧倒的に男性が多かったという姿になっております。

海外からの意見でございますが、聞いた相手が経済とか国際問題を中心に研究している学者、経済研究者、あるいはシンクタンク、さらには政府機関というところを対象にしておりますので、国民に対して聞いたのとは対象の層が違うといいますか、そういう目で見ていただければと思います。

また、聞いた内容につきましても、国民に聞いたものとは全く違いまして、それをベースにしながら、四角で囲んでありますとおり、「21世紀初頭における世界の状況」をあなたはどう考えますか、「21世紀の社会では、どのような産業が台頭し」、それをどう考えますか、このようなことでご理解いただければと思います。

なお、寄せられた意見の例を、私どもで目につくものということで、国民からの意見を6件、海外からの意見3件、このようなものをとりまとめさせていただいたわけでございます。

時間もございませんので、後でお目通しいただければと思います。

〔部会長〕

それでは、さっきE委員が手を挙げていらっしゃったけれども、簡単にご意見があるのでしたら、どうぞ。

〔E委員〕

ありがとうございます。非常に簡単に、1つのポイントだけです。

いろいろ物価に関する要素が論じられていますけれども、ちなみに今、マーケットでは、一番将来日本の物価が上がると思われている要因として、日本銀行の金利政策。例のインフレターゲティングとか、あるいはその量的拡大の話です。ですから、そういう分析の中で一言も金利政策のあり方に関して記述がないというのは、多少奇異な印象を受けたということです。

〔部会長〕

ありがとうございました。

それでは、次回の予定をお願いします。

〔事務局〕

次回は、5月25日火曜日の3時からを予定しております。部屋は、廊下の反対側で、特別会議室(436号室) でございます。

〔部会長〕

それでは、次回5月25日よろしくお願いいたします。

また、今日の事務局の説明について、引き続きご意見をいただける方は、直接事務局の方にご連絡をお寄せいただくようにお願いしいたと思います。

それでは、第12回の企画部会の審議はこれで終了いたします。ありがとうございました。

以上