経済審議会国民生活文化部会(第7回)議事録
時: 平成11年5月13日
所: 経済企画庁特別会議室(436号室)
経済企画庁
経済審議会国民生活文化部会(第7回)議事次第
日時 平成11年5月13日(木) 10:00~12:00
場所 経済企画庁特別会議室(436号室)
1.開会
2.国民生活文化部会報告(素案)について
3.閉会
(配付資料)
資料 経済審議会国民生活文化部会委員名簿
国民生活文化部会報告(素案)
国民生活文化部会において議論を深めるべき論点について
経済審議会国民生活文化部会委員名簿
- 部会長
清家 篤
慶応義塾大学商学部教授- 部会長代理
大田 弘子
埼玉大学大学院政策科学研究所助教授井堀 利宏
東京大学大学院経済学研究科教授川勝 平太
国際日本文化研究センター教授黒木 武弘
社会福祉・医療事業団理事長鈴木 勝利
日本労働組合総連合会副会長ピーター・タスカ
ドレスナー・クライン・オートベンソン証券会社ストラテジスト永井 多惠子
世田谷文化生活情報センター館長
日本放送協会解説委員西垣 通
東京大学社会科学研究所教授浜田 輝男
エアドゥー北海道国際航空代表取締役副社長原 早苗
消費科学連合会事務局次長福武 總一郎
(株)ベネッセコーポレーション代表取締役社長森 綾子
宝塚NPOセンター事務局長湯浅 利夫
自治総合センター理事長
- 〔部会長〕
皆さん、おはようございます。まだお集まりでない委員の方もおいででございますが、間もなくご到着になるかと思います。定刻になりましたので、ただいまから、第7回の国民生活文化部会を開催させていただきます。
本日は、ご多用中のところをご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、これまでの部会における検討・審議を踏まえまして、事務局の方でとりあえずまとめていただきました国民生活文化部会報告(素案)について事務局から説明いただいた後、この内容についてご議論いただきたいと思っております。
なお、この部会の議事については、第1回の部会でご了承いただきましたように、資料は「原則として議事要旨と併せて公開する」こととしておりますが、本日お諮りする報告は素案でございますので、この(素案)と「議論を深めるべき論点」に関します資料につきましては、最終的な報告書のとりまとめと同時に公開することとさせていただきたいと考えております。この点について事前にご了承をいただきたいと思いますけれども、皆様いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
- 〔部会長〕
ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
それでは、事務局より、国民生活文化部会報告(素案)についてご説明をお願いします。
- 〔福島推進室長〕
それでは、お手元の資料をご覧いただきたいと思いますが、「国民生活文化部会(素案)」ということでお配りしております。本日ご議論いただいた点、あるいは後ほどご説明いたします「深めるべき論点」というのもございますので、今後の議論の中で構成も含めて変えていきたいというようなたたき台としてご了承いただきたいと思います。
まず、めくっていただきまして目次を見ていただきますと、「はじめに」とありまして、以下2章建てとなっております。第1章が「人々の新たな結びつきと活動機会の拡大」、第2章が「安心し活き活きと暮らせる社会の姿」で年金制度等のことを書いてございます。
1ページ目をお開きいただいて、「はじめに」では、この部会で議論してまいりました論点、あるいはそれに付随する、この報告の結論ということを簡単に書いたような形で示しております。
まず最初に、「人はいずれかの共同体や組織に帰属して、生活の糧を得ながら身の安全と心の安らぎを得ている」ということで、共同体・組織というものが、「時代をおって社会環境が変化するとともに変容する」としております。「産業化ないし工業化以前の農業中心の社会では、家族及びそれを取り巻く共同体が」、相互扶助等で大きな役割を果たしてきた。それが産業化社会を迎え、伝統的な共同体家族の機能は縮小していき、企業や社会保障制度が重要な役割を果たすようになってきたとしております。「特に我が国の場合は、戦後、企業が人々の生活水準の向上、安定化に大きな役割を果たし」、「『企業中心型社会』を作り上げた」としております。
この「企業中心型社会」が歴史的潮流の変革を受けて大きな転換期を迎えているという認識で、その理由として、以下にいくつか挙げておりますが、規格大量生産型のこれまでのシステムのままでは発展が難しくなってきている。あるいは、経済成長の低下、企業の体力の低下、さらに人口構造の高齢化ということで、従来の年功序列的な企業組織、処遇といったものが維持することがかなり難しくなってきている。それから、少子高齢化が非常に早く進展するということで、社会保障制度も現在のままでは早晩維持できなくなるというような状況に至っております。
こういう歴史的潮流が大きな変革期にある時期に、現在のシステムというものを、直面している困難を克服しながら大きく変革していく絶好の機会ではないかという考え方を示しておりまして、そういう変革をどのような姿にしていくべきなのか、ということが大きな問題であるとしております。
「結論的に言えば」と下から10行目にありますが、ここでは、「個」を中心とした社会というのがこれからの我が国の経済社会システムとして成立していくのではないかということで、「ポスト『企業中心型社会』とは『個』が主役となる時代である」としております。
個人と企業の関係というのは、最後の行にありますが、「『会社人間型』の生き方から脱し、自らの自由な自己実現を求めて、社会の多様な活動に参画していく」。それから、個人と家族の関係については、「これまでの家庭内での役割とは異なる構成員それぞれの『個』としての生き方を尊重した新たな関係の構築を求められる」としております。
「年金、医療、介護、保育といった社会保障制度等のあり様も変革が必要」ということで、年金については、「『個』の多様な生活スタイルや働き方に応じた」変革が求められる。例として、年金のポータビリティの問題を挙げております。それから、「医療、介護、福祉といった制度についても」、「これからの家族のあり方、地域とのかかわりあい等の中で、『個』の自由を生かすにふさわしい仕組みを」構築していく必要があるとしております。
一方、「『個』の自由は、それが放縦されたままになると、時には『個』の生活の破綻を生むリスクを増大させる」ということで、数行下にありますが、「自由と秩序のバランスを適正に保つことが求められる」としております。
「『個』が主役である時代像、『個』が作り出す新しいネットワーク、そしてそれを支える社会的な制度や仕組みをいかに築き上げていくかが明確に示されること」が重要であるということであります。
以上のような認識の下で、当部会では、
1番目、「個」が主役となる社会の中において、人々は何に帰属先を求めるのか。
2番目、「個」が多様な自己実現を果たしていくために、次代を担う人材をいかに育成していくか。
3番目、高齢期における生活の安定を担う年金制度のあり方及び年金と雇用の関連をどう考えるか。
4番目、高齢者や女性の意欲と能力が発揮できる社会をいかに構築するか。
5番目、高齢期に安心して暮らせる医療、介護の制度はどのようなものか。
について検討し、提言していくとしております。
3ページ目にまいりまして、第1章「人々の新たな結びつきと活動機会の拡大」であります。
第1節「企業中心型社会の変容」として、(1)「企業中心型社会と人々の生活」で、これまでの企業中心型社会というのがどう総括できるかを簡単に書いております。2行目で、「企業は、長期雇用、年功序列等に代表される日本型雇用慣行や福利厚生により従業員の生活の安定を図」ってきた。一方、従業員の方も帰属意識を持って、「『我が社』のために一生懸命働けば、企業の成長とともに自らの生活水準も向上し安定する」という形で、双方ともにメリットを生かしてきた社会ではなかったか。
「その一方で、夫の長時間労働、父親の家庭不在という現象を生み出し、その結果として、家族間の関係を希薄化させ、また地域社会の空洞化を招く」といった現象が起きたとしております。
(2)「企業中心型社会の変容の兆し」で、こうした企業中心型社会に変化が出てきているということで、①は「企業を取り巻く環境の変化」であります。冒頭に申しましたような、規格大量生産型社会のシステムというのが今後は、転換が求められる。あるいは「バブル崩壊による企業体力の低下や経済成長の鈍化により、産業・就業構造の調整が必要となっている。また、我が国の人口構造が高齢化するに伴い」、雇用過剰感が企業に出てきているということもあって、企業としては、長期雇用や年功序列型の組織・処遇をこれまでと同じ形で維持していくことが困難となっているということであります。
②は「雇用形態の多様化と仕事能力の重視」で、こうした企業を取り巻く環境変化を受け、雇用の形態も一定の変化をするということを書いております。「中核的な雇用者については長期雇用制度が存続する一方」、中途採用や、派遣労働者、パートタイマー労働者、様々な人たちが1つの企業内に混在する姿が増加していくであろう。
労働者の能力形成についても、4ページにまいりましていちばん上に書いてありますが、「会社に固有の能力を形成することよりも、労働市場で評価される仕事能力の形成」が重要視されると考えております。
③は「企業の福利厚生の変化」で、福利厚生も次第に減少していくだろうということを書いております。経営環境の厳しさとか、法定福利費の上昇、あるいは従業員の側でも賃金による支払いを望むという意識の変化があるということでございます。今後の方向としては、「福利厚生をできる限り現金化させ、支給にあたっても業績主義的な考えを持ち込む方向である。もう1つは、給与と福利厚生を明確に切り離し、従業員のストレス緩和とする手段として福利厚生を位置づけ一律給付とする方向である。」としております。
第2節「これからの個人と企業、家族、NPO・ボランティア等とのかかわり」ということで、まず、(1)「個人と企業とのかかわり」ですが、①が「働き方の多様化」、先ほどの企業を取り巻く環境の変化等の中で、企業が変化していく。それに対応して個人も企業とのかかわり方が変化していくということで、その節の上から6行目に、「個人と企業とのかかわりは、帰属・献身的な関係が希薄になり、従業員同士の結びつきを作っていく場、個人の自己実現を図っていく場という意味が強まる。また、従業員を通しての企業と家族とのかかわりも薄くなっていく」であろう。あるいは、「企業外での働き方」、企業に属さない働き方の選択肢も多様化していくとしております。
②が「企業も選ばれる側へ」で、このような働き方の多様化が進むということを受けまして、「企業側もそこで働く個人から選別される」傾向が強くなるだろう。そのときには、下から3行目にありますように、「帰属を強要するような家族主義的な企業集団ではなく、もっと居心地のよい、自己実現が可能となるような企業を目指していくことが」企業にとっても重要であるとしております。
5ページにまいりまして、以上の議論を踏まえまして、③で「雇用形態の多様化に対応した制度を確立するための具体策」としまして、
i)は、雇用形態に中立な制度。長期継続雇用を有利にするとか、労働移動を抑制的にするというような、制度を中立的にしていくということで、3つ挙げております。
ii)は、転職や中途採用を容易にするため、厚みのある外部労働市場を整備する必要があるということで、個人の能力開発に関する支援、職業紹介機能の強化を挙げております。
iii)は、雇用形態の多様化に伴い、雇用者の権利を守る環境を整備していく必要がある、という点を挙げております。
(2)「家族のきずな」は、家族の問題を取り上げております。①「家族の機能とその変容――情緒面と経済面」で、家族の機能というものを整理しておりますが、6つに分けておりまして、「心の安らぎを得るという情緒面」「子を産み育てるという出産・養育面」「親の世話をするという介護面」「日常生活上必要なことをする家事面」「家計が安定するという経済的側面」「対外的信用が得られる社会的側面」(これは経済企画庁の方で平成6年に調査したものから引いております)。
こうした側面で家族の機能というのをもう一回見てみますと、「産業化・都市化が進展する中で、いくつかの機能が、社会保障制度の充実とか、家事のアウトソーシング市場の広がり、女性の社会進出などで補完されていく。その意味では、家族の機能というのが弱くなっているという面がございます。
一方で、今後の家族の機能として重要視されるのが、「心の安らぎを得るという情緒面」ではないかということであります。それに付け加えまして、雇用市場の環境が厳しくなってきますと、夫婦共働きでどちらかが失業しても家計を維持していけるという意味での「経済的側面」の機能も重要と考えられるとしております。
②「家族構成員の個別化の進展」ですが、「家族機能の外部化という環境もあり、それぞれの家族構成員がもはや家族の中だけでは完結し得ない生活を行い、意識の上でも行動の上でも、自分自身の関心や自分固有の関心領域を大切にするようになっている」ということで、これはこれまでも進んでまいりましたが、今後もこういう方向が進んでいくというふうに考えております。
その意味では、下の方に書いておりますが、「家族の個別化という現象は、現在の家族に、介護や育児といった面であまりに重い生活保障の機能を担わせると、家族全体が不幸になるという危険」があるということを指摘しております。
③「脱企業中心型社会がもたらす家族への影響」ですが、「企業中心型社会の変容」というのは、これまでの家族のあり方を見直す契機になるのではないかということで、「時間的余裕を持った男性の中には、家事、育児、介護といった生活場面への参加」というものも行うようになって、このことが、家族構成員間の関係の希薄化を修復する方向に働くこともありうるとしております。
④「これからの家族の機能」ですが、i)「社会軌範を確立するための基本単位」ということで、7ページにまいりますが、「今後は、自由の実現や選択の多様性に一層の価値が置かれるようになる」ということですけれども、「事由の一層の拡大はその一方で、他の人の自由を侵害してはならない」という前提に支えられたものであるという社会規範を明確に確立しておかなければならない。家族は、子供に対するしつけ等を通して、そうした社会規範を確立するための基本単位として重要」と考えております。
それから、先ほど指摘した点でありますけれども、ii)「心の安らぎを得る場としての家族」ということで、「家族は、夫婦あるいは親子という特別なつながり」ということです。これからは、様々な人々との結びつきが重要にはなっていきますけれども、家族というのは、「『参画も自由,離脱も自由』といった他の帰属体とは根本的に異なる」面があるのではないかということで、「『情緒面』の拠り所としての機能がより重要なものと」なっている。また、そういった「情緒的な気持ちがあればこそ、育児や介護において、家族のために自らが何らかの役割を果たしていきたいという気持ち」も出てくるのではないかとしております。
⑤「家族を築き上げるための意識的参画」ですが、「家族は、単に一緒に住むというだけでは望ましい関係が構築されない」という認識に立って、「家族構成員が互いに共有できるコミュニティー原則を持ちながら、意識的な参画によって家族を築き上げていく努力」が必要ではないかとしております。
⑥は、以上の流れから、「家族構成員の個別化の進展に対応した施策」として、「特に家計を取り巻く制度については」、「基本的に世帯単位から個人単位へと移行」が必要ではないかということで、配偶者控除等の問題、年金制度の第3号被保険者の問題等を挙げております。
8ページにまいりまして、単身赴任、前回ご議論いただいた点を(コラム:単身赴任)としてまとめております。転勤というのは、様々な生活上の問題に直面するということで、子女の教育、住宅、高齢両親の世話・介護、配偶者の仕事等の問題がある。現在は、そういう問題の現実的な解決策として「単身赴任」を選ぶというケースが増加している。「可能な限り、単身赴任を避け得るような社会的制度や環境を整えていくことが必要である」ということで、以下にいくつか挙げております。
(3)「新たなコミュニティの構築による活力ある社会づくり」でございます。①「新たなコミュニティ構築への動き」ですが、i)「集団主義の社会から信頼の社会へ」ということで、「これまでの日本社会は、集団の内と外があまりに区別されすぎており、内だけを大事にする傾向があった」「これからは、人々が多様な場に帰属先を求め、様々な人と出会う中で、自己実現を追求する社会となる。そうした社会の中では、特定の集団の枠にとらわれない、人間一般に対する相互の信頼関係を」構築するという環境が必要ではないかとしております。
ii)「情報通信手段の発達と新たなコミュニティの形成」ですが、情報ネットワークの発展で情報交換が容易になる。双方向での情報のやり取りができる。9ページにまいりまして、「これにより、地域を超えたネットワークが広がり、幅広い人間関係の新たな形成を助けることになる」としております。
iii)「男性のコミュニティ活動への参加」ということで、2行目にありますように、「ビジネス社会で培ってきた男性の知識・経験は組織を運営していく上で(コミュニティ活動を行うような組織を運営していく上で)有用である」。これが、これまで取り組んできた女性の視点と相まって、「地域社会をより住みやすくし、また新しいビジネスを起こす契機ともなる。」としております。
iv)「『個』を主体とする『複属社会』の形成」ということで、「新たに構築されるいずれのコミュニティも、個人が企業での仕事や家族との生活をシェアしながらも、それらとは別に」、「社会的な目的や関係性を求めて参加する社会集団であり、『好みの縁による帰属先』と呼べるものである。これにより人々の自己実現の場が多様に」なっていく、「『個』を主体とする『複属社会』が形成される。」としております。
②「NPOの果たす役割」、i)「NPOのマネジメント」としておりますが、「行政、民間企業とは異なる市民意識に支えられた本当の意味での第3セクター」というものがこれまではあまり日本には根付いてこなかったということで、「NPOはこうした組織を日本の社会に根付かせていく役割を担っている」という点であります。
下から2行目に、「行政からの独立性を保ち、自立性を持った意思決定によって組織を運営していくことが重要である。」としております。
10ページ目にまいりまして、ii) 「高齢者に活躍の場を提供するNPO」です。「NPOにとって、定年退職後の人々が有する組織運営の知識・経験は非常に有益である。」ということで、積極的に参加することが期待されます。
その場合に、その下の方にありますように、「ハーフタイム、パートタイムといった多様な活動形態を整えること」が、高齢者の参加を容易にしていくものであるとしております。
iii)「働く場としてのNPO」ですが、NPOはサービス提供というだけではなく、「雇用の創出等を通じても広く社会を支える重要な役割を果たす。NPOが雇用の場として機能していくためには、NPOに就職した人々にも適切な賃金が支払えるよう、一定の利潤を確保できるシステムを作り上げる必要がある。」としております。
③「NPOの活動を推進するための具体策」としまして、寄付した際の税の優遇措置、積極的な広報活動について触れております。
第3節「人材育成、教育における新たなネットワークの構築」でございます。「人材育成は、我が国が21世紀において創造性あふれる心豊かな社会を築くために欠くことのできないものである」。「初等中等教育段階の子供たちに、独創性や個性、豊かな感性」といった「心をはぐくんでいかなければならない。」としております。
11ページにまいりまして、「これらを実現するにあたっては、個人や組織が連携し、新たな人々のネットワークを構築する中で取り組んでいくことが重要である。」としております。
(1)「子供の育成環境の整備」ですが、①「基本的な考え方」で、「創造性、個性、豊かな感性を有する人材となる芽を子供たちにはぐくむ」ということが目標となりますけれども、「異年齢や様々な立場の人々と数多くふれあうことのできる機会を設けることが必要である。」としております。
また、「将来子供たちが各々の目指す道に進むためには、前提として、子供自身が多様な選択の可能性を有し得るよう、基礎的・基本的知識・能力の習得」が必要だとしております。
「これら子供の育成にあたっては」、「地域社会、学校、家庭が各々担うべき役割を果たし、連携を図って取り組んでいくことが必要である。」としております。
②「具体策」ですが、i)「地域社会における体験機会の充実」ということで、「地域社会が家庭と連携しつつ、子供たちが自由に遊んだり過ごしたりできるようなゆとりある時間と空間を護る」必要がある。
「特に長期の自然体験活動は」、11ページの2行目のところですが、「子供たちの成長発達に大きな効果をもたらすものとして、NPOや企業等が積極的に取り組んでいくことが望まれる。」としております。
12ページの下のところで、ii)「学校運営体制の改善・充実」ですが、「学校の主たる役割は、子供たちの基礎的・基本的知識・能力の習得を図る」という考え方で、「学校の役割をスリム化することが重要」としております。
その一方で、「また」というところで、「校長の教育理念や教育方針の下に、創意工夫を凝らした学校運営を実現する」あるいは「学校の経営責任を保護者を地域住民に明らかとにしていくことが求められる。」としております。
13ページにまいりまして、「また」ということで、「保護者や地域住民に対し、学校の教育目標や教育計画、その実施状況に関する自己評価を積極的に公開し説明していくことが重要である。」としております。
(2)「生涯学習のための環境の整備・充実」ですが、①「基本的考え方」としまして、「学習期間と就業期間を繰り返す、あるいは両者を平行して進めるようなリカレント型のライフスタイルを指向する者が今後増えていくと予想される。」ということで、そこから5行目に、「今後の我が国においては、年齢にかかわらず様々な人々がその意欲に基づいて、生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができる環境を整備」する必要があるとしております。
②「具体策」ですが、「そのためには、大学、高等専門学校、専修学校、高等学校、行政、企業、NPO等様々な主体において、多様な学習ニーズを持つ人々を積極的に受け入れていくことができる環境」が必要。また、「全国放送を行っている放送大学の活用」や「衛星通信等遠隔情報通信システムの活用」ということで、「新たな教育・学習環境を確立」していく必要があるとしております。
14ページにまいりまして、第2章「安心し活き活きと暮らせる社会の姿」。第1節「年金制度と雇用システム」でございます。(1)安心できる老後のために必要な条件」ということで、①「老後への不安の現状」を書いております。平成10年度の国民生活選好度調査によりますと、73%の者が自分の老後の生活に対して不安を感じるとしている。また、30歳前半という若い層でも69.5%の者が老後に不安を感じているとしております。
②「老後への不安を解消するための年金の役割」ですが、「高齢期の生活費の収入源としては、主たるものとしては年金と考える者が多い。それだけに、個人が自分の老後の所得保障について明確なビジョンを持ち、公的年金・企業年金等の給付水準についての展望と、それを前提として個人が自らの指向に基づき、個人年金等を利用して老後の生活資金を現役時代から準備することが重要である。」ということであります。
15ページにまいりまして、③「年金の支え手としての高齢者」ですが、5行目のところに、「年金制度に関する高齢化問題への対処としては、女性の社会参加を進めるとともに、高齢者になっても、働く意思と能力のある者にはできるだけ長く社会を支えてもらう、つまり支え手の裾野を広げるという観点」が重要としております。
(2)「年金の役割」、①「基本的考え方」ですが、上から6行目に、「年金のあり方としては、『安全ネット』として通常の支出を賄う役割は公的年金が担うが、それ以上のより豊かな消費については自助努力により実現することを基本とすべきである」という考え方を示しております。「今後は公的年金、企業年金に個人年金等を組み合わせた全体で老後の所得を保障していくことが重要」という考えを示しております。
②「公的年金のあり方」、i)「現状と問題点」ですが、下から3行目のところに、平均寿命の伸びが増加を続けているということで、「賃金スライドを維持した現在の給付水準や支給開始年齢等を維持した場合には、最終的な保険料率は現在の2倍程度になり、将来世代の負担が過重に」なるとしております。
16ページにまいりまして、ii) 「改革の方法」を示しております。a)「支給水準の適正化」ですが、「給付水準のある程度の抑制が必要である。この場合、基礎年金相当部分と報酬比例部分については、その性格上、区分して考える必要がある。」ということであります。定額部分、基礎年金部分については、「いわば『生活の安全ネット』としての役割を、報酬比例部分については、一般的な通常の支出をまかなう役割として考えるのも一案」ではないかとしております。「この観点からは、公的年金の抑制は主として報酬比例部分によるものと考えられる。」ということでございます。
b)「60歳代後半への在職老齢年金制度の導入」ということで、今現在60代後半についてもそういう導入を図ろうという動きがございますが、「やはり将来世代の負担軽減を図るために実施すべきである。」ということであります。「導入の際には高齢者の就業を阻害しないという点に配慮する必要がある。」としております。
c)「長期の制度維持のための取組み」ということで、以上のような給付抑制等の問題以外に、17ページに挙げておりますa、b、c、dのような問題、厚生年金の積立方式への移行、厚生年金の廃止(民営化)、これらの問題があるということを書いております。
③「企業年金のあり方」、i)「現状と問題点」ですが、4行目のところから、「今後、公的年金の支給開始年齢が引き上げられることから、今まで以上に大きな役割を持つ」ということであります。
一方で、その下4行目あたりで、「定年まで同一企業で勤務することが前提で設計されている我が国の企業年金はポータビリティが弱く、転職の際に不利に働く」ということであります。
ii)「改革の方法」では、こうしたポータビリティの確保を解決する方法として、確定拠出型年金の導入を挙げております。
その導入の際の留意点を以下に書いております。
18ページにまいりまして、④「個人年金のあり方」であります。上から4行目のところ、「企業年金は主に大企業を中心に整備されており、年金の給付主体としては脆弱な中小企業にとって生命保険会社等が取り扱う個人年金は、従業員の福利厚生の観点から大きな役割を持つ。」ということになっております。
こうした個人年金ですが、「商品形態が複雑であること、給付額が経済状態に左右され不安定である」といった問題がある。そのために、(具体先)として示されているような2つの点について、指摘しております。
第2節「高齢者や女性の意欲と能力を発揮する社会の構築」。8行目のところですが、「我が国の現在の雇用システムを高齢者や女性がより一層活躍できるものに変えていく必要がある。」としております。
(1)「高齢者の雇用・就業、社会参加の促進」ですが、19ページにまいりまして、現在の年功賃金を中心としていることから、60歳定年制を前提とし、65歳まで希望者全員を雇用するという制度が約2割という状況であり、60歳以上の高齢者が意欲と能力に応じて働くことができるシステムとは言いがたい。したがって、このような日本の雇用制度を、能力や業績に応じたものにしていくなど高齢者の意欲と能力を活かせるものに変更していく必要がある。」としております。
①「高齢社会における雇用制度」、i) 「基本的考え方」としまして、現在、「産業構造の転換や、少子・高齢化の進展により徐々に企業の賃金・処遇制度も能力や業績を重視したものに変化しつつある」ということですが、その際には、「能力や業績をどれだけ正確に評価できるか」ということが重要だとしております。
その下の4行目で、「今後、賃金・処遇制度等の動向を踏まえながら、高齢者の雇用促進の観点から、年齢差別禁止という考え方について、定年制と比較し、検討していくことが求められる。」としております。
向こう10年間は、「団塊の世代が60歳代にさしかかり、60歳代前半層の労働力人口が急増する」ということで、「高齢者が少なくとも65歳程度までは現役として働く社会を構築していくことが」当面は最重要課題となるであろうとしております。
②「能力開発」につきましては、i) 「基本的考え方」としまして、「意欲と能力に応じて働ける社会」ということで、「能力・業績主義的な賃金・処遇制度に変更していく場合、その前提として、それぞれの労働者に公平な能力開発機会を」与える必要があるとしております。
③「働き方の多様化・柔軟化」では、高齢者の就業目的は、必ずしも経済的理由によらない、「生きがいや社会参加、健康のため等」ということがありますので、「多様な希望に応じた就業機会の確保」が重要としております。
④「開業・創業」につきましても、「高齢者の意欲と能力を発揮する場として」重要であるという点から、「開業に対する支援策については、高齢者の創業を視野に入れて実行されることが重要である。」としております。
⑤「社会参加」ですが、5行目のところで、「利潤追求を前提としない世界で、自分の好きなことをし、自己実現や社会貢献を図る面白さを見出すことができるNPOや地域社会における活動は、経済面において他世代に比べ比較的余裕がある高齢者にとっては、好ましい活動の場」であるということで、積極的な参加が求められるとしております。
(2)「女性が働きやすい環境整備」、21ページにまいりまして、上から6行目のところで、「少子化の基本的な要因の一つは、子供を持つ女性の雇用継続と育児の両立が困難な環境にあり、これを解消していく必要がある。」としております。
また、「いったん離職した場合であっても、それまでのキャリアを活かして再就職できる環境を整備していく必要がある。」としております。
①「就業環境の整備」では、「育児について男女共にその責任を負うことに留意し、男女が共に働き育児に参画できる環境を整えることが重要である。」としております。
また、企業においても、「母性保護の法令の遵守」とか「産休・育休あけの時期の職場復帰」、「育児休業の取得」といった育児支援が必要である。
また、働き方につきましても多様化・柔軟化を図って、職業生活と家庭生活の両立を可能にしていくことが重要としております。
②「保育施設の整備」については、「量的・質的整備をさらに積極的に進めていく」、それから「小学校低学年児の安全」ということも重要ですので、「放課後児童健全育成事業」(いわゆる学童保育)も整備していく必要があるとしております。
22ページにまいりまして、第3節「高齢者医療と介護」であります。(1)「医療を取り巻く環境と問題点」としまして、第2パラグラフのところで、「高齢者に対する医療のあり方については、老人退行性疾患の特性を考慮する必要がある。」としております。そこから3行下で、「すなわち、疾病の治癒や救命を目的とする医療だけではなく、生活の質の向上を目的とし、自立を目標とした『ケア』が必要」ということでございます。
それから、医療費の問題でありますけれども、老人医療費の増大が著しいということ、今後の人口動向を勘案すると、老人医療費は引き続き増加するということで、この抑制が大きな課題でございます。
3番目に、2000年度から介護保険が導入されるということで、「介護は単に介護で終わるのではなくて、医療と一体化した施策が求められる。」ということであります。
(2)「高齢者医療と介護」、①「基本的考え方」ですが、23ページにまいりまして、高齢者医療については、「障害に着目し、残存機能の活用を通じて生活の質を高める生活モデルとして対応する」ことが重要であるということであります。「医療は病院、介護は在宅・地域中心とし、医療と介護を協同させることにより、質の充実と費用の圧縮を図る。」としております。
②「介護についての考え方」ですが、i) 「介護リスク」は、80歳以上になってから急速に高まるものではありますが、5行目のあたりで、「死亡の1カ月前には7割程度、1週間前には8割程度の高齢者が生活自立できない状態」になるということで、これはすべての人の問題でもあるという考え方もできようかと思います。
一方、要介護状態になりますと、高齢者のみのリスクだけではなくて、家族にとっても大きな負担になるということで、家族のリスクとしても考えられるということであります。
ii)「介護の社会化」ですが、いちばん下の行で、「家族による介護が重要であることに変わりはないが、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦のみの世帯が増加していることや、介護の長期化が進んでいる」ということで、「介護を社会的に支える体制が必要」としております。
③「介護保険」ですが、i)「保険としての考え方」は、「介護保険では、従来の措置・利用決定の方法から、契約が行われる方式」になったということで、一定の条件の下で自由に選択ができるような仕組みが備わっているということであります。
ii)「我が国の介護保険制度」は、2000年4月から導入されることになっておりまして、各市町村等で準備が進められているところでありますけれども、その際の制度の趣旨や仕組みというのがまだよく知られていない面もありますので、わかりやすい説明や情報開示が重要である。
それから、整備すべき介護基盤については、今後の整備目標を明示していく必要があるとしております。
介護サービスの供給については、「市場」ベースが適当ということで、「介護保険法の施行に合わせて、在宅介護サービスに関しては民間企業等広く参入が認められている」ということですが、施設介護サービスや医療についてもこういう方向で進めていくべきとしております。
④「『寝たきり』の予防」ということで、高齢期に健康で自立している状態と寝たきりになる状態とでは生活の質に大きな差が生じ」、「高齢期の健康を如何に維持するか」というのも大きな課題であるということであります。
そのために、「介護保険制度の施行後もリハビリ等のサービスの提供を最大限活用し、寝たきりをなるべく予防・減少させることが重要」ということと、「生活習慣病を若年世代から予防することも重要」ということであります。
以上、素案のご説明でございます。
もう一つ、お手元に一枚紙で「国民生活文化部会において議論を深めるべき論点について」がございます。これは今、素案でお示ししたものと関連のあるものとないものとがございますが、さらにこの部会の中で議論を深めていただきたい論点として挙げたものでございます。
1.「長期的な年金政策のための取組み」、これは素案の中にも示させていただきましたけれども、長期的な維持可能という点からの制度の問題でございます。
2.「高齢者雇用と定年制のあり方」ということで、「当面の高齢者雇用対策と定年制」、「将来的な雇用システムと定年制」という問題でございます。
3.「創造性、個性、豊かな感性等をはぐくむ子供の育成環境の整備」ということで、ここでは教育委員会の機能を改善・充実ということも含めて、ご議論を深めていただきたいというものでございます。
なお、これらに加えまして、国民生活文化部会という「文化」という言葉も付いてございまして、素案の中にも、どれだけ文化という面が含まれているか、やや心もとない面もございますので、何かこういうことを入れたらというようなご指摘も含めていただければと思います。
以上でございます。
- 〔部会長〕
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からのご説明について、ご議論いただきたいと思います。
その前に、今日は「素案」と「深めるべき論点」の両方を議論しますか。
- 〔福島推進室長〕
論点の方は、できれば次回に集中的にやらせていただければと思います。もちろん触れていただいても結構でございます。
- 〔部会長〕
それでは、今ご説明がありましたように、もちろん触れることになるかと思いますが、基本的には素案の部分を中心にご議論いただきたいと思います。
今、福島室長の方からもお話がありましたように、これは素案でございまして、特に文化の面についてはまだ十分に触れられていない部分もあるかと思いますので、こういうことを加えてはどうかということも含めて、ぜひ積極的にコメントあるいはご提言いただきたいと思います。
では、どなたからでもよろしくお願いいたします。
- 〔A委員〕
非常にうまくまとまっていると思います。いくつか細かいところを含めて、コメントというか質問をさせていただきたいと思います。
「はじめに」の2ページで、「『個』の自由」のところに関しての書き方です。安全ネットを形成することが大事だということで、「自由と秩序のバランスを適正に保つことが求められる時代である」ということですが、自由と秩序のバランスを適正に保つというのは、特にこれからの日本社会において新しく必要な考え方というよりは、常に自由と秩序のバランスというのは適正に保ってなければいけなかったはずだと思うのです。これまでは、どちらかというと秩序の方に重点があったのだけれども、今後は「『個』の時代」ということですので、自由の方に力点を移していくべき時代だろう。そういう具合に「はじめ」のところは読める。そうだとすると、もう少しここの書き方を、バランスを適正に保つのは当然なのだけれども、その中でどこに力点を置くのかということをもう少しはっきりさせた方がいいのではないかと思います。
4ページ、第2節の②「企業も選ばれる側へ」、これはそのとおりだと思うのですが、ここで企業だけを見出しで書くというのは、書き方としては多少弱いのではないかと思います。つまり、個人も選ばれる時代に入ってきているわけで、個人も企業も選ばれる側へという形で、個人も入れた方がいいのではないかと思うのです。
「企業も選ばれる」というのは、個人が選ぶわけですから、どちらかというと、雇用の観点から言うと、自発的にその企業を離職して新しい職場を探すという、自発的な失業、あるいはそれに対するいろいろな雇用機会の開発ということだと思うのですけれども、そうではなくて、今まで企業にいたけれども、その人の持っている人的なスキルが合わなくて、やむを得ず、非自発的に解雇される場合もありうる。そのときに、人材を、個人の能力をきちんと新しい時代にあった形で再開発することも必要になってくると思いますので、個人の能力開発に関する支援というのは、必ずしも個人が主体的に企業を選ぶだけのときに使うものではないと思いますので、最近の情勢ではそうではない形で起きていると思いますので、そのあたりも少し触れた方がいいのではないかと思います。
6ページ、この前の話で恐縮ですけれども、②「家族構成員の個別化の進展」の最後のパラグラフのところですが、家族の個別化という現象があるときに、「介護や育児といった面であまりに重い生活保障の機能を担わせると」困るという文章があります。ここで「介護や育児といった面であまりに重い生活保障の機能を担わせる」というのは、外生的な条件として入ってくるのかどうかというのはよくわからないです。つまり、家族が個別化するということは基本的に今までの大家族制度から核家族化になっているわけですから、そこが本当に主体的に家族が選択したのであれば、介護や育児というのは、むしろ切り捨てる方向に行くはずなわけで、それが社会的に望ましくないから政策的に担わせるということなのか。担わせるということの意味が、これを読んだ限りではわかりにくかったと思います。
「家族構成員の個別化」との関連で、単身赴任のところ、これはこれで特に問題はないと思うのですけれども、若干気になるのは、「単身赴任を避け得るような社会的制度や環境を整えることが必要である。」という書き方です。単身赴任自体が社会的に何らかの問題があるということが前提になっていると思うのですけれども、家族の個別化あるいは「個」の自由という観点からすると、単身赴任をしたくないのだけれどもせざるを得ない場合には、そういった制度的な障害を除くのは必要だと思うのですけれども、家族の主体的な判断で単身赴任をする場合もありうるわけです。要するに、夫婦がお互いにいろいろなキャリアを積むために、あえてばらばらになることもありえる。その意味では、制度的に単身赴任と中立な環境を整える方が、むしろ望ましい。常に一緒に生活する方を政策的に優遇するような、そういう制度をここで考えているように受け取れるわけですけれども、例えば、税制上一緒に住むということに関して何らかの優遇措置をとる形で、単身赴任をあえて政策的に避けうる方が望ましいということにも読めるのです。そうすると、「個」の自由との関係をどう理解しているのかというのが多少気になります。あまり大した問題ではないと言われれば、そうだと思うのですが、「個」の自由との関係で、単身赴任の問題というのがちょっと気になりました。
12ページの最後のところ、教育のところ、学校運営体制の話です。「議論を深めるべき論点について」で教育委員会の話が出てきているのですけれども、素案では、「校長の教育理念や教育方針の下で」という形で、一応運営体制の話が出ていますけれども、教育委員会についての議論はここでは全く出てきていないです。ところが、「議論を深めるべき論点について」では、「教育委員会の機能を改善・充実させていくことが重要である。」と書いてありますけれども、そことの関係がいま一つよくわからないのです。つまり、ほかの年金とか高齢者雇用の点に関しては、素案でも検討課題として触れてあるので、教育委員会が重要であるとすれば、どういう形で重要なのかというのを素案で触れておいた方がいいのではないかと思います。
17ページ「企業年金のあり方」、ii) 「改革の方法」で、「ただし、導入の検討にあたっては」の2番目、「従来の確定給付型も労働者が選択できるようにすること」という但し書きですが、これはどのくらい強調する必要があるのかが多少気になりました。
なぜかというと、そこの「改革の方法」の文章を素直に読みますと、ポータビリティを確保するには確定拠出型の年金の導入が必要だ、それにはいろいろメリットがあるということが書いてあるわけで、むしろ、それを政策的に進めるのであれば、あえて従来型の確定給付についても選択できると、そのオプションがあってそちらも重要だということをあえて書く必要はないのではないか。むしろ、政策的には、確定拠出型の方に誘導するのだということをもう少しはっきり書いた方が、ポータビリティあるいは「個」の自由の観点からは整合性がとれているのではないかと思います。もちろん、確定拠出型はいらないと(は思わないですけれども、)書き方として、あえて書く必要はないと。
- 〔部会長〕
非常に重要なポイントをたくさん最初に挙げていただいたと思いますが、今のA委員のコメントとご関連のご質問、あるいはコメントの方がいらっしゃいましたら、ここであわせて伺って、事務局の方からリプライしていただきたいと思います。
- 〔B委員〕
「個」ですが、夫が「会社人間型」から家に帰ってきたから、ではそれですべてがいいのかといったときに、「個」ということの概念のとらえ方が、2ページの「自由と秩序のバランス」ですが、私が思いましたのは、自立した「個」は自分で立つと律すると両方ですが、妻の場合は自分の足で立つことが大事でしょうし、夫の場合は自分を律するところの辺が大事ではないかと思いました。
夫婦・家族の関係が、パートナーシップをもった対等な関係を持つというところがなければ、性別役割分業ということがまだ家の中でも残っていますので、そのあたりが消えていかないのではないか。単にあいた時間を家庭に戻ったから、すぐうまく家族がいくような簡単な問題ではないのではなかろうかと思いました。
そういう意味では、6ページの11行目ですが、「そのストレスを家族との生活場面に参加することによって癒す」という書き方が、すごくこわいなと思いました。夫が帰ってきたときのたくさんの時間があったときに、家族の方のストレスがたまるのではなかろうかと思いました。
だから、家族の関係で、企業が暇になったから「会社人間」をやめて家に帰ってきたときの、意識の変革みたいなものがどこかに入れられたらと思いました。そういう面で、自立した「個」ということと、家族での・夫婦の関係でのパートナーシップということを思いました。
ついでに言わせていただきますと、8ページの(3)「新たなコミュニティの構築による活力のある社会づくり」ですが、「企業中心型社会の変容」ということで、あいた時間ができたわけですから、そのことをNPOというところで、非営利でボランティアをする。今まで、ボランティアというのは本当に素人が誰でも楽しく暇なときに、ということでやっていたのですが、今度は、企業で働いている人たちが、プロですし、専門家ですので、その人たちがNPOでボランティアをすることになれば、そのNPOという非営利組織が質の高いサービスを提供できるようになる。質の高いサービスを提供するようになると、安心・安全できる社会ができます。
そこで、子供を産んで育てたり、介護の問題ということにつながっているのですが、それが安心できるようになれば、また子供を産もうという人も出てくるだろうし、介護の問題も、これが社会化できますから、非営利の組織として育児と介護の部分を担うことができるのではなかろうかと思います。
これを循環させていくことによって、何でもNPOにとかボランティアに放り込んだらいいというのではなくて、きちっとしたこのシステムを作っていくことが必要かと思いました。
そういう意味では、リタイアした男性のNPOへの参画とかマネジメントは大変ありがたいのですが、では誰がコーディネイトするのか、どこがコーディネイトするのかという機能が必要です。誰もが「どこに行って・どういうふうにNPOに参加すればいいんだ」ということで、コーディネイト機能というところでは、NPOに行って能力を発揮したい人のための、例えば、私のところのようなNPOセンターみたいなものをもう少し整備していく必要があるであろうと。単に何かしたいと思っても、やっていけないというような現状があると思いました。
9ページの「男性のコミュニティ活動への参加」ですが、この部分で、福島推進室長もおっしゃいましたけれども、口ではおっしゃっていましたけれども、これまで女性のみが行ってきた地域社会のことを、「女性が行ってきた」というような一文を入れていただけたらと思いました。これを読みますと、男性のみがコミュニティ活動への参加をするという感じです。女性も参加していってもらう、というところも入れてください。
それから、「『個』を主体とする『複属社会』の形成」の中に、「好みの縁による帰属先」というのがあります。その前には、「社会的な目的や関係性を求めて参加する社会集団であり」ということなので、括弧で括られている方が重要だとは思うのですが、ここのところを「志を同じくする者の縁による支援の帰属先」みたいのに入れ替えた方がいいのではなかろうか。自分が選ぶ志ではないか、というふうに思いました。
10ページの上の方、「高齢者に活躍の場合を提供するNPO」の4行目、「第三者機関が設置される」、どういう形でやるのかわかりませんが、こことNPOとを連携させて、そういうところに資金が回っていくようなことをやればいいのではないかと思います。
③「NPOの活動を推進するための具体策」の中に、NPOへの補助金の制度とか、コミュニティビジネスと言われるものの投資とか、助成金の制度というものを加えていかない限り、NPOは本当に微弱ですので活動が行っていけないし、またコーディネイト機能も発揮できないと思うので、何かこの辺で具体策が、入れられたらと思いました。
- 〔C委員〕
B委員と関連するところ、そのほかのところも含めてですけれども、発言をさせていただきたいと思います。
全体を読んでの私の感想ですけれども、都市に住む男性が書かれた文章ということが非常に印象として強くて、1つは、今、B委員がおっしゃられたように、女性の視点というものをもうちょっと盛り込んでいただきたい。
それから、過疎とか過密については、ほかの部会で取り上げていらっしゃることかもしれないのですけれども、これを農村とか漁村に住む高齢者の視点とかでみると、また全然違った国民生活というのが見えるのではないかと思って、その2点が欠けているように思うのです。
過疎過密の部分ですけれども、ここで取り上げられているのは、全体的に「個」の時代に向かう、と。これは私も、日本全国どこにいても、それに向かうというふうなところは否定はしないのですけれども、そうなったときに、「個」を救う社会的な生活安全ネットというものが、ここで書かれているのは年金と医療と介護です。そうではない、農村部に住む高齢者たちの、何がどうだというふうには言えないのですけれども、私はもうちょっとネットがあるのではないかという気がして、そこをもう少し考えることができたらという気がいたします。
それから、都市に住む人たちも、年金と医療と介護に限って、本当にそれで生活安全ネットが組めているのかというと、そうではなくて、例えば、交通遺児の子供たちがやっています「足長育英会」とかはすごく資金不足で今悩んでいます。リストラなどがあると、高校を中退しなければいけない、大学も中退しなければいけないという子供だちも出てきていて、必ずしも、今のシステムというのが「個」になったときに一人ひとりを救えるかというと、そうではないというようなところで、もうちょっと安全ネットの視野の広がりというのを考えていただきたいと思います。
あとは、ページに沿って女性の面では、B委員と重複している部分もありますけれども、意見を述べたいと思います。
6ページですけれども、B委員がおっしゃったように、私も読んだときに、男性の家に帰ってストレスを発散をしたいというか解消したいというような、そういう書き方がありますが、例えば、私などは共働きで働いていて、家に帰ったら、自分だってストレスを発散をさせたいというふうに思っているわけです。それは男女・性別役割分担の家事ではないようなものもあるのではないかと思って、ここは書きぶりとしては、私としては入れていただきたいのは、男女ともに労働時間の短縮をするという話です。
これは労働組合でもずいぶん前からやっていたことですけれども、そういった労働時間の短縮ですとか、最後の行に書かれている「経済的側面」の機能という話になると、女性が働いて夫の方が失業しているということもあるかと思うのですが、そういう場合には、男女賃金格差の是正の話というのが、「経済的側面」の中に含まれて書いていらっしゃるのかどうかわからないのですが、私としては、ここには労働時間の短縮とか、男女賃金格差の是正の提唱をお願いしたいと思います。
ページに沿ってお話しますので、いろいろなことが行きつ戻りつするかと思いますが。
11ページ~12ページにかけて、子供たちの話が書いてあります。これは書き方だけの問題ですけれども、12ページに、「またその他にも」ということで「・」で4項目書かれています。「その他」のところがこの4項目で、全体としては、長期の自然体験活動をやりましょうというのが一番大きなポイントですが、それが文章の中に入ってしまうと、ポイントとして読めなくて、「その他」の方がすごく強調されて見えるので、これは書き方ですけれども、「・」の4つの上のところに、「その他」という言葉ではなくて、「長期の自然体験活動」のがはっきりわかるような形で書いていただきたいと思います。
夕日を見たことのない子供たちとか、木登りをしたことのない子供たちというのが1/3ぐらいいるというのは事実ですので、お願いしたいと思います。
13ページ、生涯学習の部分、子供たちの教育にもかかわるかと思うのですが、いちばん最後の行のところに、「政府や企業が積極的に取り組んでいくことが求められる。」と書いてあるのですけれども、これももう少し、生涯学習を受講したいという場合には企業の側で休暇を認めるというような、具体策を私としては入れていただきたいと思います。
次に、21ページ~22ページにかけて、保育所とか学童保育の話が出ているのですが、私自身が今、学童保育クラブの父母会の会長というのをやっていまして思うことですけれども、例えば、22ページの(学童保育)のところで、「小学校区に1施設の整備」と書かれていますが、実際に学童保育にかかわっている者からみますと、全国的にみると、例えば東京都内の23区は、公立というのでしょうか、公共のお金が出て施設が整備をされている。その次に「小学校区に1施設」ということが私どもの要求なのですけれども、全国的にみると、民間でやっているところがあるのです。自分たちのお金を持ち寄ってやっている、父母がお金を持ち寄ってやっている、そこに公的な補助が若干入るというような形のところの方が多いわけですので、学童保育を項目として書き込んでいただけるのであれば、公的な施設として組み込むとか、施策として組み込むというのがまず前段にあって、その次が「小学校区に1施設」ということではないかと思います。
ちょっと戻りますが、21ページに女性の再就職の話があります。子供を持つ女性の雇用継続ということでは、「再就職できるような環境を整備していく」というところがあります。友人などを見ていても、中学生ぐらいになると再就職をなさっている方が多いですけれども、戻ったときに、極端に雇用条件が悪くなるのです、特に給料の面とか待遇で。これは、私としては、ただ単純にここに「再就職できるような環境の整備」ということだけではなくて、雇用条件とか、ここも男女の賃金格差になるかと思いますけれども、賃金において条件が不利になることのないように、というようなことをぜひ含めて書き込んでいただきたいと思います。
- 〔D委員〕
まず、2ページ、A委員もおっしゃった、「個」の自由のところですが、「『個』の自由を生かすにふさわしい仕組みをいかに構築していくか」まではいいのですが、上から4つ目のパラグラフ、「しかしながら、『個』の自由は、それが放縦されたままになると」、「生活の破綻を生むリスクが増大」し、「社会秩序の維持を困難にさせ、人々の生活の安心をゆるがせかねない。」、この3行が急に極端なところに来たような感じがするのです。
「個」の自由を生かす仕組みにしたときに、安全ネットの構築の仕方ですとか、あるいは規制の考え方とか、そういうものを変えていかなければいけないということが大事であって、「個」の自由を生かすということと利己主義が混同されているような気がするのです。
利己主義、エゴイストであるとか、人のことを考えないというのは、これまでの社会にも十分にあったわけで、「個」の自由ということが、放縦とか、放逸とか、やりたい放題とか、そちらと少し議論が混同されているように思います。特に「社会秩序の維持を困難にさせ」というところは、意味がよくわかりません。
大事なポイントですので、中途半端な書き方はしない方がいいように思います。
それから、年金のところ。15ページ以降に公的年金について書かれておりますが、ここで、水準が適正かどうか、保険料水準がいいか悪いかということは書かれているのですが、非常に大事なポイントが抜けています。それは、今の年金制度が世代間にものすごい不公平を強いているというポイントが抜けているように思うのです。今の年金制度の最大の問題は、生まれた年によってあまりに不公平になっている。いちばん多く出た推計では7,500万円の格差があるという分析もありましたし、これだけ後世代に不利な制度を続けながら、なおかつ強制加入を強いていくということは、年金制度はいずれ根底から信頼が崩れるわけです。これは21世紀に向けて書く報告ですから、世代間の公平を確保するということの重要性を強調した方がいいように思います。
それから言いますと、17ページの頭にa、b、c、dとあって、aで「厚生年金の積立方式への移行」とあるのですが、「厚生年金」はカットしてもいいと思うのです。基本的に積立方式への移行ということをもっときちんと議論すべきであって、その範囲が厚生年金だけなのか、あるいは基礎年金まで行くのかというのは、その次の問題ですから、世代間の公平を維持するために積立方式ということをもっときちんと議論すべきだと思います。
16ページに戻りまして、a)「支給水準の適正化」の2つ目のパラグラフで、急激な支給水準の低下は生活保障機能を損なうと書かれているのですが、年金制度の改革で、支給水準を急激に低下させるということは、ほぼない話です。今議論しているのも、2010年とか、2015年に徐々に低下させていくという話ですから、こういうのはいたずらに不安を招くと思うのです。むしろ、改革のビジョンを早く出す必要があると思うのです。なし崩し的にガタガタ下げていくことが不信を招いているわけですから、今の時点でしっかりした議論を起こして、サステイナブルな年金にしていくということの方が大事だと思います。
17ページのbで「厚生年金の廃止(民営化)」と書かれていますが、廃止と民営化は、必ずしも同じではなくて、民営化しても、強制加入を維持するということはできるわけです。それのどちらがいいかは、いくつか議論がありますので、「厚生年金の廃止(民営化)」ではなくて、単なる「民営化」の方がいいのではないかと思います。
企業年金のところは、さっきA委員がおっしゃったとおりで、それにちょっと付け加えますと、従業員の受給権をきちんと整える必要があると思います。アメリカでも、税制優遇を認めるにあたっての要件として、例えば、企業の積み方まで規定しているのです。日本の企業の場合は、積み増す曲線が、年齢が高くなるとカーブが急になるような積み方をしてあったりする。そういう積み方ですと、結局、従業員にとっては、転職には不利な仕組みが作られてしまいますので、そういうところまで含めて受給権の確保。あまり細かく書く必要はないのですけれども、受給権は今のままではいけないように思います。
18ページで「個人年金のあり方」に触れていますが、全体を通して、公的年金、企業年金、個人年金、全体を通して、税がどうあるべきかという議論がないのです。年金を通じての老後保障の全体の設計がないわけです。税制のかなり不整合な措置が取られたりしていますので、全体としてのあり方を議論するということを入れたらどうかと思います。
19ページで「高齢社会における雇用制度」ということが書いてありまして、ここで大事なポイントは、高齢者にとっての雇用だけではなくて、まさにここの題にあるような、高齢者社会における雇用だと思うのです。高齢者の働きたい人が働ける社会というのは、現役世代の働き方も変える。これは、部会長が何度もおっしゃっていることで、その点が重要だと思うのです。
この「基本的考え方」には、そういうことが少し書かれているのですが、その後の「働き方の多様化・柔軟化」「開業・創業」、「社会参加」という個別項目になると、高齢者だけが前面に出てきているように思いますので、ここは「高齢者も働ける」という、高齢社会における雇用制度ということで、少しずつ書き替えていただければと思います。
22ページに、医療のことが書かれております。(1)「医療を取り巻く環境と問題点」というところで、ここはまさに問題点の指摘だけなのですが、ちょうど今、医療制度改革とか、医療保険の改革が進んでいるときでもありますので、医療においても、もう少しは利用者の選択を機能させるような供給サイドの改革が必要であるということ、そのために、医療福祉分野の不要な規制は緩和していくというようなことを書き加えた方がいいのではないかと思います。
素案については以上です。
先ほど、文化の記述がないというお話が福島室長の方からありまして、文化というのは、生活様式、ライフスタイル、それが文化だと思いますので、私はそれほど違和感を感じないのです。
ただ、生活様式とかライフスタイルという点からみても、この報告で1つ大きく抜けているのは、住まい方といいますか、住まいの問題が抜けています。別の部会でやっておられるのかもしれませんが、生活という観点からもやはり重要です。今みたいに、住宅ローンを抱えて、ようやく払い終わったら、それを売って有料老人ホームに行く。ずっと住宅ローンに追われるというような生活は変わっていった方がいいわけですし、雇用が流動化しますと住宅ローンもそう抱えられないわけで、もう少し、ライフスタイルに応じた住み替えが可能な仕組みを作っていく。例えば、借家の供給を増やす、定期借家権を創設するという、住まい方に関することも入れられたら入れた方がいいのではないかと思います。
- 〔E委員〕
全体、「はじめに」の文章も含めてですが、雇用のシフトという基本的な考え方はよくわかるのですが、企業中心社会ということが問題というだけではないと思うのです。もっと大きな問題は、行政への過度の依存体質というのが本当は大きな問題であって、そこの部分をもっと書き込んだ方がいいのではないかと思いました。
行政改革会議の初めの文章にもありましたように、今の国民というか市民の、企業とか行政・国への依存体質を改めて自助努力とか、自己責任あるいは選択。その選択のためには規制緩和をして、多様な主体を参入させる、そういう流れというのが、私は、もう少し全面的に出てもいいのではないかと思いました。
そのためには、国と地方自治体の役割分担とか、地方自治体と民間企業とか個人の役割とか、そういったものをどうやっていくのかということが、私は大事ではないかと思ったのです。
そして、個人にシフトするということであれば、言葉だけではなくて、個人に権利をどう具体的な形で渡すのだということが、制度としてでも明確でないと、言葉だけで終わってしまう。まずここを、先の戦略会議でも出た、教育であるとか、保育であるとか、介護であるとか、バウチャーであるとか、利用券であるとか、冒頭申し上げたと思うのですが、国は国民を信頼している、あなたたちを信頼しているのですということを、言葉だけでなくて、具体的な形でもっと踏み込んでもらいたい。制度上でも、そこをやってもらいたい。
今まではどちらかというと、国民がなかなか迷いもあるし不勉強なために、国や行政がいろいろフォローしてあげようというので来たと思うのですが、今回、こういう形で経済企画庁として出すとすれば、私は、もっと大胆に徹底的に国民の方にシフトにするという、そこをもう少し強く出していただきたいということを強く思いました。
2ページのいろいろな項目も、そういった点をもっと強く、考え方と制度上でも具体的な形で出してもらいたいと思いました。
5ページの「公共職業安定機関の職業紹介」と……、テーマが大きいものから小さなものまで混在しているように思いましたので、こういったものは別に公共職業安定機関でなくても、民間が職業紹介をどんどんやればいいことであって、逆にいえば、公共的なものはやめるぐらいの考え方の方が、私は、合っているのではないかと思いました。
8ページ、(3)でコミュニティ活動。コミュニティへの参画ということは、今まで市民、地域住民にできにくかった。これも先ほど申し上げました、行政への、地方自治体への過度な依存があったがために、それができなくなったわけです。これは、参画そのものが目的ではなくて、コミュニティへの参画の目的というのは、住民主体の個性ある地域づくりであって、住民主体の地域づくりのために住民が参画する。それがNPOであるとか、住民参加である、そういう考え方がもう少しあってもいい。そのことが結果的には、先ほどお話があった文化――文化というのは、地域の人々の生きざまの集積が文化だと思いますから――、そういう地域づくりとして参画をするということの方がいいかなと私は思いました。
10ページ~11ページにあります、教育の問題です。国民生活に大きなウェイトを持っている医療とか福祉、あるいは介護、社会保障、教育、そういったものに関して、今まではパブリックセクター。特に社会保障とか教育という部分に関しては、パブリックセクターが相当イニシアティブを持って強い主導権を持っていたものを、もっともっと民間に任せるということをすべきだろうと思うのです。
私自身も、岡山県とか市の行財政改革でいろいろ意見を言う機会があるのですけれども、その中でいちばん人件費比率で多いのは、先生方の人件費です。それを民間に、要するに半分以上を学校法人化して私立にしていけば、地方自治体の人件費というのは相当セーブされるだろうと思います。そういったものも、もっと大胆に、義務教育であっても、基本的なものさえ履修しているのであれば、民間あるいは学校法人に任せるということを、もっともっと明記をしていただきたいと思いました。
そうすることによって、ここに書いていらっしゃる「多様な」というのですか、いろいろな子供たちの創造性とか、個性とか、豊かな感性を有する人材が出るのであって、文部省があくまでも主体的な、主役になった指導要領の下でいくら学校が頑張っても、多様性・個性というのはなかなか生まれにくい。そのことと同時に、校長であるとか、校長のみならず、地域にもっともっと教育権を委ねるということをすべきではないか。
例えば、現在の小中あるいは高等学校の教育においても、地域に対する教育というのがほとんどなされていないです。もっともっと地域に対して国民が興味と関心と、そして参画するような仕掛け、仕組みをどう作っていくかということが、私は、すごく問われているように思いました。
あと22ページ~23ページで、介護についてですが、「介護についての考え方」というのは、介護のみならず、ここは社会福祉についての考え方というのがもう少し……。社会福祉は、厚生省などでやられている基礎構造改革の基本的な考え方を入れられてもいいのではないかと思いました。社会福祉の基礎構造改革でうたっているのは、個人が、障害の有無や年齢にかかわらず、人として尊厳をもって家庭や地域の中でその人らしい安心ある生活をおくれるよう、自立を支援するという、このことは個人を尊重する「個」を軸にする考え方だと思います。そういう基本的な理念というものが、私は、前文にあった方がいいのではないかと。それを支えるためのいろいろな制度であるとか、あるいは公と民の役割、あるいは国と地方自治体の役割というものがあった方がいいと思うのです。
小さな具体的な話になりますけれども、例えば今、公的介護保険が来年から実施されようとしている。厚生省では、新ゴールドプランがある。しかし、これがおかしな話で、国のお金を使わないと新ゴールドプランにカウントされないという現状です。
先般も、私は仙台とか、あの辺をちょっと回ってきたのですけれども、国の裁量というか、そんなものを得なくても、ある自治体では公設民営をやっているのです。それは地方自治体の予算でもう施設をつくちゃっているわけです、それは議会の承認があればできるわけですから。国のお金を使う場合には、国会決議が必要です。そういうまどろこしいことはすべきではなくて、厚生省の福祉も個人への所得移転としての制度であれば、憲法の問題もない、国会決議もいらない。施設整備に関しては、地方自治体に主役を任せるのだというぐらいな大胆な発想をしておかないと、施設整備費もいちいち国の許可を得るとか、そんなことをしたら、とてもじゃないがこの高齢化のスピードに間に合わないだろうと思います。
それはあくまでも、国のお金を、厚生省裁量で施設整備費に使うということではなくて、それは地方交付税交付金なり、あるいは地方自治体にお金を入れておいて、あとは地方自治体が必要ならばそれをどんどん自由に使える、地方議会の議決の下でそれができる、そういう枠組みをもっと作らないと……。
そういうことを、私は、もっと述べていただきたいと思ったのです。
それと、先ほど申し上げたように、個人の権利をきちんと渡すという意味でのいろいろな制度というものも、非常に大事な点だろうと私は思います。個人を主体にするということを本当に担保するといいましょうか、国民が見ても、なるほどこういう形ならば国民に権利を委ねてくれたんだなということが、言葉だけでなくて、制度上でもできるような形の方がいいのではないかと思いました。
- 〔F委員〕
全体としてちょっと、論議を呼ぶような内容になっていないなという印象があります。
それで、「個」というふうにおっしゃるのですけれども、これも十数年前からの論議でありますが、「個」というのがいかなる内容なのかちょっとぼやけている。主体性というふうに言い換えた方がいいのかもしれない。
主体性、「個」という場合には、客観的に己をみつめるという意味もあると思うのです。特に教育のところで言いますと、子供たちがやりたいものを伸ばしてやりたいという面と、限定的な能力というのは客観的にあるわけですから、それらをはっきり見つめて、子供たちに、こういうコースがあなたの可能性を開くのにいちばんいいのではないかというような……。今教育界の中で一番ないのは、そういう進路指導相談機関のようなものです。それが公的に設置されないので、みんな何となくホワイトカラーになるために右往左往していて、リソースとしては無駄なエネルギーを使っている現状ということに、早くその解決を与えてやらなければならないと思います。
ですから、「個」の自由とか、「個」ということを押し出しているわけですけれども、それはいかなるバリアによって「個」が自由に、ある意味ではイノベーションといいますか、ディベロップできないかということについて……。
つるつるとした文章になっているのですけれども、何が問題なのかということがわかりにくいという感じがいたします。
近々のサミットの主題が、「ヒューマンリソーシィ」ということだそうです。ヒューマンリソーシィというのをどういうふうにするかということにつきましても、例えば、ものづくりであるとか、サービス産業化する中でサービス業をやる人材養成ができていない現状とか、特に国際的に活躍するいろいろな意味のプロデューサーの不足というのは相当深刻に考えなければいけない、これは英語教育とも関係があると思います。一項目あってもいいようなところかと思いました。
これは、経済審議会として私たちは作業したはずなので、ヒューマンリソーシィというふうな観点からもっと文章が出てくるのかなというふうに、このことを自分で言わないでおいて期待していて申しわけないのですけれども、そういう意味では、ちょっと違った感じの報告書が出ているのかなという感じがいたします。
今のままの報告書の中で、特に教育について書いてあるところを申し上げますと、2つぐらい問題があります。1つは、もし校長の裁量といいますか、個性ある運営ということを言うのなら、最初のペーパーでは、学校選択の自由という文言があったと思うのですが、あれが消えていますけれども、あれがないと……。結果として、そういう地域の学校に落ち着くかもしれないのですけれども、実際は運用上で文部省も認めていまして、嫌だという子供たちは、親の希望ですけれども、変えておりますけれども、学校選択の自由というのが働かないと、そういうふうに動かないのです、ものの道理というか。
これはまさに論議を呼ぶような内容なのです。日教組などは、恐らく反対すると思いますけれども、これを経済審議会あたりではせめて書いておいて……。中教審では、なかなか書けないのです。書いておいていただければと思います。そうしないと、恐らく、校長は何もできない。
学校評議会という地域の人たちが口を出すのも、高等学校の校長会では今、こぞってこれに反対しております、答申を出しても。要するに、口を出すなというわけです。
イギリスなどの例をみましても、学校評議会というのができて、あちらは非常にラジカルで予算が子供の数で、評議会の方にすべて予算権が来るというような結果になっておりますけれども、サッチャーの改革以来、いろいろ混乱はあったけれども、地域の父母たち、地域社会の人たちの関心というのは圧倒的に強くなったというふうに言われております。
ですから、ものがそういうふうに自由に動くように制度改革しなければ、きれいごとを言っているだけで、なかなかそうはならないということが1つです。
それから、どうも我が国は本音と建前の動きが非常に違うわけです。これが見事に学校、教育の中に現れているわけです。みんな仲良くやりましょうというのが学校なのです。平等主義でやりましょうというのが学校なのですが、しかし、そうは言ってもなかなか役に立たないので、結局、塾に行って、塾が頼りになる。こういう二層的な、ダブルスクール状態になっていくわけです。
しかも、指導要領というものが、個々の学習の仕方をかなり縛るにもかかわらず、結果として何が生徒に成果があったのかという統一試験みたいなものは存在しないわけです。逆だと思うのです。成果はこのぐらい必要です。しかし、そのプロセスにおいては、教員の自由に教えてよろしいというところが抜けているわけです。自由もないわけです。そして、最終的な人材養成としても、必ずしも今は成功していないだろうと思います。中等教育までは非常に成功していると言われていたのですけれども、中等教育までも危うくなっているのが日本の現状だということで、私は、とても心配をしております。
そういうことがありまして、1つは、ですから、公的な資格機関というのをつくっていくことだと思います。現在は、大検というものがありまして、高等学校程度の学習を、平均点をクリアすれば、終了したといいますか、その程度の学力があるというふうに免状を出すのです。これは高等学校に行かない子供たちのためなのです。これをもっと普遍的に、学校に行っている子供たちもこういう客観的な外部の試験によって高等学校卒業資格というものを持て、資格・資格でつなげていってディベロップしていくというのが、たぶん、21世紀のやり方なのだろうと思います。
今は、年齢で切っていくわけですから、皆さんご一緒にというので、その中に多くの欺瞞を抱えながら、教育現場は腐敗していくということなのです。
ですから、「個」という主体性というところをみるにしても、自分は「こういうふうにやりたいな」と思うことと、個人で考えれば「自分は、しかし、能力はこの程度」ということと、常に自分で考えながら「個」というのを決めていくわけです。そういう客観的に見つめる公的な機関、進路指導機関とか、資格機関とかいうようなものを整備する必要が私はあるように感じます。
それから、主体性ということでいえば、高齢者も、老齢者も、主体性を持つべきだというふうに考えております。ですから、医療機関の方は、徹底した医療の情報公開。延命あと半年というときに、どの程度の苦痛のある手術とか延命措置を受けるのかという、苦痛についての情報などもございません。どの医療機関がどの程度の優れた治療をするのか。これはアメリカですと、民間の機関などが、手術料に対してどのぐらいの成功率があるかという調査をして公表しています。これはNPOの仕事なのかもしれませんが……。
私が年を取ったときに、半年ぐらいの延命でこんなに手術を受けて、スパゲッティ症候群になるのならば、もういい。尊厳的に死にたい、と思うかもしれない。それは老人の主体性の問題だと思います。
そういう意味では、医療についてはそういう情報公開の必要をぜひお願いしたい。その文言も書いてないような感じがいたしました。その辺を付け加えていただけるとありがたいと思います。
- 〔G委員〕
2ページ、自由と秩序のバランスというご指摘があったわけですが、自由を重視するというのは、結構ですけれども、それだけに自由・自己責任・そして自己責任を超えるところにセーフティネットという発想が非常に大事でありますから、自由を重視するという形での書込みがあるならば、自己責任・それを超えるところのセーフティネットの重視という形で、もう少しここを敷衍して書いていただきたいというのが1点です。
同じ2ページに、「以上のような認識の下で、同部会では」となっているのですが、「以上のような認識」というのがずっと読みますと、ほとんどが「個」が主役である時代にどうするかというような話です。年金とか、雇用とか、医療とか、介護とか、「個」が主役となる時代におけるそういう社会保障のあり方というのをもっと、どちらかというと、1ページの真ん中に書いてありますけれども、高齢化現象とか、経済の低迷とかいうことで国民が大きな不安を持っている、それにどう応えるかという視点で、恐らく③、④、⑤が出てきているのではないか。①、②と少し違うのを一緒にして、「以上のような認識の下で」ということで果たしていいのだろうか。年金とか、雇用とか、医療とか、介護という視点についてもう少し丁寧に書く必要があるのではないかという感想であります。
それから、年金とか医療は、D委員等から相当ご意見があったのですが、次回も検討が続くようですので詳しくは言いませんが、例えば、「厚生年金の廃止(民営化)」の話ですが、世の関心は、公的年金というのは1階だけにして、2階建て以上は積立方式の企業年金なり個人年金にするということの議論が大きいわけですから、厚生年金の民営化といっても、これはどういう切り口で議論するのかというのが非常に曖昧になりますので、強制的な形での民営化というのがあるかもしれませんが、国民的議論をこれから求めるというのならば、厚生年金の、例えば廃止というものはズバリ書いて議論を求める方が親切ではないかという気がいたします。
あとは次回にさせていただきます。
- 〔H委員〕
前回、欠席してすみませんでした。
まず、私は、2ページの「自由と秩序のバランスを適正に保つ」という文章は、ちょっと違和感を感じます。自由と秩序のバランスでなく、自由と責任あるいは責任感のバランスだと思います。「秩序」という単語はあまり好まないです。「『秩序』とは何だ」ということに必ずつながりますから。
単身赴任のことですけれども、実を言いますと、いろいろな国の人々に単身赴任の状況を……、ほとんど答えはないです。存在しません。存在するのは、中国です。中国は、かなりあるらしいです。中国以外は、単身赴任についてのインフォメーションは全然なかったようです。
自由の観点からみて、夫婦が選んで、2年間互いにそれでいいと、本当に自分から賛成することであれば、それは全く問題ありません。問題は制度的な妨害がある、夫婦が一緒に行きたいのですけれども、制度的にできないということがあるかどうかです。
私は、そのことについては全くどっちかはわかりません。その制度的な妨害があるとすれば、それが何だということもよくわかりません。それについての調査、世論調査とかデータがあれば、単身赴任をやっている理由は何か、選ぶチャンスがあれば選ぶか、そういうことがあれば助かると思います。
自分のイギリスの例を言いますと、必ず夫婦・子供が一緒に行きます。海外転勤は、当然行きます。ある程度まで企業はその金銭的な援助を出します。
日本の場合は具体的に妨害があるかどうか。そして、あるとすれば、それは何だということはわかりませんから、どういう発想で、どういう解決があるか、それはデータがあれば助かると思っています。
最後のポイントは、これは直接にではないのですけれども、間接的に関連があると思います。生活・文化に対して小さな変化ができれば、何がいちばんいいかといろいろな人に聞きました。その中で、ディ・ライト・セービング・タイムということがよく出てきました。つまり、サマータイムというです。
サマータイムで、地域への参加、コミュニティ活動、子供の育成などは間接的に関係があると思います。
私の知っている限り、サマータイムの話は、少なくとも25年間ぐらい日本の中で議論されています。例えば、農業からみてこれはできない、あるいは銀座とか赤坂が非常に景気が悪くなるからできない、こういう種類のことが出てきますけれども、ハードデータはあまりないです。
ですから、提案として、それも世論調査で、これが好ましいかどうか。産業界、いろいろな協会のことではなくて、一般の人々、国民の一人ひとりが、これは好ましいか好ましくないかどちらかということを……。場合によっては、国民投票でもいいと思っています。
これは素案に関係ないのですけれども、帰属性、子供の育成、コミュニティの参加、特に東京ではなく、地方の町で通勤時間が30分以内・20分の人はかなりいますから、その1時間の昼があれば、家に帰っていろいろなことができます。
以上です。
- 〔I委員〕
素案につきまして、3点申し上げたいと思います。
第1は、10ページ~11ページにかけまして、人材の育成の問題が書かれております。内容的にはごもっともな点が多いわけですが、私は、前から申し上げましたけれども、子供健全育成というものを考える場合に、小学校までの子供たちというのは、比較的親御さんの言うことも聞くし、地域社会に溶け込みやすいですが、問題は中学生、高校生の方々ではないか。この子供たちは、どちらかというと、最近は、家に帰ると個室に入りパソコンをいじり、学校に行って友達と遊ぶということで、親との接触もだんだん少なくなってくる。こういう子供たちに、家庭との接触あるいは地域との接触をどう取っていくかということが非常に問題ではないか。それがいろいろな少年犯罪の低年齢化につながっているのではないかという気がしてならないわけです。
10ページでは、初等中等教育段階の子供たちにいろいろなことを教えていかなければならないと書いてありますけれども、特に中等段階・高等学校の子供たちに対して、地域とのかかわりというものをもう少し強める方法を具体的に考えていく必要が、これからはあるのではないかという気がしてならないわけです。
内容的には、ここで言っているのと同じようなことなのかもしれませんが、特に、普通の子供たちとの接触というもの、地域とどうかかわるかということが問題だと思います。
欧米の学校では、中学生や高校生の内申書の中に、ボランティアの活動でどういうことをやったかというのも評価されるということも聞いております。学校教育にそういうものを取り込むことによって、そちらの方に目が行くという可能性もあるのではないかという感じがしているわけでございます。
第2は、15ページ以下の年金の問題でございますけれども、「基本的考え方」の中で、通常の支出をまかなう役割は公的年金が担うと、基本的なあり方としては書いてあるわけですが、通常の支出という考え方が、給付水準との関係でどのように考えていくのか。具体的には、生計費の食費とか、被服費とか、光熱費とか、住宅費とかに分けて家計支出というものを分類し、普通の家のどこまでを通常の支出という形で読んでいくのかということが出てこないと……。
これをさっと読むと、なるほど通常の支出は公的年金でやってくれるのだな、という感じですが、なかなかこれの具体的なイメージが出てこない。特に通信費とか、交際費という問題は、高齢者にとってはだんだん孤独になってくるということもありますから、電話でお互いにいろいろなコミュニケーションを図る、あるいはお互いの交際を大事にするということですが、どのように考えていくのか。そのようなことも含めて、通常の支出というものをどのように考えていって、年金問題を考えていくのかということが必要ではないか。
特に、基礎的な年金というものを一般財源でまかなう、財源の税方式化というものを考えるとするならば、生活保護との関連というものをもっと深く考えていくべきではないかと考えております。
第3は、介護保険との関連でございます。24ページの「介護保険」で、介護保険の考え方、これからの介護保険制度の問題について触れておりますが、介護保険を来年4月から実施するということで、市町村長の頭の中はこの問題で一杯でございます。市町村長さんにお会いしていろいろなお話を伺いますと、必ず出てくる問題が、介護保険をどうするかという問題でございます。
それを集約すると、私は、3つあると思うのです。
1つは、介護の認定基準。実際に認定してくださいといって申請してきたときに、果たしてこの方をどういうふうに公平に認定できるか。自分のところの市町村の認定と他の市町村の認定との間にアンバランスが出てこないだろうか、これを非常に心配しております。国の方でも、この認定基準について非常に詳しい基準なども今検討していらっしゃるようですが、現実問題として、この問題は、保険制度ということになってまいりますといろいろ難しい問題が出てくるのではないかという感じがいたします。
もう一つ心配しているのは、介護体制です。自分のところにどれだけ介護するマンパワーが確保できるかという問題。これは自分たちで、民間、あるいはボランティアの方々等も含めて、介護体制というものをどのように確保できるか、この問題が2つ目です。
3つ目が、ここに触れておりませんが、介護保険財政をいかに健全化していくかという問題です。これには、市町村長さんがいちばん頭の痛い、現在やっております国民健康保険との関連がどうしても出てくる。国民健康保険を運営するために、非常に市町村が苦労している。これは結果的には高齢者医療が非常に多いということもあるわけでしょうが、ともかく国民健康保険制度というものが非常に重荷になっている。それに加えて介護保険を市町村の財政でやっていかなければならないというのは、えらい大変。
具体的に言いますと、65歳以上の方々からいただく保険料の問題です。お国の方では、1人当たり月額2,500円ぐらいではないかというモデルが示されておりますが、各市町村長さんが言われるのは、とてもそんなことではできない。3,000円だとか、3,500円という試算が出てきますと言う。月額3,000円だとすれば、ご夫婦だと6,000円。6,000円ということは、年間で7万2,000円なわけです。これは高齢世帯にとりましてはかなりの負担になってきます。それから、介護に伴いまして、1割負担という問題がございます。1号負担の1割があるわけです。最高のランクになりますと、月に3万5,000円の自己負担が必要になってくる。そのようなこともございまして、これらの保険料というものをきちんと確保できるのだろうか。確保しても、なおかつ保険財政が赤字になってしまうのではないだろうか、そういう心配を非常に強く持っているわけです。
これらの問題について、市町村に「大丈夫です、国が最後までちゃんと責任をもちます」ということを言ってやらないと、これは動くのが難しい。
しかも、今年の10月からは、介護の認定申請が出てくるということを伺っていますけれども、そういう段階で、この素案を出されるということですので、その辺のところも実施主体に十分配慮してあげる文章をお願い申し上げたいと思っています。
- 〔J委員〕
前段の部分で、「個」という言葉がたくさん出てくるわけであります。1ページの下の方に、「『個』が主役になる時代」とありますけれども、今までの主役というのは一体何だったのかという、その辺をちょっと質問したいわけであります。
それから、「個」の時代に向かうということも、全体的に間違いなくそういうことだろうというふうに思いますけれども、先ほどどなたかが言われていましたが、その裏には自助努力の部分、個人として努力の姿勢といいますか、時代の変化というものにどう対応していくかという、そういう意識改革の部分というのが1つ必要かなと思います。
先ほど、会社人間から家庭へ戻ってこられて、ある日突然そんなことになっても困るというお話がありましたけれども、これからは男は大変だなと、会社を出されて、家を出されて、行くところがなくなってしまうな、そんな感じがするのです。これも1つは、会社人間から、もし家庭に戻るとすれば、そこに意識改革というものが非常に必要なのかと。それがないとなかなか難しいかなと思っております。
それから、10ページにあります教育の問題です。これはものすごく大事なことでありまして、知識というのは、いろいろ物事の判断のベースになるわけですから非常に大事なことだと思うのですが、人間としてどう生きるとか、ここにあります、他人へのおもいやりとか、社会貢献の精神だとか、社会の生きていく上でのルールだとか規範だとか、正義感だとか、公平さだとか、そういったものを子供にこれからかなり教えていかないと、その辺にかなりウェイトをかけていかないといけないかなと。まさに知識というところから、心の知能指数の方へシフトしていくことがすごく大事かなという感じがしております。
それから、全体的に、お年寄りの問題についてはいろいろな記載があるのですが、もう一つの大きな問題であります少子化の問題、これは非常に大事な問題であります。これから、子供が減ってくるということは、産業構造は変わりますし、まず市場が大きく変化してくる。いろいろな制度というものを維持していく上で、そのベースになる子供が減ってくるということは大問題であります。
21ページに、「少子化の基本的な要因の一つは、子供をもつ女性の雇用継続と育児の両立が困難な環境にあり、これを解消していく必要がある。」とありますけれども、制度とかが充実していけば子供というのは増えていくのかというと、ちょっと違うのではないか。
今、日本人全体が、1つは、守りに入っているのかなと。要するに、現在の生活レベルを維持したい。これを落としたくないというのがベースにあるかなと。子供1人育てますと、今、二千何百万かかるという話がありますから、3人も育てるということになりますと、老後の可処分の部分はずいぶん落差があるわけです。我々が育ってきた環境からいきますと、今の所得で子供の2人、3人を育てるというのは、所得からいけばそんな困難なことではないと思うのですが、子供が増えない。日本人全体が今の生活をとにかく守っていきたいという、その守りの段階に入ってきた。
人生の後半というのを、介護保険とか何とかで、みんなで支えようとするのだったらば、子供というものも社会の財産といいますか、将来を担ってもらう大事な部分ですので、この前半の部分も、子供のある人もない人も公平に負担する、そのようなことも1つ必要かなと。
例えば、介護保険一つを取りましても、子供のない人たちというのは、子供のある、要するに一生懸命に子供を育てた他人の子供に、将来を支えてもらうということになるわけですから、前半をみんなで支える。子供を育てるということについても、何かそういうルールが出てこないと、少子化というのはなかなか解決していかないという気がします。
それから、最後のページに「寝たきり老人ゼロ作戦」というのがございました。いわゆる高齢期の健康維持に向けて、若年時から生活習慣の改善を図ることが重要という認識があります。国民生活ということを考えますと、基本的には衣食住であります。この3つは、今後も間違いなく十分満たされていくのだという前提に立っておりますけれども、私は、21世紀は、今の日本の実情・自給率その他からいきますと、食というものは相当考えておかなければいけない。特に高齢期の健康ということを考えますと、医食同源といいますか、食べ方といいますか、食の改善ということも、ある意味では将来の医療費を減らしていくとか、介護の費用を減らしていくとかいうことにとっても非常に重要ではないか。
まさに今、米づくりの農家が朝農作業に行くときに、コンビニエンスストアで弁当を買って行くという、そんな時代でありますから、なかなか食の改善というのは難しいことかもしれませんけれども、医食同源という、食の面から健康あるいは医療というものを考えていくという視点も大事かと思っております。
- 〔部会長〕
どうもありがとうございました。
大変恐縮でございますが、所定の時間をオーバーしてしまいまして、まだご意見がおありと思いますけれども、本日の審議についてお気づきの点がなおございます場合には、事務局の方までファックス等でご連絡いただきたいと思います。
今日の議論はまだ途中経過ですので、改めてまとめることはないと思いますけれども、私も、いろいろな先生がおっしゃっている自由の問題について、もう少し考える必要があると思います。特に、自由と秩序という言い方は、ちょっと改めた方がいいかと思います。
都立大の宮台さんが、前に議論をされていておもしろいなと思ったのは、よく自由ということについて、人に迷惑をかけなければ何をやってもいいのかというふうに言われるけれども、それは何をやってもいいに決まっているではないか。それが自由の定義だ。
それが正しいかどうかとわかりませんけれども、その場合にも、人に迷惑をかけるということは、ではどういうことなのかというのをちゃんと定義しておかないと、なかなか難しい。あるいは、人に迷惑をかけない以上に、何かやってはいけないことがあるとしたら、それは何なのかということをもう少しいろいろデファインした方がいいだろうと思います。
いずれにしても、ここのところは議論をもうちょっと詰めていった方がいいと思います。
もう一つは、私は、市場の機能というのを強調した方がいいのではないかと思います。これはいろいろな委員の方がおっしゃっていましたけれども、利己主義という言い方は問題があるかもしれませんが、例えば、企業と個人を考えれば、それぞれ利害が違うわけです。個人はできるだけ高く雇ってもらいたい。企業はできるだけ安く雇いたい。だから、個人のためを思って企業が活動するというのは、ちょっとおかしいわけです。本来利害の違う者同士の利害を調整する場が市場なわけですから、それを政府とか、誰か顔役が調整をするのではなくて、どういう形で市場が調整していくか。あるいは市場の場において選択をしていくということで、例えば、福祉についても、医療・介護、あるいは教育についても、選択されなかったサービスは消えていく。そして、選択されるサービスがどんどんそこで生かされていく。そのような形を、もうちょっと強調する。あるいは、地域についても、いいサービスを提供できる地域は伸びていくし、そうでない地域はどんどん過疎化していくという形で、その選択が行われるということが必要ではないかということだろうと思います。
F委員も言われたように、そのような視点を少し入れながら、この内容を事務局にお願いしたいのは、議論を呼ぶ形にしていただいた方がよろしいかと思います。これは前回も申しましたけれども、物事にはいいところと悪いところがあるのだろう、いいところを残してながら悪いところを直していきましょうという話だと、従来の報告書とあまり変わらなくなってきてしまうので、いいところは49%あって、消えちゃうかもしれないけれども、今問題があるところを生かすためには思い切ってこういうふうにした方がいいのだ、というような書き方にしていただいた方がいいという気がします。
それから、単身赴任の問題、サマータイムの問題というのは、私は非常に大切だと思います。というのは、単身赴任とかサマータイムの問題をコラムで取り上げるのもいいですけれども、先ほどH委員もちょっと言われたように、単身赴任の問題などに、例えば企業と個人の関係とか、家族のあり方とか、離れて暮らすのだったらどうして家族をやっているのでしょうか、というような視点で議論を深めていくことができると思うのです。あるいは地域の関係も、単身赴任している場合に、その地域との関係はどうなるのですか。だから、単身赴任とかサマータイムというのは、そのこと自体をどうやったら解決できるかということでなくて、そこをシードにして、そこから、ここで問題にされている議論がいろいろな側面から見えてくるような工夫を少ししていただけないかなと思います。
いずれにしても、今日は皆さんに意見を言っていただきましたけれども、ワンラウンドしか議論していただけなかったので、私は、事務局に対する質問ということもそうですけれども、委員同士でもうちょっと議論した方がいいかなという部分も考えておりますので、今日の委員の先生方からご意見を踏まえて事務局の方で報告を修正していただいた後、もう一度議論する機会があると思います。
なお、次回の部会では、先ほど事務局の方から説明がありましたように、本日ご審議いただいた報告(素案)に加えまして、一枚紙でお配りした「議論を深めるべき論点」について集中的にご議論いただく予定にしております。
それでは、次回の日程について事務局よりご説明いただきたいと思います。
- 〔福島推進室長〕
次回は5月27日木曜日の午前10時から12時まで、場所は本日と同じ会議室(436号室) でございます。また別途開催通知を郵送させていただきます。よろしくお願いいたします。
- 〔部会長〕
ちょっとお願いなのですけれども、今日まだ十分に議論ができなかった点があると思いますので、次回も、素案についても少し議論を、当然、論点について議論をすればそうなってくると思いますけれども、した方がよろしいかと思います。
それから、今日の事務局についてコメントとかご質問があった点についても、修文するという形だけではなくて、議論があった点について、事務局としてこのようにリプライするというふうに、時間があれはメモをまとめておいていただければと思います。
それでは、これにて今日の議論は終わらせていただきます。
お忙しいところをありがとうございました。
以上