経済審議会第6回経済審議会地域経済・社会資本部会議事録

時:平成11年5月12日

所:共用第1特別会議室(404号室)

経済企画庁

経済審議会地域経済・社会資本部会(第6回)議事次第

日時 平成11年5月12日(水)15:00~17:00

場所 共用第1特別会議室(404号室)

1.開会

2.「地域経済・社会資本部会報告書(素案)」及び「追加的に議論すべき重要論点」について

3.閉会

(配付資料)

資料1 経済審議会 地域経済・社会資本部会 委員名簿

資料2 経済審議会 地域経済・社会資本部会報告書(素案)

資料3 追加的に議論すべき重要論点

資料4 スケジュール(案)

経済審議会地域経済・社会資本部会委員名簿

部会長

森地 茂
東京大学大学院工学系研究科教授

部会長代理

安土 敏
サミット(株)代表取締役社長
企業小説家

石川 嘉延
静岡県知事

井上 繁
(株)日本経済新聞社論説委員

北村 浩子
(株)キンスイインターナショナルリゾート代表取締役

小林 重敬
横浜国立大学工学部教授

坂本 多旦
(有)船方総合農場代表取締役会長
全国農業法人協会会長

生源寺 眞一
東京大学大学院農学生命科学研究科教授

戸所 隆
高崎経済大学地域政策学部教授

中邨 秀雄
吉本興業(株)代表取締役社長

長谷川 逸子
長谷川逸子建築計画工房(株)代表取締役

林 淳司
川崎重工業(株)取締役副会長

溝口 薫平
(株)由布院玉の湯代表取締役社長

宮脇 淳
北海道大学大学院法学研究科教授


〔部会長〕

ただいまから、第6回の地域経済・社会資本部会を開催させていただきます。

 本日は、ご多用中のところを遠路お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

 本日は、これまで委員の皆様方にご検討いただきました内容を踏まえまして、事務局から本部会としての報告書素案と、追加的に議論すべき重要論点が提示されておりますので、これについて、皆様のご意見をいただきたいと思っております。

 なお、第1回目の部会でご了承いただきましたように、本部会の資料は「原則として議事要旨と併せて公開する」こととしておりますが、本日お諮りする報告書素案とその追加論点に関します資料2、資料3につきましては、最終的な報告書のとりまとめと同時に公開することとさせていただきたいと考えております。この点につき事前にご了承いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔部会長〕

では、そのようにさせていただきたいと存じます。

 それでは、まず、事務局より、本日の資料についてご説明いただきます。

〔事務局〕

それでは、最初に、資料2をご覧いただきたいと存じます。「報告書(素案)」とございますように、この後にご説明申し上げます、追加論点の書き込みなどによって構成そのものも変わってまいります、いわば全くのたたき台でございますので、そのようにご理解をいただきたいと存じます。

 初めに、目次で構成をご覧いただきますと、「はじめに」は、「国土のあり方」から入っております。第1章が「まちづくり」で、1に「基本的考え方」、2に「ゆとりの『空間』とゆとりの『時間』のまちづくり」、3に「住民参加の独創的なまちづくり」。第2章が「地域経済・中山間地域等の活性化」で、1に「基本的考え方」、2に「独自の産業・文化を持つ地域づくり」、3に「多面的機能の永続的発揮を可能とする中山間地域等の活性化」。第3章が「21世紀型社会資本整備」で、1に「基本的考え方」、2に「国と地方の役割分担」、3に「優先整備分野」、4に「整備・運営システムのあり方」、素案ではこのような3章立てとさせていただいております。

 早速、「はじめに」ですが、企画部会の方で議論がされていました「歴史的潮流の大転換」から入って、

 第1に、規格大量生産型のシステムから「多様な知恵の時代」へ、あるいは「ネットワーク経済社会」へと移行する。

 第2に、グローバル化が新しい段階に入っている。

 第3に、少子高齢化によって、今後、人口は頭打ちから減少へと転じる。

 第4に、環境問題あるいは資源・エネルギー問題が大きな制約要因となっている。

 こうした大転換に伴い、これまでのシステムが非効率をも生み出してきている。

 国土の社会をみた場合にも、例えば

  ○ 広域的に拡大した都市が、通勤時間の拡大等をもたらしている。

  ○ 東京一極集中の下で、中央に依存した地域づくりの結果、地域資源が有効に活用されていない。

等の非効率が講じている。

 2ページにまいりまして、今後の「国土のあり方としては」ということで、「個人や地域の自主性、多様性の尊重」、「時間的・空間的ゆとりといった豊かさの増進・持続を実現していくことが基本となる。これを実現するためには」、今申しましたような「新たな制約下における効率性が」必要ではないか。

 このような観点から、「まちづくり・都市構造のあり方、地域の活性化のあり方、その基盤整備を担う社会資本整備のあり方を考える必要がある」。

 「具体的には」ということで6点を挙げてございますが、

 ① コンパクトな都市構造に再編してゆとりの「空間」とゆとりの「時間」を確保。

 ② 地域経済の活性化を図るため、地域資源を活用した独自の産業・文化を持つ地域づくりを推進。

 ③ 首都機能移転に向けて積極的な検討。

 ④ 中山間地域等については、国土・環境保全等の多面的機能の永続的な発揮。

 ⑤ これらのまちづくりや地域経済・中山間地域等の活性化を支えるネットワーク化等に資する社会資本の重点的かつ効率的な整備。

 ⑥ 以上に共通して、地方分権、広域的対応、地域住民・国民の幅広い参画。

などを基本とする、という前書きになってございます。

 3ページが、第1章「21世紀初頭のまちづくり」で、1.「基本的考え方」では、歴史的潮流変化に対応した今後のまちづくりのあり方として、中ほどに①~⑤に整理してございますが、コンパクトな都市構造への再編、価値観や生活スタイルの多様化への的確な対応、高齢者や女性の社会参画の促進、環境負荷の軽減への配慮、住民参加による個性的・魅力的なまちづくり、ということを基本として、個人の夢の追求に資する。同時に、生活環境・ビジネス環境の向上を図ることにより、国際競争力をも強化する。

 こうした「方針を実現する政策のあり方としては」ということで、4ページにとんでいただきますが、

 ① 第1に、ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」のまちづくり

 ② 第2に、住民参加の独創的なまちづくり

を政策方針とするということであります。

 2.「ゆとりの『空間』とゆとりの『時間』まちづくり」ですが、このコンセプトは、「様々な機能の生活空間の良質化と拡大を図り、ゆとりの『空間』を確保する。併せて、それらの近接化・複合化や高度な交通・情報通信インフラを介したネットワーク化により、移動時間の短縮、利便性・効率性の向上や広域的な機能補完・地域間連携を促進し、余暇や多様な交流の機会が増大する、ゆとりの『時間』を確保する」。

 「このような、様々な高度な機能がコンパクトに集積し、ネットワーク化された、『小さな大都市』構想を推進して、高齢社会にふさわしい『歩いて暮らせるまちづくり』の実現も同時に目指す」という考えでございます。

 (1)「ゆとりの『空間』~様々な機能の生活空間の良質化・拡大~」ですが、「このため、住宅・オフィス・福祉施設・道路・公園など生活空間の基盤となる施設について、土地の有効高度利用等を通じて、バリアフリー化」、様々な情報化、安全性の向上、環境負担の軽減に資する省エネルギー化等のレベルアップをしながらスペースの拡大を図っていく。

 同時に、「歴史・文化・風土や水辺、緑等の自然環境の効率的な保存と活用を進める」ということでございます。

 ①「基盤的施設のレベルアップとスペース拡大」のア「施設のレベルアップとスペース拡大」が5ページからございますが、施設ごとに若干の記述があります。

 (ア)「住宅」については、〔居住水準や様々な機能の向上と100年住宅やスケルトン住宅の整備〕、〔良質なファミリー向け賃貸住宅の整備〕の促進といったことを書いてございます。

 (イ)「商業・レジャー施設・オフィス」については、駐車場も含めたスペースの拡大スペースとか、商品・サービス検索などに関する情報化を推進するということを書いてございます。

 6ページの(ウ)「医療・福祉施設」については、〔施設環境の向上と情報ネットワーク化〕ということを書いてございます。

 (エ)「教育・スポーツ・文化施設」については、相互利用の促進、生涯学習施設の充実、文化施設の魅力的な運営ということを書いてございます。

 (オ)「道路、公園等の都市基盤施設」については、〔安全でゆとりある公共・交流空間の確保〕、〔歩いて楽しめる歩行空間・公共空間の確保〕ということを書いてございます。

 イ「良質な住宅、商業・業務施設の整備促進策」では、(ア)「定期借地権付住宅の供給促進」ということで、7ページの上にありますけれども、地主に対する税の問題、購入者の融資に対する弾力化といった措置が書いてございます。

 (イ)「借家制度の改善」では、借家制度について定期借家権の早期導入と、「正当事由」制度そのものの見直しを進めるということを書いてございます。

 ②「歴史・文化・風土・自然環境の保存・活用と美観保持」では、そのための施策を挙げておりますけれども、「地域の地場産業や観光産業などの活性化に資するものを優先」するなど「効率性の確保に留意する」。そのために様々な「情報を公開した上で」、「早急な合意形成を図る」ということを書いてございます。

 (2)が「ゆとりの『時間』~様々な空間の近接化・複合化・ネットワーク化~」ですけれども、これは「様々な空間の近接化・複合化・ネットワーク化を進め」、移動時間の短縮などを促進して、ゆとりの「時間」を確保するということでありますが、8ページで、「このため」ということで、

 第1に、①「既成市街地の再編の推進による様々なゆとりの空間の近接化・複合化」を挙げてございます。

 ア「計画的な土地の有効高度利用と用途複合の促進」ということで、〔高度利用の促進〕については、容積率の特例制度、容積率移転を可能とする制度の積極的な活用など、〔用途複合の促進〕については、用途規制について、「より広範な用途複合を図ることを検討する」。また、「容積率のインセンティブ付与等により、望ましい用途の集積・複合を促進する」とございます。

 イ「市街地の面的整備事業の推進」ということで、〔市街地再開発事業と土地区画整理事業との立上げの円滑化と両事業の一体的施行〕を新たに実施する。〔密集市街地の整備と市街地住宅の供給〕を総合的に行う事業を推進する。9ページにまいりましては、都心部の虫食い地等の〔低未利用地の有効利用〕の方策。その下に、〔大規模遊休地等の円滑な土地利用転換〕ということで、今話題になっています産業構造の転換を支援するための工場跡地などの土地利用転換について、「土地利用規制の特例をはじめとする」、「総合的な支援方策について検討する。」としてございます。

 ウ「民間事業者に対する資金面での公的支援と不動産の証券化の促進」ということで、証券化の関係では、「証券化市場への放出を促進するための税制の検討」などを挙げてございます。

 エ「都市中心部における住宅や福祉施設の整備」の促進策ということで、住宅については公的な住宅、補助などによる民間での供給を促進する。福祉施設の関係では、面的な事業の一環として整備するほか、住宅や公園等との一体的整備を促進するということを挙げてございます。

 第2が、ネットワーク化の関係で、②「高度な移動性と情報交流を確保する交通・情報通信インフラの整備」でございます。

 ア「交通インフラ」では、都市内交通から国際交通に至る高度化のためのハード面・ソフト面の施策を挙げてございます。

 イ「情報通信インフラ」では、テレワーク、SOHOといった在宅での勤務を可能とするもののほか、様々な住宅の情報化を進めるとしてございます。

 第3が、③「役所での所要時間を短縮する電子政府の実現」ということでございます。

 3.「住民参加の独創的なまちづくり」ということで、具体的には、①「住民参加と合意形成の促進」では、官民の情報交流を強化するための拠点の整備などを挙げてございます。

 ②「土地利用計画制度の充実」では、都市計画の決定手続について、住民や民間業者からの要請や提案がより反映されるような拡充ということを書いてございます。

 次に、第2章「地域経済・中山間地域等の活性化」でございます。1.「基本的考え方」は、中ほどの「今後の地域経済については」というパラグラフをご覧いただきますと、

 意思決定能力の地域分散を図ることにより、地域が中央の政府や企業に依存せず、独自の産業や文化を持つ地域づくりを進め、地域の個性的・自立的発展を図ることが重要である。

 このため、地域密着型産業の振興や地域独自の産業の創出と国際競争力の強化に向けた取組を行うとともに、地方自治のあり方を見直し、自立型の地域構造を構築する。

 中山間地域等は、国土・環境保全等の多面的機能を発揮しているが、担い手不足によりその機能の低下が懸念されている。

 このため、魅力ある地域を形成しつつ、その多面的機能を永続的に発揮できるような施策、あるいはこれを支える基礎となる地域内外の交流を促進する。

という考え方でございます。

 2.「独自の産業・文化を持つ地域づくり~自立型地域構造の構築~」ですが、その具体的な内容は、13ページの(1)「地域密着型産業の振興」で、地域完結性が高く、安定的な経済基盤の確立に貢献する地域密着型産業を振興策でございます。

  ①「地域内商圏の確立」で、ア「中心市街地の活性化」は、商店主などを中心に据えて、官民が協同して取り組むべき振興策を挙げてございます。

 イ「郊外型大型店舗の個性的整備・運営」は、郊外型の大型店舗についても、緑地との一体的整備といった個性的な整備・運営が必要ではないかとしてございます。

 ②「福祉関連サービス等における創業」は、新たな地域密着型産業としての福祉関連サービスなどにおける創業の支援でございます。

 ③「担い手の確保・育成」は、これらの担い手の確保・育成策として、地元商工会議所などへの支援策を挙げてございます。

 次の14ページで(2)は、輸出型産業の振興を図るための「独自の産業創出と国際競争力の強化」というタイトルで、そのために、①で「地域資源の有効活用」を挙げてございます。

 ア「観光資源、農林水産物、伝統文化・技術等を活用」は、典型的な地域資源である観光資源、伝統・文化技術等を活用した取組に対し、戦略的な創業支援措置を講じる。

 イ「既存の産業集積の再生」は、既存の産業集積についても、その再生を図れるような企業誘致や創業への支援措置を講じる。

 ウ「リサイクル産業の振興」は、地域資源を持たない地域にとっても、国際競争力を獲得できる有効な手段になりうることから、モデル事業の設定やリサイクル資源搬入のためのインフラ整備ということで振興を図る。

としてございます。

 ②「知的インフラの整備」で、具体的には、高度な情報通信インフラ、地元大学・研究機関を中核とした産官学連携の推進ということを挙げてございます。

 ③「情報発信能力の向上」で、具体的には、地域情報の電子データベース化、番組制作、イベント開催などによる活発な情報発信ということを挙げてございます。

 ④「交通インフラの高度化」は、国際拠点や高速交通機関の整備、さらにはアクセスの容易化による地域の物流・人流の高度化を図るということでございます。

 ⑤「生活基盤の向上」は、内外からの企業誘致や投資の促進を図るための様々な生活基盤の向上策でございます。

 次が、地方自治の問題で、(3)「地方自治のあり方の見直し」では、特に「地方自主財源の拡充と地方交付税制度の見直しにより、中央政府への財政的依存体質からの脱却を図る。これにより」、「地域の自己決定力と自己責任を強化するとともに、行政サービスの効率化を促進する」ということでございます。

 ①「地域自主財源の拡充と地方交付税制度の見直し」で、16ページ、ア「地方税の充実・確保と課税自主権の強化」。イ「地方債に際しての国の関与の縮小」は、地方債について、情報公開、市場規律の導入等を前提に、発行に際しての国の関与の縮小を図る。ウ「地方交付税の算定方法の簡素化と規模の縮減」は、交付税については、算定方法の簡素化、さらには規模の縮減ということにより、地域がより自主的・主体的な財政運営を可能とするとしてございます。

 ②「地域間連携と行政の広域化の推進」は、ア「地域間連携の推進」は、施設の共同整備あるいは相互利用といった地域間連携の話。イ「行政の広域化の推進」は、行政の広域化で、交付税の激変緩和措置などによる市町村合併の推進を基本にしておりますが、「さらに」というところで、「都道府県合併も視野に入れて、都道府県の持つべき機能とその機能にふさわしい規模について検討する。その上で、道州制の意義について幅広い観点から検討を行う。」としてございます。

 (4)「首都機能移転の検討」は、首都機能移転に向けて積極的に検討するという位置づけをしてございます。

 17ページが、3.「多面的機能の永続的な発揮を可能とする中山間地域の活性化~持続的な地域社会の再生~」でございます。中ほどですが、21世紀においても、多面的機能を持続的に発揮することが可能となる中山間地域等の活性化が求められている。このような観点から、

 ① 地域活性化への意欲を持った多様な人づくり

 ② 人材と地域資源を活かした個性あふれる産業づくり

 ③ 地域住民が都市的サービスを享受でき、多面的機能が永続的に発揮できるとともに、これを国民的に支える基礎となる地域内外の交流を促進する地域づくりを着実に推進するということでございます。

 (1)「意欲的な人づくり」ということで、①「多様な担い手の確保・育成」策ですが、ア「地域の人材活用と条件整備」ということで、地域の様々な分野で活躍する者が地域リーダーなどとして積極的に活用できるようにする。イ「UJIターンの居住・受入れ等の推進」ということで、地域外からのUJIターン希望者への居住・研修・就業の支援措置などを挙げてございます。

 ②「担い手づくりに向けた体制整備」で、新たな産官学連携体制の構築、内外からの研究者・技術者の招聘による交流会の開催などを挙げてございます。

 19ページの(2)「個性的な産業づくり」、①「既存産業の活性化」で、ア「活力ある農林水産業等の展開」は、多彩な気象条件や地域資源を活用した独自の農林水産業の振興策。イ「地域資源等を活用した産業の振興」は、その他の資源あるいは伝統文化を活用した地場産業の育成・振興策を挙げてございます。

 ②「新たな産業の創造」ということで、ア「総合観光産業の構築」を出してございます。一番下の行から書いていますが、「地域文化、資源環境及び景観を適切に保存し、これらを観光資源とする顧客サイドに立った拠点づくりを地場の独自産業の振興と一体的に展開する」というイメージを書いてございます。

 イ「地域資源等に着目した新たな産業の展開」は、その他の資源に着目した新たな産業で、「リサイクル産業」ですとか、「風力・バイオマス発電」といった次世代型環境産業の推進。さらには、「知識集約型企業」、「ベンチャー企業」等の積極的な誘致策を挙げてございます。

 (3)「持続的な地域づくり」、①「基礎的な社会資本等の整備」ということで、土地利用構想に基づいて、様々な生産基盤あるいは生活基盤を総合的・計画的に整備していく。その際の留意事項等を書いてございます。

 21ページの②「多面的機能の永続的発揮体制の構築」、ア「集落機能の強化」では、高齢化、過疎化によりその機能が低下しているため、統合、連携といった集落再編によりその機能の強化を図る。その際に、「存続の是非をも視野に入れた集落の将来展望を策定していく」ということを書いてございます。

  イ「多面的機能に対する国民意識の醸成とその発揮に向けた取組み」ということで、「国民全体が共有する財産であり、そうした意識を国民の間で醸成することが重要である」。「また、国土・環境の保全等多面的機能の永続的な維持・発揮のためには、農林業等最も効率的なシステムを研究、構築する必要がある。このため」ということで、「耕作放棄の防止等を内容とする協定を結んだ農業者に対する直接支払いの実施」とか、基金等を活用した地域保全システム(棚田トラストのようなもの)の推進ということを挙げてございます。

 ウ「都市との交流・共生の促進」ということで、22ページには、グリーンツーリズム、ブルーツーリズムの推進とか、都市と地域の共同出資による施設の整備手法の普及、セカウンドハウスなどの整備等による定期居住の促進という施策を挙げてございます。

  23ページ、第3章「21世紀型社会資本整備」で、1. 「基本的考え方」としては、社会資本整備については、以上のまちづくりや地域経済・中山間地域等の活性化などのための基盤整備を担うことが基本ですが、ここでは、「21世紀型社会に対応して、多様な知恵の活用が促進され、少子高齢化や環境制約の中で持続可能な社会の形成を支えるという視点から、国と地方との適切な役割分担と連携の下に、優先的・重点的に整備すべき社会資本分野を明確にする。」ということでございます。

  併せて、効率的に整備をしていくために、「環境変化に迅速かつ柔軟に対応できる整備・運営システムを構築する。その際、社会資本整備の目標を、これまでの単なる施設整備としての「公共投資」から利用者の視点に立った「公共サービスの提供」へと改める。すなわち、従来の量的な充足から、事業評価の充実やアカウンタビリティの向上という、ソフトを重視した展開に改める。」という考えでございます。

 2.「社会資本整備における国と地方の役割分担」については、「国の事業は全国的な見地から必要とされる基礎的若しくは広域的又はリスクの高い事業に限定」するという基本論でございます。

 3.「21世紀型社会資本整備の優先整備分野」ですが、今申しましたように、ここでは、21世型の社会に対応して、

 ① 多様な知恵の社会を支える社会資本

 ② 少子高齢社会にふさわしい社会資本

 ③ 環境にやさしい持続的発展社会を支える社会資本

の3つの柱に即して明確化しております。

 (1)「多様な知恵の社会を支える社会資本」、第1は、①「情報通信ネットワークの整備」ということで、ア「高速・大容量の情報通信ネットワークの形成」、市場経済の原則に基づき、日本列島の中核に世界最大の高速・大容量を持つ情報通信ネットワークの形成を図る。

 イ「国土情報スーパーハイウェイの構築」、民間主導の情報通信ネットワーク整備を支援するという観点から、社会資本と民間光ファイバーとの一体整備による国土情報スーパーハイウェイを構築する。

 ウ「技術開発の支援」、技術開発への積極的な支援を行う。

 エ「規制緩和の推進」、多様な主体が通信分野に新たに参入できるような規制緩和を推進する、ということでございます。

 ②「公共サービスの情報化」ということで、ア「電子政府とワンストップサービスの実現」でございます。

 イ「スマートインフラの整備」は、情報通信技術と交通関連社会資本の有機的な統合ということで、具体的には、ノンストップ自動料金収受システムなどの高度道路交通システムとか汎用電子乗車券の実用化などを積極的に進める。同時に、これらの相互連携を促進することを書いてございます。

 ③「国際競争力強化のための基盤整備」、世界から知恵を集めるという意味で、多様な知恵の社会を支える社会資本に位置づけてございますが、ア「国際交流体系とアクセス整備」は、国際拠点あるいは高速交通機関の整備による国際交通体系とアクセスの整備ということでございます。

 イ「快適な生活基盤の整備」は、各種の生活基盤施設とともに、ここでは、国際的な教育システムの整備とか、わかりやすい道路標識の設置、道路番号の体系的な整理ということがございます。

 (2)「少子高齢社会にふさわしい社会資本」、①「社会の生産性の向上」に資するもの、つまり、移動時間などの短縮のための社会資本ということで、今申し上げましたような、高度情報通信基盤の活用とか、まちづくりにおける都市構造の再編とともに、都市鉄道の整備、道路の交通容量拡大策、ソフト面の交通需要マネジメント施策の推進などを挙げております。

 ②「社会参画の促進」、ア「ユニバーサルデザイン化の促進」は、高齢者など社会各層の社会参画を促すため、公共施設や情報機器などについてのユニバーサルデザイン化でございます。

 イ「女性の社会参画社会」は、女性の社会参画を支援するための保育所などの整備でございます。

 ③「安心で快適な生活環境の形成」ということで、

 ア「高齢者等への支援システムの充実」。

 イ「歩行空間・公共空間のバリアフリー化」。

 ウ「情報通信機器の開発」は、高齢者にも使いやすい情報通信機器の開発の支援。

 エ「防災対策の充実」。

でございます。

 27ページ、(3)「環境にやさしい持続的発展社会を支える社会資本」ということで、まず第1に①「環境との調和」の施策でございます。ア「ごみゼロ社会の実現」は、使い捨て社会からごみゼロ社会への転換を実現するために、広域的な廃棄物処理とリサイクルが一体となった循環型システムを構築する施策を挙げてございます。

 イ「環境にやさしい交通体系の形成」ということで、低公害車の普及のほか、路面電車あるいは自転車利用の促進策などを挙げてございます。

 ウ「良好な環境の保全と形成」、自然環境との調和あるいは生態系の維持に配慮するとか、積極的に緑化空間などを整備する多自然型社会資本整備ということでございます。

 ②「安全な国土の構築」で、ア「防災・震災対策の促進」。

 28ページのイ「効率的な国土と環境の保全手法の検討」は、規制などを通じた国土と環境の保全の効率的な手法を検討するということでございます。

 4.「社会資本整備・運営システムのあり方」でございます。第1が(1)「事業評価の拡充」で、①「新規事業評価と再評価の拡充」は、新規事業採択時の事業評価、それから事業採択後のいわゆる再評価について、これは現在でも行われていますけれども、対象事業を増やす、あるいは分析評価手法を統一するとともに、評価体制として第三者を含めた体制に拡充するということでございます。

 ②「事業評価システムの導入」は、新たに事後の評価システムを導入するということでございます。

 ③「定性的な項目の客観的評価」は、安全とか環境といった定性的で数値化し難い要素があるわけですが、このようなものも定量分析をして事業評価に取り組んでいくべきということでございます。

 (2)「時間管理概念の導入」ですが、事業の遅延がもたらす時間的損失を算出し、その公表することにより、各種の調整の促進を図っていくという考え方でございます。

 (3)「PFIの推進」。

 (4)「アカウンタビリティの向上と幅広い国民関与の促進」ということで、①「PFI方式・NPOの活用」は、計画の段階から幅広い国民各層の社会資本整備への関与を深めるためのPFI方式の活用ですとか、NPOの主体的な参加が図られるような支援措置ということを書いてございます。

 ②「公共サービスの目標の定量化と住民満足度の把握」は、社会資本整備の立案に当たって、公共サービスの成果指標、いわゆるアウトカムを設定して、目標を定量化した上で、その達成状況についても定期的に公表・管理する。同時に、住民の満足度も把握するといった施策でございます。

 ③「企業会計的要素の活用」は、企業会計的要素を導入した会計書類により、ストックとしての社会資本の状況を示していくということでございます。

 ④「情報公開の徹底」は、以上のような諸情報について、事業主体から積極的かつタイムリーに情報公開を徹底するということでございます。

 (5)「事業間連携の強化」ということで、①「行政機関相互間の連携・調整体制の整備」は、長期的な計画の策定段階から各種行政機関相互間で、連携・調整体制を整備することにより、効率性を確保するということでございます。

 ②「地域間連携の推進」は、地方公共団体間での連携の推進ということでございます。

 (6)「既存社会資本の有効利用」が、既存社会資本ストックの有効利用ということで、 ①「ライフサイクルコストの評価」は、建設費だけではなくて、長期の維持管理費を含めたライフサイクルコストを把握して、当初の事業評価から扱っていくということでございます。

 ②「利用の平準化」は、交通需要調整あるいは時差通勤で、利用の平準化を通じた有効利用を進めるということでございます。

 ボリュームがあって時間の関係で雑駁な説明になりましたが、以上ございます。

 続きまして、資料3の2枚紙をご覧いただきたいと存じます。「追加的に議論すべき重要論点」とありますけれども、ただいまの素案には全く含まれていない、あるいはごく簡単に触れているものですが、さらにご議論いただき、検討して書き込むべき事項と考えている事柄でありまして、4項目ございます。

 1.「21世紀の地域社会と地域経済のあり方」ということで、21世紀の地域社会のあるべき姿と機能を、大都市、中小都市、中山間地域等に分けて明らかにする。また、これらの地域社会を支える、あるいは相互に結びつけるネットワーク構築の基本的考え方というものを検討するということであります。

 これは、ただいまの素案には入っていないわけですが、全体の総論・第1章に相当するべき論点でありまして、これによって全体の構成も変わってくることになろうかと思います。

 2.「PFIによる社会資本整備の具体的プログラム」ということで、法案の成立を踏まえて、政府の行動計画を策定する。

 【具体的内容】としては、対象事業や事業者の評価・選定手法の確立とか、事業実施の法的枠組み、公的支援措置の明確化などでございます。

 3.「中山間地域等の活性化のための包括的なプログラム」、これはただいまの素案で説明申し上げましたようなストーリーに沿って、多様な人材の確保、独自産業の展開、多面的機能の永続的な発揮についての包括的プログラムを検討して、提示をするということでございます。

 4.「地方自治の再編に関する基本方針」ですが、これは素案でも簡単に触れておりますけれども、基礎的自治体の役割が重要であり、市町村合併等を通じた行政能力強化と効率性の向上を図る必要がある。このため、市町村合併推進策の拡充を検討する必要がある。併せて、それを踏まえ、府県の持つべき機能とその機能に相応しい規模等、都道府県のあり方についても、道州制といった議論も含めて、検討する必要があるのではないかということでございます。

 このような追加論点を提示させていただいております。以上でございます。

〔部会長〕

ありがとうございました。

 それでは、まず、報告書素案につきまして、ご議論いただきたいと思います。

〔A委員〕

2ページの③「東京一極集中是正のために、首都機能移転に向けて積極的に検討する」ということですが、一極集中だけというといろいろ問題が出る可能性があるので、この委員会としては、「日本の地域社会システムを変える、また防災対応を活かす、そういうために」、と加えていただいた方がよろしいのではないかというのが1つです。

 それから、いろいろなところに「ネットワーク」という言葉が出てくるのですけれども、単純に「ネットワーク」でよい場合と、これまでも階層的なネットワークであって、その階層的なネットワークが、例えば東京中心にあったのがまずくて、むしろ水平的なネットワークに変えていくことが必要ではないかという場合と、その辺を分けて記述する必要があるのではないかということです。それは、例えば3ページ、4ページで随所にあります。

 9ページ、エ「都市中心部における住宅や福祉施設の整備」で、都市中心部において、公的賃貸住宅を中心に置かれているのですけれども、むしろ、これからは、民間でやっていけるようなシステムで、補助的に考える方がよろしいのではないかということです。

 13ページ、①のイ「郊外型大規模店舗の個性的整備・運営」ですが、これから非常に懸念されるのが、特に地方ですと、農地のところにボンと大きなものが出てきて、それが反対も何もなく白地のところに出てくるというのはいろいろな問題があります。そのあたりはコントロールできるような……、大店法がなくなり、今ではなかなか難しい、そこをどうするかというのを何か考えた方がよろしいのではないかということです。

 26ページ、27ページのあたり、環境で交通体系のことがありますが、大都市中心の交通体系を考えているように感じるのです。むしろ、これからは、マイカーをなくしていくこと、公共交通を非常に充実させることによって、今の社会基盤の道路とかいうので地方などの場合にはかなりうまくいく面があるのですが、逆にそれが、郊外に拡大させないためとか、コンパクトシティと。このあたりを、もう少し地方の視点からもみていただければということを感じます。

  とりあえず、以上です。

〔部会長〕

B委員、ちょっと硬い格好になっておりますので、こうしたらもうちょっと楽しく読めるとか、そういうことをぜひ……。

〔B委員〕

例えば、今の「郊外型大型店舗の個性的整備・運営」、この間、小樽のマイカルさんの店舗の中に我々の施設も入ったのですが、これをつくります際に、小樽の町から大変な反対が出たのでございます。小樽の町の商店街が非常に空洞化していくのではないか、こういうご意見でございましたけれども、小樽の市長の決断・思い切りで、反対を押し切ってこういうものをつくったのでございます。

 小樽の人口は大体12万人といわれていますが、当初、ゴールデンウイークの入場者は、毎日10万人ぐらいあったわけで、小樽の町の活性化に成功した。これは数字だけではなしに、地域と非常に密着していないですが、成功した事例ではないか。

  そういう意味では、いろいろな反対はありますけれども、そういう決断も必要ではないかと思っております。そういうことをちょっと書き加えていただくと大変ありがたいと思います。

〔C委員〕

2つほど、わりと重要で大きなことがあるのではないかと思うのです。4ページ、2の「ゆとりの『空間』とゆとりの『時間』まちづくり~『小さな大都市』構想~」は大変結構だと思います。(1)に、「住宅・オフィス・福祉施設・道路・公園など生活空間の基盤となる施設について、土地の有効高度利用等を通じて」……云々という表現がありますが、このことにも全く異論はないのですが、これらのオフィスと住宅の関係というものを具体的な数字に置き替えて計算をされたことがあるかどうかということをぜひお伺いしたいのです。

 というのは、東京のように既に完全過密状態になった都市を前提にして今、仮に1,000坪のオフィスができますと250人が働きます。4坪に1人・250人が働きます。そして、1世帯で仮に(250人なら1.25人)1人ちょっとが働きに来るとしますと、 250人のオフィスのためには200世帯の住宅が必要になる。ここに書いてありますように、1世帯の人員を、今、東京は平均2点何人ですけれども、両親と子供あるいは両親と老人ぐらいを考えて3人ぐらいとする。そして、ここに書いてあるような、1人40平米としますと、そのための住宅は7200坪必要になります。つまり、1000坪のオフィスは7200坪の住宅を必要としている。ということは、オフィスを1000坪つくって、1000坪の住宅を一緒につくったら、これで職住接近ができるというようなこと、前からそういう話はよくあるのですが、これは全く無理です。

  同じように、オフィスを中心として、例えば、オフィスと消防、オフィスと公園、オフィスとその他諸々のここに書いてあるような駐車場その他の関係ということを、細かい計算は抜きにして、1人当たりのオフィスにどのくらいいるのか、1人当たりの住宅が40平米とするなら、それと矛盾しないだろうかということをぜひチェックしていただきたい。

  私は、これは矛盾しているように思います。つまり、このようなことをやっていったら、よほど都市部を高層化して、住宅をオフィスの6倍か7倍つくっていかない限りは、また限りなく都市は広がっていかざるを得ない。一極集中というか、職住接近どころか、住宅はますます働き場と遠くなっていくということにならざるを得ないと思いますので、そのあたりを計算していただくことをお願いしたいと思います。

 それから、13ページに「中心市街地の活性化」の問題が出ていました。大変にきついことを言うようで恐縮ですが、①のアで、「近年衰退する傾向のある中心市街地について、活性化の直接の担い手である商店主等を中心に据えて」というところは、そのとおりで、商店主たちが活性化しなければどうしようもないのですが、過去の事実は、衰退化の中心になっていたのが商店主です。

 これはきついことを言うとお思いになるかもしれませんが、どういう意味かといいますと、小売業の競争、あるいは立地産業の競争というのは、立地ごとに行われるわけです。したがって、すべてのと言っていいと思いますが、商店の中で独占ないしは寡占が成立していたというのが、日本の昭和30年代の商店街の姿です。つまり、独占と寡占が成立して、独占価格を目指して各商店主が お魚屋さん、肉屋さん、八百屋さん、乾物屋さんも含めて全部が、独占価格を求めて行動したことが、その後のスーパーその他の発展の土台になっているわけです。

 したがって、衰退化する傾向のある中心市街地を活性化するためには、中心市街地の中に商店同士の競争原理を取り入れるしかないのです。つまり、小売業というのはどんなに小さい店でも、1 店舗だけだったら独占になる。独占になったら、必ず独占利潤を目指して行動し始める。それは悪いサービスと高い価格ということになってくるわけです。商店というと皆、零細な気の毒なおばさんを思い浮かべるかもしれませんが、実態はそうではなかった。だから、価格破壊というのは、実は商店ごとに成立していた独占利潤が崩れたということを意味しているわけです。

  したがって、この表現の「活性化の直接の担い手である」ということは結構ですけれども、商店主だけが活性化の担い手であるということは書いても、競争原理が働かない限りはむしろ衰退化は拍車がかかるでしょう。したがって、商店主同士の競争とか、チェーン店を中心市街地に導入するとかいう発想がないと、これはごまかしになるのではないかという感じがいたします。

  以上2点です。

〔D委員〕

商業地の流動化を図れ、などということまですると言い過ぎですか。

〔C委員〕

どういうことでしょうか。

〔D委員〕

クローズドしても、まだそこに居すわっている。そういうところの商業地自身を。

〔C委員〕

言い過ぎではないと思います。

 商業地、結局、小売業は立地産業ですから、立地というものにものすごく魅力があるわけです。

 独占が成立している限りは、我々もそうですが、楽に儲かる。だから今度、仮に大規模小売店舗立地法ができて、中心地に店がつくれなくなると、私どもの店は中心地に数十店ありますから、これはみんな独占利潤になってくるわけです。

 つまり、小売業というものの本質が立地産業であるということがなかなかご理解いただけないので、今おっしゃるように、小売業の立地をかき回すというか、そういうことをしていくことが社会的に非常に重要ではないかと思います。

〔事務局〕

私どもから質問を申し上げるのもちょっと恐縮でありますが、今お話のありましたオフィスと住宅の関係というところですが、ここでの構想というのは、生活圏としての通勤する距離あるいは時間というものをどの程度の広がりにおいて持つのか、その広がりにおいて、その都市の規模はどういうものがいいのか、あるいはその中でどのような施設を持つのがいいのかという形で、基本的には考えたいと思っているわけであります。また、そういう考え方を「小さな大都市」構想ということでやっているわけです。

 その中で、例えば、東京の1つのものを想定して、例えば通勤時間が30分・歩いて行ける距離というものを想定したときに、どの程度の人があるいは面積が可能かということは計算してみたいと思うのですが、その際に、今の東京あるいは大阪といった大都市の通勤形態というのをもとにするよりは、もう少し小さい通勤距離というものを念頭に置きたいとも思うのですけれども、そういったときに、どのような形で都市の有り様・分散を想定したらいいのか、その辺についてもご意見を伺わせていただければ、もう少し計算がしやすいと思うのですが、いかがでございましょうか。

〔C委員〕

人口40万以下の都市では、ほとんど通勤問題は起こっていないです。40万以下の都市でも、メガロポリスにつながってしまって、東京、蕨、与野、大宮というような形に行政区画とは別につながってしまっているところは別ですけれども、人口・行政の単位ではなくて、まとまり・広がりの中で考えてみないと、実はこの問題はそこにしかないのではないかと思うのです。

  ですから、日本の人口の30%ぐらいが東京圏に住んでいる。そして、通勤地獄とか、非常に劣悪な住宅環境というのは、東京の話であり、あるいは大阪・名古屋の一部の話であり、地方都市、例えば前橋とか(私がよく行くところが前橋なので、たまたま前橋を挙げたのですが)、そういう地域に行くと、通勤は極めて楽で、そういう点についてはすごく恵まれた生活をしている。

 ただ、日本の働き手の大部分が、30%以上が東京に住んでいるということを考えると、このあたりの問題を解決するモデルを作らないと、問題解決にならないのではないかと私は思います。

  他を考えていただくのは大いに結構ですけれども、東京中心にお考えいただかないと、はぐらかしてしまうことになるのではないか。

  東京は、どこを取りましても、1時間ではもう無理です。どのくらいのお金を出すかということもありますが、都心、丸の内界隈にオフィスを持って、そこから1時間のところに1人当たり40平米の住宅を確保するといったら、個人の生涯年収の何%をそれに振り向けなければならないかと考えたら、すぐわかることです。

  したがって、私は、以前から、都心にもうオフィスをつくらせてはいかん、それしか方法はないということを言っておりましたが、仮にそのことが通らないのならば、都心を超高層にして、オフィス1対住宅5~6でつくっていく以外に方法はないのではないか、というふうに思うということを申し上げたわけです。

〔E委員〕

今のお話と関連して、今のお話がどういう空間像をお持ちなのか、もう一つよくわからないのですが、従来から、東京都その他でキャパシティ論という形で計算その他をやっているのです。

 例えば、東京都もこれ以上オフィス人口を増やそうという政策を取っているわけではなくて、オフィス人口は基本的に抑えようという形を取っておられるわけです。一方で、しかし、現段階ではかなりのオフィス人口がいる。オフィス人口をベースに考えて、さらにオフィスの1人当たり床面積は将来的に少し増えていくから、そのことも考えて東京都の中で、例えば、人口をどういう形で入れることができるかという想定を、23区でいくつかケースでやっているものがあります。

  たまたま資料を持っておりますが、例えば、パリ型の市街地の住み方、これは全体東京区分想定容積率が220%程度、それで910万人住むことができるという数字が出ております。それから、現在のマンション形式ぐらいの形で中層中密型の住宅市街地を中心に構成しますと、大体想定容積率が 190%(平均) 、756万人。現在の東京の住宅市街地をそのまま維持していくという形で考えると、現在の容積率が120%程度ですけれども、それを177%ぐらいに上げて、693万人入るというような想定がされておりまして、数字上は、オフィスを基本的に増やさないという前提で考えれば、人口はかなり入るという計算はあるわけであります。

  ただ、このペーパーがオフィスを増やすという前提で考えているのだと、また話は違うのですが、恐らくそうは言っていないのではないかということを私は考えております。その辺は、それなりにちゃんと表現しておいた方がいいのではないかと思います。

  もう一点は、今お話しいただいた中心商店街の議論ですけれども、私も、その点については、ご意見はそのとおりだと思っておりまして、例えば、13ページで、タウンマネジメント機関(TMO)の議論が出ていますが、商店街を中心に据えて機関を考えるというのは全くナンセンスで、むしろ、中心市街地の活性化で商店主を中心に考えない仕組みとしてタウンマネジメント機関(TMO)をつくるというのが前提だと思っております。ですから、例えば、銀行家とか、交通機関を運営している・日本であれば私鉄関係の人とか、様々な分野の方々が、タウンマネジメント機関(TMO)に参加して、中心市街地をどうつくり変えていくかという議論をすべきである。そういう意味で考えると、ここの表現は、私も基本的に間違っているのではないかと思います。

〔A委員〕

先ほど私が発言したことと関連するのですが、交通問題で通勤問題等は地方にないと先ほど言っておられましたけれども、例えば、前橋の場合などで問題なのは、マイカーが多くなり過ぎて公共交通がなくなり、市街地が非常に広がってしまうし、職場も広がっています。そういう中での問題であって、東京とは違うのです。ですから、東京の問題を集中的にやると、地方はちょっとおかしくなってくるのではないか。そういう点では、バランスを取っていただくということが重要ではないか、これが1点です。

 もう1点は、先ほどD委員の方から、商業地の流動化ということがありまして、これは必要ではないかというご意見だったかと思いますが、私は、どちらかというと抑えていかなければならないのではないかと。というのは、今、郊外に大型店等ができて、そして拠点ができることによって、社会的整備をどんどんしていかなければならないということです。むしろ、中心商業地はできるだけ固定化させる中で、人間を流動化させる。

 例えば、どうしようもない商店主がいて、その人たちが動かないで、「ここは俺の土地だ」ということで、本来商売すべきところで商売しなくなるという形が問題である。それは、人が動くという状況にして、中心地はある程度固定化させていかないと、街は成り立たないのではないか。

〔D委員〕

土地の流動化というのは、そういうことです。

〔A委員〕

そうですか。それだったら、わかるのです。

〔F委員〕

今議論になっている論点とちょっと変わって恐縮ですが、15~16ページに「地方自治のあり方の見直し」が出ています。問題はちょっと小さいような感じもしますが、16ページのウ「地方交付税の算定方法の簡素化と規模の縮減」とありますけれども、算定方法の簡素化ということは、地方団体からするとあまり必要性を感じないのです。むしろ、配分の公平性とか納得性を得るためには、様々な指標がありますから、それらを十分に駆使して公平な分配をするということが大事なので、そのためにどんどん交付税の算定方式が精密になっているわけですけれども、これについてはあまり違和感はないと思うのです。ですから、問題は「算定方法の簡素化」とボンとぶつけて、あとは何がイメージされるかというと、人口と面積で配分しちゃえばいいというような議論かもしれませんが、それはいかにも乱暴にすぎるので、この言葉はむしろない方がいいと思うのです。より公平な納得いく配分基準にしろというのだったら、そういう表現の方がまだいいのではないかと思います。

 極めて瑣末なような話で、なぜこれが入ってくるのか、意味がわからないです。

〔事務局〕

ご存じのこととは思いますけれども、現在の地方分権推進計画でも、この点については「算定方法の簡素化を図る」という方針があるものですから、それを踏まえてこういう記述をさせていただいております。

 ここでの特色は、むしろ、更に縮小を図っていくことについては、かなり踏み込んだ記述をしている、こういう認識なのですが。

〔F委員〕

ちょっと奇異な感じがするのです。これを地方分権推進計画の中で取り上げているとすると、政府の文章として整合性を取らなければいけないということになるのでしょうけれども……。

 自主財源拡充ということが表に出てきておりますから、それに伴って縮減というのは必然なのでしょうけれども、そうであれば、「補助金の整理・合理化」という表現がありますけれども、廃止というようなニュアンスの言葉が出てきてもいいように思うのです。

 交付税制度がやり玉に上がっているような感じがしてしょうがないのですが、僻みなのでしょうか。

〔部会長〕

地方分権委員会にあるからといって、これを入れなければいけないわけではありませんので、もう一度事務局の方で検討してみて……。

〔G委員〕

15ページの(3)でいろいろ書いてあって、権限委譲、補助金の整理・合理化、あるいはメニュー化、それから、地方自主財源の拡充と地方交付税制度の見直し、こういうことによって、中央政府への財政的依存体質から脱却をする。①で「地方自主財源の拡充と地方交付税制度の見直し」とあって、次のページに「課税自主権の強化」とあって、今議論のあったウのところにまたいろいろ記載があるわけですけれども、これらの一連を考えてみると、地方の責任と負担でいろいろなことをやっていくということにしないと、いつまでも中央政府のひも付きでいろいろなことをやったのでは、いつまでたっても地方は自立できないので、基本的にはその方向にどうしても持っていかないといけない。その手段として、できるだけ課税自主権を与えて、その地方に自主的に税収というものをさせるというのが基本だとは思いますけれども、しかし、実際には、住民の負担力と財政需要との関係がありますから、そう単純にはいかないということになると、その辺の兼ね合いが必要になってくる。

  そういう意味で、地方交付税制度というのは今現在は、非常に肥大化しているというか、非常に複雑怪奇になっていて、これが非常に問題だと思うのです。そういう意味で、地方交付税制度というのはできるだけ簡素化して、できるだけ縮減して、例えば学校建設・運営だとか、基礎的なシビルミニマムというか、ナショナルミニマムといいますか、そういうところにきちっと限定していって、それ以外のものは自主的にやってもらう、という方向に基本的には持っていかざるを得ないのではないか。

  現実に、どこまでそのフィージビリティがあるかという問題はありますので、それは相当に検討は必要だと思いますけれども、基本的な方向としてその方向ではないか、そこに書いてあるような方向ではないかと私は思います。

〔D委員〕

現実に、F委員のところはそんなことはないとは思いますが、一般論では、ここは社会資本整備に関わるところだと思うのですが、地方ではばらまきになりがちであったり、不明朗なことがあったり、片や行政単位当たりのセクショナリズムが非常に問題になっていたりする。したがって、もう少し広域に耐えるようにしたいとか、もう少し明朗な格好にしたい、という要請が片方であります。今の自治体の状態を固定して、そこに分権化し財源を渡してしまうということは、もう二度とそれを再統合するようなことはできなくなる。こういう問題を、一般論としてはいいのですが、実際の政策としてどういう順序で何をやっていくかというのが非常に気になるところなのです。

〔G委員〕

私は、それはワンセットだと思うのです。

 さっき、それを言おうと思って、話が違うのでやめたのですけれども、3300ある市町村は、財政負担力あるいは行政能力というのはものすごいデコボコです。だから、それを集約することによって全部同じような能力とか財政負担力になるとはもちろん思いませんけれども、そういう方向での手当てと、今の財源的な手当てと、両方をセットでやるということでないと実効は上がらないと私は思います。

〔D委員〕

それに関連してですが、中国の経済特区は、情報として日本に与えられるのは、そこにいろいろな自主権を与えてうまくいったというのですが、もう一つの側面は、中国はものすごく大きいですから、その中で、ある都市部だけで、田園・周辺部に内部補助している分をカットして、そこだけで使えるようにした、こういう側面が非常に強いのです。

  大きくするのか、小さくするのか、この辺の話があまり具体論として言われず、またトランジェントな状態のことが議論されずに、総論として地方分権がいいとかいうことが言われて、実態としては何も進まない。こういう構図をまたここの提言で繰り返すのかというのは、私自身は、非常に忸怩たる思いがあって、事務局には申し上げているのです。

  かと言って、そこの状態を全部シナリオを書けと言われても、この2カ月で……ということもございまして、何かうまい方法があれば、ぜひお知恵をお借りしたいと思うのです。

〔F委員〕

市町村合併は、前にも申し上げましたけれども、私の感覚で言うと、やれるところはどんどんやれるような環境を整えるけれども、この議論の中でも出ている、例えば中山間地域等を考えると、合併をして何の効果が出てくるかわからないような地域が現存するのです。そこにおける行政水準の確保ということは、私は、別な方法を考えるべきではないかと。これは、一旦、権限はそこに与えても、そこでの行政能力が足らない分は、現行制度でもある都道府県への事務の委任という方法でカバーすればいい、というふうに私は思うのです。

 それと、どこの地域にいても、最低の、ナショナルミニマムの行政水準の確保というのは必要でしょうけれども、今の実際の議論は、それを更に上回るような規模の水準を設定して、それに到達できないところがあってはいけないので合併しろという議論があるように思うのです。ですから、ここは、もう少し実態に即して考えると、水準の設定の仕方にも議論がもっとされてもいいのではないか。

 1例を挙げると、特別養護老人ホームを設置するときに、厚生省の基準は収容人員50人が原則です。それに対して、施設長を置いて、一定の理学療法士とかPT、OTという資格を持った人を配置しなければいけないという基準になっています。ところが、ある町へ行きますと、うちは20人規模でいいんだ、30人規模でいいんだ、というのがあるのです。ところが、そういうところは今まで認めてくれなかった。ただ、介護保険制度のスタートに伴って、特例的にそういうものもいいことになってきました。

  そういう柔軟な行政水準のレベルをセットすれば、小さいところは、100%満足な行政サービスが得られないけれども、地域が選択すればそれでもいいのだ、そういう選択肢を認めれば、何が何でも3300を1000に市町村合併しなければいかん、とかいう議論にはならないのではないかと私は思うのです。

〔H委員〕

7ページの②に当たりますけれども、歴史・文化のまちづくりといいますか、保全のことについてですけれども、この問題を解決するときに、よく専門家の方は、ヨーロッパの街に見習うことを言われるのです。その次には、ヨーロッパは石の文化で、日本は木と紙の文化だから、やはり手本にはならないというようなことで何となく片づけられてしまうところがあるのです。

 例えば、古い家を維持していくというのは、商業とか、それから生活するのと両方あると思うのですけれども、神社仏閣は別にしまして、観光的に利用することと、それから普通の生活をするということになりますと、生活するにしても不便ということもありますし、商売として安全性とかいうことになりますと難しい面があります。そうすると、まちづくり全体を維持していく中で、国家的にといいますか、例えば眺望の問題とかいうものに関しても、消火栓を地中に埋めて要所要所からすぐホースが取り出せるというふうな、最先端の技術をもってしなければ、消防車が走って行ってとかいうことでなく、モデルとなるようなまちづくりに目に見えない部分をしておかないと、表の歴史的な古きよきものが維持できないのではないかと思っておりますので、書いてあることは簡単なのですけれども、現実の問題としては、資金面とかでの大変さを含めて、地方任せではなくて、国の方といいますか、そういうところと地方と一緒に話し合いをよくしていただくことをぜひお願いしたいと思います。

〔I委員〕

第2章の地域経済・中山間地域の部分について、ちょっと感じましたところを申し上げたいと思います。

 資料3の方でも、都市もそうですけれども、「あるべき姿と機能」のところはまだこれから追加的に議論するということになっているためだと思うのですけれども、メニューとしてはいろいろ書き込まれていて、そのこと自体それぞれに私は特に違和感を感じるものはないのですけれども、前々回にD委員もおっしゃったかと思いますけれども、この部会としてのセールスポイントというか、どこが違うのだというあたりが、ここの調子だと読みにくいなという感じがしたわけであります。

 私自身は、ここに書いてあることをフォローするようなことにもなるのですけれども、農業に限りませんけれども、ビジネスとしては、できるだけ自由度を確保する。逆に言いますと、今はかなり制約が強いということにもなるわけですけれども、そういう面。それから、多面的機能といいますと、いろいろな自然的な資源に関係するわけですけれども、資源の管理ですとか、あるいは空間形成というような面では、むしろ、計画優先といいますか、公共性あるいは長期的な視点からの、規制と言うとちょっときついことになるかもしれませんけれども、そういう手法が、むしろ強められていい。そのコントラストということを、メリハリをはっきりさせるような、そういう理念というものが特に中山間地域については必要ではないかと思うのです。

 幸い、開発圧力という意味では比較的弱いということもありますので、それを活かすような地域づくりということを考えていいような気がします。

 少し具体的に申しますと、特に土地制度については、都市部の方はかなり踏み込んだ表現があるという気がしております、用途の複合の問題ですとか。それに対して中山間地域は、そのあたりの表現がやや弱いといいますか、現状の制度の枠の中だけかなという気がいたします。せめて、「検討する」というぐらいのことは書き込んでいいのではないかと思っております。

 例えば、不在地主の土地が耕作放棄される、そういうくだりがあったかと思います。21ページに、「不在村地主が所有する不耕作地等の有効利用を進める」、これは結構なのですけれども、ここで問題なのは、そういう農地、特に行方不明になってしまったような人の農地についてもどう使うかということになると、基本的にはその人の了解を得るという、いわば私権の世界との関係があるわけで、このあたりも制度の問題の検討を要する部分だろうと思うのです。これは今後、大変いろいろなところで問題になると思います。

  もっと言いますと、ゾーンニングといいますか、空間計画ということについても、今の計画が全部そうというわけではございませんけれども、必ずしも、練った青写真を作って、それに近づいていくという意味での計画あるいはその実現ということにはなっていないわけです。特に農業サイドで言いますと、既存の農地をいかに保全するかという、いわば防衛的な感覚でできたゾーンニングが非常に多いわけです。むしろ、既存の農地を他のことにする、逆に農地に戻すということがあってもいいと思いますけれども、20年とか、かなりのスパンでもって青写真を書いて、そこに近づいていくのだというようなことあたりももう少し書き込んでいいのではないか、こういう気がいたしました。

〔J委員〕

関連の話です。今のI委員のお話に非常に賛同しているものです。

 農地法という問題をどこでどう拾っていくかということもありますが、今は、株式会社の問題も含めまして、農業生産法人の要件整備が議論されているのですが、先生もそのあたりをご指摘になったのだと私は解釈しているのです。

  次に、今言われた耕作放棄地、これは非常に大きな問題を我々は現場で抱えております。その意味で、大体は私はこれに賛成で、もう少し踏み込んだ内容が入れられるかどうかはわかりませんが……。17ページからの担い手問題。まさに家族で中山間地域を守っていくという担い手構造が全く変わっていて、もはや都市の若者でも入ってこれるようなシステムにする必要があります。そのためには、農業生産法人の要件なり株式会社が出ているというのは事実であります。とは言うものの、私ども農業法人を含めた、新しく町から来て(これにも書いてあるわけで、納得しているわけですが、)中山間において経営をし、耕作放棄地をちゃんと責任もって農地として国民が理解するように守っていくためには、相当の投資と規模がいるわけです。ところが、町から来られる若者というのは、なかなかそれだけの資産を持って来れない。このような現実的な問題があります。

  「担い手づくりに向けた体制整備」というのが18ページにあります。その担い手確保のあたりに、この言葉が入れられるかどうかわかりませんが、「もはや生産者ではダメです」、「経営者になってください」ということは「潰れる農家も出るかもしれません」ということを踏まえて我々は考えなければならないということです。そうなると、これからは省庁再編の中で農水省の中に経営局という方向も考えられているようでございまして、経営政策の体系的整備ということが重要です。これからは「生産すればいいのだ」という考え方ではないということを、21世紀はまさにそういう方向になるだろうと思うので、そういう言葉が入れられるのかどうかということです。

  もう一つ、具体的になりますが、今、I委員も指摘なさった、耕作放棄地についても、これからの単位としては30~50haを預からないと、我々村に残った、また村に来た若者等の担い手が、地域を守れない。このようにスケールが大きくなっていますから、家族経営という農業の単位では小さ過ぎて、信用補完力がない。

 各都道府県に信用保証協会とかがありますけれども、それは系統保護みたいなところもありまして、それは立派なものなのですが、本格的に地域を守るためには不十分です。従来の一千万円単位ではないわけで、投資が最低1億、2億が普通、これからは10億という単位が必要になってくるだろうと思います。町村単位で地域を守れという話になるだろうと思います、極端な表現かもしれませんが。そうしますと、信用補完システムというものを改めて構築・確立することも、21世紀に向けての中山間地域を考えるときには非常に必要ではないかと、これが入れられないか。

  それと、今までの制度には、運転資金というような……。特に農業というのは、春から秋まで投資した結果が秋の収穫であるという、運転資金を宿命としている産業です。したがって、今までは、生産政策で米価なりの価格政策であったから兼業化という中でできたけれども、これを本当に「担い手」という、ここに書いてあるような政策でいくなら、運転資金制度というものを体制整備の中に入れておかないと、これはなかなか成就しないという感じがしておりますので、ご検討いただけたらと思います。

〔K委員〕

先ほどからずっとお聞きしておりまして、私ども、地方に住んでいる者にとって、中心商店街の空洞化というのは現実に起こっているわけです。それが郊外に行けば、今度は郊外の方の農地が完全になくなってしまって、環境保全ということからみるとすごく矛盾したことになっている。しかし、車社会であれば、どんどん郊外に出て行って、新しい都市形成なり商店街形成がなされていっているわけです。

 それとあわせて、都市計画の中で、保全するところと、開発するところというのを、地域では完全に明確にしていきながら、その地域の役割を立てていかないと、恐らく、地方は1つの個性が完全になくなってしまうのではないかというのを、今、私ども身近に感じて危惧しているわけで、どういうような形に持っていくかということです。

 それと、生活の豊かさということの中身を、ただいろいろな面で利便性とか、収入とかいうことだけで、豊かさとか地域振興ということを大上段にしていったときに、すごく悩むところでございます。

 そういう面で、中身を、生活の豊かさというのを変えていき、それが広域的に結び合えるもので、交流人口という1つのものをどこかで視点にしていきながら、地域の個性化なり活性化ということ。地域だけでなく、交流するための快適性というものが位置づけられていくといいなということをちょっと感じております。

〔L委員〕

大変たくさんのことが書いてありますので、少しその中で混乱する思いがするのは、ここは地域経済・社会資本部会ということですが、私たちが感じている大都市の中心部の問題と地域の問題が、同時に書かれているようなところがある。しかし、私たちはそれぞれに全くレベルの違う問題を持っているということを、先ほどもどなたかがおっしゃっていましたけれども、そういうものを感じている。

 今、東京、大阪、福岡とかの大都市の中心部というのは、これからどれぐらいの都市にしていき、人口の適切とはどういうものかということを……。

 先ほどおっしゃっていましたけれども、そうしたものを何か捉え、コインの表と裏みたいに、都市での生活を本当に快適と思っていない人たちは、自然環境で快適な生活をするために地方へ動いていると思うのです。

 そうした、前よりももっと人々は流動的に生きている。そうしたところでの生活というものも、これからもっともっと問題を持っていて、それぞれに住宅も、コンピュータ時代にオフィスで働くよりもっと違う働き方があるときに労働の問題も、すべてチェンジしだしているときに、大都市と地域の問題が一緒に書かれているような思いがして、少し読みにくいように私は感じてならないのです。

 大都市にいますと、日々感じている車のラッシュアワーの空気の汚れなどの問題などもあって、もっと積極的に交通問題も新しい時代のことが書かれなければ、大都市の問題はまだ解決しないのではないかというように思うところもある。

 地方ですと、書いてあったようにも思いますけれども、日本のような国土では安全というのが、水害、台風……たくさんの問題でいつも国土は傷んで人身問題を起こしているわけですから、そういうこともある。

 それぞれのところに今、大きな課題があるのですけれども、ごったに読めてしまって、私の理解力が悪いのか、それとも書き方の問題なのかどちらかは私にはわかりませんが、もう少し明快さがある方が伝わりやすいのではないかというように思って伺いました。

〔C委員〕

今のことと多少関係があるのではないかと思いますが、このドラフトを書き替えるということは、とてもできないと思いますので、そういう意味ではないのですが、車社会とか車についてどういう考えなのかがはっきりしていない、全体が。

 個人的な話ですが、私は、この3月に車の免許を取った。やむを得ず取ったのです。取りたくなくて、私は反車的な考えをずっと持っていたのですが、とうとうこれはダメだと、年取ってから困っちゃうというのでチャレンジして、車の免許を東京で取ったわけですが、取っていろいろなことがわかった。まず、7,000万人が免許を持っているというのに驚きました。今、日本では7,000万人が免許がある。

  これ以上車が増えるのか、増えないのかということを考えなければいけないと思うのです。これ以上車が増えたり、免許を持つのが当たり前ということになってくると、どうしても社会資本の面で考えておかなければならないのは、駐車場の確保ではないかと思うのです。

  事務局からいただいた資料集をこの間いろいろと読んでみまして、大変に勉強になりましたが、あの中でも、下水道・上水道とか、電話とか、公園でもない、一番問題は車と、道路と、歩道というところにきている。あとは、港湾の辺にちょっとあったようです。一番大きな問題とみんなが感じているのは、車に関わる問題であるということからすると、本来なら、一番最初の「基本的考え方」のところで、車についてどう考えるか。これはノーとか何とか言うよりも、事実としてできちゃったので、これを認めよう、というふうなことをまず打ち出すべきではないかと思うのです。

  そして、これを認めると、あとのことがずいぶんやりやすくなってくる。つまり、先ほど来出ている、歩行空間の確保というのは、実は車の問題なのです。反車ではなくて、車社会だからこそ、歩行空間を確保しなければならないとか、高齢者の買物ができるようにしなければならないとかいうこと。車に対して、車社会を進行させていこう、進展させるのはやむを得ないという前提になってはじめて、そういう問題が出てくるわけです。今の時代で、車をどんどん積極的に認めようということは非常に勇気のいることだと思いますけれども、そういう勇気を持たないと、何もかもみんな適当に書いてどこかで……ということになる。

  この間、私が路上演習をしている最中に、右側から道へ出ようとしているときに、私の車の右側から車椅子の方が飛び出して来た。私、「ミラーを見ろ」と言われて見ていたところだから、轢き殺さなかったのですけれども、あれがあのまま行って、車道の真ん中を車椅子が車の右側から出てくるような状態というのは、バリアフリーにして歩道から車道に降りられるようになっていれば、ますます出てくるわけです。

  ということは、車社会ということを認めての対策を打った上で、今度は、歩行者の安全の確保とか、障害者の安全の確保とか、老人に対する対策とかという段階があると思う、段階というか同時並行しなければならないと思いますが。そのあたりの論理が読めないという感じがいたします。

〔E委員〕

今の車の話と関連して、基本的なコンセプトとして、大都市について、恐らく地方都市についてもそうなのでしょうけれども、できるだけコンパクトに都市をつくっていこう。それはある意味で、車は持っているけれども、しかし、日常的には車を使わない生活ができるような都市的な装備をしていこう、そういう考え方ではないかと思っているわけです。

 ただ、そうは言っても、車を持っている方がいらっしゃれば、それを使って移動の自由度は非常に高まっていますから、いろいろな形でアクティビティが出てくるのは当然のことです。

 できるだけコンパクトにつくろうとすれば、例えば、東京大都市圏を中心にできるだけコンパクトにつくろうとすると、それ以外のところ、大都市圏の本当にフリンジのあたりのところは、将来どうなっていくのかというのが非常に心配なのです、耕作放棄地も含めて。

 I委員がお話しになった、要するにビジネスとしては自由にした方がいいけれども、利用という意味では、都市的な土地利用という意味では計画が必要だ。まさにそういうことを、しっかり書いておかなければいけないのではないか。

 以前お話ししたことと関連するのですが、例えば、中山間地域の記述の中に、中山間地域に存在する美しい自然環境、農山漁村の景観等ということで、アプリオリに中山間地域の風景が美しくてというふうに書き込まれているのですけれども、そんなことは全くなくて、むしろ、日本の中山間地域は美しくない。だから、そのためにどうするか、という議論が実は国土保全の議論と絡んであるはずですから、コンパクトに町をつくったり、そういうことをやっている結果として、周辺の土地利用が様々な形で問題化する可能があるわけです。現実にそうなっている部分があって、農業側で一生懸命土地利用を考えていく部分と、都市側で一生懸命考えていく部分と、ちょうど隙間が現在でもある。その隙間は、このコンセプトで言うと、もっと広がってくる可能があるので、そこのところをどうするかという議論が必要ではないかと思っております。

〔I委員〕

中山間地域の問題で1つ発言したいのですけれども、この中で人の問題をクローズアップしている、これは非常に結構かと思います。

 その延長なのですけれども、私は、農家について、いわゆる企業家という形の人を育てることは非常に大事だと思いますけれども、もう一つは、地方ですといろいろな組織があるわけです。農業だけに限っても、もちろん農協がありますけれども、土地改良区ですとか、農業委員会ですとか、農地保有合理化法人とか、いろいろあるわけです。私は、こういった組織が、乱立とは申しませんけれども、人材不足に悩んでいるわけです。ある組織には、非常に優れた意欲的な人材がそこでの仕事をしている。実際見ていますと、そういう方が、自分の仕事を領域を超えて、ほかのところまでかなり面倒をみるような活動をしていることによって、地域の活性化に結びついていることがあるだろうと思うのです。

 ただでさえ少ない人材という状況があるわけで、しかも、問題の領域を共通にしている組織がある、こういう実態をもう少し深刻に受け止める必要があるだろうと思うのです。それぞれ生い立ちが違いますので、そう簡単に一緒にしてしまえというようなことを言うつもりはございませんけれども、もう少しそれぞれの中での人材のフレキシブルな活用ということを考えるべきではないかと思います。

〔部会長〕

まだご意見があろうかと思いますが、もう一つ議題がございますので、移りたいと思います。私の方から事務局の方に事前に、「大変網羅的に書いてあるのだけれども、あちこちで言われていることと、新たに言っていることが混在して、ややコントラストが不足しているのではないか」ということを申し上げております。どうするかですが、今日いただいたことも含めて、また修正をしていただく、その際に、世で言われているようなところはもう少し切っていく、あるいはコンパクトな表現に変えていくようなことで、少しメリハリのついたものにできないかということを考えております。

 それでは次に、資料3でございますが、追加的に議論すべき重要論点につきまして、ご議論いただきたいと思います。

〔事務局〕

先ほど、L委員等からご指摘がありましたが、都市の機能の問題は、大都市あるいは地方の問題がごちゃごちゃになっているのではないかという指摘がございまして、私どもも、そういう感じがしておりまして、もっとすっきりと、大都市、中小規模都市、中山間地域等、そのような形で機能を分けて考え直して整理した方がいいのではないかと。そういう観点に立って全体を整理してみたらいいのではないかということで、1のところの整理の仕方が、大都市、中小規模都市、中山間地域等、という形でもう一度分け直してはどうかという意味合いを含めてここに書いてありますので、その点だけ少し説明を追加させていただきたいと思います。

〔A委員〕

今のと関係するのですけれども、今日これを見させていただいた感じとして、大都市と地方都市というよりは、東京なり大阪ぐらいの都市と地方というように感じるのです。

 といいますのは、この場合でも、中小規模都市と大都市としたときに、今私が住んでいます前橋などを考えると、これは中小規模都市に入ると思います。ところが、現実問題として、例えば、高い建物・ビルの上で見ますと、前橋も高崎も連担しているわけです。ずっと見渡すところの人口をみますと、100万人いるのです。形式的な市町村としては、それぞれ20万人、30万人ぐらいの町があるのですけれども、現実には、その中を人が動いているのは100万都市と同じようなことなのです。

  形式と実質がギャップが出てきている。こういうのが、大都市の東京圏と地方ではまた違うのです。

  私自身が京都で生活をしていた京都の面積と、今の群馬南部の面積とは群馬というと田舎ですけれども、京都市の面積とほぼ同じところをとると、ほぼ同じぐらいの人口である。ただ、それは東京との関係があるのですけれども。

  そうすると、この分け方は、実質的なものと形式的なものとをどうみていくかというあたりを整理しないと、なかなか議論しにくいのではないか。

〔D委員〕

この切り方は問題があるかもわかりませんね。

〔事務局〕

そうですね。今、A委員からご指摘のありましたように、東京、大阪が大都市のイメージ、それよりもう少し、場合によっては100万都市も含めるのかもしれませんが、中小規模都市という形で書いてみるのが問題の整理としては、あるいはこれからの21世紀の国土あるいは地域社会のあり方を考えるときに、むしろ考えやすいのかと思って、そのような形で整理した方が、先ほどのE委員などのご議論を踏まえるといいかなとも思っているのですが、いかがでしょうか。

〔D委員〕

全総の中でうたっていることから言うと、中枢都市(札幌・仙台・広島・福岡)、それに続く前橋・高崎・新潟・熊本・松山、こういうところがこれからの日本の活力にとって大変重要だということが片方にあり、もちろん中山間地域もそうですが、その辺のことをここでどう議論するかというのがポイントかなという気がします。

〔事務局〕

もう一回、次回にご議論いただきたいと思います。

〔C委員〕

今のことに関連してですけれども、私どもがどこに店をつくろうかというときには、行政区画によって考えていたのでは間違ってしまうのです。どういう考え方を取るかというと、自然的境界があるかどうかという観念を入れるわけです。その町の自然的境界の範囲内に200万いるとか、30万いるとか、50万いるという考え方で取っています。

 そういうことは、こういうことの概念には非常に使いにくいかもしれませんけれども、現実に40万都市と60万都市がくっついて100万になっているということは一般的ですので、自然的境界があるかないかということを概念として入れないと非常に難しいのではないでしょうか。自然的境界の範囲内に何万、というようなことで都市を規定すればちょっと違うと思うのです。

〔D委員〕

DID地域。

〔C委員〕

ええ。

〔G委員〕

どちらかというと資料2の方で申し上げるべきだったのかもしれませんけれども、さっきも部会長からも、それらしき話がありましたけれども、要するに、非常に結構なシナリオといいますか、ああすべきだこうすべきだというのは非常に結構なことがいっぱい書いてある。それ自体は非常に立派だと思うのですけれども、ではそれを具体的にどうやって実現するのかという実施の手段、その辺のところが、あちこちにちらちら書いてありますけれども、ちょっと弱いなぁと。

 しかし、行政手段そのものに直接関わってくるから非常に難しい問題ではあるので、具体的にここにきめ細かく書くというのは難しいとは思いますけれども、もう少し、方向性ぐらいは出してもいいのかなと。

 例えば、大都市などについては、この間もちょっと申し上げたのですけれども、先ほど来話が出ていますように、駐車場などは絶対的に不足している、あるいは通過交通をなくすためには外環状とか圏央道とかいうものが、本来もっともっと早くできてなくてはいけない。環八の立体交差にも何十年もかかるというような話です。そういうことについて、では手段がないのかというと、必ずしもないわけではない。土地収用もちゃんとあります。ところが、それがさっぱり機能しない、伝家の宝刀みたいなもの。

 というのは、突き詰めれば日本的システムというか、日本人の資質というか、そういうところに行き着くのかもしれませんので、それを具体的にこうせよああせよと言っても無理な話かもわかりませんけれども、そういうことであるならあるということで問題点をはっきりさせて、そのことについては意識改革なり何なりをしていかなければこの問題は解決しないのだというような、手段に関わる方向性というか、そういうところをもっと出せないかなと。

 ああしたらいいこうしたらいいという話は、あちこちからいっぱい出ていますけれども、その辺の「そのためにはこうすべきだ」というところが今まで、あまり言われていないので、非常に難しい問題だと思いますけれども、限界はあると思いますが、もう少し書けないかなという感じがします。

〔I委員〕

今のG委員のお話に関連するかと思うのですけれども、経済計画自体は10年のスパンというようなことで話が進んでいると思うのですけれども、この部会で議論している中身にはいろいろなスパンの問題が混在していると思うのです。直ちに手をつけることのできるもの、これはあまりないかもしれませんけれども、5年ですとか、10年ですとか、あるいはもう少し長くこの10年では、いわば最初の布石を打つぐらいに終わる可能性があるものであっても非常に重要なものもあると思うのです。そのあたりの書きっぷりなりを少し考えてみてはどうかと思います。

〔A委員〕

今のお話に関係するのですけれども、私、これをずっと見ていて、現在、多くの流れというのが、今まで経済規制できていたものが、都市計画規制的なものといいますか、地域規制的なものに変わってきているのではないか、と。例えば、代表的なのは、大型店の問題などです。

  地域経済・社会資本部会という性格を考えたとき、地域的な、あるいは先ほど出ていました土地利用とか都市計画、そこに柱を置いて、それで規制というかコントロールするというのを何か出していくとはっきりしてくるのではないか。

 といいますのは、中心市街地の活性化とか、コンパクトなまちづくりとかをやっているときに、地方で、必ず、論議が出て最後に問題が出てぐちゃぐちゃになるのは、「自動車産業がある。これをどうするんだ。産業、これがつぶれたら、みんな終わりや」という話になって、話がとんじゃうのです。そのときに、土地利用規制でやって、あと使い方としては、産業あるいはそれに基づいてどう生き残っていくかは競争でやっていったらいいのではないかということにすればと言うのですけれども、両方同時にやっていきますと、どうしても産業の方を優先しようとか、コンパクトなまちづくりはいらないとか、そういうふうになる。

 したがって、地域経済・社会資本部会としての土地利用的なというか、柱をもうちょっと明確にすると、これ全部を書き替えるということではなくて、それだけでかなりインパクトが出てくるのではないか、あるいは整理されるのではないかと思うのです。

 ややでしゃばった言い方をして申しわけありません。

〔E委員〕

今のお話と若干絡んでくるのですが、最初に、まちづくりのところで、「ゆとりの『空間』」あるいは「ゆとりの『時間』」という言葉が出てきます。まちづくりによって「ゆとりの『時間』」を生み出そう、非常にいいことです。一方で、まちづくりは時間を意識して迅速にやるべきだという議論があります。それから、「ゆとりの『空間』」は結構だけれども、しかし、コンパクトに「ゆとりの『空間』」をつくり出さないといけない。ある意味で、相反する言葉が、「ゆとりの『空間』」とか「ゆとりの『時間』」の裏にあるのです。その辺をどこかできちっと表現しておかないと、何となく「ゆとりの『空間』とゆとりの『時間』」でゆっくりとまちづくりをやっていくのか、という議論にとられると困るなという感じがします。

 その一環としてPFIのような議論が、まちづくりの時間という側面から考えるとPFIのようなコンセプトが必要である、という話になるはずなので、その辺をぜひ整理して書き分けていただきたい。

〔B委員〕

「基本的考え方」のところで、要は、創意と工夫をこらしながら、独自の産業・文化を持つ地域づくりを進めることが重要であると書いてあるのですが、文化というのは、この二文字しか出てこないわけです。もう少し具体的に文化というものを……。これから「ゆとりのある社会」をつくっていくためには非常に重要なことではなかろうかと、こういうところをもう少し具体的にどういう文化なのかということを議論していただきたいと思うのです。

〔M委員〕

議論がまた前へ戻るような形で恐縮ですが、「21世紀の地域社会と地域経済のあり方」のところで、先ほどの大都市、中小規模都市の区分けのところですけれども、大都市は東京・大阪だけではなくて、政令市という制度が日本にはあるわけですし、100万規模の都市なわけで、ここは大都市と位置づけるのが適当ではないかと思います。

 なぜそういうことを言うかといいますと、中小規模都市を含めてそうですけれども、これから大事なのは、この4つ目の「・」に書いてある、ネットワークということの方であろうと思うのです。つまり、都市というものを単体と見るのではなくして、地域の中での拠点性というか、つまり、機能分担であるとか、ネットワークであるとか、そういうものの考え方をしないといけないわけですから、その場合のエリアというのは、自然的条件とか社会的条件によって相当変わってくるものであろう。つまり、少なくとも、現在の行政区域と同じではない、そういう視点を相当強く出した方がいいのではないか。

 今のこの区分というのは、わりかし静態的。それに対して今、都市自体がいろいろ動いているわけですから、もうちょっと動態的なものの考え方が必要になってくるのではないかという感じがしています。

 「追加的に議論すべき重要論点」の1、2、3、4はいずれも大事なことで、しかも、トピック的な側面もあるわけですけれども、1つ質問したいのは、資料2の方にも部分的に、強弱はともかくとして、この種の問題があるところでは触れたりしているわけですけれども、最終的に報告書になる段階で、この追加的に議論すべき4つの論点は、位置づけはどういうことになるのか、そこをご説明いただきたいと思います。

〔事務局〕

「追加的に議論すべき重要論点」の1.のことが、今日ご説明した素案には全く入っていないことでありますので、総論第1章に、このようなことを整理して入れるという格好になろうかと思います。

 それから、PFIと地方自治の再編に関するものについては、現在、ごく簡単に書かせてもらっておりますけれども、これについては更に議論を深めて、もっとボリュームを増やして、あるいは構成自体も若干変えるということもあり得ますけれども、そういった形で報告書に盛り込む。

 中山間地域等については、基本的にこういった方向性でストーリーが今の報告書に書かれておりますけれども、これも、もう少しプログラム的なイメージが出るような形のものを別途盛り込むということで対応していきたいと考えております。

〔M委員〕

なお、概要版などを出すときには、「追加的に議論すべき重要論点」は確かに重要だと思いますので、こういうものをなるたけ浮き彫りにするような形で。そうでないと、どうしても平板になってしまう。みんな忙しいから、なかなか本文全部を読むという人は、必ずしも多くないと思いますので、その辺にもちょっと知恵を働かせたらいいのではないかと思います。

〔D委員〕

「追加的に議論すべき重要論点」の最後の「地方自治体の再編」については先ほど議論があったのですが、これを地方自治体の再編だけに限るか、例えば、計画制度の話として、自治体は今のトランジェントな状態のことを考えますと、自治体は今のままだけれども、計画はもう少し広いエリアでやって、その計画に対してお金が渡される、こういう仕組みというのも考えておいた方がいいかなという気がちょっとします。

 一部、事務組合として港湾管理者を統合するとかいうやり方もありますし、それから、アメリカのボストンが一番ひどいというか、ものすごく小さな単位、28市町村に分かれているのですが、この交通システムはマサチューセッツで1個です。それは全体で組織を作っていて、そこに各市町村がお金を出して運営をする、こんな格好になっているのです。

  NPOの話などもそうですし、自治体にあまりにいろいろなことが縛られ過ぎている、ここを放すと何かトランジェントな状態の解決策が出てくるような感じがちょっとします。

  まだいろいろとご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日の審議につきましては、この辺で終わらせていただきたいと思います。

 いよいよまとめの段階でございますので、お持ち帰りいただいて、ご意見がございましたらぜひ書き込んでいただくなり、別の紙で事務局の方へお知らせいただきたいと思います。次回また議論の機会があろうかと思います。

  それでは、今後のスケジュールについて事務局からご説明をお願いいたします。

〔事務局〕

資料4の1枚紙をご参照いただきたいと存じますけれども、次回の第7回は、5月31日月曜日の18時、夕方の6時からで恐縮でございますが、予定しておりますのでよろしくお願いしたいと存じます。追って開催通知を送付させていただきます。

  それから、追加論点の議論などもございますので、第8回目を追加して開催させていただきたいと考えております。時期的には、6月中旬を予定してございますので、これにつきましても、改めて日程調整をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。

〔部会長〕

それでは、第6回の地域経済・社会資本部会の審議は以上にいたしたいと思います。本日は長時間、大変有益なご議論をありがとうございました。

以上