第6回経済審議会地域経済・社会資本部会議事概要
1 日時:
平成11年5月12日(水) 15:00~17:00
2 場所:
経済企画庁共用第二特別会議室(407)(第4合同庁舎4F)
3 出席者
- (部会)
森地茂部会長
安土敏、石川嘉延、井上繁、北村浩子、小林重敬、坂本多旦、生源寺眞一戸所隆、中邨秀雄、長谷川逸子、林淳司、溝口薫平の各委員
- (事務局)
中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、林部計画官
安井計画官、涌野計画官、福島推進室長
4 議題
- 「地域経済・社会資本部会報告書(素案)」・「追加的に議論すべき重要論点」について
5 議事内容
冒頭、部会長より、今回資料については報告書の最終取りまとめ、公表まで非公開とする旨説明後、各委員の同意をもって非公開と決定。
(1)「地域経済・社会資本部会報告書(素案)」について
- ○首都機能移転が必要とされる理由は一極集中の是正だけでなく、防災面の改善や日本の地域社会システム自体を変えることもある。
「ネットワーク」という言葉が多く使われているが、むしろ、これまでの東京を中心とした階層的ネットワークから水平的ネットワークヘ変えるべきという表現が適切。
公的賃貸住宅の供給について、これからの住宅供給はむしろ、民間を中心として、公的なものは補助的に考えるべきではないか。
郊外型大規模店舗の記述について、今後懸念されるのは、大規模店舗が農地や白地のところに野放図にでていくこと。コントロールの仕組みを考える必要がある。
交通体系について、大都市中心の視点だけでなく、車を減らし、公共交通を充実させ、まちを拡大させないといった地方の視点も重要。
- ○郊外型大型店舗の出店については地元商店街の反対もみられるが、地域の活性化に大きな成果があった例もあり、決断も大切。
- ○住宅・オフィス等のスペース拡大について、オフィスと住宅の関係を具体的に計算してみてほしい。1000坪のオフィスは7200坪の住宅を必要とする。公園や消防等も必要になる。よほどの高層化等がない限りオフィス等の拡大と職住接近等とは矛盾するのではないか。
中心市街地の活性化について、小売業は立地産業で基本的に独占・寡占的になりがち。活性化についてはチェーン店の導入等により商店主同士の競争的土壌をつくることが重要。
- ○商業地の流動化を図ることも必要。
- ○人口40万人以下の都市については基本的に通勤問題はない。通勤問題の解決を考えるのであれば、東京を中心に考えることが必要。
- ○現在は、東京都もオフィス人口を抑えようというスタンス。オフィスをこれ以上増やさないとすれば、東京都区部をパリ型市街地にすれば910万人、マンション形式にすれば756万人、現在のままで693万人が居住可能との試算もある。
TMOについて、TMOとは銀行や公共交通機関関係者等が参加し商店街の活性化を考えていくもので、商店主を中心とするものとは矛盾。
- ○地方にも、マイカーが増え公共交通がなくなり、まちが大きくなりすぎるといった意味で、東京都とは違った通勤問題がある。両者を別々に考えて整理する必要がある。
- ○地方交付税の算定方法の簡素化について、交付税の算定方法は自治体間の配分の公平性や納得性を高めることが重要。
補助金の整理・合理化について、廃止の方向で考えてもよい。
- ○地方の責任と負担を高め、そのための手段として課税自主権を与えることは重要。その観点でみると交付税制度が肥大化・複雑化していることは問題。基本的な方向として、国の関与はナショナルミニマムに限定して交付税を縮減・簡素化していくことは重要。
- ○一般論としては、地方の財政はばらまきになりがちで、行政単位ごとのセクショナリズム等の問題があることから、広域化、明朗化等が指摘されているが、今の自治体の状況を固定した形で分権化し財源を渡してよいのかどうかは疑問。政策としての順序が重要。
- ○現在の3300市町村の行政能力はまちまち。行政能力と財源の手当はセットでやらないと実効性がない。
- ○中国における経済特区の成功要因の一つとして、ある指定都市だけに、周辺への内部補助をやめて自分だけで財源を使えるようにしたことがある。総論的に地方分権がよいと繰り返すだけではなく、具体的に考えることが重要。
- ○中山間地域等の中には、ただ合併しても何の効果があるのかわからない地域もある。そうした地域における行政水準の確保のためには、いったん委譲した権限を都道府県に事務委任することでカバーしていくことを考えてもよいのではないか。
国がナショナルミニマムを上回る行政水準を設定している例も多い。地域の選択によって柔軟な行政水準の設定を認めていくべき。
- ○歴史・文化等の保存について、古い家屋等の維持のためには生活上の不便や安全上の問題等が多々ある。地方に任せるだけでなく、資金面も含めて国としての支援が必要。
- ○中山間地域等について、部会としてのセールスポイントは何か。
特に中山間地域等については、ビジネスとしては自由度を確保する一方で、多面的機能発揮のための資源管理や景観の形成の観点からは計画・規制を強める形で、メリハリをつけることが必要。
不在地主の不耕作地の有効利用については、私権の制限となることから難しい面もあるが、制度の改正等を検討すべき。
ゾーンニングについては、農地を保全するといった防衛的な視点だけでなく、農地に戻すものも含めて長期的な視点で青写真を描いてそれに近づけていくことが重要。
- ○中山間地域等で農業を行うには相当の投資が必要であることから、担い手になる者は従来の生産者から経営者になる必要があり、経営政策の体系的整備が重要。耕作放棄地の担い手等に対する信用補完や運転資金を供給するシステムの確立が必要。
- ○都市計画の中で、保全する所と開発する所を明確にしながら地域を個性化していくことが重要。
生活の豊かさを地域だけの利便性や収入だけでなく、交流人口といった視点で捉え、広域的な観点で活性化を進めていくことが重要。
- ○大都市の問題と地域経済の問題が同時に盛り込まれている印象。
- ○基本的な考え方で、車社会に対する考え方を明確にすべき。これ以上車が増えるとすれば、駐車場や道路、歩道、高齢者の買い物の機会の確保等車に係わる問題が重要。
- ○都市をコンパクトにしようとすると周辺の土地利用が問題化する懸念があり、また、中山間地域等については現に乱開発が行われ美しくなくなっている。ビジネスとしては自由でも土地利用としては計画が重要ということをしっかり盛り込む必要がある。
- ○中山間地域等では、農協、農業委員会、農地保有合理化法人といった組織間における人材のフレキシブルな活用が重要。
- ○従来から指摘されていることについてはコンパクトにして、メリハリのある報告書にしたい。
- ○難しい問題ではあろうが、報告書で描かれた姿を実現するための手段を具体的に盛り込むべき。問題を明確化した上で、意識改革程度にしても手段に係わる方向性をだせるとよい。
- ○いろいろなスパンの問題が混在しているので、整理していくべき。
- ○大規模店の出店にしてもそうだが、旧来の経済的規制が地域規制的なものに基本的な潮流が変化してきている。地域的・土地利用的な視点を柱にして整理してみたらよいのではないか。
- ○「ゆとりの空間・時間」という記述の一方で、まちづくりは空間的にはコンパクトなものにし、時間的には迅速に行わなければならない。
- ○ゆとりある社会を構築するためには文化が重要であることから、文化について具体的に盛り込む必要がある。
(2)「追加的に議論すべき重要論点」について
- ○東京・大阪のような都市と地方を切り分けている印象をうけるが、地方でも連担している地域をみると人口規模的には十分大きいところもある。形式的にではなく実質的な切り分けをして整理することが重要。
- ○大都市・中小規模都市・中山間地域等といった区分は無理があるかもしれない。
- ○スーパーの出店の検討においては、行政区画ではなく自然的境界で切り分けしている。自然的境界の範囲内の人口で整理するのも一案。
- ○大都市・中小規模都市・中山間地域等といった区分けについて、東京・大阪だけではなく、政令市は大都市として位置づけるべき。今後重要となるのは、都市単体ではなく、機能分担やネットワークといった視点でみていくこと。少なくとも現在の行政区域とは別のもので整理すべき。
- ○単なる自治体の再編だけではなく、自治体の範囲を超えた広いエリアで計画をつくり資金も広域的に付けること等も考えるべき。
なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。
(本議事概要に関する問い合わせ先)
経済企画庁総合計画局農林水産業班
TEL:03―3581―1082