経済審議会構造改革推進部会(第6回)
議事録
時:平成11年4月20日
所:共用第一特別会議室(404号室)
経済企画庁
経済審議会構造改革推進部会(第6回)議事次第
日 時 平成11年4月20日(火)10:00~12:00
場 所 共用第1特別会議室(404号室)
- 開 会
- 構造改革推進部会報告スケルトン(案) について
- 閉 会
(配付資料)
- 資料1 委員名簿
- 資料2 構造改革推進部会報告スケルトン(案)
- 資料3 検討スケジュール
経済審議会構造改革推進部会委員名簿
部会 長
水口 弘 一 (株)野村総合研究所顧問
部会長代理
江口 克彦 (株)PHP総合研究所取締役副社長
五十嵐 三津雄 簡易保険福祉事業団理事長
岩田 一政 東京大学大学院総合文化研究科教授
加藤 秀樹 構想日本代表
リチャード・クー (株)野村総合研究所主席研究員
草野 厚 慶応義塾大学総合政策学部教授
草野 忠義 日本労働組合総連合会副会長
清水 秀雄 (株)セブンーイレブン・ジャパン取締役副会長
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
中村 靖彦 NHK解説委員
野中 郁次郎 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科長
長谷川 公敏 (株)第一生命経済研究所専務取締役
濱田 康行 北海道大学経済学部教授
村井 勝 コンパックコンピュータ(株)顧問
〔 部会長 〕 定刻になりましたので、ただいまから、第6回の構造改革推進部会を開催させていただきます。まだ委員でお見えにならない方、それから、大臣がお見えになる予定でございますけれども、定刻ですので、始めたいと思います。
本日は委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、毎回非常に出席率が高くてありがとうございます。
本日の議題は、「構造改革推進部会報告スケルトン(案)」についてです。
それでは、事務局から説明をお願いします。
〔 事務局 〕 それでは、お手元にお配りしてございます資料に基づいてご説明したいと思います。
資料2がございまして、その前に一枚紙の「経済社会のあるべき姿と各部会報告スケルトンについて」がございます。
現在、経済審議会の各部会におきまして、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の策定に向けての検討が進められております。先般、その作業の一環として、基本理念委員会・企画部会の名においてその基本的な考え方について大きな方向性を示した‘「経済社会のあるべき姿」を考えるにあたって’をとりまとめたところでございます。お手元に資料が配付してございます。これは、これから、基本的な考え方について広く国民からの意見を聞くという目的でまとめられ、公表されたものです。今後、国民各層からの広い範囲での意見を求めまして、その意見をもとにしながら新しい経済計画の目標としての「経済社会のあるべき姿」が最終的に明らかにされていくことになります。
各部会の報告は、基本的にはこの最終的な「経済社会のあるべき姿」を前提としてとりまとめるべきものであると考えられるわけですが、スケジュールの関係もあり、本日ご議論いただく当部会のスケルトン(案)は、今述べました、先般公表された‘「経済社会のあるべき姿」を考えるにあたって’を前提として準備されたものです。したがいまして、今後、最終的な「経済社会のあるべき姿」が明らかになるに伴い当部会報告の構成・内容については、本日のスケルトン(案)と異なったものにすることが必要となることもあり得ると考えられます。
これは、これから、どのような形で最終的な新しい計画の策定が進められ、内容がどうなっていくかということによるわけですが、そういうことをお含みいただいた上で、本日のご議論をいただければということでございます。
それでは、資料2に基づきスケルトン(案)について説明させていただきます。スケルトン(案)は、これまでご審議いただきました皆様方の意見等も踏まえながらまとめたものでございます。
(はじめに)は、当部会で、重点的に構造改革を推進するため3つのテーマを取り上げたいということですが、その取り上げた趣旨等について述べてございます。「現在我が国は、グローバリゼーションの一層の進展、経済社会の成熟化に伴う多様な知恵の時代への移行、環境制約の強まりといった大きな時代の転換に直面」しているということで、そこに述べました、「グローバリゼーションに対応した経済社会」、「企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会」、「環境と調和した循環型経済社会」の3つの観点からの構造改革を重点的に進めていく必要があるという趣旨を述べております。
なお、3番目のテーマの「環境と調和した循環型経済社会」は、前回まで、こちらの方から提示したタイトルとしては、「環境と調和した経済社会」としておりましたけれども、委員からのご指摘もあり、「循環型経済社会」としたらどうかと考えております。地球環境問題等の大きな国際的問題ということでなく、廃棄物問題及びそれの根本的な解決を目指した循環型経済社会の実現をテーマとして扱っているという趣旨を、簡単に述べております。
2ページで、1番目のテーマ「『グローバリゼーションに対応した経済社会』を実現させるための構造改革」でございます。グローバリゼーションの進展に伴い、先進国を中心に世界市場はますます統合され、その下で多様な文化・歴史等を背景に持つ経済主体が経済活動を展開するようになってきているという認識であります。ここで取り上げた主たる問題意識は、3つ目のパラグラフに書いてありますとおり、「グローバリゼーションがもたらすメリットを享受し、日本の経済的豊かさと世界市場における地位を維持していくためには、以下の点をそなえていることが必要である」ということです。
まず、「日本の諸制度・慣行は、これまでのように経済社会が同じ社会的背景を持つ人々からなることを前提としたものに比べ、さらに高いレベルでの透明性・アカウンタビリティを満たすものとする。」ということで、規制改革の考え方を述べております。
2つ目が、「『企業が国を選ぶ』時代を迎えたとの認識を踏まえ、日本における事業環境を国際的にみても魅力あるものにする。」ということで、主として制度調和という考え方でございます。
3つ目が、「国際ルールを作るための多角的な枠組の形成に寄与するとともに、日本に限らず様々な文化・社会的背景を持つ国々が参加できる多元主義的なアプローチを追及する。」ということで、積極的・主体的な世界におけるルール作りへの参画でございます。
この3つの観点に立って、以下、まとめを行いたいと考えております。
第1が、(1)「規制改革の推進」です。【1】「基本的な考え方」は、日本でも規制の撤廃・緩和が進められてきたが、その進展については諸外国に比べ遅れをとっている、そのため、日本の高コスト構造の是正はいまだ十分に進んでいない、という認識でございます。
3ページ目の第2パラグラフで、その背景として、従来の規制撤廃・緩和の推進策には個別の既得権益を擁護する要求に対し、全体の利益を優先させる点で不十分なところがあったということで、4つ挙げてございます。
○激変緩和という理由で実質的な措置がとられない。
○社会的規制に名を借りた経済的規制が残されている。
○許認可の廃止等が行われた場合においても、補助金や社会資本の割当等を通じた公共関与が続いているものがある。
○公的規制の代わりとなる民民規制が存在する。
【2】「政策方針」では、これからの政策方針をまとめてございます。このような問題点を解消し、今後10年程度の間に着実に規制緩和を推進していくためには、ア) 原則、イ) 推進手法、ウ) 推進体制という3本立てでまとめてございます。
ア) 原則
OECDが提唱する1)透明性、2)アカウンタビリティ、3)経済社会情勢の変化への適合性を規制改革の原則とすべきである。こういうアプローチをとることで、規制緩和ないし撤廃への取組がなされてきたにもかかわらず、それが期待されていた効果をあげていない原因を精査することが可能になる。
イ) 推進手法
3つを挙げておりますが、1つは、今公共事業でも進められているものですが、「費用対効果分析」の手法の統一化を推進するとともに、それを社会的規制、補助金、社会資本整備等の公共政策のすべてに拡張する。2つは、参入規制、価格規制に加え、社会的規制における公的部門の関与のあり方という点について、公的関与の強さの程度をあらわす数量的指標の枠組を構築し、それに基づいて産業分野毎に主要先進国との国際比較を行い、規制改革を重点的に進めるべき分野を抽出する。これは、例えば価格の問題については、内外価格差というアプローチで、我が国においては諸外国より非常に高い価格のものについては、問題点の発掘、それから、それを解決して内外価格差をなくしていくというアプローチを政府としてもとってきましたが、同様な考え方に基づいて、規制についても国際的にみて高いレベルの規制については重点的に取り上げて、その是正・改革・撤廃を図るというアプローチを考えております。3つが、物流、情報などのグローバリゼーションへの対応が求められている重点分野において、金融分野で行われたような大胆な改革を3~5年程度の間に実行するビッグバンアプローチを導入する。そういう手法をこれからとっていくべきであるということでございます。
ウ) 推進体制
第1点として、今述べましたような費用対効果分析による政策評価の客観性のチェック、数値目標に基づく達成度合いの監視、ビッグバンアプローチの実施状況の監視等を担当する第三者機関を設置する。第2点として、残された様々な規制については、事前防止から事後チェック型行政へ転換が原則になると考えられますけれども、それに必要となるチェック体制の強化が必要であるということでございます。
第2が、(2)「魅力的な事業環境の構築」です。【1】「基本的な考え方」としては、国際的な事業再編の時代を迎えているにもかかわらず、資産・資本取引に係る税制、企業法制や競争政策の面で日本では改革が遅れている。このため、日本企業の事業再編や外国企業の対日進出が進んでいないという認識でございます。時間の関係もございますので、以下はとばさせていただきます。
4ページから5ページ、【2】「政策方針」です。
ア)制度基盤の整備
税制、企業法制、競争政策、知的所有権等について、国際的な制度調和、あるいはより積極的な事業再編等を可能にするような制度改革を行っていくということでございます。イ)人材の育成
こうした分野における人材の不足は、当部会でもいろいろな方から意見がございましたが、M&A等に不可欠な専門家について、当面は人材を諸外国から積極的に受け入れ、同時に国内の人材を育成する。あるいは、言語やビジネスマナーの違い等を克服し、我が国が国際的な情報共有を可能とする人材を育成するということでございます。
第3が、(3)「国際的なルールや基準の形成への積極的な参画」です。【1】「基本的な考え方」については、問題点を3つまとめてございます。
○世界のルールや基準の形成をリードしているのは欧州と米国で、これまでの日本の役割は大きくない。
○政府、産業界ともに、国際的フォーラムで積極的な役割を果たすことのできる人材は不足している。
○日本は、厳しい基準の適用を逃れる特例を要求したり、先進国と途上国を仲介するという立場を取りがちで、議論をリードするような姿勢に乏しい。
6ページ、【2】「政策方針」です。
ア)戦略的対応
国際的なルールや基準の形成の積極的な参画を国の重要施策として位置づけ、関連の情報収集とその分析に努めるとともに、企業、事業団体、学界など民間におけるこうした活動への支援を強化する。また、APEC等の日本が活動しやすい場を活用した取組を進める。
イ)重点分野
環境や情報通信機器、あるいは高齢者等に配慮したユニバーサルデザインなど、日本の得意分野で重点的に取組む。
ウ)民間活動に対する奨励
このような活動は重要なものであるという広報に努め、こうした活動に参画する専門家の評価を高めるよういろいろ働きかける。
以上が「グローバリゼーションに対応した経済社会」ということでの構造改革でございます。
次に7ページ、2番目のテーマ「『企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会』の実現のための構造改革」でございます。これは「企業の面からの改革」と「個人の面からの改革」でまとめたいと考えております。
(1)「企業の面からの改革」ですが、創業・起業の促進、新技術・新業態の開発・普及、ビジネス仲介機能の強化、という観点からのシステム変革が重要という認識でございます。
1)創業・起業の促進
【1】基本的な考え方
この点については、これまでにも様々な施策が講じられ、この部会でも、そのような策がなぜうまくいっていないか、まずそういうことを明らかにして、その上に立ってこれからの重点施策を考えるべきという意見が多く出されていたわけですが、その方向でとりまとめたいということでございます。
まず、これまでの施策にもかかわらず、開業率が低下傾向にあるうえ、近年廃業率が開業率を上回っている、あるいは創業時の障害として、ずいぶん昔から言われているわけですが、依然として資金調達等の問題を指摘する声が多いということで、創業・起業が盛んに行われる環境に向けての改善が進んでいない。
この背景には、これまで行われてきた施策が、創業・起業の促進の障害となっている次のような状況の改善に資することが少なかったためである、として3つ挙げてございます。
●リスクを勘案した上での失敗時の損失が成功時のリターンより大きいと評価されるような制度・仕組みが依然として残されており、自らリスクテイクしないことが合理的な選択となっている。
●創業時の資金供給が十分ではないこと、創業・起業をしたとしても万が一失敗した場合には敗者復活は困難であることから、そもそも創業・起業を選択肢として考えることを抑制している。
●起業家精神に溢れる人材が不足していることに加え、規制等により市場での公正な競争が妨げられている。
こういった反省を踏まえ、次のような点で環境を整備していくことが重要ということで3つ挙げてございます。
○起業家やその支援者にとっての動機付け
○起業家の資金調達環境とセーフティネットの整備
○起業家精神の涵養と規制改革の推進
8ページに入っていただきまして、「また」以下、これはA委員から意見がございまして、それを踏まえて若干、大企業との関係を書いております。大企業が、創業間もない企業との共同(コラボレーション)を積極的に進めることが、創業・起業の促進にとって重要であるという考え方を示してございます。
【2】「政策方針」に入りまして、
ア)起業家やその支援者にとっての動機付け。これについては、<具体的施策>のところで、
・リターンの実現の場としての店頭市場の活性化に向けた改革を実施する。
・制度の拡充等を通じたストックオプションの利用を促進する。
・転職が不利になるような制度の見直しを進め、転職と勤続の間での制度の中立化を図る。
これはより円滑な労働移動が可能な仕組みになっていれば、一旦企業に就職しても、その後自らのアイデアを実現すべく創業・起業をするという選択もしやすくなるという考え方でございます。
イ)起業家の資金調達環境とセーフティネットの整備
これもずっと前から問題なわけですが、起業家にとってはリスクの限定された直接金融からの資金調達が重要であって、ジャンクボンド市場の構築も含めた新たなシステムの設備投資も必要である。あるいは、現状では金融機関から資金調達を行う場合、企業経営者個人が債務保証能力のいかんを問わずその債務を連帯保証する場合がみられる。この場合、仮に事業に失敗すると、企業経営者個人は保証債務の完済まで債権者から債務の履行を求められることになる。このことは、創業・起業に対して消極的にさせるばかりでなく、一度失敗すると再挑戦を困難にしてしまうことになる。
<具体的施策>としては、
・多様な資金ニーズに合った創業資金の円滑な供給に努める。
・公開前規制の見直し等店頭市場の活性化に向けた改革を実施する。
・ベンチャーキャピタルによる、人材の養成や投資能力の充実、専門的な技術評価能力の向上を促進する。
・ビジネスに失敗した企業や起業家が容易に再建に向かうことができる倒産処理制度を速やかに整備する。
・金融機関が、企業経営者個人の債務保証能力のいかんを問わず、企業債務の連帯保証を求めるというあり方を是正する。
ウ)起業家精神の涵養と規制改革の推進
各教育段階において起業家精神醸成に向けた教育が実施されることが必要である。それから、起業家が十分に活躍しうる場を整備するという観点からの、規制改革の推進が重要である。
<具体的施策>としては、
・起業家精神にあふれる人材の育成・輩出を図るための教材の開発・普及とともに、産業界と学校との人的交流を促進する。
・ベンチャー企業等へのインターンシップをより一層促進する。
・民民規制への対処も含めた競争政策等を積極的に進める。
「企業の面からの改革」の第2の柱としては、2)「新技術・新業態の開発・普及」を挙げてございます。
2)新技術・新業態の開発・普及
【1】基本的な考え方
製造業での新技術・新業態の開発にとどまらず、マーケティング、デザイン等の分野の役割が一層重要である、という認識です。
【2】政策方針
<具体的施策>として、
・中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)を積極的に推進する。
・国立大学教官等の民間企業役員兼業等の人的連携も含め、産学官連携を一層推進する。
第3の柱としては、3)「ビジネス仲介機能の強化」でございます。
3)ビジネス仲介機能の強化
【1】基本的な考え方
10ページでございます。創業・起業を行うにあたり、技術、マーケティングや財務、法務等の知識・知恵が不可欠であるが、企業家においてはこうした知識・知恵が不十分であるケースが多い。したがって、こういったものの仲介機能を強化することが創業・起業の促進にとって重要である、という認識です。
【2】政策方針
ア)技術情報の仲介機能
<具体的施策>
・大学からの技術移転を促進するために、技術移転機関(TLO)の整備を促進する。
・技術移転機関の機能強化のため国立大学教官の同機関役員兼業について早期に実現する。
・技術情報の仲介能力の強化として、現在未利用特許が多数存在することを踏まえ、その流通を促進するため、特許流通アドバイザーを充実する。
イ)企業活動の情報の仲介機能
専門家や研究機関等の外部経営資源の紹介・引き合わせを行うコーディネーション活動への支援を一層強化する。
<具体的施策>
・マーケティングや財務、法務等の実務に精通した人材は起業家にとって重要であり、実務経験のある企業の退職者をアドバイザーとして登録し起業家のニーズに応じて派遣する事業等を、積極的に拡充する。
次に、(2)個人の面からの改革
【1】基本的な考え方
10ページの下から11ページに述べておりますが、個人の市場価値を高めるという観点からの施策を中心に取り上げてございます。
【2】政策方針
○能力開発を行う場の提供
○能力開発に必要な費用の支援
○能力開発のための可処分時間の増加に関する支援
○その他の能力開発へのインセンティブとなる支援
4つに分けてまとめてございます。
ア)能力開発を行う場の提供
大学等がリカレント型の能力開発の場を提供するため、社会人の多様なニーズに応え得るよう改革を進めていく必要がある、という認識です。
<具体的施策>として、
・社会人が大学等に入学する機会を拡大する。
・修士課程1年制や2年を超える長期在学コースを制度化する。
・大学等の自主的な取り組みで社会人の多様な学習ニーズに応える。
等のことが書いてございます。
イ)能力開発に必要な費用の支援
これも一度ご覧いただいたように、費用面での制約が、社会人が大学で学ぶという面では大きい。また、職業訓練給付の対象となる教育訓練機関がこれまでは限られていたということで、これは現在、拡大すべく施策が行われているところですが、これの一層の拡大を行うことで、その場合には、費用面での公的な支援がある。それから、今述べました奨学金の拡充の問題も重要と思います。
ウ)能力開発のための可処分時間の増加に関する支援
能力開発のための可処分時間の増加も重要です。有給教育訓練休暇制度、フレックスタイム制、裁量労働制の導入の促進が考えられます。
エ) その他の能力開発のインセンティブとなる支援
そのほかの能力開発のインセンティブを強めるという観点で、例えば、人事・労務・能力開発等ホワイトカラーの職務分野を対象とした職業能力評価制度の活用の促進、ということが考えられます。
以上が2番目のテーマについての構造改革であります。
次に、13ページから、3番目のテーマであります、3.「『環境と調和した循環型経済社会』を実現させるための構造改革」でございます。これは先だってご議論いただきまして、それを踏まえたスケルトンにしてございます。
(1)基本的な考え方
廃棄物の発生抑制と発生した廃棄物のリサイクルを社会のシステムとして定着させることにより健全な物質循環を確保し、環境負荷の少ない「環境と調和した循環型経済社会」へと構造改革する必要がある。
(2)政策方針
いくつかまとめてございます。
【1】システム基盤の構造改革
生産者、消費者、行政等の各経済主体が、従来の枠組みを超えて自らの責任を自覚し、その責任を効率的に果たすインセンティブが働くシステム基盤を確立する必要がある。
「従来の枠組みを超えて」というところで、既得権益等でなかなか進まないということも少し表現したいと考えております。
ア)リサイクル原則の確立
リサイクル可能なものはリサイクルするという基本的ルールの確立が必要である。
<具体的施策>として、
・リサイクル基本法を制定し、あらゆる品目についてリサイクルを進めていくという基本原則を定める
・その中で、排出者責任と製造者責任を徹底することも必要である。
・現行の廃棄物処理法に基づく廃棄物の定義が実態と合わなくなっているので、客観化・明確化するとともに、不法投棄に対する規制を充実する。
・環境汚染を防止する観点から、土壌の汚染に対する基本的な方針を法制化する。
・環境リサイクル教育の強化充実により、リサイクルに伴い発生する新たなコスト負担の受容を含めた意識の改革を図る。
イ)廃棄物処理・リサイクル体制の見直し
廃棄物の発生をできるだけ抑制し、効率的な処理・リサイクルを可能とする方向で見直す必要があるという考え方でして、リサイクルに対するインセンティブを高めるという観点から、必要に応じて経済的手法の活用が必要である。また、生産者や消費者に対し、環境への新たなコスト負担を求めるものであることから、それらの施策の導入にあたっては、環境と経済トータルのコストや便益等の評価を説得的に示すことが必要である、ということを述べております。
<具体的施策>としては、
・一般廃棄物処理に従量料金制の導入、廃棄物に対する環境税の導入を検討する。
・デポジット制を導入する。
・分別、回収、コスト負担の各方式の統一化を含めた広域処理や、一般廃棄物と産業廃棄物の事業・施設許可の統一化を含む統合処理を推進する。
・PFIの積極的なこの分野での活用を図る。
ウ)リサイクル財の需給安定方策の実施
なかなか需給が安定しないし、需要が不足しているということも、リサイクル促進のネックになっています。
<具体的施策>としては、
・廃棄物やリサイクル財、処理・リサイクル技術に関するデータベース等情報交換システムの整備を進める。
・企業に環境報告書の公開を義務づける。リサイクル製品に対するマーク制度等と第三者機関による評価等、市場を通じた評価・監視の仕組みを整備する。
・リサイクル財の需要を確保していくため、公共事業においてリサイクル財の一定比率以上の使用を義務づける。
【2】産業構造・技術基盤の構造改革
循環型経済社会を実現するという観点では、今述べましたシステム基盤の構造改革にあわせ、リサイクルコストを大幅に低減し、高品質なリサイクル財を低環境負荷の下に安定的に供給することを可能とする産業構造と技術基盤を確立することが不可欠であるという認識でございます。
ア)産業構造の抜本的転換
従来の動脈重視型の産業構造を、リサイクルが内在されたインバース・マニュファクチャリング型産業構造に転換する必要があるという認識です。
<具体的施策>としては、
・LCAに基づく製品ライフサイクル全体の環境負荷の把握を推進する。
・製品ライフサイクル全体の環境負荷を低減する方向で、産業分野を超えた連携強化を図る。
・企業内の動脈部門の見直しと静脈部門の育成・強化を促進する。
・低環境負荷の下で効率的なリサイクルを可能とするための産業立地の見直しと基盤整備を進める。
・廃棄物、リサイクル財の集積・中継地、中間処理地の適正立地等静脈物流拠点を整備する。
イ)廃棄物処理・リサイクル産業の効率化
廃棄物処理・リサイクル産業の効率化・低コスト化を促進するために、既存の枠組みを超えたリサイクル事業者の事業規模の適正化や事業内容の多様化等を図る必要があるという認識です。
<具体的施策>としては、
・事業許可取得手続等に係る規制緩和により新規参入あるいは広域・複合事業展開を促進する。
・廃棄物処理事業者とリサイクル事業者の融合支援等を行う。
ウ)リサイクル対応型技術の開発
<具体的施策>としては、
・容易な分別、適切なメンテナンスにより機能がアップされ製品の長寿命化等を実現するリサイクル対応型の生産技術やシステム化技術等の開発のために、集中的な投資を促進する。
・業界横断的な研究開発体制、素材生産から再処理までの製品の各ライフサイクルを通じた垂直的な研究開発体制等、産学官の連携研究体制を整備する。
・動脈部門と静脈部門の技術情報を共有できる仕組みを構築する。
駆け足でございましたが、3つのテーマにつきまして、これまでの議論を踏まえてスケルトン(案)を作成したところでございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
討議に入ります前に、堺屋大臣がお見えになりました。ご都合でそう長く席におられませんので、初めに一言お願いいたします。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 いつも、日本経済のあるべき姿の議論にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。
かなりスケジュールの詰まった忙しい会議でございますが、よくお出ましいただきまして、心から感謝しております。
今日、皆様方にお諮りしておりますのは、構造改革推進部会の報告スケルトン、かなり煮詰まった段階で出しております。
この個々の問題、5つの部会が同時に走っておりますけれども、これともう一つ考えていただきたいのは、日本全体が10年後にどんな国になっているのだろうか、という問題でございます。
それぞれを考えていきますと、その最善の道といいますか、その分野でのいい答えはあるのですけれども、それを合わせますと、合成の誤謬でしょうか、総合の誤りでしょうか、そういったものが登場するのではないかという感じがしております。
グローバリゼーションにつきましては、グローバリゼーション部会もございますが、産業構造をどこまで大胆に変えるか、日本は本当にどれぐらい変わるべきかというのが、私の一番の関心事でございます。
だんだんと議論をしていきますと、今現在から出発すると、ここを少し変え、ここを少し変えという議論にしかなりません。
よく言われるのですけれども、玄人というものは、少し変わっても、大変変わったように見える。
万国博覧会のときに、日本庭園をつくりました。当時、日本庭園学会の偉い先生方がおつくりになりましたが、室町の庭、江戸初期の庭、江戸末期の庭、昭和の庭、21世紀の庭、5つの庭が並んだ。その中を私たちが歩くと、そう変わっていない、室町の庭から21世紀の庭は。それで先生に聞いたら、「私たちは、これを設計したのですが、庭園学会では、21世紀であろうが、22世紀であろうが、こんなものができるはずがない。池の横に杉の木が立っている。池の横に立つのは必ず松の木である。つまり、水面に葉が出てこなければいけない。ところが、杉の木を植えたら縦になる。それから、石組みのところに石垣を一部使った。これは、21世紀でも行き過ぎだというので、今、もうちょっと保守的にしようと考えている」と。それで松の木になさって、枝の剪定の方法を極端に変えた。我々が見たら、全然わからないです。
そういうことがよくあるものでございまして、今から出発する、特に役人などは現在の状況から出発しますと、相当大胆に変えたつもりが、全然変わっていないということがよくあります。
去年、放送劇で徳川慶喜がありました。徳川慶喜が大活躍をして、幕府の改革をいろいろ言うのですが、結局、あまり変わりません。特に、嘉永6年に黒船が来ましてから、文久2年、慶喜と、その上の14代将軍家茂が江戸を出発して京都へ行くのですが、それまでの10年間は何一つ変わっていないです。
黒船で世の中が変わったというのは真っ赤な嘘でございまして、その間に議論して、長州征伐は負けるし、えらい大動乱をしているのですが、そのたびに老中等が集まって、必ず「抜本的に解決し、すべて祖法を破り」ということを言うのですが、それでどれだけ変わるかというと、今の我々から見ると、わからない程度の変化です。
この今の問題でも同様でございまして、例えば、静脈産業をつくるなどというのは、そう簡単なことではございません。
例えば、日本の町には、いまだに静脈道路がないのです。つまり、裏動線がありません。これを本気でつくるのなら、廃棄と建設を前提した裏動線をつくるというところがないと、この産業は絶対に成り立たないはずですが、その辺になると、また地域部会との関係が出てまいります。
皆様にご審議いただいたものをあわせて大きな形で、10年後の日本はどうなるか、これを考えなければいけないと思います。10年後の日本を考えると、さらに、その10年後の体制であと10年走れる状態を考えないと、10年目でアウトの状態を考えたのではいけないと思うのです。
そうしますと、10年というのは、ちょうど5年目ぐらいから人口が減りだします。労働人口が仮に、厚生省が作っています15歳~64歳までを労働適正人口(この数値には異論があるでしょうが) 、それですと去年が頂上で下がりだした。
初めは徐々ですけれども、2010年から後は猛烈な勢いで下がる。しかも、高齢者が増えますから、若い人は劇的に減少する。
日本は、今まで、人口が減少するという経験は、享保時代からありません。そういう世界は一体どんな世界か。秋田県とか、高知県とか、人口減少県がございますけれども、そこには中央からいろいろと補助金がいったり、公共投資をしたりしているわけです。それがないときに、どうなるか。
例えば、人口の減少している大牟田市などに行きますと、開業医の年齢が69歳を超えました。そんな社会が果たしてあるのかどうか、というようなことも1つの問題です。
それから、産業構造でどんな産業を残し、どんな産業をやめていくのか。
明治の時代の人が偉かったと思うのは、米に続く大きな農産物でありました綿花を、明治16年に一発でやめちゃうのです。その結果、三河から河内に至る近畿地方の農家は、猛烈な疲弊をしまして、流民、餓死者が大量に出るという状態になったのですが、その結果、タマネギであるとか、馬鈴薯であるとか、新しい農産物ができた。ブドウを植えて、一時、大阪府は日本一のブドウの産地でございまして、そこからサントリーが出てくるわけです。そんな大胆なこともやりました。
要するに、私たちが今考えなければいけないのは、文化の変化ではないかと私は思っています。
明治維新がなぜ偉大だったかというと、武士の文化をやめさせた。だから、規則が変わる前に、断髪令が出ましたのは、ご存じのように明治4年ですが、既にその前に「ざんぎり頭」の歌がはやって、明治3年にはちょん髷の率が半分になっていた。あるいは、明治元年のうちに、裃を着て役所に来る人がいなくなった。あるいは、当時としては世界で最も普及していた寺子屋を全部廃止して、椅子式の学校をつくった。そういう、武士の文化を全部否定した。これが大変大きなことです。
戦後は半分だけ、軍人文化というのを否定いたしました。
今、私たちが直面しているのは、結局のところ、全部まとめたところ、1つの文化の変化なのかなという気もしております。
皆様方にそれぞれの分野でご研究いただいたものを総合するときに、その変化の全体が文化を変えるのかどうか。松の木の剪定を変えるのではなしに、杉の木にするのかどうか、このことを皆様方に十分教えていただきたいと思っております。
そうなりますと、各所各地大混乱になると思いますけれども、むしろ、10年という長い先がそういうことに対するクッションになってくれれば、この研究もありがたいなという気がしております。
経済企画庁が今まで作りましたものの中で、全体的に整合性をもって実現したのは所得倍増計画でありました。これはまさに日本の国を近代工業国家にするという大きなコンセプトを作り上げて、それに合わせて全国総合計画とか、金融政策とか全部作ったのです。そういうものを今、作り直すべき時期に来ているのではないかという気がするものですから、あえて、皆様方にご無理なお願い、難しいお願いをさせていただきたいと思っている次第でございます。
よろしくお願いいたします。
〔 部会長 〕 非常に示唆に富むお話をありがとうございました。
それでは、本題に戻りまして、先ほど事務局から説明のありました資料2、「グローバリゼーションに対応した経済社会」、「企業や個人の創造性と自由度が高い経済社会」及び「環境と調和した循環型経済社会」の3つの部分から構成されておりますので、それぞれのパート毎にご討議いただきたいと思います。
まず最初に、全体の構成も含め、「グローバリゼーションに対応した経済社会」を実現させるための構造改革についてのご意見をお伺いしたいと思います。どうぞご自由にお願いいたします。
〔 B委員 〕 大臣は、こちら側にいてもらって、がんがんこちらからやっていただいた方がいいかなと思いましたけれども、大変示唆に富むお話をいただきました。
文化を変えるという話ですが、全体のあるべき姿の中で、まずここで言っていることは、私はこれでいいと思うのです。それは、これまで当部会でも申し上げてきたことで、透明で公正な市場システムがちゃんと機能する状態にしましょうということです。これは文化の違いということでいえば、これまですべて集権的に国が決めてきたものを、人々の選択の方に任せていく。ですから、松の木か杉の木かということを、それぞれが決めていく。今までは、全部ここは松の木と決めてきたのを、松の木でも、杉の木でもどちらでも選択できるような形にしていこう。そういう変化だと思うのです。
ただ、10年先には、私は、これだけでは足りないと思うのです。つまり、この状態にしていくということは、いわゆるグローバルスタンダードにやっと追いつく。世界との間でハンディがなくなる状態に、これでやっとなるわけです。そうすると、今度はそこからさらに一歩進んで日本が頭一つ出していくためには、何らかの形で差別化を図らなければいけないだろう。
やっと今までのところ、ほかの車はエンジンが付いて走っているのに、こっちはやっとエンジンを付けた、そういう状態になるのをこれから10年間かかってやらなければいけないことです。
その後、今度は、その中で頭一つ出していくために何を考えるか、そこのところ。要するに、日本として何を差別化として売り出していくか、そこの部分についてのことは、あるべき姿の中で考えなくていいのかどうか。
とりあえず10年間は、ほかと状況を同じにする、スタンダードを同じする、追いつくというところまで規制改革をやらなければいけないということがありますから、それならそれで結構ですけれども、その先のところまで考えなくていいのかどうか、というのが「あるべき姿」についての私の考えです。
〔 C委員 〕 コメントを申し上げる前に、1つだけ、このペーパーの性格で伺いたいのです。スケルトンですから、骨格。ということは、この後これが案になるときは、もうちょっと膨らむのですか、それともやや説明が詳しくなるということなのですか。
〔 事務局 〕 膨らんで、施策のところもまだ十分に書き込んでございませんので、そこはもっと具体的に書き込んでいくいことになります。本日いろいろなご意見をいただければ、大臣からもお話がございましたけれども、もっと基本的な考え方のところを充実すべきということであれば、充実した形でお示しをしたいと考えております。
〔 C委員 〕 この第1部を拝読して一番大事だなと思ったのは、3ページの頭の方に、「規制撤廃・緩和の推進策には個別の既得権益を擁護する要求に対し、全体の利益を優先させる点で不十分なところがあり、次のような限界が現れている。」として4つ書いてあります。
私も、最初のレポートにも書いたのですけれども、これは個別の既得権益を擁護する要求というのは、なんとなく人ごとみたいに書いてありますけれども、実はここは、これまでの非常に精緻な官僚機構の力、同時に政治家の非常に強い力というのが全体を左右してきているのは事実だと思うのです。そのところを、国民の意識として、もちろん、少しずついろいろな世論の動きで変わってはきていますけれども、これからどのように考えていくのかというのは非常に大事なことではないかと思うのです。
今、案になったときはもうちょっと詳しくなるのかと私が申し上げたのは、ここに4つ限界が書かれていますけれども、一般の国民に広く意見を聞くというところであれば、それぞれについてどういうことがあるのかというのが、普通の人はわからないです。そこを、このまま提示して、それは別の附属資料集などで出すのか、それはいろいろなやり方があると思いますけれども、そういうことが必要ではないか。つまり、本当は権限の分散と、より強い規制緩和ということが必要なのだけれども、しかし、「なぜうまくいかないのか」ということがもう少しわかればいいのではないか。
そのためには、時間はかかるかもしれないけれども、教育の問題なのか、あるいは何年か現実的な動きをやっていけばそういった規制の力というのも変わるのかどうか、というようなことを実はちょっと考えております。
それから、どこに入るのかはわからないのですけれども、グローバリゼーションでいいのかどうかわかりませんが、今、大臣が言われたような、高齢化と人口減少の中で、外国人の労働力というのをどういうふうに考えていくのだろうか。
今、単純労働については、一応受け入れないということになっていると理解しておりますけれども、そういう問題は、この中には出てこないのですけれども、それは必要がないのか、あるいはほかの部会で議論されているのか。
そのようなことが、私の感じた点でございます。
〔 事務局 〕 外人労働の問題は、グローバリゼーション部会の方で移民・外国人労働をこれからどう捉えていてくかということで検討して、まとめたいと考えております。
〔 部会長 〕 この問題は、先日、企画部会のレポートを発表しましたときに、新聞各紙によって全部ウェイトが違いましたけれども、外人労働はいかにも自由化するという意見も出ています。これは様々な意見があるということでございます。
それから、C委員がおっしゃったのは重要な点で、僕自身は、これはスケルトン(案)ですけれども、スケルトンの中にいろいろな肉がずいぶん入っているものですから、きちんと整理する必要があるとは考えております。
〔 D委員 〕 全体としては、大変いろいろな問題点が網羅されていると感じております。
ただ、ちょっと思いますのは、先ほどB委員もおっしゃいましたけれども、では10年後はどうかという問題、それにも絡むと思うのですが、キャッチアップすることが前提になっていると考えますと、どちらかというと、この提言といいますか案というのは、負の部分をなくす、マイナスの部分を埋めるというようなトーンがかなり大きいという印象がございます。したがいまして、プラスの面をどうしていくかということを、もうちょっと明るく書くといいますか、別な言い方をしますと、こういうことをするとどういういいことがあるのか、どんなふうによくなるのか、ということがやや欠けているかなという感じがいたします。
グローバリゼーションのメリットということでいくつか書かれておりますが、何となく我々国民にとってどういうふうによくなっていくのだろう。どういうプラス面が我々にあるのだろうということが見えにくい、そういう感じがいたします。
もう一つ、これは私が前から申し上げていることですが、こういった改革を進める、新しい絵を書くにあたって、必ずそこにいろいろな摩擦が生じる。今も大臣からいろいろなお話がございましたが、とりあえず摩擦が生じる。その摩擦を、ある意味で乗り越えていかなければいけないわけですが、それをどのように乗り越えていくのか。そこのところが、なかなか見えてないと、やや不安が先にくるということなのだろうと思います。
ですから、最初の話とも通ずると思いますが、どうやって安心できるか、その不安をどう解消していくのか、マイナス面があるけれどもそれはこう解消する、というお話が書かれていれば、もうちょっと実現可能性が実感できる、そういう感じがいたします。
先ほどC委員からもお話がございましたが、官僚機構なり、その官僚の制度というものが、ここでは抜けているという感じがします。事前調整から事後規制・事後監視ということになりますと、当然のことながら、その数も相当増やさなければいけないだろう。例えば、ご承知のとおり、アメリカの官僚の数というのは大変多いわけです。そういったことを十分踏まえて、そのようにやっていくのだということか。あるいは数は増やさないけれども、そこは何とか、質の面とかいろいろあるかと思いますが、別の手だてでカバーするのか。そういうことも踏まえて、そこの部分を多少とも触れる必要があるかなという感じがしております。
〔 E委員 〕 B委員、C委員、D委員がおっしゃったことと重なる部分があるのですが、ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんのでお許しいただきたいのですけれども、大臣がおっしゃったような、玄人からすると、少し変わったことが大きく変わったように見えるという、そのままのようなペーパーの感じがしてならないのです。
私、狼少年みたいで、いつも同じことを言いますので、だんだん迫力がなくなってくるような気もいたしますけれども、例えば、先ほどC委員からご指摘もありました、3ページの頭、官僚機構あるいは業界の民民規制が規制の改革の阻害要因となったというところなどについては、例えば、今までの行政改革委員会のレポートであるとか、様々な審議会で全く同じことが書かれているわけです。では、今度の経済審議会のレポートではここをどういうふうに書くかというところがまさに問われているところだと思うのです。
部会長も、前回のレポートで、「私の責任において」というふうにおっしゃったけれども、今日出てきたこのペーパーを見たら、全く変わらないじゃないですか、ということをあえて申し上げたいのです。
例えば、具体的にこういうことが特定の省庁の既得権益によって邪魔されている、というぐらいのことを書かなければ、経済企画庁は新たな組織に統合されるということもあるわけですから、そのぐらいの気概を持って--などと言うと、私、非常に若輩ですから失礼ですけれども--書いていただいてよろしいのではないでしょうか。
私がここの委員に入っていることの意味というのは、若干乱暴なことをいろいろなところで言ってきましたので、この席に連なることになったのだろうと思うのですけれども、単に取り込まれているだけのような気がしてならないのです。
僕は何回も同じようなことを言っていると思うのです。具体的にどういうことなのですかということを、ここにお書きいただかないと、意味がないと思うのです。
同じようなことをほかの委員の方は非常にやんわりとおっしゃっていますけれども、私は、乱暴に申し上げたかったわけです。
もう一点は、プラスの側面ということをD委員がおっしゃったわけです。私、書きっぷりというのは、日本の規制のレベルというものが国際標準とかけ離れて厳しい、だから、そこに合わせなければいけませんね、ということが全体の書きっぷりの8割ぐらいの感じであって、一生懸命探したのですけれども、これをやると国民にとってどういうメリットがあるのか。前回の議論で、そこを証明するのは、資料的に・統計的に説明するのが難しいというお話があったわけですが、利便性とか、選択の範囲だとかが少しは書かれていますけれども、具体的にこういうことなのだ、と。既得権益を持っている人も、それを捨てることが、それこそ10年後の日本にとっては、その当事者にとってもプラスとなるというような、シナリオというか、書きっぷりがあると、もう少し説得力があるのではないか。
大変失礼な言い方になりましたけれども、私が申し上げたかったことはそういうことです。
〔 部会長 〕 恐らく、今まで委員のおっしゃったこと、ほぼ共通していると思うのです。これでは、ちょっとパンチがないではないか、従来と同じだ。あるいは、表現において逆行しているという点もあるかと思います。我々民間サイドでは、かなりきついことを言ってはいるのですけれども。
特にD委員が言われた、構造改革に痛みが伴う。こういうメリットがあるということよりも、当面は、猛烈な痛みがあるということは事実だろうと思います。特に民間で、ソニーにしても大リストラをやるということ、それが、かえって株式市場で高く評価されているという時期ですから、これが合成の誤謬ということになる。
ただ、これを急にどうカバーするか。僕は個人的には、それはできないと思います。それを耐えていかなければ先はないということです。したがって、今までは政府関係では、選挙という問題もあるのかもしれませんけれども、議論がそこで空回りして、それでこういうことになっている。
今回の場合も、委員の皆さんの強いご意見を入れて改訂すべきと思いますけれども、3ページでも、「推進手法」というところでは、「物流、情報などグローバリゼーションへの対応が求められている重点分野」、これは実際はむしろ、スロー・グロース・ジャパンと言われる規制産業が70%~80%を占める、そこに「金融分野で行われたような大胆な改革を3~5年程度」というのがいいかどうかは別として、「ビッグバンアプローチ」という言葉が出ておりますので、この辺の問題をさらにどれだけ敷衍してやっていくか。
しかも、具体的な事実として、何々省の何々課がこれをやっているからいかん、というところまで書くかどうかは別問題としまして、あるいは民民規制という問題、民間にもいろいろな手数料問題とかを含みまして、例えば住宅の売り買いの場合に、それぞれ3%ずつのコミッションがある。片方で、証券委託手数料は10月から完全自由化となっているわけで、いろいろな矛盾もかなりあります。といって、具体的な点を列挙していくと何千何百と出てきてしまう、その辺をどうするかということも、これからいろいろ知恵を拝借しながらやっていきたいと思っております。
〔 F委員 〕 2つ申し上げたいと思います。一番最初のときに、E委員、B委員でしたか、お話があった点ですが、いろいろな問題点はもう指摘されているではないか。むしろ、その実現の方策が必要ではないかと。私は、そのとおりだと思っております。
ただ、そうは言っても、実現の手だてを全部に書いていったら、まさに山となるわけで、1つだけ、私は、経済審議会は総理の諮問委員会ですから、これは抽象的にいえば政治家の責任というのでしょうか、構造改革というのは官僚の抵抗だとかいろいろ言われますけれども、官僚組織というのはある意味では本来そんなものですから、制度的にも、歴史的にも、政治家がきちっと動かないとできないと思っております。ですから、総理の審議会であれば、「これをやるぞ」というのか、何と言うのか知りませんが、政治家としての、あるいは、「政治家が構成する部分としての」という意味ですけれども、内閣の責任みたいなもの、決意表明みたいなものが本来いるのではないかと思います。
2番目ですが、先ほど、堺屋長官が文化の変化とおっしゃった。私も、これは非常に大事なところだと、文化と言うべきなのか、文明と言うべきなのかわかりませんが、抽象的な話になりますが、大きく言いますと、これは官から民へということだと思います。
ただ、官から民へと言った場合には、市場で決着がつく部分、私的なことだけでなくて、公共的なルール、公共的な部分、公益活動を誰がちゃんとやるか、それを今まで、役所が全部やってきたのを変えるというのが非常に大事だと思います。
この中では、環境問題ということに関してそこは触れられておりますが、例えば、金融の短期資本の移動ということでは今、その問題が明らかになってきているわけです。さっき長官がおっしゃいましたように、10年もつものであれば、その先10年。そこまで考えるとすれば、単に市場のことだけについて云々したのでは、私は、もたないと思っています。
こういったものは、この中で議論するものではなくて、その前提としての企画部会の話かもわかりません。しかし、どこかで大前提として、公共的なルールを改めて考えなければいけない。それを公益国家独占主義ではなくて、公益を民間が担うシステムを作るのだ、そういう大原則がないと、非常に矮小化されたものになってしまうのではないかと思います。
具体的に、この中で1つだけ申し上げますと、11ページの教育ですけれども、私は、教育というのは今は、教育の結果を市場で評価しようという傾向が非常に強くなっていると思いますが、その前提として、市場で評価できない部分の教育というのが大事だ、これは長期的に大事だと思います。これは最近、特にいろいろな自然科学者が、彼らの中では言っています。
ですから、これも、そういう前提の下でのということだろうと思いますけれども、そういう面がどこかで確認されていないといけないと考えています。
〔 G委員 〕 「グローバリゼーションに対応した経済社会」とありますが、経済社会というのは、基本的には、企業と一般・いわゆる国民という両方の面から見なければいけないと考えた場合に、2ページの真ん中辺に、「財・サービスの購入や資産運用に関する多様な選択肢及び国内外の多様な就業機会を得られる」ということですが、今一番、一般大衆または国民が不安視しているのは、変わることによる摩擦と不安だと思うのです。特にそこら辺は、一般国民の生活が、物質的ではなくなってくると思うのですが、精神的な面でどう豊かになるのだという、メリットがここで相当強調されないと、構造改革=不安、または自分はどう対応していいのかというのが、一人ひとりが非常に混乱しているというのが現代の状況だと思いますので、多少夢みたいな、いいところがあるのだというのは、一般国民から見てこういうメリットがあるというのは、ある程度明快に載せていただければありがたいという気がいたしますので、意見として申し上げておきます。
〔 E委員 〕 F委員が言われたことと関係あるので、確認をさせていただきたいのです。推進体制というのはものすごく重要だと思うのです。3ページの一番下のところに、「現在の規制改革委員会の改組」を含めてというふうに書いてありますけれども、実効性を担保する新たな第三者機関の機能ですけれども、ここに書いてある書きっぷりというのは、玄人の方にはわかるのですけれども、「現在の規制改革委員会」とどう性格が違うとか、もう少し権限を強化するとか、これは具体的にはどういうことを指しておられるのか教えていただければと思います。
〔 事務局 〕 念頭にありますイメージは、規制改革委員会よりも、もっと充実した事務局をもって、例えば、費用対効果分析といっても、各省各省がやらざるを得ない話になりますから、それについてきちんと客観的な評価をしていくとか、あるいは規制改革の進み具合について、いろいろな自らの分析を行って、それを判断し、各省に勧告していくとか、かなり強い権限と分析能力を持った事務局をもった、ある意味で独立した機関というイメージで考えております。
〔 E委員 〕 行政監察的な機能というか、勧告をして各省庁と、これはどうなっているのかと、それを是正するかどうかということを行うものですか。
〔 事務局 〕 そういうイメージで考えております。
〔 部会長 〕 これは、私も同じような感じをもっています。もうちょっと具体的に明確に、はっきりと、明示しないと非常にわかりにくいと思っております。
〔 H委員 〕 今の第三者機関のところは、私は前にも発言をして、どこをどう取り入れられているのかよくわからないのですけれども、強力に推進していくということをねらいとしていろいろなものを考える、それは結構なことだと思うのですが、これはF委員のご主張とも関係しますけれども、行政改革委員会、要するに行政改革をやって規制改革をやるということになると、それは結果的には政府が出して直していく、プロセスはいろいろあるでしょうけれども。そういう意味では、最高責任者は総理であることに間違いはない、という意味では、そこは強く総理のリーダーシップが期待されるという意味で、今あるところとの関わりがよくわかりませんが、二元化するようなことはやめた方がいいのではないか。一元化して、やるならきちっとやるということ。あっちにも、こっちにも作って、何となく屋上屋を重ねるというのは、行政改革の趣旨からも今、そういう事務局をつくること自身が理解を得られるものかどうかと思います。
もう一つ、これは部会長のコメントがあった、「推進手法」の3)ですが、金融分野で行われたような大胆な改革をビッグバンアプローチとして位置づけているのですけれども、世の中には、金融改革が遅れたからこうなったのではないか、もっと早くからやっているべきものであったのではないか、と。そういう意味で、今、不良債権問題と関わって大変経済の混乱を起こしているということでは、国民から見ていい例としてとれるのかという意味では、むしろ、大きな改革をこの際大胆にやることは結構ですけれども、例として取り上げるのは適切ではないというふうに思います。
それから、これはどこで取り上げるのがいいのか私もわかりませんが、先回説明があった産業分類に関わることです。産業分類を旧来のままの形でずっとやっていると、世間的にも、変化の動態というのが全然説明できないという状況があって、国民的にも非常にわかりにくい。
アメリカなども今、改革をどんどん進めているときですけれども、そういう意味では、構造改革推進というか、押し上げ要因として産業分類は大きな役割があると思うのです。それはどこで取り上げて書くのか。多くの文字数を要しないと思いますけれども、主張は明確にしておかれた方がいいのではないかと思っております。
それは、結局、ニュー・ビジネスの誘導要因にもなるということですので、その辺はぜひご検討いただきたいと思います。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
これはまた詳しく議論したらキリがありませんので、金融ビッグバンが例として適当かどうかという評価は分かれるかもしれませんけれども、これはいずれ時代が証明すると思います。ただ、私は、非常に高く評価して、言っておくべきだと思っております。それだけの摩擦があっても、十分に対応できていくというふうに考えておりますけれども、これはまた別の問題として、H委員のご意見もこれから十分お伺いしながら考えたいと思います。
〔 事務局 〕 最後の点は、検討したいと思います。
〔 部会長 〕 最後の点は、十分検討すべきことと思います。
次の問題等も含め全部、それぞれが関係しますから区切らずにご自由にお願いします。
〔 I委員 〕 私は、個人的には、スケルトンとしてはわりとよくまとまっているのではないかと思うのです。
特に、規制撤廃という言葉をこの中に入れられているということで、言ってみれば、規制撤廃に一歩踏み込んだ表現をしている、そのようなことで、「金融ビッグバン」に対して規制ビッグバン、そういうようなベクトルが出てきたのではないかと思うのですが、もう少し踏み込んでグローバリゼーションということを前提に考えるならば、規制撤廃ということをもう少し強調していただいた方がわかりやすいのではないか。そこから、いろいろな委員の先生方が言っておられる、官から民へという方向も出てくると思いますし、あるいはまた経済社会の活性化というものも、私は、生まれてくるのではないだろうかと思っています。
もう一つは、このスケルトンは、スケルトンだからということでしょうけれども、文章の最後に、「進める」とか、「支援する」とか、「促進する」とか、「評価する」と。それはわかるのですけれども、その次に何するのかということがわからない。
それを一々書いていたら、とてもではないが、膨大な量になってしまうということでしょうけれども、進める、支援する、促進する、強化する、ということだけでしたら、正直、私でも文章は作れると思うのです。やはり、官僚の方々、ご専門の立場として、ではその先どうするかということの説明がほしい。これは各委員の先生方と共通する話かもしれません。
最後に1つ、このレポートでも、いつでもそうですけれども、ずっと今までの資料を見ていて感じることは、主語がない。誰が、どうしているのか。たびたび例に出して恐縮ですけれども、3ページでも、上の方で「次のような限界が現れている」ということですけれども、「激変緩和という理由で、実質的な措置がとられない」というのは、誰がとっていないのか。あるいは、「許認可の廃止が行われた場合においても、補助金や社会資本の割当等を通じた公共関与が続いているものがある」というは、誰がこうしているのか。そういったところの主語をもう少し明確にしていただいたらわかりやすい、理解しやすいのではないかと感じております。
〔 部会長 〕 全体の構成までに及んでいただきましてありがとうございました。特にこれでは、英語に訳して出す場合にどうするかという問題で、既に困るということがあります。
それから、今おっしゃったように、I委員もシンクタンクを総括しておられますが、これはお役人の作文だけではなくて、民間でも今は何かやると「何々する」「何々すべきである」「必要がある」、そんなことばかりが語尾になるので、もうちょっと文章を考えろということを私もいつも言っているのですけれども、その辺はこれからの最終修文に向かっては十分に考えないと、インパクトが非常になくなってしまうと思いますので、これは事務局としても、あるいは先生方からも、文章を書くのがプロでございますから、いろいろなご意見をぜひいただきたいと思っております。
ほかにいかがでしょうか。1部に限らず、2部、3部まで通読してお願いしたいと思います。
〔 J委員 〕 2度ほどこれを読んだのですけれども、経済企画庁は、何とかしたいと、そういう気持ちは私には伝わってきました。
スケルトンですから、今日申し上げておかないと肉に付けていただけないと思いますので、何点かページを追って申し上げます。
まず5ページ、人材の育成の話がございます。ここは、大臣は文化とおっしゃいましたけれども、文化ということになると人材ということになる。人の問題だろうと思いますけれども、ちょっとあっさり書かれていて、ではどうするのだというところが明確でない。先ほどから具体性の問題がありましたけれども、もう少し何か書き足してほしい。
要するに、ここで人材と言っているのは、国際的に通用する人間、国際人の養成ということだろうと思います。従来、そういう話になると、高等教育の方に話が行って、実は70年代に日本の大学が「国際」が上に付く学部をいっぱいつくった時期はあるのです。国際人は必要だということを言った時期はあるのですが、実はあまり成功しなかったと私は思っています。
それはなぜかというと、教える側の問題が1つ。もう一つは、初等・中等教育との一貫性ということをやれなかったという問題があるだろうと思います。
ですから、肉を付けていただくのだとしたら、この人材のところにそういう問題を入れておいていただきたいと思いました。
パート2の方にいきますけれども、7 ページの真ん中で、「創業・起業の促進」【1】基本的考え方、「●」の2つ目、「創業時の障害として、依然として資金調達等の問題を指摘する声が多い」。これを受けて後で資金調達の話が出てくるのですが、最近の調査では、金融が非常に緩んでいることもありますけれども、資金調達という問題と並んで障害として挙げられているのは、販路の確保という問題です。ですから、どこかでSBIRをもっと活用せよという話がありましたから、そことの整合性も考えて、創業の障害として販路の拡大という問題を1つ入れておいた方が、より現実にマッチしているのではないかと思いました。
それから、8ページの真ん中のところの<具体的施策>の3つ目の「・」ですが、「転職が不利になるような制度の見直しを進め、転職と勤続の間での制度の中立化を図る」。こういうことができたらいいなと思うのですけれども、最近言われている、いわゆる年金のポータビリティの問題を具体的な話として1つこれに入れられるのかなと思いました。
同じ8ページの下の段、<具体的施策>の上のパラグラフです。「また」というところから、金融機関のお話がございまして、これはいわゆるオーナー経営者に個人保証をとるという話ですけれども、このことは実は、通産省の研究会でも議論になりまして、相当もめました。個人担保を要求するのは非常によくない、というふうに言うのは簡単ですが、実はこれは根の深い問題でありまして、つまり、日本の中小・零細企業というのは、個人と会社ということが未分離なのです。そういう未分離であるという状態に対する金融機関の対応がこういう形で出てくるという問題であって、ですから、こういうふうに書かれると、金融機関の人は、かなり一方的な言い方だっと受け止める可能性があります。ですから、日本の中小・零細企業のあり方の問題なのだ、というふうな書きぶりをちょっと加えられないと、金融機関からは必ず反発が出るというのが、私の経験でございます。
8ページの一番下から2行目、「ベンチャーキャピタルによる、人材の養成や投資能力の充実」と書かれていますけれども、ここは、今、こういう人材育成とか投資能力云々とかということをやっているのはベンチャーキャピタルだけに限りません。ですから、「等」を付けるとか、「ベンチャーキャピタルや支援機関」とか、そういう形にしておいた方がよろしかろう。私の目には、日本のベンチャーキャピタルは今、やや後退しているというふうに見えますので、それがちょっと気になりました。
もう一つ、9ページの真ん中より上、ウ)の<具体的施策>の2つ目の「・」、「ベンチャー企業等へのインターンシップをより一層促進する。」と書いてございます。これは、労働省、文部省、通産省共管で一昨年からインターンシップ制度というのが始まって各地域で実施されていますけれども、必ずしも、学生起業家を生み出すために行われているとは言えないという面があるのです。学生にもっと広く就業体験を積ませるというのが趣旨ですので、そこら辺をちょっとお調べになって、両者を結びつけるのはどうかなという気もしますので、お考えいただければと思いました。
あと1箇所だけです。10ページ、【2】「政策方針」で仲介機能を書いていただいたことを私は大変評価しているのですけれども、仲介機能のところで、技術移転機関(TLO)とありますが、TLOというのは、テクノロジー・ライセンシング・オーガニゼーションの略で、特許オフィスのことです。技術移転ということになると、諸外国の大学の例を見ますと、リエゾン・オフィスというのがTLOと並んであったり、一緒になっていたりしますので、ここでは技術移転ということ、仲介ということを言っているのて、TLOやリエゾン・オフィスというような形で、リエゾン・オフィスという言葉を入れておいた方がいいのではないかと思いました。
以上長くなって申しわけありませんでした。
〔 部会長 〕 非常に具体的に示唆に富んだお話をいただきました。
特に、今おっしゃった8ページの最後の、金融機関からの資金調達の個人の債務保証という問題は非常に重要な問題です。しかも、これはベンチャーだけの問題ではないと思いますので、その前に、直接市場の話は出てはおりますけれども、取扱いは慎重にしないといけないと思います。
私自身は、ベンチャービジネスは、もともとは株式でリスクマネーでやるべきだ、金融機関から資金調達するということは間違っているという基本的な考え方であります。
〔 B委員 〕 細かいところは、また後でペーパー等で出したいと思います。
失礼な言い方をすれば、ほかの大臣のときであるならば、経済審議会の報告書は、誰の大臣のときだなんて考えないです。経済審議会の報告書でありますから、審議会の報告書であって、大臣とは本来関係がない話ですけれども、世間は、企画庁と結び付けて当然考える。堺屋先生が大臣のときの報告書だというふうに、当然、世間は見ます。ですから、それなりのものを要求されるだろうということを、ぜひ大臣はお考えいただいて、「皆さんでいい知恵を出して」なんておっしゃらないで、自分で赤も入れていただきたいと思うわけです。
その点で申し上げますと、今までいろいろな意見が出ていますけれども、もう少し明確に書くべきところは書いた方がいいと思います。私は、カバーしている部分については、大変よくできた報告書だと思います。それから、確かに今までに何度も同じことを言っているということ、それもそう思いますけれども、しかし、やっていないのだったら何度も言わざるを得ないので、これもしょうがないことだと思います。ですから、それは何度も言っていることは確かですけれども、言わざるを得ない。そこをもう少し明確に書くということ。
それから、具体的な話は、経済審議会の部会の報告書に入れることかと思います。例えば、民民規制について対応しなければいけないと書いてあります。書いてあって、その対応策は、民民規制の研究会というのを前にやりまして、こんな厚い報告書が出ていますので、それを読めと書いてもいい。そこに書いてある提言のとおりにしろ、と書いてもいいわけです。そういう形で書けばいいのであって、今までにやったことを活かして、そしてなるべく簡潔に書いていく。同時に、実際にそれを実行できるように、ここで言質を与えておく、それさえすれば私はいいのだと思います。
あと抜けているところで、2つほど申し上げておきたいのです。1つは、司法制度の改革のお話は触れられていないですけれども、これは書くべきではないでしょうか。
もう一つは、これは随所に書いてあるのですが、要するにもっと外国に対してオープンにしろという話です。これは、先ほども労働力についてのお話が出ましたが、労働力だけではなくて、すべてに関してもっとオープンにしろ、いわゆる航空の言葉でいえばカボタージュですが、要するに、外国の企業の国内での営業、これを含めて基本的にカボタージュを認めていく、そういう観点を1つまとめて書けないかどうかということです。
3つ目として、民営化の話はほとんど出てこない。規制改革という中には民営化ということも当然に入りますから、そういうことで、その中に入っているのだというふうに考えれば、読めなくはないのですけれども、もう少し明示的に書いていいのではないか。
国立大学の教官の企業への社外重役の話はずいぶん具体的に書いてありますけれども、中谷教授のソニー問題というのは、一橋大学が民営化されればなくなっちゃう話です。民営化すれば、大学は競争をもっとしなければいけなくなる。国立大学が民営化されれば、当然、私立大学は脅威ですから、頑張らなければいけないわけです。具体的に大学がどういう改革をしろということを言うよりも、競争をしなければいけない枠組みを作るということの方が、私は大事だと思うのです。そうすれば、大学の方で、修士の1年課程を作ってみたり、修士の5年課程を作ってみたり、いろいろなことを考えて、生き残りを必死になって考えるわけです。そういう点での競争と民営化ということについての大学の制度改革に関しても、この観点をぜひ入れていただきたいと思います。
〔 部会長 〕 特に既存の研究成果、これは構造改革につきましても研究会をずっとやりまして教育の問題についても民営化という問題、たしかB委員も入って、相当積極的な議論もあって、レポートも出ておりますので、そういう既存の成果を全部活用していくことも非常に重要だと思います。
〔 G委員 〕 1項目だけで恐縮です。たまたま、我々がハワイにも会社を持っていますが、会計制度、先ほどは司法の問題が出ていましたけれども、一部これが変わらないとベンチャーなどが実際にはうまくいかないのではないか。ハワイにあると、減価償却が向こうはストックにどんどんなっていく、我々は逆になってしまう。そのような点がありますので、ここに、会計制度の基準の変更というのがなかったという気がしますので、ご検討をぜひよろしくお願いしたいと思います。
〔 I委員 〕 具体的に、3ページですけれども、「政策方針」のイ)推進手法で、「現在公共事業実施省庁において進められている『費用対効果分析』手法の統一化を推進するとともに」、ということで一番下に、「数値目標に基づく達成度合いの監視、選定された分野におけるビッグバンアプローチの実施状況の監視等を担当する第三者機関を設置する。」云々とありますけれども、この費用対効果分析の内容についての情報公開ですが、民間でも、あるいは民間のシンクタンクでも、同じ情報というか数値をもって分析できる、そういうようなものを作っておく必要があるのではないかという感じがいたします。
11ページですけれども、細かい話になって恐縮ですが、一番下の<具体的施策>で、「教育訓練給付の対象となる教育訓練機関の範囲拡大等、労働者個人」で、労働者という言葉がいいかどうかということが1つです。労働者だけしかダメなのか、というようなこと。
もう一つは、それよりも何よりも、「職業能力開発の支援を充実させる」という「支援」というのは、当然のことながら、この項目の一番上のイ) のところは、「能力開発に必要な費用の支援」ですから、恐らく、能力開発の費用の支援ということでしょうけれども、もしそうだとするならば、これは非常に好ましいとは言えないのではないかという気もするわけです。むしろ、下の「奨学金」と同じように、奨学金システムにしてもいいのではないか。要するに、支援して補助金として与えてしまうということではない。勉強したら、あるいは1つの習得をして、やがて何年かたって、その補助してもらった資金を自ら返済していく、そういうシステムにした方がいいのではないか。ひょっとすると、「もらい得」ということになってしまう。あるいは、それで使わないというか、勉強しないというケースも出てくることにもなろうかと思います。インセンティブというか、一生懸命やろうという気持ちにさせるためにも、与えてしまうのではなくて、貸すというシステムで考えた方が、奨学金というシステムで考えた方がよろしいのではないかと思いますが、どうでしょうか。
〔 事務局 〕 今の点については、例えば、経済戦略会議の方で、失業者に対する訓練の費用に充てるということで、バウチャーというご提言をしておりますけれども、私どもの感じでは、失業した時点でバウチャーを支給し、例えば、そこから1年間大学に通ってもらうということになると大変だなという感じもあります。むしろ、在職中から、個人の能力開発という支援ができるようになった方がいいのではないか。そのときに、バウチャーとして渡すのか、あるいは、どこかで実際に訓練を受けたということで、例えばその2割を補助するという形がいいのかということはありますけれども、失業者に対して支援をするというよりも、もう少し前の段階から、人の能力開発・市場価値を高める方向での支援をするということが、これから必要ではないかということで書いております。
ある部分は、今、労働省の方でもそういう方向で施策が準備されていると承知していますけれども、それほど悪いことではないというふうに考えておるのですがいかがでしょうか。
〔 I委員 〕 と思いますけれども、単純に支援すると言ってしまわない方がいいかなという、これは私の感想です。
〔 E委員 〕 第2章以下は、非常に痒いところに手が届くように書かれていると思うのです。特段の意見はないのです。第1章のところについてもう少し申し上げたい点があるのです。
キーワードは、主体的に規制改革を進めるということだろうと思うのです。そういう意味で、現状認識、これまでの規制撤廃の日本政府の努力というものが、どういうきっかけによって行われてきたのかというのは、振り返っておく必要があると。
具体的に申しますと、例えば、2ページの下から4行目に、「日本でも規制の撤廃・緩和が進められているにもかかわらず、依然として取り組むべき多くの課題が残されており」云々と書かれているのですけれども、私が、仮に書けと言われたら、規制の緩和が日本でも行われてきたのだけれども、それは主としてアメリカをはじめとする外国からの強い要求に基づくものであった、そのような過去の経緯についてちょっと触れたいと思います。
そういうことがあるのだから、主体的にこれからはやらなければいけない、こういう書きっぷりの方がいいのではないか。
後段の方で、積極的に日本が国際的なルールや基準の形成に参画しなければいけないと書いてありますけれども、そういう意味でも、今までは非常に消極的であったということはどこかで振り返っておく必要があるのではないか。
私、特に大店法が最初にでき上がったとき、百貨店法からずっと最後までを追いかけて論文にまとめて本にしたこともあります。そういうことからすると、日米構造協議だとか、様々な過去十数年にわたるアメリカからの要求というのが、日本の規制緩和を側面から支援というか、日本には野党がないので、アメリカが野党になると言って規制緩和の旗を振ったということは間違いがないと思うのです。それについて、どこかで触れていただければと、これは意見でございます。
〔 部会長 〕 外圧の問題は、金融などについてもそのとおり、円ドル委員会から、そういうのはあるわけです。これは従来ずいぶんやって、あちこちに出ているというので、こういう表現になっていると思います。十分その辺は重要な基本的な考え方だと思います。
〔 E委員 〕 先ほどB委員が言われたこと、これまでのレポートを活用して、民民規制についてはこれを参照、と。それで結構だとは思いますけれども、ただ、よく考えてみれば、B委員というのはこの分野の専門家、玄人です。経済審議会のこのレポートは、広く一般国民ということからすると、それほど詳細具体例は必要ないですけれども、「例えば」と言って、何か具体的な例を挙げていただいた方がわかりがいいと思います。
それから、これは確認させていただきたいのですけれども、一番初めの部分について、書きっぷりが皆さんからご指摘があったようなことになっているというのは、各省庁の合議というのは、このレポートとは全然関係がないのですよね。合議は必要ですか。
〔 事務局 〕 これを最後にまとめる段階では、やはり、経済審議会の1つの部会の報告ですので、各省庁の意見も求めるということを考えております。ただし、そこは最後まで、全くすり合わせをして合意をしたということになるか、ある程度のご意見を踏まえて修文して、これは部会の報告だということなのか、という最後のぎりぎりになったときにどの辺まで調整を行うかというところは残っておりますけれども、基本的には、各省に意見をもらうということになると思います。
〔 E委員 〕 そこら辺を、何となく自主規制を事前にしていらっしゃる書きっぷりになっているのではないかという感じが、率直に申し上げて、いたしました。
〔 部会長 〕 私が、部会長をさせていただいた「6分野の構造改革」のときなどに比べますと、役所との協議というのがあるというのは事実だろうと思います。最終的には、したがって、経済企画庁事務局自身の腕力と大臣の力。先ほどF委員から「政治」という問題がありましたけれども、それに非常にかかってくる点はあると思います。そうしないと、1レポートということになってしまうと、非常にインパクトがない。
「6分野の構造改革」のときも、金融ビッグバンなどを打ち出したわけですけれども、あれも一部には、企画庁の大先輩の方々は、こんなことをしていたら君の部会の報告書になってしまうぞ、というのがずいぶんありましたけれども、皆さん関係者の非常な力によりまして、経済審議会の建議という格好にして総理に渡したということで、それだけのインパクトが出たということですので、その辺の取扱いはこれからも十分力強くぜひお願いしたいと思っております。
〔 I委員 〕 今のE委員の言われたことと関係があると思うのですけれども、3ページの「推進手法」の3)で、「金融分野で行われたような大胆な改革を3~5年程度の間に実行するビッグバンアプローチを導入する」ということは、私は非常にいいことだと思うのです。そういう意味で、先ほど申し上げましたけれども、規制ビッグバンということで、この3~5年程度の間ということではなくて、明確に何年と決めるなりして、少なくとも、社会的規制はともかく、経済的規制は撤廃するのだというような、全廃するのだというような,そういう表現というものでインパクトを出してもよろしいのではないだろうか。
改革というのは、棒ほど願って針ほど叶うというものですから、それほど書いて、多少改革が前進というような感じになると思いますから、思い切って表現は、経済的規制全廃と、それで規制ビッグバンというような、その年限を決めていただいたらどうだろうかということであります。
〔 D委員 〕 先ほど申し上げたことに関連するかもしれませんが、アメリカになりたいなぁ、という印象があります。それがいいのかどうかというのは、若干議論がある部分かと思いますが、今の日本の状況が右なのか左なのかわかりませんが、それを逆方向に向かわすためには、こういったことも必要なのかという感じがいたします。
それから、全体として、主語がはっきりしないというお話がございましたが、誰がするのかというが、若干見えにくい部分がございます。何ページかにいくつかございますけれども、企業は多分するだろうなと思われる部分、例えば、5ページの「人材育成」、「当面は人材を諸外国から積極的に受け入れ」という部分です。それから、12ページのところなども、人事とかいろいろな能力開発の話が出ていますけれども、そういったところが、多分、企業だったら自分の会社にとってプラスになることだったら、規定がない限りはやるだろうという意味合いがあると思います。したがいまして、若干余計なお世話かなという部分がなくはないなと。後でペーパーを出させていただいてもよろしいかと思いますが、そこのところがあるかなという感じがいたします。
それに関連して、例えば、一方で個人が、企業といった組織などからも自由に移動できるように力をつけなさいと言っている中で、企業もそれを支援しなさいというくだりがあると思います。例えば、いろいろな時間の配分などを考慮してあげなさいという部分がありますが、それは、非常にエゴイスティックな感じかもしれませんが、企業からみると、出て行くかもしれない人間にどんどんいろいろなコストをかけるということが、果たして可能なのかどうか。それは、では誰がそういったコストについて補填してくれるのだろうかということについて、お話としては大変美しいのですけれども、現実的にはなかなか難しいという感じがいたします。
したがいまして、そこのところは、それなりのカバーが必要という感じがするし、また逆に、そこまで書かなくていいのかなという感じがしないでもありません。
〔 部会長 〕 政府の役割、企業の役割、個人の役割というのは分類していろいろ議論した時期もありましたけれども、最後にD委員の言われた、企業の負担という点は、企業人としては非常に重要な点で、「もうこれ以上できないよ」というのが実態であろうと思いますので、その辺をどうするかということは重要な問題としての検討項目だろうと思います。
大分時間がたってしまいましたけれども、そのほかにございますか。
これはスケルトンですので、さっきJ委員からは、肉にはこれを加えろというご意見がありましたが、贅肉はこれを取れというご意見はありませんでしたので、スケルトンにそれぞれかなりの肉も入っていると思います。あとは特に第1部の、従来からも、5年来言われていることですから、規制撤廃という言葉も言われ始めてからずいぶん長いということで、僕なども、使うのが何か面倒くさくなってきたような気もするのですけれども、繰り返しきちんとここは整理しておくことが非常に重要だろうと思います。
まだいろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係がございますので、本日の審議につきましては、ここまでとさせていただきます。さらにご意見がございましたら、事務局までファックスなりでぜひ寄せていただきたいと思います。
それでは、次回以降の日程につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 お手元に資料3でスケジュールをお配りしておりますが、次回第7回は、5月14日(金)10時~12時、同じこの会議室でございます。議題は、部会報告の案でございます。
ここまでは、以前にお配りしたものですが、もう一回、第8回ということで5月下旬を予定させていただいております。また日程を調整して決めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
〔 部会長 〕 それでは、第6回の構造改革推進部会の審議は以上にいたしたいと存じます。
本日はお忙しいところを活発なご審議、誠にありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
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