地域経済・社会資本部会(第4回)議事録
経済審議会
地域経済・社会資本部会(第4回)
議事録
時:平成11年4月16日
所:共用第1特別会議室(404号室)
経済企画庁
経済審議会地域経済・社会資本部会(第4回)議事次第
日 時 平成11年4月16日(金) 10:00~12:00
場 所 共用第1特別会議室(404号室)
- 開会
- 21世紀初頭のまちづくりについて
- 地域経済・中山間地域等の活性化について
- 閉会
(配付資料)
- 資料1 経済審議会 地域経済・社会資本部会 委員名簿
- 資料2 「経済社会のあるべき姿」を考えるにあたって
- 資料3 まちづくり、地域経済・中山間地域等の活性化についての検討の基本的視点
- 資料4 21世紀初頭のまちづくりについての主な論点
- 資料5 地域経済・中山間地域等の活性化についての主な論点
- 資料6 「長期的な生活空間の拡大方策に関する調査」(概要)
参考資料
(注)「21世紀型社会資本整備のあり方について」は、第5回部会(4月22日)で検討。
経済審議会地域経済・社会資本部会委員名簿
部会長
森地 茂 東京大学大学院工学系研究科教授
部会長代理
安土 敏 サミット(株)代表取締役社長
企業小説家
石川 嘉延 静岡県知事
井上 繁 (株)日本経済新聞社論説委員
北村 浩子 (株)キンスイインターナショナルリゾート代表取締役
小林 重敬 横浜国立大学工学部教授
坂本 多旦 (有)船方総合農場代表取締役会長
全国農業法人協会会長
生源寺 眞一 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
戸所 隆 高崎経済大学地域政策学部教授
中邨 秀雄 吉本興業(株)代表取締役社長
長谷川 逸子 長谷川逸子建築計画工房(株)代表取締役
林 淳司 川崎重工業(株)取締役副会長
溝口 薫平 (株)由布院玉の湯代表取締役社長
宮脇 淳 北海道大学大学院法学研究科教授
〔 森地部会長 〕ただいまから、第4回の地域経済・社会資本部会を開催させていただきます。
本日は委員の皆様にはご多用中のところ、また遠路をお集まりいただきまして大変ありがとうございます。
本日の検討テーマは2つありまして、第1が、21世紀初頭のまちづくりについて、第2が、地域経済・中山間地域等の活性化についてでございます。
その議論に入ります前に、企画部会を中心にとりまとめ作業が進められてまいりました「『経済社会のあるべき姿』を考えるにあたって」につきまして、各方面の意見を伺うために、先日4月13日に公表されましたので、その概要を事務局よりご説明いただくとともに、本日の1つ目のテーマであります21世紀初頭のまちづくり等について、事務局よりご説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 それでは、最初に資料2をご覧いただきたいと存じます。「『経済社会のあるべき姿』を考えるにあたって」、これはただいま部会長がおっしゃられましたように、基本理念委員会、企画部会の名において去る4月13日に公表された資料でございます。
その趣旨は、この前置きに書いてございますように、「あるべき姿」の基本的考え方について大きく方向性を示し、広く国民の意見を聞くために、議論の材料を提供する、というものでございます。本部会との関係深い部分を中心にざっとご覧いただきたいと存じます。
3章立てになっていまして、1章が「内外の歴史的転換とは」、3項目ございます。
(1)が「新たなる時代への歴史的潮流とは」ということで、4点ございます。【1】が「ポスト規格大量生産社会は」。その第1が「(a)多様な知恵の時代への移行」、それから2ページにまいりまして、「(b)ネットワーク社会への移行」。【2】が「グローバル化は新しい段階へ」です。3ページにまいりまして、【3】が「人口は頭打ちから減少へ」転じていく、【4】が「環境、資源、エネルギーの制約を克服した持続的発展」が必要となっていく、こういう歴史的潮流があるということでございます。
(2)が「経済社会への10の影響は」ということで、ただいまの歴史的転換の流れが、経済社会に与える影響を10項目に整理してございます。この中では、5 ページの【5】をご覧いただきますと、「新しいライフスタイル」として、生活、文化、社会面への影響の中で新しいライフスタイルの影響がありますが、(ウ)に、「用途別の規制により、結果的に形成された現在の都市構造は、」「情報収集の困難や通勤時間の拡大をもたらし、多様な知恵の時代にふさわしくなくなる。都市のあり方について基本的な考え方の変更が必要となる。」という記述もございます。
とびまして8ページをご覧いただきますと、(3)が「自由の考え方~5つの発想の転換」という記述がございます。この趣旨は、これまで「『効率』、『安全』、『平等』の3つが広く正義として捉えられてきた。これからは、『自由』を加えるべきである。こうした考え方を徹底するために次の5つの発想の転換が必要。」ということで、5項目の発想を転換すべき内容が以下に書かれてございます。
11ページ、第2章が「21世紀初頭の経済社会のあるべき姿とは」、ここでも3項目示されていまして、(1)が「経済のダイナミズムの復興~個々人が『夢』を追求できる経済社会」であること。このためには、4つの構成要素からなるということで、11ページから12ページにかけて、その4つの構成要素が示されておりますが、12ページの【3】に「多様な帰属先と個人の選択」という記述がございまして、(ア)に「ビジネスを離れた多彩な帰属先が存在する。」、その1つとして、地域がクローズアップされています。それから、「【4】政府の役割と『公』と『個』の概念」の(ウ)をご覧いただきますと、「国と地方の関係においても地方分散が基本となり、各地方が個としての性格を強める。それを通じて各地方が独自に魅力ある地域造りを進める」という記述もございます。
13ページの(2)が「21世紀型経済社会への適応とは」ということで、(イ)「こうした観点から」に、
・多様な知恵の時代への適応
・少子高齢社会への適応
・環境にやさしい持続的発展への適応
この3つを実現するということでございます。
(3)が「国際社会のコア・メンバーに」ということで、国際社会に積極的に貢献していくべきだ、という「あるべき姿」を示しております。
14ページ以下が第3章ですが、これらに関連して「今後検討すべき政策課題」を提示してございます。これは15項目にわたりますが、「(1)少子高齢社会に向けて」の中では、15ページの【3】「少子高齢化にふさわしい社会資本及び街づくりは」ということで、(ア)、経済社会全体の効率(生産性)の向上が大切である。このため、勤労準備時間(通勤等)、社会的用務時間(役所の手続き、物の輸送等)の短縮を図るべきではないか。(イ)、「歩いて暮らせる街づくり」を進めるべきか。(ウ)、バリアフリー化や交通安全対策等を進めるための社会資本をいかに整備するか。
(2)「国土と国民生活は」、【1】の(ア)では、様々な高度な機能が近接化・複合化・ネットワーク化された、多様な知恵の時代にふさわしい都市形成を進めるため、都市部における様々な用途での高度利用を進めるとともに、都市計画については、より広範な用途複合を図るべきか。このため、(現在の)用途別の規制から、環境条件による規制に変更することも検討すべきか。16ページの(イ)では、都市の国際競争力を強化するために、都市の生活、運営コストを引き下げるべきか。(ウ)では、地方への人口と産業の分散を促すため、知的インフラ、情報発信機能の地方分散、産業振興、外資の積極的導入等を進め、地域経済の活性化につなげるべきか。(エ)では、中山間地域等についての記述ですが、その活性化は自助努力を基本とすべきか、あるいは、自助努力を基本としつつ、必要な振興策を講じるべきか、という政策課題を提示してございます。
【2】の「交通情報体系は」については、(ア)で、日本列島の中核に世界最大の高速・大容量をもつネットワークの形成を進めるべきか。(イ)では、インターモーダルな発想に基づく戦略的な交通政策を推進すべきか。(ウ)では、都市交通ネットワークの機能を強化するために、インフラ整備とソフト施策を総合的に推進すべきではないか、と記述がございます。
17ページの【3】「地域経済の活性化」、(ア)では、地域経済が公共投資依存体質から脱却するために、各種起業や内外の企業誘致をいかに促進するか。(イ)では、産業や文化面での個性的・自立的発展をいかに促していくか。財源問題も含め地方分権を徹底的に進めるべきか。(ウ)では、自治体のあり方について、市町村合併を推進するとともに、道州制や府県合併も含めて、検討すべきではないか。(エ)では、首都機能の移転について、コストとベネフィットがより明らかになるように検討すべきか、という課題がございます。
(3)「社会・経済構造の新たな形成は」ですが、これにつきましては、【2】「政府の関与により維持するものは」の中で、18ページの(イ)「自然環境の保全、文化財や伝統工芸の保護については、必要なものを最も効率的な方法によって保存すべきか。」という問いかけがございます。
それから、19ページの【6】「環境との調和は」の中で、(ウ)に、国土と環境の保全の最も効率的な方法を研究、実行すべきか。この際、保全と産業とは切り離して考えるべきか、または、産業活動を通じた保全について考えていくべきか。
以下20ページでは、(4)「財政と安全ネットは」。
最後に21ページ、(5)「国際社会の中での姿は」。
ということで、合計15項目の政策課題の提示がされております。
次に資料3をご覧いただきたいと存じます。本日は、部会長がおっしゃりましたように、「まちづくり」と、「地域経済・中山間地域等の活性化について」をご議論いただくわけですが、その各論に入ります前に、総論ともいえる検討の基本的視点をお示ししたペーパーでございます。
1にありますように、様々な潮流変化や制約要因の中で、国土のあり方については、最も効率的な利用をいかに図るかということが基本になるのではないか。
2で「国土の効率的な利用のためには」ということで、(1)、まちづくりについては、肥大化し非効率をもたらしている都市構造を、様々な高度な機能がコンパクトに集積し、さらに地域間でネットワーク化された都市構造に再編すべきではないか。
(2)、地方への人口・産業の分散を促し、地域経済の活性化を図るべきではないか。このため、かつて各地にあった「産業の首都」を復活あるいは新たに興すべきではないか。地方からの情報発信は重要ですが、それを促すために、地方に対して何らかの積極的優遇措置を採るべきか。
(3)、中山間地域等過疎地については、国土の効率的保全という観点から最良の政策を選択すべきではないか。
(4)、東京一極集中是正のために、首都機能を移転すべきではないか。
ということで、国土の効率的な利用ということを検討の基本的な視点に据えてみてはいかがかということであります。
次に資料4、本論に入るわけですが、「21世紀初頭のまちづくりについての主な論点」ということで、これにつきましては、本部会でこれまでに委員の皆様から出されたご議論、先ほどの資料2の「あるべき姿」、さらには、ただいまの資料3を踏まえて論点を整理してみたものでございます。
1が「21世紀初頭のまちづくりの『あるべき姿』」でございます。これにつきましては、「内外の歴史的潮流の大転換に呼応して、まちづくりについても、歴史的転換期」にある。すなわち、
・いわゆる知価社会への移行に伴い、通勤時間の拡大などをもたらしている現在の都市構造の見直しが必要。
・グローバル化に対応して、都市の魅力を高め、国際競争力を強化することが必要。
・少子・高齢化と人口の先行き減少に対応して、高齢者や女性の安全で安心な生活の確保とその就業支援が必要。
・環境に配慮したまちづくりが必要。
・今後の生活スタイルの多様化に的確に対応したまちづくりが必要。
「これらを踏まえると、今後のまちづくりについては」ということで、5点の基本方針を挙げてございます。
・広域的に拡大している都市構造から、様々な高度な機能が近接化・複合化・ネットワーク化された都市構造への再編。
・価値観・生活スタイルの多様化に対応して、誰もが安全に、安心して、楽しく、便利に暮らせるまちづくり。
・高齢者や女性の地域活動や就業の促進と知的創造者や新産業の集積増進が図られるようなまちづくり。
・環境負荷の軽減と地域固有の歴史・文化・風土の保存・活用や美観保持に配慮したまちづくり。
・これまでの行政主導の画一的なまちづくりから、住民参加による地域の特性をいかした個性的で魅力的なまちづくりへの転換。
を基本にして推進。
これらを通じて、個人の多彩な帰属先の一つとしての地域の活性化を図り、夢の追求に資するとともに、国際競争力を強化すべきではないか。
「以上の方針を実現する政策のあり方としては」で、下の方に書いてございますが、基本的に、ゆとりある質量ともに充実した職・住などの生活空間を確保しながら、同時に、それらの近接化・複合化や交通・情報通信インフラの高度化を進め、利便性・効率性や時間的ゆとりを確保することが重要。同時に、まちづくりのプロセスにおいて、住民参加を拡充することが重要。ということで、
・ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」のまちづくり
・住民参加の独創的なまちづくり
この2つを大きな政策方針としてはいかがかという趣旨でございます。
2ページの2が「ゆとりの『空間』とゆとりの『時間』のまちづくり」の基本的な考え方でございます。
様々な機能の生活空間の良質化と拡大化を図り、ゆとりの「空間」を確保。あわせて、それらの近接化・複合化や高度な交通・情報通信インフラを介したネットワーク化により、移動時間の短縮、利便性・効率性の向上や広域的な機能補完・地域間連携を促進し、余暇や多様な交流の機会が増大する、ゆとりの「時間」を確保。この際、郊外部における新市街地開発を抑制し、既成市街地の再構築に重点化。
このような、様々な高度な機能がコンパクトに集積、ネットワーク化された都市構造への転換を図る、ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」のまちづくり(これを~「小さな大都市」構想~と称してはいかがかということで括弧付で書いておりますが、)を推進。これにより、高齢社会にふさわしい「歩いて暮らせるまちづくり」の実現も目指す。
というコンセプトでございます。
(1)ゆとりの「空間」ですが、様々な機能の生活空間の質的な良質化と量的な拡大のために、その基盤となる施設について、バリアフリー化、ユニバーサルデザイン化、情報化、安全性向上、省エネルギー化等のレベルアップをしながらスペースの拡大を図るということを基本にすべきではないか。生活空間の一環として、歴史・文化・風土、さらには自然環境についても効率的な保存と活用を進めるべきではないか。
ということで、「【1】基盤的施設のレベルアップとスペース拡大」、アでは、各種施設のレベルアップの内容等を書いてございます。例えば、
住宅では、省エネルギー化、情報化、100年の耐久性をもった住宅、それとセットでのスケルトン住宅、賃貸住宅の良質化。
商業・レジャー施設・オフィスでは、駐車場も含めたスペースの拡大、商品・サービス検索等の情報化、24時間利用可能性。
医療・福祉施設では、情報ネットワーク化、高齢者介護施設・保育所の住宅や公園との一体的整備、民間企業の参入促進。
教育・スポーツ・文化施設では、地域間の相互利用の促進、講座・イベント等に関する情報化、生涯学習施設の充実。
都市基盤施設では、安全対策・利用しやすさに留意しつつ、ゆとりの「空間」の基盤・前提とした重点的整備。
このようなことを考えてはいかがかということでございます。
イは、そのうち「良質な住宅、商業・業務施設の整備促進策」として、定期借地権付住宅の供給促進策、借家法制度の改善を取り上げてございます。
「【2】歴史・文化・風土・自然環境の保存・活用と美観保持」ということで、「保存・保護・復元」のための事業ですとか、都市計画や協定による既成制度の活用といった施策を挙げておりますが、あるべき姿にありましたように、必要なものの効率的保存をどのよう
に確保するかという課題を星印で書いてございます。
3ページ、(2)ゆとりの「空間」ですが、生活空間の近接化・複合化・ネットワーク化を進めて、ゆとりの「時間」を確保するとともに、情報受発信能力の向上・情報交流の迅速化、さらには都市構造のコンパクト化を通じた環境負荷の軽減にも資する。このため、様々な用途での高度利用等を通じた、既成市街地の再編を推進するとともに、高度な移動性と情報交流を確保する交通・情報通信インフラを整備。また、役所での所要時間を短縮するため、住民利便の増進策を講ずるべきではないか。
ということで、「【1】既成市街地の再編の推進」、中心市街地の再開発、都心部の低未利用地の有効高度利用などによる既成市街地の再編により、様々な施設の整備を行い、生活空間の良質化・拡大と同時に近接化・複合化も図っていくべきである。
用途規制については、より広範な用途複合を図るべきか。さらに、用途別の規制を環境条件による規制に変更することも検討すべきか。
現状での施策としては、
ア 計画的な土地の有効高度利用と用途複合の促進として、容積率インセンティブの付与等。
イ 市街地の面的整備事業の推進として、市街地再開発事業と土地区画整理事業との一体的施行、虫食い地などの低未利用地活用のための敷地整序型土地区画整理事業や公的機関による買取り・基盤整備と民間による上物整備というスキームでの促進。
ウ 民間事業者に対する公的支援として、優良なプロジェクトについては補助、融資、税制などの公的支援策を多様化。不動産の証券化に際しても公的な出資とか債務保証。
エ 都心部での住宅や福祉施設の重点的整備の施策。
を挙げてございます。
「【2】交通・情報通信インフラの高度化」、交通インフラについては、都市内交通の高度化、都市間交通と国際交通の高度化を図るために、ハード面の施策、さらにはTDMなどのソフト面の対策も積極的に構ずるべきか。情報インフラについては、家庭で居ながらにして様々なことができるようにするという趣旨で、テレワーク、SOHO、電子商取引や住宅の情報化を推進すべきか。このためのインフラ整備として、光ファイバーと社会資本の一体的整備などを挙げてございます。
「【3】住民利便の増進」、ワンストップ・サービスの推進、電子政府の実現をすべきかということでございます。
3が「住民参加の独創的なまちづくり」ということで、ただいまのような「ゆとりの『
空間』」と「ゆとりの『時間』」のまちづくりを進めていくに際しては、地域の特性を活かした社会的、個性的な取組みが重要。地域のアイデンティティーを高めるような独創的で魅力あるまちづくりを推進するため、その担い手となる人材の育成、さらには住民やNPOのまちづくりへの積極的参加と合意形成を促進。
そのために、行政と住民との間の情報の交流強化。住民やNPOによるまちづくり活動の場の整備などの施策をしたらいかがか、ということを挙げてございます。
ただいま、用途規制の見直しのことに触れましたが、わかりにくいかと思いますので、参考資料の7ページをご覧いただきたいと思います。これは現行12種類の用途地域内で許容される建築物を示しております。これは細かすぎてわかりにくいのですが、これをより大ざっぱにしたものが8ページの一番上にございます。ご覧いただきますと、住宅については、工業専用地域以外では立地が可能。商業、工場につきましても、規模などの制限はありますが、広範な地域で立地が可能となっていまして、下にありますニューヨークやドイツと比べましても、用途混合型の地域がより多いというのが我が国の現行制度であります。
これを具体的に都心7区でみたのが9ページですが、ここでは工業専用地域がありませんので、住宅はすべての地域で立地可能です。事務所については79%で立地可能です。工場については、規模等の制限はありますが、95%で立地可能です。
都心部は、用途地域上は住宅の立地が可能なのですが、地価負担力などの問題でなかなか立地が進まずに職・住が遠隔化するので、11ページにありますように、都心居住推進のための「高層住居誘導地区」という制度ができております。これは容積率のインセンティブにより都心部での住宅立地を誘導しようとする施策でございます。
12ページには、再開発地区計画の制度を示してございます。これは工場跡地等の土地利用転換を誘導するために、容積率、さらには用途の規制をも緩和して、複合化を推進しようという制度でございます。
これが現状ですが、これに対して次のような議論がありますということで、ご覧いただきましたように用途混合型の地域が多いとはいえ、住居系の専用地域では事務所とか工場などは規模等が制限されていて、アトリエ付マンションというものも自由にできない。工業専用地域では住宅が立地できないので、跡地利用がなかなか進まない。これを用途地域の変更とか、ただいま申し上げました再開発規制の適正化があるわけですが、裁量行政ですので、結局、時間もかかる。このようなことを根本的に解決するためには、発想を変えて、用途の規制を廃止する。ただし、環境は大事なので、環境基準というもので規制をしていたらどうか、こういった議論があるということであります。
ただ、環境基準での規制につきまして、現行制度も環境への影響を予測して類型化した上で建築できるものできないものを事前に具体的にイメージをするという制度です。それにより難いものについては、1件毎に個別許可をするという仕組みになっているわけですが、環境基準ということになりますと、常に1件毎に、いわゆる環境影響評価のようなことをしなければならなくなるとすれば、これは時間や費用が増大して、事前明示性を欠くことにもなるという課題も考えられるわけで、こういった事柄が論点としてあるということをご紹介させていただきます。
以上でございます。
〔 森地部会長 〕 どうもありがとうございました。
続きまして、短期集中委託調査「長期的な生活空間の拡大方策に関する調査」について、野村総合研究所・地域政策研究部長の山崎一真様よりご報告をお願いいたします。
〔 山崎野村総研地域政策部長 〕 資料6に基づきまして、説明させていただきたいと思います。
調査の目的と視点ですが、これまでの我々の住まい方は、個々人の生活スタイルを達成し生きる喜びを感じるという認識に乏しく、画一的なものではなかったか。そのために、今、急激に家族構成の変化や生活スタイルの変化が起きているわけですが、これへの対応力が乏しいのではないか、こういう考え方をまずもっております。
今後は多様な家族構成で、各人が様々な組織に所属するという複属多重の生活スタイルになるのではないか。しかも、多彩な行動空間の中で生活行動を行う新しい生活スタイルが増大していくと予想しております。
このようなことから本調査では、長期的なまちづくりにあたっては、人々が望む新しい生活スタイルをいかに実現していくかが重要という視点から、現在その萌芽がみられる先端生活者に着眼しまして、このような人たちが実際に自らの生活を通して生きる喜びを感じている姿を描きたい、と同時に、今後のまちづくりに必要な方策を検討し、そのあり方を示したい、こういうアプローチをとりました。
その検討の前に、我が国のまちづくりをめぐる大きな環境変化の認識ですが、1つは、メガトレンドと呼ばれています少子高齢化、高度情報通信ネットワーク社会、グローバル社会、このようなことが言われて久しいわけですが、これが着実に進んでいくと、こういうトレンドに対応した多様な生活空間で新しい生活スタイルが増大していくだろうと、まず考えております。
2番目に、従来は、人が豊富で土地が足りない社会であった。しかしながら、これからは、人が少なくて土地が豊富に使える社会に移行していくと考えております。つまり、ゆったりした空間利用の可能性が非常に高まるわけで、それを達成するためには、土地や建物の所有から利用へという転換が重要と考えております。
3番目は、これまで、いろいろ社会資本整備をしてまいりまして、十分とはいえないものの、基幹的な社会資本整備については全国的に相当進んだと考えております。例えば、航空網、新幹線網、高速道路網、いろいろあります。そうなると生活スタイルに応じた最適立地が可能な条件が整ってきていると考えております。
4番目は、今後は100年程度の耐久性をもった建造物が蓄積していくと考えております。こうなりますと、民意を反映した地域主導で、しかも長期的展望に基づくまちづくりというものが求められる。
ということが、まず4点の認識でございます。
このような認識に基づきまして、先端生活者をまずピックアップして、その人たちがどういう生活、満足感をもっているか調べようということをやりました。その結果、代表例として1ページの下に書いてございます7つの「先端的生活スタイル例」を取り上げました。
1つは、家庭創業、コミュニティーベンチャー、女性企業家とよく言われます、新創業家というスタイルです。
2つ目は、知的産業、知識職種で働いている方たちで、裁量労働、フレックスタイム、柔軟勤務、テレワーク、そういった知的創造労働者、こういう人たちのスタイルです。
3つ目は、活力富裕高齢者といいますが、皆さん持家を持っていて、年金もかなりあり、経済的にはかなりリッチです。そうしたリッチな中で、自らアクティブに社会活動に参加する、こういう高齢者の方をここでは活力富裕高齢者と呼んでおります。
4つ目は、定年後の移住者。例えば、都心居住回帰、あるいは定年帰農が現在非常に話題になっております。
5つ目は、生涯循環学習者。これは自己のキャリアアップ、スキルアップのために、学校を終えて社会に出て、学校に戻って、さらにまた社会に出る、こういうサイクルをとっている人たちもかなり増えてきております。
6つ目は、田舎暮らし追求者、という人たちが具体的に動き始めております。このような人たちの生活スタイル。
7つ目は、街づくりの実践者。地域住民と共同して望ましいまちづくりに情熱をかけている人。
2ページにまいりたいと思います。生活スタイルを居住スタイル、ワークスタイル、交流スタイルという分け方をして、そういうスタイルを実践されている方たちが、実際に空間・社会システムに対してどのような要請をお持ちか、それに対して、まちづくりとしてはどういう課題として捉えるべきか、こういうアプローチをいたしました。
そのために、それぞれの生活スタイルに対して約70の事例を取り上げ、事例分析を中心に行っております。
まず、SOHO、家庭創業という人たちでございますが、その生活スタイルは、生活や地域活動を通して見いだした地域のニーズや課題に対して、今までに蓄積してきた知識や技術に創意や工夫を加味して創業を目指す人たちです。その人たちは、地域のネットワークを活かすことに大変意欲的です。そして、自分の可能性を試めそうとする若者や、地域や生活の共有課題をコミュニティービジネスという形で解決していこうとする女性、このような人たちの中で特に新進の気風に富んだ人たちが大変活躍されています。
こういう人たちの生活スタイルを見ますと、非常に満足感が高いと同時に、要請事項として「情報装備のオフィス付住宅」がまず第1に必要だと。そこに至る前として、「低廉なインキュベーションSOHO」があったら大変ありがたいという話もございます。
それと同時に、1人だけではなかなかできないものとして接客、商談、打合せ機能が出てまいります。そういうもののための「ワーキングサポート機能」もあると大変ありがたいという話が出ております。
さらに、女性や高齢者が起業する際には、生活支援機能が大変重要になります。子育て関連、高齢者福祉、生涯学習等の交流施設があれば、地域のニーズも非常に把握しやすいし、あるいは実際に創業したときの様々な問題が解決できるということでございます。
2番目に、知識創造労働者でございます。これはフレックスタイム制のための24時間、時間に関係なく働いて、自分の時間は勤務時間の合間に食事やショッピングを行うやり方でございます。そこの(要請) にありますように、24時間就業可能な業務、空間機能・生活機能が重要であるということでございます。
3番目に、活力富裕高齢層でございますが、これについては生涯学習と非常に深い関係がございまして、学習、制作、発表の循環ができるような施設が歩行圏内にあることが大変重要です。しかも、高齢者の方ですから、移動空間がバリアフリーであってほしいということでございます。
4番目に、定年後移住者でございますが、これは都心居住と地方居住の両方ございますが、特に地方居住の場合は閉鎖的な人間関係の中にどう入るか、ここが大変大きな支障になっているようでございます。
4ページ、5番目に、生涯循環学習でございますが、これは様々な関係で、学校・大学との関係が非常に重要になってきますから、そのために学習形態に応じた職・住・学の近接性が大変に望まれることとなります。
6番目に、田舎暮らしでございますが、田舎の場合は、建物や敷地はわりと手に入れやすいですが、そのための不動産情報は必要です。問題になるのは、職業の確保です。ここでは自営兼業の方が大半で、このあたりを考えていかないといけない。
7番目に、街づくり実践者でございますが、ここではやはり、コンパクトでゆとりのある居住空間の中で「地域産業の連関・循環システム」が大変重要だと思います。
5ページで、「長期的な街づくりの課題とそれへの対応」でございます。
第1に、「地域主導の街づくり」ということが一番求められると考えます。そのために、例えばPI(パブリック・インボルブメント)の導入、まちづくり条例の定着、街づくり協議会などの定着、社会実験の制度化と普及、こういうものが大変重要だと思います。
第2に、「コンパクトで多機能な街」ということで、詳細で柔軟な都市計画制度が必要ではないか。セミパブリックな空間としての路地裏というものを考えてみる必要がある
のではないか。あるいは、都市的土地利用と自然的土地利用の連携も重要だと思います。
第3に、「生活スタイルに適った生活空間の確保」というところで、このためには、例えば、転居、買い替え、住み替えが重要になってきますから、賃貸不動産の流通システムの問題。住み替え・買い替えのためのいろいろな費用の低減のやり方の問題。敷地規模拡大のためのインセンティブ制度の問題。このような問題も出てくると思います。
第4に、「自由な移動・情報交流の確保」、自由な移動と情報交換も非常に大切で、交通機関間で容易に乗り継ぎができる。TDM、ITSを入れていくことが重要だという結論を得ました。
以上でございます。
〔 森地部会長 〕 ありがとうございました。
それでは、以上の説明を踏まえて、21世紀の初頭のまちづくりについて、ご自由にご議論いただきたいと思います。
〔 A 委員 〕 特に資料4をベースに何点かお話しさせていただきたいと思います。
1つは、大きなテーマとして、特に小さな大都市のような議論をするのは大変結構なことだと思っております。ただ、その前提になる議論が資料3に「効率的な利用のために」と書かれています。2は、あくまでも「国土の効率的な利用」と書いてあります。これが例えば、東京のような大都市において考えた場合に、効率的な利用だけで大都市の魅力的な空間がつくれるのかどうかということについては、若干疑問がございます。
いろいろな議論の中で、例えば効率性というのは、これまで20世紀に追求してきた基本的なスタイルであって、むしろ21世紀に向けては新しい、意味充実と申しますか、そこで暮らしていることが極めて自分にとってインティメイトというか、意味あるところに生活しているのだ、そういう実感が得られるような都市づくりが必要ではないか。
そのことは、必ずしも効率性だけで追求できる課題ではない、と言っていらっしゃる方があるし、私もそう思っています。
ですから、資料3の2の「国土の効率的な利用」というのは、大きなマクロな枠組みで効率性を追求する。しかし、例えば、21世紀初頭のまちづくりの主な論点の議論になったときに、大都市あるいは地方都市の空間づくりについて、景観とか、美観とか、風景とか、そういう議論が出てくることは必ずしも効率性を追求しているわけでなくて、私が申し上げた意味充実の空間をつくり上げるということが、1つの大きなテーマになっているはずで、その辺をしっかり仕分けして議論した方がいいということが、私の第1点の議論でございます。
第2点は、テレワークという議論が特に4ページに出てきていますが、この議論と、最初の方にあります近接の議論とがどういう関係にあるのかということが、もう一つこのペーパーだとわかりにくいのです。恐らく、ネットワーク化という言葉の中にテレワークの議論が出ているのではないかと思うわけですが、テレワークの議論を特にこれからの情報化社会の中でどういうふうに位置づけていくか。
例えば、欧米、特にヨーロッパでは、テレワークというのは、中山間地の非常に経済的に立ち上がりにくい地域において、離れて生活する、それへの便宜的なあり方としてテレワークを国家的にいろいろな形で支えていく、そういう意味合いが非常に強いと伺っています。
そのことと、先ほどの野村総研のお話にございましたように、新しい生活スタイルの議論の中で、もしそういうことをテレワークという意味合いのかなりの部分を表現するのだとすると、新しいライフスタイルを追求する人たちが中山間地に行って、新しい仕事を持てて、中山間地の様々な活力になる機会を提供する。そういう議論で、テレワークの議論をするということになるのではないか。
ここで言っているテレワークは、そういう意味合いまで含んでいるのか、あるいは相変わらず大都市の一極集中に伴って、集中して非常に問題だから、もっと外側でも働けるような場を提供するというような、大都市圏の中のテレワークの議論をやっているのか、その辺がもう一つわからなかったものですから、その辺をはっきりすべきではないかと考えます。
最後ですけれども、これは私の専門で用途別規制の議論がございました。これは大変難しい、悩ましい議論ですけれども、私も、基本的なあり方としては用途を分離するだけで都市をつくるということでは、これからは立ち行かなくなってきて、用途をうまく複合化させて住むあるいは働く場をつくることが必要であると考えておりますが、我が国の用途規制は、それに向けて規制が厳しいからそうなのだということには必ずしもならなくて、むしろ、規制がゆるいから、うまく働いていないという面が多分にあるのではないかと思います。
先ほどは地価のお話がございましたけれども、例えば、都心で商業系地域を規定すると、商業地域に見合った地価が設定される。これまで商業地価に見合った地価ではとても住宅は建たない。そういう問題をどうするかという議論があったわけです。
例えば、ドイツでは、都心部に住居専用地域を設定するような、そういう考え方をもっています。アメリカでも、むしろ都心部で住居専用地域を、ニューヨークあたりは設定している。むしろ、用途別をしっかり確保することによって都心部で住居を確保し、用途をしっかり規制することによって、それに見合った地価が都心部でも形成される。そういう具体的な用途規制になっているわけですので、その辺は今後もう少し議論していきたいと思いますが、やはり、しっかり考えるべきではないかと思います。
それから、住宅と仕事の場の議論がございました。なかなか住宅地に仕事の場が持てないというお話がございました。野村総研のお話にもございましたように、住宅の中に仕事の場を持ち込むというスタイルをどう考えるか。例えば、情報機器だけを持ち込むということであれば、従来の用途規制で十分なわけであります。例えば、住宅地で突然隣にとんでもない機能が入ってきたということについて、皆さんはどう考えるか、というのは非常に問題ではないかと思います。
我々が郊外部に住宅をつくるというのは、郊外部には、隣近所同じような住宅地ができるから安心してそこに住むという方々も非常に多いわけで、その辺をどう考えるかということでございます。
むしろ、私は、例えば日本ですと、公共交通機関が発達していますから、公共交通機関の郊外の駅を拠点に働く場をつくっていく。例えば、アメリカではアーバンビレッジという考え方、あるいはニューアーバニズムという考え方がここ10年ぐらいいろいろ議論されています。例えば、郊外の公共交通機関の駅中心、公共交通機関がない場合には公共交通機関をつくって、そこの駅中心に働く場をつくり、住宅地と働く場を近接化する。そういうことで対応している部分がございますので、そういうものも含めてもう少し幅広に検討すべきではないかと思っております。
〔 B 委員 〕 山崎さんのお話についてですが、まず、基本的に私の考え方と違うというところがあるので、そのことについて言いたいと思うのです。
資料6の冒頭に、「これまでの日本人の住まいは、個人の生活スタイルを達成し生きる喜びを感じるという認識に乏しく」というのですが、みんな、そんな認識は持っていたと思うのです、特に住む人は。だけど、お金はなくて、残念ながらそうでない生活。つまり、一言でいえば、貧しくてそうなっていたのであって、認識がなくなっていたわけでない。国にそういう認識があったかどうか。恐らく、国にもあったと思うのですが、貧しさと、それからいろいろ知恵も足りないこともあって、そうなったのではないかという、基本的な問題があるわけです。
働く人というのは、働く場所を求めて仕方なく移住しているのです。もっと住みたいところがあっても、いい仕事場が東京にしかないから出て来る。わざわざ広い家を捨てて、緑を捨てて、友達を捨てて出て来るのは、みんな仕事を求めて出てくるわけで、経済的にぎりぎりなことをみんなやって、数十年たって今のような街ができたわけです。認識がなかったからできなかったというのには、私は非常に反発を覚えます。
それから、老後はいろいろな生き方があるということで、特にリッチでアクティブな高齢者が出てくるというようなことがあるわけです。あるいは、老後に田舎に行くというようなこともあるわけですが、これは私自身の周辺でのたくさんの事例をみても、また最近、新聞等にもちょっとそういうことが出ていますが、老後になってどこかに移住しようと思って、絶対ノーと言うのは奥さんです。奥さんが、今言った都会の狭い、仕方なく住んでいるところで、30年がかり、40年がかりで交友関係をつくった。それは1日や2日でできるものではない、あるいは2年や3年でできるものではないわけです。ところが、年取ったから今度は田舎に行くよというと、奥さんは、それはとてもダメだということになって、それで離婚騒動になるという話でございます。離婚が嫌なら狭い都会で住み続ける、離婚を覚悟して田舎に行く、という選択を定年退職の人たちはやっているわけです。
その意味でも、でき上がってきたものは経済的なぎりぎりな選択です。
ここに「先端的生活スタイル例」としていろいろ挙がっていますが、一体、日本人の中の何%がこういう人たちか。質的に、確かにこういう人たちが出てくるということはあるかもしれないけれども、そのことにあまり目をとらわれて、例えば、全体的な考え方の「人が少なく土地が豊富に使える社会」ですが、一体どこにそんな社会が、特に日本の都心部にあるのか。今まで向かっていた反対の方向にちょっと動いたということがあるかもしれない、確かに。しかし、そのことが日本が「人が少なく土地が豊富に使える社会」に移行しているということになるというのはとんでもない飛躍であって、方向性とか全体を見誤っているのではないかと思います。
それから、住宅の中に仕事場を持ってくるという話は昔から何度も、一極集中になってきてから出てきていまして、本当にそんなことができれば、国にとっても、アイデアを出す方にとってもこんな都合のいいことはないわけですが、今でも皆さんの自分の体験に照らしてみればわかるとおり、ちょっと込み入った話だったら、会わなければ話は進まないですね。ニュアンスとか、迫力とか、目の力とか、そういうことがみんな問題になるわけです。会わないで話ができるものもたんさんあります。確かに事務作業をどこか遠くに持っていくとかいろいろありますけれども、やはり、人間の仕事というのは、最終的には会って話をするものです。
そういう話になると、高速の電車をつくって、1時間で来られるからいいだろう、と人間を遠くにおっぽり出して、話すときだけ寄って来いというのが過去の発想です。
過去のそういう状況と、現在置かれているいろいろなものをみても、ここに描かれているようなものが一体日本人の何%に対して意味を持っているのかということで、基本的に私は疑問を感ぜざるを得ないのです。
〔 C 委員 〕 大きく2点申し上げたいのです。1つ、コンパクトなまちづくりということについて、私も今後はそうしていくべきであろうと思っているのですが、その際には、積み重ねのできるまちづくりということが必要かと思うわけです。
先ほども、100年もつ建物ということが言われたわけですけれども、長期にもつ建物、またある建物を建てたときに、デザイン的にも、機能的にも、順次追加していったときに非常にうまくバランスがとれる、そのようなまちづくりの手法を開発していかなければならないのではないか。
といいますのは、よく役所であるのですけれども、最初につくった建物というのは非常に立派ですが、アネックスをつくり出すと目茶苦茶になってくる。そして、あるところまで行くと、全部をバサッとつぶす。これを順次積み重ねていくということをしないと、なかなかコンパクトなまちづくりというのはできないのではないか。
なぜかといいますと、私は今、地方都市にいますと、郊外に安いショッピングセンター、10年ぐらいしかもたないようなショッピングセンター、そういうのがどんどんできてくる。そういうものでない、良質なものをつくっていく。ところが、そのときに、よい物をつくると、現在の税制とか固定資産税等ですと高く評価されることがありまして、むしろ悪い物をつくった方がいいというようなことが若干あるわけです。
そのあたりが神戸の阪神・淡路大震災のときなどでも、よい物は残って、いわゆる公的資金を後でやらなくてもいいようなものについては税金が高い、あるいはつぶれたようなものについては補助していく、こういう悪循環が起こる可能性がある。
そういう面で、1つの建物をつぶすとゴミになるわけですから、環境問題等も含めて、積み重ねということをしていくべきではないか。それが1点です。
2点目は、大都市圏でアパート経営をやる場合に、今東京等でも、小さな土地でアパート経営をやる場合に、補助金が出るから成り立つようになっているのです。ところが、地方都市の場合には、土地の評価をせずに、そこにアパートを建てるのでも、建物を建てるだけのお金でもなかなかペイしないということが起こってくる。公的資金が非常に潤沢に出る地域と出ない地域とがある。そのこと
がまた一極集中をしているわけで、その辺の制度も変えていく必要があるのではないか。
〔 D 委員 〕 まちづくりということについて、これは中身というより手段の問題だと思いますけれども、2つほど申し上げたいのです。1つは、特に東京の場合、首都機能の移転というものとのセットでまちづくりを考えないと、現実には、言うべくして効果があるまちづくりはなかなかできないのではないか。
結局、戦後、いろいろな状況変化の中で、東京は東京なりの都市計画もありましたし、いろいろな具体的な計画もあったのです。ところが、なかなかそれが実現されなかったというところですが、その辺の一体何が原因なのかということ、それはいろいろな要因があったと思いますけれども、いくつかの重要な阻害要因があったのではないかと思うのです。
その1つ、例えば道路をとってみますと、都市計画道路というものは早い段階から図面には書いてあるわけです。ところが、現実にはそれが実際に道路になったというのは極めてわずかしかない。それから、例えば環八あたりを見てみても、有名な蒲田の辺でボトルネックみたいなところがあって、あれが解決するのに何十年もかかっている。東京の交通というのは通過交通が非常に問題であるということは前々から言われているのに、外環あるいは圏央道というものは計画はあっても実際にはさっぱり進まない。
それは一体何なのかということで、いろいろな要因があると思いますが、基本的には、日本では私権が非常に強過ぎる。その裏返しとして、行政が非常に弱過ぎるということがあるのではないか。
これは非常に逆説的な言い方かもしれませんけれども、私権が非常に強いために住民エゴというか、あるいはそれを受けたいろいろな地方の政治の圧力というか、そういうものによって計画というものがさっぱり前へ進まない。どちらかというと、日本的システムとでもいいましょうか、そういう日本人独特の性向、いわゆる過保護社会といいますか、そういうようなところからなかなか計画が進まないというところが、基本的には問題だったと思うのです。
したがって、そういう日本人の性向というものが基本にある以上、いくら立派な絵を書いて、それをやるとしてもなかなか進まない。となると、これは首都機能移転ということを契機にして、それでどの程度の人口移動が起こるかわかりませんけれども、それとの絡みでこの問題を解決していくというのが一番現実的ではないか。
そういう意味で、首都機能の移転というのはいろいろな意味があると思いますが、そういう意味合いも持たせるべきではないかと思います。
ツールとしての2つ目ですけれども、特に東京の場合、東京圏のまちづくりというものを考えた場合、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の4都県というのはいろいろな意味で一体なのです。交通の問題、ゴミの問題、いろいろな問題を考えても、それがそれぞれの自治体で別々の考え方でやっていくというのでは、いつまでたっても問題解決できないだろう。少なくとも、首都圏の4都県は、一体的な行政主体として機能するようにしていくことが不可欠ではないかと思います。
〔 E 委員 〕 資料3の関係ですけれども、先ほどA委員も指摘されたように、効率という言葉が随所に出てくるわけですが、21世紀のあるべき姿を考えた場合に、効率という言葉は20世紀の概念ではなかろうか。つまり、効率より、ゆとりを求めるということの方がより大事ではないか。
資料4の1ページの下の方の2つの政策方針というところには「ゆとり」ということを強調しているわけですけれども、ものの考え方として効率というものを優先的に考えるのはいかがなものか、という感じがしております。
2点目ですけれども、同じ資料3の大きな2の(2)の【1】で、「産業の首都」として、鉄鋼の都、繊維の都、映画の都等を復活あるいは新たに興すべきではないか、ということです。映画の都のような、一種のソフトというか、第3次産業的な、しかも幅の広いというか奥行きのあるものについては、1つの案として賛成ですけれども、鉄であるとか、繊維であるとか、これは基本的な産業なわけで、私たちが釜石や、そのほかの企業城下町の過去の教訓をみれば、1つの産業に特化した街のもろさというものを経験してきているわけです。むしろ、地域の立場でものを考えた場合には、AがダメでもBの産業がある、BがダメでもCの産業があるというような、様々な産業があってこそ経済が後退した場合にも一種の強みを発揮する、ということが基本的にはあると思うのです。
それと、特徴ある都市づくり、個性ある都市づくりというものをどう位置づけるかということにも関連してくると思いますけれども、私は、むしろ、一定の地域内での産業連関といいますか、ある1つの産業による成果を別の産業に、例えば創業することに使っていくとか、あるいは、例えば誘致した外資系の企業と地元の企業とを結びつけるような中堅企業を育成していくとか、そういうことの方がより大事ではないか。
「産業の首都」と、ストレートにこれだけを出すと感じとしてはやや抵抗があるな、と思っております。
〔 F 委員 〕 中山間地で活動している立場で少しお願いしたいのです。小さな大都市をつくる、効率的なまちをつくるというのはよくわかるのですが、これからこれをどんどん進められる中でちょっと危惧するのは、あまりにも大都市が自己完結というか、悪い言葉でいえば独裁者的な街をつくって自己完結だ、こういうことで都市と農村の対立行動とか、生産者と消費者の対立行動というような方向に進まなければいいな、ということ。むしろ、ゆとり空間というような都市づくりをなさるとき、中山間地と都市がどう助け合っていくかという概念をぜひ残しておいていただきたい。
小さな都市づくりが基本になると思いますが、ややもすると、これを追求すると、問題が生ずる。中山間地に住む人間としてそれを危惧します。
資料3に「国土の効率的利用」ということで、国土全体を使っていきましょう。その点を基本にした街ということでぜひ進めていっていただきたい、という気持ちでございます。
〔 G 委員 〕 さっき山崎さんが発言したときに、私どもとしては、20世紀ではなく
て、21世紀の夢に向かって何か描こう。そして、掲げてくださったと思うのです。
ですから、その発想を21世紀型にというのは、今までの既存のものを全部、ある面ではかなぐり捨てて行くという、何か飛躍をしていく、それが現実とのギャップとして、B委員の方からのご発言もあったのではないかと思いますが、私どもとしては、田舎を快適なものにしていくための都市計画とか下水道とかいろいろなものがあるわけですけれども、それが循環していけるような仕組みのものにしていくことによって、都市と農村なり、都市と地方というものの役割分担として位置づけていって、私どもに、夢だけは残してほしい。また、地方が元気であり続けるための施策を1つのものの中に、現実とはずいぶん隔たりがあるかもしれませんけれども、考慮していただければと思います。
〔 H 委員 〕 資料3の2の(2)の【1】ですが、E委員と同じように、私も、「産業の首都」として例示でいくつか挙がっていますけれども、こういうものが基本的視点として出てくることに大変違和感を覚えます。
50年前にタイムスリップして、戦後の復興からどうやって立ち上がろうかといったときのようなイメージで、何かふさわしくないように私は思います。
それから、資料4の関係ですけれども、3月10日の議論に、私は参加できなかったものですから、若干蒸し返しに近いようなことになるかもしれませんが、今回整理をされています様々な視点・論点は、全くごもっともなことばかりだと思います。これはこれで、地方団体サイドから見ても、こういう形でペーパーがまとまってくると、政策を立案したり遂行するときに参考になるのですけれども、実は、我々実行レベルで困るのは、こういう非常にいいことを実現しようと思うときにバリアが非常に多いということです。このバリアが多いことの重要性を認識してもらいたいと思うのです。
これは基本的なペーパーの最初の資料2のところにも、8ページの「5つの発想の転換」
というところに、自由の考え方ということがありますけれども、行政サイドから見ても、これを徹底してもらいたいと思うのです。
それで、どこかにいくつかの例示でもいいから、書き込んでもらいたい。例えば、まちづくりにあたって、高齢者や女性にとってやさしいまちづくり、あるいは安全なまちづくりということが大きなテーマにあるわけですけれども、その際に、幼稚園と保育所という制度が今ある。この2つの存在をどうするかというのは、実務ベースで考えると大問題です。これを、我々は幼・保一元化をしたいと思って、これが20年ぐらいのテーマですけれども、みんな総論ではいいと言いながら、なぜ各論で実施できないか。ところが、幼・保一元化をしてもらいたいという現実の要請はものすごく多い、高まっている。
なぜ、できないか。1つは、幼・保一元化をしようと思いますと、お互いの競争意識がむき出しになるのです。どちらがよりレベルの高い組織であるのかとかいう議論が根っこにあって、なかなか一元化できないです。なぜかというと、背景は、従事している人たちの賃金や資格が違うのです。そのことによって非常に反目が現実にはある。
そこで、幼・保一元化をするという方向へ今、解決策は模索されているのですけれども、私は、今ある幼・保を一元化するということではなくて、幼・保一元化した新しい組織も認める。その認める手段としてはどうしたらいいかというと、現状では、幼稚園や保育園についてはきちっとした資格要件が決まっていて、それ以外のものは一切認めない。最近、ごくわずかに無認可幼稚園・無認可保育所というのを認める傾向にありますけれども、そのようなことをもっと踏み出して、利用者サイドが利用したら、それに対して助成が加わる、援助が加わるように。今は、幼稚園や保育所に公的援助がいくことになっていますけれども、そうではなくて、利用者に援助がいくという形に原則を切り換えていく。一定の幼児を預かる施設については、保育所とか幼稚園の典型例は表示しても、それ以外は認めないというリジッドな制度をやめてもらう。
これは高齢者についても同じことが言えます。高齢者については今、特養、ケアハウス、グループホーム、だんだん類型は増えていますけれども、これでなければダメだという仕掛けになっています。そうすると、来年から介護保険制度がスタートしようとしていますけれども、特養にはまらない人たちがずいぶんたくさん出てくるということで大騒動です。これで5年の経過措置が講じられることになりましたので、ちょっと騒ぎは収まっていますが、5年の経過措置の間に特養で措置されない人たちをどこでケアしてもらうか、いろいろ考えていくと、はまる場所のない人たちがいっぱいいるのです。それに対して、そういう人たちをケアする場合にどういう手当てが伴うかというと、これは明らかになっていない。これは5年以内に大騒動になると思います。
これも類型を決めて、これでダメだという制度になっているところに大問題が発生するもとがあるわけです。ここのところも、介護保険制度をスタートするという非常にいいスタートを切るわけですので、介護のレベルの認定をしたら、どういうところでサービスを受けるかは、その人の自由ですから、受けた介護のレベルに応じた費用負担をしてやるということで、どこでサービスを受けるかは自由にさせればいい。それを徹底するということが非常に重要だと思います。
地方団体では、ここにいろいろ列記されているようなことは、やろうと思ってもできない部分がある。そこのところを、どう表示してくれるか。経済審議会では、全部そこまで仕切ることはできないかもしれませんけれども、希望の光をどこかに灯しておいてもらいたい、各論においても、そう思います。
それから、資源循環型の社会の構築という問題がございました。これも最近は非常にすばらしい技術が次々に出てきていますけれども、商品も出てきていますけれども、地方団体側から国にお願いしたいことは、技術情報の提供。金融機関における格付機関のような技術情報についての格付情報をほしいと思うのです。そういうことは、実は国でないとなかなかできない。これこそ、国でやってもらいたい。これは新たな機関でなくても、国の各種機関からの情報をバーチャルインスティチュートでも結構ですから、データベース化して地方団体へ供給するというようなシステムをお願いしたい。
こういう各論もぜひどこかで、例示的にでもいいですから、触れてもらいたい。また、できたら経済審議会で、地方団体のそういうような各論にわたる、現状の制度ではなかなかバリアがあって実施できないというものについての情報を収集して、どこかに散りばめてもらいたいと私は思います。
〔 I 委員 〕 資料4の1ページのところで思いましたけれども、これからのまちづくりというのは、【1】~【5】まで書いてございますが、21世紀のまちづくりは、老人の方・女性、地域外から来られた人にやさしい街というふうに言われてきて、私も、小さな街で十
何年まちづくり・まちおこしに携わってきました。特に、【1】~【5】までの問題の中で【5】で「行政主導」と言われますが、ここ10年ぐらい前でも、女性の視点とか主婦の視点、そして川下からの発想、そのようなことが言われて、わりあい住民の意見が出やすいような場を設けていただきました。でも、その中で、政治とか住民が参加するチャンスがあればあるほど、動かしやすいという人を入れられるといいますか、誘導していきやすい人を入れられるというところが、逆にマイナスに働いていたような気がしています。
ですから、住民参加ということもいいですけれども、もっと高度なところでの観点からの、専門家である程度基本的な構想とかを作っていただいた方が良いと思います。意見は大事だと思うのですけれども、政治的とか何か歪んだ流れになっていくような気がしています。
特にまちづくりで、ちょっと哲学的というか文化的なことの発言をなさったら、すぐ、言葉が悪いですが、「文化では飯は食えない」とかいう表現をされて、そういう意見を出されることに対しては、経済というところに弱いということなのかもわかりませんけれども、今まで、却下されるといいますか、否定されるような、そういうご意見が多くて口が出せなくなってしまう、そういう状況も見てまいりました。
ですから、住民参加はいいのですけれども、どうもそのあたりに疑問を感じておりますので、申し上げました。
〔 森地部会長 〕 まだいろいろとご意見もあろうかと思いますが、時間の関係もございますので、2つ目のテーマであります地域経済・中山間地域等の活性化についての議論に移りたいと思います。資料5について、事務局から説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 それでは、資料5に基づきまして、地域経済・中山間地域等の活性化についてご説明させていただきます。
1.の「地域活性化の『あるべき姿』」、これは先ほどの資料2にございましたように、あるべき姿から引いておりますが、大きな潮流の変化の下での地域経済活性化についてどのように考えるかということでございます。
四角の中ですけれども、
地域が中央の政府や企業に依存せず、知恵を活かした独自の産業や文化を持つ地域づくりを進め、地域主導で日本経済全体を牽引するような活力を持つことが重要。
このため、地方自治のあり方を見直すとともに、地域の個性的・自立的な発展を図るための地域密着型産業の振興や地域独自の産業の創出と国際競争力の強化に向けた取組みを行うことにより、自立型の地域構造を構築。
これがテーマでございます。
更に、中山間地域等につきましては、国土の保全等重要な役割を果たしているにもかかわらず、担い手不足による地域社会の維持が困難となっていることから、地域住民が住みやすい、都市住民や外国の人々が行ってみたくなる、住んでみたくなる魅力を創出するとともに、中山間地域等が有する多面的機能を十分に発揮することを基本とし、これらを通じて持続的な地域社会を再生する。
という点でございます。
最初の「自立型地域構造の構築」ですけれども、このためには、1ページの一番下の【1】ですが、まず、地方自治のあり方の見直しが必要ではないか。具体的には、国から地方への権限委譲や、補助金の整理・合理化と統合補助金化を進めると同時に、地方の自主財源の拡充と地方交付税制度の見直しにより、中央への財政的依存体質からの脱却を図る。また、地域住民の生活圏域の拡大への対応と行政サービスの効率化を目的に、地域間連携や行政の広域化を推進する、ということでございます。
更に具体的にブレイクダウンしたものが、その下にアとイで整理してございます。アは「地方自主財源の拡充と地方交付税制度の見直し」ということで、
・国と地方の税源配分の見直し
・課税自主権の強化(将来的な自由化)
・地方債発行について、許可制度から協議制度への移行、将来的には、市場規律導入や情報公開等の環境整備を前提とした原則自由化
・自主財源拡充に伴った地方交付税の縮減
という点が考えられます。
イは「地域間連携と行政の広域化の推進」ということで
・交通、情報通信等のネットワーク型社会資本の重点的整備
・複数自治体による共同利用施設の効率的整備と既存施設の相互利用の推進
・都道府県合併や道州制も視野に入れた見直し
ということでございます。
第2が、「【2】地域密着型産業の振興」ですが、地域が自主的に発展していくためには、地域内に存在する商業やサービス業等地域完結性の高い市場の活性化により、地域の経済基盤を確立する。このため、マーケティングによる地域内のニーズの把握に努め、地域づくりのコンセプトを明確化した上で、「ア 地域密着型産業の振興」「イ 地域内商圏の確立」、この中で中心市街地の活性化等を考えていくべきではないか。3ページ目で、「ウ 担い手の確保」ということで、地域経済活性化の担い手となり得る民間団体への支援・育成。NPOですとか、各種会議所等がございますが、その支援であります。
第3が、「【3】独自の産業創出と国際競争力の強化」ですが、経済のグローバル化等に伴う内外の市場の競争激化に対応するためには、他地域に対する地域の比較優位を活用しながら、外資の積極的導入ですとか、地域への投資の活発化や、地域の商品・サービスへの需要の確保を図ることが重要ではないか。
「このため」ということで、3ページのア~オまで5つ挙げておりますが、「ア 地域資源の有効活用」では、観光資源、農林水産物等を使いました産業振興。あるいはリサイクル産業等の振興が考えられるのではないか。
「イ 地域の産業・生活基盤の向上」ということでは、外資の誘致等もございますけれども、それらを含めた従業員等の居住・生活環境の向上のための施設整備が必要ではないか。
「ウ 知的インフラの整備」。産業ですとか文化、技術の創出基盤となる知的インフラの整備が必要です。ついては、地元大学を中心とした産官学連携の推進、高度情報通信インフラの整備等が必要ではないか。
「エ 情報発信能力の向上」。地域の認知度を高め、市場の拡大を図るためには、情報発信能力の向上が重要であり、このため、地域情報の電子媒体化、地域の情報のコンテンツの充実というものが必要ではないか。
「オ 交通インフラの高度化」。最後に、これらのための交通インフラの高度化ということで、国際ハブ空港・ハブ港湾ということであります。
4ページ目、第4が、お話がありましたが、「【4】首都機能移転の検討」です。中央と地方との新しい関係の構築や、地域が個性的・自立的発展を遂げていく多様な知恵の時代への転換を象徴するとともに、地域の発展のあり方のモデルという点からも、首都機能移転について積極的に検討すべきではないか、という整理でございます。
次は、「3.多面的機能の永続的な発揮を可能とする中山間地域等の活性化」、「持続的な地域社会の再生」という点でございます。
四角の中でありますが、
中山間地域等の活性化を図るため、地域住民が住みやすい、また、都市住民や外国の人々が行ってみたくなる、住んでみたくなる魅力を創出するとともに、中山間地域等が有する多面的機能を十分に発揮することを基本に、持続的な地域社会を再生。
このため、
【1】地域活性化への意欲を持った多様な人づくり
【2】人材と地域資源を活かした地域の個性あふれる産業づくり
【3】地域住民が都市的サービスを享受するとともに、地域内外の交流を促進する体制を整える等の地域づくり
を推進することが必要ではないかということでございます。
この点の検討につきましては、先ほど「あるべき姿」で出されておりますけれども、中山間地域等の活性化の問題、あるいは産業と保全の点がございまして、星印2つで書いておりますが、これを念頭にご検討いただければと思います。
3つ提案している具体的なテーマでありますが、「【1】意欲的な人づくり」ということでは、地域の活性化を図るためには、地域の内外を問わず、多様な人材を求める必要があります。そのためにはソフト、ハード面の環境整備を図ることが必要でしょうし、NPO等が地域づくりに参画できる体制を整備する必要があるということでございます。
「ア 多様な担い手の確保・育成」では、地域リーダーやコーディネーター等多様な担い手を確保する。生産・生活技術を持つ女性や高齢者の知恵を十分発揮していただくための支援が必要ではないか。それから、最近かなり進んでいますけれども、地域へのUJIターン者に対する居住・研修・就業への支援体制を整備する必要があるのではないかということでございます。
「イ 担い手づくりに向けた体制整備」では、地域リーダー、農業改良普及員と都道府県、市町村及び地域の大学というような、新たな産官学連携による共同技術開発や研修体制の整備が必要ではないか。農業生産法人の活性化ということでは、これから地域を担う生産法人について制度の見直しは現在進んでおりますけれども、これを更に進める必要があるのではないかという点でございます。
「【2】個性的な産業づくり」ということでは、意欲あふれる人材と、豊かな自然や安価な土地等の特色ある地域資源を活用した新しい産業づくりを展開する。そのため、産業の活性化を図るとともに、新たなベンチャー企業等の誘致を促進する必要があるのではないか。
「ア 既存産業の活性化」では、地域の多彩な気象条件や地域資源を活用した独自の農林水産業の振興。特に生産・加工・販売・交流等事業の多角化による総合生命産業の形成に向けた取組みが必要ではないか。地域資源や伝統文化を活用した内発型の地場産業の活性化が必要ではないかということでございます。
「イ 新たな産業の創造」では、農林水産業を中心とした地域文化、自然環境及び景観の保全と環境の積極的な結合による国際的競争力を持つ総合観光産業の推進が必要ではないか。あるいは、自然循環型産業のようなものも、中山間地に構築する必要があるのではないか。さらに、ベンチャー企業の誘致ですとか、情報通信研究機関等、ソフトウエアのような、立地自由度の高い知識集約型中小企業への支援も必要ではないかということでございます。
「【3】持続的な地域づくり」では、人づくりと産業づくりを可能とするための基礎的条件として、地域住民が都市的サービスを享受するとともに、地域の産業が競争力を持ち得るような各種基盤を整備し、地域を支える経済活動を確保する。さらに、中山間地域等の有する多面的機能が十分発揮されるようなシステムを構築する必要があるのではないかという点でございます。
具体的には、6ページですが、「ア 基礎的な社会資本の整備」として、土地利用についても資産から資源へという観点に立ち、資源利用の観点に立った住民参加の土地利用構想の策定、あるいはそれに基づいて生産基盤と生活基盤の総合的・計画的整備が必要ではないか。さらに、農村においても医療・高齢者介護・教育施設、商業施設等の整備が必要ではないかということでございます。
「イ 多面的機能の持続的発揮体制の構築」では、効率的な維持・発揮体制を整備する必要があるという観点から、集落統合等の推進による集落機能の強化や地域ネットワーク社会の構築が必要ではないか。多面的な機能を永続的に発揮するためのシステムとしては、直接支払いの実施ですとか、都市住民との共同による里山林等の維持・形成、あるいは耕作放棄地の有効活用等が考えられるのではないかということでございます。
「ウ 都市との交流・共生の促進」では、グリーンツーリズム、ブルーツーリズムを活用した、都市と農村の一体型、共同参加型のふれあい体験施設や観光宿泊施設の整備が必要ではないか。あるいは、小中学校における農林業体験学習の推進、優良田園住宅の供給に対する支援も必要ではないかということでございます。
以上でございます。
〔 森地部会長 〕 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明を踏まえて、地域経済・中山間地域等の活性化について、ご議論をお願いいたします。
〔 E 委員 〕 この問題についての特効薬はないわけで、いろいろなことが書いてある、このそれぞれのことは間違いということではないわけですけれども、個性というものを大事にする以上、こういういろいろなものの考え方の中から、地域がそれぞれどういうことを取り入れていくかということは、地域の中で議論をしていくことが一番大事なことかなと思っております。
やや仕組み的なところを記述してあるのが1~2ページにかけての「【1】地方自治のあり方の見直し」に関する部分なわけですけれども、2ページのアで「地方自主財源の拡充と地方交付税制度の見直し」ということが書いてあります。これは現状認識等について、多少甘いというか、例えば、法定外普通税の事前協議制度への移行、それから地方債の許可制度から協議制度への移行、これは今国会に出ている関係税法あるいは関係一括法の中に既に取り入れられていることでして、今更という感じ。要するに、その先を議論しなければいけないことで、将来的な自由化ということは書いてありますけれども、やはり、こういう視点が大事であろうと思っています。
ちなみに、法定外目的税の方は、現行制度ではないわけで、これは新設ということで今、地方税法の改正案に出ていることです。普通税と目的税とは、ちょっと違います。
「イ 地域間連携と行政の広域化の推進」のところで、「都道府県合併や道州制も視野に入れた見直し」ということですが、これに関連して、基礎的自治体の力を強めることが大事であると、今、政令市だけではなくして、中核市、それから今度の一括法の改正の中で人口20万以上が特例市という制度ができるわけです。そうすると、日本列島を北から南まで見た場合に、20万以上の都市は、県からさほど面倒をみてもらわなくても自立していくというような、もちろん内容的にはいろいろ課題はあるにしても、自立に向けた体制というものは整いつつあるわけであります。そういう中で、都道府県の役割をどのように考えるのか。そこの基本的な議論をする必要があるのではないか。まさに中山間地域であるとか、過疎地域であるとか、合併をするにしてもなかなか合併の対象になり得ない、つまり、合併をすれば、かえって地域条件として不利になるというようなところもあるわけです。そういうところは、中間的な団体である都道府県が面倒をみていくという必要があるわけですけれども、相対的に、基礎的自治体の役割を強めれば都道府県の役割というものは低下していくということが出てくるわけです。そういう中で都道府県の役割をどういうところに求めるのかということを議論した上で、この合併であるとか道州制につなげていくということであればいいのですけれども、ただ、いきなり合併とか道州制ということになると、やや唐突という感じがしないでもないように思います。
〔 J 委員 〕 ずいぶんいろいろなメニューが書いてありますので、その点について、時間もありませんので特に申し上げませんけれども、4ページ、今の事務局のご説明の中でもここは1つの大きな論点だということで、星印の付いているところ、この点について考え方を述べさせていただきたいと思います。
特に保全と産業は切り離して考えるべきか、あるいは産業活動を通じた保全という方向で行くべきか、そういう問題の提示があるわけですけれども、この場合の産業は、恐らく第1次産業(土地を利用する産業と理解していいかと思いますけれども)、この点は、私は、産業活動と当然にワンセットと考えざるを得ないと思っています。長期的に、全く別世界のような中山間地域をつくり出すということであれば別ですけれども。
例えば、アメリカですとかオーストラリアのように、比較的歴史が浅くて、しかも土地が非常に豊富であれば、農場は農場としてビジネスの場としてあって、そのほかにアクセスできる自然が別途用意されている、そういう空間の構造の国・地域はあるわけですけれども、ヨーロッパですとか日本の、比較的我々もアクセスできるような自然豊富な空間というのは、ベースにある自然環境と、それを利用する産業的な活動と、また居住空間が、相互にインターアクションで形成されている空間ということがありますので、そういう意味では、これを切り離して考えるということは実態論として非常に難しいだろうと思っております。これはヨーロッパでも同じような議論がございます。それが1点でございます。
ただ、政策論という観点に立ちますと、保全と産業の活性化というのは、ある意味でそれぞれ固有のロジックでもって作られた制度体系を持っているべきだろうと思っています。
私の専門の領域で、例えば農地制度が今あるわけですけれども、これは土地の転用の規制というか、保全的な意味合いを一面で持つと同時に、基本的には、農業自然人、あるいはそのグループであるような農業生産法人が行うという、一種の参入規制的な要素を同時に持っているわけです。つまり、産業の活性化という面で考えるべき、あるいはその次元での政策の要素と、土地利用の規制あるいは保全という面での政策がある面でリンクしているわけです。
私は、長期的には、参入規制なり農業の多角化に関する規制というものがどうあるべきかという観点からの政策と、それから土地の利用のあり方をどうすべきかという政策を、なるべく切り離す方向で政策を再設計する必要があるだろうと思っております。
今、どちらも不十分で、どちらも足を引っ張る、そのような関係になっていると思います。
最後に一言だけ。資料3で、意味がよくわからないというところもあるのですが、2の(3)で「国土と環境の効率的保全という観点から最良の政策を選択すべき」、これは当たり前のことですけれども、この意味合いがよくわからない。私は、むしろ、真に効果的な保全のための施策を講じるべきだろうと思います。真に効果的という場合には、保全の、例えば居住地としての中山間地域の長期的な保全のラインをどこに引くか、こういうことも含むというように一応した上で、真に効果的な政策を講じる。もちろん、ラインを引くというのは、ある意味では高度に政策的あるいは政治的な課題で、ここは、いわば単なるコストベネフィットでは判断しきれない要素があると思っています。
〔 D 委員 〕 1つは、地域経済の問題との関連ですけれども、ここのところ非常に交通体系が整備されてきた。さらに高速交通体系というものも非常に整備されてきた。そういう中で、個別の都市なり地域だけを単体でみるのではなくて、周辺の関連するところの、いわば連携といいますか、軸といいますか、そういうものを中心に、その地域というものの経済圏・生活圏を考えていくという視点が非常に重要になってきているのではないかという気がします。
過去、私がいろいろなことで関わってきた中で2、3、簡単に例を申し上げますと、例えば、山陰地方で言いますと、島根県と鳥取県の境目に中海というのがありますけれども、この中海を取り巻く松江あるいは米子、境港というところはそれぞれ違った機能をもった都市です。松江は歴史・文化都市である。米子は商業都市、さらには最近は工業都市にもなってきている。境港は、物流あるいは水産基地。そういう面で非常に特色をもった都市なので、それらがお互いに連携して、持味を活かしていくということで、環中海経済圏と私は言っているのですけれども、そういうものを指向してお互いに連携してやっていくということでその地域の活性化を図っていくことができるのではないか。
それと関連して、岡山の関係で言いますと、あそこは昔から交通の要所でもあるということで、東西南北の交通軸が最近は非常に整備されてきている。特に南北については、今の山陰の米子から岡山を通り、瀬戸大橋を通り、さらに高知まで高速体系で結ばれた。ごく最近、全通したということで、日本海から太平洋までが日帰り圏になってきている。そういうことから岡山を中心とする縦横の軸で一つ連携を深めていくということはどうか。現状、具体的にいろいろ物産展をやったりしています。
あるいは、北海道でいえば、石狩港、札幌という都市、千歳空港、苫小牧港という、物流・人流、あるいは文化都市、そういうものを連携した1つの軸を形成していく。
そういう形での連携軸、あるいは「環」何とか圏という形での地域の連携を深めていくというのが、1つのこれからの地域の活性化の選択肢であるかなという気がしております。それが1つ。
もう一つは、中山間地域の問題で、先ほどのお話とも関連するのですけれども、中山間地域というのは、農業生産という面でも非常に大きなウェイトを占めておりますし、いろいろな意味で重要な地域だということ、これは大体もう皆さんが認識されてきていると思います。そこでいろいろな施策をしなければいけないということは言われているわけですが、私は、そこを活性化するためのいろいろな施策というものを、どのような施策をやっていくかという中で、いわゆる国費なり公費を投じていく一番効率のいいやり方というのは、直接的な支払制度ではないかという気がしております。所得補償といいましょうか、要するに、その地域での農業あるいは林業が、すなわち国土あるいは環境の保全に資するという面から、国土環境保全のための国のそういう仕事を一部肩代わりしてもらっている、いわば委託しているということで、委託費という観念でとらえて、直接的な支払をしていくというのが、最小の費用で最大の効果があるのではないか。
いろいろな施策をやっても、それが非常に間接的になってどの辺までそれが効果としてあらわれてくるか非常に疑問がありますので、そういうことのヨーロッパあたりの制度もよく勉強して、そういうことも少し実現していったらどうかと私は思っております。
〔 F 委員 〕 J委員からもお話がございましたけれども、中山間地の問題で2、3お話をしてみたいと思うのです。
4ページの四角の中で、「中山間地域等についてはその活性化は自助努力を基本とすべきか」とありますが、これは当然なことだと思うのです。我々もずいぶん自助努力はしてきたつもりです。しかし、何せ環境という、特に中山間地域というのは産業にしても生命に関わる産業であり、環境も非常に自然風土というものに影響を及ぼされる、人間のつくり出したものでないものの影響が多いわけで、自助努力ということをあまりにも強調し過ぎますと、そこに生活者も、生産者も、私はこのままではいなくなるのではないかと。
自然に戻るから、かえって環境は良くなるのではないかという議論もないことではないですけれども、大陸のような国と違いまして、まさに日本の川は滝みたいなもので、あそこに我々生活者がいなくなると、大変なエロージョンが出てくるであろう。そうしますと、川下のダムにしても、河川にしても、大変な土石が出て、国庫負担が膨大なものになる可能性がある。
堤防をいかに上げても、限界があるでしょう。この辺は真剣に考えて、やはりそこで生活しなければならない。
それをJ委員も触れられましたけれども、保全と産業というのは、中山間、特に農業に関しては切り離すことはできない。まさに農業を営むこと、そこで生活することが地域の環境を維持すると私は思っているということを、ぜひ付け加えておきたいということであります。それが1点です。
もう一点は、担い手の問題があるわけです。地域経済も含めて、私の農場に個性もある知性もある若者が入ってくるのですけれども、リスクから逃げてしまう。したがって、リーダーになり得ない。要するに、従業員に飯を食わすというような意識がない。自己完結になっているということから、これから本当に経営者がいるのだろうかと不安を感じることがあります。
したがって、これからの担い手については、リスクに対応できる教育というものをどのようにしていくか、これを考えないと、地域経済といろいろ言うけれども、給料が高くて、休みが多くて、それは理想ですけれども、では、誰がリスクをかぶるのか。では、国がかぶるのか、こういう課題になってくる可能性があります。
それと、担い手がこれから多様化していくということですが、制度・施策を整理しなければならない。私は、セリーグ・パリーグ論と言っている、特に農業政策ですが。これを1つの施策でまとめることはできないわけです。それがさっきも触れられた、効率的制度、施策ということにならないと思いますので、政策を整理してきちっと、そこに書いてありますように、誰が地域の担い手のリーダーとしてお世話できるのかというあたりも明確化していくことは、賛成であります。
最後に、5ページ下に基礎的な社会資本整備ということであるのですが、土地利用については、ここに書いてありまして、土地利用構想を策定する。大賛成でございますが、もう一歩進めまして、農地の利用計画もこの辺できちっとしない限り、さっきデカップリングの話も出ましたけれども、できない。私は、経営農地、自給農地、環境農地、交流農地というようなきちっとした利用体系をとるならば、国民の理解は得られるし、それが効率的直接支援の方向ではないかと考えているということでありまして、その辺をこれからご議論していただきたい。以上でございます。
〔 C 委員 〕 資料3の(4)に「東京一極集中是正のために、首都機能を移転」というのがありますし、資料5の4ページのところにも「首都機能移転の検討」というのがありますが、私は、今一番問題なのは、中山間地域の場合は人材不足ということが最大の問題だと。その場合に、東京一極集中の一番の問題は全国の人材を集め過ぎているということだと思うのです。そういう意味で、首都機能移転を行って、まさに人心の一新といいますか、文化機能の分散といいますか、そういう中で大学等のあまりにも集中しているのを、大学そのものの分散というのではなくて、新たな人材養成中心の国土構造づくりというふうに向けていく必要があるのではないか。開発中心から、人材養成中心の国土構造づくり、そのように首都機能移転と関連づけていくべきではないかと思っています。
〔 A 委員 〕 先ほどからの議論で、私が冒頭に申し上げました効率性の議論ですけれども、今までいろいろな委員の意見で、効率性という議論が出ています。私が理解するには、ツールとしては、できるだけ効率性の高いツールを使う必要がある。しかし、目的としてつくる都市なり空間は、できるだけゆとりのある魅力あるものにするという、その使い方を十分仕分けして表現していく必要があるかと考えます。
もう一点、今日の資料5のペーパーが、中山間地を含めて日本にはまだ豊かな自然があるのだというような前提で書いているのか、それとも、それはかなり人為、人の力を入れないと維持できていかないし、これまで大分壊されてしまった、それを修復しなければいけない。どちらに立つかによって書きぶりはずいぶん違うと思うのです。
今日のペーパーは何となく、どっちともつかずに、どちらかというとまだ中山間地には豊かな自然があり、それを利用して、というようなスタンスに立っているきらいが多分にあります。
私は、特に日本という自然は、人為、人の力を加えないと維持していかない、そういう自然であるということを前提に、壊された自然を補修し、更に人の力を加えて維持していく、そういうことをしっかり書き入れるべきではないか。それがあって初めて、地域資源を活用する産業というような議論が成り立つのではないかと思っております。
〔 K 委員 〕 今の点、F委員にご質問したいのですが、人の手を入れるというのは、どのレベルを入れれば何がどうなるのかという議論がなくて、それで「人を入れるべきだ」、あるいは「直接支払だ」というような話が歯止めもなく言われ出す、こういうことは、いいのですかね。これを書くときの基本スタンスの問題だと思うものですから。
〔 J 委員 〕 ちょっと関連すると思いますので、今の手法の問題について。
私は、かなり財源を使って政策を打つ必要があるというふうに認識しております。ただし、その手法については、必要な施策を講じるということになるわけですけれども、少なくとも、今ヨーロッパでやられているような政策をそのまま持ってくることは、効果的かどうかという点では、かなり疑問だと思っております。
1つだけ申し上げますと、今、中山間あるいは山間地域になりますと、農業の規模はむしろ小さくなるわけです。例えば、5反の場合、1反に1万円仮に払うとして5万円、2万払うと10万円です。これでもって、その農業を長期的に維持できるというふうには、私は思えない。
むしろ、水利施設の維持ですとか、ポロポロ耕作放棄が起きてきて、それがスプロールのように広がるようなことを食い止める、つまり農業の維持の要になるような要素に着目して、そこに必要なお金を投じる。それは間接的には所得のアップの効果にもなるはずです、いろいろな負担を軽減するという形で。
ですから、見た目というと、言い方がちょっときつくなるのですけれども、きらびやかな政策はいろいろあるわけですけれども、日本の農業の構造の特質に根ざした、要のところを維持するような政策ということにしないと、結局、目的も達せられずに終わってしまうのではないか。そのあたりをもう少しきちんと詰めた議論が必要だろうと思っております。
〔 F委員 〕 私、A委員が先ほど言われた、人の力が必要ではないかという部分は、大変ありがたい言葉です。今、K委員から、お話がありましたが、僕は、A委員はそういう意味でおっしゃったのではないだろうと思うのです。
僕は、これは言い過ぎかもしれませんが、農業をずっとやってまいりまして、これこそPFIではないか。それは、食料生産という面では産業でございますけれども、環境保全機能を持っているわけです。自立しながら、お米をつくることに一生懸命、そこで牧草を守ること、野菜をつくることが、環境美化であり、また土壌、ふるさとの土を守ることであるということが、また川下への食料供給であり、というふうに、まさにPFIではないかと自負しているわけです。
そういう意味での、A委員の「人の力が必要です」と、こういうふうに私は受け止めました。
そこで農業なりをやる、そのかわり、今、J委員もおっしゃったように、すべて税金で守っていこうということはナンセンスな話で、我々住んでいる者はそんなことを考えていないわけであります。そのためには、制度・施策をいろいろと少しずつこれから整備していただかなければならない時代に来ているということで、土地利用計画も必要ではないかという、先ほどのお話を申し上げたわけです。
〔 K 委員 〕 全く反対しているわけではない。
〔 F 委員 〕 そうです。
〔 K 委員 〕 全総のときも、しつこく申し上げたのですが、食料安保とか、今の環境保全とか、あるいは支払とか、こういう話がいろいろ出てくるのですが、どこにも、どれぐらいやったらとかいうことがない。片や、農地の問題とか、人口の問題とかについてはクリアになっていない。こういうのは、僕は政策ではないと思うのです、方向だけ出すのは。そこに日本の非常に乏しいところがあって、具体的に、山をほっといたら本当にどうなるのかとか、余った田んぼを雑木林に変えたら本当にいけないのかとか、こういう議論はされないで、何か総論として、「もっといります」という議論ばかりが横行しているような、こんなイメージでちょっと申し上げたのです。
〔 H 委員 〕 さっき、まちづくりのところでも議論が出ていましたが、中山間地のところでも、例えば6ページのイの最後の例示のところに、「耕作放棄地の有効活用」とあります。今の景観保全のところでも、現実に我々が困っているのは、管理をしない森林・山林です。
日本の土地利用制度の中には、利用についての規制はあるのですけれども、有効活用しないことについて、有効活用を促そうとする手当てがないのです。これが、土地の私有権の絶対性と裏腹になって、にっちもさっちもいかなくなっているのです、現実では。
耕作放棄地、例えば、これを集約しようと思っても、所有者がうんと言わなければできない。強制的な手段がない。
それから、中山間地における集落崩壊現象が発生してきている場所で、例えば、空き家になった宅地を、先ほどのお話にもありましたように、山に入ってきたいという人たちがいるから、定期借家権制度ができたら、そういうものを使って町が間に入って、自治体が間に入って斡旋してやろうと思っても、都会へ出た所有者がうんと言わない。いつかわからないけれども、自分もそこに帰りたいかもしれないとか、何か放棄しない理由があるのです。ところが現実には、そういう利用は何年たってもされない。
そこを有効活用しようとしても、できない。そういうことについて、何かもう少し問題提起をしてもらいたいと思うのです。
都市でも同じ、中山間地でも同じです。ぜひそこのところは、土地の基本法があって、公共の福祉のためには私権制限していいのだという大原則を、法律レベルでブレイクダウンして書いているわけですから、各論を確立してもらいたいと思うのです。
〔 C 委員 〕 今のいろいろな議論のときに、もう一つ視点として入れていただきたいと思うのが、日本の場合に、水田社会系と畑作社会系、これらで土地利用がかなり違うのです。管理とか、いろいろなシステムが全部違ってくるわけです。それを一体でやってしまうと、どうもうまく政策が動かない。ですから、水田コミュニティーも含めて、水田社会系と畑作社会系という、この視点を入れていただければと思います。
〔 L 委員 〕 私は関西の出身でございますけれども、関西には理想的なまちづくりをしようということで、京阪奈学研都市構想というのがありますが、これは20年前にできているのですが、遅々として進まない。土地の確保はできているのですが、一向に進まない。これは地方分権といいますか、京都府、大阪府、奈良県という3都市にまたがっているために、どこが主体性があるのかということがはっきりわからない。恐らく、近未来の2010年にはこの都市ができるのかどうか。これはどこに欠点があるのかということを、もう少し調べる必要があるのではないかと思います。
〔 E 委員 〕 多少違った視点からの意見なのですけれども、今回の東京都知事選などでの各候補者の言い分等を考えますと、今、私たちがここで議論しているのと多少違ったニュアンスの話が相当強く出ていて、そのことをちょっと踏まえるというか、ひとつ考えてみる必要があるかな、と。
それはどういうことかというと、東京都知事の候補者は、要するに、大都市は損をしているというような趣旨の言い分が相当あったわけです。それについて、環境保全であるとか、食料生産であるとか、国土保全機能とか、これは大変大事なことなのである。人間が生きる上において大事な水であるとか、空気であるとか、電源であるとか、そういうものも供給している、これが中山間地域であるということ。その辺をいろいろな意味できちんと整理して強く打ち出しておかないと、世間一般の理解というものと、私たちのこの場での議論の乖離を、私はちょっと感じるのです。
ですから、私はなにも東京都知事候補者のことを言いたいがために言っているわけでなくて、一方で、そういう意見もあるので、まさに何べんもF委員が言っておられるような、交流であるとか、連携とか、そういうものの考え方を強く出して、その意義づけをしっかりしておく必要があるのではないかと思います。
〔 森地部会長 〕 まだいろいろとご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日の審議については、ここまでとさせていただきます。
なお、さらにご意見があろうかと思いますので、ぜひ事務局までご連絡をいただきたいと思います。特にH委員はじめ多くの方々が指摘されたように、重要なことはずっと書いていかなければいけないのですが、その中で、ここで新しく言われていること、ここで具体的な方向を示したことに仮に下線を引くと何個あるかと考えますと、まだちょっと煮詰まり方が不足かなという気もいたします。その意味で、ご意見をお寄せいただけるとありがたいと思います。それは何も、すべてのことを新規にしろということではなくて、説明の仕方でもいいですし、制約をこういうところがあるというところまでブレイクダウンしてもいいですし、もっと具体的な方法でも結構でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、次回の日程等について事務局よりご説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 次回は、4月22日木曜日の14時から16時まで、場所は経済企画庁内 407号会議室を予定しております。もう一つのテーマでございます、社会資本整備について、本日と同じスタイルでご検討をお願いしたいと思っております。
なお、その次でございますが5月12日に予定しておりまして、これを最終とする予定でございましたが、連休などもあって都合によりもう一回開催させていただきたいと考えております。そのための日程調整をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。
〔 森地部会長 〕 それでは、第4回の地域経済・社会資本部会の審議は以上にいたしたいと思います。本日は長時間、大変有効なご議論をありがとうございました。
以上