第4回経済審議会地域経済・社会資本部会議事概要
1 日時:
平成11年4月16日(金)10:00~12:00
2 場所:
経済企画庁共用特別第一会議室(404)(第4合同庁舎4F)
3 出席者
(部 会)
森地茂部会長
安土敏、石川嘉延、井上繁、北村浩子、小林重敬、坂本多旦、生源寺眞一、戸所隆、中邨秀雄、長谷川逸子、林淳司、溝口薫平 の各委員
(事務局)今井政務次官、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、林部計画官、安井計画官、涌野計画官、福島推進室長
4 議題
・21世紀初頭のまちづくりについて
・地域経済・中山間地域等の活性化について
5 議事内容
(1)「21世紀初頭のまちづくりについての主な論点」等に基づいて審議。各委員からの主な意見は以下の通り。
○「小さな大都市」の議論はよいと思うが、「国土の効率的な利用のため」に目的を限定したとき、大都市の魅力的な空間を作ることはできるか。効率性の追求は20世紀的な議論で、21世紀は意味充実空間の実現を目指す都市づくりが必要ではないか。
○テレワークは欧米では中山間の経済的に立ちあがりにくい地域の施策として国家的に推進しているが、日本では、新しい生活スタイルの一つとして打出すのか、又は、大都市一極集中の是正策として打出すのか。
○用途別規制について、基本的には用途分離だけでのまちづくりには限界がある。しかし、規制が厳しいからうまく機能していないのではなく、規制が緩いからうまく機能していないという面がある。例えばドイツでは、都心部に住居専用地域を確保し、そこはそれに見合った地価形成が行われており、都心部にも住宅を建てられるように働いている。(ニューヨークも同様)
○住と職の分離について、住宅に仕事の機能を持ちこむことをどのようにとらえるのか。住宅に情報端末を持ちこむことならば現行制度で対応可能。住宅地内に工場が建つことについては、低層住宅地であることを期待している住民がどう考えるか、という問題がある。日本では、公共交通機関を活用しているので、アメリカのアーバンビレッジのような、ライトレイルの駅を中心に職場を形成するようなまちづくりを考えてはどうか。
○(「長期的な生活空間の拡大方策に関する調査」(概要)報告を受けて)日本人は働く場を求めて移動し、経済上の理由から人が住むまちが形成されたのであって、まちづくりに「個人の生活スタイルを達成し生きる喜びを感じるところという認識が欠けていた」ということはない。
○(「長期的な生活空間の拡大方策に関する調査」(概要)報告を受けて)先端的なライフスタイルとして掲げられている生き方は、そういう方向性がでてきた、というだけでの問題ではないか。
○コンパクトなまちづくりには、「積み重ねのできるまちづくり」を考えることが必要。
○現在日本では、良質な構造物を造ると固定資産税が高くなるなど、長期耐用建物の建設促進のための環境が整っていないのではないか。
○東京の戦後都市計画がうまくいかなかったのは、計画実行の段階で私権が強く、行政に実行力がないことにもよる。
○東京圏のまちづくりは、東京都を囲む1都4県が一体となって実施すべきである。
○「効率性」の追求は20世紀の概念で、21世紀は、むしろ、「ゆとり」を追求することが重要。
○「産業の首都」構想は、過去の例からすれば、鉄鋼、繊維などの企業城下町が一つのまちに一つの産業しか持たないことのもろさを十分露呈してきた。一つの地域に様々な産業が混在し、A産業がだめならB産業がある、というような構造の方が経済の流れに柔軟に対応でき、強みを発揮できる。むしろ、外資を誘致し、地元の中小企業と結びつける、といった取り組みが求められるのではないか。
○「小さな大都市」として、大都市が自己完結的になり、農村と対立構造になることは避けるべきであり、むしろ、中山間地域とまちの連携を考えるべきである。
○これからは、都市と農村との役割分担・連携を明確にし、地方が元気でありつづける施策を考えるべきである。
○「産業の首都」構想は、時間を50年前に戻したような発想。
○資源循環型社会の構築について、技術情報の収集・データベース化、格付け情報の公開などによる情報提供を国にお願いしたい。
○これからのまちづくりには、専門家によるもっと高度な視点から、基本的なまちづくりの構想を考えるべきである。
(2)「地域経済・中山間地域等の活性化について」等に基づいて審議。各委員からの主な意見は以下の通り。
○地域が個性を発揮する上で各々どういうことをするかは、その地域の中で議論することが大切である。
○課税自主権の強化については、既に国会で法律審議されており、ここではその先を議論すべき。将来的には原則自由化、といった視点が重要。
○中核市、特例市制度など基礎的自治体の力が強められつつある流れのなかで、都道府県の役割をどのようにとらえるのかが問題である。今後は中山間地域、過疎地域など合併の対象となりにくい地域を支援をすることが、都道府県の大切な役割となる。このような、都道府県の持つべき機能についての議論なしに、いきなり都道府県合併論や道州制をもってくることは唐突である。
○中山間地域では、保全と産業は当然ワンセットで考えざるを得ない。歴史が浅く土地が広いアメリカ、オーストラリアでは、ビジネスのための農地とアクセスできる自然が分離しているが、ヨーロッパや日本の自然空間は、人がアクセスできるような自然と産業と居住空間のインターアクションで形成されていく空間であり、それを切り離して考えることは実体論として困難。
○中山間地域について、保全のための政策と産業のための政策は、政策論としてある程度各々の領域でつくられるべきである。例えば農地制度は国土保全的な機能を持つ一方、農業への参入規制としての意味も持っており、両者はリンクしているが、現在はどちらの役割としても不充分であるので、再構築し直すべきである。
○「国土と環境の効率的な保全」を追求する意味がわからない。むしろ中山間地域については、真に効果的な保全のための施策はどのようなものか、ということが重要である。中山間の保全のレベルをどのあたりに置くのが適切なのか。政治的な問題もあり、単なるコストベネフィットで図られるべき問題ではない。
○交通体系の整備が進んでいる現在は、周辺地域との連携を重視すべきである。
○中山間地域は重要であり、最も効率のよい活性化施策は直接支払いである。農林業は国土環境保全という国の仕事を代わりに担ってくれていると考えればよい。
○農業が総合生命産業であることから、自然、風土の影響が大きく、中山間地域の自助努力を強調しすぎると、地域の担い手がいなくなってしまう。生産者がいなくなってしまうと、土壌流出が起こるなど、損失が大きい。例えば河川についても、川上で生活する人がおり、農業を通じて保全をしているから川下の生活が守られており、保全と産業は切り離すことができない。
○現在の若者はリスクをとることから逃げており、農業をしようとする者はいても、リーダーとして農業経営者となろうという者は少ない。リスク管理に対応できるような者を教育する必要がある。
○地域の土地利用構想だけでなく、農地の利用計画もしっかり決める必要がある。農地を経営農地、環境農地…と仕切っておけば、直接支払いをするとしても、国民の理解を得られるであろう。
○中山間地域は人材不足が最大の問題である。首都機能移転の議論においても同様に、首都に人材を集めすぎていることが問題視されている。首都への人材集中を是正するため、首都機能移転を通じて、人心の一新を図り、開発型の国土づくりから人材養成中心の国土づくりを目指すべきである。
○国土利用の効率性については、まちづくりのツールとしては効率的な手段を講じるべきではあるが、まちづくりの目的としては「ゆとり」を目指すべきである。
○地域経済や中山間地域の問題を議論するときには、日本にはまだ豊かな自然があるので保全すべき、という前提か、又は、自然が崩壊しているので修復すべき、という前提か、どちらか。日本の自然は人の力を加えないと維持できないということを前提に壊れた自然を修復し、人の力を加えて維持して行くということをしっかり書き入れるべきである。
○総論的方向性の議論に終わらず、人の手をどの程度まで入れれば、どの程度の効果があるのか、国は具体的にどこまでをどうしたらどうなる、という議論が必要。
○日本の農業の要を維持するような施策をとるべきである。例えば、水利施設の維持、穴あき農地の防止など、間接的ではあるが、長期的には所得向上につながるような施策を講じることが必要となる。
○問題となるのは、所有者が管理を行っていない農地や住宅である。日本には利用することについての規制は多いが、有効利用されていないことに対する規制はなく、所有者に強制的に管理しろ、ということはできない。土地利用基本法には、私権の制限について記述されているから、各論において、それを実行できるようにするべきである。
○日本は水田社会系と畑作社会系ではあり方が異なるため、両者の区別を視点として入れるべきである。
○京阪奈学園都市の例では、3府県のいずれが主導権を持つのかが不明確であるため開発が遅れている。
○今回の東京都知事選の候補者の公約を見ていると、都市生活者はいろいろ損をしている、との認識がより一般に広まっているように思える。「都市生活者に必要な水や電力などを供給する重要な中山間地域」ということを強く主張する必要があると同時に、「都市と中山間地域の交流・連携が重要である」との認識をしっかり打ち出すべきである。
なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。
(本議事概要に関する問い合わせ先)
経済企画庁総合計画局地域経済班
TEL:03―3581―0511