経済審議会構造改革推進部会(第5回)
議事録
時:平成11年4月13日
所:共用第一特別会議室(404号室)
経済企画庁
経済審議会構造改革推進部会(第5回)議事次第
日時 平成11年4月13日(金) 10:00~12:00
場所 共用第1特別会議室(404号室)
- 1.開会
- 2.議題
- 「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」について
- 「構造改革の経済効果についての数量的な分析」について
- 3.閉会
(配付資料)
- 資料1 委員名簿
- 資料2 環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革について(案)
- 資料3-1 近年の規制緩和による経済効果の改訂試算
- 資料3-2 規制緩和などの経済構造改革が経済に与える影響について
- 資料4 検討スケジュール
- 参考資料 環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革に関する参考資料
経済審議会構造改革推進部会委員名簿
部会長 水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
部会長代理 江口 克彦 (株)PHP総合研究所取締役副社長
五十嵐 三津雄 簡易保険福祉事業団理事長
岩田 一政 東京大学大学院総合文化研究科教授
加藤 秀樹 構想日本代表
リチャード・クー (株)野村総合研究所主席研究員
草野 厚 慶応義塾大学総合政策学部教授
草野 忠義 日本労働組合総連合会副会長
清水 秀雄 (株)セブンーイレブン・ジャパン取締役副会長
中条 潮 慶応義塾大学商学部教授
中村 靖彦 NHK解説委員
野中 郁次郎 北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科長
長谷川 公敏 (株)第一生命経済研究所専務取締役
濱田 康行 北海道大学経済学部教授
村井 勝 コンパックコンピュータ(株)顧問
〔 部会長 〕 ただいまから、第5回の構造改革推進部会を開催させていただきます。
本日は委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日はご出席予定の先生は、お1人を除いて、全員出席でございますので、非常に出席率の高い会議になります。
本日の議題は、「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」についてと、「構造改革の経済効果についての数量的な分析」についてです。
それでは、第1の議題であります「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」について、事務局から説明をお願いします。
〔 事務局 〕 お手元の資料2と、参考資料に沿って説明させていただきます。
まず、「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革について」というテーマですが、私どもが今回考えましたのは、リサイクルの面からこれにアプローチするという形をとっております。したがいまして、Ⅰの1.「環境と調和した経済社会」のあるべき姿ということで、
「環境と調和した持続可能な経済社会を実現するためには、リサイクルを経済社会のシステムとして定着させた、循環型経済社会(リサイクル社会)を構築する必要がある。」
という、あるべき姿を立てております。
このための基本的考え方につきましては、2.に整理してございますが、
「我が国の大量廃棄型の生産活動、ライフスタイル等を前提とした経済社会システムは、廃棄物最終処分場の逼迫やその処理にともなう環境負荷の増大の顕在化等により行き詰まりを見せている。
このため、限られた資源や豊かな環境を次世代に引き継ぎ、「環境と調和した経済社会のあるべき姿」を実現するためには、従来の「大量廃棄型経済社会」を見直し、動脈経済と静脈経済のバランスがとれた「循環型経済社会(リサイクル社会)」へと構造改革をする必要があるのではないか。」
という問題点を立てております。
3.「現状認識」とありますが、これは物質循環を巡りまして、以下の3つに整理しております。
1番目は、循環性の低いマテリアルバランス(物質収支)でございます。
これは参考資料をご覧いただきたいと思います。1ページ、「単位面積当たりでみた各国の経済活動(GDP)の比較」ですが、この数字自体は、アメリカの10倍、イギリス、ドイツの2~3倍と極めて大きく、我が国においては狭小な国土の中で経済活動が行われている、当然、資源も多く使いますし、ゴミも出るということでございます。
2ページですが、「我が国のマテリアルバランス(物質収支)」をみたものです。数字自体は、平成8年の数字で整理しています。投入は22.4億t、うちバージン財は国内外から採取された天然資源として19.5億t、海外からの輸入 6.9億t、さらに製品等輸入が0.7 億t、トータル20.1億tでございます。これらは、経済活動を通して国内に新規ストックとして12.9億tが形成されます。さらに、輸出等を引いてありますが、不用物が約 8.5億t、再生利用が 2.3億tで約1割程度ということで、物質の循環性はまだ低いという問題があろうかと思います。
これに関しまして、次の3ページですが、我が国が輸入している主要な「天然資源の可採年数」を見ていただきますと、これは年とともに若干変動してきますけれども、石油、ベースメタルについては20~50年程度という資源的な制約も将来出てくる懸念がございます。
2番目は、廃棄物の処理の話ですが、これは本文の1ページの(2)「適正処理能力を超える廃棄物の排出」ということでございます。1つは、廃棄物排出の現状をみると、産業廃棄物が約4億t、一般廃棄物排出量は約5千万t、これにより最終処分場は逼迫、あるいは、水、大気等の汚染を通じた自然環境や人体への悪影響が最近大きく取り上げられています。さらに、不法投棄の後処理、豊島の問題、そのような問題があります。また、廃棄物処分場設置に係る社会的紛争が最近10年で 200件程度と言われていますが、社会的コストも増大しているということで、我が国の経済や環境に対して様々な問題を惹起しているという点でございます。
これを図表で見ていただきますと、参考資料の4ページ以下ですが、4ページは、「我が国の総廃棄物排出量の推移」、これは一般廃棄物と産業廃棄物の総廃棄物の排出量を整理しています。80年度を見ていただきますと、約3億 3,600万tですが、最近では、約4億 5,000万t、1億t以上の増加ということで推移しております。
さらに、5ページ目の「我が国の産業廃棄物排出量の推移」ですが、産業廃棄物がどのように処理されているかをみますと、96年度、一番右端で見ていただきますと、一番下が最終処分ということで、これが埋立等の最終処分量で約17%ございます。その上が1億 8,700 万tありますが、これは減量化量であり、破砕、焼却、脱水等で減量されるものです。その上にあります1億 5,000万t、これが再生利用量ということでございます。
6ページ目「我が国の産業廃棄物の種類別排出状況」、産業廃棄物はどのような内容になっているかということです。96年度の数字ですが、一番大きいものが汚泥で約1億 9,000万t、動物のふん尿が 7,000万t、建設廃材が 6,000万t、この3つを合わせますと約8割ということで、産業廃棄物の排出の種類としては、この3者が非常に大きなウェイトを占めているということでございます。
7ページ目「我が国の産業廃棄物の種類別最終処分状況」、どのように種類別に最終処分されているかということですが、汚泥が42%、建設廃材が25%、鉱さいが 6.9%です。それぞれこの内訳を試算したものですけれども、汚泥のうちの33%は下水道から出てきます。あるいはパルプの関係から12%出てきます。建設廃材は、当然、建設業から約94%ということで太宗を占めております。
8ページ目「我が国の一般廃棄物排出量の推移」、最近は 5,000万t近くで推移しております。
その内訳をみたものが、9ページの「我が国の一般廃棄物の種類別排出状況」です。上の円グラフの方が容積ベースで、基本的には食料品、日用品、飲料等に用いられる容器包装廃棄物が55%。下の円グラフは重量ベースで、これでみると約23%です。嵩が多いものが出ているということであります。
10ページ目「我が国の廃棄物最終処分場の残余容量」、先ほど申しました最終処分場の残余容量が逼迫しているという根拠ですけれども、例えば、産業廃棄物で見ていただきますと、全国ベースでは残余年数が約3年、首都圏では1年しかありません。若干、一般廃棄物の方では余裕がありますけれども、それでも全国で 8.5年、あるいは首都圏で 4.8年というように逼迫の度合いを強めております。
11ページ目「我が国の廃棄物処理法違反のうち不法投棄に係る検挙件数」、最近は 1,500件前後で推移しているという数字でございます。
また本文に戻っていただきまして、それでは、リサイクルはどのように進展しているのかということをみてみますと、制度的に、あるいは産業構造、技術的な面でリサイクルに係る基盤が未整備である現行の経済社会システムの下では、廃棄物の発生量もなかなか抑え難く、さらにリサイクルも、行うこと自体が高コストになっているということで、なかなか進んでおりません。
この実績は、参考資料の17ページ「我が国のマテリアルリサイクル率の推移」ですけれども、産業廃棄物については最近、やや低下傾向にあるということで、96年度は37%となっております。一方、一般廃棄物の方のリサイクル率については若干上昇傾向にありますけれども、96年度で10.7%とまだまだ、統計のとり方によって若干違いますが、アメリカ、ドイツ等の30%近くに比べるとかなり低水準にあるという状況でございます。
次に、本文2ページ目のⅡ「構造改革の進め方」ですが、以上のような現状を踏まえまして、構造改革をどのように進めるべきかということで、1.「リサイクルを促進する上での問題点」については、特に問題点を4点に整理しております。
【1】の「廃棄物の発生抑制や発生した廃棄物のリサイクルを効率的に促進するための廃棄物処理に係る基本的な原則・制度が未整備なのではないか。」、この1つ目につきましては、我が国にはリサイクルを実施するという社会の柱といいますか、そういう基本法がございませんので、それぞれ容器包装とか家庭電化製品等での個別対応になっているということで、大きな柱がないのではないか。あるいは、廃棄物の定義自体がかなり主観的なものになっているという問題があるのではないかという点でございます。
【2】の「現行の廃棄物処理・リサイクル実施体制は非効率なのではないか。」、廃棄物処理ですとか、リサイクル事業に係る許可制度等が市町村レベル、都動府県レベルでありますので、広域的な展開ですとか、新規参入が少し難しいという問題があるのではないかという点でございます。
【3】の「リサイクル財に対する需要が不足しているのではないか。」、価格面とか品質面で、リサイクル財とバージン財にはややギャップがあると言われていますので、これをどのように解消していくべきかという点でございます。
【4】の「産業構造や技術基盤がリサイクル対応型になっていないことが、リサイクルを高コストなものとしているのではないか。」ということでございます。
これを踏まえまして、次に、構造改革をどのように推進すべきかという点につきまして、2以降に2つに整理しております。1つは「システム基盤の構造改革」ということで、「効率的なリサイクルを促進するためには、生産者、消費者、行政等の各経済主体が、自らの責任を自覚し、その責任を効率的に果たすようなインセンティブが働くシステム基盤を確立する必要があるのではないか」ということであります。
【1】は「リサイクル原則の確立」ということで、「廃棄物の品目や主観、市況等に左右されず、リサイクル可能なものはリサイクルするという基本的ルールを確立する必要があるのではないか」。
例えば、ドイツの循環経済・廃棄物法のような、リサイクル基本法の制定が必要ではないか。
あるいは、その中で、「排出者責任」や「製造者責任」を明記する。これに従って、個別法の中でより明確にしていく、というようなアプローチが必要ではないかと考えております。
また、従来、市町村等の行政のスタンスが、廃棄物を適正に処理すればよいというものであったわけですけれども、これをリサイクルに向けた構造に変えていくことが必要ではないか。
それから、先ほど申しました、「廃棄物の定義の見直し」ということで、占有者などの主観に関わらず、リサイクルできるものはリサイクルするという方向に持っていくべきではないかと考えております。
【2】は「廃棄物処理・リサイクル体制の見直し」ということで、廃棄物の排出をできるだけ減らし、効率的な処理・リサイクルを可能とする方向で見直す必要があるのではないか。
3ページ目ですが、「その際、必要に応じて経済的手法の活用についても検討すべきではないか。」、例えば、一部自治体では既に実施されていますけれども、一般廃棄物への従量料金制の本格的導入。コストがわからないと、ゴミをどのように出していいかわからないということがありますので、このような制度を導入してはいかがか。
あるいは、自動販売機の飲料の販売量は全体の5割以上を占めていると言われていますけれども、特に自動販売機ですが、デポジット制を導入して、インセンティブをつけるべきではないか。
あるいは、例えば、廃棄物の収集運搬については、一般廃棄物では市町村長、産業廃棄物では都道府県知事の許可、そういうものを統一化すべきではないか。
次に、一般廃棄物の広域処理の本格的導入、これは今でもできるわけですが、なかなか市町村毎にばらばらですので、必要があれば、ガイドラインを国が示す場合もあるでしょうし、法制化も必要なのかもしれませんが、その点があるのではないか。
更に、一般廃棄物処理等において効率化のインセンティブが働くように、PFI方式の積極的導入を考えるべきではないかと考えております。
【3】が「リサイクル財の需給安定方策の実施」ということで、1つ目の○で、「リサイクル財の利用を拡大していくために、リサイクル財とバージン財の間の価格、品質のギャップを縮小する必要があるのではないか」。コストを下げ、品質を高める点については、技術的な話、産業的な話がございますが、これは後ほど述べさせていただきます。
2つ目の○ですが、「リサイクル財に対する安定的な需要を確保していく必要があるのではないか」。これについては、例えば、リサイクル教育の強化充実、あるいはグリーン購入や調達の支援を行う。
次に、公共事業におけるリサイクル財使用の義務づけ。現在のところは、義務づけられておりません。その際の技術基準等を検討中ということですので、この方向に向けて一歩を踏み出すべきではないかと考えております。
また、企業のリサイクルに対する姿勢を評価するという意味で、リサイクル財に関する企業の情報公開の促進。
リサイクル財に係るマーク制度・認証制度の整備。更に、廃棄物リサイクル財の需給をマッチングさせるということで、情報交換のためのデータベースの整備等も有効ではないかと考えております。
以上が、システム面での話でございます。
次に、(2)以下は「産業構造・技術基盤の構造改革」ということで、「効率的なリサイクルを促進するためには、それを可能とする産業構造と技術基盤を確立する必要があるのではないか」。
1つ目は、【1】「産業構造の抜本的転換」であります。従来の動脈重視型産業構造ですと、低コスト・高品質のリサイクル財を低環境負荷の下に生産することは難しいため、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)に基づく製品ライフサイクル全体の環境負荷を低減するよう、リサイクルが生産・物流・消費の各段階に内在化されたインバース・マニュファクチャリング型(動脈・静脈一体型)産業構造に抜本的に転換する必要があるのではないか。
さらに、一企業や一産業で努力してもなお発生する廃棄物については、企業相互、企業の有機的な連携の中で効率的にリサイクルしていく。最終的には、廃棄物ゼロを目指すような、ゼロエミッションも実現する必要があるのではないか。
このために、例えば、LCA手法がまだ確立されておりませんので、早急なLCA手法の確立が必要ではないか。
さらに、これは産業の分野を超えた連携強化のための集中的投資・支援が必要ではないか。
それから、同一企業内で、従来の動脈重視型から、動脈の中に静脈を組み込んでいくというような、企業内の動脈部門の見直し、あるいは静脈部門の育成強化が必要ではないか。
また、ゼロエミッションにも関係するわけですが、他の企業や産業等と連携し、低環境負荷の下で効率的なリサイクルを可能とするための、産業立地等の見直しと基盤の整備。港湾近辺にこのようなものをつくるという、港湾コンビナートみたいな構想もあるようですが、そういうものを積極的に進めていくべきではないか。
さらに、廃棄物、リサイクル財の集積・中継地、中間処理地の適正立地等静脈物流拠点の見直しということで、今後は、廃棄物の収集・運搬ですとか、さらに中間処理まで含めた全体の中での立地が求められるのではないか。
最後に、リサイクルベンチャーの育成ということで、革新的技術を持つようなベンチャーの育成が必要ではないか。例えば、東北地方には、リンゴの搾りかすを肥料化するようなベンチャー企業があるようです。そういうものも今後出てくるのではないかと考えております。
【2】「廃棄物処理・リサイクル産業の効率化」は、従前から静脈部門を担っていました廃棄物処理・リサイクル産業の効率化、その促進のためには、1つは、広域事業展開の促進ができるような規制緩和が必要ではないか。
あるいは、リサイクル事業者が伸びて、廃棄物処理事業者が若干シェアが落ちて、活動が鈍るということで、なかなか進まない点もあるかと思いますので、両者の融合等の支援も必要ではないか。
【3】「リサイクル対応型技術の開発」は、低コスト・高品質のリサイクル財を低環境負荷下に生産するためには、革新的なリサイクル技術の開発を促す必要があるのではないか。
例えば、リサイクル対応型の素材、部品、組立、そういう生産技術を開発するための集中的投資が必要であろう。あるいは、それぞれ動脈と静脈を一体化するようなシステム化技術、そういうソフトの技術も必要ではないか。
それから、そのための研究開発体制、横断型とか垂直型の研究体制、あるいは国立の研究機関、大学の研究機関の開放、産学官連携研究体制の整備が必要ではないか。
最後に、動脈部門と静脈部門の技術情報の共有ということも、場合によって安全・適正な処理をするために義務づけも必要ではないか、という点を考えております。
本文については以上でございます。
参考資料の22ページからご覧いただきたいと思います。「構造改革によるマクロ経済効果(試算) 」、これはリサイクルワーキング・グループで試算したものですが、1990年のリサイクル率のまま推移した場合の産業活動を考えたものが、現状固定シナリオです。リサイクル率を上げていく、リサイクル活動を進めていった場合はどうなるかというのが構造改革シナリオです。このベースになっているのは、今後最終処分場が年5 %減っていくという前提を置いたものです。したがって、このままでいきますと2020年では、最終処分場は8割減になりますし、2030年には最終処分場はゼロになるというトレンドで計算したものです。これでいきますと、リサイクル率を上げていけば、2020年までは年 1.5%のGDPの成長率が達成できますが、リサイクル率を上げずに従来型の産業を続けていけば、2010年ごろにマイナスに転換する、という1つの試算結果でございます。
24ページの「構造改革後のマテリアルリサイクル率の見込み(試算)」ですが、これは先ほどのベースになりました構造改革を行った場合のリサイクル率を計算したもので、2020年で約64%の数字に持っていけば、年率1.5 %の成長が達成できるであろうということでございます。
25ページ目「構造改革の廃棄物最終処分量の見込み(試算)」は、前ページのモデルとは違うモデルによるものですが、汚泥、建設廃材、廃プラスチック等をできるだけ使ってみる、使えるところは全部使ってリサイクルした場合、最終埋立処分場は約75%減少するというような1つの計算でございます。
27ページ「構造改革後の企業収支等の見込み(試算)」は、インバース・マニュファクチャリング、リユースできるものはリユースする、リサイクルできるものはリサイクルするというような理想的なことを考えて、冷蔵庫について計算したものです。この結果は、資源使用量が4割減、埋立処分量が8割減、エネルギー使用量が4割減ということであります。
この場合、リユースや長寿命化により、企業の総売上げは約2割ぐらい減少しますけれども、純益といいますか、企業利益そのものはコストダウン等によって、プラス3%とほぼ従前どおり維持されるのではないかという、理想的なパターンでありますが、試算結果がございます。
以上でございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました資料2につきまして、ご意見等をお願いいたします。
恐らく、問題は、資料2の2ページのⅡ「構造改革の進め方」というところにあると思いますけれども、その前提としての、Ⅰ「環境と調和した経済社会の姿」の1.「環境と調和した経済社会のあるべき姿」、2.「基本的な考え方」、3.「現状認識」、この辺につきまして、まず、ご意見、質問、コメントをいただきたいと思いますがいかがでしょうか。
〔 A委員 〕 「環境と調和した経済社会」ということで、リサイクル社会が前面に出ていますけれども、エネルギー問題、あるいは原子力・代替エネルギー、その問題はここでは取り上げないということですか。
〔 事務局 〕 エネルギー問題プロパーとしては、ここでは取り上げないということです。
〔 A委員 〕 エネルギー問題から出てくる、例えばCO2 とかNOx とか、そういうことはここでは取り上げないということですか。
〔 事務局 〕 もちろん環境問題ということを考えれば、そういうことが課題であるということは十分認識しているわけですけれども、新しい政策を出すという観点で、今、日本の国内で非常に問題になっているリサイクルの問題というのを取り上げて、重点を絞って議論をして政策提言をしていこう、そういう観点でございます。
〔 A委員 〕 そんな一言があったらいいなと思いました。
〔 部会長 〕 その辺の問題については、環境庁、厚生省、いろいろな審議会その他で、あるいは官邸では総合的な会議もやっていますけれども、その辺はほかの各省庁でやっている審議会その他との関連はどうですか。その辺の成果などをこちらで利用することは十分可能ですか。
〔 事務局 〕 地球環境の話は、もちろん政府の議論の中に、私ども経済企画庁総合計画局は関係をしておりますので、最終的に、例えば今度の新しい計画のとりまとめの中には、各省庁の審議会で議論されている成果は当然に盛り込んでいくということでございます。
〔 B委員 〕 私どもの場合、ヨーロッパ、米国、日本という形で比較できるかと思うのですけれども、社内におきましても相当差がございます。まず、環境担当の首席バイスプレジデントというのを置いているわけですが、彼の言によりますと、私どもの場合、コンピュータの部門では、電力消費というのが一番環境に大きなマイナス点を出しているという話がありまして、電力消費をいかに少なくするかということを、われわれの課題として取り組んでいます。
2つ目の問題として、社内で比べた場合には、ヨーロッパあたりですと、廃棄物を受けてもらえる産業構想というのは非常にうまくいっているようで、ヨーロッパの場合には完全にバランスがゼロになるような仕組みになっています。
会社全体が力を入れてやっているものですから、日本でも何とかやりたいと思うのですが、日本の場合は、企業単位の努力に任されているような気がするのです。ですから、それこそ今のベンチャービジネスがちょっと出てまいりましたけれども、受入構造といいますか、受入産業といいますか、受入企業がもうちょっとモチベートされるような仕掛けというのができないのか。
同時に、この法律の整備というのが相まってくるだろうと思うのですけれども、この2つの組み合わせをもうちょっと強化していただければ、特に中小の企業にとっては、リサイクルというものに対してもっともっと積極的に取り組めるのではないか。
それから、3つ目は、これは私の一般消費者としての個人的な感覚で申し上げますと、日本の場合、過剰包装というのがときどき話題になりながら、全然そういうものに対する積極的な問題の取り上げ方がされていない。社会的に取り上げられていないというところに、大きな問題があるのではないか。これが放置されているような気がするのですけれども、こういったものに対する運動をもっと積極的に進められないのか、という印象をもっているわけです。
これはあくまでも私のコメントでございます。
〔 C委員 〕 今のご説明をお聞きしていまして、私の勉強不足かどうか、意外感があったのです。参考資料の22ページの図表17で、このようにいろいろやる方がマクロ経済に効果があってGDPは増えていくのだ、こういうお話ですが、何となくイメージとしては、産業廃棄物を出さないために一生懸命処理をすると、コストがかかって、その結果として、それをどう負担するかという議論になるのかなと思っていたのですが、ここは、産業廃棄物の処分コストに比べればリサイクルコストの方がより少ない、こういうことでしょうか。そこがよくわからなかったのです。
〔 事務局 〕 試算の前提は、90年の産業構造をベースに、最終処分場が年率5%で減少するとの制約要因を加えております。このため、基本的には制約要因が効いており、廃棄物処分コストが急激に上がっていくということでございます。
ただし、各産業分野毎のリサイクル率は90年水準で一定ですが、2020年の産業構造はリサイクル率の高い産業分野にシフトしていくため、全体のリサイクル率は若干上がっています。
〔 D委員 〕 B委員がおっしゃった第2点目に、私もちょっと意見があるのです。リサイクル産業をどう育てるかという話ですけれども、北海道でも、結構リサイクル産業というのはございます。特に問題になっているのは、農業関連から出る廃棄物。一番典型的な最近話題になったのは、ビニールハウスの後を燃すという問題です。燃すと大変なことになるので、それを捨てなければいけない。そこで、いくつかの中小企業が努力していろいろな商品を今つくっているのですが、そういうところに話を聞きに行って、最大の問題は、官公庁に売りに行くのだけれども、買ってくれない。
それはコストの問題もあるでしょうけれども、例えば、何とか部というところに売りに行くには、うちはここと、ここと、というふうに決まっていて、なかなかそこに入り込めないという問題がある。
ベンチャー企業というか、リサイクルを目指している企業の最大の悩みは、需要がつかないということです。そこをブレークスルーするような工夫を作ってやらないと、なかなかうまくいかない。
私たち大学側も、理系の先生たちを引っ張り込んで、いろいろそういう工夫をやっていろいろな商品づくりをやっているのですが、いかんせん、それが売れていかない。それは製品上の問題もあるのでしょうけれども、どうもそこに1つ官公需要の壁があると思います。
ですから、今日提案されたようなことが全部実現すれば、私は、問題は解決すると思うのですけれども、ここに書いてありますように、リサイクル財にマーク制度を作るとか、認証制度を作るとかして、認知して、そういう認知されたものに関しては、とにかく買ってやる、そういうシステムができればいいなと思っています。それは意見です。
1つ質問があるのですが、参考資料の17ページの図表14、マテリアルリサイクル率が低下している、特に産廃の方で低下しているのですが、これは何か理由があるのでしょうか。不況になって手が回らないとか、いろいろあるのでしょうけれども、一般廃棄物リサイクル率が上がっているというのはわかるのですが、産廃が減っているというのはどうしてかなと、よくわからないので、もし原因を掴んでおられたら説明していただければと思います。
〔 部会長 〕 今、D委員の言われた第1の点、官公庁の受入体制、あるいは注文を受け付けないという問題については、調査のうえ、もしそういう事実があれば、そういうことのないようにそれぞれ関係省庁、あるいは地方自治体かもしれませんけれども、しかるべき政府部門の中で処置をしてもらいたいと思います。
〔 E委員 〕 廃棄物の率の上でみますと、食料品の廃棄率はものすごく高いと思うのです。恐らく、供給される食料品(これは国産と輸入両方を合わせてですけれども、)のうちの大体22~23%は無駄になっている、捨てられているという推計がされています。それは、捨てるということについて、もったいないという意識があまりないからだと思うのです。これはリサイクルの対象として、これから考えていかなければいけないと思うのです。
その場合に、大半はコンポスト、一部は家畜の飼料にして食べさせるという方法があると思うのですが、コンポストということになれば、先ほど参考資料でご説明のあった産業廃棄物の動物のふん尿が極めて排出が多いということとあわせて、これは処理することが可能だと思います。
ただ、現状、日本ではこの点についての取組みは、正直言ってそれほど高くないというのが現実であります。それはなぜかと言えば、これに取り組んでもあまりメリットがないと、携わる企業側にとってはそういう意識があるからだと思うのです。
ですから、そこは、先ほどご説明があったように、まず一般の廃棄物、つまり生ゴミを出す場合の従量料金制、これは外食産業などについては行われているわけですけれども、それを一般家庭まで広げる必要があるのではないか。
既に、私のささやかな取材では、例えば、アメリカとかヨーロッパではそういうことは実際に、全土で行われているかどうかはわかりませんが、行われているという現実があるわけですから、日本もそういう社会になっていかざるを得ないのではないか。
そうすれば、その分のコストというのは、企業側で十分にこなしていけるだけのものになっていくわけです。それから、その場合の料金の設定を、例えば処分するコストよりもリサイクルコストの方が安いという設定があれば、そこにゴミを出す方もメリットがある。しかも、そういう料金制を導入することによって、先ほどの22~23%に及ぶ無駄を、あまり抵抗なく経験しているという意識を変えることができるのではないか。
というようなことを、先ほどの動物のふん尿との関連で、私、今、感想としてもちました。
〔 部会長 〕 それに関連して何かございますか。F委員、どうぞ。
〔 F委員 〕 実際面のリサイクルにつきましては、各都道府県また市町村によって全部方式が違うというのが、今、実際に企業の悩みです。東京方式、京都方式、神奈川方式など様々です。
〔 部会長 〕 方式というのは、中身はどういうことですか。
〔 F委員 〕 回収方法の違い、分類の違い、それから、どこまで中間業者が持っていくのかというコストの配分の違い、これが今言ったように、各都道府県、市町村で全部違った方式でやっているわけです。
ですから、逆に、実際に収集するという意味のコストアップ、それから東京方式と神奈川方式、また神奈川方式でも、川崎方式でも、北部と南部とやり方が違う。そうしますと、実際にどういうふうに処理していいのかというのが非常に難問で、うっかりすると、店頭に5つも、6つも、7つもゴミ箱を置かないと回収できないというような問題、こういうのが現実にあります。これが第1点の今の問題です。
それから、コンポスト化というのは、今、ブタを6頭飼って、飼料化をしてブタの餌にするテストもありますし、また通産省から補助金を受けてコンポスト化の実験もやっているわけですが、やはりコストが非常に高くなって、その後の飼料化にしても、現在の飼料の 1.5倍ぐらいのコストになってしまうので、どうしても飼料化しても、実際にそれが売れない。売れても、コスト的に非常に高くつくというのが今問題になっています。
ただ、ベンチャーというのが今、リサイクル化についてはいろいろな角度で一斉に新しい技術が出てきていますので、それをもう少しいい情報を、どこの企業が、どこの官庁がどういうリサイクルの研究をしているかという情報公開があれば、もっと利用しやすいかなと思っています。
そういう個々の問題はともかくとして、今、いくつかの企業が始めていますけれども、環境会計という考え方が出てきていますので、この辺も少し企業サイドには入れておいた方がいいのではないか。同時に、このご意見にも出ていますように、環境報告書というのは、各企業ともバランスシートなどと同様に、公開義務があるというふうに持っていくと相当違ってくるのではないかと思っています。
そういう意味でも、環境問題というものを経営資源の中に取り込まないと国際競争力はつかないという認識をもっていますので、この問題は相当大きな問題として、各企業は捉えているというふうな認識をもっています。
〔 G委員 〕 全体として、私の必ずしも専門分野ではないので、やや見当違いのコメントになるかもしれませんけれども、素人からみますと、今日のご説明というのはやや具体的なイメージが掴みにくいという感じがいたします。非常に難しい問題を含んでいるということもありますけれども。
私自身、今日のご説明のゴミを出さないということ、それから、出したゴミをリサイクルするということ、それから、リサイクルする受入企業が新規参入が難しいということであれば規制緩和しなければいけない、この大目的に関してはもちろん賛成でございます。
しかし、現に起きていることは、政治学的な観点からそういうことに関心をもってみたことがあるのですけれども、このペーパーの中にもご指摘がありましたけれども、広域行政という点が不足していて、ゴミの処分場が隣接自治体で、その政治的な思惑からいくつもつくられてしまったりという現実がございます。
現に渋谷で起きている、ゴミの最終処分場の建設反対運動というものがございます。今回の都知事選挙でも1つの争点になりました。
それから、今、F委員からご紹介がありました、私もよくゴミを捨てる役割を仰せつかるわけですけれども、透明の袋を使う自治体もあれば、引き続き現在でも、真っ黒の袋で捨てていいところもあり、地方自治体ばらばらでございます。
要は、そのような現状というものをどういうふうに捉えて、先ほどの目的をどう達成するか。
ここに書いてあることはどれも大事だということはよくわかったのですけれども、この目的を達成するためには、優先順位があるのではないかと思うのです。どこから手をつけたらいいのか、あるいはつけやすいのはどこなのか、というところをぜひ国民に対するアピールという点からすれば、お示しいただいた方がいいのではないかという気がするのです。
付け加えて申し上げれば、3ページの広域処理のところで「本格的導入」と「本格的」という言葉が入っています。その次の行には「PFI方式の導入」と書いあって、「本格的」がないのですけれども、これはいわゆる官庁用語なのでございましょうか。そういうようなこともご指摘いただければと思います。
〔 部会長 〕 3ページの「導入」の前の前置詞の問題は何かありますか。
〔 事務局 〕 実は、従量料金制につきましては、既に実施している団体がございますので、そういう意味で、もっと普及するという観点で書いてございます。PFIというのは、法律がまだですので、PFI方式そのものは今後の問題ということでございます。
〔 G委員 〕 ご説明の中で、法制化の必要性も考えてというようなことをおっしゃいました。そういうところは、本文の方にはお書きにならないわけですか。そういうことを含んだ本格的、ということなのですか。
〔 事務局 〕 従量料金制でしょうか。
〔 G委員 〕 いえ、広域処理の本格的導入。
〔 事務局 〕 ここは、先ほどF委員からもご発言がありましたけれども、要するに、もっと広域的にやろうと思っても、回収のルートが違いますとか、分別基準が違いますとか、いろいろ障害があるものですから、そこがもし広域事業組合等で解決できないことであれば、例えば厚生省が、必要により規制してもよいのではないか。そのような観点から、法制化が必要であれば、法制化すべきではないかということも考えております。
〔 H委員 〕 1ページ目にあります「現状認識」、(1)、(2)、(3)とありますけれども、これはどれも、ずいぶん前からいろいろ言われていることだと思うのです。それから、環境問題というのは、恐らく、総論では反対する人はいないので、常に各論のところで問題になってくる。ですから、あまり抽象的なことでリサイクルを進めるべきだということを言っても、それは10年以上前から言われているではないか、こういうことになると思います。ですから、具体的にある程度示していく必要があるのではないか。
思いついたことをいくつか申し上げますと、現状認識のところの、例えばなぜマテリアルバランスが低いのか、なぜ廃棄物が能力を超えて出るのか、高コストでなぜリサイクルが伸び悩むのか、すべてそれは商売のベースに乗らないからだと思います。
そうであれば、広い意味での環境税、これはいわゆる炭素税に限定するのではなく、デポジットとか、課徴金とかを含めてですけれども。先ほどの資料の外国の例でも、あれに限らず、環境対策が進んでいる国というのは環境税というのはかなり広範に実施されているわけです。ですから、私は、環境税を導入しようというのはいろいろな事情でそれを明言するのは難しいというのはよくわかりますけれども、それぐらいのことを少なくとも書かないと、あまり意味がないのではないかと私は思います。
ここにベンチャーの育成とか、そういうものがあるわけですが、環境の分野では従来から、対策というのは大きくいって3つある。エコノミックインスツルメンツというものと、直接的な規制と、啓発であるとよく言われています。今の環境税というのは、そういう意味ではエコノミックインスツルメンツということになると思いますが、ベンチャーの育成というものは、そういうことで商売に乗るようになれば自ずと出てくる。ですから、育成しようというよりは、環境税的なことで、全体の価格のバランスを整える方がよほど効果的だし、先決ではないかと思います。
ただ、ここで次に出てくる問題は、それを日本だけでやると、国際競争力が落ちるではないか、必ずこういう問題が出てきます。これも、もうずいぶん昔から同じことの繰り返しなのです。それに対しては、この資料にもあるように、そのことによって産業の振興につながるのではないか、短期的には、確かに国際競争力が落ちる可能性があったとしても、それは産業間のバランスが変わる途中経過であって、最終的にはプラスの効果があるのではないかということは十分考えられると思います。恐らく、そういう環境を考慮した経済システムというのが、いわゆるデファクトスタンダードというものになっていく。それを考えると、早く具体的な環境税システムというものを考えるべきではないかと思います。
それと、全く別の議論として、日本の国際的な貢献という言葉が使われますけれども、環境的な面で国際的貢献ということもよく言われますけれども、抽象的なことを言ってても仕方がないので、まずこれは誰かがスタートを。みんなが国際競争力がなくなると言ってたのではどこも進まないわけですから、日本が率先してやるということをこの際、考えるべきだと思います。
ちょっと長くなりますが、あと2つほど個別の話をしていきますと、産業廃棄物で、先ほどリサイクル率が落ちているという数字がありましたけれども、私は、これは事実関係はよく知りませんが、1つには、不景気になってきて企業のコスト削減ということもつながっているのではないか。仮にそうだとすれば、私は、産業廃棄物の処理というのは、規制をするなり、不当に捨てた場合にはかなり強い罰則をかけるなりして、もちろん、それには警察がモニターするというのは大変厄介な仕事があるにしても、これも体系的にやっていく必要があるのではないかと思います。
もう一つだけ申し上げますと、産業廃棄物と非常に関わりの深い話として、土壌汚染の防止と管理に関する法律が日本にはない。水と空気はあっても、土壌にはないわけです。これがない限り、最後のところで尻抜けになる。ですから、ここは法制度をきちっと整備すべきではないかと思います。
〔 I委員 〕 G委員が、ゴミを捨てに行くといく格好というのを、ぜひ一度みたいなと思いましたけれども。
幸いにして、私のマンションは、外までゴミを捨てに行く格好は私は見られないのです。どうしてかというと、管理人がゴミの区分をやってくれるのです。ところが、そのために、うちのマンションは管理人を雇っているようなもので、その人の仕事はそれだけなのです。
私は何を言いたいかというと、今のシステムというのはコストは安いのかということです。つまり、管理人さん1人雇うぐらいのコストが実はかかっているということです。
C委員が質問されたことと関連があるのですが、それに対してのお答えは、処理コストの方がリサイクルコストよりも高くなっているからだというご説明でした。そこは本当にそうなのかというのが、私は、ちょっと疑問なところがあります。
つまり、処理工場は、これ以上建てられない。反対運動等もあって、それは難しい。例えば、その背景には、ダイオキシンが出ているのではないかということがあるわけです。では、ダイオキシンのコストは一体どれだけかというのは、誰もよくわからないで、一説によればタバコと同じぐらいだというような話もあります。そういうところで、本当に処理コストの方が高いのだろうか。処理コストは確かに高いかもしれないけれども、むしろ、そっちの方がグラフは上の方へ行く可能性はないのだろうか。その辺のところは、環境コストの費用便益をもっときっちりやった方がいいのではないか、これが1点です。
方向としては、資料2に書いてある方向で私は賛成でありますけれども、前提のところをもうちょっときっちりやった方がいいのではないかということです。
2つ目は、前提がそうであるとして、それに対応していくには、資料2で書いてあることで結構だと思うのです。それから、何人かの方から出ていますように、私も、消費者にコストを意識させるようなシステムでないと、要するに廃棄物のコストはこれだけかかるということが消費者に意識させられないとダメだ。ゴミはこんなに無駄なものです、といくら言っても、実際には出しちゃいますから、ちゃんと無駄だということが肌でわかるように、従量料金的なシステムを導入するべきだと私は思います。
ただし、そのときに大事な話は、リサイクルとうまく結びつくようなシステムを考えなければいけない。例えば、この灰皿を捨てたら、そのときには従量料金制でいくらかかるということになった場合に、この灰皿がリサイクルでできている灰皿と、バージン資源でできている灰皿とは、消費者にとってはわからないわけです。それが区別できるような形でやらないと、リサイクルはうまく進んでいかないだろう。もちろん、排出コストが高くなれば、それだけリサイクルのインセンティブは当然働くわけですけれども、そこの工夫をもう一つやる必要があると思います。
〔 J委員 〕 ここも私の専門分野とはちょっと違うのですけれども、私がアメリカから日本に移り住みまして、いかに皆さんが物を無駄に使うかというのは、本当にびっくりしました。
例えば、粗大ゴミという表現が日本にあるわけですけれども、粗大ゴミで出ているものの大半は使えるものだと思うのです。実は、私の家も粗大ゴミで捨てられたスピーカーとかを今でも使っています。ちゃんと今でも使えるわけです。そういうところを見ると、粗大ゴミのリサイクル市場みたいなものがもっとあっていいのではないか。恐らく、捨てる人も、まだ使えるけれども、新しいものが出たからとか、何らかの理由で捨てているのでしょう。
アメリカは、アメリカ人というのはもともとけちな国民ですから、使えるものは、必ずガレージセールとかいう形で売っちゃうわけです。そうすると、次の人が使う。また、その人も売る。私も、アメリカで家を買ったときは、全部それで家具は揃えたわけです、ベッド以外は全部それでした。また、日本に来ることが決まったときに、それを全部売りまして、ほとんど元が戻ってきた。そういうことをアメリカ人はやっているわけです。
それに比べると、日本では全部が粗大ゴミになってしまう。これだけでもすごい量になると思うのです。
私も、一回アパートを替えるときに、今住んでいるアパートには冷蔵庫が入っていたものですから、持っていたのを売らないといけない。でも、売るところがない。それで、外人ばかり集まるスーパーマーケットが広尾にあるのですが、そこには外人同士のマーケットがあったので、そこに書いたのです、この冷蔵庫を売りたいと。そうしたら、ある上京した学生が、自分は東京で大学生活を始めなければいけないけれども、冷蔵庫が必要で、たまたまスーパーマーケットに行ったら、そういうのが出ていたので、私のところに電話をしてきて、私は冷蔵庫とエアコンかなんかを売ったのです。そうしたら、向こうは喜んじゃいまして、僕が買っていいのですかと、引取りの日には、何とケーキまで持って来てくれたという感動ぶりだったです、こんなものがこんな安く手に入るとは思わなかったと。だから、いかにそこに大きなギャップがあるのかという気がしました。
したがって、いい物を長く使うということも、もう一つもっと日本で進められる話ではないか。
欧米でよくリサイクルが進むというのは、アメリカ人はそもそもけちである。したがって、使えるものは必ず売ってしまう。ヨーロッパ人というのは、古い物を大切に使おうという習慣が、これまたものすごく根強いものがあるわけです。例えば古いカメラでも、まだ使えるからといって皆さん使っておられる。
そういうちょっと文化的に違うところもあって、それがこれだけゴミがたくさん出るところになってしまっているのかな、という感じがします。
もう一つ、今のような技術革新の速いときに、リサイクルをどう考えるかというのは、恐らく、これは世界的な課題だと思うのです。例えば、これだけ技術革新がすさまじくなかった頃は、例えば、いい車を買って10年、20年乗っているということはできたわけですが、今のような、例えばパソコン、恐らく5年したら必ずゴミになるとわかっているようなもの、つまり耐用年数が極めて短い、こういうものにこれからどういう廃棄コストを今の製品価格に反映させていくかということは、真剣に考えていかなければいけない。どこかで技術革新が止まって、安定的な世界が出てきたら、このゴミの問題ももう一つやりやすくなると思うのですが、これだけ技術革新が速くて、しかも加速度的に進んでいる中でのゴミ処理というのは、ちょっと別の視点が必要ではないかという気がします。
最後に、先ほど食品の過剰包装ということが言われたわけですけれども、規制という意味で、例えば、日本の車検制度というのは、いかに廃棄物を増やすことに寄与していたというのは、これは恐ろしい限りだと思うのです。今やっと、2年おきということになったので、恐らく廃車率はその分下がって、みんなもう少し長く車を使おうということになったと思いますが、こういうところにも産業廃棄物を増やしている大きな原因があるわけで、この辺をちょっと変えるだけで、私はかなりの効果が期待できるのではないかという気がします。
〔 A委員 〕 I委員の方から、消費者にコストを意識させないといけないということですけれども、どちらかというと、消費者にコストを意識させないような行政もあるのではないかという感じがするのです。
私は、このペーパーで述べられていることは、おおむね賛成です。ですけれども、実際にこういうふうな制度・システムということだけではなくて、いわゆる国民への啓蒙というか、あるいは行政の意識を高めるというような角度も必要ではないだろうかと思うのです。
ある地方自治体ですけれども、各家庭が、各会社が、ゴミの分別するのはけしからんということになっているわけです。それはどういうことかというと、ゴミの分別、それを仕事にしている人たちの仕事を奪ってしまうということで、ゴミは分けて出しても、結局、全部積み込んでしまう。そういうことで、ゴミを分別するのは、「してもいいけれども、むだですよ」というようなことで、結局、分別をするとほとんど受け付けないということになっているわけです。このあたりから直していくというか、そのあたりを考えていく必要があるのではないだろうか。
行政というか、それぞれの人たちがリサイクルということについて意識を持っているところは、現実問題としては、そこにギャップがあるのです。企業の場合は、例えば、大量に1つの廃棄書類などを出すと、これは有料ということです。ところが、それをごちゃごちゃにして出すと、無料になるというようなことがあります。
ですから、リサイクルというのは商売ベースに乗らないということですけれども、そういうようなことをつぶさに押さえていったら、案外リサイクルも商売ベースに乗るような面も出てくるのではないだろうかと私は思うのです。もう少しきめ細かくチェックしてみる必要があるのではないか。
さっきのゴミの袋の件もそうですけれども。その辺は、ドイツとかは、国民の意識、地方自治体の意識というのが非常に高いです。そういう方向に、どういうふうにしたらいいのかということはよくわかりませんけれども、そんな点からもお考えいただきたいということです。
〔 G委員 〕 A委員が言ったことと関連して申し上げたいのです。この会の冒頭でも私申し上げたのですが、既得権構造が規制の障害になっている。今回のペーパーのご説明をお聞きしても、何をすべきかということは書いてあるのだけれども、これまでそういうようなことが議論されたにもかかわらず、それができなかったという既得権構造については、書き方が非常に曖昧だという感じがします。
今、A委員がおっしゃったように、家庭でゴミを分別すると、既得権益を持っている業者が困っちゃう。あるいは、先ほど私が言いましたように、隣接の地方自治体で似たようなゴミ焼却場ができちゃうというのは、政治的な利権があるわけです。そういうようなところにも、今回の報告書というのは、ズバリと書けないにしても、何らかのヒントがあるような書きっぷりにしていただかないと、最後になるのだろうと思いますけれども、経済審議会の意味がないのではないかという感じがしてならないのです。
もちろん、これは経済計画という経済に力点を置いておりますけれども、多分、一番最初に私が申し上げたときに、いろいろな委員の方々からその点に関してサポートがあったというふうに思っていますので、その辺のご見解を改めてお聞きしたいと思います。
〔 部会長 〕 部会長としたら、経済審議会で、べつに経済企画庁ではありませんから、できるだけはっきりとズバリと出していくという考え方でおります。いろいろ抵抗はあるかもしれませんけれども、私は、そういう考えでおります。
〔 G委員 〕 エピソードがあるとわかりやすいと思います。
〔 J委員 〕 G委員と同じことなのですが、既得権益ということは、さっきのゴミの例のように、今持っている物を手放せということと、それからデポジットにしても、リサイクルにしても同じだと思います。今かけていないコストを負担しろ、これも既得権益ではないにしても、負担を今からさせられる。
私は、環境問題に関しては、既得権益を手放すことよりも、こちらの方がはるかに大きい、と。
これはやや不適切な表現かもわからないですけれども、現在、廃棄物に関わっている業者というのは、まともな業界だと見られていないわけです。それに対して、今から新しく負担しなければいけないのは、今の産業そのものですから、そちらの抵抗の方が全体としてははるかに大きいわけですから、既得権益の話とセットで、新しい負担に対する抵抗もすべきではないということも、セットでぜひ入れていただければと思います。
〔 K委員 〕 特段、内容的なことではありませんが、最初、A委員からお話がありましたように、あと2回でこの議論が終わるので、このペーパーはどういう位置づけになっているのかちょっとわからないところがありますが、「環境と調和した経済社会」ということを言うときに、このペーパー自身、中身に異論はありませんが、廃棄物処理ということにフォーカスを当てているという意味では、環境といったときすぐ出てくる炭酸ガス問題とかに全く触れられていないということについては、きちっと整理しておく必要があるのではないかと思いますし、場合によっては見出しを変えた方がいいのではないかと思います。
〔 部会長 〕 ただいまのは貴重なご意見ですから、先ほどもご意見がありましたけれども、前書きかどこかには、地球環境問題という大きな問題として、その一環としてここにフォーカスを当てるというようなことは、当然、書く必要があると思います。よくわかりました。
ほかにいかがでしょうか。D委員、せっかく出ていらしてますから、何かほかにありますか。
〔 D委員 〕 既得権益の話がございましたけれども、私が、先ほど申し上げたかったのも、そういうことです。大学と協力して何かをつくっていく、ところが、その需要先が見つからない。それは、多くは既得権益にぶつかるのです。
私は、製品的というかコスト的には、リサイクル商品はそんな劣ったものはもうないだろうと思っています。だけど、それが売り先がなかなか確定しない、見つからないというところ、それをどうするか。やはり、率先して、どこか買えそうなところが買うということをしてやらないと、リサイクルベンチャーというのは、結局は育たない、デッドロックにぶつかる。そこは、各委員のおっしゃったことと、私も、ちょっと言い方は違いますけれども、同じことを申し上げたいというところです。
〔 J委員 〕 先ほど、製品の耐用年数ということでお話しさせていただいたわけですが、1つ思い出した点は、アメリカではかなり古い製品でも、いくらでも修理できるのです。それはどういう構造になっているかと申しますと、メーカーが、例えば、その車をつくるのをやめて何年もしても、そのメーカーが持っていた部品を別の業者、代理店に払い下げてしまう。その業者がずっと部品を持っていますから、そこへ行けば、古い車も誰も乗っていないような車でも部品が見つかるということがあるわけです。
日本では、7年か何か過ぎると全部廃棄してしまう。廃棄ということは、またこれがゴミになるわけです。どうして、秋葉原の誰かさんがそれを全部受けてしばらく持っているとか、そういうことにならないのか。ここは、私は非常に不思議な気がします。
もしも、それができないのだったら、例えば、今は7年間部品はありますと言っているわけですけれども、これを10年とか15年してしまうということにすると、それだけ、その製品の価値は維持されるわけで、これも廃棄物を減らす1つの道かと。
あと、先ほどは、技術革新で、ある意味ではしょうがなく廃棄物が出てくる世界になってしまったという話をさせていただいたわけですけれども、これもいくつか工夫のしようはあるはずです。例えば、コンピュータでも、全部を捨てなくても、一部を替えていけばどんどんアップデートできるというような構造にしていく。また、そういう構造になっていることを評価していくことがあってもいいと思います。
例えば、自動車のエンジンなどは、排気ガスの関係で、これはまさに環境問題と直結してくるわけですが、そうすると古い車を全部捨てて、新しいのを買わなくちゃいけないのかというと、必ずしもそうではなくて、例えば、エンジンの部分だけ交換できる。そういうことを、例えば、メーカーにも奨励する。新しい車は、もちろんそれでいいわけですけれども、同じエンジンで、古い車にもそのままエンジンだけ入れられるようにしてあげる、そういう制度があれば、廃棄物を大分減らすことができるという気がします。
日本の場合は、車検か何かにひっかかるのですけれども、今ある車でさえちょっと違うエンジンを入れるともう大変な事態になります。陸運局なんかでも、ひどい目に遭うそうです。だから、私が言われたのは、「もし、あなたの車のエンジンを新しいのに交換したかったら、アメリカに一回出しなさい。それから持って来れば、何とかなります。でも、国内でやろうとしたら大変なことになります。」ということを言われるのです。
そういうところにも非常に大きな無駄があるわけで、今、産業廃棄物というのがこれだけ大きな問題になっているということでは、古い車にも新しいエンジンが入るとか、新車用と中古車用に新たにエンジンマウントを変えるとか、そういう工夫がもっとなされてもいいのではないかという気がします。
〔 部会長 〕 ありがとうございました。
時間の関係もございますので、「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」について、「環境と調和した経済社会」の姿、構造改革の進め方については、大筋は大体このとおりかと思います。今いろいろご意見がございましたように、既得権益との壁、あるいはさらに新しい負担、セットの問題だと思います。あるいは、具体的な問題を出していかないと、これは専門家の話ではなくて、国民全体の話でありますので、その辺のいままでのご議論も十分踏まえた上で整理していきたいと考えております。事務局の方でも、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、次の議題であります「構造改革の経済効果についての数量的な分析」に移らせていただきたいと思います。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 お手元に資料3ー1、資料3ー2の資料をお配りしてございます。資料3ー1につきまして、順に説明をしていきたいと思います。
従来より、規制緩和の経済効果というのは国民にわかりやすく説明をするということで、特に規制緩和委員会との関係で、経済企画庁が分析を積極的に行って、これをなるべく世の中に公表して、規制緩和に対する理解を深めるということが政府の中で求められているわけです。
資料3ー1にありますのは、以前からこうした試算は何回か行っていますけれども、つい最近、3月末に経済企画庁の、私どもの別の部局ですけれども、調整局の方で、前に行いました97年の試算を改訂をして、96年、97年までの、これは過去の出来事ですけれども、統計を元に、どれほどの経済効果が実際に発現したと考えられるかという試算を行って、これが規制緩和委員会の方に報告されたということでございます。既に、新聞等でご存じの方もあるかと思いますけれども、そういうことでちょっとご紹介をさせていただきたいと思います。
1ページ目の第1パラグラフの真ん中辺から後に書いてございますが、試算の対象として、これは積み上げ方式をとっていまして、情報通信、大規模小売店法、定期借地権付き住宅、車検、国内航空、石油製品、電力、ガス、コマーシャル・ペーパー、普通社債、転換社債、労働者派遣に加えて、今回新たに生産緑地法、タクシーの規制緩和、株式売買委託手数料、投資信託、損害保険、有料就業紹介。
こういう個別分野を対象にしまして、どういう計算の仕方をしているのかということですけれども、この資料の6ページに概念図がございます。図1、規制緩和の効果がどうかということを峻別するということはほとんど不可能に近いということで、この方法は、これは消費とか投資とかいう需要についてですけれども、過去のトレンドを超えて、消費需要あるいは投資需要が実績として観測されるもの、この差を規制緩和による効果があるというふうに仮にみなすということで、各分野についての効果を積み上げて計算するということをやっております。
また、1ページに戻っていただきます。その結果ですけれども、需要効果について、90~97年度の全期間を通じた需要効果は、年平均8兆円強、名目GDPに対する比率で言いますと1.73%程度で、前回の結果、90~95年度に比べて2割以上大幅に増加しているということです。
この結果が、4ページに表としてやや詳細な結果が提示してありますので、ご覧いただきたいと思います。90~95年度平均の欄、これか前回の結果ということです。今回の結果は、BあるいはCをご覧いただければ今回の結果ということですが、特にご注目いただきたいのはB・96~97年度という2年間についてですが、実績として大きな経済効果が観測されています。特筆すべきは、その内容で、情報通信が2兆 2,000億から7兆 4,000億ということで、96~97年度に情報が寄与しているということです。内容的に見ますと、電気通信、これは携帯電話の爆発的な普及ということが非常に大きいわけです。それ以外にも、ケーブルテレビとか衛星放送についても電気通信関係で非常に大きな需要の躍進があったということです。そのほかにも、新しい分野として、少し下の方に目を移していただきますと、国内航空の分野で非常に需要が盛り上がっている。あるいは、新たな分野として卸売電力が加わってきているということで、96~97年度は、経済全体を見ますと、資本ストックの調整が終わったかに見えて、また新しい景気の回復の始まりがあったのではないかということで、経済計画でも、構造改革が進んだ場合に3%成長ということを言った、そのちょうどベースになったあたりの年ですけれども、こうして振り返ってみますと、規制緩和によって需要が出てきた、設備投資需要が出てきたということが、その頃集中して起こっていたということが確認できるわけです。
この表でもう一点だけコメントしたいことがございます。大規模小売店舗法ですけれども、これはかなり以前から規制緩和が、段階的ではありますが、進んできていたということで、大規模小売店舗法関係の需要の増加は、90~95年度平均と、その後の96~97年度という2年間とを比べますと、需要効果としては一段落をするということがございます。そのほかも、土地・住宅関係も資産価格の下落という中で規制緩和の効果が実際の需要としてあらわれるには、96年というのは、逆に時期が悪いときであった。同じようなことが、株式とか金融関係の自由化についても言えるのではないかと思っております。
そういうことで、96~97年度というのは、情報関係で非常に大きな規制緩和の効果が見られたとともに、こうしたスタディから言えることは、需要効果に期待できるというのは、わりと初期的な効果に限られているのではないか。もしこれが経済成長を持続的に高めていくことができるとすれば、需要拡大の中から新たな技術開発が見られるとか、あるいは1つの分野の規制緩和がほかの分野の需要を拡大させる、そういう波及効果が次から次に連鎖的に広がっていくということを考えないと、永続的に成長率の拡大を図ることはなかなか難しいのかなと、需要効果ということに限って言えば、そのようなことが言えるのではないかと思います。
次の5ページの表2でございますけれども、表1は消費とか投資とかという実際の需要として観測されたものを言っておりますけれども、そのほかに、利用者メリットというものをここでは別途計算をしております。これは、主として価格の低下がどれだけ費用を節約しているかということです。
なぜ先ほどの需要効果と違うかということで、1つだけ例を申し上げますと、石油製品が90~95年度平均に比べて96~97年度は2倍以上に利用者メリットが増加していますけれども、これは主として輸入の自由化に伴うガソリン価格の大幅な低下ということです。これは利用者としては、消費者以外にも、企業もガソリンというのは中間投入として使いますので、企業自身も利用者になるわけです。こういう価格の低下によるメリットというのは、必ずしもその分だけ石油製品の需要が拡大したということではないわけです。そういう意味で、消費とか投資とかいうGDPを構成する需要項目として捉えられないものも、価格の低下による利用者へのベネフィットという意味からは重要なものと考えて、こういう計算も行ったということです。
この利用者メリットに関して申しますと、先ほどと同様ですけれども、電気通信の分野の価格の低下が非常に大きな利用者メリットを、96~97年度に関して及ぼしているということです。それと、先ほど申し上げました石油製品、これは需要の方としてはほとんどないわけですけれども、価格の低下のメリットというのが石油製品については大きかったということでございます。
これが97年度以降どうなっているかということは、まだデータがはっきり取れませんので、関心があるわけですけれども、先ほど私が申し上げたことから言いますと、こういう爆発的な需要の増加、あるいは価格の低下というものが、それぞれの分野ではそう何年も、レベルとしては追加された需要というのはそのままあるわけですけれども、更にその需要が需要を呼ぶという形で波及していくというメカニズムがなかなかインストールされていないようなところがあるのではないかという気がいたします。これが最初にご報告をする点です。
資料3ー2について、ちょっとご報告させていただきたいと思います。資料3ー2というのは、平成9年6月に経済審議会で6分野の経済構造改革の提言をしましたときに、規制緩和のマクロ経済に与える影響というものを、私ども総合計画局の方で試算をした結果です。
以上でございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
ただいま説明のありました資料3について、ご意見をお願いします。
〔 I委員 〕 資料3ー1の4ページ、需要効果、これは先ほどのご説明についての私の理解では、90~95年度平均がA、そう見てよろしいですね。
〔 事務局 〕 はい。
〔 I委員 〕 そして、96~97年度の年平均がBである。それで、90~97年度の平均がC。要するに、90年~97年度の平均に対して96~97年度はどれだけ増えたかということですね。そのときに、例えば合計のところでいきますと、 C/Aが23.4%ということで、これが96~97年度の需要の上乗せ分、そう読んでよろしいですか。
〔 事務局 〕 はい。
〔 I委員 〕 それがそのまま規制緩和の効果と言っているわけではないのですね。
〔 事務局 〕 そういうふうに、みなしているわけです。
〔 I委員 〕 それだとちょっとわからないのは、例えば、国内航空が58.0、これは情報通信よりも高い。情報通信と同じぐらいですね。
〔 事務局 〕 増加率ですか。
〔 I委員 〕 はい。
そこでは、規制緩和は行われていないので、これはどういうふうに読んだらいいのか。
ハーバー運賃というのが96年の春に導入されましたけれども、何の効果もなかった話ですから。そうすると、これはどういうふうに読んだらいいのかというのが、ちょっとわからない。
私の理解が、これは間違っていますでしょうか。
〔 事務局 〕 おっしゃっていることは正しいと思います。どれだけが規制緩和の効果かという峻別が難しいと同時に、今おっしゃったように、本当にそれ自体が規制緩和とどういう関係にあるか。そこは、ここで峻別しないで単純にデータに語らせるということで、過去のトレンドから、何らかの規制緩和が行われた分野について過去のトレンドを上回った分を、単純にといいましょうか、仕方なくですけれども、これは規制緩和の効果である、と。もちろん、ここに吟味していくと、それは規制緩和の効果ではなくて、全く別の要因で増えている部分もあると思います。逆に、規制緩和の効果として、ここでは過去のトレンドを上回った分を全部足し上げて規制緩和の効果としているわけですが、そのほかにも、副次的な影響というものが当然あるわけです。ここでは物価面については産業連関表を使って副次的な影響というものを捉えています。
私が申し上げたかったのは、例えば、携帯電話が爆発的に普及して、携帯電話をかけるようになった。それが全く純粋のプラスとして家計の消費にオンしているかどうかといいますと、そこはマクロ的な所得とかいうもので縛られていて、必ずしもそれだけ消費性向が上がって、ということになっていない。食われている部分というのが、そのほかである。しかし、それはどこの部分でどれだけ食われているかということは、とてもデータから語れないということで、そこは一応無視するというか、ここではプラスのところだけを積み上げた。そのプラスも、本当に規制緩和なのかどうかということについては、ご議論があるだろうと思います。
〔 L委員 〕 いくらか概念的な整理といいますか、質問も含めてしたいのです。
産業廃棄物の話は、言ってみると、企業が本来負担すべき社会的費用をこれまでしてこなかったので、その処理の費用等を企業が自分で負担するということで、基本的にはサプライカーブを上の方にやる話ではないかと思うのです。こっちの規制緩和の方は、私は、基本的にはそれとは反対で、サプライカーブを右下の方にシフトさせて、需要が一定であったとしても、産出量が増えて価格が下がる。
この大まかな試算の結果は、産出量の実質GDPは増えて価格は下がるという結果になっていますから、サプライカーブの方の効果がドミネイトしているのではないかと思うのですのが、ただ、説明を読むと、表1も需要効果となっていて、それから最後の需要の概念図も、トレンドからの需要効果となっているわけです。確かに、規制緩和があってこれまで新規に売ることができなかった新たなマーケットが生まれて、それで需要が積み上げられる、つまり需要曲線が右の方にシフトするという効果はもちろんあるわけです。ただ、これは1回限りの効果で、成長力を高めるようなものでないというのは、先ほどのご説明のとおりだと思うのです。
そうだとしますと、新規需要の効果を主に取っているのだということだと、価格は上がらないといけない。サプライカーブが右下がりでない限りは、結果として上がらないといけないのに、下がっているわけです、全体としての効果は。ということは、サプライサイドの効果の方がドミネイトしている結果だとしか受け取れないのですが、それを需要効果と読んでよろしいのか。
サプライサイドの方も、また2つ効果があって、1つは生産性向上で、全要素生産性が高まりますという、プロダクションフロンティアを広げるようなものと、それから、規制でディストーションがあってフロンティアの内部にあったものをフロンティアまで持ってくるという、つまりディストーションを除くということによってサプライカーブが右の下の方にシフトする効果、両方あると思うのです。
ここでの結果は、私の拝見する限りは、いずれの結果でもあるのですが、サプライサイドの方がドミネイトしているというふうにしか受け取れないのですが、それを需要効果と読んでいいのか。
計算の前提では、もちろん、新たにマーケットができるということで足しておられると思いますけれども、全体の結果はそのように思います。
1番目のコメントがそういうことです。
2番目は、利用者のメリットということで、別に計算をされているのですが、利用者のメリット、ここでは価格の低下分はみんな消費者余剰だというふうに増えるとお考えになっていると思うのです。ただ、経済全体のメリットでは、一般的に言えば、ここの留意点のところに書いてありますけれども、消費者余剰が減る分があるわけです。仮に規制が税と同じようなディストーションを与えていたとして、そのタックスウェッジの分、つまり、経済全体でメリットがあるのはトライアングルの部分だけであって、ここに書かれているような部分ではないのではないかと思うのです。ここでの計算は、言ってみると、デマンドカーブが垂直なのか、あるいはサプライカーブが水平なのか、極端な仮定を置いたときのメリットということになっているのではないか、ということであります。
〔 部会長 〕 事務局の方からご意見がありますか。
〔 事務局 〕 ご指摘のとおりだと思います。補足させていただくとしますと、規制緩和によって新たなフロンティアといいましょうか、携帯電話の全く不合理な規制が撤廃されて急に市場があらわれたという見方もできると思いますけれども、デジタル化というような技術がかなり効いている。技術というのは、全く外生ではなくて、規制緩和をして、それだけ市場規模が広がったことで技術開発がまた一層促進されるという面もあるので、需要と供給というのを概念的には分けて効果を考えるわけですが、技術も含めた形で相互の関係というのが、現実にはあるのだろうと思うわけです。ただ、モデルで分析をするというような、定量的に数字を示すということになると、そこら辺はある程度割り切ってやらざるを得ない。割り切ってやるという場合も、1つの割り切り方だけでは全体を語るにはちょっと不十分だなということで、今回、また別の切り口でやってみたということで、概念整理が、確かに、できていないと言えばできていないわけですけれども、いろいろな概念で切って眺めてみるということが今回の趣旨であったということです。
〔 K委員 〕 産業分類ですが、産業構造改革ということでニュービジネスという議論をしているときに、私は極めてタイムリーなというか、ごく当たり前と言えば当たり前ですけれども、なかなか政府部内で進んでいないという産業分類、運輸と通信が一緒になっている。それがそのまま、もっと言うと株式欄にまで反映しているということです。どんどん設備投資あるいはマーケットが実際に変わっているのに、産業分類というのはニュービジネス誘導型に考えていいのではないか、あるいは実態反映でもいいですけれども。
そういう意味で、提案ですけれども、どこかに、こういうペーパーに産業分類の見直しというのを明確にした方がいいのではないか。
ご説明の中の最後にありましたが、私は全くそのとおりだと思います。
それから、電気通信に関わった者という意味で、このペーパーに2点コメントをさせていただきたいと思うのです。資料3ー1の1ページですが、情報通信の発展という捉え方で、94年の電話売り切り制度という、一見地味な規制緩和が96年以降の電話の爆発的な普及をもたらしたという記述がありますが、ちょっと端的すぎて、これは実態を必ずしも反映しない記述だと私は思います。
というのは、電話を売り切りにしたところで、値段が下がって、便利なものが出なければ、単純に売り切りしたところで普及などはあり得ないわけです。それは、値段が下がって、便利なものが出てきたということ。それはもちろん、売り切りをやって、そういう刺激を与えたという側面もあるかもしれませんが、現実を申し上げますと、80年代の後半から90年代の初めてにかけて、ものすごい技術革新が半導体分野でありました。これは調べていただくとわかりますけれども、値段だけでも、この数年間で何万分の1に下がっている。まず技術革新の問題があった。
もう一つは、日本では大変めずらしいことですけれども、94年に、1つの地域で2社でやっていたのを、先ほどもご説明がありましたが、ディジタル化を進めるということで、4社で競争させるようにした。ほかの国は大体2つぐらいですけれども、一気に4社になった。それに翌年の95年には、PHSを入れた。1地域3社ですから7社になった。大変めずらしい政策をとったということで、競争と技術革新がものすごく進んだ。そして、規制緩和。その背景として、NTTドコモしかなかったのが、9つに分かれた、9社に地域に分かれて比較競争ができるようになった。
新聞とかマスコミにこういうのが書いてあるのですけれども、事実関係は、私はかなり違っているというふうに思いまして、申し上げたいと思います。
また、NTTが国際に出ていく、KDDが国内に入ってくるといっても、マーケットとしては非常に小さい 4,000~ 5,000億円のマーケットです。何がここで注目されるべきかというのは、日本としては、1985年以来、NTTの再編成という問題があった。特に消費者との関わりで言いますと、通信のネットワークというのは最後、必ず地域の通信網、具体的に言うと10円の通信網は原則NTTのネットワークに入ってこなければならない。ここが値段が下がらないと、いくらたっても日本の国民・産業は高い通信インフラを使わなければならないということがありまして、NTTの再編成、いよいよ99年の今年からやろうということになって、地域会社、3兆弱ぐらいの会社が2つに分かれてヤードスティック・コンペティションをやるというようなことになってきています。
KDDは、国内・国際通信網でせいぜい 4,000億円の世界、それから、NTTが海外に出て行くというのも、これからのことであって、これが国民に直ちに跳ね返るようなインパクトというのは弱い。ただ、いろいろな意味で副次的な効果があります、海外に出れば。そういう意味では、むしろ、NTT再編成というのは、日本の国のとる政策としては大きいので、そういう言葉を入れられた方が非常に具体化するのではないかと思います。
〔 J委員 〕 既にL委員の話とかでありましたが、今の通信関係のお話で、このような試算、特に規制緩和、技術革新というのを計量モデルでやるのは本当に難しいです。私は、ほとんど不可能ではないかと思うぐらい、これは難しい問題だと思うのです。
でも、一方では、これだけいろいろやっているわけですから、何か定量的に押さえたいという気持ちも当然あるわけで。ただ、この2つをどうやってうまく処理していくかというのを、私は非常に重要なポイントだと思うのです。
と申しますのは、これが1回悪用されている例があるわけです。わずか2年前に、財政再建やるべきかどうかというときに、当時の政府は、規制緩和で十分財政再建の分はカバーできるということを全世界に言って、それで見事に恥をかいてしまったわけで、5期連続マイナス成長ということになってしまったわけです。
そういうことも含めて考えますと、この種の試算というのは、本当に慎重に扱わないと、とんでもない悪用をされて、それがまた国民に大変大きな損害をもたらしてしまうという危険性があるのないか、という気がします。
アメリカでも、実は同じ間違いを犯しているわけで、ラッファー・カーブの発想というのは大体こういうところから来ているわけです。レーガンは、短期的にかなり効果があるはずだということで推し進めたわけですけれども、その結果が出てきたのは、実は10年後、今のアメリカであるということを見ましても、あまり短期的にこれを詰めようとして、データが全部本当に揃っているのであれば、L委員が指摘されたようなポイントが本当に分けることができれば、また通信分野の技術革新と規制緩和と本当にきれいに分けることができれば、こういう数字を公に出してもいいと思うのですが、そうでないと、これは大変大きな誤解を生んでしまう、また悪用されてしまう。実際に悪用されてしまったということを考えると、扱いを非常に注意してやるべきではないかという気がします。
〔 C委員 〕 私どもも、先般、企画庁さんがお出しになられた資料を使って、私どもとしても、非常に稚拙な中期モデルを作って内外にお示ししたことがあるのですが、残念ながら、規制緩和の効果は経済成長には全然その後、あったのかもしれませんが、目に見える形では出てこないで、おまえたちは規制緩和と言っているけれども、GDPはなかなかプラスにならないな、というお叱りを受けたわけでございます。
つまり、どうもタイミングというのがあるようでございまして、J委員もおっしゃいましたが、こういったものの効果を否定するわけではないと思いますが、どういう時期に、どういうタイミングで、どういう順序でやるのかということは大変重要なものだろうと思います。順番を間違うとなかなかうまくいかない。環境の認識を間違うとうまくいかない。
例えば、金融分野の規制緩和につきましては、こういった時期の規制緩和、決して規制緩和が悪いとは申し上げませんが、また大変なコストがかかっている時期でございます。そういった時期に、規制緩和を推し進めたということが、そのコストを更に増加させたのか、あるいは軽減させたのか、なかなかわかりにくいかなという感じがいたします。
ですから、繰り返し申し上げますけれども、どういうタイミングで状況を認識してやるかということが大変重要だろうと思います。
もう一つ、私は、この会議の最初の頃に申し上げたと思うのですが、雇用の問題ですが、減るのはすぐわかるわけです。ではどこで増えていくのだろうか。どこで吸収するかというイメージといいますか、そういう記述がないと安心できない。それでなくても、失業率がどんどん上がっている状況の中で、この規制緩和による摩擦の部分をどういうふうに解消していくのかということは大変重要な問題だと私は思っております。
したがいまして、抽象的ではなくて、もう少し具体的な形で移動していく先の話を書くことが必要ではないかという感じがいたします。
〔 部会長 〕 まだいろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日の審議につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。
それでは、さらにご意見がございましたら、事務局までご連絡をいただきたいと思います。
それでは、次回以降の日程につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 資料4でお配りしておりますが、次回は第6回でございます。4月20日(火)、同じ時間、同じ場所を予定しております。議題は、部会意見スケルトン案でございます。よろしくお願いいたします。
〔 部会長 〕 それでは、第5回の構造改革推進部会の審議は以上にいたしたいと存じます。
本日は長時間の活発なご審議、誠にありがとうございました。次回以降もよろしくお願いいたします。
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