第10回 経済審議会・企画部会議事概要

1 日時

平成11年4月13日(火) 15:00~16:30

2 場所

経済企画庁特別会議室(436号室) (第4合同庁舎4F)

3 出席者

(部会) 小林陽太郎部会長、荒木襄、伊藤進一郎、角道謙一、香西泰、小島明、佐々波楊子、ポール・シェアード、嶌信彦、高橋進、長岡實、那須翔、星野進保、堀紘一、松井孝典、水口弘一、村田良平、八代尚宏、鷲尾悦也、の各委員、岩城秀裕、大野直志、大前孝太郎、金光隆志の各特別委員

(事務局) 堺屋経済企画庁長官、塩谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、荒井計画官他

4 議 題

  • 「新たなる時代のあるべき姿」の基本的考え方について
  • マクロフレームを考えるにあたって検討すべき事項について

5 議事内容

事務局より資料2「『経済社会のあるべき姿』を考えるにあたって(案)」について説明。各委員等からの主な意見は以下のとおり。部会として案文は了承された。

○案文では、ごく少数のエリート層とドロップアウトした安全ネットに救われる層との両極に焦点があり、普通の人の視点がやや欠けている。

○エリートを対象にしているという指摘については、そうは思わない。むしろ中流の人を意識した案文になっていると思う。

○将来の所得について、日本が普通の国になり、女性や高齢者が働く機会が拡大すれば、世帯当たりと一人当たりの結果は異なってくる。一人当たりでの所得が減少しても、共働きしていれば世帯での所得は増えている。

○具体的な記述をもう少し盛り込むと、国民にとってわかりやすいのではないかと思う。

○これまでの改革を継承しようとしているのか、修正しようとしているのか、意図を明確にした方が良い。

○自由を強調するのは、経済の非効率性を是正する観点からであり、自由と効率は、補完的とも考えられるのではないか。また、自由のためにその他を犠牲とするのであれば、何のための自由なのかという疑問が国民に出てくるのではないか。

○総論は国民にもわかっているが、問題は、実現するために手順がどうなのか、規制や既得権益の中のどこを突破すれば「あるべき姿」ができるということを明確にすべき。

事務局より、資料3「マクロフレームを考えるにあたって検討すべき事項について」について、説明。各委員からの主な意見は以下のとおり。

○アジアには日本経済のパフォーマンスが影響を与え得る。もう少しオープンマクロ的なモデルを想定すべき。世界経済は日本の輸出市場という観点もモノの取引に偏重しており、「あるべき姿」でヒトやサービスの移動を視野に入れていることとずれているのではないか。

○為替レートでは、ユーロと円のレートはどう動くのかについても考慮すべき。

○世界経済に対しての金融面等のリスクを見落としているのではないか。

○いつ景気が回復するかを予想するよりは、どういう条件があれば景気が回復するか等の論理を明確にすべき。

○一人あたり労働時間や労働力人口は、本当に減るのか。前提をよく議論しておく必要がある。労働力需給は、本当にこの10年間で緩和から逼迫に変化するのか。本当にそうなれば、社会保障の問題も長期的展望は楽観的にみることができる。労働供給の減少についても、社会保障が安定しないと、逆に高齢者の労働参加の圧力が強まる。

○消費マインドが好転するには、社会保障や労働力需給がどうなるかが重要。

○問題は、労働力のミスマッチを解消するための能力開発。個人に全て任せることはできないが、自助努力と補完措置をうまく組み合わせれば労働力需給の問題は見通しがつくのではないか。これらにより質のギャップが埋まるという方向性を出すべき。

○労働供給が今後減少することについては、生産年齢人口減少の見通しによりある程度コンセンサスはあるのではないか。労働時間の減少も、労働者の構成が変わることから、やはり減る可能性が大きいのではないか。労働需要がなければ労働力需給は逼迫しないが、それは労働市場の硬直性に依存する。正規労働者でない働き方も是認しないと、雇用も確保できず、失業率も下がらないのではないか。

○経常収支は、10年後は黒字を心配すべき。黒字であるということは日本の潜在的な力が生かされていないことである。高齢化により、海外にある資産を取り崩して成長し、少々赤字になっても良いのではないか。

○経済成長等基本となる数字は、大胆な前提を置いたとしても必要。各省庁が中長期的な見通しを立てる際に用いる成長率等がまちまちなのは良くない。

○新しい指標としては、是非出生率を入れていただきたい。出生率は先進国の社会的支出を示す指標。出生率は放置しておいて上がらない。人々の生活を良くし、男女の固定的な役割分担を見直して、出生率を上げるべき。

○マクロフレームの議論と「あるべき姿」の議論は関係がなく、5年程度ならば将来予測にも意味があるが、それ以上の長期的なあるべき姿を議論する際には、むしろ将来は分からないものと前提して質的転換を議論するほうがよいのではないか。

○「あるべき姿」では生産性の向上が重要だが、指標が一つもないのはどうか。

○指標もどれが重要であり、どれが参考程度なのかを今後吟味していくべき。

○平準化の考え方があまりない。勤務時間や休暇が集中し、日本のキャパシティが有効に活用されていないところに日本の貧しさがある。インセンティブをつけることで、平準化を進めるべき。

○戦後の文化や価値観を変えることは必要。ただ、自由が他人の不自由を誘発するかもしれないことについては、不自由を誘発しない説明責任が必要ではないか。

○日本の戦後文化をいかに変えるかに焦点がある。

○自由は、これまでは行政の裁量で押さえてきたが、こうした考え方を変えなければならないのではないかというのが最大の問題意識。規制は全て必要悪である。

○人口の減る社会で、活力は維持できるのか。どのような文化が生まれるのか。

○世界の状況が、今後も物価安定、供給過剰であり続けるのか。

○結論として一番確率の高い道を選ぶ必要はあると思うが、大きな広がりのある問題を考えていかなければならない。

以上

なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局計画課

TEL:03―3581―1041